(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】回転直動変換装置及び車両用ブレーキ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20220712BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20220712BHJP
F16D 55/226 20060101ALI20220712BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20220712BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20220712BHJP
F16D 125/08 20120101ALN20220712BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20220712BHJP
【FI】
F16H25/20 H
B60T13/74 G
F16D55/226 104A
F16D65/18
F16D121:24
F16D125:08 A
F16D125:40
(21)【出願番号】P 2018068587
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩道 智樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真吾
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-291303(JP,A)
【文献】特開2017-171299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
B60T 13/74
F16D 55/226
F16D 65/18
F16D 121/24
F16D 125/08
F16D 125/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、
前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、
前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、
を具備し、
前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、
前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ
、
前記摩擦部は、前記回転中心の径方向において弾性を有する、
回転直動変換装置。
【請求項2】
前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、
請求項1の回転直動変換装置。
【請求項3】
モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を備え、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記摩擦部は、前記回転中心の径方向において弾性を有し、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、回転直動変換装置と、
シリンダが設けられたボディと、
前記シリンダに収容され、前記回転中心に沿う第1の方向に移動してブレーキパッドを押圧するピストンと
、
を具備し、
前記直動部材は、前記回転部材の正転に応じて前記第1の方向に直進して前記ピストンを押圧し、前記回転部材の逆転に応じて前記第1の方向の反対の第2の方向に直進して前記ピストンへの押圧力の低下を可能とし、
前記第2の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の方向側に位置する、
車両用ブレーキ。
【請求項4】
前記回転中心の径方向の内側に向く前記ボディの内周面と、前記回転中心の径方向の外側に向く前記ピストンの外周面と、の間に介在し、前記内周面と前記外周面との間の隙間をシールするシール部材、をさらに具備し、
前記第1の面と前記第2の面との接触にかかる摩擦係数は、前記シール部材を介した前記ピストンと前記ボディとの間の静止摩擦力に起因する前記回転中心まわりの前記ピストンの回転抵抗トルクが、前記第2の位置にある前記直動部材に対する前記回転部材からの伝達トルクよりも大きくなるよう設定される、
請求項3の車両用ブレーキ。
【請求項5】
モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を備え、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、回転直動変換装置と、
シリンダが設けられたボディと、
前記シリンダに収容され、前記回転中心に沿う第1の方向に移動してブレーキパッドを押圧するピストンと、
前記回転中心の径方向の内側に向く前記ボディの内周面と、前記回転中心の径方向の外側に向く前記ピストンの外周面と、の間に介在し、前記内周面と前記外周面との間の隙間をシールするシール部材と、
を具備し、
前記直動部材は、前記回転部材の正転に応じて前記第1の方向に直進して前記ピストンを押圧し、前記回転部材の逆転に応じて前記第1の方向の反対の第2の方向に直進して前記ピストンへの押圧力の低下を可能とし、
前記第2の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の方向側に位置し、
前記第1の面と前記第2の面との接触にかかる摩擦係数は、前記シール部材を介した前記ピストンと前記ボディとの間の静止摩擦力に起因する前記回転中心まわりの前記ピストンの回転抵抗トルクが、前記第2の位置にある前記直動部材に対する前記回転部材からの伝達トルクよりも大きくなるよう設定される、
車両用ブレーキ。
【請求項6】
モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を備え、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、回転直動変換装置と、
ホイールと一体に回転するドラムロータに押圧されることにより該ドラムロータを制動する制動部材と
、
前記直動部材から前記制動部材を作動させる力を受ける作動部材と、
を具備し、
前記直動部材は、前記回転部材の正転に応じて前記回転中心に沿う第1の方向に直進し前記作動部材を介して前記制動部材を前記ドラムロータに押圧し、前記回転部材の逆転に応じて前記第1の方向の反対の第2の方向に直進し前記ドラムロータに対する前記制動部材の押圧力の低下を可能とし、
前記第2の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の方向側に位置する、
車両用ブレーキ。
【請求項7】
前記回転部材は、雄ネジを有し、前記モータの出力シャフトと連動して前記回転中心まわりに回転し、
前記直動部材は、前記雄ネジと噛み合う雌ネジを有し、前記回転部材の回転に伴って直進する、
請求項6の車両用ブレーキ。
【請求項8】
モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を備え、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、回転直動変換装置と、
シリンダが設けられたボディと、
前記シリンダに収容され、前記回転中心に沿う第1の方向に移動してブレーキパッドを押圧するピストンと、
を具備し、
前記直動部材は、前記回転部材の正転に応じて前記第1の方向に直進して前記ピストンを押圧し、前記回転部材の逆転に応じて前記第1の方向の反対の第2の方向に直進して前記ピストンへの押圧力の低下を可能とし、
前記第2の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の方向側に位置し、
前記直動部材は、前記第2の方向における端部を有し、
前記回転部材は、前記第1の方向に向くとともに前記端部と向かい合い、前記端部と当接することで前記直動部材の前記第2の方向への移動を規制可能な第3の面を有し、
前記端部は、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方における前記第1の面の端が、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち前記一方における前記第2の面の端に接触した状態で、前記第3の面から離れている、
車両用ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転直動変換装置及び車両用ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータによって駆動される回転部材の回転を直動部材の直動に変換する回転直動変換装置を備える車両用の電動ブレーキが知られている。例えば、当該電動ブレーキがディスクブレーキに利用された場合、直動部材は、ピストンを介してパッドをディスクに押し付ける。直動部材は、モータの回転駆動方向に応じて、パッドに近づく方向(ロック方向)、又はパッドから遠ざかる方向(リリース方向)に直進する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、直動部材は、例えば他の部材に軸方向に当接するまで、リリース方向に移動し得る。この状態で、直動部材をリリース方向に移動させるようにモータがさらに回転駆動すると、回転部材と直動部材とのネジ部分が固く締まり合う。
【0005】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことを抑制できる回転直動変換装置及び車両用ブレーキを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る回転直動変換装置は、一例として、モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を具備し、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記摩擦部は、前記回転中心の径方向において弾性を有する。よって、一例としては、摩擦力によるモータの駆動電流の変化に応じて電子制御装置(ECU)によりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、摩擦部にかかる第1の面と、第2の面との摺接状態を良好なものとし摩擦力を安定して発生させることができる。
【0007】
上記回転直動変換装置では、一例として、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である。よって、一例としては、直動部材が第1の位置から第2の位置へ移動することで第1の面と第2の面との間の摩擦力が発生するとともに、第2の位置で直動部材がさらに直進するほど第1の面と第2の面との間の摩擦力が増大する。当該摩擦力の変化によるモータの駆動電流の変化に応じて上記ECUによりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。
【0008】
本発明の実施形態に係る車両用ブレーキは、一例として、モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を備え、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記摩擦部は、前記回転中心の径方向において弾性を有し、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、回転直動変換装置と、シリンダが設けられたボディと、前記シリンダに収容され、前記回転中心に沿う第1の方向に移動してブレーキパッドを押圧するピストンと、を具備し、前記直動部材は、前記回転部材の正転に応じて前記第1の方向に直進して前記ピストンを押圧し、前記回転部材の逆転に応じて前記第1の方向の反対の第2の方向に直進して前記ピストンへの押圧力の低下を可能とし、前記第2の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の方向側に位置する。よって、一例としては、摩擦力によるモータの駆動電流の変化に応じて電子制御装置(ECU)によりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、摩擦部にかかる第1の面と、第2の面との摺接状態を良好なものとし摩擦力を安定して発生させることができる。また、直動部材が第1の位置から第2の位置へ移動することで第1の面と第2の面との間の摩擦力が発生するとともに、第2の位置で直動部材がさらに直進するほど第1の面と第2の面との間の摩擦力が増大する。当該摩擦力の変化によるモータの駆動電流の変化に応じて上記ECUによりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、例えばパッドを交換するために第2の方向に移動する直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。
【0009】
上記車両用ブレーキは、一例として、前記回転中心の径方向の内側に向く前記ボディの内周面と、前記回転中心の径方向の外側に向く前記ピストンの外周面と、の間に介在し、前記内周面と前記外周面との間の隙間をシールするシール部材、をさらに備え、前記第1の面と前記第2の面との接触にかかる摩擦係数は、前記シール部材を介した前記ピストンと前記ボディとの間の静止摩擦力に起因する前記回転中心まわりの前記ピストンの回転抵抗トルクが、前記第2の位置にある前記直動部材に対する前記回転部材からの伝達トルクよりも大きくなるよう設定される。よって、一例としては、第1の面と第2の面との間で摩擦力が生じたときに、ピストンが回転中心まわりに回転することが抑制される。
【0010】
本発明の実施形態に係る車両用ブレーキは、一例として、モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を備え、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、回転直動変換装置と、シリンダが設けられたボディと、前記シリンダに収容され、前記回転中心に沿う第1の方向に移動してブレーキパッドを押圧するピストンと、前記回転中心の径方向の内側に向く前記ボディの内周面と、前記回転中心の径方向の外側に向く前記ピストンの外周面と、の間に介在し、前記内周面と前記外周面との間の隙間をシールするシール部材と、を具備し、前記直動部材は、前記回転部材の正転に応じて前記第1の方向に直進して前記ピストンを押圧し、前記回転部材の逆転に応じて前記第1の方向の反対の第2の方向に直進して前記ピストンへの押圧力の低下を可能とし、前記第2の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の方向側に位置し、前記第1の面と前記第2の面との接触にかかる摩擦係数は、前記シール部材を介した前記ピストンと前記ボディとの間の静止摩擦力に起因する前記回転中心まわりの前記ピストンの回転抵抗トルクが、前記第2の位置にある前記直動部材に対する前記回転部材からの伝達トルクよりも大きくなるよう設定される。よって、一例としては、摩擦力によるモータの駆動電流の変化に応じて電子制御装置(ECU)によりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、直動部材が第1の位置から第2の位置へ移動することで第1の面と第2の面との間の摩擦力が発生するとともに、第2の位置で直動部材がさらに直進するほど第1の面と第2の面との間の摩擦力が増大する。当該摩擦力の変化によるモータの駆動電流の変化に応じて上記ECUによりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、例えばパッドを交換するために第2の方向に移動する直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。また、第1の面と第2の面との間で摩擦力が生じたときに、ピストンが回転中心まわりに回転することが抑制される。
【0011】
本発明の実施形態に係る車両用ブレーキは、一例として、モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を備え、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、回転直動変換装置と、ホイールと一体に回転するドラムロータに押圧されることにより該ドラムロータを制動する制動部材と、前記直動部材から前記制動部材を作動させる力を受ける作動部材と、を具備し、前記直動部材は、前記回転部材の正転に応じて前記回転中心に沿う第1の方向に直進し前記作動部材を介して前記制動部材を前記ドラムロータに押圧し、前記回転部材の逆転に応じて前記第1の方向の反対の第2の方向に直進し前記ドラムロータに対する前記制動部材の押圧力の低下を可能とし、前記第2の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の方向側に位置する。よって、一例としては、摩擦力によるモータの駆動電流の変化に応じて電子制御装置(ECU)によりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、直動部材が第1の位置から第2の位置へ移動することで第1の面と第2の面との間の摩擦力が発生するとともに、第2の位置で直動部材がさらに直進するほど第1の面と第2の面との間の摩擦力が増大する。当該摩擦力の変化によるモータの駆動電流の変化に応じて上記ECUによりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、例えば、第2の方向に移動する直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させるなど直動部材を制動開始前の待機位置(初期位置)等に精度良く戻すことができる。
【0012】
上記車両用ブレーキでは、一例として、前記回転部材は、雄ネジを有し、前記モータの出力シャフトと連動して前記回転中心まわりに回転し、前記直動部材は、前記雄ネジと噛み合う雌ネジを有し、前記回転部材の回転に伴って直進する。よって、一例としては、回転部材の雄ネジと直動部材の雌ネジとが固く締まり合うことが抑制される。
【0013】
本発明の実施形態に係る車両用ブレーキは、一例として、モータによって回転中心まわりに回転駆動される回転部材と、前記回転部材の回転に応じて前記回転中心に沿う方向に直進する直動部材と、前記回転部材と前記直動部材とのうち一方に設けられ、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち一方に向く第1の面を有する摩擦部と、を備え、前記回転部材と前記直動部材とのうち他方に、前記回転中心に近づく方向及び前記回転中心から遠ざかる方向のうち他方に向く第2の面が設けられ、前記第1の面が前記第2の面に圧接する状態で前記直動部材が直進することで、前記第1の面と前記第2の面との間で摩擦力が生じ、前記直動部材は、前記回転部材に対し、前記第1の面が前記第2の面から離れた第1の位置と、前記第1の面が前記第2の面に圧接した第2の位置と、に移動可能である、回転直動変換装置と、シリンダが設けられたボディと、前記シリンダに収容され、前記回転中心に沿う第1の方向に移動してブレーキパッドを押圧するピストンと、を具備し、前記直動部材は、前記回転部材の正転に応じて前記第1の方向に直進して前記ピストンを押圧し、前記回転部材の逆転に応じて前記第1の方向の反対の第2の方向に直進して前記ピストンへの押圧力の低下を可能とし、前記第2の位置は、前記第1の位置に対して前記第2の方向側に位置し、前記直動部材は、前記第2の方向における端部を有し、前記回転部材は、前記第1の方向に向くとともに前記端部と向かい合い、前記端部と当接することで前記直動部材の前記第2の方向への移動を規制可能な第3の面を有し、前記端部は、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方における前記第1の面の端が、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち前記一方における前記第2の面の端に接触した状態で、前記第3の面から離れている。よって、一例としては、摩擦力によるモータの駆動電流の変化に応じて電子制御装置(ECU)によりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、直動部材が第1の位置から第2の位置へ移動することで第1の面と第2の面との間の摩擦力が発生するとともに、第2の位置で直動部材がさらに直進するほど第1の面と第2の面との間の摩擦力が増大する。当該摩擦力の変化によるモータの駆動電流の変化に応じて上記ECUによりモータの駆動態様を制御することで、直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。従って、回転部材と直動部材とが固く締まり合うことが抑制される。また、例えばパッドを交換するために第2の方向に移動する直動部材が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材を停止させることができる。また、第1の面又は第2の方向における第1の面の端が同方向における第2の面の端に接触した場合、直動部材がさらに第2の方向に移動しても、第1の面と第2の面との間の摩擦力は略一定となり、又は低下する。すなわち、直動部材の端部が第3の面に当接する前に、第1の面と第2の面との間の摩擦力は略一定値となり、又は低下する。従って、直動部材の端部が第3の面に当接する前に、摩擦力によってピストンが回転したり、回転部材と直動部材とが固く締まり合ったりすることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る制動状態の車両用ブレーキを概略的に示す例示的な断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の非制動状態の車両用ブレーキを概略的に示す例示的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の回転直動変換機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の摺動状態の回転直動変換機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の車両用ブレーキの制動解除時のモータ電流値の経時変化の一例を概略的に示す例示的なタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る回転直動変換機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態の摺動状態の回転直動変換機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の変形例に係る回転直動変換機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態の変形例の摺動状態の回転直動変換機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る車両用ブレーキを概略的に示す例示的な背面図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態の車両用ブレーキを概略的に示す例示的な側面図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態の非制動状態における車両用ブレーキの移動機構を概略的に示す例示的な側面図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態の制動状態における車両用ブレーキの移動機構を概略的に示す例示的な側面図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態の非制動状態における駆動機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図15】
図15は、第3の実施形態の制動状態における駆動機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図16】
図16は、第3の実施形態の変形例に係る駆動機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図17】
図17は、第4の実施形態に係る駆動機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図18】
図18は、第4の実施形態の非制動状態における回転直動変換機構を概略的に示す例示的な斜視図である。
【
図19】
図19は、第4の実施形態の制動状態における回転直動変換機構を概略的に示す例示的な斜視図である。
【
図20】
図20は、第4の実施形態の変形例に係る回転直動変換機構を概略的に示す例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図5を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明について、複数の表現が記載されることがある。複数の表現がされた構成要素及び説明は、記載されていない他の表現がされても良い。さらに、複数の表現がされない構成要素及び説明も、記載されていない他の表現がされても良い。
【0016】
図1は、第1の実施形態に係る制動状態の車両用ブレーキ10を概略的に示す例示的な断面図である。
図2は、第1の実施形態の非制動状態の車両用ブレーキ10を概略的に示す例示的な断面図である。
図1及び
図2に示すように、車両用ブレーキ10は、キャリパ20と、ディスク30と、回転直動変換機構40と、モータ50と、回転伝達機構60とを有する。回転直動変換機構40は、回転直動変換装置の一例である。回転直動変換機構40、モータ50、及び回転伝達機構60は、キャリパ20に内蔵される。
【0017】
車両用ブレーキ10は、液圧ブレーキとして作動することができるとともに、電動ブレーキとしても作動することができる。例えば、キャリパ20が液圧ブレーキを構成し、キャリパ20、回転直動変換機構40、モータ50、及び回転伝達機構60が電動ブレーキを構成する。なお、車両用ブレーキ10は、単に電動ブレーキであっても良い。
【0018】
電動ブレーキは、いわゆる電動パーキングブレーキ(EPB)である。すなわち、車両用ブレーキ10は、電動ブレーキ機能による制動状態が駐車時に維持されるよう構成される。なお、電動ブレーキは、走行時や一時停止時に作動しても良い。
【0019】
キャリパ20は、ボディ21と、ピストン22と、二つのブレーキパッド23と、ピストンシール24とを有する。ピストンシール24は、シール部材の一例である。ボディ21に、シリンダ25が設けられている。
【0020】
シリンダ25は、中心軸Ax1に沿って延びた略円筒形の穴である。中心軸Ax1は、回転中心の一例である。本実施形態における中心軸Ax1は、シリンダ25の中心である。なお、回転中心は、シリンダ25の中心軸Ax1に限られない。
【0021】
以下、中心軸Ax1に沿う方向を中心軸Ax1の軸方向又は単に軸方向、中心軸Ax1と直交する方向を中心軸Ax1の径方向又は単に径方向、中心軸Ax1まわりに回転する方向を中心軸Ax1の周方向又は単に周方向と称する。さらに、中心軸Ax1の軸方向のうち一方向(
図1における右方向)をロック方向D1、中心軸Ax1の軸方向のうち他方向(
図1における左方向)をリリース方向D2と称する。ロック方向D1は、第1の方向の一例である。リリース方向D2は、第2の方向の一例である。リリース方向D2は、ロック方向D1の反対の方向である。
【0022】
シリンダ25は、ロック方向D1に開放された有底円筒状の穴である。ピストン22は、中心軸Ax1に沿って往復動可能にシリンダ25に収容される。シリンダ25内に、液圧室Rが設けられている。
【0023】
液圧室Rにおける液圧の上昇によって、ピストン22は、ロック方向D1に移動し、ブレーキパッド23の裏板231を押圧することで、ブレーキパッド23のライニング232をディスク30に押し付ける。これにより、ディスク30と一体に回転する車両のホイールが制動され、液圧ブレーキによる制動状態が得られる。
【0024】
ピストン22は、外周面22aと、端面22bとを有する。外周面22aは、中心軸Ax1の径方向の外側に向く略円筒状に形成されている。端面22bは、ピストン22のロック方向D1の端面である。
【0025】
ピストン22に、凹部22cが設けられている。凹部22cは、リリース方向D2に開放された有底円筒状の孔である。すなわち、凹部22cは、端面22bの反対側に設けられている。凹部22cは、液圧室Rの一部を形成する。
【0026】
ピストン22の外周面22aは、シリンダ25の内周面25aと向かい合う。シリンダ25の内周面25aは、中心軸Ax1の径方向の内側に向く略円筒状に形成された、ボディ21の内周面である。
【0027】
ピストン22の外周面22aとシリンダ25の内周面25aとの間に微小な隙間(クリアランス)が設けられている。外周面22aは、当該隙間に作動液が存在する潤滑状態で、内周面25aと摺動する。
【0028】
ピストンシール24は、ピストン22の外周面22aとシリンダ25の内周面25aとの間に介在し、外周面22aと内周面25aとの間の隙間をシールしている。これにより、ピストンシール24は、液圧室Rから隙間を通っての作動液の漏れを抑制している。
【0029】
ピストンシール24は、シリンダ25の内周面25aに取り付けられ、ボディ21に対して移動することを制限される。なお、ピストンシール24は、ピストン22の外周面22aに取り付けられても良い。
【0030】
ピストンシール24を介したピストン22の外周面22aとボディ21の内周面25aとの間の静止摩擦力に起因する中心軸Ax1まわりのピストン22の回転抵抗トルクにより、ピストン22が中心軸Ax1まわりに回転することが制限される。さらに、ピストン22の中心軸Ax1まわりの回転は、ピストン22とブレーキパッド23と間の静止摩擦力に起因する中心軸Ax1まわりのピストン22の回転抵抗トルクによっても制限され得る。
【0031】
ピストンシール24は、液圧室Rにおける液圧の下降に伴い、弾性力によってピストン22を液圧室Rに向かってリリース方向D2に引き込み、ピストン22の端面22bをブレーキパッド23から離間させる、リトラクト機能を有する。すなわち、液圧室Rの液圧の低下に伴って、ピストン22の裏板231への押圧が解除されると、ピストン22によるライニング232のディスク30への押し付けが解除される。これにより、液圧ブレーキによる制動解除状態が得られる。このように、キャリパ20は、液圧ブレーキとして作動することができる。
【0032】
回転直動変換機構40は、キャリパ20内に設けられている。回転直動変換機構40は、回転部材41と、直動部材42とを有する。回転部材41は、中心軸Ax1まわりに回転可能にボディ21に支持される。直動部材42は、回転部材41の回転に応じて軸方向に直動可能に、当該回転部材41に取り付けられる。
【0033】
回転伝達機構60は、例えば、ギアのような複数の複数の回転要素を有する減速機である。回転伝達機構60は、モータ50の出力軸の回転を、回転部材41に伝達する。回転部材41は、回転伝達機構60から入力されるトルクにより、中心軸Ax1まわりに回転する。
【0034】
回転部材41は、結合部411と、フランジ412と、シャフト413と、を有する。結合部411は、回転伝達機構60のアウトプットシャフトと一体に回転する。フランジ412は、結合部411とシャフト413との間に位置し、結合部411及びシャフト413から中心軸Ax1の径方向に張り出す略円盤状に形成されている。シャフト413は、フランジ412からロック方向D1に突出している。
【0035】
図1に示すように、フランジ412と、キャリパ20のボディ21との間に、スラストベアリング44が設けられている。ボディ21は、スラストベアリング44を介して、回転部材41を軸方向に支持している。
【0036】
図3は、第1の実施形態の回転直動変換機構40を概略的に示す例示的な断面図である。
図3に示すように、径方向の外側に向くシャフト413の外周面413aに、雄ネジ部414が設けられている。
【0037】
直動部材42は、筒状部421と、二つの突起422とを有する。筒状部421は、中心軸Ax1を中心とする略円筒状に形成されている。径方向の内側に向く筒状部421の内周面421aに、雌ネジ部423が設けられている。内周面421aは、第1の実施形態における第2の面の一例である。雌ネジ部423は、回転部材41の雄ネジ部414と噛み合っている。二つの突起422は、筒状部421から、径方向の外側であって互いに反対方向(各図における上方向及び下方向)に突出している。
【0038】
図1に示すように、回転直動変換機構40の一部は、ピストン22の凹部22c内に収容されている。回転部材41のシャフト413の一部は、ピストン22の凹部22c内に位置している。また、直動部材42は、凹部22c内で軸方向に移動可能に設けられている。
【0039】
ピストン22の凹部22cに、二つのガイド溝22dが設けられている。二つのガイド溝22dは、径方向の外側であって互いに反対方向(各図における上方向及び下方向)に窪むとともに、軸方向に延びている。
【0040】
直動部材42の突起422は、ガイド溝22dに沿って移動可能なように、当該ガイド溝22dに収容されている。例えば、周方向に向くガイド溝22dの側面が、周方向に向く突起422の側面に当接することで、直動部材42が中心軸Ax1まわりに回転することが制限される。
【0041】
以上のように、回転部材41の雄ネジ部414と直動部材42の雌ネジ部423とが噛み合うとともに、直動部材42の突起422の回転がピストン22のガイド溝22dによって制限される。これにより、直動部材42は、回転部材41の回転に応じて軸方向に直動できる。別の表現によれば、直動部材42は、軸方向に略平行移動できる。
【0042】
モータ50は、制御信号に基づく駆動電力によって駆動される。モータ50は、当該モータ50の出力軸を回転させることで、回転伝達機構60を介して、回転部材41を中心軸Ax1まわりに回転駆動する。モータ50の出力軸の一方向の回転(正転)に基づく回転部材41の一方向の回転(正転)に応じて、直動部材42は、ロック方向D1に直進する。
【0043】
ロック方向D1に直進する直動部材42は、ピストン22を押圧する。直動部材42に押されたピストン22は、裏板231をロック方向D1に押圧することで、ブレーキパッド23のライニング232をディスク30に押し付ける。これにより、
図1に示すように、ディスク30と一体に回転する車両のホイールが制動された、電動ブレーキ機能による制動状態が得られる。
【0044】
モータ50の出力軸の逆方向の回転(逆転)に基づく回転部材41の逆方向の回転(逆転)に応じて、直動部材42は、ピストン22から遠ざかる方向であるリリース方向D2に直進する。直動部材42のリリース方向D2への移動により、ピストン22の裏板231への押圧力が低下され、ピストン22によるライニング232のディスク30への押し付けが解除される。これにより、
図2に示すように、電動ブレーキ機能による制動の解除状態が得られる。このように、キャリパ20、回転直動変換機構40、モータ50、及び回転伝達機構60は、電動ブレーキとして作動することができる。
【0045】
本実施形態において、ECU81が車両用ブレーキ10のモータ50を制御する。ECU81は、電子制御装置とも称され得る。ECU81は、ソフトウエアを実行するCPUやコントローラのようなハードウェアによって一部を構成されても良いし、ハードウェアによって全体を構成されても良い。なお、モータ50は、ECU81に限らず、例えば、車両用ブレーキ10の専用のコントローラによって制御されても良い。
【0046】
ECU81は、電動ブレーキ機能の操作スイッチ(SW)82から、制動状態へ移行する指示信号を受け取ると、回転部材41が正転するようにモータ50を制御する。一方、ECU81は、操作スイッチ82から、制動状態を解除する指示信号を受け取ると、回転部材41が逆転するようにモータ50を制御する。
【0047】
図3に示すように、回転直動変換機構40は、摩擦部材46をさらに有する。摩擦部材46は、摩擦部の一例である。摩擦部材46は、例えば、作動液に耐性を有する合成ゴム(エラストマー)によって作られ、略円環状に形成されている。このため、摩擦部材46は、軸方向及び径方向に弾性を有する。なお、摩擦部材46は、他の合成樹脂や他の材料によって作られても良いし、他の形状に作られても良い。また、
図3に例示されるように、摩擦部材46の断面は、略矩形状に形成されているが、円形(Oリング状)、楕円形、多角形、又は他の形状であっても良い。
【0048】
シャフト413の外周面413aに、溝413bが設けられている。溝413bは、外周面413aから径方向の内側に窪むとともに、周方向に延びた窪みである。摩擦部材46は、溝413bに嵌め込まれることで、シャフト413に固定され、シャフト413に対して軸方向に移動することを制限されている。別の表現によれば、摩擦部材46は、外周面413aの溝413bに巻き付けられている。このように回転部材41に設けられた摩擦部材46は、回転部材41と一体的に中心軸Ax1まわりに回転可能である。
【0049】
雄ネジ部414は、リリース方向D2におけるシャフト413の端部である基端413cから、ロック方向D1に離間した位置に設けられている。基端413cは、フランジ412に接続されたシャフト413の端部である。溝413bは、雄ネジ部414と基端413cとの間において、シャフト413の外周面413aに設けられている。
【0050】
摩擦部材46は、径方向の外側に向く略円筒状の外周面46aを有する。外周面46aは、第1の実施形態における第1の面の一例である。径方向の外側は、回転中心から遠ざかる方向の一例である。外周面46aは、径方向の外側と斜めに交差する方向に向いても良い。例えば、外周面46aは、ロック方向D1に向かうに従って先細る略円筒状に形成されても良い。この場合、外周面46aは、径方向の外側(各図における上方向及び下方向)と斜めに交差する方向(各図における右上方向及び右下方向)に向く。径方向の外側と斜めに交差する方向も、中心軸Ax1から遠ざかる方向の一例である。
【0051】
摩擦部材46の一部は、シャフト413の外周面413aから径方向の外側に張り出している。このため、摩擦部材46の外周面46aは、シャフト413の外周面413aよりも径方向の外側に位置している。また、摩擦部材46の外周面46aは、径方向の外側における雄ネジ部414の端部よりも、径方向の外側に位置している。言い換えると、外周面46aの直径は、雄ネジ部414の外径よりも大きい。
【0052】
本実施形態において、直動部材42の雌ネジ部423は、リリース方向D2における筒状部421の端部である後端部421bから、ロック方向D1に離間した位置に設けられている。なお、後端部421bは、リリース方向D2における直動部材42の端部でもある。
【0053】
後端部421bと雌ネジ部423との間において、筒状部421の内周面421aは、径方向の内側に向く略円筒状に形成されている。径方向の内側は、回転中心に近づく方向の一例である。内周面421aは、径方向の内側と斜めに交差する方向に向いても良い。例えば、内周面421aは、ロック方向D1に向かうに従って先細る略円筒状に形成されても良い。この場合、内周面421aは、径方向の内側(各図における上方向及び下方向)と斜めに交差する方向(各図における左上方向及び左下方向)に向く。径方向の内側と斜めに交差する方向も、中心軸Ax1に近づく方向の一例である。
【0054】
雌ネジ部423は、内周面421aから径方向の内側に突出している。このため、内周面421aは、径方向の内側における雌ネジ部423の端部よりも、径方向の外側に位置している。言い換えると、内周面421aの直径は、雌ネジ部423の内径よりも大きい。
【0055】
軸方向における筒状部421の後端部421bと雌ネジ部423との間の長さは、軸方向における摩擦部材46の外周面46aの長さ以上である。なお、軸方向における筒状部421の後端部421bと雌ネジ部423との間の長さは、軸方向における摩擦部材46の外周面46aの長さより短くても良い。
【0056】
図4は、第1の実施形態の摺動状態の回転直動変換機構40を概略的に示す例示的な断面図である。回転部材41が回転することで、直動部材42は、回転部材41に対し、
図3の非摺動位置P1及び摺動開始位置P2と、
図4の摺動位置P3,P4とに移動可能である。非摺動位置P1は、第1の位置の一例である。摺動位置P3,P4は、第2の位置の一例である。
【0057】
図3において、非摺動位置P1にある直動部材42が、二点鎖線で示される。非摺動位置P1において、筒状部421の後端部421bは、摩擦部材46からロック方向D1に離れている。このため、筒状部421の内周面421aが、摩擦部材46の外周面46aから離れている。
【0058】
摺動開始位置P2は、非摺動位置P1からリリース方向D2に移動した筒状部421の内周面421aが、摩擦部材46の外周面46aと接触を開始する位置である。例えば、摺動開始位置P2において、摩擦部材46の外周面46aのロック方向D1における端が、筒状部421の内周面421aのリリース方向D2における端に接触している。
【0059】
非摺動位置P1は、摺動開始位置P2からロック方向D1に離れた位置である。なお、
図3に示される非摺動位置P1は一例であり、摺動開始位置P2からロック方向D1に離れた直動部材42の種々の位置が、非摺動位置と称され得る。
【0060】
図4に示すように、摺動位置P3,P4は、摺動開始位置P2からリリース方向D2に離れた位置である。このため、摺動位置P3,P4は、非摺動位置P1に対してリリース方向D2側に位置している。直動部材42が回転部材41に対して摺動位置P3,P4に位置した状態で、摩擦部材46の外周面46aは、筒状部421の内周面421aに接触している。
【0061】
図4において、摺動位置P3にある直動部材42が二点鎖線で示され、摺動位置P4にある直動部材42が実線で示される。
図4に示される摺動位置P3,P4は一例であり、摺動開始位置P2からリリース方向D2に離れた直動部材42の種々の位置が、摺動位置と称され得る。例えば、摺動開始位置P2からリリース方向D2に僅かに移動し、摺動開始位置P2とリリース方向D2に隣接した位置も、摺動位置に含まれる。
【0062】
筒状部421の内周面421aの直径は、摩擦部材46の外周面46aの直径よりも僅かに小さい。このため、筒状部421の内周面421aは、摩擦部材46を径方向の内側に圧縮し、摩擦部材46の外周面46aに圧接される。別の表現によれば、摩擦部材46の外周面46aは、当該摩擦部材46が筒状部421の内周面421aによって圧縮方向に弾性変形させられることで、当該弾性変形の反力により内周面421aを押圧しながら当該内周面421aに接触する。このように、摩擦部材46は、弾性変形を伴って筒状部421の内周面421aの内側に入り、反力によって筒状部421の内周面421aを押圧する。
【0063】
回転部材41が中心軸Ax1まわりに回転すると、摩擦部材46が回転部材41と一体的に回転し、互いに圧接している摩擦部材46の外周面46aと筒状部421の内周面421aとが摺動する。このため、摩擦部材46の外周面46aと、筒状部421の内周面421aとの間で、略周方向の摩擦力が生じる。摩擦部材46の外周面46aと筒状部421の内周面421aとの間の摩擦力は、回転部材41の回転に対する抵抗として作用し、以下、摩擦抵抗と称される。
【0064】
以上の構成において、直動部材42がモータ50の出力軸及び回転部材41の回転(逆転)に応じて摺動開始位置P2からリリース方向D2に移動し、摩擦部材46の外周面46aと筒状部421の内周面421aとが互いに圧接する状態で、直動部材42がリリース方向D2に直進することで、摩擦抵抗が生じる。さらに、直動部材42が摺動開始位置P2からリリース方向D2に移動するに従って、摩擦部材46の外周面46aと筒状部421の内周面421aとの接触面積が増大するため、摩擦抵抗も増大する。
【0065】
摩擦抵抗が増大すると、回転部材41の抵抗トルクが増大し、モータ50の負荷トルク及び駆動電流も増大する。このため、モータ50を制御するECU81は、モータ50の駆動電流の大きさによって、摩擦抵抗の増大を検知することができる。
【0066】
直動部材42が摺動開始位置P2からリリース方向D2に移動するに従って、モータ50の駆動電流が大きくなる。このため、直動部材42の位置とモータ50の駆動電流との相関関係が予め取得されている場合、駆動電流が所定の位置に対応する閾値に達した時点で、ECU81は、直動部材42が当該所定の位置に到達したと見なす(検知する)ことができる。
【0067】
ECU81は、例えば、リリース方向D2に移動する直動部材42が
図4の摺動位置P3に到達すると、電動ブレーキ機能による制動の解除状態が得られたと判断し、モータ50の回転駆動を停止する。これにより、回転部材41の回転及び直動部材42の移動が停止する。なお、ECU81は、リリース方向D2に移動する直動部材42が
図4の摺動位置P4に到達することで、モータ50の回転駆動を停止しても良い。
【0068】
摺動位置P3において、筒状部421の内周面421aのリリース方向D2の端は、摩擦部材46の外周面46aのリリース方向D2の端からロック方向D1に離れている。一方、摺動位置P4は、摺動位置P3からリリース方向D2に離れた位置である。摺動位置P4において、筒状部421の内周面421aのリリース方向D2の端は、摩擦部材46の外周面46aのリリース方向D2の端に接触している。
【0069】
図5は、第1の実施形態の車両用ブレーキ10の制動解除時のモータ電流値の経時変化の一例を概略的に示す例示的なタイミングチャートである。ECU81は、時刻t1において操作スイッチ82から解除指示入力を受け取ると、モータ50への電力の供給を開始し、モータ50を回転駆動させる。制動解除時にあっては、直動部材42は、モータ50の出力軸の回転に応じてリリース方向D2へ移動する。
【0070】
モータ50の駆動電流は、起動時において増大し(時刻t1→t2)、所定時間経過後、負荷に応じた略一定値で安定する(時刻t2→t3)。時刻t3において、直動部材42が摺動開始位置P2に到達する。このため、時刻t3から摩擦抵抗が生じ、モータ50の駆動電流が増大する。ECU81は、モータ50の駆動電流が閾値Ithとなった時点でモータ50の駆動を停止する。
【0071】
モータ50の駆動電流は、起動時に一旦閾値Ithを越すが(時刻t1→t2)、モータ50の駆動を停止させる判断は、モータ50の駆動電流が一度閾値Ithを下回った後(時刻t2→t3)に行われる。また、摩擦部材46の外周面46aと筒状部421の内周面421aとの間の摩擦係数は、摩擦抵抗によるモータ50の駆動電流の増大量(t3以降のグラフの傾き)と、モータ50の駆動電流の検知の応答性とに基づき設定される。
【0072】
以上のような制御により、ECU81は、直動部材42を、閾値Ithに応じた摺動位置P3で停止させることができる。これにより、例えば、直動部材42の過度な移動を抑制することができ、モータ50への過度な給電を抑制することができ、モータ50の電流値によって直動部材42の位置を検知することができる。このように、ECU81は、直動部材42の移動に伴う摩擦抵抗の変動に応じてモータ50の駆動態様を制御する。
【0073】
図4に示すように、モータ50の駆動が停止される摺動位置P3において、筒状部421の後端部421bは、ロック方向D1に向いて当該後端部421bと向かい合うフランジ412の平面412aから離間している。このため、摺動位置P3において、直動部材42はリリース方向D2にさらに移動可能である。平面412aは、第3の面の一例である。なお、筒状部421の後端部421bがフランジ412の平面412aに当接した場合、フランジ412の平面412aは、直動部材42のリリース方向D2への移動を規制する。
【0074】
上述のように、ECU81は、リリース方向D2に移動する直動部材42が
図5の時刻t4に
図4の摺動位置P4に到達することで、モータ50の回転駆動を停止しても良い。摺動位置P4においても、筒状部421の後端部421bは、フランジ412の平面412aから離れている。すなわち、筒状部421の後端部421bは、摩擦部材46が筒状部421の内周面421aの内側に収まった状態で、フランジ412の平面412aから離れている。
【0075】
周方向において、筒状部421の内周面421aと摩擦部材46の外周面46aとの接触にかかる摩擦係数は、ピストンシール24を介したピストン22とボディ21との間の静止摩擦力に起因する中心軸Ax1まわりのピストン22の回転抵抗トルクが、摺動位置P3,P4にある直動部材42に対する回転部材41からの伝達トルクよりも大きくなるように設定される。このため、摩擦抵抗が生じても、ピストン22が回転中心Axまわりに回転することが抑制される。直動部材42に対する回転部材41からの伝達トルクは、例えば、互いに圧接する直動部材42の内周面421a及び摩擦部材46の外周面46aや、互いに噛み合う回転部材41の雄ネジ部414及び直動部材42の雌ネジ部423を介して、回転部材41から直動部材42に伝達されるトルクを含む。
【0076】
上述の筒状部421の内周面421aと摩擦部材46の外周面46aとの接触にかかる摩擦係数の設定は、少なくとも動摩擦係数について成り立つ。本実施形態において、上述の筒状部421の内周面421aと摩擦部材46の外周面46aとの接触にかかる摩擦係数の設定は、動摩擦係数に加えて静摩擦係数についても成り立つ。
【0077】
例えば、
図5において、モータ50の駆動電流が許容値Iliを超えると、直動部材42に対する回転部材41からの伝達トルクが、ピストンシール24を介したピストン22とボディ21との間の静止摩擦力に起因する中心軸Ax1まわりのピストン22の回転抵抗トルクよりも大きくなり、ピストン22が回転中心Axまわりに回転する。しかし、
図5に示すように、モータ50の駆動電流は許容値Iliを下回る。許容値Iliは、例えば、周方向におけるピストンシール24とピストン22の外周面22aとの間の静止摩擦力と、周方向におけるピストンシール24とシリンダ25の内周面25aとの間の静止摩擦力とにより変わる。
【0078】
例えば誤差により、直動部材42が摺動位置P4からリリース方向D2に移動する可能性がある。しかし、直動部材42が摺動位置P4からリリース方向D2に移動しても、摩擦部材46の外周面46aと筒状部421の内周面421aとの接触面積は略一定である。このため、時刻t4以降、モータ50の駆動電流は略一定値で安定する。
【0079】
軸方向における摩擦部材46の外周面46aの長さは、時刻t4以降のモータ50の駆動電流が許容値Iliを下回って安定するように設定される。これにより、直動部材42が摺動位置P4からリリース方向D2に移動しても、ピストン22が回転中心Axまわりに回転することが制限される。
【0080】
以上説明された第1の実施形態に係る車両用ブレーキ10において、摩擦部材46は、回転部材41に設けられ、中心軸Ax1から遠ざかる方向に向く外周面46aを有する。直動部材42に、中心軸Ax1に近づく方向に向く内周面421aが設けられている。摩擦部材46の外周面46aが直動部材42の内周面421aに圧接する状態で直動部材42が直進することで、外周面46aと内周面421aとの間で摩擦力が生じる。上記構成によれば、外周面46aが内周面421aに圧接する状態になると、直動部材42の直動に伴い摩擦抵抗が発生する。摩擦抵抗は、例えば、外周面46aと内周面421aとの接触面積や、外周面46a及び内周面421aにおける垂直抗力により変化し得る。このため、摩擦抵抗によるモータ50の駆動電流の変化に応じてECU81によりモータ50の駆動態様を制御することで、直動部材42がフランジ412に軸方向に当接する前に、直動部材42を停止させることができる。従って、回転部材41の雄ネジ部414と直動部材42の雌ネジ部423との間に軸方向の力が発生して回転部材41と直動部材42とが固く締まり合うことが抑制される。
【0081】
さらに、中心軸Ax1に近づく方向及び中心軸Ax1から遠ざかる方向に向く外周面46aと内周面421aとの間で摩擦力が生じる。このため、例えば、軸方向に向く二つの面の間で摩擦力を生じさせる場合に比べ、軸方向における回転直動変換機構40の大型化を抑制できる。
【0082】
加えて、回転部材41と直動部材42とに、回転部材41の回転を制限する回転止めを設ける必要が無い。このため、当該回転止めにより回転部材41の回転を確実に制限するための加工設備及び精度管理や、回転部材41の雄ネジ部414と直動部材42の雌ネジ部423とを合わせて設計することが不要となり、回転直動変換機構40のコストを低減できる。
【0083】
摩擦部材46は、中心軸Ax1の径方向において弾性を有する。これにより、例えば摩擦部材46にかかる外周面46aと内周面421aとの摺接状態を良好なものとし、摩擦力を安定して発生させることができる。
【0084】
直動部材42は、回転部材41に対し、外周面46aが内周面421aから離れた非摺動位置P1と、外周面46aが内周面421aに圧接した摺動位置P3,P4と、に移動可能である。これにより、直動部材42が非摺動位置P1から摺動位置P3,P4へ移動することで外周面46aと内周面421aとの間の摩擦力が発生するとともに、摺動位置P3,P4で直動部材42がリリース方向D2に移動するほど外周面46aと内周面421aとの間の摩擦力が増大する。当該摩擦力の変化によるモータ50の駆動電流の変化に応じてECU81によりモータ50の駆動態様を制御することで、直動部材42がフランジ412に軸方向に当接する前に直動部材42を停止させることができる。従って、回転部材41と直動部材42とが固く締まり合うことが抑制される。
【0085】
直動部材42は、回転部材41の逆転に応じてリリース方向D2に直進してピストン22への押圧力を低下させる。これにより、例えばブレーキパッド23を交換するために直動部材42がリリース方向D2に移動させられるが、この際に直動部材42がフランジ412に軸方向に当接する前に直動部材42を停止させることができる。
【0086】
外周面46aと内周面421aとの接触に係る摩擦係数は、ピストンシール24を介したピストン22とボディ21との間の静止摩擦力に起因する中心軸Ax1まわりのピストン22の回転抵抗トルクが、摺動位置P3,P4にある直動部材42に対する回転部材41からの伝達トルクよりも大きくなるように設定される。これにより、ピストン22が中心軸Ax1まわりに回転することが抑制される。
【0087】
直動部材42の後端部421bは、リリース方向D2における外周面46aの端がリリース方向D2における内周面421aの端に接触した状態で、後端部421bと向かい合う回転部材41の平面412aから離れている。リリース方向D2における外周面46aの端がリリース方向D2における内周面421aの端に接触している場合、直動部材42がさらにリリース方向D2に移動しても、外周面46aと内周面421aとの間の接触面積及び摩擦力は略一定となる。すなわち、直動部材42の後端部421bが平面412aに当接する前に、外周面46aと内周面421aとの間の摩擦力は略一定値となる。従って、直動部材42の後端部421bが平面412aに当接する前に、摩擦力によってピストン22が回転したり、回転部材41と直動部材42とが固く締まり合ったりすることが抑制される。
【0088】
モータ50の駆動電流が閾値Ithに達し、閾値Ithに達したことが検知され、ECU81がモータ50の駆動を停止するまで、タイムラグが生じることがある。しかし、本実施形態の車両用ブレーキ10によれば、当該タイムラグの間に、モータ50の駆動電流が許容値Iliを超えて、摩擦力によってピストン22が回転したり、回転部材41と直動部材42とが固く締まり合ったりすることが抑制される。
【0089】
以下、第1の実施形態の変形例について説明する。第1の実施形態において、直動部材42は、回転部材41に対し、摩擦部材46の外周面46aと直動部材42の内周面421aとが接触し続ける範囲内で移動しても良い。この場合、例えば、外周面46aは、ロック方向D1に向かうに従って先細る略円筒状に形成され、径方向の外側と斜めに交差する方向に向く。また、内周面421aは、ロック方向D1に向かうに従って先細る略円筒状に形成され、径方向の内側と斜めに交差する方向に向く。
【0090】
直動部材42が回転部材41に対してリリース方向D2に移動すると、摩擦部材46の外周面46aと直動部材42の内周面421aとにおける垂直抗力が増大し、外周面46aと内周面421aとの間で生じる摩擦力が大きくなる。一方、直動部材42が回転部材41に対してロック方向D1に移動すると、摩擦部材46の外周面46aと直動部材42の内周面421aとにおける垂直抗力が減少し、外周面46aと内周面421aとの間で生じる摩擦力が小さくなる。摩擦部材46が径方向における弾性を有するため、直動部材42が回転部材41に対してロック方向D1及びリリース方向D2のいずれに移動しても、摩擦部材46の外周面46aと直動部材42の内周面421aとの接触が保たれる。
【0091】
以上の第1の実施形態の変形例によれば、摩擦部材46の外周面46aと直動部材42の内周面421aとが互いに圧接した状態で直動部材42が移動することで、外周面46aと内周面421aとの間の摩擦力が変化する。当該摩擦力の変化によるモータ50の駆動電流の変化に応じてECU81によりモータ50の駆動態様を制御することで、直動部材42がフランジ412に軸方向に当接する前に直動部材42を停止させることができる。従って、回転部材41と直動部材42とが固く締まり合うことが抑制される。
【0092】
周方向において、筒状部421の内周面421aと摩擦部材46の外周面46aとの接触にかかる静摩擦係数は、ピストンシール24を介したピストン22とボディ21との間の静止摩擦力に起因する中心軸Ax1まわりのピストン22の回転抵抗トルクが、摺動位置P3,P4にある直動部材42に対する回転部材41からの伝達トルクよりも大きくなるように設定される。このため、摩擦抵抗が生じても、ピストン22が回転中心Axまわりに回転することが抑制される。
【0093】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図6乃至
図9を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0094】
図6は、第2の実施形態に係る回転直動変換機構40を概略的に示す例示的な断面図である。
図7は、第2の実施形態の摺動状態の回転直動変換機構40を概略的に示す例示的な断面図である。
【0095】
図6及び
図7に示すように、第2の実施形態において、摩擦部材46は、回転部材41ではなく、直動部材42に設けられている。なお、摩擦部材46は、回転部材41と直動部材42との両方に設けられても良い。
【0096】
筒状部421の内周面421aに、溝421cが設けられている。溝421cは、内周面421aから径方向の外側に窪むとともに、周方向に延びた窪みである。本実施形態において、溝421cは、筒状部421の後端部421bと雌ネジ部423との間において、筒状部421の内周面421aに設けられている。
【0097】
摩擦部材46は、溝421cに嵌め込まれることで、筒状部421に対して軸方向に移動することを制限される。摩擦部材46は、少なくとも軸方向において筒状部421に固定され、直動部材42と一体的に中心軸Ax1の軸方向に移動可能である。
【0098】
摩擦部材46は、径方向の内側に向く略円筒状の内周面46bを有する。内周面46bは、第2の実施形態における第1の面の一例である。内周面46bは、径方向の内側と斜めに交差する方向に向いても良い。例えば、内周面46bは、ロック方向D1に向かうに従って先細る略円筒状に形成されても良い。
【0099】
摩擦部材46の一部は、筒状部421の内周面421aから径方向の内側に張り出している。このため、摩擦部材46の内周面46bは、筒状部421の内周面421aよりも径方向の内側に位置している。
【0100】
第2の実施形態において、シャフト413の外周面413aは、接触面413dを含む。接触面413dは、外周面413aの一部であり、雄ネジ部414と基端413cとの間に位置している。接触面413dは、径方向の外側に向く略円筒状に形成されている。接触面413dは、第2の実施形態における第2の面の一例である。接触面413dは、径方向の外側と斜めに交差する方向に向いても良い。例えば、接触面413dは、ロック方向D1に向かうに従って先細る略円筒状に形成されても良い。
【0101】
接触面413dは、径方向の外側における雄ネジ部414の端部よりも、径方向の外側に位置している。言い換えると、接触面413dの直径は、雄ネジ部414の外径よりも大きい。
【0102】
軸方向における接触面413dの長さは、軸方向における摩擦部材46の内周面46bの長さ以上である。なお、軸方向における接触面413dの長さは、軸方向における摩擦部材46の内周面46bの長さより短くても良い。
【0103】
第2の実施形態においても、直動部材42は、回転部材41に対し、
図6の非摺動位置P1及び摺動開始位置P2と、
図7の摺動位置P3,P4とに移動可能である。直動部材42が回転部材41に対する摺動開始位置P2からリリース方向D2に離れた摺動位置P3,P4に位置した状態で、摩擦部材46の内周面46bは、シャフト413の接触面413dに接触している。
【0104】
シャフト413の接触面413dの直径は、摩擦部材46の内周面46bの直径よりも僅かに大きい。このため、シャフト413の接触面413dは、摩擦部材46の内周面46bに圧接され、摩擦部材46を径方向の外側に圧縮する。言い換えると、シャフト413の接触面413dが、摩擦部材46の内周面46bを押圧する。これにより、摩擦部材46は、弾性変形を伴ってシャフト413の接触面413dの外側に嵌る。摩擦部材46は、径方向に圧縮された状態で、反力によってシャフト413の接触面413dを押圧する。
【0105】
例えば、回転部材41が中心軸Ax1まわりに逆転すると、摩擦部材46が直動部材42と一体的にリリース方向D2に直進し、互いに圧接している摩擦部材46の内周面46bとシャフト413の接触面413dとが摺動する。このため、摩擦部材46の内周面46bと、シャフト413の接触面413dとの間で、略周方向の摩擦力が生じる。摩擦部材46の内周面46bとシャフト413の接触面413dとの間の摩擦力は、回転部材41の回転に対する抵抗として作用する、本実施形態の摩擦抵抗である。
【0106】
第1の実施形態と同じく、直動部材42が摺動開始位置P2からリリース方向D2に移動するに従って、摩擦部材46の内周面46bとシャフト413の接触面413dとの接触面積が増大するため、摩擦抵抗が増大する。ECU81は、摩擦抵抗の増大に伴ってモータ50の駆動電流が閾値Ithに達すると、モータ50の回転駆動を停止させ、直動部材42を摺動位置P3(又は摺動位置P4)で停止させる。
【0107】
図7に示すように、第2の実施形態の摺動位置P4において、シャフト413の接触面413dのロック方向D1の端は、摩擦部材46の内周面46bのロック方向D1の端に接触している。摺動位置P4において、筒状部421の後端部421bは、フランジ412の平面412aから離れている。
【0108】
また、周方向において、シャフト413の接触面413dと摩擦部材46の内周面46bとの接触にかかる摩擦係数は、ピストンシール24を介したピストン22とボディ21との間の静止摩擦力に起因する中心軸Ax1まわりのピストン22の回転抵抗トルクが、摺動位置P3,P4にある直動部材42に対する回転部材41からの伝達トルクよりも大きくなるように設定される。
【0109】
図8は、第2の実施形態の一つの変形例に係る回転直動変換機構40を概略的に示す例示的な断面図である。
図9は、第2の実施形態の当該変形例の摺動状態の回転直動変換機構40を概略的に示す例示的な断面図である。
【0110】
図8に示すように、直動部材42の雌ネジ部423は、ロック方向D1における筒状部421の端部である前端部421dから、リリース方向D2に離間した位置に設けられている。このため、前端部421dと雌ネジ部423との間において、筒状部421の内周面421aは、径方向の内側に向く略円筒状に形成されている。
【0111】
図8及び
図9の変形例において、溝421cは、筒状部421の前端部421dと雌ネジ部423との間に設けられている。摩擦部材46は、溝421cに嵌め込まれることで、直動部材42に設けられている。
【0112】
雄ネジ部414は、ロック方向D1におけるシャフト413の端部である先端413eから、リリース方向D2に離間した位置に設けられている。第2の実施形態の変形例において、接触面413dは、雄ネジ部414と先端413eとの間に位置している。
【0113】
図8及び
図9の変形例においても、直動部材42が回転部材41に対する摺動開始位置P2からリリース方向D2に離れた摺動位置P3,P4に位置した状態で、摩擦部材46の内周面46bは、シャフト413の接触面413dに圧接している。摩擦部材46の内周面46bがシャフト413の接触面413dに圧接する状態で直動部材42が直進することで、内周面46bと接触面413dとの間で摩擦力が生じる。
【0114】
以上の説明のように、摩擦部材46は、回転部材41に設けられても良いし、直動部材42に設けられても良い。また、上記実施形態における摩擦部材46は、回転部材41及び直動部材42とは別個の部品であるが、回転部材41又は直動部材42と一体の摩擦部が設けられても良い。例えば、回転部材41の外周面413a及び直動部材42の内周面421aの少なくとも一方が摩擦部の一例であっても良い。
【0115】
以下、第2の実施形態の他の変形例について説明する。第2の実施形態において、直動部材42は、回転部材41に対し、摩擦部材46の内周面46bと回転部材41の接触面413dとが接触し続ける範囲内で移動しても良い。この場合、例えば、内周面46bは、ロック方向D1に向かうに従って先細る略円筒状に形成され、径方向の内側と斜めに交差する方向に向く。また、接触面413dは、ロック方向D1に向かうに従って先細る略円筒状に形成され、径方向の外側と斜めに交差する方向に向く。
【0116】
直動部材42が回転部材41に対してリリース方向D2に移動すると、摩擦部材46の内周面46bと回転部材41の接触面413dとにおける垂直抗力が増大し、内周面46bと接触面413dとの間で生じる摩擦力が大きくなる。一方、直動部材42が回転部材41に対してロック方向D1に移動すると、摩擦部材46の内周面46bと回転部材41の接触面413dとにおける垂直抗力が減少し、内周面46bと接触面413dとの間で生じる摩擦力が小さくなる。摩擦部材46が径方向における弾性を有するため、直動部材42が回転部材41に対してロック方向D1及びリリース方向D2のいずれに移動しても、摩擦部材46の内周面46bと回転部材41の接触面413dとの接触が保たれる。
【0117】
以上の第2の実施形態の変形例によれば、摩擦部材46の内周面46bと回転部材41の接触面413dとが互いに圧接した状態で直動部材42が移動することで、内周面46bと接触面413dとの間の摩擦力が変化する。当該摩擦力の変化によるモータ50の駆動電流の変化に応じてECU81によりモータ50の駆動態様を制御することで、直動部材42がフランジ412に軸方向に当接する前に直動部材42を停止させることができる。従って、回転部材41と直動部材42とが固く締まり合うことが抑制される。
【0118】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について、
図10乃至
図15を参照して説明する。
図10は、第3の実施形態に係る車両用ブレーキ102を概略的に示す例示的な背面図である。
図11は、第3の実施形態の車両用ブレーキ102を概略的に示す例示的な側面図である。
図12は、第3の実施形態の非制動状態における車両用ブレーキ102の移動機構103を概略的に示す例示的な側面図である。
図13は、第3の実施形態の制動状態における車両用ブレーキ102の移動機構103を概略的に示す例示的な側面図である。
【0119】
図10に示すように、車両用ブレーキ102は、円筒状のホイール101の周壁111の内側に収容されている。第3の実施形態における車両用ブレーキ102は、いわゆるドラムブレーキである。
【0120】
図11及び
図12に示すように、車両用ブレーキ102は、二つのブレーキシュー121と、復帰部材123と、ドラムロータ124と、ホイールシリンダ125と、バックプレート126とを有する。ブレーキシュー121は、制動部材の一例である。
【0121】
二つのブレーキシュー121は、車両の前後方向に離間している。
図12に示すように、二つのブレーキシュー121は、円筒状のドラムロータ124の内周面124aに沿って略円弧状に延びている。ドラムロータ124は、中心軸Ax21まわりに、ホイール101と一体的に回転する。
【0122】
車両用ブレーキ102は、二つのブレーキシュー121を、円筒状のドラムロータ124の内周面124aに押圧させるよう移動させる。これにより、ブレーキシュー121とドラムロータ124との摩擦によって、ドラムロータ124ひいてはホイール101が制動される。
【0123】
車両用ブレーキ102は、ブレーキシュー121を動かすアクチュエータとして、
図11のホイールシリンダ125と、
図10のモータ142とを有する。ホイールシリンダ125及びモータ142はそれぞれ、二つのブレーキシュー121を動かすことができる。
【0124】
ホイールシリンダ125は、油圧によって動作し、例えば、走行中の制動に用いられる。モータ142は、ECU105(
図14に示す)の制御に基づく通電によって作動し、例えば、駐車時の制動に用いられる。すなわち、車両用ブレーキ102は、いわゆる電動パーキングブレーキでもある。なお、モータ142は、走行中の制動に用いられても良いし、車両用ブレーキ102の専用のコントローラによって制御されても良い。また、ECU105は、電子制御装置とも称され得る。
【0125】
図10,11に示すように、バックプレート126は、中心軸Ax21と交差(直交)する略円盤状に形成される。
図10に示されるように、車両用ブレーキ102の構成部品は、バックプレート126の両側に設けられている。バックプレート126は、車両用ブレーキ102の各構成部品を直接的又は間接的に支持するとともに、車体に接続される。
【0126】
車両用ブレーキ102は、駆動輪及び非駆動輪のいずれにも用いることができる。車両用ブレーキ102が駆動輪に用いられる場合、
図11に示すバックプレート126に設けられた開口部126aを車軸が貫通する。
【0127】
ホイールシリンダ125及びブレーキシュー121は、バックプレート126の車幅方向外側に設けられている。ブレーキシュー121は、バックプレート126に移動可能に支持されている。
【0128】
ブレーキシュー121のそれぞれの下端部121aは、
図12に示す中心軸Ax22まわりに回転可能に、バックプレート126に支持されている。中心軸Ax22は、ホイール101の中心軸Ax21と略平行である。
【0129】
図11に示すように、ホイールシリンダ125は、バックプレート126の略上端部に支持されている。ホイールシリンダ125は、車両の前後方向(
図11の左右方向)に突出可能な二つの可動部(ピストン)を有する。ホイールシリンダ125は、加圧に応じて、二つの可動部を突出させる。突出した二つの可動部は、それぞれ、ブレーキシュー121の上端部121bを押す。
【0130】
ホイールシリンダ125の突出した二つの可動部により、二つのブレーキシュー121は、それぞれ、中心軸Ax22まわりに回転し、上端部121b同士が車両の前後方向に互いに離間するように移動する。これにより、二つのブレーキシュー121は、ホイール101の中心軸Ax21の径方向外側に移動する。
【0131】
各ブレーキシュー121の外周部に、円筒面に沿う帯状のライニング121cが設けられている。
図13に示すように、二つのブレーキシュー121が中心軸Ax21の径方向外側へ移動することにより、ライニング121cがドラムロータ124の内周面124aに押圧される。ライニング121cと内周面124aとの摩擦によって、ドラムロータ124ひいてはホイール101が制動される。
【0132】
図11に示す復帰部材123は、ホイールシリンダ125によるブレーキシュー121を押す動作が解除された場合に、二つのブレーキシュー121を
図13の制動位置Pbから、
図12の非制動位置Pn(初期位置)へ動かす。制動位置Pbにおいて、二つのブレーキシュー121は、ドラムロータ124の内周面124aに圧接される。非制動位置Pnにおいて、二つのブレーキシュー121は、ドラムロータ124の内周面124aへの押圧力を低下させており、本実施形態では内周面124aから離れている。
【0133】
復帰部材123は、例えば、コイルスプリングのような弾性部材を有する。復帰部材123は、各ブレーキシュー121に、もう一方のブレーキシュー121に近付くとともにドラムロータ124の内周面124aから離れる方向の力を与える。
【0134】
車両用ブレーキ102は、
図12に示す移動機構103と、
図10に示す駆動機構104とをさらに有する。移動機構103は、モータ142を含む駆動機構104の作動に基づいて、二つのブレーキシュー121を非制動位置Pnから制動位置Pbに移動させる。
【0135】
図12に示すように、移動機構103は、バックプレート126の車幅方向外側に設けられている。移動機構103は、レバー131と、ケーブル132と、ストラット133と、を有する。ケーブル132は、作動部材の一例である。
【0136】
レバー131は、例えば、二つのブレーキシュー121のうち
図12の左側のブレーキシュー121Lと、バックプレート126との間で、当該ブレーキシュー121L及びバックプレート126に中心軸Ax21の軸方向に重なるように設けられている。また、レバー131は、ブレーキシュー121Lに、中心軸Ax23まわりに回転可能に支持されている。
【0137】
中心軸Ax23は、中心軸Ax22と略平行である。中心軸Ax23は、ブレーキシュー121Lの下端部121aに位置する中心軸Ax22から離れており、ブレーキシュー121Lの上端部121bに位置している。
【0138】
ケーブル132は、レバー131の下端部131aを、他方(
図12の右側)のブレーキシュー121Rに近付く方向に動かす。ケーブル132は、バックプレート126に沿って移動する。
【0139】
ストラット133は、レバー131と、当該レバー131が支持されるブレーキシュー121Lとは別のブレーキシュー121Rとの間に介在し、レバー131とブレーキシュー121Rとの間で突っ張る。レバー131とストラット133との接続位置Pc1は、中心軸Ax23と、ケーブル132の端部132aとレバー131との接続位置Pc2との間に位置している。
【0140】
図13に示すように、ケーブル132が引かれて
図13の右方へ動くことにより、レバー131は、ブレーキシュー121Rに近付く方向へ動き(矢印a)、ストラット133を介してブレーキシュー121Rを押す(矢印b)。これにより、ブレーキシュー121Rは、非制動位置Pnから中心軸Ax22まわりに回転し(矢印c)、制動位置Pbでドラムロータ124の内周面124aに押圧される。このとき、ケーブル132とレバー131との接続位置Pc2は力点、中心軸Ax23は支点、レバー131とストラット133との接続位置Pc1は作用点に相当する。
【0141】
ブレーキシュー121Rが内周面124aに接触した状態で、ストラット133がブレーキシュー121Rを押す方向へレバー131がさらに動く(矢印b)。ストラット133が突っ張ることにより、レバー131は、ストラット133との接続位置Pc1を支点として、
図13における反時計回りに回転する(矢印d)。これにより、ブレーキシュー121Lは、非制動位置Pnから中心軸Ax22まわりに回転し、制動位置Pbでドラムロータ124の内周面124aに押圧される。
【0142】
以上のように、移動機構103の作動により、ブレーキシュー121L,121Rは、いずれも
図12の非制動位置Pnから
図13の制動位置Pbへ動く。ブレーキシュー121Rがドラムロータ124の内周面124aに接触した以降の状態では、レバー131とストラット133との接続位置Pc1が支点となる。ブレーキシュー121L,121Rの移動量は微少であって、例えば、1mm以下である。
【0143】
図14は、第3の実施形態の非制動状態における駆動機構104を概略的に示す例示的な断面図である。
図15は、第3の実施形態の制動状態における駆動機構104を概略的に示す例示的な断面図である。
【0144】
駆動機構104は、上述した移動機構103を介して、二つのブレーキシュー121を、非制動位置Pnから制動位置Pbへ動かす。駆動機構104は、バックプレート126の車幅方向内側に設けられ、バックプレート126に固定されている。ケーブル132は、バックプレート126に設けられた開口部126bを貫通し、駆動機構104に導入されている。
【0145】
図14に示されるように、駆動機構104は、ハウジング141と、モータ142と、回転伝達機構150と、回転直動変換機構160とを有する。回転直動変換機構160は、回転直動変換装置の一例である。
【0146】
ハウジング141は、モータ142、回転伝達機構150、及び回転直動変換機構160を支持している。ハウジング141は、例えば、ネジのような結合具、又はインサート成形のような種々の手段によって一体化された、ボディ141a、ロアケース141b、インナカバー141c、及びアッパケース141dを有する。ハウジング141は、この例に限られない。
【0147】
ハウジング141の内部に、収容室Rが設けられている。モータ142、回転伝達機構150、及び回転直動変換機構160は、収容室Rに収容され、収容室Rを囲むハウジング141の壁部141eによって覆われている。
【0148】
モータ142は、ケース142aと、ケース142aに収容された種々の収容部品とを有する。収容部品は、例えば、出力シャフト142b、ステータ、ロータ、コイル、及び磁石を含む。
【0149】
以下の説明において、モータ142の出力シャフト142bの中心軸Ax24に沿う一方向(
図14における右方向)をリリース方向D3、中心軸Ax24に沿う他方向(
図14における左方向)をロック方向D4と称する。リリース方向D3は、第3の実施形態における第2の方向の一例である。ロック方向D4は、第3の実施形態における第1の方向の一例である。ロック方向D4は、リリース方向D3の反対の方向である。
【0150】
出力シャフト142bは、ケース142aからリリース方向D3に突出している。モータ142は、制御信号に基づく駆動電力によって駆動され、出力シャフト142bを中心軸Ax24まわりに回転させる。
【0151】
回転伝達機構150は、ハウジング141に回転可能に支持された複数のギヤを含む減速機である。複数のギヤは、例えば、第1のギヤ151、第2のギヤ152、及び第3のギヤ153である。なお、回転伝達機構150は、この例に限らず、例えば、ベルトやプーリ等を用いた回転伝達機構であっても良い。
【0152】
第1のギヤ151は、モータ142の出力シャフト142bに取り付けられ、出力シャフト142bと一体に、中心軸Ax24まわりに回転する。第1のギヤ151は、ドライブギヤと称され得る。
【0153】
第2のギヤ152は、中心軸Ax24と平行な中心軸Ax25まわりに回転する。第2のギヤ152は、入力ギヤ152aと出力ギヤ152bとを含む。入力ギヤ152aは、第1のギヤ151と噛み合っている。入力ギヤ152aの歯数は、第1のギヤ151の歯数よりも多い。よって、第2のギヤ152は、第1のギヤ151よりも低い回転速度に減速される。出力ギヤ152bは、入力ギヤ152aに対してロック方向D4側に位置する。第2のギヤ152は、アイドラギヤと称され得る。
【0154】
第3のギヤ153は、中心軸Ax24と平行な中心軸Ax26まわりに回転する。中心軸Ax26は、第3の実施形態における回転中心の一例である。第3のギヤ153は、第2のギヤ152の出力ギヤ152bと噛み合っている。第3のギヤ153の歯数は、出力ギヤ152bの歯数よりも多い。よって、第3のギヤ153は、第2のギヤ152よりも低い回転速度に減速される。第3のギヤ153は、ドリブンギヤと称され得る。
【0155】
回転直動変換機構160は、回転部材170と、直動部材180とを有する。本実施形態における回転直動変換機構160は、回転部材170が雌ネジ(171b)を有し、直動部材180が雄ネジ(181a)を有する、いわゆるドライブナットタイプの機構である。回転部材170は、中心軸Ax26まわり回転する。回転部材170は、周壁171と、フランジ172とを有する。
【0156】
周壁171は、中心軸Ax26を中心とした略円筒状に形成される。周壁171の内部に、中心軸Ax26に沿った貫通孔171aが設けられている。貫通孔171aは、略円形の断面を有する。貫通孔171aの内周面に、雌ネジ171bが設けられる。
【0157】
フランジ172は、中心軸Ax26と交差(直交)する円環状に形成される。フランジ172は、周壁171から中心軸Ax26の径方向外側に張り出している。フランジ172の外縁には、第3のギヤ153が設けられている。
【0158】
周壁171は、フランジ172からロック方向D4に延びる第1の延部171cと、フランジ172からリリース方向D3に延びる第2の延部171dとを有する。第1の延部171cは、例えば、アッパケース141dに囲まれる。第2の延部171dは、例えば、ボディ141aに囲まれる。第1の延部171cは、第2の延部171dよりも長い。
【0159】
第2の延部171dの外周面と、ボディ141aに設けられた第1の貫通孔141fの内周面との間に、例えば、スライドブッシュやころ軸受のようなラジアルベアリング144が設けられている。また、リリース方向D3におけるフランジ172の端面172aとロック方向D4におけるボディ141aの端面との間に、例えばころ軸受のようなスラストベアリング145が設けられている。
【0160】
回転部材170は、ラジアルベアリング144及びスラストベアリング145を介して、ボディ141aに、中心軸Ax26まわりに回転可能に支持されている。回転部材170は、第2のギヤ152と第3のギヤ153との噛み合いにより、第2のギヤ152によって回転駆動される。
【0161】
直動部材180は、中心軸Ax26に沿って延び、回転部材170を貫通している。直動部材180は、棒状部181と、連結部182と、フランジ183とを有する。棒状部181は、周壁171の貫通孔171aに挿通されている。棒状部181の断面は略円形である。棒状部181の外周面に、回転部材170の雌ネジ171bと噛み合う雄ネジ181aが設けられている。連結部182は、ボディ141aの第1の貫通孔141fの内部に位置している棒状部181の端部に設けられ、ケーブル132の端部132bと連結されている。フランジ183は、ボディ141aの第1の貫通孔141fの内部に位置し、棒状部181の外周面から中心軸Ax26の径方向外側に張り出している。フランジ183は、例えば、多角形状の断面を有する。
【0162】
フランジ183の外周面と、ボディ141aの第1の貫通孔141fの内周面との間には、互いに平行な状態において微小な隙間が設けられている。このため、ボディ141aは、直動部材180が中心軸Ax26まわりに回転することを制限する。一方で、フランジ183の外周面と、ボディ141aの第1の貫通孔141fの内周面とは、中心軸Ax26に沿って延びている。このため、ボディ141aは、直動部材180の中心軸Ax26まわりの回転を制限しながら、直動部材180を中心軸Ax26に沿って案内することができる。
【0163】
モータ142が駆動すると、モータ142の出力シャフト142bの回転が、回転伝達機構150を介して回転部材170に伝達され、回転部材170が回転する。回転部材170の雌ネジ171b及び直動部材180の雄ネジ181aの噛み合いと、ボディ141aによる直動部材180の回転の制限とにより、直動部材180は、中心軸Ax26に沿って
図14の非制動位置Pnと
図15の制動位置Pbとの間で移動する。すなわち、モータ142によって回転部材170が中心軸Ax26まわりに回転駆動されると、直動部材180は、回転部材170の回転に応じて中心軸Ax26に沿う方向に直進する。
【0164】
直動部材180は、回転部材170の一方向の回転(正転)に応じてロック方向D4に直進し、回転部材170に対して非制動位置Pnから制動位置Pbに移動する。制動位置Pbは、第3の実施形態における第1の位置の一例である。非制動位置Pnは、第3の実施形態における第2の位置の一例である。
【0165】
直動部材180は、非制動位置Pnから制動位置Pbに移動することで、連結部182に連結されたケーブル132を引き、ブレーキシュー121を作動させる。このように、直動部材180は、ケーブル132を介してブレーキシュー121をドラムロータ124の内周面124aに押圧させ、ドラムロータ124を制動する。ケーブル132は、直動部材180から、ブレーキシュー121を作動させる力(引張)を受ける。
【0166】
直動部材180は、回転部材170の逆方向の回転(逆転)に応じてリリース方向D3に直進し、回転部材170に対して制動位置Pbから非制動位置Pnに移動する。非制動位置Pnは、制動位置Pbに対してリリース方向D3側に位置している。直動部材180は、制動位置Pbから非制動位置Pnに移動することで、引っ張っていたケーブル132を戻し、ドラムロータ124の内周面124aに対するブレーキシュー121の押圧力を低下させる。
【0167】
第3の実施形態において、直動部材180の棒状部181に、摩擦部190が設けられる。摩擦部190は、棒状部181の一部であって、回転部材170の雌ネジ171bに対してロック方向D4側に位置している。摩擦部190は、二つの弾性部191と、二つの突起192とを有する。
【0168】
棒状部181に開口181bが設けられることで、棒状部181に二つの弾性部191が形成される。開口181bは、棒状部181を、中心軸Ax26の径方向に貫通している孔である。二つの弾性部191は、中心軸Ax26の径方向において、開口181bの両側に位置している。言い換えると、二つの弾性部191の間に、開口181bが設けられる。
【0169】
中心軸Ax26の軸方向における開口181bの長さは、開口181bの幅(二つの弾性部191の間の距離)よりも長い。このため、二つの弾性部191は、開口181bの内側に向かって、互いに近付くように弾性変形できる。すなわち、摩擦部190は、中心軸Ax26の径方向において弾性を有する。
【0170】
二つの突起192は、二つの弾性部191の外周面191aから、中心軸Ax26の径方向外側に突出する。外周面191aは、中心軸Ax26の径方向外側に向く。二つの突起192は、互いに反対方向に突出する。突起192は、弾性部191と一体に形成される。しかし、突起192は、例えば、弾性部191に取り付けられたネジやピンのような別部材によって形成されても良い。
【0171】
突起192は、表面192aを有する。表面192aは、第3の実施形態における第1の面の一例である。表面192aは、中心軸Ax26から遠ざかる方向に向く略ドーム状の曲面である。
【0172】
回転部材170の周壁171は、接触面171eを有する。接触面171eは、第3の実施形態における第2の面の一例である。接触面171eは、周壁171の貫通孔171aの内周面の一部であり、中心軸Ax26に近づく方向に向く。接触面171eは、雌ネジ171bに対してロック方向D4側に位置し、略円筒状に形成される。
【0173】
図15に示すように、制動位置Pbにおいて、摩擦部190の突起192は、回転部材170に対してロック方向D4に離れている。このため、突起192の表面192aが、回転部材170の接触面171eから離れている。
【0174】
図14に示すように、非制動位置Pnにおいて、摩擦部190の突起192は、回転部材170の貫通孔171aの内部に位置している。一方の突起192の表面192aの頂点と、他方の突起192の表面192aの頂点との間の距離(摩擦部190の最大直径)は、回転部材170の接触面171eの直径よりも僅かに大きい。このため、非制動位置Pnにおいて、突起192が回転部材170に干渉し、二つの弾性部191が互いに近づく方向に弾性変形するとともに、突起192の表面192aが回転部材170の接触面171eに圧接される。
【0175】
回転部材170が中心軸Ax26まわりに回転すると、互いに圧接している突起192の表面192aと回転部材170の接触面171eとが摺動する。このため、突起192の表面192aと回転部材170の接触面171eとの間で、略周方向の摩擦力が生じる。突起192の表面192aと回転部材170の接触面171eとの間の摩擦力は、回転部材41の回転に対する抵抗として作用し、以下、摩擦抵抗と称される。
【0176】
以上の構成において、直動部材180が回転部材170の回転(逆転)に応じて制動位置Pbから非制動位置Pnに移動し、突起192の表面192aと回転部材170の接触面171eとが互いに圧接する状態で、直動部材180がリリース方向D3に直進することで、摩擦抵抗が生じる。表面192aがドーム状の曲面であるため、表面192aが接触面171eに接触を開始してから、表面192aの頂点が接触面171eに接触するまでの間、直動部材180がリリース方向D3に移動するに従って、弾性部191の変形量が増大する。これにより、表面192a及び接触面171eでの垂直抗力が増大し、摩擦抵抗も増大する。
【0177】
摩擦抵抗が増大すると、回転部材170の抵抗トルクが増大し、モータ142の負荷トルク及び駆動電流も増大する。このため、モータ142を制御するECU105は、第1の実施形態のECU81と同じく、モータ142の駆動電流の大きさによって、摩擦抵抗の増大を検知することができる。ECU105は、摩擦抵抗によるモータ142の駆動電流の変化に応じてモータ142の駆動態様を制御することで、直動部材180を非制動位置Pnで停止させる。
【0178】
以上の第3の実施形態の車両用ブレーキ102によれば、直動部材180と一体に設けられた摩擦部190の弾性部191が弾性変形することで、突起192の表面192aが回転部材170の接触面171eに圧接する。これにより、部品点数の増加が抑制され、車両用ブレーキ102のコストの増加が抑制される。
【0179】
直動部材180は、回転部材170の逆転に応じてリリース方向D3に直進してドラムロータ124に対するブレーキシュー121の押圧力を低下させる。これにより、例えばリリース方向D3に移動する直動部材180が他の部材に軸方向に当接する前に直動部材180を停止させるなど、直動部材180を制動開始前の待機位置(初期位置)等に精度良く戻すことができる。
【0180】
突起192の表面192aは、弾性部191が中心軸Ax26の径方向に弾性変形することで、回転部材170の接触面171eに中心軸Ax26の径方向に圧接する。これにより、弾性部191による荷重がハウジング141に作用することが抑制され、ハウジング141を樹脂のような軽い材料により作ることができる。
【0181】
図16は、第3の実施形態の変形例に係る駆動機構104を概略的に示す例示的な断面図である。
図16に示すように、開口181bは、ロック方向D4における棒状部181の端部181cからリリース方向D3に窪む切欠きであっても良い。この変形例によれば、二つの弾性部191が片持ち梁状に弾性変形することができる。
【0182】
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態について、
図17乃至
図19を参照して説明する。第4の実施形態の車両用ブレーキ102は、第3の実施形態と同じく、いわゆるドラムブレーキである。
図17は、第4の実施形態に係る駆動機構104を概略的に示す例示的な断面図である。
図17に示すように、第4の実施形態における回転直動変換機構160は、回転部材170が雄ネジ(171f)を有し、直動部材180が雌ネジ(185b)を有する、いわゆるドライブシャフトタイプの機構である。直動部材180は、周壁185と、フランジ186とを有する。
【0183】
周壁185は、回転部材170に対して径方向外側に位置し、中心軸Ax26に沿って延びている。周壁185は、中心軸Ax26及び回転部材170を囲む円筒状に形成される。周壁185の内部に、中心軸Ax26に沿って直動部材180を貫通する貫通孔185aが設けられている。回転部材170の周壁171の第1の延部171cは、貫通孔185aを中心軸Ax26の軸方向に貫通している。貫通孔185aの内周面に、雌ネジ185bが設けられる。
【0184】
フランジ186は、多角形の板状に形成される。フランジ186は、周壁185から中心軸Ax26の径方向外側に張り出している。フランジ186は、中心軸Ax26の軸方向に延びる回り止め部材187に囲まれている。
【0185】
周壁185は、フランジ186からロック方向D4に延びる第1の延部185cと、フランジ186からリリース方向D3に延びる第2の延部185dとを有する。第1の延部185cの長さは、第2の延部185dの長さよりも長い。
【0186】
回り止め部材187は、側壁187aを有している。側壁187aは、フランジ186に対して中心軸Ax26の径方向外側に位置し、中心軸Ax26の軸方向に延びている。側壁187aは、中心軸Ax26及び回転部材170の周囲を取り囲んでおり、側壁187aの形状は、管状である。
【0187】
回り止め部材187は、例えばボディ141aやアッパケース141dのようなハウジング141に固定されている。また、フランジ186の外面186aと側壁187aの内面187bとの間には、互いに平行な状態において微小な隙間が設けられている。このため、外面186aの中心軸Ax26まわりの回転が内面187bによって制限され、直動部材180の回転が回り止め部材187によって制限される。一方で、外面186a及び内面187bは、中心軸Ax26の軸方向に延びている。このため、回り止め部材187は、直動部材180の中心軸Ax26まわりの回転を制限しながら、直動部材180を中心軸Ax26に沿って案内することができる。
【0188】
ロック方向D4における回り止め部材187の端部に、側壁187aから中心軸Ax26の径方向内側に突出した複数の突起187cが設けられている。突起187cの内端は、直動部材180の周壁185よりも、中心軸Ax26の径方向外側に位置している。
【0189】
ケーブル132は、回転部材170の貫通孔171aを貫通し、中心軸Ax26の軸方向に延びている。ケーブル132の端部132bは、ケーブルエンド188に結合されている。ケーブルエンド188は、筒状部188aとフランジ188bとを有する。
【0190】
筒状部188aは、ケーブル132の端部132bに、外側からカシメられることにより、端部132bに結合される。フランジ188bは、筒状部188aから、中心軸Ax26の径方向外側に張り出している。フランジ188bの外径は、直動部材180の周壁185の内径よりも大きく、且つ回り止め部材187の突起187cの内径よりも大きい。
【0191】
ケーブルエンド188と直動部材180とは、互いに別の部品であり、軸方向に離間可能である。ケーブル132が、例えば
図11の復帰部材123によってリリース方向D3に引かれているため、ケーブルエンド188は、直動部材180又は回り止め部材187の突起187cに押し付けられる。
【0192】
第4の実施形態において、回転部材170は、直動部材180の雌ネジ185bと噛み合う雄ネジ171fを有する。雄ネジ171fは、回転部材170の周壁171の第1の延部171cの外周面に設けられる。
【0193】
モータ142が駆動すると、回転部材170は、回転伝達機構150を介して回転を伝達されることで、モータ142の出力シャフト142bと連動して中心軸Ax26まわりに回転する。回転部材170の雄ネジ171f及び直動部材180の雌ネジ185bの噛み合いと、回り止め部材187による直動部材180の回転の制限とにより、直動部材180は、回転部材170の回転に伴って、中心軸Ax26に沿って非制動位置Pnと制動位置Pbとの間で直動する。
【0194】
直動部材180は、回転部材170の正転に応じてロック方向D4に直進し、回転部材170に対して非制動位置Pnから制動位置Pbに移動する。直動部材180は、非制動位置Pnから制動位置Pbに移動することで、ケーブルエンド188を介してケーブル132を引き、ブレーキシュー121をドラムロータ124の内周面124aに押圧させ、ドラムロータ124を制動する。
【0195】
直動部材180は、回転部材170の逆転に応じてリリース方向D3に直進し、回転部材170に対して制動位置Pbから非制動位置Pnに移動する。直動部材180は、制動位置Pbから非制動位置Pnに移動することで、引っ張っていたケーブル132を戻し、ドラムロータ124の内周面124aに対するブレーキシュー121の押圧力を低下させる。非制動位置Pnにおいて、直動部材180は、ケーブルエンド188から離れていても良い。この場合、回り止め部材187の突起187cが、ケーブルエンド188のフランジ188bを支持する。
【0196】
図18は、第4の実施形態の非制動状態における回転直動変換機構160を概略的に示す例示的な斜視図である。
図19は、第4の実施形態の制動状態における回転直動変換機構160を概略的に示す例示的な斜視図である。
【0197】
図18に示すように、第4の実施形態において、直動部材180の周壁185に、摩擦部190が設けられる。摩擦部190は、周壁185の一部であって、第2の延部185dに設けられる。摩擦部190は、二つの弾性部195を有する。
【0198】
周壁185に二つの切欠き185eが設けられることで、周壁185に二つの弾性部195が形成される。切欠き185eは、リリース方向D3における周壁185の端部185fから、ロック方向D4に窪む。二つの弾性部195は、中心軸Ax26を挟んで互いに反対側に設けられる。二つの弾性部195の間に、切欠き185eが設けられている。
【0199】
二つの弾性部195は、中心軸Ax26の径方向外側に向かって、互いに遠ざかるように弾性変形できる。すなわち、摩擦部190は、中心軸Ax26の径方向において弾性を有する。
【0200】
図17に示すように、弾性部195は、内周面195aを有する。内周面195aは、第4の実施形態における第1の面の一例である。内周面195aは、貫通孔185aの内周面の一部であり、中心軸Ax26に近づく方向であって、中心軸Ax26の径方向内側に向く。弾性部195及び内周面195aは、雌ネジ185bに対してリリース方向D3側に位置している。
【0201】
回転部材170の周壁171は、接触面171gを有する。接触面171gは、第4の実施形態における第2の面の一例である。接触面171gは、周壁171の第1の延部171cの外周面の一部であり、中心軸Ax26から遠ざかる方向に向く略円筒状の面である。接触面171gは、雄ネジ171fに対してリリース方向D3側に位置する。接触面171gの直径は、雄ネジ171fの外径よりも大きい。
【0202】
図19に示す制動位置Pbにおいて、摩擦部190の弾性部195は、回転部材170の接触面171gに対してリリース方向D3に離れている。このため、弾性部195の内周面195aが、回転部材170の接触面171gから離れている。
【0203】
図18に示す非制動位置Pnにおいて、回転部材170の接触面171gは、弾性部195の内周面195aに面する。回転部材170の接触面171gの直径は、弾性部195の内周面195aの直径よりも僅かに大きい。このため、非制動位置Pnにおいて、二つの弾性部195が互いに遠ざかる方向に弾性変形するとともに、弾性部195の内周面195aが回転部材170の接触面171gに圧接される。
【0204】
回転部材170が中心軸Ax26まわりに回転すると、互いに圧接している弾性部195の内周面195aと回転部材170の接触面171gとが摺動する。このため、弾性部195の内周面195aと回転部材170の接触面171gとの間で、略周方向の摩擦力が生じる。弾性部195の内周面195aと回転部材170の接触面171gとの間の摩擦力は、回転部材41の回転に対する抵抗として作用し、以下、摩擦抵抗と称される。
【0205】
以上の構成において、直動部材180が回転部材170の回転(逆転)に応じて制動位置Pbから非制動位置Pnに移動し、弾性部195の内周面195aと回転部材170の接触面171gとが互いに圧接する状態で、直動部材180がリリース方向D3に直進することで、摩擦抵抗が生じる。内周面195aが接触面171gに接触を開始してから、直動部材180がリリース方向D3に移動するに従って、内周面195aと接触面171gとの接触面積が増大するため、摩擦抵抗も増大する。ECU105は、摩擦抵抗によるモータ142の駆動電流の変化に応じてモータ142の駆動態様を制御することで、直動部材180を非制動位置Pnで停止させる。当該構成により、回転部材170の雄ネジ171fと直動部材180の雌ネジ185bとが固く締まり合うことが抑制される。
【0206】
図20は、第4の実施形態の変形例に係る回転直動変換機構160を概略的に示す例示的な断面図である。第4の実施形態において、摩擦部190は直動部材180の一部であるが、本変形例において摩擦部材199が回転部材170に取り付けられている。摩擦部材199は、本変形例における摩擦部の一例である。
【0207】
摩擦部材199は、第1の実施形態の摩擦部材46と同様に、合成ゴムによって作られ、略円環状に形成されている。摩擦部材199は、中心軸Ax26の径方向において弾性を有する。摩擦部材199は、周壁171の第1の延部171cの外周面に取り付けられている。
【0208】
例えば、摩擦部材199は、第1の延部171cの外周面に設けられた溝171hに嵌められ、中心軸Ax26の軸方向の移動を制限される。このように回転部材170に設けられた摩擦部材199は、回転部材170と一体的に中心軸Ax26まわりに回転可能である。摩擦部材199は、雄ネジ171fとフランジ172との間に位置している。
【0209】
摩擦部材199は、中心軸Ax26の径方向の外側に向く略円筒状の外周面199aを有する。外周面199aは、本変形例における第1の面の一例である。摩擦部材199の外周面199aは、雄ネジ171fよりも中心軸Ax26の径方向の外側に位置している。
【0210】
本変形例において、直動部材180の周壁185は、接触面185gを有する。接触面185gは、本変形例における第2の面の一例である。接触面185gは、中心軸Ax26の径方向の内側に向く略円筒状に形成される。接触面185gは、雌ネジ185bと、リリース方向D3における周壁185の端部185fと、の間に位置している。
【0211】
第4の実施形態と同様に、制動位置Pbにおいて、摩擦部材199は、直動部材180の接触面185gに対してリリース方向D3に離れている。このため、摩擦部材199の外周面199aが、直動部材180の接触面185gから離れている。
【0212】
図20に示す非制動位置Pnにおいて、直動部材180の接触面185gは、摩擦部材199の外周面199aに面する。直動部材180の接触面185gの直径は、摩擦部材199の外周面199aの直径よりも僅かに小さい。このため、非制動位置Pnにおいて、直動部材180の接触面185gは、摩擦部材199を中心軸Ax26の径方向の内側に圧縮し、摩擦部材199の外周面199aに圧接される。
【0213】
回転部材170が中心軸Ax26まわりに回転すると、互いに圧接している摩擦部材199の外周面199aと直動部材180の接触面185gとが摺動する。このため、外周面199aと接触面185gとの間で、略周方向の摩擦力が生じる。外周面199aと接触面185gとの間の摩擦力は、回転部材41の回転に対する抵抗として作用し、以下、摩擦抵抗と称される。
【0214】
以上の構成において、直動部材180が回転部材170の回転(逆転)に応じて制動位置Pbから非制動位置Pnに移動し、摩擦部材199の外周面199aと直動部材180の接触面185gとが互いに圧接する状態で、直動部材180がリリース方向D3に直進することで、摩擦抵抗が生じる。外周面199aが接触面185gに接触を開始してから、直動部材180がリリース方向D3に移動するに従って、外周面199aと接触面185gとの接触面積が増大するため、摩擦抵抗も増大する。ECU105は、摩擦抵抗の変化に基づき、直動部材180を非制動位置Pnで停止させる。
【0215】
直動部材180が停止される非制動位置Pnにおいて、直動部材180の接触面185gのリリース方向D3の端は、摩擦部材199の外周面199aのリリース方向D3の端に接触している。さらに、非制動位置Pnにおいて、直動部材180の周壁185の端部185fは、ロック方向D4に向いて当該端部185fと向かい合うフランジ172の平面172bから離れている。このため、非制動位置Pnにおいて、直動部材180はリリース方向D3にさらに移動可能である。平面172bは、第3の面の一例である。なお、非制動位置Pnは、この例に限られない。周壁185の端部185fがフランジ172の平面172bに当接した場合、フランジ172の平面172bは、直動部材180のリリース方向D3への移動を規制する。
【0216】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態及び変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0217】
10…車両用ブレーキ、21…ボディ、22…ピストン、23…ブレーキパッド、24…ピストンシール(シール部材)、25…シリンダ、40…回転直動変換機構(回転直動変換装置)、41…回転部材、412a…平面(第3の面)、413d…接触面(第2の面)、42…直動部材、421a…内周面(第2の面)、46…摩擦部材(摩擦部)、46a…外周面(第1の面)、46b…内周面(第2の面)、50…モータ、Ax1…中心軸(回転中心)、D1…ロック方向(第1の方向)、D2…リリース方向(第2の方向)、P1…非摺動位置(第1の位置)、P2…摺動開始位置、P3,P4…摺動位置(第2の位置)、102…車両用ブレーキ、121,121L,121R…ブレーキシュー(制動部材)、124…ドラムロータ、132…ケーブル(作動部材)、142…モータ、142b…出力シャフト、160…回転直動変換機構(回転直動変換装置)、170…回転部材、171e…接触面(第2の面)、171f…雄ネジ、171g…接触面(第2の面)、172b…平面(第3の面)、180…直動部材、185b…雌ネジ、185f…端部、185g…接触面(第2の面)、190…摩擦部、192a…表面(第1の面)、195a…内周面(第1の面)、199…摩擦部材(摩擦部)、199a…外周面(第の面)、Ax26…中心軸(回転中心)、Pb…制動位置(第1の位置)、Pn…非制動位置(第2の位置)、D3…リリース方向(第2の方向)、D4…ロック方向(第1の方向)。