(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
B60S 3/06 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
B60S3/06
(21)【出願番号】P 2018072188
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤井 宏和
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-217586(JP,A)
【文献】特開2009-090794(JP,A)
【文献】特開2010-125950(JP,A)
【文献】特開昭61-075045(JP,A)
【文献】特開2009-051435(JP,A)
【文献】特開2013-095234(JP,A)
【文献】特開昭59-102647(JP,A)
【文献】米国特許第04015032(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄車両に対して前後方向に相対移動する洗車機本体と、前記洗車機本体に配されて被洗浄車両の洗浄を行う回転ブラシと、前記回転ブラシによる洗浄時に洗浄水を被洗浄車両に噴射する洗浄ノズルと、前記回転ブラシによる洗浄の後に被洗浄車両にコーティング剤を噴射するコートノズルと、前記洗車機本体に配されて被洗浄車両に空気を送出して被洗浄車両を乾燥させる送風ノズルとを備え
た洗車機において、
前記洗車機本体が被洗浄車両に対して前後方向に移動して被洗浄車両に前記コーティング剤を塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程の後に前記洗車機本体が反転して前記コーティング剤を塗布する第2塗布工程とを有し、
前記第1塗布工程時に前記コートノズルに先行する前記送風ノズルから空気流を送出し
、前記第2塗布工程時に前記送風ノズルの空気流の送出を停止し、
前記第1塗布工程の前記洗車機本体の走行速度を前記第2塗布工程の前記洗車機本体の走行速度よりも低速にしたことを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記コートノズルが複数設けられ、一の前記コートノズルの被洗浄車両上の噴射領域と他の前記コートノズルの被洗浄車両上の噴射領域とが前後方向に離れて配されることを特徴とする請求項
1に記載の洗車機。
【請求項3】
一の前記コートノズルと他の前記コートノズルとの間に前記回転ブラシが配されることを特徴とする請求項
2に記載の洗車機。
【請求項4】
被洗浄車両に対して前後方向に相対移動する洗車機本体と、前記洗車機本体に配されて被洗浄車両の洗浄を行う回転ブラシと、前記回転ブラシによる洗浄時に洗浄水を被洗浄車両に噴射する洗浄ノズルと、前記回転ブラシによる洗浄の後に被洗浄車両にコーティング剤を噴射するコートノズルと、前記洗車機本体に配されて被洗浄車両に空気を送出して被洗浄車両を乾燥させる送風ノズルとを備え、前記コーティング剤の塗布時に前記コートノズルに先行する前記送風ノズルから空気流を送出し、
前記コートノズルが複数設けられ、一の前記コートノズルの被洗浄車両上の噴射領域と他の前記コートノズルの被洗浄車両上の噴射領域とが前後方向に離れて配され、
前記送風ノズルから空気流を送出して前記コーティング剤を塗布する際に、前記洗車機本体の進行方向前方に配される前記コートノズルの噴射圧が進行方向後方に配される前記コートノズルの噴射圧よりも大きいことを特徴とす
る洗車機。
【請求項5】
前記洗車機本体が被洗浄車両に対して前後方向に移動して被洗浄車両に前記コーティング剤を塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程の後に前記洗車機本体が反転して前記コーティング剤を塗布する第2塗布工程とを有し、
前記第1塗布工程時に前記送風ノズルから空気流を送出し、前記第2塗布工程時に前記送風ノズルの空気流の送出を停止したことを特徴とする請求項4に記載の洗車機。
【請求項6】
一の前記コートノズルと他の前記コートノズルとの間に前記回転ブラシが配されることを特徴とする請求項
4又は請求項5に記載の洗車機。
【請求項7】
前記送風ノズルから空気流を送出して前記コーティング剤を塗布する際に、前記洗車機本体の進行方向前方に配される前記コートノズルの噴射角が進行方向後方に配される前記コートノズルの噴射角よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の洗車機。
【請求項8】
前記コーティング剤が撥水性を有することを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の洗車機。
【請求項9】
前記コーティング剤の下層に前記コーティング剤よりも吸着性の高い下地層を設けたことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄車両にコーティング剤を塗布する洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
給油所等に設置される従来の洗車機は特許文献1に開示されている。この洗車機は被洗浄車両に対して前後方向に移動させる洗車機本体を備えている。洗車機本体は左右の対向する2つのスタンド部と、スタンド部の上端を連結する天井部とを有し、被洗浄車両を跨ぐ門型に形成される。
【0003】
洗車機本体には回転ブラシ、洗浄ノズル及びコートノズルが設けられる。回転ブラシは被洗浄車両に摺動して被洗浄車両を洗浄する。洗浄ノズルは回転ブラシの洗浄時に市水や洗剤水等の洗浄水を被洗浄車両の表面に噴射する。コートノズルは撥水性を有するコーティング剤の水溶液を被洗浄車両の表面に噴射する。
【0004】
上記構成の洗車機において、洗車が開始されると、洗浄ノズルにより洗浄水が噴射されるとともに、回転ブラシにより被洗浄車両の表面が洗浄される。被洗浄車両の洗浄が終了すると、コートノズルからコーティング剤の水溶液が噴射される。これにより、被洗浄車両の表面にコーティング剤の塗布による被膜が形成され、窓ガラス及び車体(塗装面)の撥水性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-95234号公報 (
図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の洗車機によると、コーティング剤を混合する水の水温または外気温が低温の場合、水の水質が変化した場合等の環境条件によってコーティング剤の吸着性が低下する。また、車体表面の傷、鉄粉の付着、クリア層の劣化等の車両状態によってコーティング剤の吸着性が低下する。このため、被洗浄車両の表面に十分な被膜を形成することができず、撥水性能、防汚性能、またはこれらの耐久性等のコーティング性能が低下する問題があった。
【0007】
本発明は、コーティング性能を向上できる洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、被洗浄車両に対して前後方向に相対移動する洗車機本体と、前記洗車機本体に配されて被洗浄車両の洗浄を行う回転ブラシと、前記回転ブラシによる洗浄時に洗浄水を被洗浄車両に噴射する洗浄ノズルと、前記回転ブラシによる洗浄の後に被洗浄車両にコーティング剤を噴射するコートノズルと、前記洗車機本体に配されて被洗浄車両に空気を送出して被洗浄車両を乾燥させる送風ノズルとを備え、前記コーティング剤の塗布時に前記コートノズルに先行する前記送風ノズルから空気流を送出したことを特徴としている。
【0009】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記洗車機本体が被洗浄車両に対して前後方向に移動して被洗浄車両に前記コーティング剤を塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程の後に前記洗車機本体が反転して前記コーティング剤を塗布する第2塗布工程とを有し、前記第1塗布工程時に前記送風ノズルから空気流を送出し、前記第2塗布工程時に前記送風ノズルの空気流の送出を停止したことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記第1塗布工程の前記洗車機本体の走行速度を前記第2塗布工程の前記洗車機本体の走行速度よりも低速にしたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記コートノズルが複数設けられ、一の前記コートノズルの被洗浄車両上の噴射領域と他の前記コートノズルの被洗浄車両上の噴射領域とが前後方向に離れて配されることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は上記構成の洗車機において、一の前記コートノズルと他の前記コートノズルとの間に前記回転ブラシが配されることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記送風ノズルから空気流を送出して前記コーティング剤を塗布する際に、前記洗車機本体の進行方向前方に配される前記コートノズルの噴射圧が進行方向後方に配される前記コートノズルの噴射圧よりも大きいことを特徴としている。
【0014】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記送風ノズルから空気流を送出して前記コーティング剤を塗布する際に、前記洗車機本体の進行方向前方に配される前記コートノズルの噴射角が進行方向後方に配される前記コートノズルの噴射角よりも小さいことを特徴としている。
【0015】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記コーティング剤が撥水性を有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記コーティング剤の下層に前記コーティング剤よりも吸着性の高い下地層を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、コーティング剤の塗布時に、コートノズルに先行する送風ノズルから送出される空気流により車両の表面の水膜を除去しながらコーティング剤が塗布される。このため、環境条件や車両状態が悪い場合でも、被洗浄車両上にコーティング剤の被膜を均一かつ十分に形成することができる。従って、コーティング剤によるコーティング性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】本発明の実施形態の洗車機の撥水コースの第1往路工程を示す側面図
【
図4】本発明の実施形態の洗車機の撥水コースの第1復路工程を示す側面図
【
図5】本発明の実施形態の洗車機の撥水コースの第2往路工程を示す側面図
【
図6】本発明の実施形態の洗車機の撥水コースの第2復路工程を示す側面図
【
図7】本発明の実施形態の洗車機の撥水コースの第3往路工程を示す側面図
【
図8】本発明の実施形態の洗車機の撥水コースの第3復路工程を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1、
図2は一実施形態の洗車機WAを示す側面図及び正面図である。洗車機WAは洗車機本体1、レール2、リモートパネル7を備えている。洗車機本体1は左右の対向する2つのスタンド部90と、スタンド部90の上端を連結する天井部91とを有した門型に形成される。
【0020】
レール2は地面G上に左右一対設けられ、スタンド部90の底面に設けた車輪3がレール2上に配される。これにより、洗車機本体1はレール2上に立設し、走行モータ(不図示)の駆動によりレール2上を走行して被洗浄車両CAに対して前後に移動する。
【0021】
リモートパネル7は洗車機本体1に対する進入経路Aに沿って配される。リモートパネル7は複数のボタンを有し、洗車条件を設定する。また、リモートパネル7により、フロントガード有り、フェンダーポール有り、サイドミラー有り、リヤワイパ有り、ルーフキャリア有り等の装備品の設定も行うことができる。
【0022】
洗車機本体1の一方のスタンド部90の正面には操作パネル8が配される。操作パネル8は洗車条件を設定するリモートパネル7と同様に洗車条件を設定できる。
【0023】
洗車機本体1の両スタンド部90間の入口面1a側には形状センサ9が設けられる。形状センサ9は光電センサや超音波センサ等から成り、洗車機本体1に進入する被洗浄車両CAの外面形状を検知する。
【0024】
洗車機本体1には被洗浄車両CA上に摺動してブラッシングする複数の回転ブラシが設けられる。回転ブラシはトップブラシ4、サイドブラシ5及びロッカーブラシ6から成っている。
【0025】
トップブラシ4は天井部91に昇降可能に設けられて水平な回転軸で回転し、被洗浄車両CAの上面CA1を洗浄する。サイドブラシ5は両スタンド部90の出口面1b側にそれぞれ左右方向に進退可能に設けられて垂直な回転軸で回転し、被洗浄車両CAの両側面及び前後面を洗浄する。ロッカーブラシ6は両スタンド部90の下部にそれぞれ左右方向に進退可能に設けられて垂直または水平な回転軸で回転し、被洗浄車両CAの両側面の下部を洗浄する。
【0026】
洗車機本体1の上部には気流を発生するブロア20が配される。ブロア20には被洗浄車両CAに向けて空気流を送出する複数の送風ノズルが接続される。送風ノズルはトップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22から成っている。
【0027】
トップ送風ノズル21は天井部91に昇降可能に設けられ、被洗浄車両CAの上面CA1及び後面に沿って移動して送風により上面CA1及び後面を乾燥させる。サイド送風ノズル22は両スタンド部90にそれぞれ設けられ、送風により被洗浄車両CAの側面を乾燥させる。
【0028】
スタンド部90には洗剤やコーティング剤等の各種液剤を貯液した複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部30が設けられる。タンク収納部30の上方には市水及び各貯液タンクからの液剤を分配する分配配管部31が設けられる。分配配管部31にはシャンプーノズル11、浄水ノズル12、13、14、ワックスノズル15、コートノズル40~44、46~48がそれぞれ電磁弁(不図示)を介して導出される。
【0029】
シャンプーノズル11は天井部91に設けられるとともに、図示しないが、両スタンド部90上に設けられる。また、シャンプーノズル11は入口面1aとトップブラシ4との間に配され、洗剤の水溶液から成る洗浄水を噴射して被洗浄車両CAを洗浄する。これにより、シャンプーノズル11は被洗浄車両CAを洗浄する洗浄ノズルとして機能する。
【0030】
浄水ノズル12、13は天井部91に設けられるとともに、図示しないが、両スタンド部90上に設けられる。浄水ノズル12はシャンプーノズル11と入口面1aとの間に配され、浄水ノズル13はトップブラシ4と出口面1bとの間に配される。浄水ノズル14はトップ送風ノズル21の筐体上に設けられる。
【0031】
浄水ノズル12、13、14は被洗浄車両CAに対して市水から成る洗浄水を噴射する。浄水ノズル12、13、14により被洗浄車両CAの水洗いによる洗浄を行うとともに、洗剤や後述するコーティング剤の水洗いによるすすぎを行う。これにより、浄水ノズル12、13、14は被洗浄車両CAを洗浄する洗浄ノズルとして機能する。
【0032】
ワックスノズル15は天井部91に設けられるとともに、図示しないが、両スタンド部90上に設けられる。また、ワックスノズル15は浄水ノズル13と出口面1bとの間に配され、艶出し用のコーティング剤であるワックスの水溶液を噴射する。
【0033】
コートノズル40、41、42は被洗浄車両CAに撥水性を付与する撥水性のコーティング剤(以下、「第1コーティング剤」という)の水溶液を噴射する。コートノズル40は天井部91に複数(本実施形態では2個)設けられ、左右方向に揺動可能に形成される。また、コートノズル40は被洗浄車両CAの上面に向けて第1コーティング剤を噴射する。コートノズル41、42はスタンド部90に配され、被洗浄車両CAの側面に向けて第1コーティング剤を噴射する。上方のコートノズル41は上下方向に揺動可能に形成される。
【0034】
コートノズル46、47、48は被洗浄車両CAに第1コーティング剤の水溶液を噴射する。上記と同様に、コートノズル46は天井部91に複数(本実施形態では2個)設けられ、左右方向に揺動可能に形成される。また、コートノズル46は被洗浄車両CAの上面に向けて第1コーティング剤を噴射する。コートノズル47、48はスタンド部90に配され、被洗浄車両CAの側面に向けて第1コーティング剤を噴射する。上方のコートノズル47は上下方向に揺動可能に形成される。
【0035】
コートノズル40とコートノズル46とはトップブラシ4を挟んで前後方向に分岐し、前後方向に所定の距離d2(例えば、1400mm)だけ離れて配される。これにより、コートノズル40の被洗浄車両CA上の噴射領域とコートノズル46の被洗浄車両CA上の噴射領域とが重ならず、前後方向に離れて配される。また、コートノズル40、46はそれぞれ左右一対設けられ、左右方向に所定の距離d1(例えば、870mm)だけ離れて配される。
【0036】
同様に、コートノズル41とコートノズル47とはトップブラシ4を挟んで前後方向に分岐し、前後方向に噴射領域の重ならない所定の距離だけ離れて配される。コートノズル42とコートノズル48とはトップブラシ4を挟んで前後方向に分岐し、前後方向に噴射領域の重ならない所定の距離だけ離れて配される。
【0037】
入口面1a側に配されるコートノズル40、41、42の噴射角θ1(
図5参照)は例えば、14°に設定される。出口面1b側に配されるコートノズル46、47、48の噴射角θ2(
図5参照)は噴射角θ1よりも大きく、例えば、40°に設定される。噴射角が大きいと圧力損失により噴射圧が低下するため、コートノズル40、41、42の噴射圧(例えば、2MPa~3MPa)はコートノズル46、47、48の噴射圧よりも大きくなっている。
【0038】
コートノズル43、44は第1コーティング剤と異なるコーティング剤(以下、「第2コーティング剤」という)の水溶液を噴射する。コートノズル43は天井部91に複数(本実施形態では2個)設けられ、被洗浄車両CAの上面に向けて第2コーティング剤を噴射する。コートノズル44はスタンド部90に配され、被洗浄車両CAの側面に向けて第2コーティング剤を噴射する。
【0039】
コートノズル40、41、42及びコートノズル46、47、48から噴射される第1コーティング剤はシリコーンオイルを主成分としている。第1コーティング剤の被膜は表面張力による接触角が大きい撥水性を有し、被洗浄車両CAの表面に撥水性を付与する。
【0040】
コートノズル43、44から噴射される第2コーティング剤は第1コーティング剤よりも被洗浄車両CAに対して吸着性の高いシリコーンオイルを主成分としている。第2コーティング剤は第1コーティング剤に対しても吸着性が高くなっている。このため、第2コーティング剤上に第1コーティング剤を塗布すると、第2コーティング剤は第1コーティング剤の吸着性を向上させる下地層を形成する。
【0041】
尚、ワックスノズル15、コートノズル40~44、46~48は液剤の供給を停止することにより市水を噴射することができ、洗浄ノズルとして機能させることができる。
【0042】
上記構成の洗車機WAにおいて、ユーザが運転して被洗浄車両CAをリモートパネル7の面前で停車させ、被洗浄車両CAの洗車条件の設定を被洗浄車両CA内から行う。洗車条件を設定した後、ユーザは所定の洗浄開始位置まで被洗浄車両CAを移動させる。
【0043】
リモートパネル7の操作により、水洗いコース、シャンプーコース、ワックスコース、撥水コースを選択することができる。水洗いコースは回転ブラシを回転して浄水ノズル12、13、14等から市水の洗浄水を噴射し、被洗浄車両CAを水洗いする。シャンプーコースは回転ブラシを回転してシャンプーノズル11から洗剤を含む洗浄水を噴射し、被洗浄車両CAを洗浄する。この時、浄水ノズル12、13、14等から市水の洗浄水を噴射して洗剤のすすぎが行われる。
【0044】
ワックスコースはシャンプーコースと同様に被洗浄車両CAを洗浄した後、ワックスノズル15により車体にワックスを塗布する。撥水コースはシャンプーコースと同様に被洗浄車両CAを洗浄した後、被洗浄車両CAに撥水性の第1コーティング剤を塗布する。
【0045】
図3~
図8は撥水コースの洗車状態を示す側面図である。撥水コースを選択して洗車が開始されると、
図3に示すように洗車機本体1が被洗浄車両CAの後方(矢印E1)に移動する第1往路工程が行われる。第1往路工程では形状センサ9により被洗浄車両CAの形状を検出しながら、各回転ブラシが回転して被洗浄車両CAの前後面及び上面が洗浄される。この時、回転ブラシに先行するシャンプーノズル11から洗剤を含む洗浄水S1が噴射され、トップブラシ4に後行する浄水ノズル13から市水の洗浄水S2が噴射される。
【0046】
被洗浄車両CAの後面の洗浄が終了すると、
図4に示すように洗車機本体1が反転して被洗浄車両CAの前方(矢印E2)に移動する第1復路工程が行われる。第1復路工程ではコートノズル43、44から吸着力の高い第2コーティング剤S4を噴射して浄水ノズル12及びワックスノズル15から市水の洗浄水S2を噴射する。この時、回転ブラシは停止される。
【0047】
コートノズル43、44に先行するワックスノズル15から噴射される洗浄水S2により洗剤のすすぎ洗浄が行われる。コートノズル43、44から噴射される第2コーティング剤S4は被洗浄車両CA上に第1コーティング剤の下地層を形成する。コートノズル43、44に後行する浄水ノズル12から噴射される洗浄水S2により過剰な第2コーティング剤S4が除去される。これにより、第2コーティング剤S4の塗布ムラを防止することができる。
【0048】
被洗浄車両CAの前面まで第2コーティング剤S4が塗布されると、
図5に示すように洗車機本体1が反転して被洗浄車両CAの後方(矢印E1)に移動する第2往路工程(第1塗布工程)が行われる。第2往路工程ではコートノズル40~42及びコートノズル46~48から第1コーティング剤S3を噴射し、ワックスノズル15から市水の洗浄水S2を噴射する。
【0049】
また、トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22から空気流A1が送出される。各送風ノズルから送出される空気流A1の車体表面上の風速は約40m/sになっている。
【0050】
この時、トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22はコートノズル40~42よりも洗車機本体1の進行方向前方に配される。コートノズル40~42はコートノズル46~48よりも洗車機本体1の進行方向前方に配される。
【0051】
トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22から送出された空気流A1は第1復路工程で被洗浄車両CA上に形成された水膜を除去する。トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22に後行するコートノズル40~42は被洗浄車両CAに第1コーティング剤S3を塗布する。更に、所定時間経過した後、コートノズル46~48から噴射される第1コーティング剤S3が被洗浄車両CAの表面に塗布される。
【0052】
空気流A1により水膜が除去された被洗浄車両CA上に第1コーティング剤S3が塗布されるので、第1コーティング剤S3が被洗浄車両CA上に吸着し易くなる。また、各送風ノズルから送出される空気流A1は被洗浄車両CAの表面に沿って広がるため、被洗浄車両CA上の第1コーティング剤S3の水溶液の水分を蒸発させる。このため、第1コーティング剤S3の濃度が高くなり、第1コーティング剤S3の被膜が形成され易くなる。これにより、被洗浄車両CA上に第2コーティング剤S4及び第1コーティング剤S3から成る被膜を十分形成することができる。
【0053】
この時、各送風ノズルの被洗浄車両CA上の風速が大きすぎる場合または各送風ノズルとコートノズル40~42とが接近しすぎる場合は、第1コーティング剤S3が気流により吹き飛ばされる。このため、送風ノズルと被洗浄車両CAとの距離及び送風ノズルとコートノズル40~42との距離は第1コーティング剤S3が吹き飛ばされない程度に適切に設定される。本実施形態では第2往路工程時の送風ノズルと被洗浄車両CAとの距離を例えば、150~200mmとし、後述する乾燥を行う第3復路工程時の距離(例えば、200mm)と同じまたは若干小さくしている。
【0054】
また、コートノズル40~42の噴射圧がコートノズル46~48の噴射圧よりも大きい。このため、空気流A1により除去されなかった水膜をコートノズル40~42から噴射される第1コーティング剤S3により除去しながら第1コーティング剤S3を塗布することができる。加えて、コートノズル40~42の噴射角θ1をコートノズル46~48の噴射角θ2よりも小さくして、コートノズル40~42の噴射圧を容易に大きくできる。
【0055】
コートノズル46~48に後行するワックスノズル15から噴射される洗浄水S2によって過剰な第1コーティング剤S3が除去される。これにより、第1コーティング剤S3の塗布ムラを防止することができる。
【0056】
尚、第1復路工程でコートノズル43、44による第2コーティング剤S4の噴射を停止してもよい。この時、第2往路工程で第1コーティング剤S3は下地層のない被洗浄車両CAの表面に直接塗布される。この場合も上記と同様に、各送風ノズルからの空気流A1により水膜を除去された被洗浄車両CA上に第1コーティング剤S3が塗布されるため、第1コーティング剤S3の被膜を確実に形成することができる。
【0057】
第2往路工程が終了すると、
図6に示すように洗車機本体1が反転して被洗浄車両CAの前方(矢印E2)に移動する第2復路工程(第2塗布工程)が行われる。第2復路工程ではコートノズル40~42及びコートノズル46~48から第1コーティング剤S3が噴射され、浄水ノズル12から洗浄水S2が噴射される。また、トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22は空気流の送出を停止する。
【0058】
これにより、第2往路工程の第1コーティング剤S3の塗布から所定時間経過後、第1コーティング剤の被膜上にコートノズル46~48により第1コーティング剤S3が塗布される。また、コートノズル46~48により第1コーティング剤S3を塗布して所定時間経過後に、コートノズル40~42により第1コーティング剤S3が塗布される。過剰な第1コーティング剤S3は浄水ノズル12から噴射される洗浄水S2によって除去される。
【0059】
このため、被洗浄車両CA上の第1コーティング剤S3の被膜の膜厚を大きくできる。尚、第2往路工程で第1コーティング剤S3の被膜の膜厚を大きくできる場合は第2復路工程を省いてもよい。
【0060】
また、洗車機本体1の第2往路工程の走行速度(例えば、5m/min)を第2復路工程の走行速度(例えば、10m/min)よりも低速にしてもよい。これにより、第2往路工程において水膜をより確実に除去することができ、第1コーティング剤S3の被膜の膜厚をより大きくできる。
【0061】
第2復路工程が終了すると、
図7に示すように洗車機本体1が反転して被洗浄車両CAの後方(矢印E1)に移動する第3往路工程が行われる。第3往路工程では浄水ノズル14から洗浄水S2が噴射される。浄水ノズル14はトップ送風ノズル21とともに昇降するため、被洗浄車両CAの上面に接近して追随する。これにより、被洗浄車両CA上の過剰な第1コーティング剤S3をより確実に除去することができる。第2往路工程において過剰なコーティング剤S3を除去できる場合には、第3往路工程を省略してもよい。
【0062】
浄水ノズル14による洗浄が終了すると、
図8に示すように洗車機本体1が反転して被洗浄車両CAの後方(矢印E1)に移動する第3復路工程が行われる。第3復路工程ではトップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22から空気流A1が送出され、被洗浄車両CAが乾燥される。これにより、洗車が終了する。
【0063】
本実施形態によると、第1コーティング剤S3の塗布時に、コートノズル40~42に先行する送風ノズル(21、22)から送出される空気流A1により車両の表面の水膜を除去しながら第1コーティング剤A3が塗布される。このため、環境条件や車両状態が悪い場合でも、被洗浄車両CA上に第1コーティング剤S3の被膜を均一かつ十分に形成することができる。従って、第1コーティング剤S3によるコーティング性能を向上することができる。
【0064】
また、第2往路工程(第1塗布工程)時にトップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22から被洗浄車両CAに向けて空気流A1を送出し、第2復路工程(第2塗布工程)時に空気流A1の送出を停止する。第2復路工程は第2往路工程で形成された第1コーティング剤S3の被膜上に第1コーティング剤S3を塗布するため水膜を除去するための空気流A1を停止し、空気流A1により吹き飛ばされる第1コーティング剤S3を低減することができる。
【0065】
また、第2往路工程(第1塗布工程)の洗車機本体1の走行速度を第2復路工程(第2塗布工程)の洗車機本体1の走行速度よりも低速にすると、第1コーティング剤S3の被膜の膜厚を大きくすることができる。
【0066】
また、コートノズル40~42の被洗浄車両CA上の噴射領域とコートノズル46~48の被洗浄車両CA上の噴射領域とが前後方向に離れて配される。これにより、第2往路工程で先行するコートノズル40~42により第1コーティング剤S3が塗布され、所定時間経過した後に後行するコートノズル46~48により第1コーティング剤S3が塗布される。このため、第1コーティング剤S3の被膜をより確実に形成することができる。
【0067】
また、コートノズル40~42とコートノズル46~48との間にトップブラシ4が配されるため、コートノズル40~42とコートノズル46~48との前後方向の距離を大きくすることができる。これにより、コートノズル40~42の被洗浄車両CA上の噴射領域とコートノズル46~48の被洗浄車両CA上の噴射領域とを前後方向に確実に離れて配置することができる。
【0068】
また、第2往路工程で洗車機本体1の進行方向前方に配されるコートノズル40~42の噴射圧が進行方向後方に配されるコートノズル46~48の噴射圧よりも大きい。コートノズル40~42から噴射される第1コーティング剤S3によって水膜を確実に除去して被膜を形成することができ、洗車機WAのコーティング性能をより向上することができる。
【0069】
また、コートノズル40~42の噴射角θ1がコートノズル46~48の噴射角θ2よりも小さいので、コートノズル40~42の噴射圧を容易に大きくできる。
【0070】
また、第1コーティング剤S3が撥水性を有するので、被洗浄車両CA上に降った雨が流れ落ち、汚れの付着を抑制することができる。
【0071】
また、第1コーティング剤S3よりも吸着性の高い第2コーティング剤S4により第1コーティング剤S3の下層に下地層を形成するので、第1コーティング剤S3の吸着性を向上することができる。従って、より確実に第1コーティング剤S3の被膜を被洗浄車両CA上に形成することができる。
【0072】
本実施形態において、コートノズル40~42及びコートノズル46~48の一方を省いてもよい。また、コートノズル40~42及びコートノズル46~48を回転ブラシに対して前後方向の同じ側に配置してもよい。また、ワックスノズル15をコートノズル40~42及びコートノズル46~48と同様に構成し、艶出し用のコーティング剤であるワックスの被膜を形成してもよい。
【0073】
上記したように本発明によれば、洗車の際に撥水コートやワックスなどのコーティング剤を塗布する洗車機において、コーティング剤の被膜を常に均一に形成してコーティング性能を発揮する洗車機WAを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によると、被洗浄車両にコーティング剤を塗布する洗車機に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 洗車機本体
1a 入口面
1b 出口面
2 レール
3 車輪
4 トップブラシ
5 サイドブラシ
6 ロッカーブラシ
7 リモートパネル
8 操作パネル
9 形状センサ
11 シャンプーノズル(洗浄ノズル)
12、13、14 浄水ノズル(洗浄ノズル)
15 ワックスノズル
20 ブロア
21 トップ送風ノズル
22 サイド送風ノズル
30 タンク収納部
31 分配配管部
40、41、42 コートノズル(第1コートノズル)
43、44 コートノズル
46、47、48 コートノズル(第2コートノズル)
90 スタンド部
91 天井部
A 進入経路
CA 被洗浄車両
CA1 上面
G 地面
S1、S2 洗浄水
S3 第1コーティング剤
S4 第2コーティング剤
WA 洗車機