(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20220712BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20220712BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B60C11/12 B
B60C11/12 A
B60C11/13 A
B60C11/03 100B
B60C11/03 200A
(21)【出願番号】P 2018079301
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】星野 まどか
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-341306(JP,A)
【文献】国際公開第2014/092078(WO,A1)
【文献】特開2002-316515(JP,A)
【文献】特開2015-227141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0199943(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ赤道よりもタイヤ軸方向一方側に配される第1のトレッドパターン部と、タイヤ軸方向他方側に配される第2のトレッドパターン部とが点対称の関係を有するタイヤであって、
前記第1、第2のトレッドパターン部は、それぞれ、タイヤ周方向にのびるショルダ主溝と、前記ショルダ主溝に外端部が接続し、かつタイヤ周方向に対して傾斜しながらタイヤ赤道に向かってのびるとともに、内端部がタイヤ赤道に交わることなく途切れる傾斜主溝とを具え、
前記第1のトレッドパターン部に配される
前記傾斜主溝と、前記第2のトレッドパターン部に配される
前記傾斜主溝との間が、浅底部と深底部とを有するセンタサイプによって貫通され
ており、
前記第1、第2のトレッドパターン部は、それぞれ、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜主溝の間に、隣り合う一方の傾斜主溝の前記内端部と他方の傾斜主溝とを接続する連結溝を具えており、
前記連結溝は、前記内端部に向かって溝深さが増す第1溝部を具える、
タイヤ。
【請求項2】
前記傾斜主溝は、タイヤ周方向に対する角度θを減じながらタイヤ赤道に向かってのびる請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記センタサイプは、前記浅底部が前記
傾斜主溝に接続し、前記深底部が前記浅底部間を連結する請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記傾斜主溝は、前記外端部に、溝幅が減じる絞り部を有する請求項1~3の何れかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記傾斜主溝は、前記外端部に、溝底から隆起する隆起部を具える請求項1~4の何れかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1、第2のトレッドパターン部は、それぞれ、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜主溝の間に、前記ショルダ主溝から前記傾斜主溝に沿ってのびる傾斜サイプを具える請求項1~5の何れかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐偏摩耗性を向上させたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ周方向にのびる縦主溝に代え、タイヤ周方向に対する角度を減じながらタイヤ赤道に向かってのびる傾斜主溝を用いたトレッドパターンが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
このトレッドパターンでは、傾斜主溝が流水線に近い形状で傾斜するため、横溝の形成数を減じながら(或いは横溝を排除しながら)優れた排水性を発揮することができる。そのため、ウエット性能を維持しながら、操縦安定性及びノイズ性能を向上しうるという利点を有する。
【0004】
しかし、タイヤ周方向で隣り合う傾斜主溝間のブロックにおいては、タイヤ赤道側の先端部においてブロック幅が狭くなり、剛性が不均一に小となる。そのためこの先端部近傍で、偏摩耗が発生しやすくなる。特に、タイヤ赤道両側に配される傾斜主溝間の陸部であるセンタ陸部が、タイヤ周方向に連続してのびるリブで形成される場合には、リブとの間の剛性差がより大きくなり、偏摩耗がより顕著に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-2217号公報
【文献】特開2001-206017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、傾斜主溝を有するトレッドパターンにおいて、耐偏摩耗性を向上させたタイヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部に、タイヤ赤道よりもタイヤ軸方向一方側に配される第1のトレッドパターン部と、タイヤ軸方向他方側に配される第2のトレッドパターン部とが点対称の関係を有するタイヤであって、
前記第1、第2のトレッドパターン部は、それぞれ、
タイヤ周方向にのびるショルダ主溝と、
前記ショルダ主溝に外端部が接続し、かつタイヤ周方向に対して傾斜しながらタイヤ赤道に向かってのびるとともに、内端部がタイヤ赤道に交わることなく途切れる傾斜主溝とを具え、
前記第1のトレッドパターン部に配される傾斜主溝と、前記第2のトレッドパターン部に配される傾斜主溝との間が、浅底部と深底部とを有するセンタサイプによって貫通される。
【0008】
本発明に係るタイヤでは、前記傾斜主溝は、タイヤ周方向に対する角度θを減じながらタイヤ赤道に向かってのびるのが好ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤでは、前記センタサイプは、前記浅底部が前記ショルダ主溝に接続し、前記深底部が前記浅底部間を連結するのが好ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤでは、前記第1、第2のトレッドパターン部は、それぞれ、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜主溝の間に、隣り合う一方の傾斜主溝の前記内端部と他方の傾斜主溝とを接続する連結溝を具えるのが好ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤでは、前記連結溝は、前記内端部に向かって溝深さが増す第1溝部を具えるのが好ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤでは、前記傾斜主溝は、前記外端部に、溝幅が減じる絞り部を有するのが好ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤでは、前記傾斜主溝は、前記外端部に、溝底から隆起する隆起部を具えるのが好ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤでは、前記第1、第2のトレッドパターン部は、それぞれ、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜主溝の間に、前記ショルダ主溝から前記傾斜主溝に沿ってのびる傾斜サイプを具えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、第1のトレッドパターン部に配される傾斜主溝と、第2のトレッドパターン部に配される傾斜主溝とが、浅底部と深底部とを有するセンタサイプによって接続されている。そのため、センタ陸部の剛性と、タイヤ周方向で隣り合う傾斜主溝間のブロック状部分との間の剛性差を減じて、剛性の適正化を図ることができ、偏摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図2】第1のトレッドパターン部の部分拡大図である。
【
図4】(A)は連結溝を拡大して示す斜視図、(B)は連結溝を示す
図3のC-C断面図である。
【
図5】(A)は傾斜主溝の外端部を拡大して示す平面、(B)は外端部を示す
図5(A)のA-A断面図である。
【
図6】センタサイプを示す
図3のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。タイヤ1は、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤ、及び、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。本例では、タイヤ1が、乗用車用のオールテレーンタイヤ(ATタイヤ)として形成される場合が示される。
【0018】
図1に示されるように、トレッド部2では、タイヤ赤道Cよりもタイヤ軸方向一方側に配される第1のトレッドパターン部P1と、タイヤ軸方向他方側に配される第2のトレッドパターン部P2とが点対称の関係を有する。この「点対称の関係」には、例えばバリアブルピッチ法などにより、第1のトレッドパターン部P1のパターン要素と、第2のトレッドパターン部P2のパターン要素とが、完全な点対称の関係からずれる場合も含まれる。
【0019】
第1、第2のトレッドパターン部P1、P2は、それぞれ、タイヤ周方向にのびる1本のショルダ主溝3と、タイヤ周方向に間隔を隔てて配される複数の傾斜主溝4とを具える。
【0020】
第1のトレッドパターン部P1に配される傾斜主溝4と、第2のトレッドパターン部P2に配される傾斜主溝4とは、タイヤ赤道Cを横切るセンタサイプ5によって互いに接続される。
【0021】
本明細書において、第1のトレッドパターン部P1に配される傾斜主溝4と、第2のトレッドパターン部P2に配される傾斜主溝4との間の領域をセンタ陸部Ycと呼ぶ場合がある。又このセンタ陸部Ycとショルダ主溝3との間の領域をミドル陸部Ym、ショルダ主溝3とトレッド端Teとの間の領域をショルダ陸部Ysと呼ぶ場合がある。
【0022】
図2に、第1のトレッドパターン部P1におけるショルダ主溝3及び傾斜主溝4を代表して示す。
図2に示されるように、ショルダ主溝3は、本例では、ジグザグ状に屈曲しながらタイヤ周方向にのびるジグザグ溝であり、エッジ成分を増やすことで、不整地路面等におけるトラクション性が高められる。なおショルダ主溝3を直線溝として形成することもできる。ショルダ主溝3の溝幅及び溝深さは、慣例に従って適宜設定される。
【0023】
傾斜主溝4は、ショルダ主溝3に接続する外端部4aから、タイヤ周方向に対して傾斜しながらタイヤ赤道Cに向かってのびる。又傾斜主溝4の内端部4bは、タイヤ赤道Cに交わることなく、タイヤ赤道Cの近傍で途切れる。傾斜主溝4とタイヤ赤道Cとの間の最小距離Lmin は、特に規制されないが、15~25mmの範囲が好ましい。
【0024】
傾斜主溝4としては、溝中心線のタイヤ周方向に対する角度θを減じながらタイヤ赤道Cに向かってのびるのが好ましい。特には、角度θがタイヤ赤道Cに向かって漸減する湾曲溝とするのが、排水性の観点から好ましい。角度θは、内端部4bにおいて15度以下、さらには10度以下であるのが、排水性、及びノイズ性能の観点から好ましい。又角度θは、外端部4aにおいて50度以上、さらには60度以上であるのが、不整地路面におけるトラクション性及び操縦安定性等の観点から好ましい。
【0025】
このような傾斜主溝4は、流水線に近い形状で傾斜するため、横溝の形成数を減じながら(或いは横溝を排除しながら)優れた排水性を発揮することができる。そのため、優れたウエット性能を維持しながら、操縦安定性及びノイズ性能を向上しうる。
【0026】
本例の傾斜主溝4は、外端部4a側に最大幅部6を有し、傾斜主溝4の溝幅W4は、この最大幅部6から内端部4bに向かって漸減する。
図5(A)に示されるように、外端部4aには、最大幅部6に比して溝幅W4が減じる絞り部7を有する。この絞り部7における溝幅W7は、最大幅部6における溝幅W4max (傾斜主溝4の最大幅)の0.3~0.7倍の範囲が好ましい。
【0027】
図5(B)に示されるように、傾斜主溝4の外端部4aには、溝底Sから隆起する隆起部8を具える。この隆起部8における溝深さD8は、傾斜主溝4の最大深さD4max の0.5~0.8倍の範囲が好ましい。本例では、傾斜主溝4の溝深さD4は、隆起部8以外の位置では実質的に一定である。隆起部8の上面には、溝長さ方向にのびるサイプ9が配される。このサイプ9の両端は、本例では、隆起部8内で途切れる。
【0028】
図2に示されるように、ミドル陸部Ymは、前記傾斜主溝4によって複数のブロック状部分30に区画されるが、傾斜主溝4の外端部4aに絞り部7が形成されることにより、タイヤ周方向で隣り合うブロック状部分30同士が互いに支え合うことができる。そのため、ブロック状部分30の変形を抑えて耐偏摩耗性能を向上しうる。同様に、傾斜主溝4の外端部4aに隆起部8が形成されることにより、ブロック状部分30の変形を抑えて耐偏摩耗性能を向上しうる。
【0029】
絞り部7での溝幅W7が、傾斜主溝4の最大幅W4max の0.7倍を越える場合、及び隆起部8での溝深さD8が、傾斜主溝4の最大深さD4max の0.8倍を越える場合、ブロック状部分30の変形抑制の効果が過小となって、耐偏摩耗性能の向上効果を充分に得ることは難しい。逆に、溝幅W7が最大幅W4max の0.3倍を下回る場合、及び溝深さD8が最大深さD4max の0.5倍を下回る場合、排水性の低下を招く。
【0030】
図3に示されるように、センタ陸部Ycは、タイヤ赤道Cを横切るセンタサイプ5によって貫通される。
【0031】
センタ陸部Ycは、陸部幅Wcを増減しながらタイヤ周方向に連続してのびる。そして陸部幅Wcが最小となる凹部10の位置、及び陸部幅Wcが最大となる凸部11の位置に、それぞれセンタサイプ5が配される。センタサイプ5の両端は、第1のトレッドパターン部P1に配される傾斜主溝4と、第2のトレッドパターン部P2に配される傾斜主溝4とに接続する。これにより、第1のトレッドパターン部P1に配される傾斜主溝4と、第2のトレッドパターン部P2に配される傾斜主溝4とは、本例では互い違いに交互に接続される。センタサイプ5は、傾斜主溝4とは異なる傾斜方向で傾斜するのが好ましい。
【0032】
便宜上、凹部10の位置に配されるセンタサイプ5を第1のセンタサイプ5A、凸部11の位置に配されるセンタサイプ5を第2のセンタサイプ5Bと呼んで区別する場合がある。センタサイプ5として、第1のセンタサイプ5A(凹部10に配される。)のみで構成することもでき、又第2のセンタサイプ5B(凸部11に配される。)のみで構成することもできる。
【0033】
図6に示されるように、センタサイプ5は、浅底部15と深底部16とを有して長さ方向にのびる。本例では、浅底部15は傾斜主溝4に接続し、深底部16は浅底部15、15間を連結する。浅底部15のサイプ深さD
15は、深底部16のサイプ深さD
16の0.5~0.8倍の範囲が好ましい。
【0034】
このように、センタサイプ5がセンタ陸部Ycを貫通すること、及びセンタサイプ5が浅底部15と深底部16とを有することにより、センタ陸部Ycとミドル陸部Ymとの剛性差を減じて剛性の適正化を図ることができ、偏摩耗を抑制することができる。なおセンタサイプ5の深さを均一とした場合、センタ陸部Ycにヨレが発生して耐偏摩耗性能に悪影響を与えるが、特にセンタサイプ5の両端部に浅底部15を配することにより、このヨレを効果的に防ぐことができ、耐偏摩耗性能を更に向上させうる。
【0035】
図3、4(A)(B)に示されるように、タイヤ周方向で隣り合う傾斜主溝4、4の間には、連結溝20が配される。明確化のために、タイヤ周方向で隣り合う傾斜主溝4のうちの一方の傾斜主溝を4F、他方の傾斜主溝を4Rとして区別する場合がある。
【0036】
同図に示されるように、連結溝20は、一方の傾斜主溝4Fの内端部4bと、他方の傾斜主溝4Rの対向部Kとの間を接続する。「対向部K」とは、前記傾斜主溝4Fの内端部4bと、タイヤ軸方向の内外で対向する傾斜主溝4Rの部位を意味し、この対向部Kには、前記内端部4bの先端jと最も近接する位置が含まれる。
【0037】
連結溝20は、傾斜主溝4Rの対向部Kから傾斜主溝4Fの内端部4bに向かって溝深さHを増しながらのびる第1溝部21を具える。本例では、第1溝部21の底面21Sに、第2溝部22がさらに形成される場合が示される。
【0038】
第1溝部21において、内端部4bでの溝深さH4bは、対向部Kでの溝深さHKよりも大である。H4b>HK であるならば、本例の如く溝深さHKが0mmであっても良い。又溝深さH4bは、傾斜主溝4Rの溝深さD4の0.3倍以上、さらには0.6倍以上が好ましい。なお第1溝部21の底面21Sは、一定勾配で長さ方向に傾斜する平面であるのが好ましい。
【0039】
第1溝部21のタイヤ赤道C側の側縁Eiは、前記内端部4bの先端jからタイヤ周方向に対して傾斜してのびる。
【0040】
又第2溝部22は、底面21S上を、第1溝部21のショルダ主溝3側の側縁Eoの沿ってのびる。本例では第2溝部22は、一定の溝深さD22を有する。この溝深さD22は、溝深さH4b以上であって、好ましくは、前記傾斜主溝4の溝深さD4以下である。
【0041】
ここで、傾斜主溝4を有するタイヤ1では、傾斜主溝4の溝幅4Wが内端部4bにおいて減少する。そのため、内端部4bにおいて石噛みが発生しやすいという問題がある。しかし、内端部4bに接続する連結溝20を設けることにより、石が動きやすくなって排出し易くなり、耐石噛み性能を向上しうる。特に、内端部4bに向かって溝深さHが減じる第1溝部21を設けることにより、石の排出性がさらに高まる。溝深さH4bが溝深さD4の0.5倍を下回ると、耐石噛み性能の向上効果が減じる傾向となる。
【0042】
図2に示すように、ミドル陸部Ymには、タイヤ周方向で隣り合う傾斜主溝4、4の間に、ショルダ主溝3から傾斜主溝4に沿ってのびる傾斜サイプ25が配される。この傾斜サイプ25の内端部は、本例では、第1溝部21の底面21S上で途切れる。この傾斜サイプ25は、エッジ成分を増加し、不整地路面等におけるトラクション性を高める。又傾斜サイプ25は、ブロック状部分30の剛性の局所的な高まりを防ぎ、耐偏摩耗性能を向上させのに役立つ。
【0043】
ショルダ陸部Ysには、タイヤ周方向に間隔を有して配される複数のショルダ横溝26が配される。ショルダ横溝26は、トレッド端Teからショルダ主溝3までのび、ショルダ陸部Ysを複数のブロック31に区分する。
【0044】
本例のショルダ横溝26は、ジグザグ状に屈曲しながら長さ方向にのびるジグザグ溝として形成される。又ショルダ横溝26のタイヤ軸方向に対する角度αは、15度以下、好ましくは10度以下に形成される。前記角度αは、ショルダ横溝26の溝中心線における両端間を通る直線xが、タイヤ軸方向線に対してなす角度で定義される。
【0045】
本例のショルダ横溝26は、角度αを15度以下とすることで、不整地路面におけるグリップ性を高めて操縦安定性を向上しうる。又角度αを15度以下とした場合、ドライ路面走行時のピッチ音が高まり、ノイズ性能に不利を招く。しかし本例では、ショルダ横溝26がジグザグ溝をなすため、インパクト時の入力をばらけさせ、ピッチ音(インパクト音)の上昇を抑えることができる。又ジグザグ溝とすることで不整地路面における操縦安定性の向上にも貢献しうる。
【0046】
本例では傾斜主溝4は、ショルダ主溝3を介してショルダ横溝26に連なる。そのため、傾斜主溝4とショルダ横溝26とが一本の溝として機能し、ウエット性能及び不整地路面での操縦安定性の向上に貢献しうる。
【0047】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0048】
図1の基本パターンを有するSUV用の空気入りタイヤ(265/70R17)が、表1の仕様に基づき試作された。各テストタイヤの耐偏摩耗性能、耐石噛み性能がテストされた。
【0049】
各タイヤとも、ショルダ主溝、傾斜主溝、及びショルダ横溝については、実質的に同一であり、表1に記載の仕様のみ相違している。なお傾斜主溝は、タイヤ周方向に対する溝中心線の角度θを漸減しながらタイヤ赤道に向かってのび、外端部における角度θは60度、内端部における角度θは5度である。センタサイプにおいて、「浅底部」がある場合、浅底部のサイプ深さD15は、深底部のサイプ深さD16の0.5倍である。又センタサイプにおける「深さ均一」とは、深底部のみでセンタサイプが形成されている。
【0050】
<耐偏摩耗性能>
リム(17×7.5)にリム組みされかつ内圧(220kPa)が充填されたテストタイヤを用い、摩耗エネルギー測定装置にて、制動時及び駆動時における、ミドル陸部のブロック状部分の後着側の摩耗エネルギーU1と、先着側の摩耗エネルギーU2との比U1/U2が計算された。そして、制動時及び駆動時それぞれの比U1/U2から、ブロック状部分における偏摩耗(ヒール&トー摩耗)の起こり易すさが評価された。評価結果は、比較例1を100とする指数で表示している。数値が大きいほど、偏摩耗がし難く良好である。
【0051】
<耐石噛み性能>
上記テストタイヤを四輪駆動車(排気量2400cc)の全輪に装着し、砂利道を低速度にて1000m走行し、傾斜主溝の先端部に噛み込んだ石の数を評価した。評価結果は、比較例1を100とする指数で表示している。数値が大きいほど、噛み込んだ石の数が少なく、耐石噛み性能に優れている。
【0052】
【0053】
表に示されるように、実施例のタイヤは、傾斜主溝を有するトレッドパターンにおいて、耐偏摩耗性を向上させうるのが確認できる。又連結溝を設けることにより、耐石噛み性能を向上しうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0054】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 ショルダ主溝
4a 外端部
4b 内端部
4 傾斜主溝
5 センタサイプ
7 絞り部
8 隆起部
15 浅底部
16 深底部
20 連結溝
21 第1溝部
21S 底面