(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】走行台車
(51)【国際特許分類】
B60W 10/04 20060101AFI20220712BHJP
B60W 10/20 20060101ALI20220712BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220712BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20220712BHJP
B65G 69/30 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B60W10/00 134
B60W10/08
B60W10/20
B62D6/00
B65G69/30
(21)【出願番号】P 2018092082
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-02-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔販売日〕 平成29年11月17日 〔販売した場所〕 株式会社ホームロジスティクス(大阪府茨木市彩都あかね2-1 プロロジスパーク茨木3階西事務所)
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大木 俊
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-355915(JP,A)
【文献】特開2008-068752(JP,A)
【文献】特開平06-219299(JP,A)
【文献】特開2005-174456(JP,A)
【文献】特開2006-082621(JP,A)
【文献】特開2005-329752(JP,A)
【文献】特開昭61-092931(JP,A)
【文献】特開2003-171095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B62D 6/00- 6/10
B65G 69/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する走行部と、
前記車輪の舵角を変更する操舵部と、
前記走行部の走行速度を制御する速度制御部と、
前記車輪の舵角を検出する検出部と、
最大走行速度に関する情報を記憶する記憶部と、
前記検出部にて検出された前記舵角が第1閾値未満でありかつ前記最大走行速度に関する情報が示す前記走行速度の最大値である最大走行速度が第1速度とされている状態から、前記舵角が前記第1閾値以上に変化すると、前記最大走行速度を前記第1速度よりも遅い第2速度とし、
前記舵角が前記第1閾値未満である第2閾値以上かつ前記最大走行速度が前記第2速度とされている状態から、前記舵角が前記第2閾値未満に変化すると、前記最大走行速度を前記第1速度とする、最大速度制限部と、
前記走行部が停止している状態で前記舵角が変化した場合、変化後の前記舵角と前記記憶部に記憶されている前記最大走行速度に関する情報とに基づいて新たな最大走行速度に関する情報を決定し、前記記憶部に記憶されている前記最大走行速度に関する情報を前記新たな最大走行速度に関する情報に更新する更新部と、
を備え、
前記最大速度制限部は、前記走行部が停止後に走行を再開したとき、前記記憶部に記憶された前記最大走行速度に関する情報に基づいて、走行再開後の前記最大走行速度を決定する、
走行台車。
【請求項2】
車輪を有する走行部と、
前記車輪の舵角を変更する操舵部と、
前記走行部の走行速度を制御する速度制御部と、
前記車輪の舵角を検出する検出部と、
最大走行速度に関する情報を記憶する記憶部と、
前記検出部にて検出された前記舵角が第1閾値未満でありかつ前記最大走行速度に関する情報が示す前記走行速度の最大値である最大走行速度が第1速度とされている状態から、前記舵角が前記第1閾値以上に変化すると、前記最大走行速度を前記第1速度よりも遅い第2速度とし、
前記舵角が前記第1閾値未満である第2閾値以上かつ前記最大走行速度が前記第2速度とされている状態から、前記舵角が前記第2閾値未満に変化すると、前記最大走行速度を前記第1速度とする、最大速度制限部と、
を備え、
前記最大速度制限部は、前記走行部が停止後に走行を再開したとき、前記記憶部に記憶された前記最大走行速度に関する情報に基づいて、走行再開後の前記最大走行速度を決定し、
前記速度制御部は、前記走行部を走行中に加速するときの加速度を、前記走行部を停止状態から加速するときの加速度よりも小さくする、
走行台車。
【請求項3】
前記最大速度制限部は、
前記舵角が前記第1閾値よりも大きい第3閾値未満であり、かつ、前記最大走行速度が前記第2速度とされている状態から、前記舵角が前記第3閾値以上に変化すると、前記最大走行速度を前記第2速度よりも遅い第3速度とし、
前記舵角が前記第2閾値よりも大きくかつ前記第3閾値未満である第4閾値以上、かつ、前記最大走行速度が前記第3速度とされている状態から、前記舵角が前記第4閾値未満に変化すると、前記最大走行速度を前記第2速度とする、
請求項1又は2に記載の走行台車。
【請求項4】
前記最大速度制限部は、前記走行部を後進させる場合において、
前記舵角が第5閾値未満でありかつ前記最大走行速度が前記第1速度よりも遅い第4速度とされている状態から、前記舵角が前記第5閾値以上に変化すると、前記最大走行速度を前記第4速度よりも遅い第5速度とし、
前記舵角が前記第5閾値未満である第6閾値以上かつ前記最大走行速度が前記第5速度とされている状態から、前記舵角が前記第6閾値未満に変化すると、前記最大走行速度を前記第4速度とする、
請求項1~
3のいずれかに記載の走行台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行台車に関し、特に、車輪の舵角をステアリング操作により変更することで走行方向を変化させる走行台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪の舵角を、作業者のステアリング操作により変更可能な移動体が知られている。このような移動体では、作業者は、移動体に備わるステアリング機構を手動操作することにより、移動体の走行方向を変更する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の移動体は、車輪の舵角に関わりなく一定の速度で走行している。従って、この移動体を操作する作業者は、車輪の舵角が大きくなったときに、移動体の操作性が悪化したように感じることがあった。例えば、一定の速度にて走行しているにもかかわらず、走行経路の曲率が小さくなるに従って遠心力が増大するため、操作性が悪くなる。
本発明の目的は、車輪の舵角を作業者のステアリング操作により変更可能な走行台車において、走行台車の操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0006】
本発明の一見地に係る走行台車は、走行部と、操舵部と、速度制御部と、検出部と、記憶部と、最大速度制限部と、を備える。
走行部は車輪を有する。操舵部は、車輪の舵角を変更する。
速度制御部は、走行部の走行速度を制御する。検出部は、車輪の舵角を検出する。
記憶部は、最大走行速度に関する情報を記憶する。
最大速度制限部は、検出部にて検出された舵角が第1閾値未満でありかつ最大走行速度が第1速度とされている状態から、舵角が第1閾値以上に変化すると、最大走行速度を第1速度よりも遅い第2速度とする。最大走行速度は、最大走行速度に関する情報が示す走行速度の最大値である。
また、舵角が第1閾値未満である第2閾値以上かつ最大走行速度が第2速度とされている状態から、舵角が第2閾値未満に変化すると、最大走行速度を第1速度とする。
最大速度制限部は、走行部が停止後に走行を再開したとき、記憶部に記憶された最大走行速度に関する情報に基づいて、走行再開後の最大走行速度を決定する。
【0007】
上記の走行台車において、最大速度制限部は、車輪の舵角が第1閾値未満でありかつ最大走行速度(走行速度の最大値)が第1速度に設定されている状態から、舵角が増加して第1閾値以上に変化したときに、最大走行速度を第1速度から第2速度へと減少させている。このようにして、舵角が第1閾値以上と大きくなったときの走行部の最大速度を制限して、舵角が大きくなるに従って体感速度が大きくなるといった操作性の悪さを解消できる。その結果、走行台車の操作性を向上できる。
その一方、最大速度制限部は、舵角が第2閾値以上かつ最大走行速度が第2速度に設定されている状態から、舵角が減少して第2閾値未満に変化したときに、最大走行速度を第2速度から第1速度へと増加させている。ここで、第2閾値は第1閾値未満の値とされている。
このように、舵角が増加するときと減少するときとで最大走行速度を変更する舵角の閾値を異ならせることにより、検出された舵角が当該閾値付近で変動しても、最大走行速度の切り替えが発生しない。その結果、走行台車の操作性が悪くなることを回避できる。
【0008】
また、上記の走行台車においては、最大走行速度に関する情報が記憶部に記憶される。さらに、走行部が停止してその後に走行を再開すると、最大速度制限部は、記憶部に記憶された最大走行速度に関する情報に基づいて、走行再開後の最大走行速度を決定している。
これにより、走行の再開後においても走行台車の操作性をよくできる。なぜなら、例えば、走行停止から再開までの時間が短い場合に、走行停止前の操作イメージに近い状態で走行を再開できるからである。
また、舵角が第2閾値よりも大きくかつ第1閾値未満である場合には、舵角が当該角度となる前の走行状態によって、最大走行速度は第1速度又は第2速度のいずれかとなる。
従って、走行再開後の最大走行速度を、記憶部に記憶された最大走行速度に関する情報に基づいて決定することにより、舵角が第2閾値よりも大きくかつ第1閾値未満のときに走行部が停止した場合に、当該停止前の走行状態によらず、走行再開後の最大走行速度が無条件に第1速度又は第2速度と決定されることを回避できる。
【0009】
上記の走行台車は更新部をさらに備えてもよい。更新部は、走行部が停止している状態で舵角が変化した場合、変化後の舵角と記憶部に記憶されている最大走行速度に関する情報とに基づいて新たな最大走行速度に関する情報を決定し、記憶部に記憶されている最大走行速度に関する情報を、当該新たな最大走行速度に関する情報に更新する。
これにより、走行部の停止中に舵角が変更された場合であっても、当該変更後の舵角と新たな最大走行速度に関する情報とに基づいて、走行再開後の適切な最大走行速度を決定できる。その結果、走行中における舵角の変化に基づく最大走行速度の変更と同様に、走行停止中に変更した舵角の変化に基づき最大走行速度を変更できるので、走行台車を操作する作業者にとっては、走行再開後における走行台車の操作イメージを走行中の操作イメージと類似させることができるので、走行再開後において走行台車を操作しやすくなる。
また、走行中における最大走行速度の決定アルゴリズムと、走行再開時における最大走行速度の決定アルゴリズムと、を共通化できる。
【0010】
最大速度制限部は、舵角が第1閾値よりも大きい第3閾値未満であり、かつ、最大走行速度が第2速度とされている状態から、舵角が第3閾値以上に変化すると、最大走行速度を第2速度よりも遅い第3速度としてもよい。
また、舵角が第4閾値以上、かつ、最大走行速度が第3速度とされている状態から、舵角が第4閾値未満に変化すると、最大走行速度を第2速度としてもよい。第4閾値は、第2閾値よりも大きくかつ第3閾値未満である。
このように、最大走行速度を制限する閾値の設定数を増加することにより、より細かく最大走行速度を制限できる。その結果、走行台車の操作性をより向上できる。
【0011】
速度制御部は、走行部を走行中に加速するときの加速度を、走行部を停止状態から加速するときの加速度よりも小さくしてもよい。
これにより、走行時に走行台車の操作性が悪化することを抑制できる。
【0012】
最大速度制限部は、走行部を後進させる場合において、舵角が第5閾値未満でありかつ最大走行速度が第1速度よりも遅い第4速度とされている状態から、舵角が第5閾値以上に変化すると、最大走行速度を第4速度よりも遅い第5速度としてもよい。
また、舵角が第5閾値未満である第6閾値以上かつ最大走行速度が第5速度とされている状態から、舵角が第6閾値未満に変化すると、最大走行速度を第4速度とする。
このように、走行部を後退させる際にも舵角の大きさに基づいて最大走行速度を制限することにより、後退時の走行台車の操作性を向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る走行台車では、走行台車の操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るバンニング・デバンニング装置の側面図。
【
図5】バンニング・デバンニング装置の制御構成を示すブロック図。
【
図6】バンニング・デバンニング装置の全体動作を示すフローチャート。
【
図7】前進時の走行制御フローを示すフローチャート。
【
図8】前進時における舵角と最大走行速度の関係を示す図。
【
図9】後進時の走行制御フローを示すフローチャート。
【
図10】後進時における舵角と最大走行速度の関係を示す図。
【
図11】バンニング・デバンニング装置が前進するときの走行動作の一例を示す図。
【
図12】バンニング・デバンニング装置が前進するときの走行動作の他の一例を示す図。
【
図13】バンニング・デバンニング装置が前進するときの走行動作のさらなる他の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第1実施形態
(1)バンニング・デバンニング装置の構成
図1及び
図2を用いて、バンニング・デバンニング装置(以下、「装置1」とする)を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るバンニング・デバンニング装置の側面図である。
図2は、バンニング・デバンニング装置の斜視図である。
以下の説明においては、装置1の長さ方向を第1方向(矢印X)、幅方向を第2方向(矢印Y)、高さ方向を第3方向(矢印Z)と定義する。また、第1方向に延びる軸をX軸とし、第2方向に延びる軸をY軸とし、第3方向に延びる軸をZ軸とする。
【0016】
装置1は、例えばコンテナから荷を降ろす(デバンニング)、又は例えばコンテナに荷物を積む(バンニング)ために用いられる。したがって、荷のデバニング及び/又はバンニングするために、装置1はコンテナ配置位置まで移動させられる。
以下、
図1及び
図2を用いて、第1実施形態の装置1を説明する。
【0017】
装置1は、主に、コンベヤ3と、作業台5と、走行部7と、第1操作装置9と、制御部11と、を備える。
【0018】
(2)コンベヤ
コンベヤ3は、荷を上面に載せた状態で荷物投入部から荷物排出部まで搬送する装置である。以下、説明の簡略化のため、コンベヤ3のデバンニング時の荷の搬送方向上流側を前側とし、デバンニング時の荷の搬送方向下流側を後側とする。
コンベヤ3は、複数のコンベヤから構成されている。具体的には、コンベヤ3は、第1方向に並んで配置された、第1コンベヤ3aと、第2コンベヤ3bと、第3コンベヤ3cと、第4コンベヤ3dと、第5コンベヤ3eとを有している。第1コンベヤ3aはモータによって駆動されるベルトコンベヤである。第2コンベヤ3b~第5コンベヤ3eはフリーローラのローラコンベヤ、又は、ローラが駆動される駆動ローラコンベヤである。
また、第2コンベヤ3b~第5コンベヤ3eのうち一部をフリーローラのコンベヤとし、他のコンベヤを駆動ローラコンベヤとしてもよい。
【0019】
第1コンベヤ3aは、デバンニング作業時には作業者が荷物を置くための荷物投入部となり、バンニング作業時には荷の排出部となるコンベヤである。第1コンベヤ3aは、バンニング又はデバンニングを行うときに、例えば、コンテナ、トラックの荷積載部の出入口近傍、又は、その内部に配置される。
第1コンベヤ3aの荷物の搬送面は、コンベヤ駆動部31(
図5)により後側に移動させられる。
【0020】
第1コンベヤ3aの後端は、走行部7に対して、Y軸回りに回動可能に装着されている。さらに、第1コンベヤ3aを回動させるコンベヤ昇降部33が設けられている。コンベヤ昇降部33は、第1コンベヤ3aの先端を昇降する公知技術であり、昇降モータ、複数のギヤからなる回動駆動部などを有している。
また、第1コンベヤ3aの後端は、走行部7に対して、Z軸回りに回動可能に装着されている。より詳細には、前述のコンベヤ昇降部33の各種構造が、走行部7に対してZ軸回りに回動可能になっている。
これにより、作業者は、第1コンベヤ3aの先端を上下左右の所望の位置に移動させることができる。
【0021】
第2コンベヤ3bは、第1コンベヤ3aの後側に設けられている。第1コンベヤ3aと第2コンベヤ3bとの間には、第1コンベヤ3aの後端と第2コンベヤ3bとを架け渡すための第1追加コンベヤ3fが設けられている。これにより、第1コンベヤ3aの荷の搬送面と第2コンベヤ3bの荷物の搬送面とを、連続的に接続できる。
【0022】
第3コンベヤ3cは、走行部7の上部後端にY軸回りに回動可能に連結されている。具体的には、第3コンベヤ3cは、その前端と第2コンベヤ3bの後端との間に生じる隙間及び段差が小さくなるよう、すなわち、第2コンベヤ3bの後端と第3コンベヤ3cの前端との距離が最小限となるように、第3コンベヤ3cの搬送面の前端の近傍において、走行部7の上部後端に連結されている。これにより、第2コンベヤ3bの後端と第3コンベヤ3cの前端との距離を小さくできる。
第3コンベヤ3cの後端は、第1台車13の上部に支持されている。第1台車13は、前輪13aと後輪13bとを有し、後輪13bが走行面Fに接触している。これにより、第3コンベヤ3cの後端を、走行面Fから第1台車13の高さ分だけ高い位置に配置できる。
【0023】
また、第1台車13は、走行部7の下部後端においてY軸回りに回動可能に連結されている。さらに、第3コンベヤ3cの後端は、第1台車13に対して第1方向に相対移動可能である。
このような構成により、例えば、装置1が傾斜を有する走行面F上を走行する際に、第1台車13が走行部7の下部後端においてY軸周りに回動し、第3コンベヤ3cは走行部7の上部後端においてY軸周りに回動する。このときに、第3コンベヤ3cの後端が第1台車13に対して第1方向に相対移動することで、第1台車13及び第3コンベヤ3cはスムーズに回動できる。
【0024】
第4コンベヤ3dは、前端が第1台車13の上部に支持されている。具体的には、第1台車13の上部において、第4コンベヤ3dの前端は、連結部材(例えば、フック)により第3コンベヤ3cの後端に連結されている。これにより、第4コンベヤ3dの前端と第3コンベヤ3cの後端との距離が最小限となるように、つまり、第3コンベヤ3cの荷の搬送面と第4コンベヤ3dの荷の搬送面との間に生じる段差及び隙間を最小限にできる。
また、第4コンベヤ3dの前端は、第1台車13によって下方から支持された状態で第1方向に相対移動可能である。
【0025】
第5コンベヤ3eは、作業者が荷物を取り出すための荷物排出部である。
図1及び
図2に示すように、第5コンベヤ3eは、第2台車15の上部に設けられている。第2台車15は、走行面Fに接触した前輪15a及び後輪15bを有している。第5コンベヤ3eは、第2台車15に設けられた接続部材により、第4コンベヤ3dの後端と接続される。
第4コンベヤ3dの後端には、第2追加コンベヤ3g(追加コンベヤ装置の一例)が接続されている。具体的には、第4コンベヤ3dの後端には、第2追加コンベヤ3gの前端がY軸回りに回動可能に連結されている。第4コンベヤ3dの後端が第2台車15に接続された状態では、第2追加コンベヤ3gの後端が、垂れ下がった状態で、第5コンベヤ3eの荷の搬送面に接触している。これにより、第4コンベヤ3dの荷搬送面と第5コンベヤ3eの荷搬送面とを連続的に接続できる。
【0026】
(3)作業台
作業台5は、第1コンベヤ3aの下方に配置された、作業者が乗ることが可能なリフタである。作業者が作業台5の上に乗ることで、荷物を第1コンベヤ3aに載せることができる。
作業台5は、第2方向に長く延びており、そのため第1コンベヤ3aが作業台5の第2方向中央位置付近にある場合は、作業者は第1コンベヤ3aの第2方向のいずれの側にも立つことができる。
【0027】
作業台5は、作業者が荷物をコンベヤ3に積み込むときに、第1コンベヤ3aの位置に合わせて上下方向に移動可能である。そのための構造として、作業台5は、走行部7に対して、作業台昇降部51によって接続されている。作業台昇降部51は、作業台5を昇降駆動する公知の技術であって、シリンダ、駆動方向変換機構などを有している。これにより、作業者は、作業台5を上下の所望の位置に移動させることができる。
【0028】
(4)走行部
走行部7は、走行面F上を走行する走行装置である。本実施形態において、走行部7は、第1操作装置9の操作により走行方向を変更可能となっている。
また、走行部7は、第1コンベヤ3a及び第2コンベヤ3bを搭載し、後端部に第3コンベヤ3c及び第1台車13を連結する。さらに、第2台車15が第1台車13に支持された第4コンベヤ3dに接続されている。
これにより、走行部7が走行面Fを走行すると共に、走行部7に連結された第1台車13及び第2台車15が走行部7の走行に従って移動することにより、装置1は、第1コンベヤ3a~第5コンベヤ3eを移動できる。
【0029】
以下、
図1~
図3を用いて、本実施形態に係る走行部7の詳細構成を説明する。
図3は、走行部7の詳細構成を示す図である。
図3に示すように、走行部7は、一対の第1フレーム71と、第2フレーム72と、走行装置73と、を有する。
一対の第1フレーム71は、第1方向に長い部材であり、互いに所定の間隔を空けて配置されている。また、第1フレーム71のそれぞれは、第1方向の一端(走行部7の前進方向の一端)に、走行面Fに接触する従動輪74を有する。従動輪74は、Y軸回りに回転可能に第1フレーム71に取り付けられ、走行部7の走行とともに従動回転する。
第2フレーム72は、一対の第1フレーム71を架け渡すように配置された部材である。上記の第1コンベヤ3a、コンベヤ昇降部33、作業台5、及び作業台昇降部51は、第1フレーム71及び/又は第2フレーム72に設置される。
【0030】
走行装置73は、第2フレーム72に設けられ、走行部7を走行面F上にて走行させる。具体的には、走行装置73は、駆動輪75(車輪の一例)を有する。
駆動輪75は、第2フレーム72の幅方向の中心において、Y軸回りに回転可能に取り付けられている。また、駆動輪75は、走行面Fに接触している。駆動輪75のY軸回りの回転軸は、公知の減速機構を介して、走行モータ76の出力回転軸に接続される。これにより、駆動輪75は、走行モータ76の出力回転軸の回転に従ってY軸回りに回転することにより、走行部7を走行面F上にて走行させることができる。
図3に示す例では、駆動輪75は1つのみ設けられているが、これに限られない。第2方向に並んで配置された複数(2以上)の車輪により駆動輪75を構成してもよい。
【0031】
また、走行モータ76の出力回転軸には、第1エンコーダ81(
図5)が接続されている。第1エンコーダ81は、走行モータ76の出力回転軸(すなわち、駆動輪75)のY軸回りの回転角度を測定するエンコーダである。第1エンコーダ81としては、例えば、インクリメント型又はアブソリュート型でよい。
【0032】
さらに、駆動輪75は、操舵部70により、Z軸回りにも回転可能となっている。
操舵部70は、例えば、第1回転部材75aと、ステアリングシャフト77と、第2回転部材78と、回動伝達部材79と、により構成される。
第1回転部材75aは、駆動輪75のZ軸回りの回転軸に取り付けられたスプロケットである。ステアリングシャフト77は、長さ方向の一端に第1操作装置9を固定し、他端にギヤ77aを固定する。ステアリングシャフト77は、軸受部材77bにより、走行部7の所定位置において、所定の回転軸回りに回転可能に固定されている。
【0033】
第2回転部材78は、ギヤ77aと噛合する歯を有し、ギヤ77aの回転(すなわち、第1操作装置9の回転)に従って、Z軸回りに回転する部材である。第2回転部材78は、ギヤ77aと噛合する歯とは個別に、当該歯の回転軸と共通の回転軸回りに回転するスプロケットを有する。
第2回転部材78のスプロケットと、第1回転部材75aであるスプロケットとは、ローラチェーンである回動伝達部材79により連結され、第2回転部材78の回転が第1回転部材75aに伝達される構成となっている。
なお、変形例として、第1回転部材75aをプーリーとし、スプロケットの代わりにプーリーを第2回転部材78に設け、当該2つのプーリーをベルトで連結する構成としてもよい。
【0034】
第2回転部材78の回転軸には、第2エンコーダ82(
図5)が接続されている。第2エンコーダ82(検出部の一例)は、第2回転部材78の回転角度、すなわち、駆動輪75の舵角θを検出する。第2エンコーダ82としては、例えば、インクリメント型又はアブソリュート型である。
駆動輪75の舵角θは、装置1の長さ方向と駆動輪75の直径方向とがなす角度の絶対値と定義され、駆動輪75の直径方向が装置1の長さ方向と平行となった場合を0°とする。すなわち、装置1が直進するときの舵角θは0°である。
【0035】
上記の構成を有する操舵部70では、第1操作装置9の回転により、以下のようにして駆動輪75の舵角θを変更できる。
作業者が手動操作により第1操作装置9をステアリングシャフト77回りに回転させると、この回転がギヤ77aにより第2回転部材78に伝達され、第2回転部材78が回転する。
上記の第2回転部材78の回転が回動伝達部材79により第1回転部材75aへと伝達されることにより、第1回転部材75aがZ軸回りに回転する。第1回転部材75aのZ軸回りの回転に従って、駆動輪75の舵角θが変化する。
【0036】
上記の構成を有する走行部7は、走行モータ76により駆動輪75の回転速度を制御することにより、走行面F上を所望の速度で走行できる。また、駆動輪75の舵角θを第1操作装置9の回動により変更することにより、走行部7は、走行面F上における走行方向を変更できる。
【0037】
(5)第1操作装置
第1操作装置9は、ステアリングシャフト77の一端に固定され、ステアリングシャフト77回りに回転可能となっている。上記のように、第1操作装置9をステアリングシャフト77回りに回転させることにより、走行部7の駆動輪75の舵角θを変更できる。また、第1操作装置9には、
図4に示すように、装置1を操作するための各種ボタン等が設けられている。
以下、
図4を用いて、第1操作装置9の具体的な構成を説明する。
図4は、第1操作装置9の構成を示す図である。
第1操作装置9は、ハンドル91を有する。ハンドル91は、第1操作装置9の筐体Cの両側面に取り付けられている。ハンドル91は、装置1を走行中に、作業者により把持される。
【0038】
第1操作装置9は、筐体Cに各種ボタンを有する。具体的には、走行ボタン92と、非常停止ボタン93と、リセットボタン94と、ブザー停止ボタン95とが設けられている。さらに、走行ボタン92は、前進ボタン92aと後進ボタン92bとを有する。これらのボタンは、例えば、押ボタンである。
また、第1操作装置9は、各種スイッチを有する。具体的には、筐体Cに設けられた動作切替スイッチ96と、ハンドル91に設けられたイネーブルスイッチ97とが設けられている。動作切替スイッチ96は、キースイッチである。その他、セレクタスイッチを動作切替スイッチ96として使用できる。イネーブルスイッチ97は、例えば、押ボタン型のスイッチである。
さらに、第1操作装置9は、作業者に対して、視覚的又は聴覚的な情報により装置1の状態を通知する装置を有する。具体的には、第1操作装置9は、ブザー98と、ディスプレイ99と、を有する。
ディスプレイ99は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたディスプレイである。
【0039】
なお、装置1、
図1及び
図2に示すように、第1コンベヤ3aの先端側面に第2操作装置17をさらに有している。これにより、第1コンベヤ3a付近の作業者は、第2操作装置17を用いて、コンベヤ3及び/又は走行部7を操作できる。
第2操作装置17は、第2操作装置17による操作の有効/無効を切り替えるキースイッチ、セレクタスイッチなどのスイッチ(図示せず)を有する。第2操作装置17の操作を有効とした場合には、第2操作装置17による操作のみが有効となる。一方、第2操作装置17の操作を無効とした場合には、第1操作装置9のみで装置1を操作できる。
第2操作装置17による駆動輪75の舵角θの変更は、例えば、操舵部70の第2回転部材78又は第2エンコーダ82の回転軸に、公知の減速装置を介して接続されたモータ(図示せず)により行われる。
【0040】
(6)制御部
制御部11(コントローラの一例)は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。制御部11は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
【0041】
制御部11は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
後述する制御部11の各要素の機能は、一部又は全てが、制御部11を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、制御部11の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
【0042】
以下、
図5を用いて、制御部11による装置1の制御構成を説明する。
図5は、バンニング・デバンニング装置の制御構成を示すブロック図である。
制御部11には、第1操作装置9の前進ボタン92a、後進ボタン92bが接続されている。また、制御部11には、走行モータ76、第1エンコーダ81、第2エンコーダ82が接続されている。さらに、制御部11は、機能ブロックとして、速度制御部111と、最大速度制限部113と、記憶部115と、更新部117と、を有する。
【0043】
速度制御部111は、前進ボタン92a又は後進ボタン92bのいずれが押されているかに基づいて、走行モータ76の回転方向を決定し、決定した回転方向に走行モータ76の出力回転軸(駆動輪75)を回転させて、走行部7を前進又は後進させる。
すなわち、走行部7は、前進ボタン92aが押される間、一定の速度(最大速度制限部113にて決定された最大走行速度)にて前進する。後進ボタン92bは、走行部7を後進させるボタンである。走行部7は、後進ボタン92bが押される間、一定の速度(最大速度制限部113にて決定された最大走行速度)にて後進する。
【0044】
また、速度制御部111は、走行モータ76の出力回転軸、すなわち、駆動輪75の回転速度を制御することで、走行部7の走行速度を制御する。
速度制御部111は、走行モータ76の回転速度を、第1エンコーダ81により測定された走行モータ76の出力回転軸の回転角度から算出する。具体的には、ある所定のタイミングにおける回転角度と、当該所定のタイミングから所定時間が経過後の回転角度との差分を、上記所定時間により除算することにより、走行モータ76の出力回転軸の回転速度(すなわち、駆動輪75の回転速度)を算出できる。
【0045】
また、速度制御部111は、走行部7の走行速度が、後述する最大速度制限部113にて決定された最大走行速度以上とならないように、走行モータ76を制御する。
具体的には、速度制御部111は、走行モータ76の出力回転軸の回転速度が最大走行速度に対応する速度となったら、走行モータ76の出力回転軸の回転速度をそれ以上は上昇しないようにする。
【0046】
さらに、本実施形態において、速度制御部111は、走行部7を走行中に加速するときの加速度と、走行部7を停止状態から加速するときの加速度とを異ならせている。具体的には、走行部7を走行中に加速するときの加速度を、走行部7を停止状態から加速するときの加速度よりも小さくする。これにより、駆動輪の舵角θが0でない状態で走行部7が加速する際に装置1の操作性が悪化することを抑制できる。
【0047】
最大速度制限部113は、走行部7の走行速度の最大値である最大走行速度を決定する。具体的には、最大速度制限部113は、駆動輪75の舵角θと、現在設定されている最大走行速度に関する情報と、に基づいて、最大走行速度を変更するか否かを決定する。
【0048】
記憶部115は、制御部11を構成するコンピュータシステムの記憶領域の一部である。記憶部115は、後述する最大走行速度に関する情報を記憶する。その他、記憶部115は、制御部11の機能を実現するプログラム、装置1を制御するための各種設定及びパラメータなどを記憶する。
更新部117は、走行部7が停止している状態で第1操作装置9を回転させることにより駆動輪75の舵角θが変化した場合、停止中に舵角θが変化したことにより記憶部115に記憶されている最大走行速度に関する情報を更新する必要がある場合には、変化前後の舵角θと、記憶部115に現在記憶されている最大走行速度に関する情報とに基づいて、新たな最大走行速度に関する情報を決定する。その後、現在記憶されている最大走行速度に関する情報を、新たな最大走行速度に関する情報に更新する。
【0049】
上記の構成を有することにより、制御部11は、駆動輪75の舵角θ及び現在の最大走行速度に関する情報に基づいて、舵角θが所定の閾値を超えた場合には最大走行速度に関する情報を新たに決定し、走行速度が当該最大走行速度以上とならないよう走行部7を制御できる。その結果、装置1を走行中に、装置1の操作性が悪化することを抑制できる。
【0050】
図5に示すように、制御部11には、第1操作装置9の非常停止ボタン93、リセットボタン94、ブザー停止ボタン95、動作切替スイッチ96、イネーブルスイッチ97、が接続されている。
非常停止ボタン93が押されると、制御部11は、コンベヤ3及び走行部7の制御を停止後に、コンベヤ3及び走行部7への電力供給を停止する。
非常停止ボタン93が押された後、又は、エラーにより装置1が非常停止した後にリセットボタン94が押されると、制御部11は、必要に応じて上記エラーが解消されたか否かを確認後、エラーが解消されていれば、コンベヤ3及び走行部7への電力供給を開始する。
【0051】
動作切替スイッチ96は、装置1の動作状態を決定するためのスイッチである。具体的には、制御部11は、動作切替スイッチ96の選択位置に基づいて、装置1の動作状態として、装置1の全ての構成要素への電力供給を停止するオフ状態、走行部7を高速にて動作させる高速状態、及び、走行部7を低速にて動作させる低速状態のいずれかを選択する。
【0052】
装置1が非常停止状態となっていないときに、イネーブルスイッチ97が押されてオン状態になると、制御部11は、第1操作装置9からの操作入力を受け付けて、走行部7に当該操作入力に従った駆動電力を供給する。
【0053】
さらに、制御部11には、ブザー98及びディスプレイ99が接続される。
制御部11は、装置1において異常(エラー)が発生した場合などに、ブザー98に音を発するための信号を出力する。ブザー停止ボタン95が押されると、制御部11は、上記信号のブザー98への出力を停止する。
また、制御部11は、装置1の状態等に関する情報を視覚的な情報に変換し、当該視覚的な情報をディスプレイ99に表示させる。ディスプレイ99のタッチパネルにおいてタッチ操作などがされた場合には、制御部11は、当該操作を入力し、入力した操作に応じた処理を実行する。
【0054】
制御部11には、第2操作装置17が接続される。第2操作装置17の操作が有効であるときに作業者が第2操作装置17を操作すると、制御部11は、当該操作を入力し、入力した操作に従って、コンベヤ3及び/又は走行部7を制御する。
【0055】
制御部11には、コンベヤ駆動部31、コンベヤ昇降部33、作業台昇降部51が接続される。
制御部11は、コンベヤ駆動部31を制御して、第1コンベヤ3aの搬送面を移動させる。これにより、第1コンベヤ3aの搬送面に載置された荷物は、搬送方向に搬送される。
また、制御部11は、第2操作装置17の操作に基づいてコンベヤ昇降部33を制御し、第1コンベヤ3aの先端を作業者の所望の高さに移動させる。
さらに、制御部11は、作業台昇降部51を制御して、作業台5を作業者の所望の高さに移動させる。
【0056】
(7)バンニング・デバンニング装置の動作
(7-1)全体動作
図6を用いて、第1実施形態に係る装置1の全体動作を説明する。
図6は、バンニング・デバンニング装置1の全体動作を示すフローチャートである。
なお、以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
【0057】
ここで、以下の説明における舵角θの閾値について説明する。
第2閾値θ2は、第1閾値θ1未満である(θ2<θ1)。
第3閾値θ3は、第1閾値θ1よりも大きい(θ3>θ1)。
第4閾値θ4は、第2閾値θ2より大きく、かつ、第3閾値θ3未満である(θ2<θ4<θ3)。
第6閾値θ6は、第5閾値θ5未満である(θ6<θ5)。
なお、後進時に最大走行速度を切り替える舵角θの閾値である第5閾値θ5は、他の閾値と同じであってもよいし異なっていてもよく、第6閾値θ6は、他の閾値と同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0058】
最初に、ステップS1において、装置1の電源をオンにして、装置1の各構成要素に電力を供給する。
その後、ステップS2において、最大速度制限部113は、第2エンコーダ82から取得した電源オン時の駆動輪75の舵角θに基づいて、走行開始時の最大走行速度を決定する。
本実施形態においては、電源オン時の舵角θが第1閾値θ1未満(θ<θ1)であれば前進開始時の最大走行速度を第1速度V1とし、第1閾値θ1以上かつ第3閾値θ3未満(θ1≦θ<θ3)であれば第1速度よりも遅い第2速度V2とし、さらに、第3閾値θ3以上(θ≧θ3)であれば第2速度V2よりも遅い第3速度V3とする。
【0059】
後述するように、装置1が前進中の舵角θが第2閾値θ2より大きくかつ第1閾値θ1未満(θ2<θ<θ1)のときには、最大走行速度は第1速度V1又は第2速度V2のいずれかとなるが、電源オン時の舵角θが上記角度範囲内のときには、最大走行速度は第1速度V1の1つに定まる。
また、前進中の舵角θが第4閾値θ4より大きくかつ第3閾値θ3未満(θ4<θ<θ3)のときには、最大走行速度は第2速度V2又は第3速度V3のいずれかとなるが、電源オン時の舵角θが上記角度範囲内のときには、最大走行速度は第2速度V2の1つに定まる。
【0060】
変形例として、前進開始時の最大走行速度を、電源オン時の舵角θが第2閾値θ2未満(θ<θ2)であれば第1速度V1とし、第2閾値θ2以上かつ第4閾値θ4未満(θ2≦θ<θ4)であれば第2速度V2とし、さらに、第4閾値θ4以上(θ≧θ4)であれば第3速度V3としてもよい。
この場合、前進開始時の最大走行速度は、電源オン時の舵角θが第2閾値θ2より大きくかつ第1閾値θ1未満(θ2<θ<θ1)のときに第2速度V2の1つに定まり、第4閾値θ4より大きくかつ第3閾値θ3未満(θ4<θ<θ3)のときに第3速度V3の1つに定まる。
【0061】
後進開始時の最大走行速度については、電源オン時の舵角θが第5閾値θ5未満(θ<θ5)であれば第4速度V4とし、第5閾値θ5以上(θ≧θ5)であれば第5速度V5とする。
変形例として、前進開始時と同様、後進開始時の最大走行速度を、電源オン時の舵角θが第6閾値θ6未満(θ<θ6)であれば第4速度V4とし、第6閾値θ6以上(θ≧θ6)であれば第5速度V5としてもよい。
【0062】
走行開始時の最大走行速度を決定後、ステップS3において、作業者により前進ボタン92a又は後進ボタン92bが押されると、走行部7による走行が開始される。
具体的には、前進ボタン92aが押されると、速度制御部111が、走行モータ76の回転速度を、ステップS2にて決定された最大走行速度に対応する回転速度まで所定の割合で増加させる。これにより、走行部7は、停止状態から、ステップS2にて決定された最大走行速度を目標に第1加速度にて加速し、走行速度が最大走行速度に達すると一定の速度(最大走行速度)にて前進する。
一方、後進ボタン92bが押されると、走行部7は、停止状態から、ステップS2にて決定された最大走行速度を目標に加速し、走行速度が最大走行速度に達すると一定の速度(最大走行速度)にて後進する。
【0063】
走行中のステップS4において、制御部11は、第1操作装置9の操作に従って、走行部7の走行を制御する。具体的には、前進ボタン92aが押されている間は最大走行速度にて前進し、後進ボタン92bが押されている間は最大走行速度にて後進する。
また、走行中に作業者が第1操作装置9を回転させて駆動輪75の舵角θを変化させることで、走行部7の走行方向(つまり、装置1の走行方向)を変更できる。
【0064】
さらに、ステップS4においては、装置1の操作性が悪くなることを防止するため、駆動輪75の舵角θと前回決定された最大走行速度に関する情報とに基づいて、走行部7が走行中の最大走行速度を決定する処理が実行される。最大走行速度の決定方法については、後ほど詳しく説明する。
【0065】
装置1が走行中、ステップS5において、制御部11は、現在の最大走行速度に関する情報を監視し、記憶部115に記憶する。ここで、「最大走行速度に関する情報」は、最大走行速度を決定するために用いられる情報であり、本実施形態では、駆動輪75の舵角θと最大走行速度の設定値である。
具体的には、制御部11は、装置1を走行中に、第2エンコーダ82の測定値(舵角θ)と最大走行速度の設定値とを取得し、記憶部115に記憶する。
【0066】
装置1が走行中、制御部11は、所定の時間(例えば、制御部11の制御周期)毎に、走行部7が停止しているか否かを判断する(ステップS6)。当該判断は、前進ボタン92a又は後進ボタン92bが押されているか否かにより行う。これらのボタンが押されていなければ、走行部7は停止していると判断される。
他の実施形態において、第1エンコーダ81の測定値に基づいて、走行部7が停止しているか否かを判断してもよい。この場合、第1エンコーダ81の測定値に時間的な変化が見られないときに、走行部7が停止していると判断される。
【0067】
走行が継続していると判断した場合(ステップS6でNo)、プロセスはステップS4に戻り、走行制御が継続される。
一方、走行部7が停止していると判断した場合(ステップS6でYes)、プロセスはステップS7に進む。
【0068】
例えば、装置1を所望のコンテナの配置位置へ移動して走行部7が停止した場合には、作業者は、第2操作装置17によりコンベヤ3及び/又は作業台5を操作しながら、当該所望のコンテナから荷物を降ろす作業(デバンニング作業)、及び/又は、当該所望のコンテナに荷物を積む作業(バンニング作業)を開始する。その他、作業者は、走行途中の任意のタイミングで装置1を停止できる。
【0069】
本実施形態においては、走行部7が停止中に舵角θが変化した場合には、制御部11は、当該舵角θの変化により、記憶部115に記憶されている最大走行速度に関する情報(最大走行速度)を変更する必要があれば、当該記憶されている最大走行速度に関する情報を、新たな最大走行速度に関する情報に更新する。
【0070】
具体的には、ステップS7において、走行部7の停止中に第2エンコーダ82の測定値をモニターすることにより、駆動輪75の舵角θが変化したか否かを判断する。
停止中に舵角θが変化した場合(ステップS7でYes)、ステップS8において、更新部117が、変更後の駆動輪75の舵角θを、現在の最大走行速度に関する情報として記憶されている舵角θに上書き記憶する。
このようにして、更新部117は、記憶部115に記憶されている舵角θを、新たな最大走行速度に関する情報としての舵角θに更新できる。
【0071】
また、更新部117は、後述するステップS41~S50、及び、ステップS61~S65を実行して、記憶部115に記憶されている現在の最大走行速度に関する情報(舵角θ及び最大走行速度)と、変化後の新たな舵角θとに基づいて、新たな最大走行速度を決定し、当該新たな最大走行速度が、現在の最大走行速度に関する情報として記憶部115に記憶されているものと異なる場合には、当該新たな最大走行速度を、現在記憶されている最大走行速度に上書き記憶する。
このようにして、更新部117は、停止中に舵角θが変化することによって最大走行速度も変化する場合に、記憶部115に記憶されている最大走行速度を、新たな最大走行速度に関する情報としての最大走行速度に更新できる。
【0072】
ステップS8を実行して舵角θ及び/又は最大走行速度(最大走行速度に関する情報)を更新後、プロセスはステップS7に戻る。すなわち、停止中に舵角θの変化が検出されたときには、その都度、更新部117が記憶部115に記憶されている舵角θ及び/又は最大走行速度(最大走行速度に関する情報)を更新する。
【0073】
一方、停止中に舵角θが変化しない場合(ステップS7でNo)、ステップS9において、制御部11は、走行部7の走行を再開するか否かを判断する。それは、走行部7の停止中に前進ボタン92a又は後進ボタン92bが押されたか否かにより判断される。
走行部7の走行を再開すると判断した場合(ステップS9でYes)、プロセスは、ステップS3に戻る。すなわち、制御部11は、走行部7の走行を再開する。このとき、最大速度制限部113は、走行再開時に記憶部115に記憶されている最大走行速度に関する情報に示された最大走行速度を、走行再開時の最大走行速度と決定する。
【0074】
これにより、走行再開後のステップS4において、停止時又は停止中に変化した舵角θ及び最大走行速度(最大走行速度に関する情報)と、走行再開後の舵角θとに基づいて、走行再開後の最大走行速度が決定される。その結果、走行中における舵角θの変化に基づく最大走行速度の変更と同様に、走行停止中に変更した舵角θの変化に基づき最大走行速度を変更できるので、装置1を操作する作業者にとっては、走行再開後における装置1の操作イメージを走行中の操作イメージと類似させることができるので、走行再開後において装置1を操作しやすくなる。
また、上記のような処理により、走行中における最大走行速度の決定アルゴリズムと、走行再開時における最大走行速度の決定アルゴリズムと、を共通化できる。
【0075】
一方、走行部7の走行を再開しないと判断した場合(ステップS9でNo)、ステップS10において、制御部11は、装置1を完全に停止させるか否かを判断する。
例えば、動作切替スイッチ96においてオフ状態が選択されて装置1を完全に停止させる場合(ステップS10でYes)、制御部11は、装置1の全ての構成要素への電力供給を停止し、装置1を停止させる。
一方、動作切替スイッチ96において、上記のオフ状態以外が選択されて装置1をオン状態で維持する場合(ステップS10でNo)、プロセスはステップS7に戻り、装置1をオン状態のまま走行部7の停止状態を維持する。
【0076】
上記のステップS1~S10をプロセスとして実行することにより、装置1においては、走行部7の走行速度を、ステップS2及び後述するS4にて決定した最大走行速度を超えないようにできる。その結果、装置1の操作性が向上する。
また、走行部7が停止後に走行を再開したときに、記憶部115に記憶された最大走行速度に関する状態(駆動輪75の舵角θと最大走行速度)に基づいて、走行再開後の最大走行速度が決定される。
これにより、走行の再開後においても装置1の操作性をよくできる。なぜなら、例えば、走行停止から再開までの時間が短い場合に、走行停止前の操作イメージに近い状態で走行を再開できるからである。
【0077】
さらに、更新部117が、走行部7が停止している状態で駆動輪75の舵角θが変化した場合に、記憶部115に記憶されている最大走行速度に関する情報(舵角θと最大走行速度)を、変化後の新たな最大走行速度に関する情報に更新している。
これにより、走行部7の停止中に舵角θが変更されて、最大走行速度に関する情報(最大走行速度)に変化があった場合でも、当該変更後の舵角θと新たな最大走行速度に関する情報とに基づいて、走行再開後に適切な最大走行速度を決定できる。
その結果、走行中における舵角θの変化に基づく最大走行速度の変更と同様に、走行停止中に変更した舵角θの変化に基づき最大走行速度を変更できるので、装置1を操作する作業者にとっては、走行再開後における装置1の操作イメージを走行中の操作イメージと類似させることができるので、走行再開後において装置1を操作しやすくなる。
【0078】
なお、上記のステップS5~S9の変形例として、更新部117は、走行部7の走行が再開されるタイミングにおいて、記憶部115に記憶されている最大走行速度に関する情報を更新してもよい。
具体的には、更新部117は、前進ボタン92a又は後進ボタン92bが押されたタイミングにおける駆動輪75の舵角θを第2エンコーダ82から取得する。そして、最大速度制限部113が、後述するステップS41~S50、及び、ステップS61~S65を実行して、上記ボタンが押されたタイミングの舵角θと、記憶部115に記憶されている最大走行速度に関する情報とに基づいて、走行再開時の最大走行速度を決定できる。
【0079】
(7-2)走行制御の概略
次に、
図7~
図10を用いて、上記ステップS4における走行部7の走行制御について説明する。
図7は、前進時の走行制御フローを示すフローチャートである。
図8は、前進時における舵角θと最大走行速度の関係を示す図である。
図9は、後進時の走行制御フローを示すフローチャートである。
図10は、後進時における舵角θと最大走行速度の関係を示す図である。
走行部7を走行させるにあたり、まず、走行速度の目標となる最大走行速度が決定される。その際、最大走行速度を切り替える舵角θの閾値、及び、舵角θの各角度範囲において定まる最大走行速度は、走行部7を前進させるときと後進させるときで異なる。
よって、以下では、走行部7を前進させるときの走行制御と、後進させるときの走行制御とを個別に説明する。
【0080】
(7-3)前進時の走行制御
以下、
図7を用いて、走行部7が前進する時の走行制御フローを説明する。
走行制御フローを開始すると、まず、最大速度制限部113が、前進時における目標の最大走行速度を、以下のように決定する。
最初のステップS41において、最大速度制限部113は、第2エンコーダ82の現在の測定値から、現在の舵角θを取得する。その後、現在の舵角θとこの段階で定められている最大走行速度に関する情報、すなわち、前回の最大走行速度の決定フローで決定された最大走行速度に関する情報が示す最大走行速度(直前の最大走行速度と呼ぶ)とに基づいて、目標の最大走行速度を決定する。
以下、説明を明確にするために、(I)舵角θが第1閾値θ1未満(ステップS41でNo)(θ<θ1)の場合、(II)舵角θが第1閾値θ1以上、かつ、第3閾値θ3未満(ステップS41でYes、かつ、ステップS42でNo)(θ1≦θ<θ3)の場合、(III)舵角θが第3閾値θ3以上(ステップS41でYes、かつ、ステップS42でYes)(θ≧θ3)の場合で場合分けをして、各角度範囲における最大走行速度の決定フローを説明する。
【0081】
(I)θ<θ1の場合
舵角θが第1閾値θ1未満(ステップS41でNo)(θ<θ1)の場合、ステップS43において、最大速度制限部113は、直前の最大走行速度が第1速度V1であったか否かを判断する。
直前の最大走行速度が第1速度V1であった(ステップS43でYes)場合、ステップS44において、最大速度制限部113は、最大走行速度を第1速度V1のまま維持する。
【0082】
一方、直前の最大走行速度が第1速度V1でなかった(ステップS43でNo)、すなわち、第1速度V1よりも遅い第2速度V2、又は、第2速度V2よりも遅い第3速度V3であった場合、ステップS45において、最大速度制限部113は、さらに、現在の舵角θが第1閾値θ1未満である第2閾値θ2以下であるか否かを判断する。
現在の舵角θが第2閾値θ2未満(ステップS45でYes)(θ<θ2)である場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を、第2速度V2又は第3速度V3から、これらの速度よりも大きい第1速度V1に切り替える(ステップS44)。
一方、現在の舵角θが第2閾値θ2以上かつ第1閾値θ1未満(ステップS45でNo)(θ2≦θ<θ1)である場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を第2速度V2とする(ステップS46)。
【0083】
(II)θ1≦θ<θ3の場合
一方、現在の舵角θが第1閾値θ1以上、かつ、第3閾値θ3未満(ステップS41でYes、かつ、ステップS42でNo)(θ1≦θ<θ3)の場合、ステップS47及びS48において、最大速度制限部113は、直前の最大走行速度が第1速度V1~第3速度V3のいずれであったかを判断する。
直前の最大走行速度が第1速度V1であった(ステップS47でYes)場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を第1速度V1から第2速度V2へと切り替える(ステップS46)。
一方、直前の最大走行速度が第2速度V2であった(ステップS47でNo、かつ、ステップS48でYes)場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を第2速度V2のまま維持する(ステップS46)。
【0084】
さらに、直前の最大走行速度が第3速度V3であった(ステップS47でNo、かつ、ステップS48でNo)場合、ステップS49において、最大速度制限部113は、さらに、現在の舵角θが第4閾値θ4未満(θ<θ4)であるか否かを判断する。第4閾値θ4は、第2閾値θ2よりも大きく、かつ、第3閾値θ3未満である。
現在の舵角θが第4閾値θ4未満(ステップS49でYes)(θ<θ4)である場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を第3速度V3から第2速度V2に切り替える(ステップS46)。
一方、現在の舵角θが第4閾値θ4以上かつ第3閾値θ3未満(ステップS49でNo)(θ4≦θ<θ3)である場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を第3速度V3のまま維持する(ステップS50)。
【0085】
(III)θ≧θ3の場合
さらに、現在の舵角θが第3閾値θ3以上(ステップS41でYes、かつ、ステップS42でYes)(θ≧θ3)の場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を第3速度V3と決定する(ステップS50)。
【0086】
上記のようにして最大走行速度を決定後、ステップS51~S53において、速度制御部111が走行モータ76の回転速度を決定された最大走行速度に対応する回転速度まで所定の割合で増加又は減少させる。これにより、走行部7は、決定された最大走行速度まで加減速し、走行速度が最大走行速度に達すると一定の速度(最大走行速度)にて前進する。
なお、本実施形態において、速度制御部111は、走行部7を走行中に加速するときの加速度(第2加速度)を、走行部7を停止状態から加速するときの第1加速度よりも小さくしている。
また、走行部7を停止させるときの減速度と、走行部7を停止させることなく特定の速度まで減速するときの減速度とを、互いに異ならせてもよい。この場合、前者の減速度を、後者の減速度よりも大きくしてもよい。これにより、走行部7を停止させる指令を出力してから走行部7が実際に停止するまでの時間を短くできる。
【0087】
(7-4)前進時の走行制御のまとめ
上記ステップS41~S53を実行することによる前進時の走行制御の効果は、
図8を用いて、以下の通り記載できる。
図8は、前進時の舵角θと、上記のステップS41~S50を実行することにより決定される最大走行速度(前進時)との関係を示している。
図8において、舵角θが増加するときの最大走行速度の設定状態を実線で示し、減少するときの最大走行速度の設定状態を点線で示す。
【0088】
図8に示すように、舵角θが変化するに従い、最大走行速度は、舵角θの4つの閾値(第1閾値θ1~第4閾値θ4)にて切り替わる。具体的には、舵角θが増加するに従い、最大走行速度は2つの閾値(第1閾値θ1、第2閾値θ2)にて段階的に減少する。また、舵角θが減少するに従い、最大走行速度は2つの閾値(第2閾値θ2、第4閾値θ4)にて段階的に増加する。
【0089】
また、
図8に示すように、直前の舵角θが第2閾値θ2より大きくかつ第1閾値θ1未満(θ2<θ<θ1)の範囲内であり、かつ、直前の最大走行速度が第1速度V1であるか第2速度V2であるかにより、最大走行速度が第1速度V1から第2速度V2へと切り替わる閾値と、その逆に切り替わる閾値とが異なる。
具体的には、直前の最大走行速度が第1速度V1であり、かつ、舵角θが上記閾値の間にあるときには、舵角θが増加して第1閾値θ1以上となったときに、最大走行速度が第2速度V2へと切り替わる。
一方、直前の最大走行速度が第2速度V2であり、かつ、舵角θが上記閾値の間にあるときには、舵角θが減少して第2閾値θ2未満となったときに、最大走行速度が第1速度V1へと切り替わる。
【0090】
(7-5)後進時の走行制御
次に、
図9を用いて、後進時の走行制御を説明する。
最初のステップS61において、最大速度制限部113は、第2エンコーダ82の現在の測定値から、現在の舵角θを取得する。その後、現在の舵角θと直前の最大走行速度とに基づいて、目標の最大走行速度を決定する。
舵角θが第5閾値θ5未満(ステップS61でNo)(θ<θ5)の場合、ステップS62において、最大速度制限部113は、直前の最大走行速度が第4速度V4と定められていたか否かを判断する。なお、本実施形態において、第4速度V4は、第1速度V1の1/2倍であるが、第3速度V3よりは大きい速度と設定されている。しかし、これに限られず、第4速度V4を第1速度V1の1/2倍の速度とは異なる任意の大きさの速度とできる。
直前の最大走行速度が第4速度V4であった(ステップS62でYes)場合、ステップS63において、最大速度制限部113は、最大走行速度を第4速度V4のまま維持する。
【0091】
一方、直前の最大走行速度が第4速度V4でなかった(ステップS62でNo)、すなわち、第4速度V4よりも遅い第5速度V5であった場合、ステップS64において、最大速度制限部113は、さらに、現在の舵角θが第5閾値θ5未満である第6閾値θ6未満(θ<θ6)であるか否かを判断する。なお、本実施形態において、第5速度V5は、第3速度V3と同一の速度と設定されている。しかし、これに限られず、第5速度V5を、第3速度V3とは異なる任意の大きさの速度とできる。
現在の舵角θが第6閾値θ6未満(ステップS64でYes)(θ<θ6)である場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を第5速度V5から第4速度V4に切り替える(ステップS63)。
一方、現在の舵角θが第6閾値θ6以上かつ第5閾値θ5未満(ステップS64でNo)(θ6≦θ<θ5)である場合、最大速度制限部113は、最大走行速度を第5速度V5のまま維持する(ステップS65)。
【0092】
さらに、現在の舵角θが第5閾値θ5以上(ステップS61でNo)(θ≧θ5)の場合、最大速度制限部113は、目標の最大走行速度を第5速度V5と決定する(ステップS65)。
【0093】
上記のようにして最大走行速度を決定後、ステップS66~S68において、速度制御部111が走行モータ76の回転速度を決定された最大走行速度に対応する回転速度まで所定の割合で増加又は減少させる。これにより、走行部7は、決定された最大走行速度まで加減速し、走行速度が最大走行速度に達すると一定の速度(最大走行速度)にて後進する。
【0094】
(7-6)後進時の走行制御のまとめ
上記ステップS61~S68を実行することによる後進時の走行制御の効果は、
図10を用いて、以下の通り記載できる。
図10は、後進時の舵角θと、上記のステップS61~S65を実行することにより決定される最大走行速度(後進時)との関係を示している。
図10において、舵角θが増加するときの最大走行速度を実線で示し、減少するときの最大走行速度を点線で示す。
後進時の最大走行速度は、前進時と同様に、直前の舵角θが第6閾値θ6より大きくかつ第5閾値θ5未満(θ6<θ<θ5)の範囲内であり、かつ、直前の最大走行速度が第4速度V4である第5速度V5であるかにより、最大走行速度が第4速度V4から第5速度V5へと切り替わる閾値と、その逆に切り替わる閾値とが異なる。
具体的には、舵角θが第5閾値θ5未満(θ<θ5)であり、かつ、直前の最大走行速度が第4速度V4であった状態から、舵角θが増加して第5閾値θ5以上(θ≧θ5)となると、最大走行速度が第4速度V4から第5速度V5に切り替わる。
一方、舵角θが第6閾値θ6以上(θ≧θ6)であり、かつ、直前の最大走行速度が第5速度であった状態から、舵角θが減少して第6閾値θ6未満(θ<θ6)となると、最大走行速度が第5速度V5から第4速度V4に切り替わる。
【0095】
(7-7)バンニング・デバンニング装置の走行動作
以下、
図7~
図10を用いて説明したように装置1の走行が制御された際の装置1の走行動作を、
図11~
図13を用いて説明する。
図11は、バンニング・デバンニング装置1が前進するときの走行動作の一例を示す図である。
図12は、バンニング・デバンニング装置1が前進するときの走行動作の他の一例を示す図である。
図13は、バンニング・デバンニング装置1が前進するときの走行動作のさらなる他の一例を示す図である。なお、前進時の走行動作と後進時の走行動作は、最大走行速度を切り替える舵角θの閾値と各角度範囲において決定される最大走行速度とが異なる以外は、同一であるので、ここでは、前進時の走行動作のみを説明し、後進時の走行動作の説明は省略する。
【0096】
(I)走行動作例1
まず、
図11に示す走行動作(走行動作例1)について説明する。
図11の走行動作例1は、装置1が停止状態から前進し、前進中に駆動輪75の舵角θを0からθmax(舵角θの最大値)まで一定の割合で増加後、舵角θを当該最大値から0まで一定の割合で減少させたときの動作例である。
【0097】
走行動作例1において、前進を開始した時刻0において舵角θは0となっているため、時刻0における最大走行速度は第1速度V1と決定される。従って、走行部7は、停止状態(走行速度:0)から走行速度が第1速度V1を目標に第1加速度にて加速後、第1速度V1にて一定の速度で走行する。
その後、舵角θが増加し、時刻T1において舵角θが第2閾値θ2となる。このとき、直前の最大走行速度は第1速度V1とされているので、このタイミングで最大走行速度は第2速度V2とはならず、第1速度V1のまま維持される。その結果、走行部7は、時刻T1では、第1速度V1のまま一定の速度で走行を継続する。
【0098】
その後、舵角θがさらに増加し、時刻T2において第1閾値θ1となる。このとき、直前の最大走行速度は第1速度V1とされているため、このタイミングで最大走行速度が第2速度V2へと切り替わる。
すなわち、直前の舵角θが第1閾値θ1未満、かつ、最大走行速度が第1速度V1である状態から、舵角θが増加して第1閾値θ1以上に変化すると、最大走行速度が第1速度V1から第2速度V2に切り替わる。
その結果、走行部7は、時刻T2において、第2速度V2に向けて減速を開始し、その後、第2速度V2にて一定の速度で走行する。
【0099】
時刻T2以降、第2速度V2にて走行中に舵角θが増加し、時刻T3において、第4閾値θ4となる。このとき、直前の最大走行速度は第2速度V2とされているため、このタイミングで最大走行速度は第3速度V3とはならず、第2速度V2のまま維持される。その結果、走行部7は、時刻T3では、第2速度V2のまま一定の速度で走行を継続する。
【0100】
その後、第2速度V2にて走行中に舵角θがさらに増加し、時刻T4において、第3閾値θ3となる。このとき、直前の最大走行速度は第2速度V2とされているため、このタイミングで最大走行速度が第3速度V3へと切り替わる。
すなわち、直前の舵角θが第3閾値θ3未満、かつ、最大走行速度が第2速度V2である状態から、舵角θが増加して第3閾値θ3以上に変化すると、最大走行速度が第2速度V2から第3速度V3に切り替わる。
その結果、走行部7は、時刻T4において、第3速度V3に向けて減速を開始し、その後、第3速度V3にて一定の速度で走行する。
【0101】
時刻T4以降、第3速度V3にて走行中に、舵角θが最大値θmaxまで増加後に減少に転じ、時刻T5において第3閾値θ3に戻る。このとき、直前の最大走行速度は第3速度V3とされているため、このタイミングで最大走行速度は第2速度V2とはならず、第3速度V3のまま維持される。その結果、走行部7は、時刻T5では、第3速度V3にて一定の速度で走行を継続する。
【0102】
その後、第3速度V3にて走行中に舵角θがさらに減少し、時刻T6において、第4閾値θ4となる。このとき、直前の最大走行速度は第3速度V3とされているため、このタイミングで最大走行速度が第2速度V2へと切り替わる。
すなわち、直前の舵角θが第4閾値θ4より大きく(かつ第3閾値θ3未満であり)、かつ、最大走行速度が第3速度V3である状態から、舵角θが減少して第4閾値θ4以下に変化すると、最大走行速度が第3速度V3から第2速度V2に切り替わる。
その結果、走行部7は、時刻T6において、第2速度V2に向けて第2加速度にて加速を開始し、その後、第2速度V2にて一定の速度で走行する。
【0103】
時刻T6以降、第2速度V2にて走行中に舵角θが減少し、時刻T7において、第1閾値θ1となる。このとき、直前の最大走行速度は第2速度V2とされているため、このタイミングで最大走行速度は第1速度V1とはならず、第2速度V2のまま維持される。その結果、走行部7は、時刻T7では、第2速度V2のまま一定の速度で走行を継続する。
【0104】
その後、第2速度V2にて走行中に舵角θがさらに減少し、時刻T8において、第2閾値θ2となる。このとき、直前の最大走行速度は第2速度V2とされているため、このタイミングで最大走行速度が第1速度V1へと切り替わる。
すなわち、直前の舵角θが第2閾値θ2より大きく(かつ第1閾値θ1未満であり)、かつ、最大走行速度が第2速度V2である状態から、舵角θが減少して第2閾値θ2以下に変化すると、最大走行速度が第2速度V2から第1速度V1に切り替わる。
その結果、走行部7は、時刻T8において、第1速度V1に向けて第2加速度にて加速を開始し、その後、第1速度V1にて一定の速度で走行する。
【0105】
(II)走行動作例2
次に、
図12に示す走行動作(走行動作例2)について説明する。
図12の走行動作例2は、装置1が前進している途中で停止し、その後、前進を再開する動作例である。具体的には、装置1が停止状態から前進中に舵角θが一定の割合で増加し、舵角θが第1閾値θ1未満となった時刻T9において装置1が停止したとする。
装置1を停止中に、しばらく舵角θを一定角度に維持した後、舵角θを増加させ第1閾値θ1よりも大きな角度としたとする。これにより、停止中の時刻T10において、舵角θが第1閾値θ1になったとする。
さらに、舵角θを第1閾値θ1よりも大きな角度に維持した状態の時刻T11において前進を再開し、当該前進再開後に、舵角θを第3閾値θ3よりも大きな角度までさらに増加させたとする。
【0106】
この場合、走行部7が停止した時刻T9において、当該時刻における舵角θと最大走行速度(第1速度V1)とが記憶部115に記憶される。
その後、舵角θが増加すると、更新部117が、記憶部115に記憶されている舵角θを変化後の舵角θに更新する。
また、時刻T10において、記憶部115に記憶されている舵角θは第1閾値θ1未満であり、かつ、最大走行速度は第1速度V1である。従って、更新部117は、舵角θが第1閾値θ1となった時刻T10において、新たな最大走行速度を第2速度V2と決定する。その後、更新部117は、記憶部115に記憶されている最大走行速度を、第1速度V1から第2速度V2に更新する。
【0107】
時刻T11にて前進を再開する際、最大速度制限部113は、当該時刻において記憶部115に記憶されている最大走行速度としての第2速度V2を、時刻T11の走行再開時の最大走行速度とし、当該時刻において記憶部115に記憶されている舵角θを走行再開時の舵角θと判断する。
その結果、走行部7は、時刻T11において、停止状態から第2速度V2に向けて第1加速度にて加速を開始し、その後、第2速度V2にて一定の速度で走行する。
【0108】
前進再開後の時刻T12において、舵角θが第4閾値θ4となる。このとき、直前の最大走行速度は第2速度V2とされているため、このタイミングで最大走行速度は第3速度V3とはならず、第2速度V2のまま維持される。その結果、走行部7は、時刻T12では、第2速度V2にて一定の速度で走行を継続する。
【0109】
その後、第2速度V2にて走行中に舵角θがさらに増加し、時刻T13において、第3閾値θ3となる。このとき、直前の最大走行速度は第2速度V2とされているため、このタイミングで最大走行速度が第3速度V3へと切り替わる。
その結果、走行部7は、時刻T13において、第3速度V3に向けて減速を開始し、その後、第3速度V3にて一定の速度で走行する。
【0110】
(III)走行動作例3
さらに、
図13に示す走行動作(走行動作例3)について説明する。
図13の走行動作例3は、装置1が走行中に舵角θ(の測定値)が上記閾値付近で急激に変化した場合の動作例である。具体的には、装置1が第3速度V3(最大走行速度が第3速度V3である状態)にて前進中に、舵角θが減少し、時刻T14において第4閾値θ4になったとする。その後、舵角θが第4閾値θ4未満となりさらに減少後の所定の時刻に、舵角θの測定値にスパイク状のノイズが発生したとする。なお、当該ノイズのピーク値は、第3閾値θ3未満であるとする。
【0111】
この場合、時刻T14の直前の舵角θは第4閾値θ4より大きく(かつ第3閾値θ3未満)、かつ、最大走行速度は第3速度V3であるので、舵角θが第4閾値θ4となる時刻T14において、最大走行速度が第2速度V2に切り替わる。
その結果、走行部7は、第2速度V2に向けて第2加速度にて加速を開始し、その後、第2速度V2にて一定の速度で走行する。
【0112】
その後、第4閾値θ4未満で減少中の舵角θの測定値にスパイク状のノイズが発生することにより、舵角θが急激に増加し、時刻T15において第4閾値θ4となる。その後、舵角θは急激な増加から急激な減少に転じ、時刻T16において再度第4閾値θ4となる。
上記の時刻T15において、直前の最大走行速度は第2速度V2となっていることから、舵角θが急激に増加して第4閾値θ4より大きくなっても第3閾値θ3以上ではないので、最大走行速度は第2速度V2のまま維持される。
また、時刻T15から時刻T16の間においても、直前の最大走行速度は第2速度V2であり、かつ、舵角θは第3閾値θ3未満であることから、最大走行速度は第2速度V2のまま維持される。
すなわち、ノイズの発生前後で最大走行速度は第2速度V2のまま変化しない。
【0113】
このように、最大走行速度を切り替える舵角θの閾値を、舵角θの増加と減少で異ならせることにより、舵角θが閾値付近で変動しても、当該変動に起因して最大走行速度の頻繁な切り替えが発生しないので、走行速度の加速と減速の頻繁な切り替わりも発生しない。
【0114】
他の実施形態において、制御部11は、舵角θの測定値に急激な増加又は減少が発生した場合などに、当該急激な変化後の舵角θの測定値が所定時間内に連続して測定されなかった場合、すなわち、急激に増加又は減少した舵角θが一時的な変化によるものであると判断した場合には、当該変化後の舵角θに基づいて最大走行速度を切り替えなくともよい。
これにより、舵角θの測定値に大きなピーク値を有するノイズが含まれることとなっても、最大走行速度の切り替わりが発生しなくなる。
例えば、走行動作例3において、舵角θの測定値に含まれるノイズのピーク値が第3閾値θ3を超えたとしても、舵角θが第3閾値θ3を超えたのは一時的な変化によるものであると判断され、最大走行速度が第2速度V2から第3速度V3へと切り替わらない。
【0115】
(7-8)まとめ
上記に説明した本実施形態に係る装置1の走行動作の効果は、以下のようにまとめることができる。
第1に、装置1を走行させるときに、駆動輪75の舵角θが大きくなるに従って、走行部7の最大走行速度を小さくしている。これにより、走行動作例1に示したように、舵角θが大きくなるに従って走行速度も減少するので、舵角θが大きいときに、体感速度が大きくなりすぎるような走行速度で装置1が走行することを防止できている。また、舵角θが小さくなるに従って走行速度が増加しており、装置1を無駄に遅い速度にて走行させることを防止できている。
具体的には、舵角θが大きいときに最大走行速度を減少することで、装置1が小さな曲率を有する経路を走行する際の走行速度を制限できる。すなわち、装置1が曲率を有する経路を走行する際に過大な速度で走行しないので、曲率を有する経路を走行中の装置1に過大な遠心力が働くことを防止できる。その結果、体感速度が大きくなりすぎて操作性が悪化することを防止できる。
【0116】
第2に、装置1が前進する場合には、最大走行速度を変更する舵角θの閾値を複数(4つ)設定している。これにより、最大走行速度を変更する舵角θの閾値を1つのみとする場合と比較して、より細かく最大走行速度を制限できる。その結果、装置1の操作性をより向上できる。
【0117】
第3に、走行動作例1に示したように、走行部7を走行中に加速するときの第2加速度を、走行部7を停止状態から加速するときの第1加速度よりも小さくしている。これにより、走行時に装置1の操作性が悪化することを抑制できる。
また、停止からの走行開始時においては、第2加速度より大きい第1加速度で加速させても装置1の操作性が悪化する可能性は小さい。さらに、停止からの走行開始時により大きな加速度で加速した方が、走行速度が最大走行速度に達するまでの時間を短くできるので、作業効率を向上できる。
【0118】
第4に、走行動作例2に示したように、走行部7が停止したときの舵角θと最大走行速度とが記憶部115に記憶されている。当該停止後に走行部7が走行を再開すると、記憶部115に記憶された舵角θと最大走行速度(最大走行速度に関する情報)に基づいて、走行再開後の最大走行速度が決定される。
これにより、装置1の操作性が停止前と走行の再開後で大きく変化することを抑制できる。その結果、装置1の操作性を向上できる。
【0119】
第5に、走行動作例2に示したように、更新部117が、走行部7が停止している状態で舵角θが変化した場合に、記憶部115に記憶されている舵角θを変化後の舵角θに更新し、必要であれば、記憶部115に記憶されている最大走行速度を新たな最大走行速度に更新している。
これにより、走行部7の停止中に舵角θが変更された場合であっても、当該変更後の舵角θと新たな最大走行速度(最大走行速度に関する情報)に基づいて、走行再開後の適切な最大走行速度を決定できる。その結果、走行再開後の装置1の操作性がよくなる。
【0120】
第6に、本実施形態においては、舵角θが増加しているか減少しているかにより、最大走行速度を変化させる舵角θの閾値を異ならせている。具体的には、舵角θが減少しているときの閾値を、舵角θが増加しているときの閾値よりも小さくしている。
これにより、走行動作例3に示したように、第2エンコーダ82にて検出された舵角θが、最大走行速度が変化する閾値付近で変動しても、当該変動に従って最大走行速度の切り替えが発生することを回避できる。その結果、舵角θの閾値付近で走行部7が加速と減速とを繰り返すことがないので、装置1の操作性が悪くなることを回避できる。
【0121】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施例及び変形例は必要に応じて任意に組み合わせ可能である。
また、
図6、
図7、及び
図9に示されたフローチャートにおける各ステップの処理は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、処理の順番及び/又は処理内容を変更できる。
(A)走行台車はバンニング・デバンニング装置1に限定されない。上記の第1実施形態で説明した走行速度の制御方法は、AGV(Automated Guided Vehicle、無人搬送車)などの他の移動体に応用できる。
【0122】
(B)装置1の走行を制御する構成は、第1操作装置9の前進ボタン92a及び後進ボタン92bに限られない。例えば、装置1にアクセルを設け、速度制御部111が当該アクセルの開度に基づいて、走行部7の走行速度を制御してもよい。
この場合、速度制御部111は、アクセル開度が走行部7を最大走行速度よりも高速に走行させる開度でない場合には、アクセル開度に従って走行部7の走行速度を決定してもよい。逆に言うと、アクセル開度が走行部7を最大走行速度よりも高速に走行させる開度である場合に、走行速度を制限してもよい。
【0123】
(C)上記の第1実施形態においては、最大走行速度が第3速度V3から第2速度V2に切り替わる第4閾値θ4は、第1速度V1から第2速度V2に切り替わる第1閾値θ1よりも大きかったが、これに限られず、第4閾値θ4を第2閾値θ2よりも大きく、かつ、第1閾値θ1未満としてもよい。
【0124】
(D)走行中に速度を増加させるための第2加速度を、停止から走行を開始するときの第1加速度よりも大きくしてもよい。これにより、装置1を用いた作業効率を向上できる。
【0125】
(E)上記の第1実施形態においては、走行中に停止すると、舵角θが記憶部115に記憶されていたが、これに限られず、舵角θを記憶部115に記憶せず、停止中も舵角θを常時測定し続けてもよい。
この場合、停止中に舵角θが変化して、記憶部115に記憶している最大走行速度を切り替える必要がある場合には、変化後の舵角θなどに基づいて算出された新たな最大走行速度のみを記憶部115に記憶してもよい。
【0126】
(F)上記の第1実施形態においては、記憶部115に記憶される最大走行速度に関する情報は、舵角θと最大走行速度であった。しかし、これに限られず、
図8に示す最大走行速度と舵角θとの関係を表す2つのグラフ(
図8の実線にて表したグラフ、点線にて表したグラフ)のうち、いずれのグラフをたどっていたかを常に把握し(監視し)、最大走行速度に関する情報として記憶部115に記憶してもよい。
この場合には、例えば、
図8に示す2つのグラフを舵角θの関数として表した2つの関数、又は、当該グラフの各点を記録した2つのテーブルなどを、予め記憶部115に記憶しておく。
【0127】
そして、走行再開時に、最大速度制限部113は、記憶部115に記憶されている最大走行速度に関する情報を参照し、上記いずれのグラフを用いて最大走行速度を算出するかを決定できる。その後、走行再開時の舵角θと当該選択したグラフとを用いて、最大走行速度を算出できる。
具体的には、最大走行速度と舵角θとの関係を舵角θの関数として表した場合には、当該関数に走行再開時の舵角θを代入することで、走行再開時の最大走行速度を算出できる。
一方、最大走行速度と舵角θとの関係をテーブルとして表した場合には、当該テーブルにおいて、走行再開時の舵角θに最も近い舵角θに関連付けられている最大走行速度を決定するか、又は、走行再開時の舵角θがどの角度範囲に含まれているかに基づいて最大走行速度を決定できる。
なお、この場合、走行再開時の舵角θが分かっていればよいので、舵角θを記憶部115に記憶しなくともよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、車輪の舵角をステアリング操作により変更することで走行方向を変化させる走行台車に広く適用できる。
【符号の説明】
【0129】
1 バンニング・デバンニング装置
3 コンベヤ
3a 第1コンベヤ
3b 第2コンベヤ
3c 第3コンベヤ
3d 第4コンベヤ
3e 第5コンベヤ
3f 第1予備コンベヤ
3g 第2予備コンベヤ
31 コンベヤ駆動部
33 コンベヤ昇降部
5 作業台
51 作業台昇降部
7 走行部
71 第1フレーム
72 第2フレーム
73 走行装置
74 従動輪
75 駆動輪
75a 第1回転部材
76 走行モータ
70 操舵部
77 ステアリングシャフト
77a ギヤ
77b 軸受部材
78 第2回転部材
79 回動伝達部材
81 第1エンコーダ
82 第2エンコーダ
9 第1操作装置
91 ハンドル
92 走行ボタン
92a 前進ボタン
92b 後進ボタン
93 非常停止ボタン
94 リセットボタン
95 ブザー停止ボタン
96 動作切替スイッチ
97 イネーブルスイッチ
98 ブザー
99 ディスプレイ
11 制御部
111 速度制御部
113 最大速度制限部
115 記憶部
117 更新部
13 第1台車
15 第2台車
13a、15a前輪
13b、15b後輪
17 第2操作装置
V1 第1速度
V2 第2速度
V3 第3速度
V4 第4速度
V5 第5速度
θ 舵角
θ1 第1閾値
θ2 第2閾値
θ3 第3閾値
θ4 第4閾値
θ5 第5閾値
θ6 第6閾値