IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図1
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図2
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図3
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図4
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図5
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図6
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図7
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図8
  • 特許-飛行装置、飛行方法及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】飛行装置、飛行方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/08 20060101AFI20220712BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220712BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C39/02
B64D45/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018110013
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019209927
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太宰 慎治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智洋
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】太田 政典
(72)【発明者】
【氏名】松田 英明
(72)【発明者】
【氏名】水品 隆広
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-56921(JP,A)
【文献】特開2017-56898(JP,A)
【文献】特開2017-206190(JP,A)
【文献】特開2018-79911(JP,A)
【文献】特開2018-70010(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109903(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154520(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/164666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置を飛行させる推進手段と、
前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御手段と、
を備える、
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項2】
前記自装置が飛行時に飛行のための制御が失われて落下する事態に陥ったか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記判定手段により前記自装置が前記落下する事態に陥ったと判定された場合に、前記空気抵抗制御手段は、他の物体と衝突する際の前記自装置の衝突速度を自然落下速度よりも減少させるために、前記空気抵抗手段を展開する、
ことを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
【請求項3】
前記推進手段は、回転可能なブレードを有するローターを含み、前記保護枠は前記ブレードを保護している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の飛行装置。
【請求項4】
前記自装置には、複数の前記ローター及び複数の前記保護枠が設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の飛行装置。
【請求項5】
前記自装置の傾きを検出するジャイロセンサ又は加速度センサを含み、
前記自装置が前記落下する事態に陥った場合に、前記ジャイロセンサ又は前記加速度センサにより所定時間の間に継続して一定の方向への前記傾きが検出された場合、前記空気抵抗制御手段は、前記複数の保護枠のうちの前記傾きの方向にある一又は複数の特定の保護枠に、前記特定の保護枠以外の他の保護枠よりも早く前記空気抵抗手段を展開する、
ことを特徴とする請求項4に記載の飛行装置。
【請求項6】
前記空気抵抗手段は、空気抵抗膜を含み、
前記空気抵抗膜は、前記自装置の前記飛行時には、折り畳まれて又は巻き取られて、前記保護枠の前記所定の部分に格納されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の飛行装置。
【請求項7】
前記所定の部分は、前記保護枠の中央部と周辺部とを繋ぐ支柱部分である、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の飛行装置。
【請求項8】
1つの前記保護枠には複数の前記支柱部分が設けられており、前記空気抵抗膜は、前記複数の支柱部分に分割されて格納されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の飛行装置。
【請求項9】
前記空気抵抗制御手段は、前記保護枠の前記周辺部のレールに沿って前記空気抵抗膜を展開する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の飛行装置。
【請求項10】
前記他の物体は、地面を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の飛行装置。
【請求項11】
前記推進手段は、閉状態と、前記閉状態から回動させた開状態と、の間で姿勢を変化させることができるように構成されており、且つ、前記飛行時には前記開状態とされ、
前記地面に落下する直前において、前記推進手段を前記閉状態に変化させる落下姿勢制御手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項10に記載の飛行装置。
【請求項12】
前記推進手段が前記閉状態である場合の前記自装置の形状は、球状である、
ことを特徴とする請求項11に記載の飛行装置。
【請求項13】
前記自装置の外部に存在する外部機器から制御信号を受信する通信手段を更に備え、
前記通信手段により受信された前記制御信号に応じて、空気抵抗制御手段は、前記空気抵抗手段を展開する、
ことを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
【請求項14】
飛行装置を飛行させる推進手段と、前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、を備える前記飛行装置の飛行方法であって、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御工程、
を含む、
ことを特徴とする飛行方法。
【請求項15】
飛行装置を飛行させる推進手段と、前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、を備える前記飛行装置のコンピュータを、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御手段、
として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中を飛行する飛行装置への衝撃を緩和する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現状では、ドローンと呼ばれる小型で無人飛行が可能な飛行装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-056921号公報
【文献】国際公開第2017/073310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている飛行装置は、何らかの原因で飛行のための制御が失われて落下する事態に陥った場合に、自然落下速度で落下してしまうため、落下の衝撃により飛行装置が破壊されてしまうという問題があった。
また、前記特許文献2に開示されている画像撮影システム等では、飛行体が落下する速度を制御するパラシュートを備える飛行装置が開示されているが、パラシュートは大掛かりであり、小型の飛行装置に搭載するには、より簡素なものとする必要があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、飛行のための制御が失われて落下する事態に陥った場合に、衝突速度を減少させることで他の物体との衝突により飛行装置が破壊されてしまうことを回避することができ、且つ、パラシュートよりも簡素な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の飛行装置の一様態は、
自装置を飛行させる推進手段と、
前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御手段と、
を備える、
ことを特徴とする。
また、前記目的を達成するため、本発明の飛行方法の一様態は、
飛行装置を飛行させる推進手段と、前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、を備える前記飛行装置の飛行方法であって、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御工程、
を含む、
ことを特徴とする。
また、前記目的を達成するため、本発明のプログラムの一様態は、
飛行装置を飛行させる推進手段と、前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、を備える前記飛行装置のコンピュータを、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御手段、
として機能させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飛行のための制御が失われて落下する事態に陥った場合に、衝突速度を減少させることで他の物体との衝突により飛行装置が破壊されてしまうことを回避することができ、且つ、パラシュートよりも簡素な技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る飛行装置の外観を示す図であり、(a)は閉状態の、(b)は開状態の飛行装置の外観を示す図である。
図2】飛行装置のシステム構成の一例を示す図である。
図3】飛行装置のローターの概略図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図4】空気抵抗膜が保護枠の支柱部分に(a)折り畳まれた状態、(b)巻き取られた状態で格納されている状態を表す断面図である。
図5】(a)図3(b)のY-Y線に沿う断面図であり、(b)保護枠の周辺部に配設されたワイヤ等を表す平面図である。
図6】保護枠に沿って空気抵抗膜を展開している状態を表す平面図である。
図7】保護枠に沿って空気抵抗膜を展開させた状態を表す平面図である。
図8】短冊状又は細長い三角形状の複数の板状部材で構成された空気抵抗手段の例を示す図である。
図9】飛行装置が図中手前の方向に傾いて落下する状態等を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0010】
まず、本発明の一実施形態に係る飛行装置の概略的な構成等について説明する。図1は、本実施形態に係る飛行装置100の外観を示す図である。具体的には、図1(a)は、ローター102を閉じた状態(以下、閉状態という。)の飛行装置100の外観を示す図であり、図1(b)は、ローター102を開いた状態(以下、開状態という。)の飛行装置100の外観を示す図である。
図1(a)、図1(b)に示すように、飛行装置100は、メインフレーム101と、4つのローター102と、を備えて構成されている。
【0011】
ローター102は、それぞれヒンジ103を介してメインフレーム101に取り付けられている。また、ローター102は、回転可能なブレード104や、ブレード104を回転させるためのモータ105や、ブレード104やモータ105を保護する保護枠106等を有している。
保護枠106は、ローター102ごとに設けられており、各ブレード104をそれぞれ1つの保護枠106が保護するようになっている。なお、保護枠106にはフィンガーガード107が設けられている。
【0012】
また、ローター102は、モータ105を支持できるように構成されており、モータ105のモータ軸にブレード104が固定されている。本実施形態では、ローター102が自装置を飛行させる推進手段を構成している。
そして、本実施形態では、ローター102や保護枠106が複数(本実施形態では4つ)設けられている。なお、保護枠106や、保護枠106に格納された空気抵抗手段(後述)については、後で詳しく説明する。
【0013】
メインフレーム101の中心部には、動画や静止画を撮影可能なカメラ200が取り付けられている。
また、メインフレーム101の内部には、後述する各種制御機器(後述する図2参照)が収められている。
【0014】
ヒンジ103は、図1(a)に示すように、飛行装置100の投げ上げに適した閉状態と、図1(b)に示すように、飛行装置100の飛行に適した開状態と、に各ローター102を変形できるように、0度~90度の角度範囲で回動できるようになっている。すなわち、各ローター102は、閉状態と、閉状態から回動させた開状態と、の間で姿勢を変化させることができるように構成されている。
本実施形態では、図1(a)に示すように、各ローター102が閉状態である場合の自装置の形状は球状であり、飛行装置100の投げ上げや持ち運びに適した形状になっている。そして、メインフレーム101には、各ローター102を閉状態から90度だけ回動させた開状態の位置で、各ローター102が90度を超えて回動しないように規制する図示しない規制部材が設けられている。
【0015】
図2は、飛行装置100のシステム構成の一例を示す図である。
図2に示すように、コントローラ401には、カメラ200を含むカメラシステム402や、飛行装置100と基準面との距離(高度)を測定するための超音波センサ403a、飛行装置100の傾きを検出するためのジャイロセンサ403bや加速度センサ403c、自装置の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)センサ403d等から構成されるフライトセンサ403が接続されている。
【0016】
また、コントローラ401には、前述した4つのローター102(#1~#4)の各モータ105を駆動するモータドライバ404や、バッテリ406の電圧をモニタしながら各モータドライバ404に電力を供給するパワーセンサ405が接続されている。
なお、特には図示しないが、バッテリ406の電力は、401~405の各制御ユニットにも供給される。
【0017】
コントローラ401は、フライトセンサ403から、飛行装置100の高度及び姿勢に関する情報をリアルタイムで取得する。また、コントローラ401は、パワーセンサ405を介して、バッテリ406の電圧をモニタしながら、4つのローター102(#1~#4)の各モータドライバ404に、それぞれパルス幅変調に基づくデューティ比による電力指示信号を送信する。これにより、#1から#4のモータドライバ404はそれぞれ、4つのローター102(#1~#4)の各モータ105の回転速度を制御するようになっている。
また、コントローラ401は、カメラシステム402を制御して、カメラ200による撮像動作を制御するようになっている。
【0018】
ここで、飛行装置100の飛行開始から飛行終了までの動作について説明する。
飛行装置100は、各ローター102を、閉状態(図1(a)参照)と開状態(図1(b)参照)との間で姿勢を変化させることができるようになっている。
そして、ユーザは、閉状態の飛行装置100をボールのように空中に投げ上げることができ、その後、図2に示すコントローラ401の制御により、落下状態に移るときに各モータ105を駆動させ、各ブレード104の回転により揚力を発生させることで、飛行装置100が開状態に変化する。このように、各ローター102は、飛行時には開状態とされる。
【0019】
そして、飛行装置100は、例えば、予め定められている目的高度(例えば、地面(基準面)から2mの高さ位置)を飛行する飛行状態になって、カメラ200による撮像を行うことができる。
また、コントローラ401の制御により、飛行を終えるときに各モータ105を停止させることで、飛行装置100が閉状態に変化し、各ローター102がメインフレーム101に格納された状態になって、飛行を終了するようになっている。
【0020】
次に、本実施形態に係る飛行装置100において、飛行装置100が飛行時に飛行のための制御が失われて落下する事態に陥ったと判定された場合に他の物体と衝突する際の自装置の衝突速度を自然落下速度よりも減少させるための構成等について説明する。
飛行装置100が飛行時に飛行のための制御を失って落下する事態に陥ってしまう場合としては、例えば、バッテリ406の電池切れやモータ105の故障等の、飛行装置100の様々な不具合が発生した場合が想定される。
本実施形態では、前述したように、ローター102の保護枠106に空気抵抗手段が格納されている。
【0021】
空気抵抗手段は、例えばビニールや紙等からなる空気抵抗膜を有するように構成されており、自装置の飛行時には保護枠106の所定の部分に格納されている。
本実施形態では、図3(a)、図3(b)に示すように、ローター102の保護枠106には、ブレード104を回転させるためのモータ105が配置されている中央部106aと、ブレード104等の周辺の周辺部106bと、を繋ぐ支柱部分106cが形成されている。なお、図3(a)、図3(b)では、フィンガーガード107等の図示が省略されている。
【0022】
そして、空気抵抗膜110は、保護枠106の支柱部分106cに、折り畳まれたり(図4(a)参照)巻き取られた状態で(図4(b)参照)格納されている。
なお、図4(a)、図4(b)は、図3(b)のX-X線に沿う断面図である。また、本実施形態では、図3(a)、図3(b)に示したように、1つの保護枠106(すなわち1つのローター102)に、複数の支柱部分106cが設けられており、各支柱部分106cにそれぞれ空気抵抗膜110が格納されている。このように、本実施形態では、空気抵抗膜110は、保護枠106の複数の支柱部分106cに分割されて格納されているが、空気抵抗膜110を、保護枠106の複数の支柱部分106cのうちの1つの支柱部分106cのみに格納するように構成することも可能である。
【0023】
そして、本実施形態では、空気抵抗膜110は、ローター102の保護枠106の周辺部106bに設けたレールに沿って展開されるようになっている。
以下、図5(a)、図5(b)に基づいて具体的に説明する。なお、図5(a)は、図3(b)のY-Y線に沿う断面図である。
【0024】
本実施形態では、保護枠106の周辺部106bは円形に形成されており、周辺部106bの内部が空洞とされてカーテンレール構造のレールLが形成されている。そして、レールL内には、レールLすなわち周辺部106bの全域にわたってワイヤ111が配設されており、ワイヤ111に空気抵抗膜110の一端部が固定されている。
なお、本実施形態では、ワイヤ111に固定される空気抵抗膜110の部分に一体的にフランジ110aが形成されており、フランジ110aがワイヤ111に固定されている。そして、フランジ110aがレールL(すなわち保護枠106の周辺部106bの内壁)と係合することで、ワイヤ111に固定された空気抵抗膜110の一端部がレールLから外れないようになっている。
【0025】
そして、本実施形態では、保護枠106の周辺部106bのレールL内に配設されたワイヤ111の両端がヒンジ103(図5(b)では図示省略。図1(a)、図1(b)参照)を介して飛行装置100のメインフレーム101側に引き出されている。
そして、ワイヤ111の両端のうちの一方の端部を、メインフレーム101内に配置した図示しないモータを駆動させて引っ張ることができるようになっている。
【0026】
ワイヤ111はモータにより引っ張られると、レールL(周辺部106b)に沿ってレールL内を移動する(図5(b)の矢印A参照)。
そして、ワイヤ111がレールL内を移動すると、それに引っ張られて保護枠106の支柱部分106cに格納されていた空気抵抗膜110が引き出されていき、図6に示すように、保護枠106に沿って空気抵抗膜110を展開させることができるようになっている(図6の矢印A参照)。
【0027】
なお、図6や後述する図7図9では、空気抵抗膜110(空気抵抗手段)を見やすくするためにドットを付して示している。
また、飛行装置100のメインフレーム101側に引き出されたワイヤ111の両端のうちの一方の端部を、モータを駆動させて引っ張る代わりに、例えば、一方の端部にバネを付けておき、空気抵抗膜110を展開させる際に、バネの弾発力でワイヤ111を引っ張るように構成することも可能である。
【0028】
一方、本実施形態に係る飛行装置100のコントローラ401は判定手段及び空気抵抗制御手段として機能し、判定手段は、飛行装置100が飛行時に飛行のための制御が失われて落下する事態に陥ったか否かを判定し、判定手段により飛行装置100が落下する事態に陥ったと判定された場合に、空気抵抗制御手段は、他の物体と衝突する際の自装置の衝突速度を自然落下速度よりも減少させるために、保護枠106に沿って保護枠面(すなわち保護枠106の中央部106aと周辺部106bと各支柱部分106cとを通る面)の少なくとも1部を塞ぐように空気抵抗手段を展開するようになっている。
以下、具体的に説明する。
【0029】
本実施形態では、コントローラ401が判定手段及び空気抵抗制御手段として機能するように構成されており、以下、判定手段401及び空気抵抗制御手段401として説明するが、判定手段及び空気抵抗制御手段をコントローラ401とは別体に構成することも可能である。
また、判定手段401は、例えば、フライトセンサ403(加速度センサ403c等)から取得した情報に基づいて、飛行時に自装置が降下していることを検出した際に、自装置が降下する制御を行った結果として降下しているかを判断する。そして、制御の結果として降下しているのではないと判断した場合に、飛行のための制御が失われて落下する事態に陥っていると判定する。
【0030】
そして、空気抵抗制御手段401は、判定手段401により自装置が飛行時に飛行のための制御が失われて落下する事態に陥ったと判定されると、前記のようにメインフレーム101内のモータを駆動させて引っ張る等してワイヤ111をレールL内で移動させて、図6に示したように、空気抵抗膜110を保護枠106の支柱部分106cから引き出す。
そして、図7に示すように、保護枠106に沿って保護枠面を塞ぐように空気抵抗膜110(空気抵抗手段)を展開させる。
【0031】
空気抵抗膜110(空気抵抗手段)が展開していないと(図5(b)等参照)、飛行装置100が落下する際、空気がローター102の保護枠106内を下から上に何ら抵抗を受けずに通過するため、飛行装置100は自然落下速度で落下してしまう。
これに対し、本実施形態のように飛行装置100が落下する際に空気抵抗膜110を展開すると(図7参照)、空気抵抗膜110により保護枠106に沿って保護枠面が塞がれているため、空気がローター102の保護枠106内を下から上に通過することができず、空気抵抗が発生する。
【0032】
このように、本実施形態に係る飛行装置100、飛行方法及びプログラムでは、飛行装置100が飛行のための制御が失われて落下する事態に陥ったと判定された場合でも、展開した空気抵抗手段(空気抵抗膜110)により空気抵抗が発生するため、飛行装置100の落下速度を自然落下速度よりも減少させることが可能となる。
このため、地面等の他の物体と衝突する際の自装置の衝突速度を自然落下速度よりも減少させることが可能となり、他の物体との衝突により飛行装置100が破壊されてしまうことを回避することが可能となる。
【0033】
また、前記特許文献2に開示されている画像撮影システム等のように、飛行装置100がパラシュートを備えるように構成すると、飛行装置100のメインフレーム101(図1(a)、図1(b)参照)にパラシュートを収納するなどしなければならなくなり、その分、飛行装置100が大型化してしまったり、パラシュートを展開させるための動作が大掛かりになってしまう可能性がある。
しかし、本実施形態では、前記のように、空気抵抗手段(空気抵抗膜110)をローター102の保護枠106の支柱部分106c等の所定の部分に格納することができ、そこから保護枠106に沿って保護枠面を塞ぐように展開させることができるため、空気抵抗手段を展開させる構成や動作をパラシュートよりも簡素なものとすることが可能となる。そのため、飛行装置100が大型化することなく小型のままで空気抵抗手段を搭載することが可能となり、且つ、空気抵抗手段を的確に作動させることが可能となる。
【0034】
なお、前記の実施形態では、支柱部分106c等の保護枠106の所定の部分から展開された空気抵抗膜110を、飛行装置100が落下した後に支柱部分106c等の所定の部分に自動的に回収する(格納し直す)ことは想定されていないが、落下後に空気抵抗膜110を自動的に回収するように構成することも可能である。
また、前記の実施形態では、前記のように空気抵抗膜110を保護枠106の支柱部分106cに格納する場合について説明したが、例えば、空気抵抗膜110を、保護枠106の中央部106a又は周辺部106bに格納しておき、そこから保護枠106の周辺部106b又は中央部106aに向けて展開するように構成することも可能である。
【0035】
さらに、前記の実施形態では、空気抵抗手段が空気抵抗膜110である場合について説明したが、例えば、図8に例示するように、空気抵抗手段110を、短冊状又は細長い三角形状の複数の板状部材110aを互いに連結されて形成することも可能である。
この場合、例えば、板状部材110aを重ねた状態で保護枠106の支柱部分106c等の所定の部分に格納しておき、それらを1枚ずつ引き出すようにして空気抵抗手段110を展開させるように構成される。
【0036】
また、前記の実施形態では、保護枠106の各支柱部分106cからそれぞれ空気抵抗手段(空気抵抗膜110)を引き出して、保護枠106に沿って保護枠面の全面を塞ぐように空気抵抗手段を展開する場合について説明した。
しかし、飛行装置100の落下速度や他の物体との衝突速度を十分に自然落下速度よりも減少させることが可能であれば、例えば、3つの支柱部分106cのうちの1つ又は2つの支柱部分106cのみから空気抵抗手段を引き出す等して、空気抵抗手段で保護枠106に沿って保護枠面の一部を塞ぐように空気抵抗手段を展開するように構成することも可能である。
【0037】
また、前記の実施形態では、全てのローター102で、保護枠106に沿って保護枠面の全面を塞ぐように空気抵抗手段(空気抵抗膜110)を展開することを前提として説明した。
しかし、本発明では、必ずしも全てのローター102で空気抵抗手段を展開するように構成する必要はなく、飛行装置100の落下速度や他の物体との衝突速度を十分に自然落下速度よりも減少させることが可能であれば、全てのローター102のうちの1部のローター102だけで空気抵抗手段を展開するように構成するように構成することも可能である。
【0038】
さらに、本発明では、全てのローター102で同時に空気抵抗手段(空気抵抗膜110)の展開を開始することも必須の要件ではない。
飛行装置100が落下する場合、図1(b)に示したように飛行装置100が傾かずに落下することは稀であり、通常は、図9に示すように前後左右のいずれかの方向に傾いて落下する。なお、図9では、飛行装置100が図中手前の方向に傾いて(すなわち手前側が奥側よりも低くなるように傾いて)落下する状態が示されている。また、図9では、ブレード104等の記載が省略されている。
【0039】
そして、このように飛行装置100が傾いて落下する場合、傾きの方向にある一又は複数の特定の保護枠106A(図9の場合は手前の方向にある保護枠106A)に、他の保護枠106B~106Dよりも早く空気抵抗膜110(空気抵抗手段)を展開すれば、飛行装置100の傾きが是正され、図1(b)に示したような傾きがない状態(又は傾きがない状態に近い状態)になる。
そして、他の保護枠106B~106Dにも空気抵抗膜110を展開すれば、傾きがない状態(又は傾きがない状態に近い状態)で飛行装置100を落下させることが可能となる。
【0040】
そこで、判定手段401は、前記のようにして飛行のための制御が失われて落下する事態に陥っていると判定すると、前述したジャイロセンサ403bや加速度センサ403c(図2参照)から取得した情報に基づいて一定の方向への傾き(図9の場合は手前の方向への傾き)があるか否かを判断する。
そして、所定時間の間に継続して一定の方向への傾きが検出された場合、空気抵抗制御手段401は、複数の保護枠106のうちの傾きの方向にある一又は複数の特定の保護枠106A(図9の場合は手前の方向にある保護枠106A)に、他の保護枠106B~106Dよりも早く空気抵抗膜110(空気抵抗手段)を展開するように構成することが可能である。
【0041】
このように構成すれば、飛行装置100が地面G(図9参照)等と衝突する際に、飛行装置100のメインフレーム101(図1(b)参照)の下端部やそれに近い部分が衝突するようになる。
そのため、飛行装置100が傾いたまま地面G等と衝突していずれかのローター102(特に傾きの方向にあるローター102(図9の場合は保護枠106Aを有するローター102))が地面G等と衝突して損傷することを的確に回避することが可能となる。
【0042】
また、ローラー102が地面G等と衝突して損傷することを回避するために、飛行装置100が、落下の衝撃を受ける直前において、ローター102を閉状態に変化させる落下姿勢制御手段を更に備えるように構成することも可能である。
この場合も、コントローラ401(図2参照)が落下姿勢制御手段として機能するように構成することが可能であり、以下、落下姿勢制御手段401として説明するが、落下姿勢制御手段をコントローラ401とは別体に構成することも可能である。
【0043】
前記のように、判定手段401により自装置の飛行のための制御が失われて落下する事態に陥っていると判定されると、空気抵抗制御手段401は、各ローター102の保護枠106に沿って空気抵抗手段(空気抵抗膜110等)を展開させる。
そして、落下姿勢制御手段401は、判定手段401により自装置の飛行のための制御が失われて落下する事態に陥っていると判定されると、超音波センサ403a(図2参照)から取得した情報に基づいて自装置の高度(自装置と地面との距離)を監視する。
【0044】
そして、落下姿勢制御手段401は、例えば自装置の高度が10cm等の所定の高度になり、落下の衝撃を受ける直前の状態になった時点で、各ローター102を開状態(図1(b)参照)から閉状態(図1(a)参照)に変化させる。
なお、この場合も、各ローター102の保護枠106に沿って展開されている空気抵抗手段を保護枠106の支柱部分106c等の所定の部分に自動的に回収する(格納し直す)ことは想定されていないが、閉状態に変化させる時点で空気抵抗手段を自動的に回収するように構成することも可能である。
【0045】
飛行装置100が地面等と衝突する際に、ローター102が開いた状態(開状態)で地面等と衝突すると、閉状態で地面等と衝突する場合よりもローター102の損傷が激しくなる可能性もある。
しかし、前記のように構成すれば、飛行装置100が地面等と衝突する際にローター102が閉状態であるため、ローター102が地面等と衝突する場合でも、損傷を回避し、又は損傷を軽減することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、前記のように、飛行装置100が飛行のための制御が失われて落下する際に各ローター102で空気抵抗手段が展開されるため、飛行装置100の落下速度や地面等との衝突速度は十分に自然落下速度よりも減少されている。
このため、落下の衝撃を受ける直前に各ローター102を閉状態に変化させても、飛行装置100は自然落下速度よりも十分に小さい衝突速度で地面等と衝突するため、ローター102が地面等と衝突する場合でも、損傷を回避し、又は少なくとも損傷を軽減することが可能となる。
【0047】
なお、飛行装置100が飛行のための制御が失われて落下する場合、地面ではなく、例えば建造物や樹木等と衝突する場合もあり得る。
しかし、そのような場合でも、本実施形態では、飛行装置100が飛行のための制御が失われて落下する事態に陥ったと判定された場合には、ローター102の保護枠106に沿って空気抵抗手段が展開されるため、建造物や樹木等との衝突速度を十分に小さくすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、前記のように、飛行装置100が飛行時に飛行のための制御が失われて落下する事態に陥ったと判定された場合に空気抵抗手段が展開されるものであるが、飛行装置100の外部の外部機器からの通信による直接の制御信号を受信する通信手段を更に備えて、通信手段により受信された制御信号に応じて、空気抵抗手段が展開されてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施形態等に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲とを含む。以下に、本出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、本出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
[付記]
<請求項1>
自装置を飛行させる推進手段と、
前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御手段と、
を備える、
ことを特徴とする飛行装置。
<請求項2>
前記自装置が飛行時に飛行のための制御が失われて落下する事態に陥ったか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記判定手段により前記自装置が前記落下する事態に陥ったと判定された場合に、前記空気抵抗制御手段は、他の物体と衝突する際の前記自装置の衝突速度を自然落下速度よりも減少させるために、前記空気抵抗手段を展開する、
ことを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
<請求項3>
前記推進手段は、回転可能なブレードを有するローターを含み、前記保護枠は前記ブレードを保護している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の飛行装置。
<請求項4>
前記自装置には、複数の前記ローター及び複数の前記保護枠が設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の飛行装置。
<請求項5>
前記自装置の傾きを検出するジャイロセンサ又は加速度センサを含み、
前記自装置が前記落下する事態に陥った場合に、前記ジャイロセンサ又は前記加速度センサにより所定時間の間に継続して一定の方向への前記傾きが検出された場合、前記空気抵抗制御手段は、前記複数の保護枠のうちの前記傾きの方向にある一又は複数の特定の保護枠に、前記特定の保護枠以外の他の保護枠よりも早く前記空気抵抗手段を展開する、
ことを特徴とする請求項4に記載の飛行装置。
<請求項6>
前記空気抵抗手段は、空気抵抗膜を含み、
前記空気抵抗膜は、前記自装置の前記飛行時には、折り畳まれて又は巻き取られて、前記保護枠の前記所定の部分に格納されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の飛行装置。
<請求項7>
前記所定の部分は、前記保護枠の中央部と周辺部とを繋ぐ支柱部分である、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の飛行装置。
<請求項8>
1つの前記保護枠には複数の前記支柱部分が設けられており、前記空気抵抗膜は、前記複数の支柱部分に分割されて格納されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の飛行装置。
<請求項9>
前記空気抵抗制御手段は、前記保護枠の前記周辺部のレールに沿って前記空気抵抗膜を展開する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の飛行装置。
<請求項10>
前記他の物体は、地面を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の飛行装置。
<請求項11>
前記推進手段は、閉状態と、前記閉状態から回動させた開状態と、の間で姿勢を変化させることができるように構成されており、且つ、前記飛行時には前記開状態とされ、
前記地面に落下する直前において、前記推進手段を前記閉状態に変化させる落下姿勢制御手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項10に記載の飛行装置。
<請求項12>
前記推進手段が前記閉状態である場合の前記自装置の形状は、球状である、
ことを特徴とする請求項11に記載の飛行装置。
<請求項13>
前記自装置の外部に存在する外部機器から制御信号を受信する通信手段を更に備え、
前記通信手段により受信された前記制御信号に応じて、空気抵抗制御手段は、前記空気抵抗手段を展開する、
ことを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
<請求項14>
飛行装置を飛行させる推進手段と、前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、を備える前記飛行装置の飛行方法であって、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御工程、
を含む、
ことを特徴とする飛行方法。
<請求項15>
飛行装置を飛行させる推進手段と、前記推進手段の保護枠の所定の部分に格納された空気抵抗手段と、を備える前記飛行装置のコンピュータを、
前記保護枠に沿って保護枠面の少なくとも1部を塞ぐように前記空気抵抗手段を展開する空気抵抗制御手段、
として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0050】
100 飛行装置(飛行装置、自装置)
102 ローター(推進手段)
104 ブレード
106 保護枠
106a 中央部
106b 周辺部
106c 支柱部分(所定の部分)
110 空気抵抗膜(空気抵抗手段、空気抵抗膜)
110 空気抵抗手段
401 コントローラ(空気抵抗制御手段、落下姿勢制御手段)
403b ジャイロセンサ
403c 加速度センサ
G 地面
L レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9