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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】眼科用組成物及び消泡促進方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20220712BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220712BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/38 20060101ALN20220712BHJP
   A61K 47/18 20060101ALN20220712BHJP
   A61K 47/22 20060101ALN20220712BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/10
A61K9/08
A61K31/728
A61K31/355
A61K31/07
A61P27/02
A61K47/38
A61K47/18
A61K47/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018114464
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019218270
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】椛嶋 恭平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晃一
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-083805(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003796(WO,A1)
【文献】特開2015-101582(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094507(WO,A1)
【文献】特開2011-006348(JP,A)
【文献】特開2014-028790(JP,A)
【文献】特開2013-144671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(B)ビタミンA及びビタミンEから選ばれる1種以上の脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上、
(C)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上:0.1W/V%以上、及び
(D)カルボキシビニルポリマー及びジェランガムから選ばれる1種以上、
を含有する眼科用組成物。
【請求項2】
(D)成分の配合量が、眼科用組成物中0.01~0.4W/V%である請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項3】
(D)/(C)で表される(D)成分と(C)成分との配合質量比が、0.1~4である請求項1又は2記載の眼科用組成物。
【請求項4】
さらに、(E)ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、塩酸テトラヒドロゾリン及びネオスチグミンメチル硫酸塩から選ばれる1種以上を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項5】
(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(B)ビタミンA及びビタミンEから選ばれる1種以上の脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上、及び
(C)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上:0.1W/V%以上
を含有する眼科用組成物に、
(D)カルボキシビニルポリマー及びジェランガムから選ばれる1種以上
を配合する、上記眼科用組成物における消泡促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用組成物及び眼科用組成物における消泡促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性眼科用組成物にビタミンA等の脂溶性薬物を配合するには、界面活性剤等の可溶化剤を配合することが必要である。界面活性剤には多くの種類があるが、例えば、ビタミンAの場合には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを組み合わせることにより、有効性を向上させる技術が提案されている(特許文献1:特開2011-006348号公報)。さらに、ビタミンAは目のかわき症状やドライアイに有効であることが知られている。一方、ドライアイに有効な成分としてはヒアルロン酸も知られている。
以上のことから、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、ビタミンA等の脂溶性ビタミンと、ヒアルロン酸又はその塩とを組み合わせることで、これらの症状・疾患に対してより高い有効性を有することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-006348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、ビタミンA等の脂溶性ビタミンと、ヒアルロン酸又はその塩とを組み合わせた眼科用組成物は、高い有効性が期待されるものの、(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有する組成物に、(B)脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上及び(C)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上:0.1W/V%以上を配合すると、製造時の撹拌による泡立ちが顕著となり、製造後12時間経過しても消泡されない。このため、製造に時間がかかり製造効率が低下する、異物検査が困難となる等の課題を生じることが明らかとなった。また、このような消泡性が悪い眼科用組成物は、その見た目の悪さからユーザーの使用意向が低下するだけでなく、点眼する際、液滴に泡を巻き込み投薬量が変動してしまうという課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(B)脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上、及び(C)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上:0.1W/V%以上を含有する眼科用組成物に、特定の水溶性高分子化合物を配合することにより、消泡が促進され、消泡性の悪さを改善できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記発明を提供する。
[1].(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(B)脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上、
(C)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上:0.1W/V%以上、及び
(D)カルボキシビニルポリマー、ジェランガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール及びデキストランから選ばれる1種以上
を含有する眼科用組成物。
[2].(D)成分の配合量が、眼科用組成物中0.01~0.4W/V%である[1]記載の眼科用組成物。
[3].さらに、(E)ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、塩酸テトラヒドロゾリン及びネオスチグミンメチル硫酸塩から選ばれる1種以上を含有する[1]又は[2]記載の眼科用組成物。
[4].(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(B)脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上、及び
(C)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上:0.1W/V%以上
を含有する眼科用組成物に、
(D)カルボキシビニルポリマー、ジェランガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール及びデキストランから選ばれる1種以上
を配合する、上記眼科用組成物における消泡促進方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(B)脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上を含有する眼科用組成物の消泡を促進し、消泡性の悪さを改善するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(EOPO)であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは特に限定されるものではなく、医薬品添加物規格(薬添規)に記載されたものを用いることができる。エチレンオキシドの平均重合度は4~200が好ましく、20~200がより好ましく、プロピレンオキシドの平均重合度は5~100が好ましく、20~70がより好ましく、ブロック共重合体でもランダム重合体でもよい。具体的には、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール:Lutrol F127(BASF社製)、ユニルーブ70DP-950B(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール:プルロニックF-87(BASF社製)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール:プルロニックF-68(BASF社製)、プロノン#188P(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール:プルロニックP123(BASF社製)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール:プルロニックP85(BASF社製)、プロノン#235P(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール:プルロニックL-44、テトロニック(BASF社製)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコールが好ましい。
【0009】
(A)成分の配合量は、眼科用組成物中0.1~10W/V%が好ましく、(B)成分の可溶化や、ビタミンA安定化の観点から、0.2~2.0W/V%がより好ましく、0.4~1.0W/V%がさらに好ましい。(D)成分による消泡効果の観点からは、0.1~2.0W/V%がより好ましく、0.1~1.0W/V%がさらに好ましく、0.4~0.8W/V%が特に好ましい。両者の観点からは、0.1~1W/V%がより好ましく、0.4~1.0W/V%がさらに好ましく、0.4~0.8W/V%が特に好ましい。
【0010】
[(B)成分]
脂溶性ビタミンとしては、ビタミンAやビタミンEが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
ビタミンAとしては、例えば、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体等が挙げられる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。
【0011】
ビタミンEとしては、例えば、トコフェロール、トコトリエノール、これらの塩、誘導体(エステル)等が挙げられる。具体的には、例えば、d-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール等があり、これらの誘導体としては、例えば、ビタミンE酢酸エステル(酢酸トコフェロール)、ビタミンEニコチン酸エステル、ビタミンEコハク酸エステル、ビタミンEリノレン酸エステル等が挙げられる。
【0012】
眼科用組成物中の(B)成分の配合量を0.05W/V%以上とすることで、(B)成分の効果がより顕著に得られるものの、(B)成分0.05W/V%以上及び後述する(C)成分0.1W/V%以上とすることで、眼科用組成物の消泡性が悪くなる。本発明はこのような眼科用組成物の消泡を促進し、消泡性の悪さを改善するものである。本発明の(B)成分の配合量は、眼科用組成物中0.05~0.10W/V%が好ましく、0.05~0.09W/V%がより好ましく、0.05~0.08W/V%がより好ましい。
【0013】
[(C)成分]
本発明のヒアルロン酸又はその塩は特に限定されるものではなく、眼科用領域等における粘膜適用製剤に通常用いられる任意のヒアルロン酸類を用いることができ、ヒアルロン酸類の例として、ヒアルロン酸、その誘導体、これらの薬学的生理学的に許容される塩類が挙げられる。なお、由来(鶏冠由来、微生物由来等)や分子量は特に限定されない。ヒアルロン酸又はその塩は、これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(C)成分の具体例として、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウム等が挙げられる。中でも、ヒアルロン酸ナトリウムが好ましい。(C)成分としては市販品を用いることができ、例えば、精製ヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、キッコーマンバイオケミファ(株)製)等が挙げられる。
【0014】
(C)成分の平均分子量は、50~500万が好ましく、50~400万がより好ましく、50~250万がさらに好ましく、50万~149万が特に好ましい。(C)成分の平均分子量は、日本薬局方(第17改正)医薬品各条に記載の精製ヒアルロン酸ナトリウム(平均分子量)による測定値である。
【0015】
眼科用組成物中の(C)成分の配合量を0.1W/V%以上とすることで、(C)成分の効果がより顕著に得られるものの、(B)成分0.05W/V%以上及び(C)成分0.1W/V%以上とすることで、眼科用組成物の消泡性が悪くなる。本発明はこのような眼科用組成物の消泡を促進し、消泡性の悪さを改善するものである。本発明の(C)成分の配合量は、眼科用組成物中0.1~1.0W/V%が好ましく、0.1~0.3W/V%がより好ましく、0.1~0.2W/V%がさらに好ましい。
【0016】
[(D)成分]
(D)成分は、カルボキシビニルポリマー、ジェランガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール及びデキストランから選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、カルボキシビニルポリマー、ジェランガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヒドロキシエチルセルロースがより好ましく、カルボキシビニルポリマー、ジェランガムがさらに好ましい。(D)成分の配合により、眼科用組成物の消泡性の悪さを改善することができる。
【0017】
(D)成分としては、カルボキシビニルポリマーとして、例えば、カーボポール(CBC(株)製)、HIVISWAKO(富士フィルム和光純薬(株)製)、AQUPEC(住友精化(株)製)等、ジェランガムとして、例えば、ケルコゲル(CP Kelco社製)等、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、例えば、メトローズ(信越化学工業(株)製)等、アルギン酸又はその塩として、例えば、キミカアルギン((株)キミカ製)等、コンドロイチン硫酸として、例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業(株)製)、コンドロイチン硫酸ナトリウム(日本バイオコン(株)製)等、ヒドロキシエチルセルロースとして、例えば、フジケミ(住友精化(株)製)等、ポリビニルアルコールとして、例えば、ゴーセノール(日本合成化学(株)製)等、デキストランとして、例えば、デキストラン70(ファーマコスモス製)等を用いることができる。
【0018】
(D)成分の平均分子量は0.5~500万が好ましい。なお、平均分子量はGPC-MALSシステムにて測定し、測定溶媒は0.1M-NaNO3水溶液とし、プルラン換算で算出する。
【0019】
(D)成分の配合量は、眼科用組成物の消泡性の点から、眼科用組成物中0.01~1.0W/V%が好ましく、0.05~0.4W/V%がより好ましく、0.1~0.3W/V%がさらに好ましく、0.2~0.3W/V%が特に好ましい。配合量を前記範囲とすることで消泡性が良好となる。
【0020】
特に、カルボキシビニルポリマーを使用する場合は、0.01~0.4W/V%が好ましく、0.025~0.35W/V%がより好ましく、0.25~0.30W/V%がさらに好ましい。
【0021】
特に、ジェランガムを使用する場合は、0.01~0.4W/V%が好ましく、0.05~0.4W/V%がより好ましく、0.25~0.30W/V%がさらに好ましい。
【0022】
特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する場合は、0.01~0.4W/V%が好ましく、0.25~0.4W/V%がより好ましく、0.25~0.30W/V%がさらに好ましい。
【0023】
特に、アルギン酸又はその塩を使用する場合は、0.01~0.4W/V%が好ましく、0.025~0.3W/V%がより好ましく、0.27~0.30W/V%がさらに好ましい。
【0024】
特に、ヒドロキシエチルセルロースを使用する場合は、0.01~0.4W/V%が好ましく、0.025~0.3W/V%がより好ましく、0.27~0.30W/V%がさらに好ましい。
【0025】
本発明の眼科用組成物には、眼科用組成物の消泡性の点から、(E)ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、塩酸テトラヒドロゾリン及びネオスチグミンメチル硫酸塩から選ばれる1種以上の塩基性薬物を含有することが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物がより好ましい。
【0026】
(E)成分を配合する場合、(E)成分の配合量は、眼科用組成物の消泡性の点から、眼科用組成物中0.005~0.05W/V%が好ましく、0.025~0.05W/V%がより好ましい。
【0027】
眼科用組成物の消泡性の点から、下記比率の範囲が好ましい。
(A)/(B)で表される(A)成分と(B)成分との配合質量比は1~200が好ましく、2~40がより好ましく、5~15がさらに好ましい。
(D)/(A)で表される(D)成分と(A)成分との配合質量比は0.01~1が好ましく、0.02~0.8がより好ましい。0.04~0.7がさらに好ましい。
(D)/(C)で表される(D)成分と(C)成分との配合質量比は0.01~10が好ましく、0.1~5がより好ましく、0.2~4がさらに好ましい。
なお、上記比率はW/V%比であるが、質量比と同じ値となる。
【0028】
[その他の成分]
本発明の眼科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、(A)成分以外の界面活性剤、油成分、防腐剤、糖類、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、多価アルコール、粘稠剤、薬物等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。下記に示す成分の配合量は、配合する場合の好ましい範囲である。
【0029】
(A)成分以外の界面活性剤としては、下記のものが挙げられる。
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3~60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンヒマシ油は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。点眼時の刺激感を低減する観点から、ポリオキシエチレンヒマシ油35を用いることが好ましい。
【0030】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5~100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。
【0031】
ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタン酸エステル)に代表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10)に代表されるモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0032】
(A)成分以外の界面活性剤を配合する場合の配合量は、眼科用組成物中1.0W/V%以下が好ましく、0.1W/V%以下がより好ましく、実質的に含まないことがさらに好ましい。
【0033】
油成分として、例えば、流動パラフィン、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、白色ワセリン、ミックストコフェロール、流動パラフィン、ワックスエステル、ステロールエステル等が挙げられる。油成分を配合する場合、その配合量は、眼科用組成物中0.001~1.0W/V%が好ましい。
【0034】
防腐剤としては、アルキル鎖やベンゼン環等の疎水部を有する防腐剤として、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、塩化ベンザルコニウム等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。防腐剤を配合する場合の配合量は、眼科用組成物中0.0001~0.5W/V%が好ましい。
【0035】
糖類としては、例えば、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類を配合する場合の配合量は、眼科用組成物中0.001~5.0W/V%が好ましく、0.001~1W/V%がより好ましく、0.001~0.1W/V%がさらに好ましい。
【0036】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、氷酢酸、トロメタモール、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤を配合する場合の配合量は、眼科用組成物中0.001~5.0W/V%が好ましく、0.001~2W/V%がより好ましく、0.001~1W/V%がさらに好ましい。
【0037】
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。組成物のpHは3.5~8.0が好ましく、5.5~8.0がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM-25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
【0038】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを配合し、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水浸透圧比は、0.60~2.00が好ましく、0.60~1.55がより好ましく、0.83~1.20が最も好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行う。
【0039】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。安定化剤を配合する場合の配合量は、眼科用組成物中0.001~5.0W/V%が好ましく、0.001~1W/V%がより好ましく、0.001~0.1W/V%がさらに好ましい。
【0040】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。清涼化剤を配合する場合の配合量は、眼科用組成物中0.0001~0.2W/V%が好ましい。
【0041】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールを配合する場合の配合量は、眼科用組成物中0.001~5W/V%が好ましく、0.001~1W/V%がより好ましく、0.001~0.1W/V%がさらに好ましい。
【0042】
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリアクリル酸等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001~5W/V%が好ましく、0.001~1W/V%がより好ましく、0.001~0.1W/V%がさらに好ましい。
【0043】
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤等、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、アミノ酸類(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、サルファ剤等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の配合量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが組成物中0.001~5W/V%が好ましく、0.001~1W/V%がより好ましく、0.001~0.1W/V%がさらに好ましい。
【0044】
[製造方法]
本発明の組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、(B)成分等の油性成分と(A)成分等の界面活性剤成分との混合溶液を、水溶性成分を含む水溶液と混合して乳化し、pH調整後、総体積を水により調整することにより得ることができる。各液体の混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各液体の混合温度は特に限定しないが、油性成分と界面活性剤成分が共に融解温度以上であることが好ましく、具体的には40~95℃の範囲から適宜選定される。
【0045】
また、得られた組成物を樹脂製容器に充填後、さらに包装体により密封し、上記容器と上記包装体との間に形成された空間に窒素等の不活性ガスを封入してもよく、組成物を樹脂製容器に充填後、脱酸素剤と共に包装体により密封してもよい。
【0046】
[眼科用組成物]
本発明の眼科用組成物は、「水性眼科用組成物」であることが好ましい。なお、本発明において、「水性眼科用組成物」とは、媒質が水である眼科用組成物をいう。なお、水の配合量は、涙液との混合を容易にし(A)成分の涙液への移行を容易にする点から、組成物中90.0~99.5W/V%が好ましく、95.0~98.0W/V%がより好ましい。
【0047】
本発明の眼科用組成物の25℃における粘度は、3~300mPa・sが好ましく、3~200mPa・sがより好ましく、3~150mPa・sがさらに好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
【0048】
本発明の眼科用組成物は、点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤、洗眼剤等として好適に使用できるが、涙液希釈倍率が高く、点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤(コンタクトレンズ装着者用点眼剤)として好適に使用できる。コンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ、O2ハードコンタクトレンズ、カラーコンタクトレンズ等特に限定されない。
【0049】
点眼剤又はコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10~100μLを1~3滴1日につき1~6回点眼することが好ましく、10~50μLを1~3滴1日につき1~6回がより好ましく、1回につき10~50μLを1~2滴1日につき1~6回がさらに好ましい。洗眼剤として使用する場合、1回につき3~6mL、1日につき3~6回洗眼することが好ましい。
【0050】
[消泡促進方法]
本発明は、
(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(B)脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上、及び
(C)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上:0.1W/V%以上
を含有する眼科用組成物に、
(D)カルボキシビニルポリマー、ジェランガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール及びデキストランから選ばれる1種以上
配合する、上記眼科用組成物における消泡促進方法を提供する。好適な成分、配合量等は上記眼科用組成物と同様である。
【実施例
【0051】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、%はW/V%(g/100mL)であり、比率は質量比(W/V%比と同じ値)を示す。
【0052】
[実施例、比較例、参考例]
下記表の各水溶性成分を所定量の精製水に加えて溶解させた後、(B)成分と(A)成分の混合溶液を加え、よく撹拌した。その後、100mLになるように精製水を加えた。なお、各実施例のpHは4~8、粘度は3~150mPa・sの範囲であった。得られた組成物について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0053】
[消泡率(%)(消泡性)]
上記で得られた組成物の泡がないことを確認し、15mLの遠沈管(高さ12cm)に各サンプルを5mLずつ充填し、振幅40cm、180回/分で5分間振とうを行った。「振とう終了後」及び「振とう終了から3時間後」の泡の高さ(cm)を測定し、下記式に従って消泡率を算出した。消泡率から下記評価基準に基づいて、消泡性を示す。△以上を合格とする。
消泡率(%)=100-([振とう終了から3時間後の泡の高さ(cm)]/[振とう直後の泡の高さ(cm)]×100)
〈評価基準〉
◎:35%以上の消泡率
〇:25%以上35%未満の消泡率
△:20%以上25%未満の消泡率
×:20%未満の消泡率
【0054】
△以上を合格とした理由について説明する。
比較例1について、上記操作で振とうした結果、24時間まで観察したが、12時間、24時間経過しても泡が残存した。
一方、実施例1~8を同様に評価した結果、3時間後に20%以上消泡し、12時間後には完全に消泡した。なお、製造効率を考慮すると、点眼液の製造終了から異物検査まで放置できる時間として、12時間が最大限の時間であり、「△」3時間後時点の消泡率20%以上を合格とする。
【0055】
参考例1では(C)成分を含まないため、消泡性が悪いという課題が生じず、参考例2では、(C)成分0.1%で上記課題が生じている。以上のことから、(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(B)脂溶性ビタミン:0.05W/V%以上及び(C)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上:0.1W/V%以上を含有する組成物とすることで、消泡性が悪いという課題が生じることが確認された。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】
【表12】
【0068】
【表13】
【0069】
【表14】
【0070】
【表15】
【0071】
【表16】
【0072】
【表17】
【0073】
【表18】
【0074】
【表19】
【0075】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール:ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール(Lutrol F127、BASFジャパン(株)製)
ビタミンA:レチノールパルミチン酸エステル(レチノールパルミチン酸エステル、DSMニュートリションジャパン(株)製)
ビタミンE:酢酸d-α-トコフェロール(理研Eアセテートα、理研ビタミン(株)製)
ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロンサンHA-Q、平均分子量:50~149万、キューピー(株)製)
カルボキシビニルポリマー(カーボポール 971P-NF、CBC(株)製)
ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ 65SH-4000、信越化学工業(株)製)
アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI-1、(株)キミカ製)
コンドロイチン硫酸ナトリウム(コンドロイチン硫酸ナトリウム「生化学」注射用、生化学工業(株)製)
ヒドロキシエチルセルロース(フジケミHECCF-W、住友精化(株)製)
ポリビニルアルコール(ゴーセノールEG-05T、日本合成化学(株)製)
デキストラン(デキストラン70、ファーマコスモス製)
ジフェンヒドラミン塩酸塩(和光純薬(株)製)
クロルフェニラミンマレイン酸塩(和光純薬工業(株)製)
ベルベリン塩化物水和物(和光純薬工業(株)製)