(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20220712BHJP
A63B 37/14 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A63B37/00 212
A63B37/00 214
A63B37/14
(21)【出願番号】P 2018124373
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 加惠
(72)【発明者】
【氏名】南馬 昌司
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0302376(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0182806(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0184653(US,A1)
【文献】米国特許第09033826(US,B1)
【文献】米国特許第05766097(US,A)
【文献】米国特許第05789486(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0021850(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00
A63B 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のコアを具備するゴルフボールであって、該ゴルフボールは、艶消し粒子を含むコーティング層を表面に有し
、該艶消し粒子の比表面積がBET比表面積で250~350m
2
/gであり、該艶消し粒子の粒径が平均一次粒子径で2.0~2.8μmであると共に、上記コーティング層の表面の平均粗さRaは0.5~1.0であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記艶消し粒子の配合量は、コーティング層の主剤(樹脂成分と溶剤との合計量)100質量部に対して5~10質量部である請求項
1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記コーティング層の光沢度計による反射率は、入射角20°では5.0以下であり、入射角60°では20.0以下であり、且つ、入射角85°では40.0以下である請求項
1又は2記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1層のコア及びコーティング層を具備するゴルフボールに関し、更に詳述すると、光沢の少ないマットな外観を与え、かつコーティング層が適切な表面粗さを有するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ボール表面に形成されるディンプルは、ゴルフボールの飛び性能の空気力学的性能を高める重要な構成要素であることが知られている。また、ゴルフボールの飛距離の伸ばすためには、特定のレイノルズ数やスピン量にて打撃したときの抗力係数CD及び揚力係数CLの関係を適正化するために塗装層(コーティング層)の表面の粗さを適宜調整することが、特開2015-142599号公報、特開2015-142600号公報及び特開2016-214326号公報に記載されている。この場合、ゴルフボールの製造方法については、塗装層の表面の粗さを調整するための工程が必要となり、煩雑且つコストがかかる。
【0003】
また、特表2014-520650号公報には、ゴルフボール本体の外側表面に塗布されたコーティング層には、特定の平均粒径を有する樹脂および複数の粒子を含み、ゴルフボールの粗さを微調整して、ゴルフボールの所望の空気力学的性能を達成することができることが記載されている。しかし、このゴルフボールでは、表面粗さが粗いと、打撃時のボールとクラブフェースとの接触面積が減り、アプローチ時のスピン量が低減するおそれがある。
【0004】
また最近では、見た目はカラー色を呈するゴルフボールではあるが、ボール表面のディンプルの輪郭形状が認識できない程度に艶消し又は光沢のない所謂マットなゴルフボールが人気を集めている。このようなマットなゴルフボールは、斬新な発色性のあるカラーゴルフボールであり、ディンプルがはっきりと見えないものの、ドライバーショット時やアプローチ時のボールをインパクトする時には、プレーヤーがボールへの集中力を高めゴルフ競技力を高めるという心理的効果もあるともいわれる。
【0005】
しかしながら、上記のマットなゴルフボールでは、主に塗膜の樹脂材料において、ウレタン系塗料等の塗料樹脂にシリカ等の艶消し剤を配合するものであり、ボール表面が比較的粗く形成される。このようなゴルフボールは、打撃時のボールとクラブフェースとの接触面積が減り、アプローチ時のスピン量が低減するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-142599号公報
【文献】特開2015-142600号公報
【文献】特開2016-214326号公報
【文献】特表2014-520650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、艶や光沢のないマットなゴルフボールにおいて、アプローチ時のスピン量の低減を防止できるゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、少なくとも1層のコアを具備するゴルフボールであって、艶消し粒子を含むコーティング層を表面に形成するとともに、該コーティング層の表面の平均粗さRaを0.5~1.0に調整することにより、ボール表面をマットな仕上がりにすることで、ボールインパクト時のプレーヤーがボールへの集中力を向上させることができるとともに、アプローチ時のスピン性能の低下を防ぐことができることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.少なくとも1層のコアを具備するゴルフボールであって、該ゴルフボールは、艶消し粒子を含むコーティング層を表面に有し、該艶消し粒子の比表面積がBET比表面積で250~350m
2
/gであり、該艶消し粒子の粒径が平均一次粒子径で2.0~2.8μmであると共に、上記コーティング層の表面の平均粗さRaは0.5~1.0であることを特徴とするゴルフボール。
2.上記艶消し粒子の配合量は、コーティング層の主剤(樹脂成分と溶剤との合計量)100質量部に対して5~10質量部である上記1記載のゴルフボール。
3.上記コーティング層の光沢度計による反射率は、入射角20°では5.0以下であり、入射角60°では20.0以下であり、且つ、入射角85°では40.0以下である上記1又は2記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールによれば、マットな仕上がりにすることでプレーヤーの集中力減少による競技力の低下を予防できるとともに、アプローチ時のスピン性能の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、少なくとも1層のコアを具備し、艶消し粒子を含むコーティング層を表面に有する。
【0012】
上記コアは、公知のゴム材料を基材として形成することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムの公知の基材ゴムを使用することができ、より具体的には、ポリブタジエン、特にシス構造を少なくとも40%以上有するシス-1,4-ポリブタジエンを主に使用することが推奨される。また、基材ゴム中には、所望により上述したポリブタジエンと共に、天然ゴム,ポリイソプレンゴム,スチレンブタジエンゴムなどを併用することができる。また、ポリブタジエンは、チタン系、コバルト系、ニッケル系、ネオジウム系等のチーグラー系触媒、コバルト及びニッケル等の金属触媒により合成することができる。
【0013】
上記の基材ゴムには、不飽和カルボン酸及びその金属塩等の共架橋剤,酸化亜鉛,硫酸バリウム,炭酸カルシウム等の無機充填剤、ジクミルパーオキサイドや1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等を配合することができる。また、必要により、市販品の老化防止剤等を適宜添加することができる。
【0014】
上記コアの周囲には、コアを被覆する部材として、少なくとも1層のカバーを形成することができる。2層カバーの場合、各層は、内側を中間層、外側を最外層と称することがある。また、3層カバーの場合、各層は、内側から順に、包囲層、中間層及び最外層と称することがある。
【0015】
カバー各層の材質については、特に制限はなく、従来からゴルフボール用材料として採用される樹脂が挙げられ、例えば、アイオノマー系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーなどが例示される。特に、アイオノマー系樹脂が好適であり、具体的には、(a)エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体及び/又はその金属塩、あるいは(b)エチレン-α,β不飽和カルボン酸-α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体及び/又はその金属塩の(a),(b)成分のいずれかを含むものであることが好適である。
【0016】
上記(a)及び(b)成分のα,β不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特に、アクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。また、上記(b)成分のα,β不飽和カルボン酸エステルとしては、上記の不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルが好適であり、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n-アクリル酸ブチル、i-アクリル酸ブチル)であることが好ましい。
【0017】
上記(a)及び(b)成分の上記共重合体の金属イオン中和物は、上記オレフィン-不飽和カルボン酸(-不飽和カルボン酸エステル)共重合体の酸基を部分的に金属イオンで中和することによって得ることができる。酸基を中和する金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、Li+、Zn++、Cu++、Mg++、Ca++、Co++、Ni++、Pb++等が挙げられ、特に、Na+、Li+、Zn++、Mg++、Ca++等が好適に用いられる。このような中和物は公知の方法で得ることができ、例えば、上記共重合体に対して、上記金属イオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物を使用して中和物を得ることができる。
【0018】
上記(a)及び(b)成分としては、公知のものを用いることができる。例えば、市販品としては、酸共重合体として、ニュクレルN1560、同N1214、同N1035、同AN4221C、同AN4311、同AN4318、同AN4319(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)等を挙げることができる。また、酸共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同AM7311、同1855、同1856、同AM7316(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン7930、同6320、同8320、同9320、同8120(DuPont社製)等をそれぞれ挙げることができる。
【0019】
上記カバーのうち、最外層の樹脂材料には、蛍光染料又は蛍光顔料からなる着色剤や酸化チタン等の白色顔料を含有することができる。即ち、ボールの表面が艶のない穏やかな印象を与えるためのカラーボールに仕上げるためには、最外層の樹脂材料には、蛍光染料又は蛍光顔料からなる着色剤を配合することができる。この着色剤としては、公知の蛍光染料又は蛍光顔料を適宜配合してカバー最外層に着色を施すものである。ここで、例えば、ソルベントイエロー(染料)、ソルベントオレンジ(染料)、アンスラキノン(染料)、フタロシアニン(染料)、イエロー系蛍光顔料、ピンク系蛍光顔料及びオレンジ系蛍光顔料等が挙げられる。これらは公知の市販品を使用することができる。
【0020】
上記着色剤を使用する場合、集光性を有する蛍光着色剤を採用することが好適である。ここで、集光性のある蛍光着色剤とは、太陽光を集光し、蛍光色として長波長側に波長変換する機能を有する材料であって、着色された材料の内部で全反射しながら、ディンプルエッジへ誘導されることで集光し、ディンプルエッジで濃密度化された状態で放出され、強く発色することを特徴とするものである。
【0021】
上記の集光性蛍光着色剤としては、オレンジ系、ピンク系、赤系、黄系、青系、紫系などがあり、いずれの発色系においても市販品を用いることができる。例えば、商品名「Lumogen F Yellow 083」,「Lumogen F Orange 240」,「Lumogen F Red 305」,「Lumogen F Blue 650」(いずれもBASF社製)、「ルミカラーレッド」、「スマートカラーLPグリーン」、「スマートカラーLPイエロー」、「スマートカラーLPオレンジ」(いずれも菓子の素テクノロジー社製)等の集光性蛍光染料を採用することができる。
【0022】
上記着色剤の配合量については、最外層の樹脂材料100質量部に対して0.001~0.2質量部であり、好ましくは0.005~0.1質量部である。この配合量が少ないと、蛍光が弱くなり、所望の意匠性が得られない場合がある。逆に、上記配合量が多くなると、着色剤、特に染料のマイグレーションが起こり、ゴルフボールに接触した物に染着するおそれがある。
【0023】
また、白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛及び硫酸バリウム等が挙げられ、酸化チタンが好適に用いられる。酸化チタン等の白色顔料を使用する場合、その配合量については、最外層の樹脂材料100質量部に対して1.0~10.0質量部であり、好ましくは2.0~5.0質量部である。
【0024】
上記の最外層の樹脂材料には、無機フィラー又は有機フィラーを配合することができる。無機フィラーを採用する場合、その材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウムやシリカ等が挙げられる。
【0025】
一方、有機フィラーを採用する場合、その材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル(架橋PMMA)、架橋ポリメタクリル酸ブチル、架橋ポリアクリル酸エステル、架橋アクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリウレタン等の微粒子が挙げられる。
【0026】
上記無機フィラー又は有機フィラーの配合量は、上記の樹脂材料100質量部に対して0.01~1.0質量部であり、好ましくは0.02~0.2質量部である。この配合量が多すぎると、隠ぺい性が高くなりすぎて高級感あるボール意匠性が損なう場合があり、あるいは日光暴露で退色した際の色の変化が大きくなってしまう場合がある。
【0027】
上記樹脂組成物には、更に、必要に応じて種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を適宜配合することができる。
【0028】
上記樹脂組成物は、例えば、混練型(単軸又は)2軸押出機,バンバリー,ニーダー等の各種の混練機を用いて上述した各成分を混合することにより得ることができる。
【0029】
上記最外層の表面には1種類又は2種以上の多数のディンプルを形成することができ、そのディンプルの形状、直径、深さ、個数、占有表面積等は適宜選定される。
【0030】
本発明はコーティング層(塗膜)を有するゴルフボールであり、該コーティング層が艶消し粒子を含む塗料用組成物にて形成される。
上記塗料用組成物としては、特に制限はないが、ウレタン系塗料を用いることが好適である。ゴルフボールの過酷な使用状況に耐えうる必要から、2液硬化型のウレタン塗料、特に、無黄変のウレタン塗料が好適に挙げられる。
【0031】
2液硬化型のウレタン塗料の場合、主剤としては、飽和ポリエステルポリオール、アクリルポリオールやポリカーボネートポリオール等の各種ポリオールを用いるとともに、イソシアネートとしては、無黄変ポリイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体、又はこれらの混合物を用いることが好適である。
【0032】
また、艶消し粒子としては、例えば、シリカ系、メラミン系、アクリル系等が挙げられる。具体的には、シリカ、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリスチレン、ポリアクリル酸ブチルなどが挙げられ、有機系のものでも無機系のものでもよいか、特に、シリカが好適に用いられる。
【0033】
上記艶消し粒子の比表面積としては、消光性や塗布性の点から、BET比表面積で200~400m2/gであることが好適であり、より好ましくは250~350m2/gである。
【0034】
また、上記艶消し粒子の平均一次粒子径は、スピン性能と消光性の点から、1.0~3.0μmであることが好適であり、より好ましくは2.0~2.8μmである。この値が3.0μmを超えると、ボール表面が粗くなるためスピン性能に悪影響を及ぼし該性能が低下するおそれがある。一方、この値が小さすぎると、消光性効果が小さくなるおそれがある。
【0035】
上記の艶消し粒子の配合量は、コーティング層の塗料組成物の主剤(樹脂成分と溶剤との合計量)100質量部に対して、好ましくは5~10質量部とすることができる。この配合量が多すぎると、塗料組成物の粘度が上がり塗布作業性が悪くなる傾向にあり、少なすぎると、消光性効果が小さくなるおそれがある。
【0036】
上記コーティング層の表面の平均粗さRaは、アプローチ時のボールのスピン量と消光性の両立の点から、0.5~1.0であることが好適である。この塗膜の表面粗さRaは、JIS B0601(1994)の算術平均粗さを意味する。
【0037】
また、上記コーティング層の光沢度計による反射率は、入射角20°では5.0以下であり、入射角60°では20.0以下であり、且つ、入射角85°では40.0以下であることが好適である。このように、上記反射率が上記数値範囲を満たすように適正化したコーティング層であれば艶消し効果を付与できる。なお、上記の光沢度計による反射率の測定条件は、後述する実施例で使用した測定装置を使用し、ABS樹脂製の板に20μmの厚さで塗布したものを測定したものである。
【0038】
本発明のゴルフボールの質量、直径等のボール規格はゴルフ規則に従って適宜設定することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0040】
[実施例1,2、比較例1~5]
下記表1に示すように、全ての例に共通する下記のゴム組成物を用い、155℃で15分間の加硫により、各例のソリッドコアを作成した。
【0041】
【0042】
なお、上記コア材料の詳細は下記のとおりである。
・「ポリブタジエンゴム」 JSR社製、商品名「BR01」
・「有機過酸化物」 ジクミルパーオキサイド、日油製の商品名「パークミルD」
・「硫酸バリウム」 堺化学工業社製
・「酸化亜鉛」 堺化学工業社製
・「アクリル酸亜鉛」 日本触媒社製
・「ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩」 和光純薬工業社製
【0043】
カバー(中間層及び最外層)の形成
次に、上記で得た直径37.3mmのコアの周囲に、全ての例に共通する下記表2に示す厚さ1.35mmの中間層を射出成形法により被覆して、直径(外径)が40mmの中間層被覆球体を製造した。次に、上記中間層被覆球体の周囲に、同表に示す厚さ1.35mmの最外層材料を射出成形法により被覆して、ボール直径42.7mmのスリーピースゴルフボールを作製した。この際、各実施例、比較例の最外層表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成された。
【0044】
【0045】
上記表中の詳細は下記の通りである。
・「HPF1000」:デュポン社製のアイオノマー樹脂材料
・「ハイミラン1605」「ハイミラン1557」:三井・デュポンポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
・酸化チタン:白色顔料
【0046】
次に、各実施例及び各比較例のゴルフボールについては、コーティング層として、下記表3に示す主剤及び硬化剤からなる2液硬化型ウレタン塗料を使用し、最外層の表面に厚み15μmとなるように塗装を施し、コーティング層を形成した。また、各実施例及び各比較例のコーティング層の主剤(樹脂成分と溶剤との合計量)に対しては、表4に示すように、粒子径及び比表面積が異なる艶消し粒子を所定量配合した。但し、比較例5は艶消し粒子を配合していない。
【0047】
【0048】
上記の主剤および硬化剤の詳細については下記(i)~(iv)のとおりである。
(i)先ず、環流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管及び温度計を備えた反応装置に、トリメチロールプロパン140質量部、エチレングリコール95質量部、アジピン酸157質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール58質量部を仕込み、撹拌しながら200~240℃まで昇温させ、5時間加熱(反応)させた。その後、酸価4,水酸基価170,重量平均分子量(Mw)28,000の「飽和ポリエステルポリオール」を得た。
(ii)次に、上記の合成したポリエステルポリオールを酢酸ブチルで溶解させ、不揮発分70質量%のワニスを調整した。
(iii)上記飽和ポリエステルポリオール溶液27.5質量部に対して、酢酸ブチルで溶解させ(この溶液の不揮発分27.5質量%)、艶消し粒子としては、表4に示すように、粒子径及び比表面積が異なる艶消し粒子を所定量含有した。
【0049】
【0050】
「P-1」:丸尾カルシウム社製「Finesil X-35」
「P-2」~「P-6」:EVONIC INDUSTRIESの「ACEMATT」シリーズ
【0051】
(iv)次に、硬化剤として、表3に示すイソシアネートを有機溶剤に溶解させて使用する。即ち、表3の配合割合になるように、HMDIヌレート(旭化成(株)製の「デュラネートTPA-100」NCO含有量23.1質量%、不揮発分100質量%)と、有機溶剤として、酢酸エチル及び酢酸ブチルを加え、塗料の樹脂組成物を調製した。
【0052】
得られた各実施例及び比較例のゴルフボールのアプローチ時のスピン量、光沢性及び表面粗さ(Ra)の測定及び評価し、その結果を下記の表5に示す。
【0053】
アプローチ時のスピン量
得られた各実施例及び比較例のゴルフボールについては、ゴルフ打撃ロボットにサンドウエッジ(SW)をつけて、ヘッドスピード20m/sにて打撃した時のスピンの量で判断し、クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourB XW-1 SW」を使用した。そのスピン量を表5に示す。
【0054】
光沢性
ゴルフボール表面(コーティング層)の光沢性を下記のとおり評価した。BYK社製「micro-TRI-gloss」により、測定入射角度20°/60°/85°による光沢度を計測した。各測定角度の光沢度の数値については、入射角20°で5.0以下、入射角60°で20.0以下、入射角85°で40.0以下となれば、光沢性が十分に抑えられているとして「○」と評価し、それ以外は、光沢性があるとして「×」と評価した。
【0055】
表面粗さ(Ra)
ミツトヨ社製の表面粗さ測定器(SV-C3000)を用いて、コーティング層を有するゴルフボールの表面の粗さを測定した。この塗膜の表面粗さRaは、JIS B0601(1994)の算術平均粗さに基づく。
【0056】
【0057】
表5の結果から、本実施例1,2のゴルフボールは、アプローチ時のスピン量が多く、且つ、コーティング層は光沢性が少なく、艶消し効果が高い。
これに対して、比較例1,4のゴルフボールは、コーティング層の光沢性が少なく、艶消し効果が高いが、アプローチ時のスピン量が実施例1,2より低くなる。
また、比較例2,3及び5のゴルフボールは、アプローチ時のスピン量は多いが、コーティング層は光沢性が高くなってしまう。