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特許7102999情報収集処理装置、情報収集処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】情報収集処理装置、情報収集処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220712BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20220712BHJP
【FI】
A61B5/00 D
G06Q50/22
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018131951
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020006056
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 寛威
(72)【発明者】
【氏名】勝原 慎介
(72)【発明者】
【氏名】大沼 憲司
(72)【発明者】
【氏名】手塚 英剛
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-052822(JP,A)
【文献】特開2008-269241(JP,A)
【文献】特開2010-267042(JP,A)
【文献】特表2017-525032(JP,A)
【文献】特開2013-200590(JP,A)
【文献】特開2003-190127(JP,A)
【文献】特開2012-061197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-3/16
A61B5/00-5/01,5/055
A61B6/00-6/14
A61B8/00-8/15
G01T1/161-1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集対象となる医用情報について設定した収集側条件と、提供可能な医用情報について設定した提供側条件とを照合し、照合結果に基づいて、複数の付帯情報を含む前記医用情報を保有する端末装置から前記医用情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部により抽出された前記医用情報に含まれる複数の前記付帯情報のうち、少なくとも1つの前記付帯情報を削除する加工処理を施す情報加工部と、
前記加工処理が施された前記医用情報を保存する情報保存部と、
を有する情報収集処理装置。
【請求項2】
前記情報保存部に保存される医用情報は、画像データを含む請求項1に記載の情報収集処理装置。
【請求項3】
前記情報加工部は、前記画像データの縮小を行う請求項2に記載の情報収集処理装置。
【請求項4】
前記情報加工部は、個人情報を含む前記付帯情報を削除する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報収集処理装置。
【請求項5】
前記情報加工部は、同一の患者に関する前記医用情報同士を紐づけする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報収集処理装置。
【請求項6】
前記情報加工部は、情報提供側の施設内における学習により、提供元の医用情報を不可逆的な特徴量に変換する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の情報収集処理装置。
【請求項7】
前記情報加工部は、前記画像データの画像特性に応じて前記画像データの縮小の有無、縮小率を決定する請求項3に記載の情報収集処理装置。
【請求項8】
前記画像特性は、病変情報に基づき決定される請求項7に記載の情報収集処理装置。
【請求項9】
前記情報加工部は、病変情報に応じて特定される病変位置に関するデータのみを切り出すものであり、
前記情報加工部により前記病変位置に関するデータのみが切り出されたときは、前記情報保存部は、前記病変位置に関するデータを保存する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の情報収集処理装置。
【請求項10】
前記情報加工部は、医師による診断結果又はコンピュータによる診断支援システムで得られる結果から取得される病変情報を参照して加工処理を行う請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の情報収集処理装置。
【請求項11】
前記情報抽出部は、所望の医用情報のみを選定して抽出する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の情報収集処理装置。
【請求項12】
収集対象となる医用情報について設定した収集側条件と、提供可能な医用情報について設定した提供側条件とを照合し、照合結果に基づいて、複数の付帯情報を含む前記医用情報を保有する端末装置から前記医用情報を抽出する情報抽出工程と、
前記情報抽出工程において抽出された前記医用情報に含まれる複数の前記付帯情報のうち、少なくとも1つの前記付帯情報を削除する加工を含む加工処理を施す情報加工工程と、
前記加工処理が施された前記医用情報を保存する情報保存工程と、
を含む情報収集処理方法。
【請求項13】
医用情報を収集する情報収集処理装置のコンピュータに、
収集対象となる医用情報について設定した収集側条件と、提供可能な医用情報について設定した提供側条件とを照合し、照合結果に基づいて、複数の付帯情報を含む前記医用情報を保有する端末装置から前記医用情報を抽出する情報抽出機能と、
前記情報抽出機能により抽出された前記医用情報に含まれる複数の前記付帯情報のうち、少なくとも1つの前記付帯情報を削除する加工を含む加工処理を施す情報加工機能と、
前記加工処理が施された前記医用情報を保存する情報保存機能と、
を実現させるコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報収集処理装置、情報収集処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、医療の分野において、人によってなされている画像診断等についてAI等の機械学習による診断支援を行ったり、又は診断行為自体を機械学習によるものに置換しようという潮流がある。
機械学習とは、大量のデータを使用して、機械にデータのパターンや相関を学習させ、各種の検出等を行うことできるようにするものである。
医療分野において機械学習による精度の高い検出を行うためには、学習に用いるデータとして多くの医用画像データ、診断に関する情報等、医療機関(すなわち、病院等の施設)を訪れた患者に関する情報等(これらを総称して「医用情報」ともいう。)を収集することが必要となる。
【0003】
この点、特許文献1には、画像データを収集して表示する装置として、画像収集部、画像保存部、画像表示部から構成され、特定のルールに従って収集した画像と画像番号とを関連付け、所定の表示計画に従って画像を表示させることのできる画像収集表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-157495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
学習に用いるデータを収集するためには、複数の患者について、複数の病院やクリニックといった医療機関から広くデータを集積することが求められる。
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、検査のために撮影した画像等を収集して表示させる際に、適切な表示順、表示位置で表示されるようにするものであり、複数の患者に関する大量のデータを収集することを想定したものではない。
また、収集したデータは、検査結果の診断等に用いられることを前提としており、データを医療機関の外で利用することを想定したものでもない。
【0006】
医療機関において取得された患者に関する情報(医用情報)は、高度に個人的な情報を多く含む。このため、個人情報保護の観点から、ネットワークを介してデジタルデータとなっている場合でも、医用情報を当該医療機関から外部に持ち出すためには、匿名化や匿名加工を施さなければならない。しかし、大量のデータについてこうした処理や加工を行うことは非常に煩雑であるとの問題がある。
また、医療機関の所有するデータの種類や特性、個人情報の取り扱い等は、施設ごとに異なっているため、複数施設に亘ってデータ収集を行う場合に、必要な情報だけを効率的に収集することは煩雑であり難しいとの問題もある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、所望の医用情報を過不足なく効率的に収集することのできる情報収集処理装置、情報収集処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の情報収集処理装置は、
収集対象となる医用情報について設定した収集側条件と、提供可能な医用情報について設定した提供側条件とを照合し、照合結果に基づいて、複数の付帯情報を含む前記医用情報を保有する端末装置から前記医用情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部により抽出された前記医用情報に含まれる複数の前記付帯情報のうち、少なくとも1つの前記付帯情報を削除する加工処理を施す情報加工部と、
前記加工処理が施された前記医用情報を保存する情報保存部と、
を有することを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の医用情報を過不足なく効率的に収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における情報収集処理装置と端末装置との関係を示す模式的な全体構成図である。
図2】端末装置の表示部に表示される提供側条件設定画面の一例を示す図である。
図3】本実施形態における情報収集処理装置の制御構成を示す模式的な要部ブロック図である。
図4】情報収集処理装置の表示部に表示される収集側条件設定画面の一例を示す図である。
図5】本実施形態における情報収集処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1から図5を参照して、本発明にかかる情報収集処理装置、情報収集処理方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0012】
[情報収集処理装置を含む全体構成]
図1は、情報収集処理装置が各施設内の端末装置と接続されて、情報をやり取りする様子を示した模式的な全体構成図である。
本実施形態における情報収集処理装置1は、医療機関である施設H内の端末装置2に蓄積されている医用情報の中から必要なものを収集する装置である。収集された医用情報は、後述する情報保存部6(情報保存部6内の医用情報記憶領域62)に保存される。
本実施形態において、情報保存部6に保存される医用情報は、医療機関である施設Hにおいて取得可能な画像データ、診断情報を含む患者に関する情報である。
より具体的には、医用情報とは、X線画像、超音波画像、X線コンピュータ断層像、磁気共鳴画像、核医学画像(SPECT(Single Photon Emission Tomography)やPET(Positoron Emission Tomography)等の断層画像)等の各種医用画像の画像データや、電子カルテ情報、コンピュータ診断支援システム(CAD)情報、レセプト情報等に含まれる患者情報、医師による診断結果等の情報等、医療機関において蓄積される各種の医用関係の情報を広く含むものである。
【0013】
端末装置2は、医用情報を保有するものであり、医用情報の提供元となる装置である。
具体的には、端末装置2は、例えば図1に示すように、施設H内に設置された各種医用システム4と接続されて各種医用システム4において取得された医用情報が送信され蓄積されるPACS端末2aや、患者の受け付け等により自動又は手動で各項目が入力される電子カルテ端末2b等である。
【0014】
医用システム4は、例えば各種モダリティー(図示せず)とモダリティーによる撮影動作を制御する撮影用コンソール(図示せず)とからなる医用画像システムである。
モダリティーは、患者の撮影対象部位等を撮影し、撮影した画像をデジタル変換して医療用の医用情報としての画像データ(医用画像データ)等を生成するものである。
モダリティーとしては、例えばCR(Computed Radiography、X線単純撮影)装置、マンモグラフィ装置、CT(Computed Tomography;コンピュータ断層撮影)装置、超音波診断装置、内視鏡装置等(いずれも図示せず)が想定されるが、これらに限定されない。
なお、図1ではモダリティー及び撮影用コンソールで構成される医用システム4を各施設Hにつき2組ずつ図示しているが、施設H内に設けられる医用システム4の数はこれに限定されず1つのみでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0015】
医用システム4(すなわち、モダリティー及びこれと接続された撮影用コンソール)、端末装置2であるPACS端末2aや電子カルテ端末2b等は、図示しないスイッチングハブ等を介して図示しない院内のネットワークに接続されており、ネットワークを介してデータを送受信可能となっている。
ネットワークを介して接続される各装置は、例えば一般に医療関連のデータを扱う通信規格であるDICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0016】
また、DICOM規格に則って生成された医用情報には、各種の付帯情報が付帯されている。
例えば医用情報としての医用画像の画像データ(医用画像データ)を生成する医用システム4がDICOM規格に準拠している場合、当該画像データは、DICOM規格に則ったDICOMファイル形式で保存される。DICOMファイルは、画像部と付帯情報部とから構成されており、画像部には医用画像の実データ、付帯情報部に当該医用画像に関する各種の付帯情報が書き込まれている。
【0017】
付帯情報は、例えば、患者情報、検査情報、画像詳細情報を含んで構成されている。
ここで、患者情報は、患者を識別するための患者識別情報(例えば、患者ID)、患者の氏名、性別、生年月日等の医用画像の患者に関する各種情報が含まれる。
また、検査情報は、検査を識別するための検査識別情報(例えば、検査ID)、検査日付、モダリティーの種類、検査部位、担当医師等の検査に関する各種情報等が含まれる。なお、画像データ取得時の撮影条件やポジショニング等に関する情報も検査情報に含まれていてもよい。
画像詳細情報は、画像ID、画像生成時刻、医用画像の格納場所を示すファイルパス名等の医用画像に関する各種情報が含まれる。
各付帯情報は、DICOM規格に則ったタグで管理されており、タグを参照することにより、各付帯情報の具体的な内容が何であるか(すなわち、当該付帯情報が患者IDであるか、患者氏名であるか、モダリティーの種類であるか等)を判別することができるようになっている。
これら医用情報(すなわち、画像データや付帯情報等)は、PACS端末2a等の端末装置2に送られ、保存される。
【0018】
電子カルテ端末2bは、患者の受付時に取得した患者の個人情報や問診結果、医師による診断結果等の電子カルテ情報を入力し、保有する端末装置2である。
電子カルテ情報は、患者に関する情報であって、医用情報であり、具体的には、例えば、患者ID、患者氏名、性別、年齢、体重、身長、体温、問診結果、医師による診断結果、記入日付等の各項目が含まれている。なお、電子カルテ情報は、これに限定されない。
【0019】
本実施形態において、情報を提供する側である端末装置2(すなわち、情報の提供元となる医用情報を保有する端末装置2)では、提供可能な医用情報について事前に設定した提供側条件が定められる。
提供側条件は、各施設Hにおいて情報収集処理装置1に対して提供可能な医用情報を規定する条件である。
例えば、端末装置2は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等で構成される表示部21や図示しない操作部等を有するモニタ装置20を備えており、提供側条件は端末装置2のモニタ装置20から設定される。なお、図1では、図中、左上の施設Hに設置された端末装置2のみにモニタ装置20を明示したが、モニタ装置20は、全ての端末装置2に設けられていてもよい。
【0020】
図2は、端末装置2のモニタ装置20に表示される提供可能情報設定画面の一例を示す表示画面例である。
図2に示すように、提供可能情報設定画面211には、端末装置2に接続されている医用システム4において取得され、端末装置2に蓄積される医用情報(例えば、胸部正面のX線画像、頭部のX線画像、超音波画像、電子カルテ情報等)が一覧表示され、施設H側では、一覧表示された中から当該施設において外部に提供してよい医用情報を選択、設定することができるようになっている。
図2に示す例では、各医用情報にそれぞれチェックボックスが付された状態で一覧表示させ、提供可能な医用情報のチェックボックスのみにチェックを入れるようになっている。
【0021】
また、提供可能情報設定画面211では、個人情報の削除の要否についてもチェックボックスを付して表示させ、選択、設定可能としている。
本実施形態において、個人情報とは、患者に関する患者情報のうち、患者個人を特定することのできる高度に個人的な情報をいい、例えば患者個人の識別情報(識別標識)である患者IDや患者氏名等である。
なお、患者情報のうちのいずれの情報を個人情報として削除の対象とするかは提供側条件として指定されてもよい。
【0022】
提供可能情報設定画面211においてチェックボックスにチェックを入れることにより、提供側条件が設定される。
設定された提供側条件は、情報収集処理装置1が当該端末装置2と接続された際に、情報収集処理装置1側に読み込まれ、後述する情報保存部6の条件情報記憶領域61に記憶される。
なお、提供側条件の設定の仕方はここに示したものに限定されない。また、提供可能情報設定画面211のレイアウト等は図2に例示したものに限定されない。
【0023】
[情報収集処理装置の構成]
情報収集処理装置1は、施設H内のPACS端末2aや電子カルテ端末2b等の端末装置2から医用情報を受け取る。
なお、情報収集処理装置1は、現実に各施設H内に設置されて、施設H内のPACS端末2aや電子カルテ端末2b等の端末装置2と接続されるようにしてもよい。
端末装置2が設置されている施設H内でオンプレミスな運用がなされて、端末装置2に蓄積される情報が施設H内に保有されているサーバー等に集約されているような場合には、情報収集処理装置1は、当該サーバー等にアクセスして医用情報を取り出せる構成となっていてもよい。
また、インターネット等のコンピュータネットワークを介して端末装置2からクラウド等に医用情報が上げられている場合には、情報収集処理装置1は、このクラウド等にアクセスして医用情報を取り出せる構成としてもよい。
この場合、1つの施設H内の端末装置2だけでなく、例えば、同じ系列の医療機関や提携している医療機関等の情報がクラウド等に上げられて、情報収集処理装置1は当該クラウドにアクセスすることで複数施設Hの端末装置2に蓄積される情報をまとめて収集することができるように構成されていてもよい。このような構成とすることにより、情報収集処理装置1は、より多くの医用情報を広く収集することが可能となる。
【0024】
図3は、情報収集処理装置の制御構成を示す要部ブロック図である。
図3に示すように、本実施形態における情報収集処理装置1は、表示部11、操作部12、通信部13、制御装置5、及び情報保存部6等を備えている。
【0025】
表示部11は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニタにより構成され、制御装置5から入力される表示信号の指示に従って、各種画面や医用画像等を表示する。
本実施形態では、情報要求側となる情報収集処理装置1において、事前に収集対象となる医用情報について設定した収集側条件が定められる。
収集側条件は、情報収集処理装置1において収集したい医用情報を規定する条件である。
表示部11は、収集対象情報を設定する収集対象情報設定画面111を表示させる。
【0026】
図4は、情報収集処理装置1の表示部11に表示される収集対象情報設定画面の一例を示す表示画面例である。
図4に示すように、収集対象情報設定画面111には、端末装置2から取得する可能性のある医用情報(例えば、胸部正面のX線画像、頭部のX線画像、超音波画像、電子カルテ情報等)が一覧表示され、情報収集処理装置1の操作者は、一覧表示された中から当該情報収集処理装置1によって収集したい医用情報を選択、設定することができるようになっている。
図4に示す例では、各医用情報にそれぞれチェックボックスが付された状態で一覧表示させ、提供可能な医用情報のチェックボックスのみにチェックを入れるようになっている。
【0027】
さらに、本実施形態の情報収集処理装置1は、複数の加工手法によって医用情報の加工処理を行うことができ、医用情報の一覧の他、後述する情報加工部53において行うことの可能な加工手法の一覧が収集対象情報設定画面111に表示される。
また、後述する情報抽出部52による医用情報の抽出方法も複数ある場合には、抽出方法の一覧も収集対象情報設定画面111に表示される。
図4に示す例では、各加工手法及び各抽出方法をそれぞれチェックボックスが付された状態で一覧表示させ、選択、設定する加工手法及び抽出方法のチェックボックスのみにチェックを入れるようになっている。
収集対象情報設定画面111においてチェックボックスにチェックを入れることにより、収集側条件が設定される。
設定された収集側条件は、情報収集処理装置1の情報保存部6(後述)の条件情報記憶領域61に記憶される。
なお、収集側条件の設定の仕方はここに示したものに限定されない。また、収集対象情報設定画面111のレイアウト等は図4に例示したものに限定されない。
加工手法のチェックボックス及び抽出方法のチェックボックスのいずれにもチェックが入っていない場合には、表示画面上に「抽出手法を選択してください。」「加工手法を選択してください。」等のメッセージを表示させたり、音声による警告を行う等により、情報収集処理装置1の操作者にいずれかの加工手法及び抽出方法を選択、設定するよう促すようにしてもよい。
【0028】
なお、収集対象となる医用情報について、情報を要求する側である情報収集処理装置1に事前に設定される収集側条件は、情報収集処理装置1において現場の操作者により設定される場合に限定されない。
例えば、工場出荷段階等において、情報の収集を依頼した依頼者によってデフォルトで収集側条件が設定され、予め情報保存部6の条件情報記憶領域61に格納されていてもよい。この場合には、特に表示部11に収集対象情報設定画面111のような表示画面を表示させる必要はない。
また、デフォルトで収集側条件が設定されている場合でも、収集対象情報設定画面111のような表示画面を表示させて、収集側条件の追加、修正等を事後的に設定した上で追加、修正後の収集側条件に基づいて情報収集を行うようにしてもよい。
【0029】
操作部12は、例えばカーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス等を備えて構成されている。
キーボードに対するキー操作やマウス操作等により入力された入力信号(指示信号)は、制御装置5に出力される。
【0030】
通信部13は、例えばLANアダプタ、ルータ、TA(Terminal Adapter)等を備え、図示しないネットワークに接続された各種装置とデータの送受信を行う。
【0031】
制御装置5は、図示しないCPU等で構成される機能部と、ROM54、RAM55等で構成されている。
本実施形態において、制御装置5を機能的にみた場合、図3に示すように、本体制御部51、情報抽出部52、情報加工部53等といった機能部を有している。
制御装置5における各機構部は、CPUがROM54に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム(例えば情報収集処理プログラム)等の各種プログラムを読み出してRAM55の作業領域に展開し、展開されたプログラムと協働することで各種機能を実現するコンピュータである。
【0032】
本体制御部51は、表示部11に対して表示信号を出力し、各種の表示画面を表示させたり、操作部12から入力された入力信号を受け付けて、これに従った処理をするように各部を動作させる等、情報収集処理装置1の各部を総合的に制御するものである。
【0033】
情報抽出部52は、ROM54に格納されている処理プログラムに従って、PACS端末2aや電子カルテ端末2b等の端末装置2から医用情報を抽出するものである。
情報抽出部52は、抽出した医用情報を情報保存部6の医用情報記憶領域62に記憶させる。
本実施形態では、情報抽出部52は、情報収集処理装置1において収集対象となる医用情報について設定された収集側条件と、情報を保有する端末装置2において提供可能な医用情報について設定された提供側条件と、に基づいて、複数の付帯情報を含む医用情報を保有する端末装置2から医用情報を抽出する。
本実施形態において、収集側条件と提供側条件とに基づいて医用情報を抽出する、とは、両条件を照合して、両条件に合う医用情報を抽出することを意味する。
【0034】
情報抽出部52による具体的な抽出手法としては、収集対象となる医用情報と提供可能な医用情報とが全て一致する場合(完全一致の場合)にのみ当該一致した医用情報を収集するとしてもよいし、一部でも一致すれば、当該一致した範囲の医用情報を収集するとしてもよい。
また、収集対象となる医用情報と提供可能な医用情報とが少なくとも1つ以上一致した場合には、提供可能な医用情報を全て取得してもよいしその一部のみを取得してもよい。
さらに、例えば収集側条件を設定する収集対象情報設定画面111に、必ず収集対象とすべき医用情報(必須取得情報)を指定する必須取得情報チェック用ボタンを設けて必須取得情報とされた医用情報が提供側の提供可能な医用情報と一致した場合には提供可能な医用情報の全て又は必須取得情報とされた医用情報のみを取得するとしてもよい。
【0035】
なお、情報抽出部52による抽出手法は、ここに例示したものに限定されず、所望の医用情報のみを選定して抽出するように、適宜様々な条件付け等の手法を用いてもよい。
本実施形態の情報収集処理装置1によって収集された医用情報は、各種の学習データとして用いられる等、所定の用途や目的を持つものであり、こうした用途や目的に照らして適さないデータを収集しても無駄となってしまう。
この点、情報抽出部52による情報の抽出段階において様々な条件付けを行った場合には、用途や目的に照らして有用なデータのみを効率的に収集することができる。これにより、処理時間の短縮を図れるとともに、収集するデータ量を抑えることができ、医用情報記憶領域62にかかる負荷を低減させることができる。
【0036】
具体的には、例えば、図4に示すように、抽出手法として、良質データのみを所望の医用情報として抽出して取得するように条件付けしてもよい。
ここで良質データとは、例えば医用情報が画像データである場合、当該画像データ取得時の撮影条件やポジショニングに不備のないデータをいう。
また、所望の医用情報か否かを選別するための識別器を事前に学習しておき、この識別器を用いて所望の医用情報のみを選別し、抽出してもよい。この場合、例えば収集対象となる医用情報と提供可能な医用情報とが一致する範囲で医用情報を抽出した後、当該医用情報について識別器を用いた選別を行い、良質データと選別された医用情報のみを取得する(すなわち、医用情報記憶領域62に記憶させる)ようにする。
【0037】
例えば、医用情報が画像データである場合、画像データ取得時の撮影条件やポジショニング等の観点から画像として良質なデータであるか否かを識別する識別器を事前に学習しておき、この識別器(良悪データ識別器)を用いて良質なデータを選定するクレンジングを行う。
良悪データ識別器は、ディープラーニングの分類問題において一般的に用いられるAlexNet、GoogleNet等の転移学習モデルを利用して良質なデータを選定することが可能なものである(具体的な選定手法等に関しては、例えば、https://www.cs.toronto.edu/~kriz/imagenet_classification_with_deep_convolutional.pdf参照。)。
このような機械学習(ディープラーニング)を用いることにより、撮影条件異常やポジショニング不良等のある質の悪いデータを、情報収集処理装置1が取得する医用情報から除外することができる。このため、効率的に良質な医用情報のみを収集することができるとともに、医用情報記憶領域62に記憶されるデータ量を抑えることができる。
なお、情報抽出部52による抽出手法は、機械学習(ディープラーニング)を用いたものに限定されない。例えば、撮影条件(例えば何ボルトのX線量で曝射を行ったか等)やポジショニングに関する情報(どの角度で撮影を行ったか、撮影時に位置ずれ等が生じたか否か等)は、画像データの付帯情報として検査情報に含まれていてもよい。これらの情報が検査情報として画像情報に付帯している場合には、情報抽出部52は、例えば撮影部位等の情報と撮影条件やポジショニングに関する情報とを合わせ勘案することで、適切な条件の下で取得された良質データか否かを判断してもよい。
【0038】
情報加工部53は、ROM54に格納されている処理プログラムに従って、情報抽出部52により抽出された医用情報に含まれる複数の付帯情報のうち、少なくとも1つの付帯情報を削除する加工を含む加工処理を施すものである。
情報加工部53は、加工処理後の医用情報を情報保存部6の医用情報記憶領域62に記憶させる。
本実施形態において、情報加工部53は複数の加工手法を有している。例えば収集対象情報設定画面111において加工手法が一又は複数選択、設定された場合には、情報加工部53は、選択、設定された加工手法により医用情報に加工処理を施す。
なお、加工手法を複数持つことは必須ではなく、情報加工部53が1つの加工手法を持つものである場合も本発明の範囲から除外されない。
【0039】
まず、情報加工部53の行う加工処理は、上記のように、医用情報に含まれる複数の付帯情報のうち、少なくとも1つの付帯情報を削除する加工を含んでいる。本実施形態において、「少なくとも1つの付帯情報」とは少なくとも患者の個人情報である。
医用情報がDICOM規格に則った画像データである場合、前述のように当該データには付帯情報として個人情報等が付帯しており、各付帯情報は所定のタグにより管理されている。
情報加工部53は、タグを参照することにより、医用情報に含まれる患者個人を特定できるような情報(例えば患者氏名、患者ID等の個人情報)を選び出し、それらの情報を削除して個人情報を含まないデータに加工する。
なお、患者氏名、患者IDについては患者個人を特定するものであるため、施設H外に医用情報を持ち出す際には必ず削除しなければならないが、その他の情報については、いかなる範囲の情報を削除対象とするかを適宜選択、設定できるようにしてもよい。例えば、年齢や性別も患者の個人的な情報であるが、これらの情報は患者氏名や患者IDと切り離して患者個人を特定できるとは言えず、他方で、年齢や性別により特徴的に現れる疾患等もあることから画像データ等と対応付けたまま残しておく方が有意義である場合もある。このため、医用情報を収集する目的等に応じて、いずれの情報を個人情報として削除(除去)するか否かを決めてもよい。
【0040】
また、情報加工部53は、病変情報に応じて特定される病変位置に関するデータのみを切り出すことが可能であってもよい。
病変情報とは、患者の身体のうち病変箇所がある部分等の情報である。
医用情報が画像データである場合、病変箇所(関心領域、検査対象領域、ROI(Region of Interest)ともいう。)がどこにあるかは、画像データに付帯する付帯情報や、電子カルテ情報、コンピュータ診断支援システム(CAD)情報、レセプト情報等を参照することにより特定可能であることが多い。
そこで、これらの情報を参照することで病変箇所を特定することができ、その病変箇所が画像データ中の一部分に限定されるような場合には、情報加工部53は、当該病変箇所がある部分等、画像データ中の一部分のみを切り出す加工を医用情報に施して、切り出した情報(病変位置に関するデータ)のみを情報保存部6の医用情報記憶領域62に保存させてもよい。
【0041】
画像データ(医用情報)の一部分のみであっても当該病変の識別を行うための学習に用いるデータとなる場合もあるため、切り出した情報(病変位置に関するデータ)のみを保存することも医用情報の収集として意義がある。
そして、このように医用情報のうちの必要部分のみを情報保存部6の医用情報記憶領域62に保存することで、情報保存部6に保存するデータ量を抑えることができる。
また、この場合、患者氏名等の患者の個人情報を切り離して、医用情報のうちの必要部分のみを保存することとすれば、個人情報の流出を確実に防ぎつつ、医用情報を収集することができる。
なお、このように情報加工部53の行う病変位置に関するデータの切り出し処理によって医用情報から個人情報が取り除かれる場合には、当該切り出し処理が少なくとも1つの付帯情報を削除する加工処理となる。
【0042】
また、情報加工部53は、情報提供側の端末装置2が設置されている施設H内において、提供元の端末装置2が保有する医用情報(例えば画像データ)のうち情報抽出部52が抽出した医用情報(例えば画像データ)を、学習により不可逆的な特徴量(パラメータ)に変換してもよい。この場合には、特徴量(パラメータ)が情報保存部6の医用情報記憶領域62に保存される。
医用情報を特徴量に変換するためには、医用情報における画像データと、当該画像データがいかなる部位(例えば胸部)のものであるかの情報(ラベル)とが必要である。
なお、画像データ及びその部位情報(ラベル)等を特徴量に変換する手法は特に限定されない。例えば、ディープラーニング等の機械学習を用いて学習してもよい。機械学習の手法やディープラーニングで用いるネットワーク等は、任意に選択することとしてもよいし、固定でもよい。機械学習の手法やディープラーニングで用いるネットワーク等として何を選択するかによって学習の仕方や学習結果に差異が生じるため、適宜適切な機械学習の手法やネットワーク等が選択されることが好ましい。選択の仕方としては、例えば表示部11に図示しない選択画面等を表示させて情報収集処理装置1の操作者が情報収集の目的等に応じて選択するようにしてもよい。
【0043】
このように、施設H内において医用情報を画像データ等を含まない(画像データ等から学習により取り出した)特徴量に変換することで、個人情報を含まず、安全に施設H外に持ち出し可能な情報を医用情報記憶領域62に蓄積することができ、情報の収集を効率的に実施することが可能となる。
また、画像データ自体を蓄積する場合と比較して医用情報記憶領域62に蓄積されるデータ量を抑えることもできる。
このように情報加工部53の行う特徴量への変換処理によって医用情報から個人情報が取り除かれる場合には、当該変換処理が、医用情報について個人情報等の一部の情報を削除する加工処理となる。
【0044】
なお、情報加工部53は、施設H内においては、画像データから病変箇所(関心領域、検査対象領域、ROI)のみの切り出しを行い、この病変箇所(ROI)に部位情報(ラベル)を付与して医用情報記憶領域62医用情報記憶領域62に記憶させ、その後に病変箇所(ROI)とその部位情報(ラベル)とに基づいて、これを特徴量に変換してもよい。この場合、部位情報(ラベル)は暗号化されていることが好ましい。
【0045】
また、情報加工部53は、同一の患者に関する医用情報同士を紐づけする処理を行ってもよい。
本実施形態において、情報加工部53は、医用情報について患者ID等の患者を特定可能な個人情報を削除する加工処理を行うようになっている。
しかし、同一の患者についての画像データ等の医用情報は関連付けておいた方が収集した情報を機械学習の学習データ等として用いる場合に有意義である場合がある。
このため、情報加工部53は、同一患者に関する医用情報同士の関連付けを行うために、各医用情報に患者ID等とは異なる、患者個人との対応付けの無い固有の識別情報(識別標識)を付与してもよい。この場合、同一患者に関する医用情報には同じ識別情報(識別標識)を付与してもよいし、各医用情報にそれぞれ異なる識別情報(識別標識)を付与しつつ、どれとどれが同一患者に関する医用情報に付された識別情報であるかを示す関連付け情報等を記憶させてもよい。
このようにすることにより、個人情報を削除しても、同一の患者の医用情報は同一患者のものであることが分かるようになり、個人の特定がされない安全な形で後の学習に有効な医用情報を効率的に収集することができる。
【0046】
なお、情報加工部53が医用情報について患者を特定可能な個人情報を削除する加工処理を行うタイミングは、医用情報を施設H外に持ち出す前であればよく特に限定されない。
例えば、情報抽出部52による医用情報の抽出処理が行われ、抽出された医用情報が医用情報記憶領域62に保存されても、医用情報を施設H外に持ち出すまでは個人情報を含んだままとしてもよい。
このようにすることで、同一患者について追加の検査や撮影が行われ、医用情報が追加された場合にも、同一患者についての医用情報を患者ID等の個人情報に基づいて関連付けて保存することができる。
【0047】
例えば、ある患者についての画像データが医用情報として情報抽出部52により抽出されて医用情報記憶領域62に保存された後、同一患者について診断情報(診断結果)等が追加されて電子カルテ端末2b等に入力された場合や新たな撮影が行われて画像データが取得された場合、新たな診断結果や画像データとこれを撮影したモダリティー情報、管理番号等が、患者ID等によって先に保存された画像データと関連付けられて医用情報記憶領域62に保存、蓄積されることが好ましい。
このように、同一患者について新たな診断情報(診断結果)や画像データ等が追加された場合には、医用情報記憶領域62内の情報が更新可能となっていてもよい。
そして、この場合には情報加工部53は、医用情報を施設H外に持ち出す前に医用情報から患者ID等の個人情報を削除する。
これにより、医用情報を施設H外に持ち出すまで医用情報の紐付けを維持することができ、情報収集の効率化を図ることができる。
【0048】
さらに、情報加工部53は、医用情報が画像データである場合に、当該画像データの縮小を行うことが可能であってもよい。
なお、画像データを縮小する手法は特に限定されず、各種の手法を用いることができる。
画像データを縮小することによって、医用情報記憶領域62に記憶されるデータ量を少なくすることができる。
【0049】
なお、情報加工部53は、全ての画像について画像データの縮小を行ってもよいし、画像データの画像特性に応じて画像データの縮小の有無(高解像度のデータとするか低解像度のデータとするか等を含む)や、縮小する場合の縮小率等を決定してもよい。
画像特性とは、人体のいかなる部分を撮影した画像であるか、どのような病変を対象とした撮影であるか等である。
例えば、マンモグラフィ装置によって乳房を撮影した場合に、それが腫瘤部分を確認するための撮影である場合、腫瘤は病変箇所が大きく、腫瘤の有無は画像データを縮小して(低解像度として)も確認することができる。これに対して、乳房に生じる石灰化は、100μ程度の微細な病変であるため、画像を縮小すると検出し辛くなってしまい、できるだけ高画質(高解像度)のまま画像データを保存しておくことが望まれる。
このため、画像特性がマンモグラフィ装置によって撮影された乳房の腫瘤である場合には1/2に画像データを縮小する等、低解像度のデータ量の少ない画像データとし、画像特性が乳房の石灰化である場合には、画像データを縮小せずに、高解像度のまま医用情報記憶領域62に保存する。
【0050】
なお、画像特性は、病変情報に基づき決定される。
病変情報としては、例えば、電子カルテ端末2bに記憶されている診断情報や、医師による診断結果から取得される病変情報であってもよいし、CAD等のコンピュータによる診断支援システム等で得られる結果から取得される病変情報であってもよい。
情報加工部53は、これらの情報を参照して画像データ等の医用情報の加工処理を行う。
【0051】
情報加工部53が画像データの縮小を行う場合、縮小を行うか否か等の判断基準は画像特性に応じたものに限定されない。
例えば、情報加工部53は、情報収集処理装置1によって収集した情報をどのような用途に用いるか等、その用途や目的に基づいて画像データの縮小の有無や、縮小する場合の縮小率等を決定してもよい。
例えば、乳房の石灰化の有無を検出するための学習を行う際の学習データとして用いる場合には、画像データの縮小を行わずに元の画像データをできるだけそのまま保存し、画像中から所定の臓器の位置や範囲等を検出するための学習を行う際の学習データとして用いる場合には、画像データの縮小を行ってデータ量の少ない状態で保存する等の判断を情報加工部53が行ってもよい。
【0052】
[情報収集処理装置の作用(情報収集処理方法)]
次に、図5を参照しつつ、本実施形態における情報収集処理装置1によって実行される処理を説明する。
【0053】
図5に示すように、施設H内の端末装置2では、外部装置等に提供することが可能な医用情報を提供側条件として設定する(ステップS1)。
設定された提供側条件は情報収集処理装置1に送信される(ステップS2)。なお、提供側条件は直接情報収集処理装置1に送られなくてもよく、例えば情報収集処理装置1がアクセス可能な状態で提供側条件がクラウド等に上げられていてもよい。
【0054】
他方、情報収集処理装置1の側では、収集対象となる医用情報を収集側条件として設定する(ステップS3)。設定された収集側条件は情報保存部6の条件情報記憶領域61に記憶される(ステップS4)。なお、前述のように、収集側条件は情報収集処理装置1において設定する場合に限定されず、予め出荷時にデフォルトとして設定されていてもよい。この場合には、収集側条件は出荷当初から情報保存部6の条件情報記憶領域61に保存されている。
情報収集処理装置1が端末装置2(又は端末装置2から提供側条件が上げられているクラウド等)と接続されると情報収集処理装置1の制御装置5は提供側条件を取得して(ステップS5)、情報保存部6の条件情報記憶領域61に記憶させる(ステップS6)。
【0055】
次に、情報抽出部52は、提供側条件と収集側条件とを照合し(ステップS7)、所定の条件を満たしているか否かを判断する(ステップS8)。所定の条件を満たしていない場合(ステップS8;NO)には、情報抽出部52は医用情報を抽出することができないため、処理を終了する。
他方、所定の条件を満たしている場合(ステップS8;YES)には、情報抽出部52は、医用情報の提供元である端末装置2から条件に合う医用情報を抽出する(ステップS9)。
前述のように、所定の条件は提供側条件と収集側条件との完全一致であってもよいし、一部等の一致であってもよい。
情報抽出部52による抽出手法としては、収集側条件として規定されたものが用いられる。
【0056】
医用情報が抽出されると、情報加工部53は医用情報に対して加工処理を適用する(ステップS10)。なお、情報加工部53による加工処理としては、収集側条件として規定されたものが用いられる。
加工処理が完了すると、情報加工部53は、加工処理後の医用情報を情報保存部6の医用情報記憶領域62に記憶させる(ステップS11)。
【0057】
なお、情報収集処理装置1によって行われる情報収集処理は、図5に示した順序等によるものに限定されない。
例えば、情報抽出部52により医用情報が抽出された場合、何ら加工処理を行うことなく医用情報を情報保存部6の医用情報記憶領域62に記憶させてもよい。情報加工部53による加工処理は医用情報を施設Hの外部に持ち出すまでに行われればよく、それまでは未加工のまま医用情報記憶領域62に記憶されていてもよい。
前述のように、情報抽出部52により医用情報が抽出された後も、同一患者について追加の画像撮影が行われたり新たな診断結果が出る場合があり、抽出後の医用情報にこれらの追加情報を対応付けることが望ましい。
このため、特に患者ID等、医用情報同士を対応付ける(紐付ける)のに必要な情報については、医用情報が施設H内にある間は維持されていることが好ましく、情報加工部53は医用情報を施設H外部に持ち出すタイミングで患者ID等を削除する加工処理を行えばよい。
この場合、情報加工部53による全ての加工処理を医用情報を施設H外部に持ち出すタイミングで行ってもよいし、画像データの縮小等、患者ID等の医用情報同士を対応付けるのに必要な情報が削除されない加工処理については医用情報記憶領域62に記憶させる前等に行い、患者ID等を削除する加工処理だけを医用情報を施設H外部に持ち出すタイミングで行ってもよい。
このようにすることで、医用情報を施設H外部に持ち出すまで効率よく医用情報を収集するとともに、医用情報を施設H外部に持ち出す際には、患者個人を特定可能な個人情報が削除された安全な状態の医用情報とすることができる。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、情報収集処理装置1において収集対象となる医用情報について設定した収集側条件と、提供可能な医用情報について設定した提供側条件とに基づいて、複数の付帯情報を含む医用情報を保有する提供元の端末装置2から医用情報を抽出する情報抽出部52と、情報抽出部52により抽出された医用情報に含まれる複数の付帯情報のうち、少なくとも1つの付帯情報ついて一部の情報を削除する加工を含む加工処理を施す情報加工部53と、医用情報を保存する情報保存部6と、を有している。
これにより、情報要求側における収集目的、用途に合った医用情報を施設H外部への持ち出し可能な安全な状態で情報収集処理装置1の情報保存部6に収集することができる。
【0059】
また、本実施形態において、情報保存部6に保存される医用情報は、医療機関において取得可能な画像データ、診断情報を含む患者に関する情報である。
このため、画像診断の支援を行うための機械学習等に用いられる画像データを情報収集処理装置1において適切に収集することができる。
【0060】
また、本実施形態において、情報加工部53は、情報抽出部52により抽出された医用情報から個人情報を削除して個人情報を含まないデータに加工することが可能である。
このため、施設H外部に持ち出すことを前提として大量の医用情報を収集する場合にも、医用情報から患者個人を識別、特定することはできず、安全性の高い情報収集処理装置1とすることができる。
【0061】
また、本実施形態において、情報加工部53は、患者ID等の個人情報を医用情報から削除した場合に、患者個人や施設H等とリンクしない固有の識別情報(識別標識)等を医用情報に付して同一の患者に関する医用情報同士を紐づけすることが可能となっている。
このため、患者個人を識別、特定することのできない、安全性の高い医用情報の収集を可能としつつ、同一の患者に関する医用情報同士は対応付けることができ、有用な医用情報を多く収集することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態において、情報加工部53は、情報提供側の施設H内における学習により、提供元の医用情報を不可逆的な特徴量に変換してもよい。
これにより、情報収集処理装置1に収集される医用情報は患者個人を識別、特定することのできない、安全性の高いものとなるとともに、画像データ等をそのまま記憶する場合と比べて、少ないデータ量で広く大量の医用情報を収集、保存することができる。
【0063】
また、本実施形態の情報加工部53は、医用情報が画像データを含む場合、画像データの縮小を行うことが可能である。
画像データはデータ量が多くなりがちであり、そのまま記憶させると情報保存部6のデータ容量を大きくしなければならなくなる。この点、画像データを縮小することで、広く大量の医用情報を収集、保存した場合でもデータ量を少なく抑えることができ、情報保存部6の負荷を軽くすることができる。
【0064】
また、本実施形態において、情報加工部53は、画像データの画像特性に応じて画像データの縮小の有無、縮小率を決定することが可能である。
医用情報としての画像データには様々なものがあり、一律に縮小すると、情報収集処理装置1における医用情報の収集目的に沿わないものとなる場合もある。この点、本実施形態のように縮小の可否や程度を画像特性に応じて決める場合には、データ量をできるだけ少なく抑えつつ、収集目的に沿った適切な医用情報を収集することができる。
【0065】
さらに、上記の場合、画像特性は、病変情報に基づき決定されてもよい。
この場合、電子カルテ情報等を参照するだけで、容易に縮小の可否や程度を決定することができ、データ量をできるだけ少なく抑えつつ、収集目的に沿った適切な医用情報を収集することができる。
【0066】
また、本実施形態において、情報加工部53は、病変情報に応じて特定される病変位置に関するデータのみを切り出すことが可能であってもよく、情報加工部53により病変位置に関するデータのみが切り出されたときは、情報保存部6は、病変位置に関するデータを保存することが可能としてもよい。
この場合、必要な情報だけを情報保存部6の医用情報記憶領域62に蓄積することができ、データ量を少なく抑えることができる。
また、必要な情報だけを切り出すことで、患者個人をより特定しにくいデータを情報保存部6の医用情報記憶領域62に蓄積することができる。
【0067】
また、医師による診断結果又はコンピュータによる診断支援システムで得られる結果から取得される病変情報を参照して情報加工部53が加工処理を行うとした場合には、必要な情報をより適切に特定して切り出すことができるとしてもよい。
これにより、データ量をできるだけ少なく抑えつつ、収集目的に沿った適切な医用情報を収集することができる。
【0068】
また本実施形態では、情報抽出部52は、所望の医用情報のみを選定して抽出するようになっている。
このため、情報保存部6の医用情報記憶領域62に蓄積されるデータ量をできるだけ少なく抑えつつ、収集目的に沿った適切な医用情報を効率的に収集することができる。
【0069】
特に、医用情報が画像データである場合、所望の医用情報とは、画像データ取得時の撮影条件やポジショニングに不備のない良質なデータである。
このため、撮影条件に不備があったり、ポジショニング不良であるような医用情報については情報抽出部52により抽出されないため、情報保存部6の医用情報記憶領域62に蓄積されるデータ量をできるだけ少なく抑えつつ、収集目的に沿った適切な医用情報を効率的に収集することができる。
【0070】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0071】
例えば、上記実施形態では、医用情報が画像データ(医用画像データ)や、その付帯情報、患者情報等である場合を例示したが、医用情報は画像データを含むものに限定されない。
例えば、医用情報は聴診等によって得られる各種音のデータ(例えば、胸部聴診で得られる心音や心雑音、頸動脈雑音、呼吸音等や、腹部聴診で得られる腹部血管雑音、グル音、声(音声)等)であってもよいし、各種波形データ(例えば、脳波形や心電図等の波形の時系列的な情報等)であってもよい。また医用情報は、電子カルテ情報や医師等によって入力された診察情報等の文字データのみで構成されたものであってもよい。
これらの場合にも、情報収集処理装置1において収集対象となる医用情報について設定した収集側条件と、提供元の端末装置2において提供可能な医用情報について設定した提供側条件とに基づいて、情報抽出部52が提供元の端末装置2から複数の付帯情報を含む医用情報を抽出し、この医用情報に含まれる複数の付帯情報のうち、少なくとも1つの付帯情報である個人情報等の一部の情報について情報加工部53が削除する加工を含む加工処理を施す。この場合、情報加工部53による加工処理の手法は、医用情報の種類に応じて適宜選択される。
【符号の説明】
【0072】
1 情報収集処理装置
2 端末装置
4 医用システム
5 制御装置
6 情報保存部
11 表示部
52 情報抽出部
53 情報加工部
61 条件情報記憶領域
62 医用情報記憶領域
H 施設
図1
図2
図3
図4
図5