(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物およびその発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20220712BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220712BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C08J9/04 108
C08J9/04 CFD
C08L63/00 A
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2018134114
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大谷 顕三
(72)【発明者】
【氏名】赤石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森尾 恵梨
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第6358368(JP,B1)
【文献】特開2018-064688(JP,A)
【文献】特開2012-140532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合された熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して、増粘剤(B)0.1~4.5質量部の割合で含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物であり、該熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の酸価が10~45eq/tであり、230℃、滞留時間6分におけるMFR(a)が4~25g/10minであり、230℃、滞留時間26分におけるMFR(b)が4~25g/10minであることを特徴とする発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b)と(a)の差[(b)-(a)]が、-10~0g/10minであることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項3】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントの含有量が55~90質量%である請求項1または2に記載の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項4】
増粘剤(B)が、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量が4000~25000であり、かつ(X)20~99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1~80質量%のグリシジル(メタ)アクリレート、および(Z)0~79質量%のエポキシ基を含有していない(X)以外のビニル基含有モノマーからなる共重合体であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物からなる、密度が0.01~0.35g/cm
3であり、かつ反発弾性率が50~90%であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項6】
表層に厚みが100~800μmの非発泡スキン層を持ち、内層に樹脂連続相と平均セル径が10~350μm、最大セル径が100~1000μmの独立した発泡セルからなる発泡層を持ち、厚み方向に非発泡スキン層と発泡層のサンドイッチ構造を持つ、請求項5に記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性が高く機械的特性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物とその発泡成形体に関するものである。さらに詳しくは、発泡成形性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物であり、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物から得られる発泡成形体は、軽量かつ高い反発弾性を有し、さらに容易な成形方法で良質の発泡成形品の提供が可能である。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、射出成形性、押出成形性に優れ、機械的強度が高く、弾性回復性、耐衝撃性、柔軟性などのゴム的性質、耐寒性に優れる材料として、自動車部品、電気・電子部品、繊維、フィルム、スポーツ部品などの用途に使用されている。
【0003】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、耐熱老化性、耐光性、耐摩耗性に優れていることから、自動車部品、特に高温環境下で使用される部品や自動車内装部品に採用されている。さらに近年樹脂部品の軽量化が進められており、目的を達成する手段の一つとして発泡成形品の適用を挙げることができる。
【0004】
しかしながら、一般に溶融重縮合法で製造されたポリエステルエラストマーは、溶融粘度が比較的低いため、発泡成形、ブロー成形、押し出し成形等の高溶融粘度が必要とされる成形方法に適用した場合、成形性が確保できないという問題が生じる。そのため溶融重縮合法で製造した重合体に、架橋剤や増粘剤を配合することによって、ブロー成形や押し出し成形に適用可能な溶融粘度まで引き上げることが行われている(例えば、特許文献1、2、3)。
【0005】
上記方法によれば、溶融粘度の高いポリエステルエラストマーを得ることができるが、得られるポリエステルエラストマーは反応が充分に制御されていないため溶融粘度の滞留時間依存性が大きい。特に発泡成形体を調製する場合、上記の方法により得られた組成物は、条件によってはゲル化し易く、充分な溶融張力を得るとゲル化傾向を生じて安定した流動性が得難く、均一な厚さの成形品を得難い。さらに、いずれの引用文献も増粘による効果には言及しているが、特に発泡成形品を効率よく生産するための方法や、発泡成形品の調製に適しているポリエステルエラストマー組成物について、詳細は言及していない。
【0006】
特許文献4では、ポリエステルエラストマー組成物の溶融張力を制御し、高品質な発泡成形体の製造が成されている。しかしながら、発泡成形時の滞留における樹脂組成物のゲル化を抑制させることに関しては、良く考慮されているものの、滞留時の溶融粘度の変化、及び酸価との関係における発泡成形体の品質に関しては、全く言及されていない。さらに、発泡成形体の密度が高く、軽量化として満足できる程の低密度の発泡体の製造には至っていない。さらに、発泡成形品として要求されるクッション性や反発性に関しては、全く考慮されていない。
【0007】
ところで、自動車シートに好適に使用される発泡体としては、反発弾性率が60%以上の高反発のウレタン発泡体が好適に採用されており、特許文献5では、その製造方法に関して提案されているものの、ウレタン発泡体には、燃焼時にシアン化ガス等が発生するため、環境汚染の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-323110号公報
【文献】特開平5―302022号公報
【文献】特開2009-29895号公報
【文献】特開2012-140532号公報
【文献】特開2003-342343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の現状に鑑みなされたものであり、その目的は、軽量性かつ反発弾性率に優れた発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物、及びそれからなる発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の溶融粘度と酸価について鋭意検討した。その結果、熱可塑性ポリエステルエラストマーに増粘剤を配合し、特定の溶融粘度、及び酸価に調整した熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いることで、良好な発泡成形性が発現し、高倍率発泡による軽量化が可能となり、かつ、極めて高い反発弾性率を有する樹脂発泡体が得られることを見出した。
【0011】
即ち、本発明によれば、[1]~[6]を構成するものである。
[1] 芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族ジオールとを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合された熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して、増粘剤(B)0.1~4.5質量部の割合で含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物であり、該熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の酸価が10~45eq/tであり、230℃、滞留時間6分におけるMFR(a)が4~25g/10minであり、230℃、滞留時間26分におけるMFR(b)が4~25g/10minであることを特徴とする発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
[2] 前記(b)と(a)の差[(b)-(a)]が、-10~0g/10minであることを特徴とする[1]に記載の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
[3] 熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントの含有量が55~90質量%である[1]または[2]に記載の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
[4] 増粘剤(B)が、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量が4000~25000であり、かつ(X)20~99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1~80質量%のグリシジル(メタ)アクリレート、および(Z)0~79質量%のエポキシ基を含有していない(X)以外のビニル基含有モノマーからなる共重合体であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物からなる、密度が0.01~0.35g/cm3であり、かつ反発弾性率が50~90%であることを特徴とする発泡成形体。
[6] 表層に厚みが100~800μmの非発泡スキン層を持ち、内層に樹脂連続相と平均セル径が10~350μm、最大セル径が100~1000μmの独立した発泡セルからなる発泡層を持ち、厚み方向に非発泡スキン層と発泡層のサンドイッチ構造を持つ、[5]に記載の発泡成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物、及びそれからなる発泡成形体は、軽量性に優れるのみならず、極めて高い反発弾性率を発現することが出来る。さらに、高い発泡倍率にもかかわらず均一な発泡状態と、成形安定性を持つため、高い信頼性の必要な部品にも適用の可能なポリエステル発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の発泡成形体の製造方法の一例を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物およびそれを用いた発泡成形体について詳述する。
【0015】
[熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)]
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)は、ハードセグメントとソフトセグメントが結合してなる。ハードセグメントは、ポリエステルからなる。ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸としては、通常の芳香族ジカルボン酸が広く用いられ、特に限定されないが、主たる芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸(異性体の中では2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい)であることが望ましい。これらの芳香族ジカルボン酸の含有量は、ハードセグメントのポリエステルを構成する全ジカルボン酸中、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。その他のジカルボン酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは、樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられることができ、その量は全酸成分の30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0016】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)において、ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族又は脂環族ジオールとしては、一般の脂肪族又は脂環族ジオールが広く用いられ、特に限定されないが、主として炭素数2~8のアルキレングリコール類であることが望ましい。具体的には、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールのいずれかであることが好ましい。
【0017】
上記のハードセグメントのポリエステルを構成する成分としては、ブチレンテレフタレート単位(テレフタル酸と1,4-ブタンジオールからなる単位)あるいはブチレンナフタレート単位(2,6-ナフタレンジカルボン酸と1,4-ブタンジオールからなる単位)よりなるものが、物性、成形性、コストパフォーマンスの点から好ましい。
【0018】
また、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)におけるハードセグメントを構成するポリエステルとして好適な芳香族ポリエステルを事前に製造し、その後ソフトセグメント成分と共重合させる場合、該芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、かかるポリエステルは、数平均分子量10000~40000を有しているものが望ましい。
【0019】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種である。
【0020】
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらの中でも、弾性特性の点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0021】
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペートなどが挙げられる。これらの中でも、弾性特性の点から、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペートが好ましい。
【0022】
脂肪族ポリカーボネートは、主として炭素数2~12の脂肪族ジオール残基からなるものであることが好ましい。これらの脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどが挙げられる。特に、得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの柔軟性や低温特性の点から、炭素数5~12の脂肪族ジオールが好ましい。これらの成分は、以下に説明する事例に基づき、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントを構成する、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールとしては、融点が低く(例えば、70℃以下)かつ、ガラス転移温度が低いものが好ましい。一般に、熱可塑性ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを形成するのに用いられる1,6-ヘキサンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールは、ガラス転移温度が-60℃前後と低く、融点も50℃前後となるため、低温特性が良好なものとなる。その他にも、上記脂肪族ポリカーボネートジオールに、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを適当量共重合して得られる脂肪族ポリカーボネートジオールは、元の脂肪族ポリカーボネートジオールに対してガラス転移点が若干高くなるものの、融点が低下もしくは非晶性となるため、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールに相当する。また、例えば、1,9-ノナンジオールと2-メチル-1,8-オクタンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールは、融点が30℃程度、ガラス転移温度が-70℃前後と十分に低いため、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールに相当する。
【0024】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントとしては、本発明の課題を解決する観点から、脂肪族ポリエーテルが好ましい。
【0025】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)は、テレフタル酸、1,4-ブタンジオール、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを主たる成分とする共重合体であることが好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)を構成するジカルボン酸成分中、テレフタル酸が40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)を構成するグリコール成分中、1,4-ブタンジオールとポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの合計が40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
【0026】
前記ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、500~4000であることが好ましい。数平均分子量が500未満であると、エラストマー特性を発現しにくい場合がある。一方、数平均分子量が4000を超えると、ハードセグメント成分との相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、800以上3000以下であることがより好ましく、1000以上2500以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)において、ソフトセグメントの含有量は、30~90質量%が好ましい。ソフトセグメントの含有量がこの範囲にあることで、本発明の効果が十分に発揮される。また、非常に優れた反発弾性を発揮すると言う観点からは、ソフトセグメントの含有量は、55~90質量%が好ましく、より好ましくは60~90質量%である。ソフトセグメントの含有量が90質量%を超えると、結晶性が低下しすぎるため、発泡成形性に劣る傾向にある。
【0028】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の酸価は、10~80eq/tであることが好ましく、15~60eq/tであることがより好ましい。
【0029】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)は、公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、およびソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、ジカルボン酸と過剰量のグリコールおよびソフトセグメント成分を触媒の存在下でエステル化反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あらかじめハードセグメントのポリエステルを作っておき、これにソフトセグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化させる方法、ハードセグメントとソフトセグメントを鎖連結剤でつなぐ方法、さらにポリ(ε-カプロラクトン)をソフトセグメントに用いる場合は、ハードセグメントにε-カプロラクトンモノマーを付加反応させる方法などのいずれの方法をとってもよい。
【0030】
[増粘剤(B)]
本発明における増粘剤(B)は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の持つヒドロキシル基あるいはカルボキシル基と反応し得る官能基を有する反応性化合物(以下、単に反応性化合物と称することがある)であり、かつ後述する滞留時の溶融粘度及び、所定の酸価を満足出来れば、特に限定されない。反応し得る官能基としては、エポキシ基(グリシジル基)、酸無水物基、カルボジイミド基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、該官能基は1分子あたり2個以上含有する。該官能基は、エポキシ基(グリシジル基)がより好ましい。
【0031】
増粘剤(B)が、エポキシ基を持つ化合物の場合、2つ以上のエポキシ基を持つ多官能エポキシ化合物として、具体的には、2つのエポキシ基を持つ1,6-ジハイドロキシナフタレンジグリシジルエーテルや1,3-ビス(オキシラニルメトキシ)ベンゼン、3つのエポキシ基を持つ1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンやジグリセロールトリグリシジルエーテル、4つのエポキシ基を持つ1-クロロ-2,3-エポキシプロパン・ホルムアルデヒド・2,7-ナフタレンジオール重縮合物やペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルが挙げられる。中でも、骨格に耐熱性を保有した多官能のエポキシ化合物であることが好ましい。特に、ナフタレン構造を骨格にもつ2官能、もしくは4官能のエポキシ化合物、またはトリアジン構造を骨格にもつ3官能のエポキシ化合物が好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の溶液粘度上昇の程度や、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の酸価を効率良く低下させることができる効果や、エポキシ自身の凝集・固化によるゲル化の発生程度を考慮すると、2官能または3官能のエポキシ化合物が好ましい。
【0032】
その他にも、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量が4000~25000であり、かつ(X)20~99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1~80質量%グリシジル(メタ)アクリレート、および(Z)0~79質量%のエポキシ基を含有していない(X)以外のビニル基含有モノマーからなる共重合体を挙げることができる。
【0033】
本発明で使用する増粘剤(B)としては、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量が4000~25000であり、かつ(X)20~99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1~80質量%グリシジル(メタ)アクリレート、および(Z)0~79質量%のエポキシ基を含有していない(X)以外のビニル基含有モノマーからなるスチレン系共重合体が、熱可塑性ポリエステルエラストマーとの相溶性が良く、分子量分布がより広くなる点から好ましい。より好ましくは(X)が20~99質量%、(Y)が1~80質量%、(Z)が0~40質量%からなる共重合体であり、さらに好ましくは(X)が25~90質量%、(Y)が10~75質量%、(Z)が0~35質量%からなる共重合体である。これらの組成は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)との反応に寄与する官能基濃度に影響するため、前記範囲に適切に制御することが好ましい。
【0034】
前記(X)ビニル芳香族モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。前記(Y)グリシジルアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルやシクロヘキセンオキシド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中でも、反応性の高い点で(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。前記(Z)その他のビニル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の炭素数が1~22のアルキル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。また(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミド、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アリルエーテル類等の芳香族系ビニル系単量体、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンモノマーなども前記(Z)その他のビニル基含有モノマーとして使用可能である。
【0035】
前記共重合体の重量平均分子量は、4000~25000であることが好ましい。重量平均分子量は、より好ましくは5000~15000である。重量平均分子量が4000未満であると、未反応の共重合体が成形工程で揮発し、もしくは成形体表面にブリードアウトし、表面の汚染を引き起こす虞がある。一方、重量平均分子量が25000を超えると、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)との反応が遅くなって分子量増大効果が不充分になるだけでなく、共重合体と熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)との相溶性が悪くなるため、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)が本来持つ耐熱性などの特性が低下する可能性が大きくなる。
【0036】
前記共重合体のエポキシ価は、400~2500当量/1×106gである事が好ましく、より好ましくは500~1500当量/1×106g、さらに好ましくは600~1000当量/1×106gである。エポキシ価が400当量/1×106g未満であると、増粘の効果が発現しないことがあり、一方、2500当量/1×106gを超えると、増粘効果が過剰となり成形性に悪影響を与えることがある。
【0037】
増粘剤(B)が、カルボジイミド基を持つ化合物の場合、ポリカルボジイミド化合物を使用することができる。ポリカルボジイミド化合物は、効率良く酸価を低減させる点で有利である。
【0038】
発明で用いることができるポリカルボジイミド化合物とは、1分子内にカルボジイミド基(-N=C=N-の構造)を2つ以上有するポリカルボジイミドであればよく、例えば、脂肪族ポリカルボジイミド、脂環族ポリカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミドやこれらの共重合体などが挙げられる。好ましくは脂肪族ポリカルボジイミド化合物又は脂環族ポリカルボジイミド化合物である。
【0039】
ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素反応により得ることができる。ここで使用できるジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-ジイソシアネートなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を共重合させて用いることもできる。また、分岐構造を導入したり、カルボジイミド基やイソシアネート基以外の官能基を共重合により導入したりしてもよい。さらに、末端のイソシアネートはそのままでも使用可能であるが、末端のイソシアネートを反応させることにより重合度を制御してもよいし、末端イソシアネートの一部を封鎖してもよい。
【0040】
ポリカルボジイミド化合物としては、特に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどに由来する脂環族ポリカルボジイミドが好ましく、特に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドがよい。
【0041】
ポリカルボジイミド化合物は、1分子あたり2~50個のカルボジイミド基を含有することが、安定性と取り扱い性の点で好ましい。より好ましくは1分子あたりカルボジイミド基を5~30個含有するのがよい。ポリカルボジイミド分子中のカルボジイミドの個数(すなわちカルボジイミド基数)は、ジイソシアネート化合物から得られたポリカルボジイミドであれば、重合度に相当する。例えば、21個のジイソシアネート化合物が鎖状につながって得られたポリカルボジイミドの重合度は20であり、分子鎖中のカルボジイミド基数は20である。通常、ポリカルボジイミド化合物は、種々の長さの分子の混合物であり、カルボジイミド基数は、平均値で表される。前記範囲のカルボジイミド基数を有し、室温付近で固形であると、粉末化できるので、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)との混合時の作業性や相溶性に優れ、均一反応性、耐ブリードアウト性の点でも好ましい。なお、カルボジイミド基数は、例えば、常法(アミンで溶解して塩酸で逆滴定を行う方法)を用いて測定できる。
【0042】
ポリカルボジイミド化合物は、末端にイソシアネート基を有し、イソシアネート基含有率が0.5~4質量%であることが、安定性と取り扱い性の点で好ましい。より好ましくは、イソシアネート基含有率は1~3質量%である。特に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドであって、前記範囲のイソシアネート基含有率を有することが好ましい。なお、イソシアネート基含有率は常法(アミンで溶解して塩酸で逆滴定を行う方法)を用いて測定できる。
【0043】
増粘剤(B)が、イソシアネート基を持つ化合物の場合、上記したイソシアネート基を含有するポリカルボジイミド化合物や、上記したポリカルボジイミド化合物の原料となるイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0044】
増粘剤(B)が、酸無水物基を持つ化合物の場合、1分子あたり、2~4個の無水物を含有する化合物が、安定性と取り扱い性の点で好ましい。このような化合物として例えば、フタル酸無水物や、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物などが挙げられる。
【0045】
増粘剤(B)の含有量は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)100質量部に対して、0.1~4.5質量部であり、好ましくは0.1~4質量部であり、より好ましくは0.1~3質量部である。増粘剤(B)を含有する場合、0.1質量部未満であると、目標とした分子鎖延長効果が不十分であり、4.5質量部を超えると、増粘効果が過剰となり成形性に悪影響を与えたり、成形品の機械的特性に影響を与える傾向がある。増粘剤(B)がエポキシ化合物の場合、4.5質量部を超えると、エポキシ化合物の凝集硬化によって成形品表面に凸凹が生じることがある。増粘剤(B)がカルボジイミド化合物の場合、4.5質量部を超えると、ポリカルボジイミド化合物の塩基性により熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の加水分解が生じ機械的特性に影響を与える傾向がある。
【0046】
上記説明の通り、増粘剤(B)としては、エポキシ化合物、特に、グリシジル基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量が4000~25000であり、かつ(X)20~99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1~80質量%グリシジル(メタ)アクリレート、および(Z)0~79質量%のエポキシ基を含有していない(X)以外のビニル基含有モノマーからなるスチレン系共重合体が好ましい。カルボジイミド基等の反応性の速い官能基を有する化合物をエポキシ化合物と併用して用いた場合は、増粘後の樹脂組成物の分子量分布が狭くなる傾向にある。そのため、射出成形時の射出圧が高くなり、発泡核が消失し、発泡倍率が低くなる可能性がある。したがって、本発明の樹脂組成物においては、増粘剤としてエポキシ化合物とカルボジイミド化合物を併用しないことが好ましい。
【0047】
本発明に用いるポリエステルエラストマー樹脂組成物の組成、及び組成比を決定する方法としては、試料を重クロロホルム等の溶剤に溶解して測定する1H-NMRのプロトン積分比から算出することも可能である。
【0048】
本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物には、その他各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、上記以外の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、帯電防止剤、過酸化物等の分子調整剤、金属不活性剤、有機および無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、有機および無機系の顔料のほか、難燃性付与や熱安定性付与の目的で使用される有機および無機系の燐化合物などが挙げられる。添加剤を含有させる場合、その含有量(複数の添加剤を用いる場合には合計含有量)は、樹脂組成物中30質量%以下とするのが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0049】
上記の成分を含む発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の230℃、滞留時間6分におけるMFR(a)は、4~25g/10minであり、好ましくは5~23g/10minであり、さらに好ましくは、8~20g/10minである。そして、該MFR(a)が4~25g/10minであるため、ポリエステルエラストマー樹脂組成物を発泡成形する際、気泡壁の破壊が生じにくくなり、高発泡倍率の発泡体を得ることができる。なお、該MFR(a)が4g/10minより低いと流動性が低下する傾向にあり、25g/10minより高いと発泡特性が低下する傾向にある。
【0050】
上記の成分を含む発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の230℃、滞留時間26分におけるMFR(b)は、4~25g/10minであり、好ましくは5~20g/10minであり、さらに好ましくは、7~18g/10minである。そして、該MFR(b)が4~25g/10minであるため、ポリエステルエラストマー樹脂組成物を連続的に発泡成形する際にも、気泡壁の破壊が生じにくくなり、高発泡倍率の発泡体を得ることができる。なお、該MFR(b)が4g/10minより低いと流動性が低下する傾向にあり、25g/10minより高いと発泡特性が低下する傾向にある。
【0051】
前記MFR(b)と前記MFR(a)の差[(b)-(a)]が、-10~0g/10minであることが好ましく、より好ましくは、-8~0g/10minであり、さらに好ましくは、-5~0g/10minである。[(b)-(a)]が-10~0g/10minであるため、ポリエステルエラストマー樹脂組成物を連続的に発泡成形する際に、溶融樹脂内への発泡剤の溶解性や分散性を維持することができる。なお、[(b)-(a)]が-10g/10minよりも低いと長期の滞留によっては、ゲル化する恐れや流動性が低下する傾向にあり、[(b)-(a)]が0g/10minよりも高いと連続成形において、溶融粘度が低下することを意味するため、溶融樹脂中に所定の圧力により、溶解または、均一に分散させている発泡剤が分離し、発泡成形体にボイドを引き起こす要因となる。
【0052】
上記の成分を含む発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の酸価は、10~45eq/tであり、好ましくは、11~45eq/tであり、より好ましくは、16~40eq/tであり、さらに好ましくは、21~35eq/tである。酸価が10~45eq/tであるため、滞留時にポリエステルエラストマー樹脂組成物内に残存する増粘剤と反応が促進し、連続成形においても、発泡成形に必要な溶融粘度を得ることが出来る。酸価が10eq/tよりも低いと滞留時において、増粘剤との反応が不十分となり、発泡成形に必要な溶融粘度を得ることが困難となる。酸価が45eq/tよりも高いと滞留時において、増粘剤と過剰反応し、ゲル化物が発生したり、発泡成形品の加水分解性が劣る懸念がある。発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物の酸価を上記の範囲とするためには、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)の酸価の制御及び、配合する増粘剤(B)と熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)のカルボキシル基末端との反応を制御する必要がある。例えば、グリシジル基を含有したスチレン系の増粘剤を熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)に所定量配合した場合、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物内において、スチレン系増粘剤のグリシジル基が残存しやすい傾向にあり、上記の所定の酸価とすることができる。このような熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、発泡成形過程における成形機内での滞留において、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)が熱分解し、溶融粘度が減少する一方で、残存したスチレン系増粘剤のグリシジル基との反応により、発泡成形に適した溶融粘度に維持することが出来る。
【0053】
[発泡成形体]
本発明の発泡成形体は、上述した本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて得られたものである。かかる本発明の発泡成形体は、表層に存在する非発泡スキン層と内層に存在する発泡層を備えており、これら非発泡スキンおよび発泡層は上述した本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物で形成されているので、均一なセル状態の発泡構造を有し、優れた軽量性と反発弾性を発現できる。
【0054】
本発明の発泡成形体は、通常、発泡層の両面に非発泡スキン層が設けられたサンドイッチ構造(換言すれば、発泡層が両面から非発泡スキン層に挟まれた構造)を有するものとなる。発泡成形体のサイズに関しては、特に制限は無いが、サンドイッチ構造の厚み方向は、1~30mm程度が想定される。
【0055】
発泡層は、樹脂連続相と独立した発泡セルとから構成される。ここで、樹脂連続相とは、硬化したポリエステルエラストマー樹脂組成物で形成される空洞をもたない部分を意味する。発泡セルの径は、均一でばらつきがない限り、サイズによって特性が異なる。高反発弾性を発現させるには、発泡セル径が小さい方が有利であり、具体的には、発泡セルの平均セル径が10~350μmが好ましい。発泡セルの平均セル径が10μm未満である場合、成形体の内圧が低く非発泡スキン層形成時の圧力が不足し、ヒケ等の外観が悪くなる傾向にある。一方、発泡セルの平均セル径が300μmを超える場合、耐荷重性が低く、反発弾性率が低くなる傾向にある。また、セル径が小さくても密度が高ければ反発弾性に劣るため、後述する密度0.01~0.35g/cm3である発泡構造体で高反発弾性を発現しようとすると、発泡セルの平均セル径がより好ましくは100~350μm、さらに好ましくは、200~300μmである。非発泡スキン層に成形体内部より適当な圧力を与え、平均セル径が前記範囲である発泡成形体を得ることができる。さらに、発泡セルの大部分は前述したほぼ均一の平均セル径を有する発泡セルで構成されるが、セル径が少し大きくなる粗大発泡セルも含まれる。粗大発泡セルは、発泡成形過程において、成形機内にて溶融樹脂と発泡剤を溶融混合させる際に、連続成形する場合、溶融樹脂の溶融粘度が減少するなどの不安定な混合状態が生じ、溶融樹脂と発泡剤が均一に溶融混合させることが困難となり、不均一に分散した発泡剤が原因となって形成されていると推測される。本発明においては、後記する実施例の項で示す方法で測定される、この粗大発泡セルの最も大きいセル径を最大セル径とする。高反発弾性を発現させるためには、最大セル径は100~1000μmが好ましい。最大セル径が1000μmを超える場合、耐荷重性が低く、反発弾性率が低くなる傾向にある。また、最大セル径は、前述した高反発弾性を発現するための密度を達成するために、より好ましくは100~800μm、さらに好ましくは、200~500μmである。
【0056】
非発泡スキン層は、発泡層に積層されており、厚みが100~800μmであることが好ましい。非発泡スキン層の厚みが100μm未満である場合、良好な外観が得られない傾向があり、一方、800μmを超えると、発泡層の比重が低くなりすぎるため、発泡成形体全体として後述する密度0.01~0.35g/cm3である発泡構造体を均一なセル状態で得られない傾向がある。非発泡スキン層の厚みは、より好ましくは200~600μm、さらに好ましくは300~400μmである。
【0057】
本発明の発泡成形体の密度は、0.01~0.35g/cm3であることが好ましい。一般的なポリエステルエラストマーの密度は、凡そ1.0~1.4g/cm3前後であるから、本発明の発泡成形体は十分に軽量化されていると言える。より好ましくは、0.1~0.35g/cm3、さらに好ましくは、0.1~0.25g/cm3である。密度が0.01g/cm3未満であると十分な強度が得られず、機械的特性に劣る傾向にあり、0.35g/cm3を超えると、十分な柔軟性が得られず、反発弾性に劣る傾向にある。
【0058】
本発明の発泡成形体は、平均セル径が特定の範囲内であり、密度が特定の範囲内であり、非発泡スキン層厚みが特定の範囲内であるので、均一で微細なセル構造を有し、その結果、50~90%の高い反発弾性率を実現することができる。より高い反発特性を発現させるには、発泡成形体の反発弾性率は、60~90%が好ましい。
【0059】
本発明の発泡成形体の発泡方法については、特に限定されないが、樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する(圧力を解放する)発泡方法が好ましい。なかでも、成形サイクル性やコスト、均質発泡を得られる成形方法として発泡剤と本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物を溶融混合して射出成形する際にキャビティの容積を拡張させて発泡成形体を得る方法が好ましい。具体的には、
図1に示すように、型締めされた複数の金型1、2で形成されるキャビティ3内に、溶融状態のポリエステルエラストマー樹脂組成物を化学発泡剤および/または超臨界状態の不活性ガス(以下、まとめて「発泡剤」と称することもある)とともに射出、充填し、表層に厚み100~800μmの非発泡スキン層が形成された段階で少なくとも一つの金型2を型開き方向へ移動してキャビティ3の容積を拡大させることにより、発泡成形体を得る方法である。詳しくは、ポリエステルエラストマー樹脂組成物と発泡剤とをキャビティ3内に充填後、所定の温度で冷却することにより、キャビティ3内に充填されたポリエステルエラストマー樹脂組成物の表層に非発泡スキン層が形成される。この非発泡スキン層が所定の厚み(100~800μm)になった段階で、金型2を型開き方向へ移動してキャビティ3の容積を拡大させるのである。なお、発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物と発泡剤は、キャビティ3内に充填する前に射出成形機4の可塑化領域4aで混合しておくことができる。
【0060】
本発明の発泡成形体を得る際に用いることのできる化学発泡剤は、発泡核となるガス成分もしくはその発生源として成形機の樹脂溶融ゾーンで溶融している樹脂に添加するものである。具体的には、化学発泡剤としては、炭酸アンモニウム及び重炭素酸ソーダ等の無機化合物、並びにアゾ化合物、スルホヒドラジド化合物等の有機化合物等が使用できる。上記アゾ化合物としては、ジアゾカルボンアミド(ADCA)、2,2-アゾイソブチロニトリル、アゾヘキサヒドロベンゾニトリル、及びジアゾアミノベンゼン等が例示でき、中でもADCAが好まれて活用されている。上記スルホヒドラジド化合物としては、ベンゼンスルホヒドラジド、ベンゼン1,3-ジスルホヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3-ジスルホンヒドラジド及びジフェニルオキシド-4,4-ジスルホンヒドラジド-等が例示でき、上記ニトロソ化合物としては、N,N-ジニトロソペンタエチレンテトラミン(DNPT)等が例示でき、上記アジド化合物としては、テレフタルアジド及びP-第三ブチルベンズアジド等が例示できる。
【0061】
発泡剤として化学発泡剤を用いる場合、化学発泡剤は、本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物に均一に分散させるために、当該化学発泡剤の分解温度よりも融点が低い熱可塑性樹脂をベース材とした発泡剤マスターバッチとして使用することもできる。ベースとなる熱可塑性樹脂は、化学発泡剤の分解温度より低い融点であれば特に制限なく、例えばポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、等が挙げられる。この場合、化学発泡剤と熱可塑性樹脂の配合比率は、熱可塑性樹脂100質量部に対して化学発泡剤が10~100質量部であるのが好ましい。化学発泡剤が10質量部未満の場合は、本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物に対するマスターバッチの量が多くなりすぎて物性低下を起す可能性がある。100質量部を超えると、化学発泡剤の分散性の問題よりマスターバッチ化が困難になる。
【0062】
発泡剤として超臨界状態の不活性ガスを用いる場合、不活性ガスとしては二酸化炭素および/または窒素が使用可能である。発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素を用いる場合、それらの量は、本発明のポリエステルエラストマー樹脂組成物100質量部に対して0.05~30質量部が好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましい。超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素が0.05質量部未満であると均一かつ微細な発泡セルが得られにくくなり、30質量部を超えると成形体表面の外観が損なわれる傾向にある。
【0063】
なお、発泡剤として用いられる超臨界状態の二酸化炭素または窒素は単独で使用できるが、二酸化炭素と窒素を混合して使用してもよい。ポリエステルエラストマー樹脂組成物に対して窒素はより微細なセルを形成するのに適している傾向があり、二酸化炭素はよりガスの注入量を比較的多くでき、より高い発泡倍率を得るのに適しているため、調整した発泡構造体の状態に対して任意で混合してもよく、混合する場合の混合比率はモル比で1:9~9:1の範囲であることが好ましい。
【0064】
本発明で使用する発泡剤としては、均一な微細発泡という観点から、超臨界状態の窒素がより好ましい。
【0065】
溶融状態のポリエステルエラストマー樹脂組成物を発泡剤とともにキャビティ3内に射出するには、射出成形機4の可塑化領域4a内で溶融状態のポリエステルエラストマー樹脂組成物と発泡剤とを混合すればよい。特に、発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素および/または窒素を用いる場合には、例えば
図1に示すようにガスボンベ5から気体状態の二酸化炭素および/または窒素を直接あるいは昇圧ポンプ6で加圧して射出成形機4内に注入する方法等が採用できる。これらの二酸化炭素および/または窒素は、溶融状態のポリエステルエラストマー樹脂組成物中への溶解性、浸透性、拡散性への観点から、成形機内部で超臨界状態となっている必要がある。
【0066】
ここで、超臨界状態とは、気相と液相とを生じている物質の温度および圧力を上昇させていくに際し、ある温度域および圧力域で前記気相と液相との区別をなくし得る状態のことをいい、この時の温度、圧力を臨界温度、臨界圧力という。すなわち超臨界状態において物質は気体と液体の両方の特性を併せ持つので、この状態で生じる流体を臨界流体という。このような臨界流体は気体に比べて密度が高く、液体に比べて粘性が小さいため、物質中をきわめて拡散しやすいという特性を有する。
【実施例】
【0067】
本発明の効果を実証するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0068】
以下の実施例、比較例においては下記の原料を用いた。
[熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)]
(ポリエステルエラストマーA―1)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量2000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が78質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーA―1とした。ポリエステルエラストマーA―1の酸価は、20eq/tであった。
(ポリエステルエラストマーA―2)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量2000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が72質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーA―2とした。ポリエステルエラストマーA―2の酸価は、21eq/tであった。
(ポリエステルエラストマーA―3)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が59質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーA―3とした。ポリエステルエラストマーA―3の酸価は、35eq/tであった。
(ポリエステルエラストマーA―4)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が44質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーA―4とした。ポリエステルエラストマーA―4の酸価は、44eq/tであった。
(ポリエステルエラストマーA―5)
特開平9-59491号公報に記載の方法に準じて、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、及び数平均分子量1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ソフトセグメント含有量が36質量%の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造して、これをポリエステルエラストマーA―5とした。ポリエステルエラストマーA―5の酸価は、50eq/tであった。
【0069】
[増粘剤(B)]
(スチレン系共重合体1(B―1))
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、200℃に保った。一方、スチレン(St)89質量部、グリシジルメタクリレート(GMA)11質量部、キシレン(Xy)15質量部及び重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド(DTBP)0.5質量部からなる単量体混合液を原料タンクに仕込んだ。これを一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給し、反応器の内容液質量が約580gで一定になるように反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の反応器内温は、約210℃に保った。反応器内部の温度が安定してから36分経過後から、抜き出した反応液を減圧度30kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機に導き、連続的に揮発成分を除去して、スチレン系共重合体(B―1)を得た。このスチレン系共重合体(B―1)は、GPC分析(ポリスチレン換算値)によると質量平均分子量8500、数平均分子量3300であった。また、下記の測定方法によれば、エポキシ価は670当量/1×106g、エポキシ価数(1分子当りの平均エポキシ基の数)は2.2であり、グリシジル基を1分子中に2個以上有するものである。
(スチレン系共重合体2(B―2))
St77質量部、GMA23質量部、Xy15質量部、DTBP0.3質量部からなる単量体混合液を用いた以外は、重合体(B-1)の製造と同じ方法にて、重合体(B-2)を得た。このスチレン系共重合体(B-2)は、GPC分析(ポリスチレン換算値)によると重量平均分子量9700、数平均分子量3300であった。そのエポキシ価は1400当量/1×106g、エポキシ価数(1分子当りの平均エポキシ基の数)は4.6であり、グリシジル基を1分子中に2個以上有するものである。
(カルボジイミド化合物(B-3))
市販のカルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)社製「LA-1」)を用意した。
【0070】
(実施例1~8、比較例1~5)
表1に記載の配合組成に従って熱可塑性ポリエステルエラストマー100質量部に対して各種成分を、二軸スクリュー式押出機を用いて溶融混練した後、ペレット化して、実施例1~9及び比較例1~5のペレットを得た。なお、比較例2については、押出機内で高粘度化してしまい、ゲルが発生した。
【0071】
次に、上記で得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて上述した金型拡張法にて発泡成形体を作製した。金型としては、型締めすると幅100mm、長さ100mm、厚み3mmのキャビティを形成することができ、型開き方向へコアバックさせると同幅、同長さで厚みが3mm+コアバック量(mm)であるキャビティを形成することができる固定用金型および稼働用金型からなる平板作製用の金型を用いた。具体的には、金型の型締め力が1800kN、スクリュー径40mm、スクリューストローク180mmのスクリューを持つ電動射出成形機の可塑化領域で、超臨界状態とした窒素を注入し、表面温度50℃に温調された金型に射出充填後、射出外圧と内部からの発泡圧力によって100~800μmの非発泡スキン層が形成された段階で、稼働用金型を型開き方向へ、表1にコアバック量(mm)として示す長さだけ移動させて、キャビティの容積を拡大させて、発泡成形体を得た。
【0072】
実施例1~8、比較例1~5で得られた発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物と、該樹脂組成物から得られた発泡成形体について、下記の評価を行った。発泡成形は連続して行い、5ショット目と20ショット目の発泡成形体を用いて評価した。結果を表1に示す。
【0073】
[MFR(メルトフローレート)]
発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物のMFRはASTM D1238に記載されている測定法に準じて、荷重2,160g、測定温度230℃にて滞留時間6分、滞留時間26分の測定を実施した。
【0074】
[酸価]
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解し、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。
【0075】
[成形品厚み]
発泡成形体の厚みをノギスで測定した。
【0076】
[スキン層厚み]
日立ハイテクノロジーズ製の走査電子顕微鏡SU1510により撮影した断面観察用サンプルの発泡断面の写真を画像処理し、表層部にみられる一体化した非発泡層の厚みをスキン層厚みとして測定した。
【0077】
[密度(見かけ密度)]
発泡成形体の寸法をノギスで測定し、その質量を電子天秤にて測定し、次式により算出した。
密度(g/cm3)=試験片の質量/試験片の体積
【0078】
[反発弾性率]
JIS K 6400に記載されている方法にて測定を実施した。手動計測試験機を用い、規定高さから試験片に鋼球を落下させ、跳ね返った最大の高さを読み取った。一分間以内に3回の測定を行い、その中央値を求め、反発弾性率を算出した。
【0079】
[平均セル径/最大セル径]
日立ハイテクノロジーズ製の走査電子顕微鏡SU1510により撮影した断面観察用サンプルの発泡断面の写真を画像処理し、少なくとも100個の隣接するセルの円相当径(セルが楕円形に観察される場合は、長径と短径の平均を円相当径とした)をセル径とし、ノギスで測定した。それら100個の平均値を求め、これを任意の三箇所において行い、三箇所で得られた3つの平均値を平均した値を平均セル径とした。
なお、上記の観察したセル径の中で最大のセル径を最大セル径とした。
【0080】
【0081】
表1から明らかなように、本発明の範囲内である実施例1~8はいずれも、軽量かつ高い反発弾性を示す。これに対し、熱可塑性ポリエステルエラストマーに対して増粘剤を少量しか添加していない比較例1は、滞留時間6分、滞留時間26分におけるMFRがともに高いため平均セル径/最大セル径が大きくなり、反発弾性に劣る。熱可塑性ポリエステルエラストマーに対して多量の増粘剤を添加した比較例2は、押出の際にゲルが発生する。また、比較例2は、滞留時間6分、滞留時間26分におけるMFRがともに低いため発泡がコアバック量に追従せず、軽量性に劣り、反発弾性にも劣る。さらに、比較例3は、滞留時間26分におけるMFRが低いため、20ショット目の発泡がコアバック量に追従せず、軽量性に劣り、反発弾性にも劣る。比較例4は、酸価が低いため、滞留時において、増粘剤との反応が不十分となり、(b)-(a)が高くなることで、20ショット目の平均セル径/最大セル径が大きくなり、反発弾性に劣る。比較例5は、酸価が高いため、滞留時において、増粘剤と過剰反応し、(b)-(a)が低くなることで、20ショット目の発泡がコアバック量に追従せず、軽量性に劣り、反発弾性にも劣る。つまり、(b)-(a)が大きく変動する比較例4と比較例5においては、連続的な発泡成形に向いていないと言える。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の発泡成形用熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物およびそれからなる発泡体は、軽量性に優れるのみならず、極めて高い反発弾性率を発現することが出来る。さらに、高い発泡倍率にもかかわらず均一な発泡状態と、高い成形安定性を持つため、高い信頼性の必要な部品にも適用の可能なポリエステル発泡成形体を提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 金型(固定用)
2 金型(稼働用)
3 キャビティ
4 射出成形機
4a 可塑化領域
5 ガスボンベ
6 昇圧ポンプ
7 圧力制御バルブ