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  • 特許-シリカチタニア複合体および構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】シリカチタニア複合体および構造体
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20220712BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20220712BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220712BHJP
   C01B 33/20 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C01B33/12 A
B01J20/10 C
B01J20/28 Z
C01B33/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018147133
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020019697
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】銭谷 優香
(72)【発明者】
【氏名】奥野 広良
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】岩永 猛
(72)【発明者】
【氏名】野崎 駿介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 栄
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-151799(JP,A)
【文献】特表2011-500490(JP,A)
【文献】特開2006-306651(JP,A)
【文献】特開2001-029781(JP,A)
【文献】特表2013-511466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
C01B 39/00
B01J 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下であり、
水蒸気吸着等温線において、P/P=0.1のときの吸着量が65cm/g以上120cm/g以下、P/P=0.5のときの吸着量が150cm/g以上300cm/g以下、P/P=0.9のときの吸着量が350cm/g以上500cm/g以下であり、
水との接触角が100度以上であるシリカチタニア複合体。
【請求項2】
水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下であり、
アンモニア吸着等温線において、アンモニア圧力10kPaのときの吸着量が100cm/g以上140cm/g以下、アンモニア圧力90kPaのときの吸着量が120cm/g以上300cm/g以下であり、
水との接触角が100度以上であるシリカチタニア複合体。
【請求項3】
ケイ素原子とチタン原子との元素比(Ti/Si)が1%以上50%以下の範囲である請求項1又は請求項2に記載のシリカチタニア複合体。
【請求項4】
ケイ素原子に対するチタン原子の元素比(Ti/Si)が3%以上20%以下の範囲である請求項3に記載のシリカチタニア複合体。
【請求項5】
前記シリカチタニア複合体が、疎水化処理体である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のシリカチタニア複合体。
【請求項6】
炭化水素基を有する金属原子が複合体本体表面に酸素原子を介して結合している被覆層を有する請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のシリカチタニア複合体。
【請求項7】
前記炭化水素基が、炭素数3以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上27以下の芳香族炭化水素基である請求項6に記載のシリカチタニア複合体。
【請求項8】
前記炭化水素基が、飽和脂肪族炭化水素基である請求項7に記載のシリカチタニア複合体。
【請求項9】
前記飽和脂肪族炭化水素基の炭素数が、4以上10以下である請求項8に記載のシリカチタニア複合体。
【請求項10】
前記金属原子が、ケイ素原子である請求項6に記載のシリカチタニア複合体。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のシリカチタニア複合体を有する構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカチタニア複合体および構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
物質(例えば、水分、アンモニア等の親水性成分)を吸着する機能を有する吸着材料は、服飾、建築材、壁面材等の様々な用途で使用されている。
例えば、特許文献1には、「吸水性に優れ、且つアンモニア吸着性能を持ち、アンモニア臭を低減させる不織布材料」が開示されている。
また、特許文献2には、「吸湿性物質と非吸湿性物質から成る複合糸を用いた織物に撥水処理をする防水織物」が開示されている。
また、特許文献3には、「吸湿性織物を含む不織布にフッ素コーティングすることで吸湿性と撥水性を両立する不織布材料」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-88452号公報
【文献】特開2004-353097号公報
【文献】特開2016-515169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、物質(例えば、水分、アンモニア等の親水性成分)を吸着する機能が高い吸着材料は、塵、埃等も吸着し易い。また、直接、水等が接触すると浸透し易い。それらにより、吸着材料が変色、シミ等により、汚れが発生することがある。
一方で、汚れの発生を抑制する目的で、吸着材料の表面を撥水性の材料で被覆すると、吸着材料の吸着機能が低下することがある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下のシリカチタニア複合体であって、水蒸気吸着等温線におけるP/P=0.1のときの吸着量が65cm/g未満若しくは水との接触角が100度未満、又は、アンモニア吸着等温線におけるアンモニア圧力10kPaのときの吸着量が100cm/g未満若しくは水との接触角が100度以上であるシリカチタニア複合体に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体を提供することである。」
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0007】
<1>
水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下であり、
水蒸気吸着等温線において、P/P=0.1のときの吸着量が65cm/g以上120cm/g以下、P/P=0.5のときの吸着量が150cm/g以上300cm/g以下、P/P=0.9のときの吸着量が350cm/g以上500cm/g以下であり、
水との接触角が100度以上であるシリカチタニア複合体。
<2>
水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下であり、
アンモニア吸着等温線において、アンモニア圧力10kPaのときの吸着量が100cm/g以上140cm/g以下、アンモニア圧力90kPaのときの吸着量が120cm/g以上300cm/g以下であり、
水との接触角が100度以上であるシリカチタニア複合体。
<3>
ケイ素原子とチタン原子との元素比(Ti/Si)が1%以上50%以下の範囲である前記<1>又は<2>に記載のシリカチタニア複合体。
<4>
ケイ素原子に対するチタン原子の元素比(Ti/Si)が3%以上20%以下の範囲である前記<3>に記載のシリカチタニア複合体。
<5>
前記シリカチタニア複合体が、疎水化処理体である前記<1>~<4>のいずれか1項に記載のシリカチタニア複合体。
<6>
炭化水素基を有する金属原子が複合体本体表面に酸素原子を介して結合している被覆層を有する前記<1>~<5>のいずれか1項に記載のシリカチタニア複合体。
<7>
前記炭化水素基が、炭素数3以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上27以下の芳香族炭化水素基である前記<6>に記載のシリカチタニア複合体。
<8>
前記炭化水素基が、飽和脂肪族炭化水素基である前記<7>に記載のシリカチタニア複合体。
<9>
前記飽和脂肪族炭化水素基の炭素数が、4以上10以下である前記<8>に記載のシリカチタニア複合体。
<10>
前記金属原子が、ケイ素原子である前記<6>に記載のシリカチタニア複合体。
<11>
前記<1>~<10>のいずれか1項に記載のシリカチタニア複合体を有する構造体。
【発明の効果】
【0008】
<1>に係る発明によれば、水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下のシリカチタニア複合体であって、水蒸気吸着等温線におけるP/P=0.1のときの吸着量が65cm/g未満若しくは水との接触角が100度未満であるシリカチタニア複合体に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体が提供される。
<2>に係る発明によれば、水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下のシリカチタニア複合体であって、アンモニア吸着等温線におけるアンモニア圧力10kPaのときの吸着量が100cm/g未満若しくは水との接触角が100度未満であるシリカチタニア複合体に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体が提供される。
【0009】
<3>、又は<4>に係る発明によれば、ケイ素原子に対するチタン原子の元素比(Ti/Si)が1%未満又は50%超えの場合に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体が提供される。
【0010】
<5>、又は<6>に係る発明によれば、シリカチタニア複合体が、非疎水化処理体である場合に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体が提供される。
<7>に係る発明によれば、炭化水素基が、炭素数3未満の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基である場合に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体が提供される。
<8>に係る発明によれば、炭化水素基が、不飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である場合に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体が提供される。
<9>に係る発明によれば、飽和脂肪族炭化水素基の炭素数が3である場合に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体が提供される。
<10>に係る発明によれば、金属原子がチタン原子またはアルミニウム原子である場合に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体が提供される。
<11>に係る発明によれば、水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下のシリカチタニア複合体であって、水蒸気吸着等温線におけるP/P=0.1のときの吸着量が65cm/g未満若しくは水との接触角が100度未満、又は、アンモニア吸着等温線におけるアンモニア圧力10kPaのときの吸着量が100cm/g未満若しくは水との接触角が100度未満であるシリカチタニア複合体を有する場合に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体を有する構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るシリカチタニア複合体の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、発明の一例である実施形態を説明する。
【0013】
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
XPSとは、X-ray Photoelectron Spectroscopy(X線光電子分光)の略である。
吸脱着等温線の相対圧P/Pにおいて、「P」は吸着平衡にある吸着質(水蒸気、又は窒素)の気体の圧力を示し、「P」は吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧を示す。
【0014】
<シリカチタニア複合体>
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下であり、下記HO吸着特性(1)およびNH吸着特性(2)の少なくとも1方を満たし、水との接触角が100度以上である。
O吸着特性(1):水蒸気吸着等温線において、P/P=0.1のときの吸着量が65cm/g以上120cm/g以下、P/P=0.5のときの吸着量が150cm/g以上300cm/g以下、P/P=0.9のときの吸着量が350cm/g以上500cm/g以下である。
NH吸着特性(2):アンモニア吸着等温線において、アンモニア圧力10kPaのときの吸着量が100cm/g以上140cm/g以下、アンモニア圧力90kPaのときの吸着量が120cm/g以上300cm/g以下である。
【0015】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、シリカに対するチタニアの複合による親水性物質の吸着能の向上に加え、BET比表面積が250m/g以上500m/g以下と大きく、かつ相対圧P/P=0.1のときの(つまり、微細孔側での)水蒸気、およびアンモニア圧力10kPaのときの(つまり、微細孔側での)アンモニアの吸着能が高い性質を有する。一方で、複合体自体の水との接触角が100度以上と、高い撥水性を有している。
このような性質を有するシリカチタニア複合体は、高い撥水性を有しつつも、表面に「TiOH」および「SiOH」が共存していることにより、高い吸着能を有すると推測される。
そのため、本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れたシリカチタニア複合体となる。
【0016】
以下、本実施形態に係るシリカチタニア複合体の詳細について説明する。
【0017】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、例えば、エアロゲル構造を有する。「エアロゲル構造」とは、一次粒子が多孔構造を形成しつつ凝集した構造を指し、ナノメートルオーダー径の粒状物が集合したクラスター構造を有し、内部が3次元網目状の微細構造を示す。
【0018】
ここで、図1に、本実施形態に係るシリカチタニア複合体の一例の構造を模式的に示す。図1に示すシリカチタニア複合体は、一次粒子が多孔構造を形成しつつ凝集した凝集体となっている。図1中、STCはシリカチタニア複合体、PPは一次粒子、Dpは一次粒子径を示す。
【0019】
なお、シリカチタニア複合体の一次粒子の平均径(平均一次粒子径)は、1nm以上90nm以下であることが好ましく、5nm以上80nm以下がより好ましく、10nm以上70nm以下がさらに好ましい。
一次粒子の平均径が上記範囲であると、一次粒子が多孔構造を形成しつつ凝集しやすくなる。それにより、複合体のBET比表面積が増加し、吸着能が高まる。また、エアロゲル構造による構造的な撥水性が付与されやくなる。その結果、耐汚れ性および親水性成分の吸着性が向上しやすくなる。
【0020】
シリカチタニア複合体の一次粒子の平均径は、次の方法により測定される、
測定対象の複合体から試料を採取する。採取した試料を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S-4100)により観察して画像を撮影する。この際、図1に模式的に示すように凝集体を形成している個々の粒子を一次粒子とし、走査型電子顕微鏡を一次粒子が画像解析できる倍率に調整して画像を撮影する。撮影した画像を画像解析装置(株式会社ニレコ製、LUZEXIII)に取り込み、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの面積を求め、面積から円相当径(nm)を算出する。そして、円相当径の平均を平均一次粒子径(nm)とする。平均一次粒子径は、一次粒子10個から50個程度を解析して求める。
【0021】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積が250m/g以上500m/g以下であるが、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、300m/g以上480m/g以下が好ましく、350m/g以上450m/g以下がより好ましい。
【0022】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、上記HO吸着特性(1)および上記NH吸着特性(2)の少なくとも一方を満たす。
【0023】
O吸着特性(1)において、相対圧P/P=0.1のときの吸着量は、65cm/g以上120cm/g以下であるが、親水性成分の吸着性向上の観点から、80cm/g以上120cm/g以下が好ましく、90cm/g以上120cm/g以下がより好ましい。
相対圧P/P=0.5のときの吸着量は、150cm/g以上300cm/g以下であるが、親水性成分の吸着性向上の観点から、180cm/g以上270cm/g以下が好ましく、200cm/g以上250cm/g以下がより好ましい。
相対圧P/P=0.9のときの吸着量は、350cm/g以上500cm/g以下であるが、親水性成分の吸着性向上の観点から、370cm/g以上480cm/g以下が好ましく、400cm/g以上450cm/g以下がより好ましい。
【0024】
O吸着特性(1)において、水蒸気吸着等温線に対して水蒸気脱着等温線は、ヒステリシスループを描いてもよい。そして、吸着した親水性物質を放出し難くする観点から、ヒステリシスループが閉じる相対圧P/Pは、0以上0.3以下が好ましく、0以上0.1以下がより好ましい。
【0025】
NH吸着特性(2)において、アンモニア圧力10kPaのときの吸着量は、100cm/g以上140cm/g以下であるが、親水性成分の吸着性向上の観点から、110cm/g以上140cm/g以下が好ましく、120cm/g以上140cm/g以下がより好ましい。

アンモニア圧力90kPaのときの吸着量は、120cm/g以上300cm/g以下であるが、親水性成分の吸着性向上の観点から、150cm/g以上300cm/g以下が好ましく、170cm/g以上300cm/g以下がより好ましい。
【0026】
NH吸着特性(2)において、アンモニア吸着等温線に対してアンモニア脱着等温線は、ヒステリシスループを描いてもよい。そして、吸着した生活不快臭を放出し難くする観点から、ヒステリシスループが閉じるアンモニア圧力は、0kPa以上30kPa以下が好ましく、0kPa以上10kPa以下がより好ましい。
【0027】
ここで、水蒸気吸脱着等温線、およびアンモニア吸脱着等温線の測定は、次の通りである。
測定対象の複合体から0.5gの試料を採取する。次に試料を、120℃、20時間で真空乾燥する。次に、乾燥試料を比表面積測定装置(商品名「BELSORP-max(製造元 マイクロトラック・ベル株式会社製)」)に配置する。この装置により、吸着質を水蒸気又はアンモニアガス(NH純度=99.9995%)とし、測定温度298Kで、水蒸気吸脱着等温線又はアンモニア吸脱着等温線を各々測定する。
【0028】
そして、得られた水蒸気吸脱着等温線のうち、相対圧P/Pが0.05以上0.30以下の範囲の水蒸気吸着等温線をBET解析(BET多点法により解析)し、BET比表面積を算出する。
また、得られた水蒸気吸着等温線から各相対圧P/Pのときの吸着量、およびアンモニア吸着等温線から各アンモニア圧力のときの吸着量を求める。
また、得られた水蒸気吸脱着等温線、およびアンモニア吸脱着等温線から、各々、ヒステリシスループが閉じる、相対圧P/P0、およびアンモニア圧力を求める。
なお、ヒステリシスループが閉じる相対圧P/Pは、脱着等温線と吸着等温線との差が0.1cm/g以下となる点の相対圧とする。また、ヒステリシスループが閉じるアンモニア圧力は、脱着等温線と吸着等温線との差が0.1cm/g以下となる点の圧力とする。
【0029】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体の「窒素吸着等曲線のBET解析によるBET比表面積」は、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、400m/g以上1200m/g以下が好ましく、450m/g以上900m/g以下がより好ましい。
【0030】
「窒素吸着等曲線のBET解析によるBET比表面積」は、次の方法により測定される。
測定対象から、0.5gの試料を採取する。採取した試料を、脱気のための120℃/20時間の前処理を行う。次に、試料を、比表面積測定装置としてマウンテック社製「MacsorbHMmodel-1201」にセットする。この装置により、純度99.99%以上の窒素ガスを吸着質とし、測定温度77Kで、窒素吸脱着等温を測定する。相対圧P/Pの測定間隔は、0.02刻みとする。
そして、得られた窒素吸脱着等温線のうち、相対圧P/Pが0.05以上0.30 以下の範囲の窒素吸着等温線をBET解析(BET多点法により解析)し、BET比表面積を算出する。
【0031】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体の「水との接触角」は、100度以上であるが、耐汚れ性向上の観点から、120度以上が好ましく、130度以上がより好ましい。ただし、「水との接触角」の上限は、耐汚れ性と吸着性との両立の観点から、160以下が好ましく、150度以下がより好ましい。
【0032】
「水との接触角」の測定方法は、次の通りである。
測定対象の複合体を一部採取し、採取物を荷重300kg/cmで圧縮成形する。それにより、直径10mm×厚さ2mmの試料を得る。
次に、温度25℃湿度50%の環境下で、接触角計(協和界面科学(株)製、型番:CA-X-FACE)を用いて、試料における「直径10mmの面上に、純水を3μl滴下し、滴下してから3秒後の液滴を光学顕微鏡により撮影する。そして、得られた撮像写真から、θ/2法に基づき、水の接触角θを求める。
【0033】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体の「ケイ素原子とチタン原子との元素比(Ti/Si)」は、1%以上50%以下の範囲が好ましく、2%以上35%以下の範囲がより好ましく、3%以上20%以下の範囲がさらに好ましい。
「ケイ素原子とチタン原子との元素比(Ti/Si)」を上記範囲にすると、チタニア骨格中にシリカが入り込むことにより、シリカチタニア複合体の一次粒子の粒径が小径化する。それにより、複合体のBET比表面積が増加し、吸着能が高まる。また、エアロゲル構造による構造的な撥水性が付与されやくなる。その結果、耐汚れ性および親水性成分の吸着性が向上しやすくなる。
【0034】
ケイ素原子とチタン原子との元素比(Ti/Si)」は、XPSの定性分析(ワイドスキャン分析)を行い、シリカチタニア複合体の元素プロファイルを作成して求める。 具体的には、次の通りである。
【0035】
XPS分析装置を使用し、下記の設定で、シリカチタニア複合体の表面から深さ方向にエッチングしながら定性分析(ワイドスキャン分析)を行い、チタン原子、ケイ素原子及び炭素原子の同定及び定量を行った。得られたデータから、チタン原子、ケイ素原子及び炭素原子それぞれについて、縦軸がピーク強度で横軸がエッチング時間である元素プロファイルを描き、プロファイル曲線を変曲点によって複数の領域に区別し、チタン原子のピーク強度及びケイ素原子のピーク強度がほぼ一定である領域(後述の領域A)を特定し、該領域における元素比Si/Tiを求めた。
・XPS分析装置:アルバック・ファイ社製、Versa ProbeII
・X線源:単色化AlKα線
・加速電圧:15kV
・X線ビーム径:100μm
・エッチング銃:アルゴンイオンビーム
・エッチング出力:4kV
【0036】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、ケイ素とチタンの複合酸化物であるシリカチタニア複合体を含む。シリカ成分及びチタニア成分の総含有量は、複合体の全質量に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0037】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、アルコキシシランとチタンアルコキシドとの加水分解縮合物からなることが好ましい。ただし、アルコキシシラン又はチタンアルコキシドのアルコキシ基等の炭化水素基の一部が未反応のまま複合体中に残留することがある。
【0038】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、疎水化処理体であることが好ましい。つまり、例えば、シリカチタニア複合体は、疎水化処理剤により表面処理された複合体であることが好ましい。
【0039】
具体的には、例えば、シリカチタニア複合体は、金属原子及び炭化水素基を有する有機金属化合物を含む被覆層を有することが好ましい。
そして、有機金属化合物は、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、有機金属化合物中の金属原子Mに直接結合した酸素原子Oを介して複合体本体に結合していること、即ち、M-O-Ti又はM-O-Siなる共有結合によって複合体本体に結合していることが好ましい。
つまり、被覆層は、炭化水素基を有する金属原子が複合体本体表面に酸素原子を介して結合している被覆層であることが好ましい。
なお、複合体本体とは、被覆層を形成する対象の複合体を示す。
【0040】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、疎水化処理剤により表面処理されていると、例えば、上記被覆層が有する炭化水素基が高い撥水性を発現する一方で、複合体本体の表面に「TiOH」および「SiOH」が共存していることにより、高い吸着能も発現しやすくなると考えられる。
【0041】
被覆層を構成する有機金属化合物は、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、金属原子、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなる金属化合物であることが好ましい。
有機金属化合物は、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、金属原子Mと金属原子Mに直接結合した炭化水素基とを有する有機金属化合物であることが好ましい。つまり、シリカチタニア複合体の表面には、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、炭化水素基と、金属原子Mと、酸素原子Oと、チタン原子Ti又はケイ素原子Siとが共有結合で順に連なった構造(炭化水素基-M-O-Ti又は炭化水素基-M-O-Si)を有する被覆層が存在することが好ましい。
なお、被覆層における原子間の化学結合状態は、XPSの高分解能分析(ナロースキャン分析)を行うことにより知ることができる。
【0042】
有機金属化合物を構成する金属原子としては、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、ケイ素原子、アルミニウム原子又はチタン原子が好ましく、ケイ素原子又はアルミニウム原子がより好ましく、ケイ素原子が特に好ましい。
【0043】
有機金属化合物が有する炭化水素基としては、炭素数3以上40以下(好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上18以下、更に好ましくは炭素数4以上12以下、特に好ましくは炭素数4以上10以下)の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上27以下(好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、特に好ましくは炭素数6以上10以下)の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0044】
有機金属化合物が有する炭化水素基は、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、耐汚れ性向上および親水性成分の吸着性向上の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、3以上20以下が好ましく、3以上18以下がより好ましく、4以上12以下が更に好ましく、4以上10以下が特に好ましい。
【0045】
有機金属化合物が有する飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等)、分岐鎖状アルキル基(イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーペンチル基、イソペンタデシル基等)、環状アルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等)などが挙げられる。
【0046】
有機金属化合物が有する不飽和脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基(ビニル基(エテニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ドデセニル基、ペンテニル基等)、アルキニル基(エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、3-ヘキシニル基、2-ドデシニル基等)などが挙げられる。
【0047】
有機金属化合物が有する脂肪族炭化水素基には、置換された脂肪族炭化水素基が含まれる。脂肪族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0048】
有機金属化合物が有する芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基等が挙げられる。
【0049】
有機金属化合物が有する芳香族炭化水素基には、置換された芳香族炭化水素基が含まれる。芳香族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0050】
被覆層に含まれる有機金属化合物は、例えば、後述する表面処理工程において用いられた有機金属化合物に由来する。
【0051】
ここで、シリカチタニア複合体が上記被覆層を有するかは、下記の方法によって確認する。
XPSの定性分析(ワイドスキャン分析)を、シリカチタニア複合体の表面から深さ方向に希ガスイオンによりエッチングしながら行い、少なくともチタン、ケイ素及び炭素の同定及び定量を行う。得られたデータから、少なくともチタン、ケイ素及び炭素それぞれについて、縦軸がピーク強度で横軸がエッチング時間である元素プロファイルを描く。プロファイル曲線を変曲点によって複数の領域に区別し、複合体本体の元素組成を反映した領域、及び被覆層の元素組成を反映した領域を特定する。元素プロファイルに表面層の元素組成を反映した領域が存在する場合、シリカチタニア複合体が被覆層を有すると判断する。
【0052】
例えば、シリカチタニア複合体の元素プロファイルは、チタンの元素プロファイル、ケイ素の元素プロファイル、炭素の元素プロファイルからなる。
元素プロファイルは、プロファイル曲線の変曲点によって、例えば、領域A、領域B、領域Cに区別される。
領域A:エッチングの最終期に存在する、チタンのピーク強度及びケイ素のピーク強度がほぼ一定である領域。
領域B:領域Aの直前に存在する、複合体の表面に近いほどチタンのピーク強度が小さく且つケイ素のピーク強度が大きい領域。
領域C:エッチングの最初期に存在する、炭素のピーク強度がほぼ一定であり、且つ、金属元素も検出される領域。
【0053】
領域Aと領域Bとは、複合体の元素組成を反映した領域である。複合体が製造される際には、シリカチタニア複合体の材料であるアルコキシシランとチタンアルコキシドとの混合比に応じた割合でシリカとチタニアとが共有結合を形成して複合体を形成する。ただし、複合体の表面にはチタニアよりもシリカが出現しやすい傾向がある。その結果、元素プロファイルには、エッチングの最終期に、チタンのピーク強度及びケイ素のピーク強度がほぼ一定である領域Aと、領域Aの直前に、複合体の表面に近いほどチタンのピーク強度が小さく且つケイ素のピーク強度が大きい領域Bとが現れる。
【0054】
領域Cは、表面層の元素組成を反映した領域である。エッチングの最初期に、領域C、即ち、炭素のピーク強度がほぼ一定であり、且つ、金属元素も検出される領域が存在する場合、シリカチタニア複合体が上記被覆層を有すると判断する。
被覆層に含む金属原子の候補としては、ケイ素、アルミニウム、チタンが挙げられるので、必要に応じてXPSによりアルミニウムの同定及び定量も行い、アルミニウムについても元素プロファイルを描く。
なお、領域Cは、被覆層の元素組成を反映した領域ではあるが、必ずしも被覆層に完全に一致するものではない。領域Cにおける領域Bに近い側には、複合体本体の元素組成も反映されていることがある。
【0055】
被覆層の厚さは、0.1nm以上30nm以下が好ましく、0.2nm以上10nm以下がより好ましく、0.3nm以上5nm以下が更に好ましい。表面層の厚さは、前述のプロファイル曲線において前述の領域Cを特定し、領域Cのエッチング時間から換算した値である。
【0056】
<シリカチタニア複合体の製造方法>
本実施形態に係るシリカチタニア複合体の製造方法は、特に制限はない。例えば、ゾルゲル法によりシリカチタニア複合物を含む多孔質体を得て、疎水化処理剤により、多孔質体を表面処理(疎水化処理)することにより得られる。
【0057】
以下、本実施形態に係るシリカチタニア複合体の製造方法の一例を説明する。
【0058】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体の製造方法は、少なくとも下記の(1)、(2)及び(3)を含み、更に(4)を含むことが好ましい。
(1)シリカチタニア複合物を含む多孔質体をゾルゲル法により形成し、前記多孔質体及び溶媒を含有する溶液を調製する工程(溶液調製工程)。
(2)超臨界二酸化炭素を用いて前記溶液から前記溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)。
(3)前記溶媒を除去した後の前記多孔質体を、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物により表面処理する工程(表面処理工程)。好ましくは、前記溶媒を除去した後の前記多孔質体を、超臨界二酸化炭素中で、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物により表面処理する工程。
【0059】
[(1)溶液調製工程]
溶液調製工程は、例えば、アルコキシシランとチタンアルコキシドとを材料にして、両者の反応(加水分解及び縮合)を生じさせてシリカチタニア複合物を含む多孔質体を溶媒中で生成する工程である。ここで、多孔質体は、シリカチタニア複合物を含む一次粒子が多孔構造を形成しつつ凝集した凝集体であることが好ましい。
【0060】
溶液調製工程は、具体的には、例えば、次の工程とする。
アルコールを含む溶媒に、アルコキシシラン及びチタンアルコキシドを攪拌しながら滴下した後、溶媒に、酸性触媒及びアルカリ性触媒の少なくとも一方を添加し、アルコキシシランとチタンアルコキシドとを反応させてシリカチタニア複合体を生成し、シリカチタニア複合体を含む多孔質体と溶媒とを含有する溶液を得る。
【0061】
アルコキシシランとチタンアルコキシドとの混合比を調節することにより、多孔質体(つまり複合体)における、ケイ素原子とチタン原子との元素比(Ti/Si)、および多孔質体を構成する一次粒子の粒径を制御することができる。
【0062】
アルコール量に対するアルコキシシランとチタンアルコキシドとの合計量により、複合体を構成する一次粒子の粒径を制御することができ、アルコール量に対する前記合計量が多いほど、多孔質体を構成する一次粒子の粒径が小さくなる。アルコキシシランとチタンアルコキシドとの合計量は、アルコール100質量部に対して、4質量部以上250質量部以下が好ましく、10質量部以上50質量部以下がより好ましい。
【0063】
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
チタンアルコキシドとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム等のアルコキシ基の一部をキレート化したアルコキシチタンキレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、必要に応じて水、ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の他の溶媒との混合溶媒であってもよい。混合溶媒の場合、アルコールの他の溶媒に対する量は80質量%以上(望ましくは90質量%以上)であることがよい。
なお、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0066】
溶液調整工程に用いる触媒は、酸性触媒の単独使用でも、アルカリ性触媒の単独使用でも、酸性触媒とアルカリ性触媒との併用でもよい。
酸性触媒としては、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、シュウ酸、酢酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、特にシュウ酸が好ましい。酸性触媒溶液の酸濃度は0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。
アルカリ触媒としては、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが望ましい。アルカリ性触媒溶液のアルカリ濃度は1質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0067】
触媒溶液(例えば水溶液)の滴下量は、アルコキシシランとチタンアルコキシドの合計量100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0068】
得られる溶液は、固形分濃度が1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0069】
[(2)溶媒除去工程]
溶媒除去工程は、超臨界二酸化炭素を、多孔質体及び溶媒を含有する溶液(以下、「多孔質体溶液」とも称する)に接触させて、溶媒を除去する工程である。超臨界二酸化炭素による溶媒除去処理は、加熱による溶媒除去処理に比べて、多孔質体(特には、一次粒子が多孔構造を形成しつつ凝集した凝集体)の孔のつぶれや閉塞を起しにくい。溶媒除去工程が超臨界二酸化炭素によって溶媒を除去する工程であることにより、「水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積」が250m/g以上のシリカチタニア複合体を得ることができる。
【0070】
溶媒除去工程は、具体的には、例えば以下の操作によって行う。
密閉反応器に多孔質体溶液を投入し、次いで液化二酸化炭素を導入した後、密閉反応器を加熱すると共に高圧ポンプにより密閉反応器内を昇圧させ、密閉反応器内の二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応器に液化二酸化炭素を流入させ、密閉反応器から超臨界二酸化炭素を流出させることで、密閉反応器内において多孔質体溶液に超臨界二酸化炭素を流通させる。多孔質体溶液に超臨界二酸化炭素が流通する間に、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し、密閉反応器外へ流出する超臨界二酸化炭素に同伴して溶媒が除去される。
【0071】
上記の密閉反応器内の温度及び圧力は、二酸化炭素を超臨界状態にする温度及び圧力とする。二酸化炭素の臨界点が31.1℃/7.38MPaであるところ、例えば、温度50℃以上200℃以下/圧力10MPa以上30MPa以下の温度及び圧力とする。
【0072】
ここで、溶媒除去工程において、HO吸着特性(1)およびNH吸着特性(2)の少なくとも1方を満たしつつ、水との接触角が100度以上のシリカチタニア複合体を得るには、多孔質体溶液中の溶媒を完全に除去するのではなく、溶媒が少量残存した状態で停止することがよい。また、超臨界二酸化炭素中で、溶媒除去工程と連続して表面処理工程を実施する場合、溶媒が少量残存した状態で表面処理工程を開始することがよい。
溶媒が少量残存した状態で溶媒除去工程を停止すると、多孔質体(特には、一次粒子が多孔構造を形成しつつ凝集した凝集体)の孔のつぶれや閉塞がより起し難くなる。そして、後工程である表面処理工程で、多孔質体の表面の「Si-OH」に疎水化処理剤が選択的に反応しやすくなる。そのため、疎水化処理剤による高い撥水性を有しつつも、表面に「TiOH」および「SiOH」が共存していることにより、高い吸着能を有するシリカチタニア複合体が得られると推測される。
【0073】
なお、溶媒除去工程を停止する多孔質体溶液の溶媒残留量は、例えば、多孔質体に対して5質量%以上40質量%以下であることがよい。この多孔質体溶液の溶媒残存量は、超臨界二酸化炭素の流通量により制御できる。
【0074】
[(3)表面処理工程]
表面処理工程は、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物(「有機金属化合物」ともいう。)と多孔質体の表面とを反応させる工程である。表面処理工程において、有機金属化合物中の反応性基(例えば、ハロゲノ基、アルコキシ基等の加水分解性基)と、多孔質体の表面に存在する反応性基(例えば、水酸基)とが反応し、多孔質体の表面処理がなされる。表面処理工程は、大気中、窒素雰囲気中、又は超臨界二酸化炭素中で行うことができる。表面処理工程は、超臨界二酸化炭素中で表面処理工程を行うことにより、有機金属化合物が多孔質体の細孔の奥深くまで到達し、多孔質体の細孔の奥深くまで表面処理がなされることから、超臨界二酸化炭素中で行うことが好ましい。
【0075】
表面処理工程は、例えば、有機金属化合物と多孔質体とを、撹拌下、超臨界二酸化炭素中で混合し反応させることで行われる。ほかに、表面処理工程は、例えば、有機金属化合物と溶媒とを混合してなる処理液を調製し、撹拌下、超臨界二酸化炭素中で多孔質体と処理液とを混合することで行われる。多孔質体の細孔構造を保ち比表面積を大きくするためには、(2)の工程の終了後に引き続き超臨界二酸化炭素中に有機金属化合物を投入し、超臨界二酸化炭素中で有機金属化合物を多孔質体の表面と反応させることが好ましい。
【0076】
表面処理工程の温度及び圧力は、二酸化炭素を超臨界状態にする温度及び圧力とする。例えば、温度50℃以上200℃以下/圧力10MPa以上30MPa以下の雰囲気で表面処理工程を行う。撹拌を持続する時間は、10分間以上24時間以下が好ましく、20分間以上120分間以下がより好ましく、30分間以上90分間以下が更に好ましい。
【0077】
表面処理に用いる有機金属化合物としては、金属原子と該金属原子に直接結合した炭化水素基とを有する有機金属化合物が好ましい。有機金属化合物が複数個の炭化水素基を有する場合、少なくとも1個の炭化水素基が、該有機金属化合物中の金属原子に直接結合していることが好ましい。
【0078】
有機金属化合物の金属原子としては、ケイ素、アルミニウム又はチタンが好ましく、ケイ素又はアルミニウムがより好ましく、ケイ素が特に好ましい。
【0079】
有機金属化合物が有する炭化水素基としては、炭素数3以上40以下(好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上18以下、更に好ましくは炭素数4以上12以下、更に好ましくは炭素数4以上10以下)の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上27以下(好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下)の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0080】
有機金属化合物が有する炭化水素基は、高い撥水性の発現の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、分散性の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、3以上20以下が好ましく、3以上18以下がより好ましく、4以上12以下が更に好ましく、4以上10以下が更に好ましい。
【0081】
有機金属化合物としては、炭化水素基を有するシラン化合物が特に好ましい。炭化水素基を有するシラン化合物としては、例えば、クロロシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物(ヘキサメチルジシラザン等)などが挙げられる。
【0082】
表面処理に用いる炭化水素基を有するシラン化合物としては、高い撥水性の発現の観点から、式(1):R SiR で表される化合物が好ましい。
【0083】
式(1):R SiR において、Rは炭素数1以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を表し、Rはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、nは1以上3以下の整数を表し、mは1以上3以下の整数を表し、但しn+m=4である。nが2又は3の整数である場合、複数のRは同じ基でもよいし、異なる基でもよい。mが2又は3の整数である場合、複数のRは同じ基でもよいし、異なる基でもよい。
【0084】
で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、高い撥水性の発現の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、高い撥水性の発現の観点から、炭素数3以上20以下が好ましく、炭素数3以上18以下がより好ましく、炭素数4以上12以下が更に好ましく、炭素数4以上10以下が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよいが、高い撥水性の発現の観点から、飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0085】
飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等)、分岐鎖状アルキル基(イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーペンチル基、イソペンタデシル基等)、環状アルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等)などが挙げられる。
【0086】
不飽和脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基(ビニル基(エテニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ドデセニル基、ペンテニル基等)、アルキニル基(エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、3-ヘキシニル基、2-ドデシニル基等)などが挙げられる。
【0087】
脂肪族炭化水素基は、置換された脂肪族炭化水素基も含む。脂肪族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0088】
で表される芳香族炭化水素基は、炭素数6以上20以下が好ましく、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下である。
【0089】
芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基等が挙げられる。
【0090】
芳香族炭化水素基は、置換された芳香族炭化水素基も含む。芳香族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0091】
で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましい。
【0092】
で表されるアルコキシ基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上8以下、より好ましくは3以上8以下)のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、n-ブトキシ基、n-ヘキシロキシ基、2-エチルヘキシロキシ基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、置換されたアルコキシ基も含む。アルコキシ基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アミド基、カルボニル基等が挙げられる。
【0093】
式(1):R SiR で表される化合物は、高い撥水性の発現の観点から、Rが飽和脂肪族炭化水素基である化合物が好ましい。特に、式(1):R SiR で表される化合物は、Rが炭素数1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基であり、Rがハロゲン原子又はアルコキシ基であり、nが1以上3以下の整数であり、mが1以上3以下の整数であり、但しn+m=4であることが好ましい。
【0094】
式(1):R SiR で表される化合物として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、デシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン(以上、n=1、m=3);
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジクロロジフェニルシラン(以上、n=2、m=2);
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、デシルジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン(以上、n=3、m=1);
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(以上、Rが、置換された脂肪族炭化水素基又は置換された芳香族炭化水素基である化合物);
などのシラン化合物が挙げられる。シラン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
式(1)で表されるシラン化合物における炭化水素基は、高い撥水性の発現の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。上記シラン化合物における炭化水素基は、高い撥水性の発現の向上の観点から、炭素数3以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数3以上18以下の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族炭化水素基が更に好ましく、炭素数4以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
【0096】
有機金属化合物の金属原子がアルミニウムである化合物としては、例えば、ジ-i-プロポキシアルミニウム・エチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤;などが挙げられる。
【0097】
有機金属化合物の金属原子がチタンである化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタネート系カップリング剤;ジ-i-プロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ-i-プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ-i-プロポキシビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジ-i-プロポキシチタンジアセテート、ジ-i-プロポキシチタンジプロピオネート等のチタニウムキレート;などが挙げられる
【0098】
有機金属化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
有機金属化合物と溶媒とを混合してなる処理液を用いる場合、処理液の調製に用いる溶媒としては、有機金属化合物と相溶性のある化学物質であれば特に制限されない。処理液の調製に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、酢酸エチル、アセトンなどの有機溶剤が好ましい。
【0100】
前記処理液において、有機金属化合物の量は、溶媒100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下が好ましく、20質量部以上180質量部以下がより好ましく、50質量部以上150質量部以下が更に好ましい。
【0101】
表面処理に用いる有機金属化合物の量は、多孔質体100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下が好ましく、20質量部以上180質量部以下がより好ましく、30質量部以上150質量部以下が更に好ましい。有機金属化合物の量を10質量部以上にすると、高い撥水性が発現し易くなる。有機金属化合物の量を200質量部以下にすると、多孔質体の表面に存在する、有機金属化合物に由来する炭素量が過剰になることを抑え、余剰の炭素による吸着性の低下が抑制される。
【0102】
表面処理後は、余剰の有機金属化合物や前記処理液の溶媒等の残渣を除去する目的で乾燥処理を行うことがよい。乾燥処理は、噴霧乾燥、棚段乾燥等の公知の方法を用いることができるが、超臨界二酸化炭素を用いて、多孔質体を含む分散液から溶媒を除去する工程が好ましく、(3)の表面処理工程終了後に引き続き、超臨界二酸化炭素中で超臨界二酸化炭素を流通させて溶媒を除去する工程がより好ましい。具体的な操作は、前記(2)について述べた操作と同様でよい。
【0103】
以上の工程を経て、本実施形態に係るシリカチタニア複合体が得られる。
【0104】
本実施形態に係るシリカチタニア複合体は、層状物として利用することがよい。ただし、粒状物として利用してもよい。
本実施形態に係るシリカチタニア複合体の用途は、吸着材、調湿材、脱臭材等が例示される。
【0105】
<構造体>
本実施形態に係る構造体は、上記本実施形態に係るシリカチタニア複合体を有する、
本実施形態に係る構造体としては、基材と、基材の表面の少なくとも一部に本実施形態に係るシリカチタニア複合体の層状物又は粒状物と、を有する構造体が例示できる。
【0106】
基材は、無機材料、有機材料を問わず種々の材料が挙げられ、その形状も限定されない。基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、木、紙、これらの組合せ、これらの積層体を有する物品が挙げられる。用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、外装材、窓枠、壁紙、服飾、カーテン、カーペットなどが挙げられる。
【実施例
【0107】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて質量基準である。
【0108】
<実施例1>
[溶液調製工程]
攪拌機、温度計を具備したガラス製反応容器に、メタノール192.24部、テトラメトキシシラン(TMOS)31.5部、テトラブトキシチタン(TBOT)3.2部を仕込み、混合液を25℃に調整した後、攪拌しながら、水20.1部を添加した。そのまま攪拌しながら、25%アンモニア水0.5部を添加し、10分間攪拌状態を保持した。その後攪拌を止め、静置することでシリカチタニア複合物を含む多孔質ゲルを得た。こ
その後、多孔質体ゲルにメタノールを200部加え、攪拌解砕することで多孔質体溶液1を得た。
【0109】
[溶媒除去工程/表面処理工程]
次の通り、多孔質体溶液1の溶媒除去処理と共に、多孔質体の表面処理(疎水化処理)を行った。なお、溶媒除去処理及び表面処理には、二酸化炭素ボンベ、二酸化炭素ポンプ、撹拌機付きオートクレーブ、背圧弁を具備した装置を用いた。背圧弁後方には除去した溶媒をトラップするためのトラップ装置及び、二酸化炭素流量を計測するためのガス流量計(株式会社シナガワ製 DC-5)を設置した。
【0110】
まず、撹拌機付きオートクレーブ、背圧弁を具備した装置を用意し、オートクレーブへ多孔質体溶液1を400部投入する。その後、オートクレーブ内を液化二酸化炭素で満たす。
次に、撹拌機を200rpmで運転させ、ヒーターにより150℃まで昇温後、二酸化炭素ポンプにより20MPaまで昇圧する。これにより、オートクレーブ内に、超臨界二酸化炭素を流通させ、多孔質体溶液1の溶媒除去を行う。トラップ装置は冷媒により0℃に保たれており除去された溶媒を二酸化炭素から分離することができる。その後、二酸化炭素はガス流量計を通り流量が計測される。
次に、流通した超臨界二酸化炭素の流通量(積算量:標準状態の二酸化炭素の流通量として測定)が3110Lとなった時点で、超臨界二酸化炭素の流通を停止した。このときの多孔質体溶液1の溶媒残留量は15質量%であった。
【0111】
超臨界二酸化炭素の流通を停止後、疎水化処理剤としてイソブチルトリメトキシシラン(IBTMS)34.7部を投入する。
その後、ヒーターにより処理温度150℃、二酸化炭素ポンプにより圧力20MPaを維持し、オートクレーブ内で二酸化炭素の超臨界状態を維持させつつ、撹拌機を200rpmで運転させ、表面処理時間として30分間保持した。30分間保持した後、再び超臨界二酸化炭素を流通させ背圧弁より圧力を大気圧まで開放し室温まで冷却させた。その後、撹拌機を停止しオートクレーブより、疎水化処理された塊状の多孔質体(つまり、塊状のシリカチタニア複合体)を取り出した。
【0112】
以上の工程を経て、シリカチタニア複合体を得た。
【0113】
<実施例2~13、比較例1~8>
表1~表2に従って、製造条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、塊状のシリカチタニア複合体を得た。
【0114】
<シリカチタニア複合体の物性の測定>
各例で得られたシリカチタニア複合体の下記物性について、記述の方法に従って測定した。
・複合体の「元素比Ti/Si」
・複合体の一次粒子の平均径(平均一次粒子径)(表中「一次粒径」と表記)
・窒素吸着等曲線のBET解析によるBET比表面積(表中「N BET比表面積」と表記)
・水蒸気吸着等温線のBET解析によるBET比表面積(表中「HO BET比表面積」と表記)
・HO吸着特性(各相対圧P/Pでの吸着量、ただし、表中、P/Pはヒステリシスループが閉じる相対圧を示す。)
・NH吸着特性(各アンモニア圧力(10kPa、90kPa)での吸着量、ただし、表中、Pはヒステリシスループが閉じるアンモニア圧力を示す、)
・複合体の「水との接触角」
【0115】
<シリカチタニア複合体の性能評価>
[耐汚れ性]
耐汚れ性について、次の通り評価した。
各例で得られたシリカチタニア複合体の試料の表面に、汚染性物質を3マイクロリットル滴下し、1時間経過後にキムワイプS-200(日本製紙クレシア(株)製)にて拭き取り試験を行った。汚染物質は、コーヒーを用いた
評価基準は、次の通りである。
A: 液滴が表面を転がり落ちて汚れが全くつかない
B: 拭き取りで汚れの痕跡が全くつかない
C: 拭き取りで汚れが落ちないが、上から水3マイクロリットルを20滴滴下し拭き取ると汚れの痕跡が無くなった
D: 拭き取りで汚れが落ちないが、上から水3マイクロリットルを100滴滴下し拭き取ると汚れの痕跡が無くなった
E: 拭き取りで汚れが落ちず、上から水をμl100滴滴下し拭き取り後も汚れの痕跡が残った
【0116】
[吸着性]
吸着性について、次の通り評価した。
各例で得られたシリカチタニア複合体の試料1gを容量1リットルの1つのロコック付きテドラーバッグに入れ、残存エアー封を吸引器で全て排出した。容器中に生活不快臭ガス800mlを注入し、所定時間経過後ガス濃度を検知管で測定した。生活不快臭には初期濃度300ppmのアンモニアガスを用い、120分後の濃度について測定した。
評価基準は、次の通りである。
A: 5ppm未満、吸着性が非常に良好
B: 5ppm以上、25ppm未満、吸着性が良
C: 25以上、50ppm未満、吸着性がやや良好
D: 50ppm以上、150ppm未満、吸着性が不良
E: 150ppm以上、吸着性が非常に不良
【0117】
以下、各例について、表1~表2に一覧にして示す。
なお、表中の略称の説明は、次の通りである。
・アンモニア水:NH
・TMOS:テトラメトキシシラン
・TBOT:テトラブトキシチタン
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】

【0120】
上記結果から、本実施例のシリカチタニア複合体は、比較例のシリカチタニア複合体に比べ、耐汚れ性と共に、親水性成分の吸着性に優れることがわかる。
図1