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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】多次元圧密理論に基づく地盤の解析方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
E02D1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018147632
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020023782
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉江 茂彦
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-020649(JP,A)
【文献】特開2015-148105(JP,A)
【文献】杉江茂彦,3次元地盤/地下水連成解析プログラム「GRASP-3D」の解析理論と粘土の力学挙動解析への応用,大林組技術研究所報,No.51,日本,1995年,P15-21
【文献】寺元俊太郎,群杭基礎の水平及び鉛直力学挙動に関する研究,学位論文(博士論文),日本,京都大学学術情報リポジトリKURENAI,2015年03月23日,P21-43,http://hdl.handle.net/2433/199281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
J-STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧の変動に伴う地盤の応力変化を示すベクトル{ΔWp}と、
動水勾配の変動に伴う物体力の変化を示すベクトル{ΔSf}とを、時刻歴のステップごとに地盤要素に与え、
多次元圧密理論に基づく土/水連成有限要素解析を適用することにより、前記地盤要素の挙動の数値解を求める解析方法であって、
γw:水の単位体積重量
{ΔI}:動水勾配の変動ベクトル
{ΔPw}:水圧の変動ベクトル
N:形状関数
B:ひずみ―変位マトリックス
V:地盤要素の領域
m:個々の地盤要素
とすると、
前記{ΔWp}及び前記{ΔSf}は、
【数1】
と表されることを特徴とする解析方法。
【請求項2】
前記地盤要素を3次元に複数個配列することによって前記地盤を3次元モデル化し、
前記地盤内における有効応力の分布を数値解として得ることを特徴とする、請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記有効応力が消失した前記地盤要素を取得することによって、前記地盤におけるボイリングの発生箇所を予測する、請求項1または2に記載の解析方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の解析方法をコンピュータ上で機能させるためのプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多次元圧密理論に基づく地盤の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂質土地盤を主な対象とする種々の土木工事においては、浸透破壊が生じる可能性があり、これを回避することが安全に施工を行う上で重要である。開削工事や海・河川・湖沼の締切・水替工事において止水壁回りのボイリングを防止することは、その代表格と言える。さらに近年増えている大深度地下の非開削工事においても、トンネル掘進・拡幅施工等での浸透破壊の回避が技術課題となっている。
【0003】
このような地盤の浸透破壊を防止することを目的として、地盤を有限要素として解析モデル化し、土の圧密を考慮して(非特許文献1)、土骨格と水の連成有限要素解析を行うことにより、地盤の挙動を把握することが従来より行われている(非特許文献2、3)。なお、土骨格と水の連成有限要素解析は、以下において、土/水連成有限要素解析とも記載する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】M.A.Biot, "General theory of three-dimensional consolidation", Jounal of applied physics, Vol. 12, February 1941
【文献】Iizuka A. and Ohta H., "A determination procedure of input parameter in elasto-viscoplastic finite element analysis", Soils and Foundation, Vol.27, No3, pp. 71-87,1987
【文献】杉江 茂彦:3次元地盤/地下水連成解析プログラム「GRASP-3D」の解析理論と粘土の力学挙動解析への応用, 大林組技術研究所報 No.51,1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の有限要素解析において、地表面より上方にある水位の変化を考慮する場合、水位変動の影響を地表面の節点荷重の増減として解析時に入力する必要があった。この場合、地表面が、平面などの単純な形状の場合には、節点荷重の入力を行うことは比較的容易である。しかし、地表面の形状が複雑である場合、節点荷重を入力することは非常に困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、水圧の変動に伴う地盤の応力変化を示すベクトル{ΔWp}と、動水勾配の変動に伴う物体力の変化を示すベクトル{ΔSf}とを、時刻歴のステップごとに地盤要素に与え、多次元圧密理論に基づく土/水連成有限要素解析を適用することにより、前記地盤要素の挙動の数値解を求める解析方法を提供する。
【0007】
前記地盤要素を3次元に複数個配列することによって前記地盤を3次元モデル化し、前記地盤内における前記有効応力の分布を数値解として得ることが好ましい。
【0008】
前記有効応力を喪失した前記地盤要素を取得することによって、前記地盤におけるボイリングの発生箇所を予測することが好ましい。
【0009】
上記解析方法を、コンピュータ上で実施するプログラムとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、節点荷重の入力を必要としないため、多次元圧密理論に基づいた土/水連成有限要素解析を、地表面形状に影響されずに容易に行え、地盤の挙動を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る解析方法における、Biotの圧密理論の支配方程式と境界条件を示す図である。
図2】Biotの圧密理論の、有限要素解析のための離散化マトリクス方程式を示す図である。
図3】(a)地上水位の低下及びそれに伴う水頭変化と、(b)全水頭と有効応力の計算結果を示す図である。
図4】ボイリング発生直前における2次元模型実験の状況を、側面から撮影した写真を示す図である。
図5】2次元模型実験の再現解析で得られた鉛直有効応力比の、ボイリング発生時における分布図を示す図である。
図6】ボイリング発生直前における3次元模型実験の状況を、(a)上面から撮影した写真と(b)側面から撮影した写真を示す図である。
図7】3次元模型実験の再現解析で得られた鉛直有効応力比の、ボイリング発生時における(a)上面分布図と、(b)図7b―b断面における分布図を示す図である。
図8】従来の土/水連成有限要素解析において入力する節点荷重であって、(a)平坦な地盤に対して入力する節点荷重の一例、及び(b)斜面及び段切を有する地盤に対して入力する節点荷重の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図8を参照して、本発明の実施形態に係る土/水連成有限要素解析について、以下に説明する。
【0013】
<境界条件、支配方程式>
本発明の土/水連成有限要素解析は、Biotの多次元圧密理論(非特許文献1)に基づく。この理論による地盤内部(領域:V、境界:S)の支配方程式を図1に示す。なお、地盤の土の粒子が組重なって形成する構造を土の骨格または土骨格と称し、土の骨格のすき間を満たす水を間隙水と称する。
【0014】
主に土骨格の変形を支配する式は、釣り合い式と構成式(図1の(1)式と(2)式)である。また間隙水の流れを支配する式は連続条件式((5)式)とDarcy則((6)式)である。ひずみと変位の関係((3)式)とTerzaghiの有効応力の原理((4)式)は、土の骨格の変形と間隙水の流れの両方に関与して相互の作用を関連付ける式である。
【0015】
さらに初期条件として、載荷前(t=0)の有効応力(11)式と全水頭(12)式を与える必要がある。これらの境界・初期条件のもとで、支配方程式を連立させて時間ステップを追いながら解くことにより、地盤の変位・応力、地下水の全水頭・流速の分布とその時間的変化が求められる。
【0016】
<離散化>
有限要素解析に用いるため、支配方程式の離散化を行った。その結果得られた連立マトリックス方程式を図2、(13)式に示す。支配方程式の離散化には、非特許文献2及び3と同様の方法を用いた。詳細に述べると、弱形式化は、釣り合い式及び連続条件式((1)式及び(5)式)を領域Vにおいて部分積分し、仮想仕事式を導出することによって行った。弱形式化の過程においては、境界条件式((7)式及び(9)式)、及び、ひずみと変位の関係((3)式)と有効応力の原理((4)式)を、釣り合い式及び連続条件式に代入した。
【0017】
さらに弱形式に対して、材料特性を表す構成式((2)式)とDarcy則((6)式)を与え、つづいて全水頭の時間変化を後退差分で表すことにより、地盤/地下水連成解析の連立マトリックス方程式(図2、(13)式)を導出した。
【0018】
上述のように土骨格の支配方程式だけでなく、間隙水の連続条件式((5)式)とDarcy則((6)式)を考慮に加えることにより、地下水に大きく左右される地盤挙動の特殊性が表現されている。
【0019】
<ベクトルの加算>
本実施の形態においては、河川等の開削工事や締切・水替を念頭に、地表面上での水位変動や揚水・注水行為を表現するため、ベクトル{ΔWp}((14)式)及び{ΔSf}((15)式)が、上述のマトリックス方程式(図2、(13)式)に加算されている。
【0020】
{ΔWp}は地表上で水位変動が生じた場合の地盤の全応力の調整をはかるためのものであり、水位低下(あるいは上昇)で生じる地盤中の水圧変化量ΔPwに応じて、ΔPwと等量の応力を地盤要素から解放(または地盤要素に載荷)することにより、有効応力を一定に保つ機能を有する。
【0021】
{ΔSf}は地盤に動水勾配の変化ΔIが生じた場合の透水力(物体力)を各要素に与える機能を有している。Biotの圧密理論では、Darcy則、及び有効応力の原理を用いており、既に透水力の効果は考慮されている。これに{ΔSf}のみを加えると透水力を重複して与えることになる。しかし本実施形態においては、{ΔSf}と{ΔWp}とを併用することによって透水力の効果の重複を避けるとともに、図3(a)に示す様な地上水位の変動(AからBへの変化)と地中の水頭変化(BからCまたはDへの変化)の過程を連続して計算できる解析方法とした。なお、図3以降の図及び以下の説明においては、地盤工学において通常用いられる定義にしたがい、圧縮側を正、伸張側を負として表示する。
【0022】
これらの水理条件での有効応力の計算結果を図3(b)に示す。図中では、図3(a)のB、C、及びDに対応する計算結果を各グラフに示している。グラフBから分かるように、地上水位の変動時に有効応力が一定に保たれる状況、及び、グラフCまたはDから分かるように、地盤底部の水頭変化に伴う上向き(または下向き)の動水勾配の発生による有効応力の減少(または増加)の状況が得られている。
【0023】
<2次元模型実験と再現解析の比較>
[2次元模型実験]
上記の解析方法の再現性を検証するため、締切・水替工事を想定した2次元模型実験とその再現解析とを行い、結果の比較を行った。以下に詳細を示す。
【0024】
2次元模型実験において、ボイリングが発生する直前の状況を図4に示す。模型実験では、直方体形状の水槽1の中に6号珪砂を空中落下させて15cmの厚さの砂地盤2を設けた。さらに止水壁3を、砂地盤2に対する根入れ深さ5cmとして、水槽1の中央部に設置した。その後、砂地盤2を乱さないように、水槽1内に水張りを緩速で行い、実験の初期状態とした。砂地盤2の物性は、投入した珪砂の重量と撒出し体積より、間隙比は0.55、水中単位体積重量は1.06g/cm程度と見込まれる。
【0025】
実験においては、水槽1の壁面に設けた水抜き孔より排水し、図4における止水壁3の右側(内側)の水位を低下させるとともに、止水壁3の左側(外側)の水位を一定に保持した。このようにして、止水壁3の左右において水頭差ΔHを生じさせていき、これをボイリングが発生するまで継続した。止水壁3の右側における水位低下の速度は、すなわち水頭差の増加速度は、毎分1cm弱とした。ボイリングは、水頭差ΔH=15.3cmで発生した。
【0026】
[2次元模型実験の再現解析]
2次元模型実験を上述の解析方法を用いて再現した。地盤要素には、1次の内挿関数を持つ、セレンディピティ族のアイソパラメトリック要素を用いた。数値積分にはガウスの求積法を用いた。また、地盤要素は弾塑性モデルとし、地盤要素の破壊の判定には、Drucker Pragerの破壊基準を用いた。地盤定数値の設定は三軸CD試験の結果に基づいて行った。せん断破壊した要素については、関連流れ則に従って剛性低下を与えた。有効応力が消失した地盤要素については、変形係数を1/10000に低減させた。解析モデルに対して水頭差ΔHを時刻歴で与えることにより、ボイリング発生までの地盤の挙動を解析した。
【0027】
再現解析で得られた、ボイリング発生時(水頭差ΔH=15cm)の局所安全率(σ′/σvo′)コンターを、図5に示す。ここで、σ′は変化後の鉛直有効応力の値、σvo′は同応力の初期値である。有効応力が消失し、局所安全率が負値となった液状化域が、地表に達した時点をボイリング発生と定義した。図5に示すように、止水壁3右側の各位置では上向きの水の流れ(動水勾配)により局所安全率が減少している。
【0028】
ΔH=15cmでは液状化域が地表まで進展し、実験でのボイリングの発生時期と状況が良く符合した。
【0029】
<3次元模型実験と再現解析との比較>
さらに、締切・水替工事を想定した3次元での模型実験とその再現解析も行い、比較を行った。以下に詳細を示す。
【0030】
[3次元模型実験]
図6(a)に示すように、3次元模型実験では水槽4を用意した。水槽4の内部に6号珪砂を空中落下させて、15cm厚の砂地盤5を設けた。さらに上面視で直角に折曲がった止水壁6を設置し、水槽4の角部を囲った。止水壁6の根入深さは5cmとした。その後、水槽4の中に緩速で水張りを行い、実験の初期状態とした。なお、以下の説明において、止水壁6と水槽4の壁面とで囲われた、上面視で矩形の領域を内側と称し、それ以外の領域を外側と称する。砂地盤5の物性は、投入した珪砂の重量と撒出し体積より、間隙比は0.55、水中単位体積重量は1.06g/cm程度と見込まれる。
【0031】
実験においては、水槽4の壁面に設けた水抜き孔より排水し、内側領域の水位を低下させるとともに、外側領域の水位を一定に保持した。このようにして、止水壁4の内外において水頭差ΔHを生じさせていき、これをボイリングが発生するまで継続した。水位低下の速度は、すなわち水頭差ΔHの増加速度は、毎分1cm弱とした。ボイリングが発生した状況を、図6(b)に示す。ボイリングは、水頭差ΔH=12.5cmで発生した。2次元模型実験の結果と比較すると、小さな水頭差でボイリングが生じた。
【0032】
[3次元模型実験の再現解析]
3次元模型実験を上述の解析方法を用いて再現した。3次元要素を用いて地盤の解析モデル化を行った。地盤要素には、1次の内挿関数を持つ、セレンディピティ族のアイソパラメトリック要素を用いた。数値積分にはガウスの求積法を用いた。また、地盤要素は弾塑性モデルとし、地盤要素の破壊の判定には、Drucker Pragerの破壊基準を用いた。地盤定数値の設定は三軸CD試験の結果に基づいて行った。せん断破壊した要素については、関連流れ則に従って剛性低下を与えた。有効応力が消失した地盤要素については、変形係数を1/10000に低減させた。実験と同様に、解析モデルに対して水頭差ΔHの時刻歴を与えることにより、ボイリング発生までの地盤の挙動を解析した。
【0033】
再現解析におけるボイリング発生時の局所安全率の分布を図7に示す。水位差ΔH=11cmとなる計算ステップにおいて、有効応力が消失して局所安全率が負値となった部分、すなわち液状化域が、地表に到達してボイリングが発生した。実験と同様に、止水壁6の隅角部でボイリングの発生が集中している。
【0034】
上記の2次元模型実験及び再現解析では、ボイリング発生時水頭差ΔH=15cmが得られている。一方、3次元場模型実験でのボイリング発生時水頭差ΔH=12.5cmはこれに比べて小さい。各再現解析においても、実験と同様、3次元解析では、2次元解析よりボイリング発生時の水頭差が小さいという傾向が得られた。
【0035】
締切・水替工事の平面形状は一般的に矩形状であるため、ボイリング対策の設計・計画では3次元場で生じる動水勾配の分布と大きさに留意する必要があることが、上記実験及び解析の結果から分かる。
【0036】
<従来との比較及び効果>
図8(a)に示すように、従来技術に係る有限要素解析法では、排水過程における地盤の力学・水理状態の変化をステップ計算するために、ステップ毎に施工域の地表部の節点に水理境界条件(全水頭値)を入力する必要があった。
【0037】
加えて、水位低下による地盤の全応力の減少を与えるために、ステップ毎に施工域の地表部の節点に応力境界条件(荷重値)を入力する必要があった。具体的には、水圧の変動分と等価な節点荷重を地表節点に与えていた。この入力処理は、地盤が平坦で単純な幾何条件の場合には手間はさほど要しない。
【0038】
しかしながら、実際の工事現場を模擬した3次元解析モデルの場合には、状況が異なってくる。荷重はベクトル量であるため、図8(b)に示すように、特に斜面を有する地盤や段切された地盤の場合には、与える節点荷重が3次元の方向成分を持つことになり、荷重条件の計算と入力に多くの手間と時間を要し、土/水連成有限要素解析の迅速な実務適用は困難であった。
【0039】
本発明においては、ベクトル{ΔSf}と{ΔWp}とを各地盤要素に加えるため、従来のように地表面の法線方向を考慮しながら節点荷重を計算する必要がない。そのため、3次元の土/水連成有限要素解析を容易に行うことが可能となり、実際の工事案件を想定して複雑な形状を持った地盤についても、数値解を得ることが可能となる。
【0040】
ベクトル{ΔWp}は、図2の式(14)に表示される通り、水圧変動分のベクトル{ΔPw}を用いて表される。また、ベクトル{ΔSf}は、動水勾配変動分のベクトル{ΔI}を用いて表される。このように、水頭変化分に相当するベクトルは、水圧及び動水勾配から導出されており、容易に算出可能である。そのため、本実施形態における解析方法は、迅速に実行することができる。
【0041】
本発明の解析方法では、2次元だけでなく、3次元での幾何形状に対しても数値解を得ることが可能である。そのため、止水壁による囲いの隅角部におけるボイリングの発生など、2次元でのモデル化では正確な予測が難しかった条件に対しても、正確な数値解を与えることが可能となる。すなわち、本発明による解析方法では、複雑な幾何形状の考慮が必要な多数の工事案件に対して、精度の高い予測を迅速に提供することが可能である。
【0042】
<変形例>
解析モデルに用いる要素の選択は、上記実施の形態に限定されず、解析の条件に沿って、任意に設定可能である。例えば、内挿関数に対しては任意の次数が適用可能であるし、積分点の配置、数値積分の方法についても、適宜選択可能である。
【0043】
上記実施形態において、時間差分近似には後退差分が用いられたが、本発明はこれに限定されない。後退差分の代わりに、前進差分等、任意の方法が採用可能である。
【0044】
解析に用いる破壊基準はDrucker Pragerに限定されず、モール・クーロンやフォンミーゼスなど、目的、条件に応じて任意の設定が可能である。
【0045】
なお、本発明の解析方法は、コンピュータ上で機能可能なプログラムとして構成して該コンピュータ上で機能させることとすれば、自動的かつ簡便・迅速に実行されることとなる。
【0046】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0047】
水槽1、4
砂地盤2、5
止水壁3、6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8