IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図1
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図2A
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図2B
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図2C
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図3
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図4
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図5
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図6
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図7
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図8
  • 特許-建設機械のドアロック解除装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】建設機械のドアロック解除装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/42 20140101AFI20220712BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20220712BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220712BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
E05B83/42
E05B79/22 A
B60J5/04 H
E02F9/16 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018148420
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020023807
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 剛
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-282730(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1563983(KR,B1)
【文献】独国実用新案第202009000416(DE,U1)
【文献】実開平5-17094(JP,U)
【文献】特開2018-9369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60J 5/00- 5/14
E02F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブのドアをロックするロック装置と、該キャブの外側から該ロック装置のロックを解除するアウターハンドルと、該キャブの内側から該ロック装置のロックを解除するインナーハンドルとを備えた建設機械のドアロック解除装置であって、
上記ロック装置は、
上記ドアをロックするロック部と、
解除レバー用回動軸を中心に回動され所定角度に回動されたときに上記ロック部のロックを解除するロック解除レバーと、
上記ロック解除レバーの一端に設けられた被当接部と、
上記ロック解除レバーの一端に設けられ、上記アウターハンドルに繋がるリンクロッドが連結されたロッド連結用プレートとを備え、
上記インナーハンドルは、
上記ドアに設けたインナーハンドル用回動軸を中心に回動可能であって、該インナーハンドルを回動させる操作アーム部と、
上記インナーハンドル用回動軸から離れた位置に設けられ、上記ロック解除レバーの一端を押し込んで該インナーハンドルと同じ方向に回動させるように上記被当接部に当接する押し込みプレートとを有し、
上記アウターハンドルは、
該アウターハンドルのロック解除動作に伴って上記リンクロッドを引いて上記ロック解除レバーを回動させることで、上記インナーハンドルを回動させることなく上記ロック部に対してロック解除動作を行うように構成され
上記被当接部は、上記ロック解除レバーに設けたローラ回転軸に回転可能に支持された被当接ローラで構成されており、
上記ローラ回転軸には、上記リンクロッドが連結されるロッド連結用プレートの一端が回動可能に連結されている
ことを特徴とする建設機械のドアロック解除装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のドアロック解除装置において、
上記インナーハンドル用回動軸の中心位置は、上記解除レバー用回動軸の中心位置の上方にあり、
上記押し込みプレートが上記被当接部を押し下げ、
上記リンクロッドが上記ロック解除レバーを引き下げるように構成されている
ことを特徴とする建設機械のドアロック解除装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械のドアロック解除装置において、
上記ロッド連結用プレートには、複数の連結用貫通孔が形成されており、
上記リンクロッドの一端を上記複数の連結用貫通孔のうち異なる位置に連結することで、上記ロックのロック解除のタイミングを変更可能に構成されている
ことを特徴とする建設機械のドアロック解除装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載の建設機械のドアロック解除装置において、
上記押し込みプレートを回動可能に支持するプレート用回動軸と離れた位置には、プレート側係合突起が形成され、
上記インナーハンドルには、上記プレート側係合突起が係合し、該プレート側係合突起の回動角度を規制する係合長孔が形成されており、
上記押し込みプレートを上記インナーハンドルに対し、所定の回動角度に調整した状態
で固定可能に構成されている
ことを特徴とする建設機械のドアロック解除装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1つに記載の建設機械のドアロック解除装置において、
上記インナーハンドル用回動軸は、上記ロック装置のロック装置本体に回動可能に支持され、
上記ロック装置本体には、上記インナーハンドルの回動軌跡を避けるようにハンドル用スリットが形成されており、
上記ハンドル用スリットの延びる方向の延長線上に上記インナーハンドルを所定角度に保持する引っ張りコイルバネの連結箇所が設けられている
ことを特徴とする建設機械のドアロック解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のドアロック解除装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の建設機械のドアロック解除装置として、例えば、特許文献1のものでは、所定の回動軸を中心に回動可能なインナーハンドルに、インナーハンドルに回動動作を与える操作アーム部と、インナーハンドルの回動動作に伴ってロック装置に対してロック解除動作を行う解除アーム部と、アウターハンドルに繋がるリンクロッドが連結された連結アーム部とを設け、アウターハンドルをアウターハンドルのロック解除動作に伴ってリンクロッドを介してインナーハンドルを回動させることでロック装置に対してロック解除動作を行うように構成している。
【0003】
一方、例えば特許文献2のように、建設機械のキャブの側部を開閉するドアに、開閉ハンドル、ドア開時ロック、ドア閉時ロックを設け、ドアの施錠、アウターハンドルによるドア開放、インナーハンドルによるドア開放のそれぞれの動作を中間に設けたリモートコントロール部を介して制御するものが知られている。このドアロック解除装置では、8本のリンクロッドと7つのリンクプレート、5つの機構部品が1つのドアに納められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-9369号公報
【文献】特許第4248659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のものでは、アウターレバーの操作時にリンクロッドに引かれてインナーレバーも傾倒する。そして、インナーレバーの回動軸と、ロック解除レバーの回動軸との間にロック解除レバーが存在するため、互いの傾き方向が相反する。そのため、互いの接触部には必ず摩擦範囲が発生し、使用頻度や使われ方によって接触部の摩耗、摩滅に繋がるおそれがある。摩耗が生じると、その進行は早くなり、著しく操作感を悪化させ、最悪の場合はその機能が麻痺して室内からのドア開放ができなくなるおそれがある。
【0006】
また、特許文献2のものでは、アウターハンドルとインナーハンドルとの動作は互いに連動しないが、5つの構成部品が水平方向に直線的に配置されている。そして、前方のハンドル類と後方のロック類とは、中間のリモートコントロール部を介してリンクロッドでそれぞれ繋がっており、その組立作業は極めて複雑で難度が高い。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、ロック解除動作におけるインナーハンドルとロック解除レバーとの接触部分の摩耗リスクを軽減し、長期間にわたって優れた操作感を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、キャブのドアをロックするロック装置と、該キャブの外側から該ロック装置のロックを解除するアウターハンドルと、該キャブの内側から該ロック装置のロックを解除するインナーハンドルとを備えた建設機械のドアロック解除装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、上記ロック装置は、
上記ドアをロックするロック部と、
解除レバー用回動軸を中心に回動され所定角度に回動されたときに上記ロック部のロックを解除するロック解除レバーと、
上記ロック解除レバーの一端に設けられた被当接部と、
上記ロック解除レバーの一端に設けられ、上記アウターハンドルに繋がるリンクロッドが連結されたロッド連結部とを備え、
上記インナーハンドルは、
上記ドアに設けたインナーハンドル用回動軸を中心に回動可能であって、該インナーハンドルを回動させる操作アーム部と、
上記インナーハンドル用回動軸から離れた位置に設けられて、上記ロック解除レバーの一端を押し込んで該インナーハンドルと同じ方向に回動させるように上記被当接部に当接する押し込みプレートとを有し、
上記アウターハンドルは、
該アウターハンドルのロック解除動作に伴って上記リンクロッドを引いて上記ロック解除レバーを回動させることで、上記インナーハンドルを回動させることなく上記ロック部に対してロック解除動作を行うように構成されている。
【0010】
上記の構成によると、アウターハンドルでロック解除動作を行うと、リンクロッドが引かれてロック解除レバーが回動する。このとき、インナーハンドルの押し込みプレートがロック解除レバーの被当接部を押し込むことはあるが、被当接部には連結はされていないので、インナーハンドルが引き寄せられることはない。このため、インナーハンドルは回動されることなく、ロック部のロック解除動作が行われる。よって、インナーハンドルの押し込みプレートとロック解除レバーの被当接部との接触面の摩耗が最小限に保たれる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、
上記インナーハンドル用回動軸の中心位置は、上記解除レバー用回動軸の中心位置の上方にあり、
上記押し込みプレートが上記被当接部を押し下げ、
上記リンクロッドが上記ロック解除レバーを引き下げるように構成されている。
【0012】
上記の構成によると、インナーハンドルと、ロック解除レバーとを上下に並べて配置できるので、少ないスペースでコンパクトで組付しやすい構成とすることができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
上記被当接部は、上記ロック解除レバーに設けたローラ回転軸に回転可能に支持された被当接ローラで構成されており、
上記ローラ回転軸には、上記リンクロッドが連結されるロッド連結用プレートの一端が回動可能に連結されている。
【0014】
上記の構成によると、被当接部がローラで構成されているので、押し込みプレートに対する摩擦が最小限に抑えられ、滑らかなインナーハンドルの操作を行える。また、ロッド連結用プレートの回動軸とローラ回転軸とを兼用できるので、部品点数が減り、コンパクトな構成となる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、
上記ロッド連結用プレートには、複数の連結用貫通孔が形成されており、
上記リンクロッドの一端を上記複数の連結用貫通孔のうち異なる位置に連結することで、上記ロックのロック解除のタイミングを変更可能に構成されている。
【0016】
上記の構成によると、簡単な構成でロック解除のタイミングを調整できる。
【0017】
第5の発明は、第1から第4のいずれか1つの発明において、
上記押し込みプレートを回動可能に支持するプレート用回動軸と離れた位置には、プレート側係合突起が形成され、
上記インナーハンドルには、上記プレート側係合突起が係合し、該プレート側係合突起の回動角度を規制する係合長孔が形成されており、
上記押し込みプレートを上記インナーハンドルに対し、所定の回動角度に調整した状態で固定可能に構成されている。
【0018】
上記の構成によると、押し込みプレートの位置を微調整することで、容易にインナーハンドルの操作感を改善できる。
【0019】
第6の発明は、第1から第5のいずれか1つの発明において、
上記インナーハンドル用回動軸は、上記ロック装置のロック装置本体に回動可能に支持され、
上記ロック装置本体には、上記インナーハンドルの回動軌跡を避けるようにハンドル用スリットが形成されており、
上記ハンドル用スリットの延びる方向の延長線上に上記インナーハンドルを所定角度に保持する引っ張りコイルバネの連結箇所が設けられている。
【0020】
上記の構成によると、ハンドル用スリットの延長線上に引っ張りコイルバネを配置しているので、インナーハンドルの操作後に滑らかにハンドル用スリット内の所定位置に戻る。また、インナーハンドルが引っ張りコイルバネによって所定角度に保持されるので、アウターハンドルの操作時にインナーハンドルは、所定角度のまま動かない。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、アウターハンドルのロック解除動作に伴ってリンクロッドを引いてロック解除レバーを回動させることで、インナーハンドルを回動させることなくロック部に対してロック解除動作を行うように構成したことにより、比較的簡単な構成で、ロック解除動作におけるインナーハンドルとロック解除レバーとの接触部分の摩耗リスクを軽減し、長期間にわたって優れた操作感を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る建設機械を示す側面図である。
図2A】ロック状態のドアの内部構造を内側パネルを一部破断して示す側面図である。
図2B】インナーレバーによりロックを解除した状態のドアの内部構造を示す図2A相当図である。
図2C】アウターレバーによりロックを解除した状態のドアの内部構造を示す図2A相当図である。
図3】ロック解除装置を示す平面図である。
図4】インナーハンドル及びロック装置の構成を示す背面図である。
図5】インナーハンドル及びロック装置の構成を示す側面図である。
図6】キャブ内からロック装置を見たときの側面図である。
図7】操作ノブを外したインナーレバー本体及びロック解除レバーを示す斜視図である。
図8】ロック解除レバー及び被当接ローラを示す分解斜視図である。
図9】本発明の実施形態の変形例に係るロッド連結用プレートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。いくつかの図には、上下や前後左右の方向を矢印で示してある。特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれら矢印で示す方向に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、建設機械1は、例えば油圧ショベルであり、クローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回自在に搭載された上部旋回体3とを備えている。上部旋回体3のアッパーフレーム4の前側中央部には、掘削作業等を行うためのアタッチメント9が取り付けられている。アタッチメント9には、例えば、バケット9aが取り付けられている。アッパーフレーム4上におけるアタッチメント9の左側には、キャブ7が配設されている。アッパーフレーム4の後側には、図示しないコントロールバルブやエンジン等が配設されており、これらは機械室カバー5によって覆われている。キャブ7の左側面には、ドア8が開閉可能に設けられている。ドア8の左側面の下部位置には、キャブ7の外側からドア8のロック状態を解除するためのアウターハンドル40が設けられている。
【0025】
図2Aに示すように、ドア8には、ドア8をロックするロック装置11が内装されている。ロック装置11には、ドアロック解除装置10が連動されている。ドアロック解除装置10は、キャブ7の外側からロック装置11のロックを解除するためのアウターハンドル40と、キャブ7の内側からロック装置11のロックを解除するためのインナーハンドル20とを備えている。
【0026】
図3図4及び図6にも示すように、インナーハンドル20とロック装置11とは、ロック装置本体16に保持されている。ロック装置11自体は、公知のロック部12を備えていてもよく、その構成は、詳しくは図示しないが、キャブ7内のドア8付近には、ストライカ13が設けられている。ロック部12は、ストライカ13を把持してロックする上下一対のストライカキャッチ14と、ストライカキャッチ14を開閉可能に支持するロック本体部15とを備えている。そして、ロック本体部15の下部に設けた解除レバー用回動軸31を中心に上下に回動されるように、ロック解除レバー30が設けられている。このロック解除レバー30は、所定角度に回動されることで、ロック部12のロック状態を解除するように構成されている。
【0027】
図8に拡大して示すように、ロック解除レバー30は、例えば、板状部材で構成され、解除レバー用回動軸31が挿通される基端側貫通孔30aと、後述する被当接ローラ33を回転可能に支持する解除レバー用ボルト32を挿通する先端側貫通孔30bとを有する。ロック部12側に設けたL字状の突出部30cによってロック部12のロックを解除可能に構成されている。
【0028】
解除レバー用ボルト32には、ローラ状の被当接部としての被当接ローラ33を回動可能に支持するローラ回転軸34に連結されている。この解除レバー用ボルト32には、後述するリンクロッド50の上端50aが連結されるロッド連結用プレート51の被支持用貫通孔51aが挿通されて回動可能に支持されている。ローラ回転軸34と解除レバー用ボルト32との間には、ワッシャ35が挟み込まれて割りピン36で抜け止めされている。図5等に示すように、ロッド連結用プレート51の連結用貫通孔51bには、アウターハンドル40に繋がるリンクロッド50の上端50aが回動可能に連結されている。ロッド連結用プレート51の被支持用貫通孔51aから見て連結用貫通孔51bと離れた位置には、ロック解除レバー30を上方から押さえ付けるように折り曲げられたロック解除レバー押付部51cが形成されている。
【0029】
図3及び図4に示すように、例えば鋼板を折り曲げて形成したロック装置本体16は、左側壁16aと、左側壁16aの前縁部から右方向に張り出す前側壁16bと、左側壁16aの上縁部と前側壁16bの上縁部とに跨がって延びる上側壁16cとを有する。左側壁16aの右側面には、右方に延びてインナーハンドル20を回動可能に支持するインナーハンドル用回動軸21が設けられている。図6等に示すように、インナーハンドル用回動軸21の中心位置は、解除レバー用回動軸31の中心位置の上方にあり、押し込みプレート24が被当接ローラ33を容易に押し下げることができるように構成されている。また、インナーハンドル20とロック解除レバー30とを上下に並べて配置できるので、コンパクトで組み付けやすい構成となっている。
【0030】
図7にも示すように、インナーハンドル用回動軸21は、インナーハンドル20を回動させるように上側に延びる操作アーム部22の基端側の貫通孔22aに挿通されている。操作アーム部22の先端22bには、オペレータの手が掛けられる操作ノブ22c(図4に示す)が取り付けられている。操作アーム部22の上下中間位置には、後述する引っ張りコイルバネ17の他端17bが連結されるバネ用貫通孔22dが形成されている。
【0031】
そして、操作アーム部22の基端側のインナーハンドル用回動軸21から離れた位置には、プレート用回動軸23を中心に回動可能に押し込みプレート24が支持されている。この押し込みプレート24は、ロック解除レバー30の一端を押し込んでインナーハンドル20と同じ方向に回動させるように被当接ローラ33に当接するように構成されている。
【0032】
図5及び図7に示すように、押し込みプレート24は、例えば、鋼板の折り曲げ構造よりなり、プレート用回動軸23と離れた位置には、プレート側係合突起24aが折り曲げ形成されている。一方、インナーハンドル20の操作アーム部22の基端側には、プレート側係合突起24aが係合し、このプレート側係合突起24aの回動角度を規制する、例えば略矩形状の係合長孔24bが形成されている。この係合長孔24bの範囲内でプレート側係合突起24aが動くことで、押し込みプレート24をインナーハンドル20に対し、所定の回動角度に調整した状態で固定可能に構成されている。具体的には、適切な位置に押し込みプレート24を回動させた状態で、プレート用回動軸23を構成するボルトを締め付けて固定するようになっている。このように、押し込みプレート24の位置を微調整することで、容易にインナーハンドル20の操作感を改善できるようになっている。
【0033】
一方、図2A等に示すように、アウターハンドル40は、このアウターハンドル40のロック解除動作に伴ってリンクロッド50を引いてロック解除レバー30を回動させることで、インナーハンドル20を回動させることなくロック部12に対してロック解除動作を行うように構成されている。具体的には、アウターハンドル40は、ドア8内部に設けられた取付ブラケット41と、取付ブラケット41に設けられて車幅方向に延びるアウター回動軸42と、アウター回動軸42を中心に回動可能に支持されたアウター作動レバー43と、アウター作動レバー43をロック方向(図2Aでは時計回り方向)に付勢するアウター付勢バネ44と、作業者がキャブ7の外側から手前に引くことによってアウター作動レバー43をロック解除方向に回動させるアウター把持部45とを有する。
【0034】
アウター作動レバー43は、インナーハンドル20とアウターハンドル40とを繋ぐリンクロッド50の下端50bが連結された連結部43aと、アウター付勢バネ44が係止されたバネ掛け部43bとを有する。アウター作動レバー43は、作業者がアウター把持部45を手前に引くことによって、図2Aで反時計回り方向に回動するようになっている。これにより、図2Cに示すように、リンクロッド50が下方に引っ張られることで、インナーハンドル20ではなくロック解除レバー30のみが連動して回動するようになっている。
【0035】
図3及び図4に示すように、インナーハンドル用回動軸21は、ロック装置11のロック装置本体16に回動可能に支持され、ロック装置本体16には、インナーハンドル20の回動軌跡を避けるようにハンドル用スリット16dが形成されており、ハンドル用スリット16dの延びる方向の延長線上にインナーハンドル20を所定角度に保持する引っ張りコイルバネ17の一端17aの連結箇所として、バネ連結孔16eが設けられている。
【0036】
なお、図6に示すように、ロック装置本体16の前側壁16bは、ドア8の内側パネル8aとロック装置11のロック本体部15との間に挟まれた状態で、締結ボルト12aによって共締めされている。これにより、ロック装置本体16は、ドア8に取り付けられている。このとき、ストライカキャッチ14は、ロック本体部15の右側位置で開閉可能となっており、ドア8を閉じたときにストライカ13に係合する位置に配置されている。
【0037】
図6に示すように、ドア8の内側パネル8aには、ロック装置11やインナーハンドル20の組立やメンテナンスのための開口孔8bと、インナーハンドル20の操作アーム部22を挿通させて操作アーム部22の前後方向への回動を許容するガイド孔8cとが形成されている。インナーハンドル20の組立完了後は、ロック装置11のストライカキャッチ14のみを露出させた状態で、開口孔8bが閉塞板(図示せず)によって塞がれている。
【0038】
-ドアロック解除装置の作動-
ロック装置11のロックを解除する場合には、図2Bに示すように、操作アーム部22を後方に引いて引っ張りコイルバネ17の付勢力に抗して押し込みプレート24を被当接ローラ33に押し付ける。すると、ロック解除レバー30が反時計回り方向に回動し、その突出部30cによって、ロック部12のロック解除が行われる。このとき、インナーハンドル20と解除レバーとが同方向に回動するので、インナーハンドル20を操作しやすく、また、押し込みプレート24と被当接ローラ33との接触点において摩耗が発生しにくい。また、被当接面が回転可能な被当接ローラ33で構成されているので、押し込みプレート24に対する摩擦が最小限に抑えられ、滑らかなインナーハンドル20の操作を行える。さらに、ロッド連結用プレート51の回動軸とローラ回転軸34とを兼用できるので、部品点数が減り、コンパクトな構成となる。
【0039】
そして、ロック解除後は、ハンドル用スリット16dの延長線上に引っ張りコイルバネ17を配置しているので、インナーハンドル20の操作後に滑らかにハンドル用スリット16d内に戻り、図2Aで示す状態となる。
【0040】
一方、図2Cに示すように、アウターハンドル40のアウター把持部45を操作してロック解除動作を行う場合、アウター作動レバー43が反時計回りに回動し、それに伴ってリンクロッド50が下方に引っ張られる。すると、ロッド連結用プレート51のロック解除レバー押付部51cがロック解除レバー30を押し付け、ロック解除レバー30が反時計回りに回動する。そして、ロック解除レバー30の突出部30cによって、ロック部12のロック解除が行われる。ここで、図2Aに示す場合のように、インナーハンドル20を操作してインナーハンドル20の押し込みプレート24がロック解除レバー30の被当接ローラ33を押し込むことはあるが、被当接ローラ33には連結はされていない。そして、インナーハンドル20が引っ張りコイルバネ17によって所定角度に保持されるので、アウターハンドル40の操作時にインナーハンドル20は、所定角度のまま動かず、引き寄せられることはない。このため、押し込みプレート24と被当接ローラ33との間に隙間Cが発生する。そして、インナーハンドル20は回動されることなく、ロック部12のロック解除動作が行われる。よって、インナーハンドル20の押し込みプレート24とロック解除レバー30の被当接ローラ33との接触面の摩耗が最小限に保たれる。
【0041】
したがって、本実施形態に係る建設機械1のドアロック解除装置10によると、比較的簡単な構成で、ロック解除動作におけるインナーハンドル20とロック解除レバー30との接触部分の摩耗リスクを軽減し、長期間にわたって優れた操作感を維持できる。
【0042】
-変形例-
図9は本発明の実施形態の変形例を示し、ロッド連結用プレート151の構成が異なる点で上記実施形態と異なる。なお、本変形例では、図1図8と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
すなわち、ロッド連結用プレート151は、上記実施形態と同様の被支持用貫通孔51a及びロック解除レバー押付部51cが形成されている。
【0044】
一方、本変形例では、複数の連結用貫通孔151b,151c,151d,151eが形成されており、リンクロッド50の上端50aを複数の連結用貫通孔151b,151c,151d,151eのうち異なる位置に連結することで、ロック部12のロック解除のタイミングを変更可能に構成されている。この構成によると、簡単な構成でロック解除のタイミングを調整できる。また、非常時には、複数の連結用貫通孔151b,151c,151d,151eのうち余った連結用貫通孔に棒状部材を引っ掛けてロッド連結用プレート51を回動させてロック解除レバー30を回動させてロック部12のロックを解除することもできる。この場合も、インナーハンドル20は、回動しないので、非常時のロック解除操作が容易である。
【0045】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0046】
すなわち、上記実施形態では、被当接部を被当接ローラで構成しているが、ローラでなくても、例えば、回転しない耐摩耗性の高い金属材料や樹脂材料よりなる部材で構成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、押し込みプレート24を操作アーム部22と別体に設けたが、操作アーム部22の基端側の折曲部が被当接部に当接するようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、建設機械は、油圧ショベルとしているが、キャブにドアを備えた建設機械であれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0049】
1 建設機械
8 ドア
10 ドアロック解除装置
11 ロック装置
12 ロック部
16d ハンドル用スリット
16e バネ連結孔(連結箇所)
17 引っ張りコイルバネ
20 インナーハンドル
21 インナーハンドル用回動軸
22 操作アーム部
23 プレート用回動軸
24 押し込みプレート
24a プレート側係合突起
24b 係合長孔
30 ロック解除レバー
31 解除レバー用回動軸
33 被当接ローラ(被当接部)
40 アウターハンドル
50 リンクロッド
51 ロッド連結用プレート
151 ロッド連結用プレート
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9