(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
E02B 5/08 20060101AFI20220712BHJP
B01D 29/96 20060101ALI20220712BHJP
B01D 29/01 20060101ALI20220712BHJP
B01D 33/04 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
E02B5/08 101A
E02B5/08 102B
B01D29/02 B
B01D29/04 510B
B01D29/04 510C
B01D29/04 510D
B01D29/04 510E
B01D29/04 530A
B01D33/04 F
(21)【出願番号】P 2018161583
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼重 友典
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-237112(JP,A)
【文献】特開平11-247160(JP,A)
【文献】実開昭54-022789(JP,U)
【文献】特開平08-144250(JP,A)
【文献】特開平07-229130(JP,A)
【文献】特開2018-131830(JP,A)
【文献】実開昭61-032222(JP,U)
【文献】特開昭63-040008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0374340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
B01D 29/96
B01D 29/01
B01D 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路を幅方向に横切るように配した網体によって、流水中の塵芥を捕捉する除塵装置において、
前記網体の幅寸法とガイドバーの長手方向の寸法が同一、若しくはガイドバーの長手方向の寸法が網体の幅寸法より長く形成されて、
網体の下端に備えたガイドバーの両端が、水路の両端に上下方向に延びるように設けたガイド溝に嵌合して上下方向に移動し、
前記網体の引き上げ機構として網体の上端に備えた巻取機により網体をロール状に巻き取ることを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
前記網体の幅方向の両端部に網体の長手方向に延びる弾性体を配し、水路内で網体が弾性体を介してガイド溝に接することを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
前記巻取機は、網体を巻上げるための機構と、水路内の流水中へ浸漬するための機構を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の除塵装置。
【請求項4】
前記巻取機と水路の上面開口の間に、網体に洗浄水を噴射する洗浄ノズル、又は網体を擦るブラシの少なくともいずれか一方を配したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の除塵装置。
【請求項5】
水路に配したスクリーン回動式の除塵装置の下流側に、請求項1に記載の除塵装置を配したことを特徴とする除塵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海などから取水する水路に、流水から塵芥を捕捉する網体などのスクリーンを水流方向に対して設置される除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などの発電プラントにおいては、河川や海などからの冷却水として使用するために取水設備が配置されている。この取水設備には、流水中に浮遊する塵芥等の異物を捕捉して除去するための除塵装置及びバースクリーンが設置されている。
【0003】
図5は、一般的な除塵装置の斜視図である。図示のように除塵装置100は、水路を横切るように幅方向に一対のリンクチェーン102を無端状に設けて、リンク毎にスクリーン104を水流に対して垂直もしくは傾斜させて取り付けた構造をとっている。また、リンクチェーン102によって、スクリーン104を水路の深さ方向に対して上下に回動させて、流水中の塵芥等を捕捉する働きをする。
【0004】
また、通常、水路に設置する除塵装置の上流側にはバースクリーンが設置されている。水路の上流のバースクリーンは流水中に浮遊する大きいサイズの塵芥を捕捉して、下流の除塵装置の塵芥の捕捉能力の低下を防ぐことができる。すなわち、バースクリーンの多くはスクリーン面が固定された平網を一定間隔に並べて、粗サイズの塵芥を捕捉している。そして、除塵装置で使用される金網状のスクリーンの目詰まり等による負荷を低減して、装置全体の稼働効率を高めることができる。なお、バースクリーンで捕捉した塵芥は、スクリーン本体をクレーンで地上へ引き上げてから回収、又は、熊手、レーキ形状の掻き揚げ装置を用いて地上へ回収している。さらに、固定式のバースクリーンの場合は、捕捉した塵芥は水底まで亘るため潜水夫の水中作業によって除去している。
【0005】
特許文献1に開示の除塵設備は、最上流に設置されたバースクリーンの前面に粗目ネットを係止すると共に、下辺を縁取りした梁をクレーンによって地上に吊り上げ自在にしている。このように粗目ネットをバースクリーンの前面に張り付け、流れてきた塵芥をバースクリーンに到達する前に粗目ネットによって捕捉され、バースクリーンの目詰まりを防ぐことができる。さらに、塵芥を捕捉した粗目ネットをクレーンによって吊り上げて地上に回収するため、掻き揚げ装置の設置や人手による塵芥除去作業が不要になり、塵芥の洗浄効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ネットに捕捉された塵芥の除去はネットをクレーンで吊り上げて行なうため、地上にクレーンなどの大掛かりな設備が必要になる。さらに、地上へ引き上げられたネットを置くためのスペースの確保も必要になる。
【0008】
またバースクリーンの前面にネットを張り付ける方法は、バースクリーンを通過する流水を妨げ、水路内で通水抵抗となる可能性がある。
【0009】
さらにバースクリーンの前面にネットを張り付ける方法は、ネットで大小全てのサイズの塵芥を一度に捕捉するため、ネットに非常に大きな負荷がかかり、ネットの寿命が短くなることが想定される。
【0010】
そこで、上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、クレーンなどの大掛かりな設備を使うことなく捕捉された塵芥をネットから簡単に除去でき、水路から引上げたネットを置くスペースを省いた除塵装置を提供することにある。ネットは網状のもののことをいい、以下、表現を網体とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1の手段として、本発明は、水路を幅方向に横切るように配した網体によって、流水中の塵芥を捕捉する除塵装置において、
前記網体の幅寸法とガイドバーの長手方向の寸法が同一、若しくはガイドバーの長手方向の寸法が網体の幅寸法より長く形成されて、
網体の下端に備えたガイドバーの両端が、水路の両端に上下方向に延びるように設けたガイド溝に嵌合して上下方向に移動し、
前記網体の引き上げ機構として網体の上端に備えた巻取機により網体をロール状に巻き取ることを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、網体を引上げる際、巻取機で簡単に巻き取ることができるため、クレーンなどの大掛かりな設備が不要になる。また水路から網体を巻き上げることにより、塵芥の除去を容易に行なうことができる。
また、ガイドバーの両端が嵌合されて、ガイド溝に沿って上下に移動できるため、水流によって網体の下部が流されて傾くおそれがない。
【0013】
上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、第1の手段において、前記網体の幅方向の両端部に網体の長手方向に延びる弾性体を設け、水路内で網体の両端部が弾性体を介してガイド溝に接することを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、前記弾性体は、ガイド溝と網体との緩衝材として役立つだけでなく、上流から流れてきた塵芥がガイド溝の奥へ侵入するのを防ぐことができる。
【0014】
上記課題を解決するための第3の手段として、本発明は、第1の手段、又は第1の手段に従属する第2の手段において、前記巻取機は、網体を巻上げるための機構と、水路内の流水中へ浸漬するための機構を備えることを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、巻取機によって網体は簡単に水路の深さに対して上下移動することができるため、流水中の塵芥量や季節に合せて、水路内の所定の深さに浸漬することが可能になる。すなわち、除塵作業が不要の場合は、完全に巻き取っておけるため通水抵抗となるのを防ぐことができる。また、地上へ巻き上げた網体の保管場所が不要になるため省スペースへつながる。
【0015】
上記課題を解決するための第4の手段として、本発明は、第1の手段、又は第1の手段に従属する第2又は第3の手段において、前記巻取機と水路の上面開口の間に、網体に洗浄水を噴射する洗浄ノズル、又は網体を擦るブラシの少なくともいずれか一方を配したことを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、巻取機で水路の上部開口から巻き上げた位置において塵芥の洗浄を自動で行なうことができる。
【0016】
上記課題を解決するための第5の手段として、本発明は、水路に配したスクリーン回動式の除塵装置の下流側に、第1の手段に記載の除塵装置を配したことを特徴とする除塵システムを提供することにある。
上記第5の手段によれば、水路の上流側のスクリーン回動式の除塵装置が捕捉できなかった、例えば小さいサイズの塵芥を下流側の本発明の網体による除塵装置で捕捉することができる。また、このように段階的に塵芥を捕捉することで、網体にかかる負荷が低減されるため、網体の寿命は延びる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来、必要であったクレーンなどの大掛かりな設備が不要になり、巻取機で簡単に網体を巻き上げることができ、洗浄スプレー又はブラシによって自動で塵芥を除去することができる。
また網体を巻取機で完全に地上へ巻き上げたとき、巻き取った状態のままで保管できるため、保管場所の必要がなく省スペースにつながる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係わる除塵装置の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係わる除塵装置の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係わるガイド溝を拡大した平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係わる除塵装置から構成される除塵システム図である。
【
図5】スクリーン回動式の従来の除塵装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係わる除塵装置1を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係わる除塵装置1の側面図である。
図2は本発明の実施形態に係わる除塵装置1の正面図である。
図示のように、本発明の実施形態に係わる除塵装置1は水路を幅方向に横切るようにして配されて水流中の塵芥を捕捉する網体3、網体の引き上げ機構として網体3の上端に取り付けた巻取機4、網体3の下端に配したガイドバー2、並びに、水路10の両壁に上下方向に延びるよう形成したガイド溝11等を備えている。
【0020】
また、
図1に示す本発明の実施形態に係わる除塵装置1は、上から囲うハウジング7内に巻取機4と、網体3を巻き上げ時に洗浄するための洗浄水を噴射するスプレー5及び網体3を擦るブラシ6を備えている。スプレー5は上面開口20の上方にあって巻取機4の下方に配し、ブラシ6は上面開口20の上方でスプレー5の下方に配置している。
【0021】
なお、水流に対向する方向に配置している網体3の上流側を表面、下流側を裏面とすると、スプレー5は網体3の裏面から洗浄水を噴射し、ブラシ6は網体3の表面を擦ることで塵芥を除去している。ブラシ6は駆動機を必要とせず、巻取機4で巻き上げられた網体3がブラシ6と接触することで回転して、塵芥を除去する。網体3から除去した塵芥は、案内板8に沿ってトラフ9へ収容する。前記トラフ9の底面には図示しないコンベアが設けられており、収容された塵芥を自動で所定の回収場所まで運搬する。
【0022】
[ガイド溝11]
ガイド溝11は、水路10の両側端の壁面にあって、水路の底面から地上に亘って設けた溝であり、後述するガイドバー2の両端部が嵌合して上下移動できる構造をとっている。
【0023】
[ガイドバー2]
ガイドバー2の長手方向の長さは網体3の幅と同じ寸法、若しくは網体3の幅より長い寸法になるように設定し、網体3の下端に備えられたガイドバー2を水路10の壁面に設けたガイド溝11に収まるように設けている。
図2に示す本実施形態の除塵装置1は、網体3の幅方向の両端がガイドバー2の長手方向の長さは網体3の幅より長い寸法の場合である。
ガイドバー2は、所定の強度、耐腐食性、防錆などを備えた棒状の躯体である。
【0024】
[網体3]
本発明の除塵装置用の網体3は、水路10の塵芥を除去する除塵装置100よりも下流側に設置する除塵設備として水流に沿って対向する方向に配置している。
この網体3は、水路10の水面から水底へ亘って上下方向に所定の水深まで巻取機4によって昇降させて設置している。
【0025】
網体3としては、金属線材を編んで形成されたものがある。例えば、可撓性を有するネットコンベアがある。または、樹脂線材を編んで形成されたものでも良い。
【0026】
図2に示す本実施形態の除塵装置1は、網体3の幅方向の両端がガイドバー2の長手方向の長さは網体3の幅より長い寸法の場合であり、ガイド溝11にはガイドバー2の両端を挿入する。好ましくは、網体3の幅方向の両端(右端と左端)部は、水路壁面のガイド溝11に挿入される(不図示)。
さらに、
図3に示すガイド溝11に収まるように幅を調整した弾性体24を、網体3の裏面の両端部の長手方向に沿って取り付けて、ガイド溝11に弾性体が接する構造が望ましい。
この弾性体24は、ガイド溝11と網体3との緩衝材として役立つだけでなく、流れてきた塵芥がガイド溝11の奥へ侵入するのを防ぐ。前記弾性体24は、ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂のいずれか1つを用いて形成したことを特徴とする。
【0027】
網体3の格子の網目のサイズは約10mm以下の細目であることが好ましい。ただし、
図4に示す除塵システムの上流側に設置されるスクリーン回動式の除塵装置100の塵芥捕捉用スクリーン104の格子の隙間よりも小さい網目のサイズであれば良い。
この網体3の網目の形状は、格子形状の代わりに菱形形状であってもよい。例えば、右螺旋と左螺旋部分を一定の間隔で交互に配列し各区間を直線で連結された菱形形状がある。
【0028】
[巻取機4]
図1,2に示す巻取機4は、従来のクレーンに替えて、水路の上面開口部をハウジング7で囲われた地上に設置されている。
図2に示すように巻取機4はモーター21によって回転する軸22と連動して回転するドラム23によって、網体3を巻き上げている。
この巻取機4はクレーンに比べて、設備として単純になっただけでなく、網体3をロール状に巻き取ることができるため、洗浄時に従来のスクリーンで必要であったスクリーンの保管場所が不要になり、省スペースにつながる。
【0029】
図4は本発明の除塵装置から構成される除塵システム図である。
<塵芥襲来なし>
流水中に塵芥がない時や塵芥量が少ない場合、本発明の除塵装置1の網体3は巻取機4によって完全に地上へ巻き上げておく。このとき本発明の除塵装置は流水中にないため、上流側のスクリーン回動式の除塵装置1を通過した後の流水は、通水抵抗なく流れることができる。
【0030】
<塵芥襲来時>
塵芥が浮遊する流水の場合、水路の上流側のスクリーン回動式の除塵装置100で塵芥は捕捉される。しかしスクリーン回動式の除塵装置100のスクリーン104の開口部は所定の間隔になっているため、小さい塵芥は開口部を通り抜けて捕捉されずに下流側へ流れていく。そこで、下流側に配置された本発明の除塵装置1の網体3がこの小さい塵芥を捕捉する。すなわち、水路の上流側のスクリーン回動式の除塵装置100で捕捉し損ねた塵芥も、本実施形態の除塵装置1によって効率的に捕捉することができる。
【0031】
<塵芥襲来後>
塵芥襲来後の場合、本発明の除塵装置1の網体3を清掃するために巻取機4によって水路の上面開口20から地上へ巻き上げる。このとき、上面開口20近傍で網体3の裏面からスプレー5で洗浄水を噴射して塵芥を落し、トラフ9へ廃棄する。または、網体3の表面をブラシ6で擦って塵芥を落し、トラフ9へ廃棄する。このように、捕捉した塵芥を簡単に除去できる。
なお、本発明の実施形態の除塵システムを構成するスクリーン回動式の除塵装置100と本実施形態の除塵装置1は、それぞれ水流に沿って対向するように、上流側と下流側に2機で配置する構成であるが、除塵装置の設置数はこれに限らず、3機、4機・・・と任意の数を設けることができる。
また、塵芥量が少なく流水速度が遅いときは、本発明の除塵装置1を1機のみを配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明はプラントなどの取水設備において塵芥を捕捉するための除塵設備のなかで、下流側用の除塵装置として特に有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 除塵装置
2 ガイドバー
3 網体
4 巻取機
5 スプレー
6 ブラシ
7 ハウジング
8 案内板
9 トラフ
10 水路
11 ガイド溝
20 上面開口
21 モーター
22 軸
23 ドラム
24 弾性体
100 スクリーン回動式の除塵装置
102 リンクチェーン
104 スクリーン
105 スプレー(スクリーン回動式の除塵装置)
107 ハウジング(スクリーン回動式の除塵装置)
108 案内板(スクリーン回動式の除塵装置)
109 トラフ(スクリーン回動式の除塵装置)