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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/04 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
G01N3/04 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018165719
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020038143
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 遼介
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-004033(JP,A)
【文献】特開2018-128411(JP,A)
【文献】特開昭53-022489(JP,A)
【文献】特開2005-214740(JP,A)
【文献】実開平07-008709(JP,U)
【文献】実開平07-023266(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0028840(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0260427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
G01N 1/00- 1/44
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の寸法を測定する測寸装置を備えた材料試験機において、
前記測寸装置は、
前記試験片に接触する一対の測寸圧子と、
前記一対の測寸圧子をそれぞれ支持する一対のアームと、
前記一対のアームを互いに近接・離隔させる駆動機構と、
前記一対のアームのいずれか一方に接続され、前記一対の測寸圧子により前記試験片を挟持したときの前記試験片の寸法を検出する検出器と、
前記試験片の寸法を測定する測寸動作、及び、前記検出器のゼロ点を更新するゼロ点校正動作を制御する制御部と、
前記ゼロ点校正動作において更新されたゼロ点を記憶する記憶部と、
を備え、
前記制御部は、
前記測寸動作前に前記一対の測寸圧子を互いに接触させたときの前記検出器の出力値と、前記記憶部に記憶されたゼロ点との間に、所定の閾値を超えるズレが有るか否かを判定し、
前記ズレが無いと判定したときに、前記検出器の前記出力値をゼロとして、前記検出器のゼロ点を更新する動作を前記ゼロ点校正動作として行ったうえで前記測寸動作を行い、
前記ズレが有ると判定したときに、前記ゼロ点校正動作を行うことなく前記測寸動作を終了することを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
記試験片に試験力を与える負荷機構を有する試験機本体と、
前記測寸装置から前記試験機本体への前記試験片搬送を行う搬送機構と
前記試験機本体と前記搬送機構とを制御する制御装置さらに備え
記制御部は、前記ズレが有ると判定したとき、前記制御装置に停止信号を送信し、前記制御装置が前記停止信号を受信して前記搬送を停止することを特徴とする請求項1に記載の材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多数の試験片を連続して試験する材料試験機において、試験片の寸法を測定する測寸装置を備えた材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料試験を実行する材料試験機には、多数の試験片を連続して試験する自動機と呼称されるものがある。このような材料試験機においては、複数の試験片を収納マガジンに収納しておけば、収納マガジンからの試験片の取り出し、試験片の測寸、試験片に対する材料試験、試験片の回収、試験データの処理が連続して自動的に実行される(特許文献1参照)。
【0003】
試験片に引張または圧縮の試験力を与えたときに発生する応力は、試験片に働く試験力を試験片の断面積で除したものである。試験片の測寸は、試験片の断面積を求めるために、試験片の標点間の両端部および中央部の幅と厚みを、測寸装置により測定する工程である。試験片の厚みは、測寸圧子を各々支持する一対のアームをモータの駆動により近接させて、一対の測寸圧子により試験片を挟持させてゲージにより測定する構成が採用されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-229836号公報
【文献】特開2011-13061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各試験片の寸法の測定前には、一対の測寸圧子を互いに接触させて、ゲージのゼロ点校正を行っている。そして、ゼロ点校正後のゲージの出力値は、ゼロ点からの変化量となる。測寸圧子間に異物(例えば、試験片加工時の金属くず等)が入った状態でゼロ点校正を行うと、測寸データに異物の厚み分のオフセットをかけることになり、試験片の厚みを正確に測定することができなくなる。自動機と呼称される材料試験機では、測寸装置への試験片の搬入、測寸、搬出の動作が自動的に行われるため、連続して実行される材料試験の途中で、測寸圧子に異物が付着し、一対の測寸圧子間に異物がある状態でゼロ点校正がされても、そのまま試験が続行される。そうすると、正確でない寸法で計算された断面積に基づいた応力データが試験データに含まれることになり、材料試験の正確さが損なわれる。
【0006】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、試験片の測寸前のゼロ点校正時において、一対の測寸圧子間の異物の有無を確認することができる測寸装置を備えた材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、試験片の寸法を測定する測寸装置を備えた材料試験機において、前記測寸装置は、前記試験片に接触する一対の測寸圧子と、前記一対の測寸圧子をそれぞれ支持する一対のアームと、前記一対のアームを互いに近接・離隔させる駆動機構と、前記一対のアームのいずれか一方に接続され、前記一対の測寸圧子により前記試験片を挟持したときの前記試験片の厚みを検出する検出器と、前記一対の測寸圧子を互いに接触させたときの前記検出器の出力値をゼロ点としてゼロ点校正する制御部と、を備え、前記制御部は、前記試験片を測寸する前に前記一対の測寸圧子を互いに接触させたときの前記検出器の出力値とそのときのゼロ点とのズレの有無を判定する判定部を有し、前記判定部が、前記検出器の出力値とそのときのゼロ点とにズレが有る判定したときに、前記検出器の出力値をゼロ点校正することなく測寸動作を終了することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記試験片に試験力を与える負荷機構を有する試験機本体と、前記測寸装置から前記試験機本体に前記試験片を搬送する搬送機構とを制御する制御装置を備え、前記測寸装置の前記制御部は、前記判定部が、前記試験片を測寸する前に前記一対の測寸圧子を互いに接触させたときの前記検出器の出力値とそのときのゼロ点とにズレが有ると判定したときは、前記制御装置に停止信号を送信し、前記制御装置は、前記搬送機構による前記試験片の搬送を停止する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、測寸装置が、試験片を測寸する前に一対の測寸圧子を互いに接触させたときの検出器の出力値とそのときのゼロ点とのズレの有無を判定することから、試験片の測寸前のゼロ点校正の実行前に、一対の測寸圧子間の異物の有無を確認することができる。そして、判定部による判定結果から、ユーザは測寸圧子間に異物が入り込んだ状態を容易に知ることができる。また、試験片を測寸する前に一対の測寸圧子を互いに接触させたときの検出器の出力値とそのときのゼロ点とにズレがあるときには、ゼロ点校正を実行することなく測寸動作を終了することから、測寸データに大きなオフセットがかかることを防ぐことが可能となる。これにより、測寸データの異常による試験結果の異常を防止することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、測寸装置の判定部が、試験片を測寸する前に一対の測寸圧子を互いに接触させたときの検出器の出力値とそのときのゼロ点とにズレが有ると判定したときは、測寸圧子間に異物が入り込んだことが疑われるため、制御装置に停止信号を送信し、制御装置は、搬送機構による試験片の搬送を停止することから、材料試験機の自動運転を停止して、異常な試験結果が出力されることを未然に防止することができる。また、自動運転を停止することで、試験片の無駄や試験時間の無駄を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明に係る材料試験機の概要図である。
図2】測寸装置3を備えた材料試験機の主要な電気的構成を示すブロック図である。
図3】測寸装置3を右斜め上方向から見た斜視図である。
図4】測寸装置3における測寸つかみ41周辺の断面概要図である。
図5】測寸動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る材料試験機の概要図である。図2は、測寸装置3を備えた材料試験機の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【0013】
この材料試験機は、複数の試験片TPを積層して収容する収納マガジン2と、試験片TPの厚みを計測する測寸装置3と、引張試験を実行する試験機本体1と、を備える。この材料試験機は、収納マガジン2からロボットアームなどの搬送機構4(図2参照)の作用により一片ずつ試験片TPを取り出し、測寸装置3を経て、試験機本体1の試験位置に試験片TPを配置して試験を実行することで、複数の試験片TPに対して、連続して引張試験を自動的に行うものである。
【0014】
試験機本体1の基台18には、一対のフレーム12が立設されており、フレーム12内には、駆動機構25(図2参照)により同期して回転する一対のねじ棹が配設されている。ねじ棹にはクロスヘッド11に内設されたナットが螺合しており、ねじ棹の回転によりクロスヘッド11は昇降する。このクロスヘッド11の昇降動作は、試験機本体1に接続された制御装置17により制御される。
【0015】
この試験機本体1においては、クロスヘッド11に試験力を検出するロードセル16を介して上つかみ具14が連結され、基台18に下つかみ具15が配設されており、上つかみ具14と下つかみ具15とにより両端を把持した試験片TPに対して、クロスヘッド11を上昇させることにより、引張試験を行う構成となっている。そして、フレーム12には、試験片TPの伸びを測定するためのビデオカメラ19が配設されている。
【0016】
試験片TPの収納マガジン2から試験機本体1の上つかみ具14および下つかみ具15による試験片TPの把持位置(試験位置)への搬送は、例えば、試験片TPを吸着パッドにより吸着保持する搬送アームやベルトコンベアなどの搬送機構4により行われる。この搬送機構4の動作は、制御装置17により制御される。
【0017】
制御装置17は、試験機本体1の駆動機構25、収納マガジン2から測寸装置3を介して試験機本体1へ試験片TPを搬送する搬送機構4、試験片TPの寸法を測定する測寸装置3、試験済の試験片TPを上つかみ具14および下つかみ具15から取り外す取り外し装置5に接続され、多数の試験片TPを連続して試験する自動試験を制御する。制御装置17は、ROM、RAMなどのメモリ71と、MPUまたはCPUなどの演算装置76と、試験結果などのデータを記憶する記憶装置77と、所定の通信プロトコルに従って測寸装置3などの外部接続された機器との通信を行う通信部75を備える。メモリ71、通信部75、演算装置76および記憶装置77は、バス79を介して相互に接続される。図2においては、メモリ71に格納されているプログラムを機能ブロックとして示している。メモリ71は、ビデオカメラ19から取得された画像を処理する画像処理部72と、クロスヘッド11を昇降させる駆動機構25の制御量を生成することにより材料試験を実行する試験制御部73と、試験片TPを搬送する搬送機構4を制御する搬送制御部74を備える。
【0018】
試験片TPが上つかみ具14および下つかみ具15により把持されると、試験機本体1においては、制御装置17の制御により、クロスヘッド11が上昇し、試験片TPに引張負荷が加えられる。クロスヘッド11を移動させる駆動機構25は、この発明の負荷機構として機能する。そのときの試験力は、クロスヘッド11に配設されたロードセル16により検出され、その検出信号は、制御装置17に送られる。ビデオカメラ19が取得した画像は、制御装置17に入力され、画像処理により得られた試験片TPの伸びは、入力表示部21に表示される。入力表示部21はタッチパネルを備えた液晶表示装置であり、ユーザが試験条件を入力するときに操作する入力装置としても機能する。
【0019】
試験片TPが破断すると、制御装置17の制御によりクロスヘッド11の上昇が停止し、引張試験は終了する。しかる後、上つかみ具14および下つかみ具15に把持されたままとなっている破断した試験後の試験片TPは、取り外し装置5により上つかみ具14および下つかみ具15から取り除かれる。
【0020】
図3は、測寸装置3を右斜め上方向から見た斜視図である。図3においては、特に、試験片TPの厚みを測定するための構成を図示している。図4は、測寸装置3における測寸つかみ41周辺の断面概要図である。
【0021】
測寸装置3は、試験片TPの厚さを測定するために試験片TPをつかむ一対の測寸つかみ41と、一対の測寸圧子31を各々支持する上アーム32および下アーム33を配設した構成を有する。一対の測寸つかみ41は、エアシリンダ36、37に接続されている。上アーム32には、試験片TPの厚さの測定に使用するゲージ34が付設されている。また、下アーム33には、下アーム33を上昇させることにより、一対の測寸圧子31により試験片TPを挟持させるためのエアシリンダ35が接続されている。一対の測寸つかみ41には、上アーム32および下アーム33に支持された一対の測寸圧子31が貫通する孔が設けられ、上アーム32側の測寸圧子31の先端は、上側の測寸つかみ41の試験片接触面と同じ位置になるように配置される。下アーム側の測寸圧子31の先端は、エアシリンダ35の動作により下アーム33が上下動することで、下側の測寸つかみ41の孔を上下動する。試験片TPを一対の測寸圧子31により挟持させるときには、エアシリンダ36、37の動作により一対の測寸つかみ41により試験片TPを軽くつかんだ後に、エアシリンダ35の動作により下アーム33を上昇させ、一対の測寸圧子31を試験片TPに押し付ける。
【0022】
ゲージ34は、スピンドルの変位量を検出するセンサとデジタルカウンタから成るリニアゲージであり、スピンドルの先端の測定子を被測定物に接触させて変位量を測定するものである。このゲージ34は、一対の測寸圧子31を互いに接触させた状態でゼロ点校正することで、一対の測寸圧子31が試験片TPに当接したときのゼロ点からの変位量を、試験片TPの厚みとして測定する厚み検出器として機能する。なお、上アーム32の測寸圧子31がゲージ34の測定子を兼ねてもよく、一対の測寸圧子31とは別の位置で測定子を試験片TPに当接させて厚みを測るようにしてもよい。また、この実施形態では、ゲージ34は、上アーム32側に接続されているが、上アーム32または下アーム33のいずれか一方に接続されていればよい。
【0023】
再度、図2を参照して、測寸装置3は、ROM、RAMなどのメモリ81と、MPUまたはCPUなどの演算装置86と、制御装置17とのデータ通信を行う通信部85を有する制御部80を備える。メモリ81、演算装置86、通信部85は、バス89により相互に接続されている。測寸装置3は、制御装置17に接続され、測定された各試験片TPの寸法は、通信部85を介して制御装置17に送信される。制御部80は、ゲージ34とエアシリンダ35に接続されている。図2においては、メモリ81に格納され演算装置86により実行されるプログラムを機能ブロックとして示している。メモリ81は、機能ブロックとして、試験片TPを測寸する前に一対の測寸圧子31を互いに接触させたときのゲージ34の出力値とそのときのゼロ点とのズレの有無を判定する判定部82と、エアシリンダ35の動作を制御するモータ制御部83を備える。
【0024】
次に、以上のように構成された測寸装置3により試験片TPを測寸する動作について説明する。図5は、測寸動作を説明するフローチャートである。なお、図5に示すフローチャートは、1本の試験片TPを測寸するときの動作を示している。
【0025】
複数の試験片TPを連続して試験する自動試験が開始されると、測寸装置3では、個々の試験片TPの厚みを測るために試験片TPに接触させる一対の測寸圧子31の間の異物の有無を確認する工程が実行される。まず、エアシリンダ35の駆動により上アーム32に下アーム33を近接させることで、一対の測寸圧子31を接触させる(ステップS1)。一対の測寸圧子31を互いに当接させたときのゲージ34の出力値は、制御部80に入力され、判定部82の機能により前回ゼロ点校正されたときのゼロ点、すなわち、いまのゼロ点とのズレの有無(一対の測寸圧子31間の異物の有無)が判断される(ステップS2)。なお、自動試験の開始前には、ユーザが軟らかい布などを使って測寸圧子31を予め拭っておくことにより、異物等を取り除いているものとし、最初の1本目の試験片TPに対する測寸動作を開始する前に、ゼロ点校正が少なくとも一度は行われているものとする。
【0026】
このズレの有無による異物の有無の判定は、ゼロ点に対して閾値を設けて、ゲージ34の出力値が閾値を超えているか否かにより行われる。ここで閾値としては、経験的に測寸圧子31の間に異物が挟まった状態の測定データが数μm~数十μmであることから、試験片TPの材質や加工の状況に応じて、測定誤差として許容できる値、例えば、マイナス側1μm、プラス側5μmなどの値が設定される。ゲージ34の出力値とそのときのゼロ点とのズレ(差分)が閾値を超えていれば、測寸圧子31の間に異物が挟まっていることが疑われることから、異物ありと判定される(ステップS2)。そして、制御部80は、エアシリンダ35の駆動により下アーム33を上アーム32から離隔させ、一対の測寸圧子31を離間させるとともに、試験の停止信号を制御装置17に送信し(ステップS7)、測寸動作を終了する。
【0027】
試験の停止信号を受信した制御装置17は、搬送機構4による試験片TPの搬送を停止させ、自動試験を停止させる。しかる後、制御装置17は、必要に応じて、試験の停止をユーザに知らせる警告を行う。警告は、入力表示部21への警告文やエラー内容の表示でもよく、音による警告であってもよい。試験を再開させる前に、ユーザは、軟らかい布などを使って測寸圧子31を拭い、異物を除去する。しかる後、試験を再開させる。
【0028】
試験片TPを測寸装置3に搬入させる前に、一対の測寸圧子31を接触させ(ステップS1)、ゲージ34の出力値とそのときのゼロ点とにズレがなく異物がないと判断されれば(ステップS2)、制御部80は、その接触させた位置でゼロ点校正を実行する(ステップS3)。ゼロ点校正では、ステップS2で検出した値をゼロとして、ゼロ点を更新する。すなわち、そのときのゲージ34のデジタルカウンタの値をゼロとする。しかる後、収納マガジン2から搬送機構4により測寸装置3に試験片TPを搬入し(ステップS4)、測寸を実行する(ステップS5)。測寸では、測寸つかみ41で試験片TPをつかむ位置を水平方向に移動させることにより、複数点の厚みを測定する。しかる後、測寸装置3から試験機本体1へと搬出し(ステップS6)、試験片TPの測寸は終了する。各試験片TPの測寸データは、通信部85を介して制御装置17に送信され、試験データの一部として記憶装置77に記憶されるとともに、試験機本体1での引張試験中において、応力の計算に使用される。
【0029】
自動機と呼称される材料試験機では、試験の精度維持の観点から、すべての試験片TPの測寸の前に、個々にゼロ点校正を実行するのが一般的であることから、この実施形態では判定部82による異物の有無の判定を、ゼロ点校正の前に行うようにしている。しかし、材料によっては、判定部82による異物の有無の判定を、数本に1本の頻度で行うようにしてもよい。
【0030】
従来の自動機と呼称される材料試験機では、ゼロ点校正のときに一対の測寸圧子31の間に異物が入り込んでいることにユーザが気付くことができず、複数の試験片TPの引張試験データが途中から、異常な値となることがあった。この発明では、測寸装置3の機能として、ゼロ点校正の前に、ゲージ34の出力値がそのときのゼロ点と大きくズレていないかをチェックしているので、一対の測寸圧子31の間に異物が入り込んでいることにユーザが容易に気づくことができ、応力計算に利用する測寸データの正確さを維持するための対応を速やかに行うことができる。そして、この実施形態では、異常が検出されたまま自動試験が続行されることがないため、試験片TPの無駄や試験時間の無駄を低減することが可能となる。
【0031】
また、上述した実施形態では、試験機本体1の構成が引張試験に対応したものとなっているが、これに限定されない。複数の試験片TPに対して、曲げ試験を連続して実行する材料試験機など、他の試験を実行する自動機にこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 試験機本体
2 収納マガジン
3 測寸装置
4 搬送機構
5 取り外し装置
11 クロスヘッド
12 フレーム
14 上つかみ具
15 下つかみ具
16 ロードセル
17 制御装置
18 基台
19 ビデオカメラ
21 入力表示部
25 駆動機構
31 測寸圧子
32 上アーム
33 下アーム
34 ゲージ
35 エアシリンダ
36 エアシリンダ
37 エアシリンダ
41 測寸つかみ
71 メモリ
72 画像処理部
73 試験制御部
74 搬送制御部
75 通信部
76 演算装置
77 記憶装置
80 制御部
81 メモリ
82 判定部
83 モータ制御部
85 通信部
86 演算装置
TP 試験片
図1
図2
図3
図4
図5