(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】バッター組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20220712BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20220712BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20220712BHJP
A23L 13/50 20160101ALN20220712BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 Z
A23L35/00
A23L13/50
(21)【出願番号】P 2018166342
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】左座 貴雄
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-219826(JP,A)
【文献】特開2016-158596(JP,A)
【文献】特開2017-127252(JP,A)
【文献】特開2018-068213(JP,A)
【文献】特開2013-165647(JP,A)
【文献】特開平10-004903(JP,A)
【文献】特開平09-084541(JP,A)
【文献】特開2013-179880(JP,A)
【文献】特開2003-250475(JP,A)
【文献】特開平06-169733(JP,A)
【文献】特開2001-046003(JP,A)
【文献】特開2002-281897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
小麦粉、コーンスターチ及びその酸化澱粉からなる群から選択される少なくとも1種、(B)トランスグルタミナーゼならびに(C)
粉末油脂を含有する、
焼き調理される食品用バッター組成物。
【請求項2】
(B)の含有量が、(A)1g当たり0.001~100Uである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)の含有量が、組成物中の固形分に対して50~95重量%である、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(C)の含有量が、組成物中の固形分に対して0.01~30重量%である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
焼き調理
が、グリル、オーブン焼き、直火焼き、炭火焼、バーナー焼き、天火焼き、窯焼き、鉄板焼き、石板焼き、挟み焼き、蒸し焼き、石焼き、テフロンベルト又は鉄板ベルトによる焼成である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物を食品原料に付着させることを含む、食品の製造方法。
【請求項7】
(A)
小麦粉、コーンスターチ及びその酸化澱粉からなる群から選択される少なくとも1種及び(B)トランスグルタミナーゼ
、及び(C)粉末油脂を含有する、焼き目付与剤。
【請求項8】
(B)の含有量が、(A)1g当たり0.001~100Uである、請求項7に記載の焼き目付与剤。
【請求項9】
(A)の含有量が、剤中の固形分に対して50~95重量%である、請求項7又は8に記載の焼き目付与剤。
【請求項10】
(C)の含有量が、剤中の固形分に対して0.01~30重量%である、請求項7~9のいずれか一項に記載の焼き目付与剤。
【請求項11】
グリル、オーブン焼き、直火焼き、炭火焼、バーナー焼き、天火焼き、窯焼き、鉄板焼き、石板焼き、挟み焼き、蒸し焼き、石焼き、テフロンベルト又は鉄板ベルトによる焼成に使用するための、請求項7~10のいずれか一項に記載の焼き目付与剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッター組成物及び当該バッター組成物を使用する食品の製造方法ならびに焼き目付与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏肉などの畜肉や魚の表面や餃子の表面がパリパリに焼かれた外観と食感を有する調理品に対する需要は高かった。しかし焼いた直後のパリパリ感が時間の経過とともに失われたり、焼かれた調理品をチルドや冷凍させたのちに、電子レンジ等で解凍した場合には具材より発生する蒸気等によって具材の焼成直後のパリパリとした食感が得られないという問題があった。
【0003】
一方、酵素等を使用して調理品の食感を改善することは知られている。例えば、トランスグルタミナーゼを接触させた食肉を加熱調理することにより高温で長時間保管してもジューシー感の低下が抑制されること(特許文献1)、トランスグルタミナーゼ及び穀粉を含み加水された油ちょう食品用バッターや、穀粉、トランスグルタミナーゼ及び酸化酵素を含有するバッター組成物が天ぷらやフライなどの衣材の食感を良好にすること(特許文献2、3)が報告されている。しかし衣材ではなく具材そのものの皮がパリパリに焼けているような外観を付与し、冷凍後もその食感を維持させうる調味液は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-33346号公報
【文献】特開2003-219826号公報
【文献】特開2018-68213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
畜肉や魚肉ならびに餃子などをオーブンやフライパン等で加熱調理した場合に、パリパリの外観と食感を有し、チルド保存や冷凍した場合でも解凍後にはその外観と食感を維持し得るバッター組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、(A)澱粉及び/又は穀粉、(B)トランスグルタミナーゼならびに(C)油脂を含有するバッター組成物を塗布して焼いた具材(食品原料)の表面がパリパリとし、食感にも優れ、冷凍後解凍してもそのパリパリ感が持続し得ることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1](A)穀粉及び澱粉からなる群から選択される少なくとも1種、(B)トランスグルタミナーゼならびに(C)油脂を含有する、バッター組成物。
[2](B)の含有量が、(A)1g当たり0.001~100Uである、[1]に記載の組成物。
[3](C)が、粉末油脂である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4](A)穀粉が、小麦粉である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5](A)澱粉が、コーンスターチ又はその酸化澱粉である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6](A)の含有量が、組成物中の固形分に対して50~95重量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7](C)の含有量が、組成物中の固形分に対して0.01~30重量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]焼き調理される食品用である、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の組成物を食品原料に付着させることを含む、食品の製造方法。
[10](A)穀粉及び澱粉からなる群から選択される少なくとも1種及び(B)トランスグルタミナーゼを含有する、焼き目付与剤。
[11]さらに(C)油脂を含有する[10]に記載の焼き目付与剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パリパリとした外観や食感を有する調理品及び解凍後も同様の外観と食感を有する冷凍食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のバッター組成物を塗布して焼いた実施例1と該組成物を塗布しないで焼いた比較例1の鶏モモ肉の写真である。
【
図2】本発明のバッター組成物を塗布して焼いた実施例2と該組成物を塗布しないで焼いた比較例2の焼き鳥の写真である。
【
図3】本発明のバッター組成物を塗布して焼いた実施例3と市販品の焼き目付き餃子の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のバッター組成物は、(A)澱粉及び穀粉からなる群から選択される1種以上(本明細書中、単に「成分A」と略する場合がある)、(B)トランスグルタミナーゼ(本明細書中、単に「成分B」と略する場合がある)ならびに(C)油脂(本明細書中、単に「成分C」と略する場合がある)を含有することを主たる特徴とする。
【0011】
本発明において「バッター」とは、澱粉や穀粉などを主成分とし、主に加熱調理前の食材の表面に付着させる等して使用される食品材料をいう。本発明のバッター組成物の形態は食材に付着し得るものであれば特に制限されないが、通常、液体状(スラリー状を含む)又は粉体状(粉末状、微粒状、細粒状及び顆粒状を含む)である。本明細書中、液体状のバッター組成物を「バッター液」と称し、粉体状のバッター組成物を「バッター粉」と称する場合がある。即ち、本発明における「バッター組成物」には、特に断りのない限り「バッター液」及び「バッター粉」が包含される。本発明における「バッター液」とは、バッター組成物のうち、形態が液体状のものをいい、具体的には、水の含有量が、バッター組成物の総量に対して通常は30重量%以上、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上のものをいう。
【0012】
[穀粉及び澱粉(成分A)]
本発明において用いられる穀粉は、食品素材として通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、はと麦粉、とうもろこし粉、じゃがいも粉、さつまいも粉、米粉等が挙げられる。これらの穀粉は、一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。穀粉として、小麦粉を用いる場合、小麦粉の種類は特に制限されないが、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラムセモリナ粉等が挙げられ、タンパク質の含量が多い強力粉、中力粉が好ましい。これらの小麦粉は、一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明において用いられる穀粉は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で製造できる。また市販品を用いてもよい。
【0014】
本発明において用いられる澱粉は、加工された澱粉を含む概念であり、食品素材として通常用いられるものであれば特に制限されないが、例としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、またはこれらの加工澱粉が挙げられる。加工澱粉としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、アルファ化澱粉、酸処理澱粉、酸化澱粉、架橋澱粉、油脂加工澱粉などが挙げられる。また、上記の加工澱粉は、同種または異種の処理を2種以上組み合わせて行ったものであってもよい。例えば、エステル化としては、アセチル化、アジピン酸エステル化、コハク酸エステル化、オクテニルコハク酸エステル化、脂肪酸エステル化、リン酸エステル化等が挙げられ、これらのエステル化の2種以上を組み合わせて施されていてもよい。また、化学的処理に加えて、湿熱処理、微粉砕処理、加熱処理、温水処理等の物理的処理を行ったものでもよい。
なかでも、コーンスターチ及びその酸化澱粉が好ましい。
【0015】
本発明において用いられる澱粉は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で製造できる。また市販品を用いてもよい。
【0016】
本発明のバッター組成物における成分Aの含有量は、特に限定されないが、固形分に対して通常50~95重量%であり、好ましくは60~90重量%である。本発明において「固形分」とは、例えば、本発明のバッター組成物がバッター液である場合は、当該バッター液に含まれる成分のうち、常温で液体状の成分(例、水、油等)を除いたものを意味し、また本発明のバッター組成物がバッター粉である場合は、当該バッター粉全体を意味する。
【0017】
本発明のバッター組成物における成分Aが穀粉及び澱粉を含む場合には、穀粉と澱粉の重量比は、穀粉1重量部に対して、通常澱粉は1~10重量部であり、2~5重量部が好ましい。
【0018】
本発明のバッター組成物における成分Aの穀粉及び澱粉の好ましい組み合わせとしては、小麦粉及び、コーンスターチ又はその酸化澱粉などが挙げられる。
【0019】
[トランスグルタミナーゼ(成分B)]
トランスグルタミナーゼは、タンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体とし、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素であり、例えば、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のもの等、種々の起源のものが知られている。本発明において用いられるトランスグルタミナーゼは、上述の活性を有すればその起源は特に制限されず、いかなる起源のトランスグルタミナーゼであっても使用でき、また組み換え酵素を使用してもよい。本発明において用いられるトランスグルタミナーゼは市販品であってもよく、具体例としては、味の素株式会社より「アクティバ」TGという商品名で市販されている微生物由来のトランスグルタミナーゼ等が挙げられる。
【0020】
本発明においてトランスグルタミナーゼの活性単位は、次のように測定され、かつ、定義される。
すなわち、温度37℃、pH6.0のトリス緩衝液中、ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミルグリシン及びヒドロキシルアミンを基質とする反応系で、トランスグルタミナーゼを作用せしめ、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体を形成させた後、525nmにおける吸光度を測定し、ヒドロキサム酸量を検量線により求め、1分間に1μモルのヒドロキサム酸を生成せしめる酵素量を1ユニット(1U)とする(特開昭64-27471号公報参照)。
【0021】
本発明のバッター組成物におけるトランスグルタミナーゼの含有量は、成分A1g当たりの酵素活性が、通常0.001U以上であり、好ましくは0.01U以上であり、より好ましくは0.02U以上である。また当該トランスグルタミナーゼの含有量の上限は特に制限されないが、成分A1g当たりの酵素活性が、通常100U以下であり、好ましくは10U以下であり、より好ましくは5U以下である。
【0022】
[油脂(成分C)]
本発明において使用される油脂は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、粉末油脂及び液状油脂が挙げられるが、粉末油脂が好ましい。
粉末油脂とは、油脂を糖質やたんぱく質などで包み込みパウダー状にしたものであり、通常水溶性であるが、室温状態(1~30℃程度)で固体、好ましくは粉末状を有することができるものであれば特に制限されない。例えば粉末油脂には、高級脂肪酸、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセライド等が包含される。
高級脂肪酸は、一般に動植物油脂又はその硬化油脂を加水分解又は酵素により分解精製して得られたものであり、常温で固体のもの、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。またショ糖脂肪酸エステルとしては、HLBが低いもの、具体的にはHLBが5以下のもの、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル等が挙げられる。またモノグリセライドとしては、HLBが低いもの、具体的にはHLB5以下の動物又は植物硬化油脂が挙げられる。なお、油脂は1種又は2種以上の油脂を組み合わせて使用することもできる。
【0023】
本発明のバッター組成物における油脂の含有量は、特に限定されないが、固形分に対して通常0.01~30重量%であり、好ましくは0.1~20重量%重量%である。
油脂が粉末油脂の場合には、固形分に対して通常0.01~30重量%であり、好ましくは0.1~20重量%である。
【0024】
本発明のバッター組成物は、上述の成分A~Cに加えて、水を更に含有してよい。
本発明のバッター組成物が水を含有する場合、本発明のバッター組成物における水の含有量は、使用形態等に応じて調整すればよく特に制限されないが、本発明のバッター組成物に対して、通常10~80重量%であり、好ましくは30~70重量%であり、より好ましくは40~60重量%である。
【0025】
本発明のバッター組成物は、上述の成分A~Cあるいは成分A~C及び水に加えて、更にその他のバッター原料を含有してよい。当該バッター原料は、バッター組成物に通常含有され得るものであれば特に制限されないが、例えば、重曹、ベーキングパウダー、イスハタ、焼きみょうばん等の膨張剤;小麦蛋白、カゼイン、グルテン、大豆蛋白(粉状、粒状)、卵黄、全卵、卵白、ホエー蛋白、血漿蛋白、ゼラチン、各種の蛋白分解物等の蛋白質素材及びその分解物;シュガーエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤;キサンタンガム、アラビアガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、セルロース、デキストリン等の増粘剤;成分(C)以外の油脂、微粒パン粉、調味料、食塩、香辛料等が挙げられる。これらのバッター原料の形態は特に制限されず、例えば、液体状、粉体状等のいずれであってもよい。これらのバッター原料は、一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明のバッター組成物は、自体公知の方法又はこれに準ずる方法により製造することができる。
本発明のバッター組成物の形態が粉体状である場合(即ち、本発明のバッター組成物がバッター粉である場合)は、例えば、上述の成分A~C及び所望によりその他のバッター原料を混合し、食品製造に通常用いられるミキサー等を用いて適宜撹拌すること等によって製造できる。また本発明のバッター組成物の形態が液体状である場合(即ち、本発明のバッター組成物がバッター液である場合)は、例えば、水に上述の成分A~C及び所望によりその他のバッター原料を添加し、適宜撹拌して溶解・分散させること等によって製造できる。
【0027】
本発明のバッター組成物の用途は特に制限されず、バッター粉やバッター液が通常使用されて加熱調理される各種食品に用いられ得るが、本発明のバッター組成物は、焼き調理される食品又は唐揚げなどの揚げ調理される食品、なかでも焼き調理される食品を製造するために好ましく用いられる。焼き調理とは、グリル、オーブン焼き、直火焼き、炭火焼、バーナー焼き、天火焼き、窯焼き、鉄板焼き、石板焼き、挟み焼き、蒸し焼き、石焼き、テフロンベルトや鉄板ベルトによる焼成が挙げられる。外観も食感もパリパリに加熱する方法であれば特に限定されないが、グリル、オーブン焼き、ホットプレート、フライパン等での鉄板焼き、炭火焼、テフロンベルトや鉄板ベルトによる焼成などの焼き調理が好ましい。
【0028】
本発明のバッター組成物が用いられる焼き調理される食品原料の具体例としては、畜肉又は魚肉、餃子などの麺皮食品等が挙げられる。
畜肉としては、鶏肉、鴨肉などの皮付き肉、豚肉、牛肉、羊肉などの厚切り肉、魚肉としては、タイ、スズキ、サケなどの皮目を有する魚が挙げられる。なかでも皮付き鶏肉、焼き鳥用鶏肉などが好ましい。
使用する部位は、あらかじめカットされている部位でも、チキンや魚などを丸のまま使用してもよい。
【0029】
本発明のバッター組成物の使用方法は特に制限されず、バッター組成物の形態、使用する食品の種類等に応じて、自体公知の方法又はこれに準ずる方法で使用すればよい。
本発明のバッター組成物の形態が粉体状である場合(即ち、本発明のバッター組成物がバッター粉である場合)は、例えば、バッター粉のまま食品原料にふりかける又はまぶす等して、その表面、好ましくは皮目に付着させてよく、あるいはバッター粉を水に溶いて、バッター液を調製してから、これを食品原料の表面、好ましくは皮目に付着させてもよい。また本発明のバッター組成物の形態が液体状である場合(即ち、本発明のバッター組成物がバッター液である場合)は、例えば、食品原料に塗布する又は噴霧する等して、その表面、好ましくは皮目に付着させることができる。
【0030】
本発明のバッター組成物によれば、例えば、皮つきチキンをグリルやオーブン焼き等で加熱すると、表面の皮がパリパリになり、さらに、加熱されたチキンをチルド保存後や冷凍後電子レンジ等で解凍しても表面の皮はパリパリのままであり、冷凍食品の製造にも効果を発揮することができる。
【0031】
本発明のバッター組成物によれば、パリパリとした食感を、衣材ではなく食材(中具)に付与することができる。
【0032】
本発明は、本発明のバッター組成物を食品原料に付着させることを含む、食品の製造方法(本明細書中、「本発明の製造方法」と称する場合がある)も提供する。
【0033】
本発明の製造方法において、本発明のバッター組成物を食品原料に付着させる方法は特に制限されず、バッター組成物の形態、製造する食品の種類等に応じて、自体公知の方法又はこれに準ずる方法で付着させればよい。
本発明のバッター組成物の形態が粉体状である場合(即ち、本発明のバッター組成物がバッター粉である場合)は、例えば、バッター粉のまま食品原料にふりかける又はまぶす等して、その表面に付着させてよく、あるいはバッター粉に水を加え、バッター液を調製してから、これを食品原料の表面に付着させてもよい。また本発明のバッター組成物の形態が液体状である場合(即ち、本発明のバッター組成物がバッター液である場合)は、例えば、食品原料に塗布する又は噴霧する等して、その表面に付着させることができる。
【0034】
本発明の製造方法は、本発明のバッター組成物を食品原料に付着させることを含むこと以外は特に制限されず、製造される食品の種類等に応じて、自体公知の方法又はそれに準ずる方法を適宜用いることができる。例えば、本発明の製造方法は、本発明のバッター組成物を食品原料に付着させた後、所望によりパン粉等の衣用材料を更に付着させ、これを加熱調理(例えば、グリルやオーブン焼き等)することを含んでよい。また本発明の製造方法は、製造した食品を冷凍処理、チルド保存、レトルト処理等に供することを更に含んでもよく、従って本発明の製造方法によって得られる食品は、冷凍品(冷凍食品)、チルド品、レトルト品等であってもよく、好ましくはチルド品、冷凍品(冷凍食品)である。
【0035】
本発明の製造方法によって得られる食品の種類は特に制限されないが、好ましくは焼き調理された食品である。従って、本発明の製造方法は、焼き調理された食品の製造方法であることが好ましい。
【0036】
本発明の製造方法によって得られる焼き調理された食品の具体例としては、本発明のバッター組成物が用いられる焼き調理された食品の具体例と同様のものが挙げられる。
【0037】
本発明の製造方法によれば、食品原料が皮付き食肉の場合には、表面の皮がパリパリになり、外観と食感に優れた焼き調理された食品を製造できる。
【0038】
本発明は、(A)穀粉及び/又は澱粉及び(B)トランスグルタミナーゼを含有する、焼き目付与剤(本明細書中、「本発明の焼き目付与剤」と称する場合がある)も提供する。
【0039】
本発明において、「焼き目付与」とは、畜肉や魚肉の皮目だけでなく、全体に焼き目を付与する食品に好ましい焼き面を付与することを意味する。すなわち、焼き目付与剤を食品表面に付与することにより、調理した際の焼き面のパリパリとした食感や香ばしい食感を向上させるとともに外観も向上させることができる。
本発明の本発明の焼き目付与剤は、よりパリパリの食感を得るために、さらに(C)油脂を含んでもよい。
本発明の焼き目付与剤が用いられる食品の具体例としては、上記バッター組成物と同様の食品が挙げられる。また各種定義及び含有量等の好適範囲も既述に準ずる。
【0040】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
<試験例1>
(バッター液の調製)
下表1に示す配合にて、澱粉(酸化澱粉、松谷化学工業株式会社)、小麦粉(小麦粉梅月)、トランスグルタミナーゼ製剤(商品名:「アクティバ」、味の素株式会社)及び粉末油脂(ミヨシ油脂株式会社)、ならびにアロメイトMB-KF(味の素株式会社)及びA-1000(植物性タンパク質加水分解物、味の素株式会社)を混合し15-20分程静置し組成物Aとした。組成物A及びその他の材料を表2の通りに計量し、ホイッパーを用いて1分間混合することにより、バッター液を調製した。
【0042】
【0043】
【0044】
(グリルチキンの作製)
鶏モモ肉(1枚肉)1,000gに水140g、照り焼きのたれ60g、お肉ジューシー調理料30gを真空タンブラーに投入し真空タンブリングを40分間行った。その後表面にバッター液を塗布し、オーブン220℃で20分間程度焼成しグリルチキン(芯温75℃以上)を作製し、実施例1とした。
真空タンブリング後の鶏モモ肉にバッター液を使用しないで実施例1と同様にして焼成したものを比較例1とした。
【0045】
(加熱調理後の状態の確認)
焼成後の鶏モモ肉を5名の専門パネルにより、外観及び食感を評価した。
その結果、実施例1のグリルチキンは、表面がパリッとし、食感もパリパリとしていた。いっぽう比較例1のグリルチキンの表面はブヨブヨとした食感であり、固い食感であった。
【0046】
(解凍後の状態の確認)
実施例1及び比較例1の鶏モモ肉を凍結(-18℃)したのち、電子レンジで加熱解凍(600Wで40~50秒)したグリルチキンを5名の専門パネルにより、外観及び食感を評価した。
その結果、実施例1のグリルチキンは、
図1に示すように表面がパリッとし、食感もパリパリとしたグリルチキンが得られた。いっぽう比較例1の表面は
図1に示すように外観もパリパリではなく食感もブヨブヨとしていた。
【0047】
<試験例2>
(バッター液の調製)
バッター液は試験例1と同様に調製した。
【0048】
(焼き鳥の作製)
焼き鳥は適当な大きさにカットし、串に刺して蒸してから冷凍したもの(冷凍蒸し済み焼き鳥)を使用した。冷凍焼き鳥を解凍し、表面にバッター液を塗布し、オーブンで慣用の条件で焼成して作製したものを、実施例2とした。
冷凍蒸し済み焼き鳥を解凍後バッター液を使用しないで実施例2と同様にして焼成したものを比較例2とした。
【0049】
(加熱調理後の状態の確認)
焼成後の鶏モモ肉を5名の専門パネルにより、外観及び食感を評価した。
その結果、実施例2の焼き鳥は、表面がパリパリと香ばしかった。
【0050】
(解凍後の状態の確認)
実施例2及び比較例2の焼き鳥を凍結(-18℃)したのち、電子レンジで加熱解凍した焼き鳥を5名の専門パネルにより、外観及び食感を評価した。
その結果、実施例2の焼き鳥は、
図2に示すように表面がパリッとし、食感もパリパリとした焼き鳥が得られた。
【0051】
<試験例3>
(バッター液の調製)
バッター液は試験例1と同様に調製した。
【0052】
(焼き目付き餃子の作製)
餃子は慣用の方法で作成し、蒸してから冷凍したもの(冷凍蒸し済み餃子)を使用した。冷凍蒸し済み餃子の底面にバッター液を付着させてフライパンで焼成し、実施例3とした。
市販品の焼き目付きの冷凍餃子を比較例3とした。
【0053】
(解凍後の状態の確認)
実施例3及び比較例3の餃子を凍結(-18℃)したのち、蓋をして一晩冷蔵解凍したのち、電子レンジで加熱解凍(600Wで1分間)した餃子を5名の専門パネルにより、外観及び食感を評価した。
その結果、
図3に示すように、実施例3の餃子は、焼き目がパリッとした食感になったが、市販品はいずれも焼き目はブヨブヨとした食感であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、食品の外観も食感もパリパリとした調理品を通常の製造方法で得ることができる。