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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】無線通信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/401 20150101AFI20220712BHJP
【FI】
H04B1/401
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018182236
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020053871
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】若松 伸一郎
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-190515(JP,A)
【文献】特開2015-091120(JP,A)
【文献】特開2011-077848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38 - 1/58
H04B 1/02 - 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号のレベルを検出し、所定のレベル以上の場合に送信状態とするVOX回路と、
前記音声信号を第1の所定時間遅延させる遅延回路と、
前記音声信号の振幅を時間軸に基づいて所定の時間の範囲を波形として表示部に表示する表示回路と、
前記遅延回路で遅延された音声信号を変調し被変調波として送信する送信回路と、
を備え、
前記VOX回路により送信状態とされた際に、送信された音声信号の波形と他の波形とを異なる色調で表示することを特徴とする無線通信機。
【請求項2】
前記遅延回路は、前記VOX回路に入力される音声信号が前記所定のレベル以上の状態から前記所定のレベル未満の状態に遷移しても、第2の所定時間の間送信状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の無線通信機。
【請求項3】
前記表示回路は、送信された音声信号の波形で、前記所定のレベル以上の個所の波形を、前記所定のレベル未満の個所の波形と異なる色調で表示することを特徴とする請求項2に記載の無線通信機。
【請求項4】
ユーザの操作を受付ける操作部を備え、
前記操作部の操作に基づいて、前記遅延回路の前記第1の所定時間および前記第2の所定時間を変更可能とすることを特徴とする請求項3に記載の無線通信機。
【請求項5】
前記VOX回路により送信を開始したことを機に、前記表示回路は波形を静止して表示し、
前記操作部における前記第1の所定時間の変更に基づいて、前記表示回路は、前記遅延回路により遅延されることにより送信された波形の色調の範囲を変更することを特徴とする請求項4に記載の無線通信機。
【請求項6】
前記VOX回路により送信を停止したことを機に、前記表示回路は波形を静止して表示し、
前記操作部における前記第2の所定時間の変更に基づいて、前記表示回路は、前記遅延回路により遅延されることにより送信された波形の色調の範囲を変更することを特徴とする請求項4に記載の無線通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VOX(Voice-Operated Transmit)機能を搭載する無線通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
半二重通信方式を採用する無線通信機においては、ハンズフリー通話を実現するために、マイクが所定のレベル以上の音声を収音したときに無線通信機を送信状態に切り替える、いわゆるVOX機能を搭載することがある。また、VOX機能において、入力信号を所定時間遅延させ送話の最初の部分の頭切れを防止する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-152472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
VOX機能を搭載する無線通信機において、頭切れの問題を回避するため入力信号を遅延させるが、遅延時間が短いと頭切れが改善されず、遅延時間が長いと発話に対して送信される変調信号の遅延時間が長くなり、半二重通信方式では支障をきたすおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、VOX機能における適切な遅延時間の設定を容易にする無線通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線通信機は、音声信号のレベルを検出し、所定のレベル以上の場合に送信状態とするVOX回路と、前記音声信号を第1の所定時間遅延させる遅延回路と、前記音声信号の振幅を時間軸に基づいて所定の時間の範囲を波形として表示部に表示する表示回路と、前記遅延回路で遅延された音声信号を変調し被変調波として送信する送信回路と、を備え、前記VOX回路により送信状態とされた際に、送信された音声信号の波形と他の波形とを異なる色調で表示することを特徴とする。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、VOX機能における遅延時間が適切であるか否かの確認を容易にする無線通信機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例の無線通信機の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の信号処理部の機能構成を示す機能構成図である。
図3】本発明の制御部の機能構成を示す機能構成図である。
図4】本発明の表示部に表示される波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態1の無線通信機100について、添付図面を参照して説明する。図1に示すように、無線通信機100は、マイク1、スピーカ2、信号処理部3、無線信部4、制御部5、操作部6、表示部7、アンテナ8、を備える。無線部4は、送信回路41と受信回路42とを備える。
【0011】
マイク1は、ユーザが発した音声を収音して音声信号に変換し、音声信号を信号処理部3に供給する。信号処理部3は、入力された音声信号に増幅や帯域制限等の音声信号処理を施し、変調波信号を生成して無線部4の送信回路41に供給する。送信回路41は、音声信号処理部3から供給された変調波に基づいて搬送波を変調して、アンテナ8を介して送信する。
【0012】
アンテナ8は、空間から受信した信号を無線部4の受信回路42に供給する。受信回路42は、受信信号を増幅、検波して検波信号とし、信号処理部3に供給する。信号処理部3は、検波信号を復調し、復調した信号が音声信号であれば音声信号をスピーカ2に供給する。スピーカ2は、供給された音声信号を再生する。
【0013】
制御部5は、信号処理部3、無線部4、操作部6、表示部7と、各種の信号線、各種の制御線で接続されている。制御部5は、無線通信機100の全体の動作を制御する。制御部5は、マイクロコンピュータまたは中央処理装置(CPU)によって構成することができる。
【0014】
図2に制御部5の機能構成を示す。制御部5は、機能構成として、操作判定部51、表示制御部52、送受信制御部53、記憶部54、VOX制御部55、を有する。操作判定部51は、ユーザの操作により操作部6が受け付け、出力された操作信号に基づいた処理を行う。表示制御部52は、無線機通信機100の各種設定や状態を、数字、文字、記号、図形で表示する指示を表示部7に出力する。送受信制御部53は、信号処理部3および無線部4に対して、送信もしくは受信を行うための制御信号を出力する。記憶部54は、CPUを動作させるためのプログラムや無線通信機100の各種設定を記憶する。
【0015】
図3に信号処理部3の機能構成を示す。信号処理部3は、マイク1、スピーカ2、無線部4、制御部5、が接続されている。信号処理部3は、無線通信機の送受信に係わる音声信号処理を行う。
【0016】
信号処理部3は、DSP(Digital Signal Processor)により構成することができる。信号処理部3は、機能的な内部構成として、ADC(ADコンバータ)31、VOX検出部32、ディレイバッファ33、送信信号処理部34、受信信号処理部35、DAC(DAコンバータ)36を備える。受信信号処理部35は、無線部4の受信回路41から出力された検波信号に対して復調等の処理を行う。DAC32は、復調信号が音声信号の場合、アナログ音声信号に変換し、スピーカ2に出力する。
【0017】
図2の制御部5の機能構成および図3の信号処理部3の機能構成に基づいて、無線通信機100のVOX機能を説明する。
【0018】
ADC31は、マイク1が集音して出力される音声信号を、アナログデジタル変換を行い、デジタル音声信号に変換する。以降、特にことわりが無い場合は、デジタル音声信号も音声信号と記載する。音声信号は、ディレイバッファ33およびVOX検出部32に入力される。
【0019】
ディレイバッファ33は、遅延回路であり、所定の時間、音声信号を遅延させる。ディレイバッファ33は、たとえば記憶素子によりFIFO(First In First Out)方式で音声信号を遅延させ出力する。遅延された音声信号は、送信信号処理部34に入力され、音声信号の振幅の制限や、音声信号の帯域制限を行い無線部の送信回路42に出力する。
【0020】
VOX検出部32は、音声信号を設定された所定のゲインで増幅する。所定のゲインとは「VOXゲイン」である。VOXゲインは、無線通信機100を使用するユーザが、操作部6もしくは後述する表示部7のタッチパネルを操作した結果に基づいて制御部5のVOX制御部55が行う処理により設定される。また、VOX検出部32は、制御部5のVOX制御部55が行う処理により設定される「VOX感度」を設定する。VOX感度は、VOX機能により音声信号の入力を検出し、送信状態とするための音声信号のレベルの閾値(VOX閾値)を意味する。また、音声信号のレベルは、音声信号の振幅の絶対値を意味する。
【0021】
VOX検出部32は、VOXゲインにより設定された音声信号のレベルを監視する。当該音声信号のレベルが、VOX閾値で定める所定のレベルを超えた場合に、VOX検出部32は、制御部5のVOX制御部55に対して送信状態とすること指示する送信指示信号を出力する。
【0022】
制御部5のVOX制御部55は、VOX検出部32から出力された送信指示信号に基づいて、送受信制御部53に対して無線部4の送信回路41の動作を開始させる指示を行う。送信回路41は、信号処理部3より出力された変調波により搬送波を変調して、アンテナ8を介して送信する。
【0023】
マイク1から入力された音声信号を、遅延処理を行わずに変調波として無線部6に出力すると、VOX感度に達したタイミングより前の音声信号は送信されない、いわゆる頭切れが生じる。そのため信号処理部3は、ディレイバッファ33により音声信号を所定時間遅延しているため、音声信号のレベルがVOX閾値を超えたタイミングより所定時間前の音声信号をディレイバッファ33から変調波として無線部6に出力することができ、頭切れを回避することができる。
【0024】
また音声信号のレベルは、通常一定ではない。前記したVOX閾値を音声信号のレベルが下回った場合であってもすぐに送信は停止させず、所定のタイマにより送信状態を保持し、タイマのカウント中に再び閾値を超えることが無い場合に送信を停止する。このタイマをVOXディレイタイマと定義し、このタイマの時間をVOXディレイタイムと定義する。このタイマは制御部5内のVOX制御部55の一機能とすればよい。
【0025】
ディレイバッファ33は音声信号を遅延し、VOXディレイタイマは送信終了時間を遅延し、遅延させる対象は異なるが、どちらもVOX機能に関する時間の遅延を行うことから、これらは、遅延時間を決定する遅延回路とする。
【0026】
上記した信号処理部3のVOX検出部32、制御部5のVOX制御部55、送受信制御部53は、音声信号のレベルの絶対値を検出し、所定のレベル以上の場合に送信状態とするVOX回路を構成する。
【0027】
信号処理部3は、音声信号を制御部5の表示制御部52にも出力する。表示制御部52は、入力された音声信号を、横軸を時間、縦軸を変調波の振幅とした波形を表示するための波形信号を表示部7に出力する。表示部7は、表示制御部52からの波形信号に基づき、横軸を時間、縦軸を振幅として表示を行う。つまり、信号処理部3、制御部5および表示部7は、音声信号の様態を表示する表示回路(オシロスコープ)として機能する。
【0028】
図4に、表示部7に表示される音声信号の波形の例を示す。図4aは、マイク1に音声の入力が開始された直後の波形である。なお、VOX制御部55は、VOX検出部32に設定するVOX閾値を表示制御部52に出力し、表示制御部52は、VOX閾値を前記オシロスコープの水平方向のラインとして表示を行う信号を出力し、表示部7は、音声信号の波形とVOX閾値のラインとを重畳して表示する。VOX閾値の表示色は波形の表示と異なることが望ましい。
【0029】
表示された波形の振幅がVOX閾値のラインを超えていない場合、音声信号の波形は第1の色調(例えば黒、図4では破線)で表示する。表示された波形の振幅がVOX閾値のラインを超えた場合、つまり音声信号の振幅がVOX閾値を超えたため、VOX機能により送信が開始されることを意味する。図4bは、音声信号の振幅がVOX閾値を超えた状態を示す。送信が検出された以降の波形を、第1の色調とは異なる第2の色調(例えば赤、図4cでは実線)に変更し、閾値を超える以前の波形で、ディレイバッファにより遅延され、変調波として送信された部分の波形は、第1の色調および第2の色調とは異なる第3の色調(例えば青、図4cでは一点鎖線)に変更される。音声信号がVOX閾値を超えたタイミングから第3の色調で表示する期間は、ディレイバッファの遅延時間である。これによって、送信された音声信号の波形で、所定のレベル以上の個所の波形を、所定のレベル未満個所の波形と異なる色調で表示することができる。
【0030】
音声信号の振幅が、VOX閾値のラインを超えた場合としたが、VOX制御部55は、VOX検出部32から出力された送信指示信号を前記したオシロスコープ機能のトリガーとして表示制御部52に出力し、表示制御部52は、送信指示信号のタイミングに基づき、表示する波形表示の配色を変更することとしてもよい。いずれもタイミングは同じで、表示される結果は同じとなる。表示制御部52は、送信指示信号をトリガーとして送信指示信号のタイミングを含めた所定の時間の波形を静止して表示してもよい。この場合は、送信指示信号が受信から送信となったタイミングを意味する。表示制御部52は、送信指示信号のタイミングとなる個所にマーカーを変調信号の波形に重畳して表示してもよい。変調信号の波形は、常に表示していなくてもよく、送信指示信号の検出した時点で、前記した結果のみを表示してもよい。
【0031】
上記した波形が停止した際の表示は、音声信号のレベルがVOX閾値として設定されたレベルを超えたタイミングに基づいて静止した波形であり、音声信号のレベルがVOX感度として設定されたレベルを超えたタイミングに対して、変調波の頭切れの有無を視覚的に確認することができる。
【0032】
しかしながら、言語による違いや、同一人物であっても体調等により発話の開始からVOX感度に達するまでの時間は同じではなく、またVOX感度およびVOX閾値は、使用環境(環境音)に対して適正に設定する必要もある。そのため、ディレイバッファ33に記憶できる時間が一定では頭切れを必ずしも抑制することはできない可能性もある。
【0033】
以下、実施形態2の無線通信機100について、添付図面を参照して説明する。実施形態2の無線通信機100の構成は、実施形態1と同じであり、機能の差異に関して説明する。実施形態2の無線通信機100は、信号処理部3のディレイバッファ33の遅延量(遅延時間)を操作部6からの操作により変更可能とすることを特徴とする。
【0034】
図4cの波形は、VOX機能により送信した際の音声信号の波形を静止して表示した場合とする。ディレイバッファ33によりBの期間は変調波として送信されているが、Aの期間は変調波として送信されていないことを示している。無線通信機100のユーザは、この表示により、現在の周囲環境や自身の体調における発話に対して、現状のディレイバッファ33の遅延時間では頭切れを解消するのに十分ではないことを認識することができる。またユーザは、Aの期間内のA1は周囲環境音であり、A2の期間が変調波とされなかった期間であることは、波形の振幅や波形の形そのものから、認識することは可能である。頭切れを解消するため、A2の期間の最初のレベルが検出できるまで操作部6からの操作によりVOX閾値を下げるといった対処方法もある。しかし、頭切れは生じなくなるが、ディレイバッファ33の遅延時間だけA1の期間の周囲環境音を変調波として送信してしまうので、望ましくない。
【0035】
現在の周囲環境や自身の体調における発話に対して適切な遅延時間を設定すること可能とするための構成を説明する。実施形態2の無線通信機100は、ディレイバッファ33の遅延時間が変更可能としている。FIFO方式で入力された音声信号のデータを遅延させる場合は、FIFO方式のバッファの記憶容量を可変とすればよい。どれだけの記憶容量を割当てるかの設定を、操作部6からの操作に基づいて、操作判定部51が割当てる増減の記憶容量を判定し、信号処理部3のディレイバッファ33に必要な記憶容量を割当てる。これにより遅延時間を変更可能とすることができる。
【0036】
遅延時間の変更をユーザに認識させるため、変更後の遅延時間を報知する。報知手段の一例として、図4dに示すように、現在表示されている波形の第3の色調とした個所の範囲を、操作判定部51から出力される記憶容量の増減の指示に基づいて変更する。
【0037】
第3の色調の範囲はディレイバッファ33の遅延時間を示している。その際、図4cで示しているTは、音声信号のレベルがVOX閾値を超えたタイミング、つまりVOX検出部32から送信指示信号が出力されたタイミングであるため、この位置を基準にして第3の色調の範囲を変更する。図4は、Δで示した分だけ遅延量を増やし、変更後の遅延量はB´となり、この期間が第3の色調に変更される。
【0038】
また修正されたディレイバッファの遅延時間であるため、修正されていることを示すため、第1~3の色調とは異なる第4の色調で表示してもよい。また、遅延時間の変更可能な範囲やステップを予め定めていて、ディレイバッファ33の遅延時間を、簡易的に数値(0~9)、文字(LONG、MIDDLE、SHORT)、図形(バーグラフ)で表示してもよい。
【0039】
次回のVOX機能による送信に対して、今回変更したディレイバッファの設定を反映することで、現在の周囲環境や自身の体調における発話に対して適切な遅延時間を設定することができる。
【0040】
表示部7に表示された波形に注目しながら、ユーザがより直感的に設定が行うことが出来ることが望ましいことから、表示部7はタッチパネルの機能を備えてもよい。前記したディレイバッファ33の遅延時間の変更にあたり、表示部7の画面に指を2本タッチし、一方の指はTで示した時間の表示で固定し、他方の指を触りながらスライドさせることで、前記した第3の色調の範囲を可変としてもよい。また、タッチパネルからの操作により、VOX閾値を変更可能としてもよい。
【0041】
以下、実施形態3の無線通信機100について、添付図面を参照して説明する。VOXの動作において、遅延時間は送信開始時のみだけでなく、実施形態1で記載したように、VOX閾値を音声信号のレベルが下回った場合であってもすぐに送信は停止させず、所定のタイマにより送信状態を保持するVOXディレイタイマによる遅延時間がある。
【0042】
VOXディレイタイマによって送信終了を遅延させる遅延時間設定は従来からある技術ではある。VOXディレイタイムは、短いと頻繁に送信が終了してしまい、長いと発話が終了しても送信が終了するまでの時間をまたなければならない。これも、現在の周囲環境や自身の体調における発話に対して適切な遅延時間を設定する必要がある。VOXディレイタイムは、発話中の音声の低下や無音期間といった場合であっても送信状態を維持するための時間であり、500mS~数秒といった時間となる。それに対し、ディレイバッファ33による遅延時間は、発声の開始部分にあたりVOX回路による検出以前の所定の期間の音声信号を変調波として送信するための期間であり、これは10mS~100mSといった比較的短い時間であるため、VOXディレイタイムに対する影響はほぼ無いといえる。
【0043】
VOXディレイタイマは、VOX制御部55の一機能であり、信号処理部3のVOX検出部32から出力される送信指示信号が送信指示状態ではなくなっても、送受信制御部53に対して、VOXディレイタイマのカウント時間は送信状態を維持させる。
【0044】
図4eは、送受信制御部53が送信を終了したことをトリガーとして示した図である。表示制御部52は、送信指示信号をトリガーとして送信指示信号のタイミングを含めた所定の時間の波形を静止して表示してもよい。この場合は、送信指示信号が送信から受信となったタイミングを意味する。図4eの状態を詳細に説明する。図のRは送信を終了したタイミングを示している。VOXディレイタイムのカウント期間は前記したディレイバッファによる送信された期間と同じ第3の色調でもよく、また、別な第5の色調としてもよい。図面上は一点鎖線で示している。これによって、送信された音声信号の波形で、所定のレベル以上の個所の波形を、所定のレベル未満個所の波形と異なる色調で表示することができる。
【0045】
図4eにおけるCおよびEの期間は、VOX閾値を超えているため、第2の色調で表示される。Gの期間は送信終了後であるため、第1の色調で表示される。Dの期間は、Cの期間が終了してVOX閾値を音声信号のレベルが下回ったが、VOXディレイタイムのカウントが終了する前に、音声信号のレベルがVOX閾値を上回った為(Eの期間)、Dの期間は前記した第3の色調または第5の色調で表示される。Fの期間は、音声信号の入力レベルがVOX閾値を下回ったため、第3の色調または第5の色調で表示される。Fの期間で音声信号のレベルがVOX閾値を上回ることが無かった為、VOXディレイタイムのカウント終了後送信を停止した。
【0046】
表示部7に図4eの状態が表示された場合、ユーザは、VOXディレイタイマによる遅延時間を、Fの期間として確認することができる。また、ユーザは、現状の発話ではDの期間のように音声信号のレベルがVOX閾値を下回る期間があるものの、VOXディレイタイムに対して十分に短いことから、VOXディレイタイムはもう少し短くすることが可能であると判断することも可能である。実施形態3の無線通信機100は、ユーザに対して、VOXディレイタイムの確認や適切であるかを判定するための情報を提供する為の構成を備えている。
【0047】
また、VOXディレイタイムの設定に関して、実施形態2の2で示したディレイバッファの遅延時間の設定の構成と同様に、操作部6もしくは表示部7が備えるタッチパネルからの操作により、波形の色調とともに変更される構成を備えてもよい。
【0048】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
100 無線通信機
1 マイク
2 スピーカ
3 信号処理部
31 ADC(ADコンバータ)
32 VOX検出部
33 ディレイバッファ
34 送信信号処理部
35 受信信号処理部
36 DAC(DAコンバータ)
4 無線部
41 送信回路
42 受信回路
5 制御部
51 操作判定部
52 表示制御部
53 送受信制御部
54 記憶部
55 VOX制御部
6 操作部
7 表示部
8 アンテナ
図1
図2
図3
図4