(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20220712BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20220712BHJP
【FI】
H02K1/28 Z
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2018187471
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西條 正起
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-078480(JP,A)
【文献】特開2007-135371(JP,A)
【文献】特開2007-259583(JP,A)
【文献】特開2016-005308(JP,A)
【文献】特開2013-207813(JP,A)
【文献】特開2013-102651(JP,A)
【文献】特開2004-032958(JP,A)
【文献】実開昭62-048169(JP,U)
【文献】特開2012-125000(JP,A)
【文献】特開2013-118803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
複数枚の電磁鋼板が積層されて構成されるとともに、前記シャフトが挿通されるロータコアを有するロータと、
前記シャフトの軸方向において前記ロータコアの両側に配置されるとともに、前記シャフトが挿通され、かつ前記シャフトに対する移動が規制された一対の端板と、
を備えた回転電機であって、
前記端板は、前記シャフトの径方向における外側縁部に、前記シャフトの軸方向において前記ロータコアとは反対側に向けて突出する鍔部を有する
とともに、前記ロータコア側の面に前記ロータコアに向けて突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記シャフトの径方向において前記外側縁部寄りに位置し、前記電磁鋼板の外周側部位に接触することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記突出部は、前記端板を成形して形成されている請求項
1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記シャフトに圧入されたリング部材を備え、
前記一対の端板のうち、一方の端板である第1端板の内周側部位は、前記シャフトの軸方向において、前記ロータコアと前記リング部材との間に配置されるとともに、前記ロータコア及び前記リング部材と密接している請求項1
又は請求項
2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第1端板は、前記シャフトが貫通される貫通孔の内周面から突出するキーを有し、
前記リング部材は、前記第1端板の内周側部位と密接する筒部と、前記筒部から突出するとともに前記シャフトの外周面と前記第1端板の貫通孔の内周面との間に嵌合される筒状の嵌合部を有し、
前記嵌合部は、リング側キー溝を有し、
前記第1端板のキーは、前記リング部材のリング側キー溝に嵌合される請求項
3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記シャフトは、前記一対の端板のうち一方の端板である第1端板が挿通される小径部と、前記一対の端板のうち他方の端板である第2端板が挿通されるとともに前記小径部よりも径の大きい中径部と、前記中径部よりも径が大きく、前記中径部に対して前記ロータコアとは反対側に位置する大径部と、前記中径部と前記大径部とによって形成される段差部とを有し、
前記第2端板の内周側部位は、前記シャフトの軸方向において、前記ロータコアと、前記シャフトの段差部とによって挟まれている請求項1~請求項
4の何れか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記第2端板は、前記シャフトが貫通される貫通孔の内周面から突出するキーを有し、
前記シャフトは、前記中径部の外周面に形成されるとともに前記小径部側に開口する軸側キー溝を有し、
前記第2端板のキーは、前記シャフトの軸側キー溝に嵌合される請求項
5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記端板は、前記シャフトの軸方向において前記ロータコアとは反対側に向けて凸形状をなすビードを有する請求項1~請求項
6の何れか一項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記シャフトの径方向において、前記ロータコアの外側に間隔を空けて配置されたステータコアを有するステータを備え、
前記シャフトの軸方向における前記ロータコアの寸法は、前記シャフトの軸方向における前記ステータコアの寸法よりも長い請求項1~
7の何れか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の電磁鋼板が積層されたロータコアを備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回転電機は、シャフトと、シャフトと一体回転する円筒状のロータと、シャフトの径方向においてロータの外側に配置されるステータとを備える。特許文献1に開示の回転電機において、ロータは、複数枚の電磁鋼板が積層されて構成されるとともにシャフトが挿通されるロータコアと、ロータコアに形成された埋込孔に埋め込まれた永久磁石とを有する。このような回転電機では、ロータ及びステータ間の漏洩磁束の影響により、電磁鋼板同士の間に斥力が発生する。すると、シャフトの軸方向の両端に位置する電磁鋼板の外周側部位がロータコアから離れる方向にめくれ、電磁鋼板における埋込孔周辺の強度の弱い部分が破断する虞がある。
【0003】
特許文献1に開示の回転電機は、電磁鋼板のめくれを抑制するための一対の端板を備える。一対の端板は、シャフトの軸方向においてロータコアの両側に配置されるとともに、シャフトが挿通される。一対の端板は、例えば、シャフトに圧入されることによって、シャフトの軸方向への移動が規制されている。各端板は、例えば、端板の材料である非磁性体(例えばアルミニウムやステンレス)の薄板をプレス加工により打ち抜くことで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、端板の厚みが厚くなるほど、端板の材料を打ち抜くのに必要な加圧力が大きくなり、端板の製造コストが上がる。また、端板の材料費も高くなる。このため、端板は薄い方が好ましい。しかしながら、端板の厚みを薄くし過ぎると、端板の強度が下がり、電磁鋼板のめくれを抑制できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電磁鋼板のめくれを抑制しつつ、端板を薄くできる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための回転電機は、シャフトと、複数枚の電磁鋼板が積層されて構成されるとともに、前記シャフトが挿通されるロータコアを有するロータと、前記シャフトの軸方向において前記ロータコアの両側に配置されるとともに、前記シャフトが挿通され、かつ前記シャフトに対する移動が規制された一対の端板と、を備えた回転電機であって、前記端板は、前記シャフトの径方向における外側縁部に、前記シャフトの軸方向において前記ロータコアとは反対側に向けて突出する鍔部を有することを要旨とする。
【0008】
これによれば、鍔部により外側縁部の断面係数が増大するため、外側縁部の強度は、鍔部が形成されていない場合と比較して高くなる。このため、端板を薄くしても、外側縁部の強度が低下することを抑制できる。よって、電磁鋼板のめくれを抑制しつつ、端板を薄くできる。
【0009】
また、上記回転電機について、前記端板は、前記ロータコア側の面に前記ロータコアに向けて突出する突出部を有し、前記突出部は、前記シャフトの径方向において前記外側縁部寄りに位置するのが好ましい。
【0010】
端板は、例えば、製造時の加工精度が低い場合や、材料の特性によってスプリングバックが発生した場合などに反ってしまうことがある。端板が反っている場合、端板に突出部が形成されていないと、端板の外周側部位が電磁鋼板に接触せず、端板によって電磁鋼板のめくれを十分に押さえられないことがある。これに対し、端板の外側縁部寄りに突出部が形成されている場合、突出部により電磁鋼板の外周側部位を押さえやすくなる。よって、端板が反っていても、電磁鋼板のめくれを抑制できる。
【0011】
また、上記回転電機について、前記突出部は、前記端板を成形して形成されているのが好ましい。
これによれば、突出部が端板と別部材である場合と比較して回転電機の部品点数を減らすことができる。また、突出部は、端板の材料を打ち抜いて端板を形成する際に一体成形されるため、端板の製造工程を増加させない。
【0012】
また、上記回転電機について、前記シャフトに圧入されたリング部材を備え、前記一対の端板のうち、一方の端板である第1端板の内周側部位は、前記シャフトの軸方向において、前記ロータコアと前記リング部材との間に配置されるとともに、前記ロータコア及び前記リング部材と密接しているのが好ましい。
【0013】
これによれば、リング部材により、第1端板の内周側部位をロータコアに押しつけることができるため、電磁鋼板の内周側部位のめくれを抑制できる。また、第1端板がロータコアとリング部材との間でロータコア及びリング部材と密接することにより、第1端板の内周側部位を補強できる。また、第1端板に突出部が形成されている場合、リング部材によって第1端板の内周側部位をロータコアに押しつけると、第1端板の突出部はロータコアと接触する。その結果、シャフトの径方向において、第1端板における内周側部位と外周側部位との間に位置する部分が、ロータコアから離れる方向に弓なりに弾性変形することで、突出部が電磁鋼板を押さえる力は増大する。よって、電磁鋼板のめくれをより抑制できる。
【0014】
また、上記回転電機について、前記第1端板は、前記シャフトが貫通される貫通孔の内周面から突出するキーを有し、前記リング部材は、前記第1端板の内周側部位と密接する筒部と、前記筒部から突出するとともに前記シャフトの外周面と前記第1端板の貫通孔の内周面との間に嵌合される筒状の嵌合部を有し、前記嵌合部は、リング側キー溝を有し、
前記第1端板のキーは、前記リング部材のリング側キー溝に嵌合されるのが好ましい。
【0015】
これによれば、第1端板のキーとリング部材のキー溝とを嵌合することにより、シャフトに圧入されたリング部材を介して、シャフトに対する第1端板の回転を規制できる。シャフトに対する第1端板の回転を規制する方法としては、シャフトにキー溝を形成し、第1端板のキーをシャフトのキー溝に嵌合する方法も考えられるが、シャフトにキー溝を形成するためのコストは、リング部材にキー溝を形成するためのコストよりも高い。このため、リング部材にキー溝を形成することで、回転電機の製造コストを下げることができる。
【0016】
また、上記回転電機について、前記シャフトは、前記一対の端板のうち一方の端板である第1端板が挿通される小径部と、前記一対の端板のうち他方の端板である第2端板が挿通されるとともに前記小径部よりも径の大きい中径部と、前記中径部よりも径が大きく、前記中径部に対して前記ロータコアとは反対側に位置する大径部と、前記中径部と前記大径部とによって形成される段差部とを有し、前記第2端板の内周側部位は、前記シャフトの軸方向において、前記ロータコアと、前記シャフトの段差部とによって挟まれているのが好ましい。
【0017】
これによれば、シャフトの軸方向において、シャフトの径を変更するだけで、シャフトに対する第2端板の移動を規制できる。
また、上記回転電機について、前記第2端板は、前記シャフトが貫通される貫通孔の内周面から突出するキーを有し、前記シャフトは、前記中径部の外周面に形成されるとともに前記小径部側に開口する軸側キー溝を有し、前記第2端板のキーは、前記シャフトの軸側キー溝に嵌合されるのが好ましい。
【0018】
これによれば、シャフトに対する第2端板の回転を規制できる。また、シャフトの径が軸方向において一定の場合、軸側キー溝は、第2端板のキーが嵌合される部分に加えて、第2端板のキーが通過する部分が必要になるが、シャフトの中径部に小径部側に開口する軸側キー溝を形成する場合、軸側キー溝は、第2端板のキーが嵌合される部分のみを有していればよい。よって、シャフトの軸方向においてシャフトに形成する軸側キー溝の長さを短くでき、軸側キー溝を形成するためのコストを下げることができる。
【0019】
また、上記回転電機について、前記端板は、前記シャフトの軸方向において前記ロータコアとは反対側に向けて凸形状をなすビードを有するのが好ましい。
これによれば、ビードにより、端板の強度が高くなる。よって、電磁鋼板のめくれをより抑制できる。
【0020】
また、上記回転電機について、前記シャフトの径方向において、前記ロータコアの外側に間隔を空けて配置されたステータコアを有するステータを備え、前記シャフトの軸方向における前記ロータコアの寸法は、前記シャフトの軸方向における前記ステータコアの寸法よりも長いのが好ましい。
【0021】
シャフトの軸方向におけるロータコアの寸法が、シャフトの軸方向におけるステータコアの寸法よりも短い場合、シャフトの軸方向の両端に位置する電磁鋼板は、ステータコアからの引力を受けてロータコアから離れる方向にめくれやすい。これに対し、ロータコアの寸法をステータコアの寸法よりも長くすることで、電磁鋼板がロータコアから受ける引力は小さくなる。よって、電磁鋼板のめくれをより抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電磁鋼板のめくれを抑制しつつ、端板を薄くできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】ロータ、第1端板、第2端板、及びリング部材の分解斜視図。
【
図4】シャフトと第2端板との組み付け状態を示す断面図。
【
図5】第1端板とリング部材との組み付け状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、回転電機を具体化した一実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。
図1に示すように、回転電機10は、磁石埋込式回転電機であって、シャフト11と、シャフト11と一体回転するロータ(回転子)12と、シャフト11の径方向においてロータ12の外側に所定の間隔を空けて配置されるステータ(固定子)13とを備える。ロータ12及びステータ13はそれぞれ円筒状である。
【0025】
図1及び
図3に示すように、シャフト11は、ロータ12が固定される小径部11aと、小径部11aよりも径の大きい中径部11bと、中径部11bよりも径の大きい大径部11cとを有する。シャフト11の軸方向において、小径部11a、中径部11b、大径部11cの順に並んで配置されている。大径部11cは、中径部11bに対してロータ12(小径部11a)とは反対側に位置する。シャフト11は、中径部11bと大径部11cとによって形成される段差部11dを有する。シャフト11の軸方向において、小径部11aが位置する側を一端側とし、大径部11cが位置する側を他端側とする。図示しないが、小径部11aにおける中径部11bとは反対側の端部、及び大径部11cにおける中径部11bとは反対側の端部は、軸受を介してハウジングに回転可能に支持されている。
【0026】
図3に示すように、シャフト11は、外周面に2つの軸側キー溝111を有する(
図3では、1つのみを図示)。各軸側キー溝111は、中径部11b及び大径部11cに形成されている。各軸側キー溝111は、中径部11bに形成された部分と大径部11cに形成された部分とがシャフト11の径方向に連通して形成されている。本実施形態では、2つの軸側キー溝111は、シャフト11の周方向において180度間隔を空けて配置されている。各軸側キー溝111は、シャフト11の軸方向の一端側に開口し、他端側は閉塞されている。
【0027】
図1に示すように、ステータ13は、円筒状のステータコア31と、ステータコア31に捲回されるコイル32とを備える。ステータコア31は、シャフト11の軸方向において、電磁鋼板33が複数枚(例えば数十枚)積層されることで構成されている。
図1及び
図2に示すように、ロータ12は、円筒状のロータコア21と、ロータコア21に埋め込まれた永久磁石22とを備える。ロータコア21は、シャフト11の軸方向において、電磁鋼板23が複数枚(例えば数十枚)積層されることで構成されている。シャフト11の軸方向においてロータコア21の両端に位置する電磁鋼板23のうち、一端に位置する電磁鋼板を第1電磁鋼板231とし、他端に位置する電磁鋼板を第2電磁鋼板232とする。シャフト11の軸方向におけるロータコア21の寸法LRは、シャフト11の軸方向におけるステータコア31の寸法LSよりも長い。
【0028】
図2に示すように、複数枚の電磁鋼板23は全て同一形状であり、円板状である。各電磁鋼板23は、厚みが約0.5mmの薄板である。各電磁鋼板23は、シャフト11が挿通される貫通孔23aを有する。貫通孔23aの径は、シャフト11の小径部11aの径とほぼ同じである。本実施形態では、シャフト11とロータコア21とは、焼嵌めによって固定されている。各電磁鋼板23には、6つの第1孔23b、及び6つの第2孔23cが形成されている。第1孔23bは、電磁鋼板23の径方向において第2孔23cよりも内側(貫通孔23a側)に位置する。6つの第1孔23b及び6つの第2孔23cはそれぞれ、電磁鋼板23の周方向において間隔を空けて配置されている。電磁鋼板23は、電磁鋼板23の材料である鋼の薄板をプレス加工により打ち抜くことで形成されている。
【0029】
複数の電磁鋼板23は、各電磁鋼板23の第1孔23b同士が連通するとともに第2孔23c同士が連通するように積層される。ロータコア21は、第1孔23bが連通して形成される第1埋込孔21aと、第2孔23cが連通して形成される第2埋込孔21bを有する。永久磁石22は、各第1埋込孔21a及び各第2埋込孔21bに埋め込まれている。本実施形態の回転電機10は、極数が「6」である。ロータ12は、第1埋込孔21a及び第2埋込孔21b内における永久磁石22を挟んで両側にフラックスバリア24を有する。
【0030】
図1及び
図2に示すように、回転電機10は、シャフト11の軸方向においてロータコア21の両側に配置される一対の円板状の端板を備える。一対の端板は、非磁性体(例えばアルミニウムやステンレス)からなる。各端板は、厚みが約2mmの薄板である。一対の端板のうち、シャフト11の軸方向の一端側に配置される端板を第1端板41とし、シャフト11の軸方向の他端側に配置される端板を第2端板42とする。第1端板41及び第2端板42の外径はそれぞれ、電磁鋼板23の外径とほぼ同じである。第1端板41において、ロータコア21の第1電磁鋼板231と対向する面を第1面41aとし、第1面41aとは反対側の面を第2面41bとする。第2端板42において、ロータコア21の第2電磁鋼板232と対向する面を第1面42aとし、第1面42aとは反対側の面を第2面42bとする。第1端板41及び第2端板42は、第1端板41及び第2端板42の材料である非磁性体の薄板をプレス加工により打ち抜くことで形成されている。
【0031】
第1端板41及び第2端板42には、シャフト11が挿通される貫通孔43がそれぞれ形成されている。第1端板41の貫通孔43の径は、シャフト11の小径部11aの径よりも大きく、第2端板42の貫通孔43の径は、シャフト11の中径部11bの径とほぼ同じである。第1端板41及び第2端板42は、貫通孔43の内周面から突出する2つのキー43aをそれぞれ有する。本実施形態では、第2端板42の2つのキー43aは、上述の2つの軸側キー溝111と対応するように、貫通孔43の周方向において180度間隔を置いて配置されている。
【0032】
図4に示すように、第2端板42は、貫通孔43にシャフト11の中径部11bが挿通されるとともに、各キー43aがシャフト11の各軸側キー溝111に嵌合されることで、シャフト11に固定されている。シャフト11の軸方向において、第2端板42の内周側部位は、ロータコア21の第2電磁鋼板232と、シャフト11の段差部11dとの間に挟まれている。
【0033】
図1に示すように、第1端板41及び第2端板42は、シャフト11の径方向における外側縁部に、シャフト11の軸方向においてロータコア21とは反対側に向けて突出する鍔部44をそれぞれ有する。各鍔部44は、第1端板41及び第2端板42の全周に亘って形成されている。本実施形態では、各鍔部44が第1端板41又は第2端板42から延びる方向は、シャフト11の軸方向と一致している。第1端板41の鍔部44の内周面の一部には、バランス調整パテ45が固定されている。バランス調整パテ45は、ロータ12のアンバランスを低減するために用いられる。
【0034】
第1端板41及び第2端板42はそれぞれ、第1面41a,42aからロータコア21に向けて突出する突出部46を有する。各突出部46は、ロータコア21に向けて凸となる弧状である。各突出部46は、第1端板41及び第2端板42の外側縁部(鍔部44)寄りであり、かつ鍔部44よりも径方向の内側の位置に配置されている。各突出部46は、第1端板41及び第2端板42の全周に亘って形成されている。
【0035】
第1端板41の突出部46の先端は、第1電磁鋼板231の外周側部位に線接触し、第2端板42の突出部46の先端は、第2電磁鋼板232の外周側部位に線接触している。第1電磁鋼板231及び第2電磁鋼板232の外周側部位は、第1電磁鋼板231及び第2電磁鋼板232においてめくれが発生しやすい部位である。つまり、各突出部46は、第1端板41及び第2端板42がシャフト11の軸方向においてロータコア21の両側に配置された際に、第1電磁鋼板231又は第2電磁鋼板232の外周側部位と接触するように第1端板41又は第2端板42に形成されている。
【0036】
第1端板41及び第2端板42はそれぞれ、シャフト11の軸方向においてロータコア21とは反対側に向けて凸形状をなす複数(本実施形態では8つ)のビード47を有する。複数のビード47は、第1端板41及び第2端板42の周方向に間隔を空けた状態で放射状に配置されている。
【0037】
鍔部44、突出部46、及びビード47は、非磁性体の薄板を打ち抜いて第1端板41及び第2端板42を形成する際に一体成形される。よって、鍔部44、突出部46、及びビード47は、第1端板41及び第2端板42の一部である。
【0038】
図1及び
図2に示すように、回転電機10は、シャフト11の軸方向において、第1端板41に対してロータコア21とは反対側に配置されるリング部材51を備える。第1端板41の内周側部位は、シャフト11の軸方向において、ロータコア21の第1電磁鋼板231とリング部材51との間に配置されている。
【0039】
リング部材51は、円筒状の筒部51aと、筒部51aにおける第1端板41側の端面から突出する円筒状の嵌合部51bとを有する。筒部51aの内周面と嵌合部51bの内周面は、シャフト11の軸方向に連続している。リング部材51の内径は、シャフト11の小径部11aの径とほぼ同じである。筒部51aの外径は、第1端板41の貫通孔43の径よりも大きく、嵌合部51bの外径は、第1端板41の貫通孔43の径とほぼ同じである。リング部材51は、嵌合部51bに2つのリング側キー溝52を有する。各リング側キー溝52は、嵌合部51bを径方向に貫通している。本実施形態では、2つのリング側キー溝52は、上述の第1端板41の2つのキー43aと対応するように、リング部材51の周方向において180度間隔を空けて配置されている。
【0040】
図5に示すように、リング部材51とシャフト11とは、焼嵌めによって固定され、リング部材51の嵌合部51bは、シャフト11の小径部11aの外周面と、第1端板41の貫通孔43の内周面との間に嵌合されている。このため、第1端板41の貫通孔43の内周面は、リング部材51の嵌合部51bの外周面と対向する。第1端板41の各キー43aは、リング部材51の各リング側キー溝52に嵌合されている。
【0041】
図6に示すように、第1端板41の内周側部位は、シャフト11の軸方向において第1電磁鋼板231とリング部材51の筒部51aとの間に位置する。第1端板41の内周側部位は、リング部材51により、ロータコア21に押しつけられている。このため、第1端板41の内周側部位の第2面41bは、リング部材51の筒部51aと密接し、第1端板41の内周側部位の第1面41aは、ロータコア21の第1電磁鋼板231と密接している。また、上述したように、第1端板41は第1面41aに突出部46を有し、突出部46の先端は、第1電磁鋼板231に線接触している。これにより、第1端板41の径方向において内周側部位と突出部46との間に位置する部分は、ロータコア21から離れる方向に凸となる弓なりに弾性変形し、突出部46の先端は、第1電磁鋼板231に圧接する。
【0042】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)第1端板41及び第2端板42は、外側縁部からロータコア21とは反対側に向けて突出する鍔部44を備える。このため、第1端板41及び第2端板42の外側縁部の断面係数が増大し、外側縁部の強度は、鍔部44が形成されていない場合と比較して高くなる。このため、第1端板41及び第2端板42を薄くしても、外側縁部の強度が低下することを抑制できる。よって、電磁鋼板23のめくれを抑制しつつ、第1端板41及び第2端板42を薄くできる。
【0043】
(2)第1端板41は、製造時の加工精度が低い場合や、材料の特性によってスプリングバックが発生した場合に反ってしまうことがある。第1端板41が反っている場合、第1端板41に突出部46が形成されていないと、第1端板41の外周側部位が第1電磁鋼板231に接触せず、第1端板41によって第1電磁鋼板231のめくれを十分に押さえられないことがある。これに対し、本実施形態では、第1端板41の外側縁部寄りにロータコア21側に突出する突出部46が形成されているため、突出部46により第1電磁鋼板231の外周側部位を押さえやすくなる。よって、第1端板41が反っていても、第1電磁鋼板231のめくれを抑制できる。第2端板42の突出部46についても同様の効果が得られる。
【0044】
(3)突出部46は、第1端板41が成形されることにより形成されている。このため、突出部46が第1端板41と別部材である場合と比較して、回転電機10の部品点数を減らすことができる。また、突出部46は、非磁性の薄板を打ち抜いて第1端板41を形成する際に一体成形されるため、第1端板41の製造工程を増加させない。第2端板42の突出部46についても同様の効果が得られる。
【0045】
(4)回転電機10は、シャフト11に圧入されたリング部材51を備える。第1端板41の内周側部位は、シャフト11の軸方向において、ロータコア21とリング部材51との間に配置されるとともに、ロータコア21及びリング部材51と密接している。このため、第1端板41の内周側部位を補強できる。また、リング部材51により、第1端板41の内周側部位をロータコア21に押しつけることができるため、電磁鋼板23の内周側部位のめくれを抑制できる。また、リング部材51により、第1端板41の内周側部位をロータコア21に押しつけると、第1端板41の突出部46はロータコア21に圧接する。その結果、第1端板41の径方向において内周側部位と外周側部位との間に位置する部分が、ロータコア21から離れる方向に弓なりに弾性変形することで、突出部46が電磁鋼板23の外周側部位を押さえる力は増大する。よって、電磁鋼板23のめくれをより抑制できる。
【0046】
(5)第1端板41は、シャフト11が貫通される貫通孔43の内周面から突出するキー43aを有する。リング部材51は、嵌合部51bにリング側キー溝52を有する。第1端板41のキー43aは、リング部材51のリング側キー溝52に嵌合される。このため、シャフト11に圧入されたリング部材を介して、シャフト11に対する第1端板41の回転を規制できる。
【0047】
シャフト11に対する第1端板41の回転を規制する方法としては、例えば、シャフト11にキー溝を形成し、第1端板41のキー43aをシャフト11のキー溝に嵌合する方法も考えられるが、シャフト11にキー溝を形成するためのコストは、リング部材51にリング側キー溝52を形成するためのコストよりも高い。よって、本実施形態のように、リング部材51にリング側キー溝52を形成することで、回転電機10の製造コストを下げることができる。
【0048】
(6)シャフト11は、第1端板41が挿通される小径部11aと、第2端板42が挿通されるとともに小径部11aよりも径の大きい中径部11bと、中径部11bよりも径の大きい大径部11cと、中径部11bと大径部11cとによって形成される段差部11dとを有する。第2端板42は、ロータコア21の第2電磁鋼板232と、シャフト11の段差部11dとの間に挟まれる。このため、シャフト11の軸方向において、シャフト11の径を変更するだけで、シャフト11に対する第2端板42の移動を規制できる。
【0049】
(7)第2端板42は、貫通孔43の内周面から突出するキー43aを有する。シャフト11は、中径部11bの外周面に形成されるとともに小径部11a側に開口する軸側キー溝111を有する。第2端板42のキー43aは、シャフト11の軸側キー溝111に嵌合されている。このため、シャフト11に対する第2端板42の回転を規制できる。
【0050】
また、シャフト11の径が一定の場合、軸側キー溝111は、第2端板42のキー43aが嵌合される部分に加えて、第2端板42のキー43aが通過する部分が必要になるが、本実施形態のように、シャフト11の中径部11bに小径部11a側に開口する軸側キー溝111を形成する場合、軸側キー溝111は、第2端板42のキー43aが嵌合される部分のみを有していればよい。よって、シャフト11の軸方向においてシャフト11に形成する軸側キー溝111の長さを短くでき、軸側キー溝111を形成するためのコストを低くできる。
【0051】
(8)第1端板41及び第2端板42は、シャフト11の軸方向においてロータコア21とは反対側に凸形状をなすビード47を有する。このため、第1端板41及び第2端板42の強度が高くなる。よって、電磁鋼板23のめくれをより抑制できる。
【0052】
(9)シャフト11の軸方向におけるロータコア21の寸法LRが、シャフト11の軸方向におけるステータコア31の寸法LSよりも短い場合、第1電磁鋼板231及び第2電磁鋼板232は、ステータコア31からの引力を受けることでロータコア21から離れる方向にめくれやすい。これに対し、本実施形態のように、シャフト11の軸方向におけるロータコア21の寸法LRを、シャフト11の軸方向におけるステータコア31の寸法LSよりも長くすることで、第1電磁鋼板231及び第2電磁鋼板232がステータコア31から受ける引力は小さくなる。よって、第1電磁鋼板231及び第2電磁鋼板232のめくれをより抑制できる。
【0053】
(10)鍔部44の内周面には、バランス調整パテ45が固定されている。このため、ロータ12のバランスを調整できる。また、バランス調整パテ45には、ロータ12の回転時に遠心力が働くが、鍔部44の内周面に固定されていることにより、バランス調整パテ45がシャフト11の径方向外側に飛散することを抑制できる。
【0054】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ シャフト11の径は、軸方向において一定の径でもよい。この場合、軸側キー溝111は、第2端板42のキー43aが嵌合される部分に加えて、第2端板42のキー43aが通過する部分を有する必要がある。
【0055】
○ ロータコア21を構成する電磁鋼板23とシャフト11とは、キーとキー溝の関係によって固定されていてもよい。
○ シャフト11の軸方向におけるロータコア21の寸法LRは、シャフト11の軸方向におけるステータコア31の寸法LSと同じでもよいし、短くてもよい。
【0056】
○ 鍔部44は、第1端板41の全周に亘って形成されていなくてもよい。同様に、鍔部44は、第2端板42の全周に亘って形成されていなくてもよい。鍔部44は、例えば、第1端板41及び第2端板42の周方向において等間隔に複数配置されていてもよい。ただし、ロータ12のバランスや電磁鋼板23のめくれの抑制の観点から、鍔部44は、第1端板41又は第2端板42の全周に亘って形成されているのが好ましい。
【0057】
○ 第1端板41の鍔部44の形状は、シャフト11の軸方向においてロータコア21から離れる方向に突出する形状であれば適宜変更してよい。同様に、第2端板42の鍔部44の形状は、シャフト11の軸方向においてロータコア21から離れる方向に突出する形状であれば適宜変更してよい。例えば、
図7に示すように、鍔部44は、シャフト11の軸方向に対して、シャフト11から離れるように傾斜した形状でもよい。
【0058】
○ ロータ12のバランスが良好である場合、バランス調整パテ45を省略してもよい。また、第1端板41及び第2端板42においてバランス調整パテ45が固定される位置や量は、ロータ12のバランスに応じて適宜変更してよい。
【0059】
○ 突出部46は、第1端板41の全周に亘って形成されていなくてもよい。同様に、突出部46は、第2端板42の全周に亘って形成されていなくてもよい。突出部46は、例えば、第1端板41及び第2端板42の周方向において等間隔に複数配置されていてもよい。ただし、ロータ12のバランスや電磁鋼板23のめくれの抑制の観点から、突出部46は、第1端板41又は第2端板42の全周に亘って形成されているのが好ましい。
【0060】
○ 第1端板41において、突出部46を省略してもよい。この場合、第1端板41の反りは、第1電磁鋼板231の外周側部位のめくれを抑制できる程度であれば許容される。同様に、第2端板42において、突出部46を省略してもよい。この場合、第2端板42の反りは、第2電磁鋼板232の外周側部位のめくれを抑制できる程度であれば許容される。
【0061】
○
図8に示すように、突出部46は、第1端板41と別部材であってもよい。この場合、突出部46は、第1端板41の第1面41aの外周側部位に固定される。よって、第1端板41の突出部46は、第1電磁鋼板231において、めくれの発生しやすい外周側部位に面接触する。同様に、突出部46は、第2端板42と別部材であってもよい。この場合、突出部46は、第2端板42の第1面42aの外周側部位に固定される。よって、第2端板42の突出部46は、第2電磁鋼板232において、めくれの発生しやすい外周側部位に面接触する。
【0062】
○ 第1端板41において、ビード47を省略してもよいし、ビード47の形状や数、配置を適宜変更してもよい。同様に、第2端板42において、ビード47を省略してもよいし、ビード47の形状や数、配置を適宜変更してもよい。
【0063】
○ 第1端板41とシャフト11とは、第1端板41の貫通孔43をシャフト11に圧入することで固定されていてもよい。この場合、リング部材51を省略できる。同様に、第2端板42とシャフト11とは、第2端板42の貫通孔43をシャフト11に圧入することで固定されていてもよい。この場合、シャフト11の径は軸方向において一定であってもよい。
【0064】
○ リング部材51の代わりにボルトを用いて、第1端板41の内周側部位をロータコア21と密接させてもよい。
○ リング部材51とシャフト11とは、キーとキー溝の関係によって固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…回転電機、11…シャフト、11a…小径部、11b…中径部、11c…大径部、11d…段差部、111…軸側キー溝、12…ロータ、13…ステータ、21…ロータコア、23…電磁鋼板、31…ステータコア、41…第1端板、42…第2端板、43…貫通孔、43a…キー、44…鍔部、46…突出部、47…ビード、51…リング部材、51a…筒部、51b…嵌合部、52…リング側キー溝、LR,LS…寸法。