(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】空気調和機の室内機
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
F24F1/0007 401D
(21)【出願番号】P 2018193201
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002653
【氏名又は名称】弁理士法人アズテックIP
(72)【発明者】
【氏名】山本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 充央
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】大林 寛明
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129951(JP,A)
【文献】特開2017-026256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹出口が下向きとなる第1回転位置と前記吹出口が前方斜め下向きとなる第2回転位置の間で回転するサイドファンユニットが室内機本体の左側面と右側面の少なくとも一方の側面に取り付けられた空気調和機の室内機であって、
前記サイドファンユニットは、前記室内機本体の前記側面に回転できるように取り付けられ、内部に設けられたシロッコファンにより側面に形成された吸込口から吸い込んだ空気を下面に形成された前記吹出口から吹き出し、
前記シロッコファンの回転軸P1と前記サイドファンユニットの上面との間の距離をY1とし、前記サイドファンユニットの前記室内機本体の前記側面に対する回転軸P2と前記サイドファンユニットの前記上面との間の距離をY2としたとき、Y1<Y2に設定されていることを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機の室内機において、
前記サイドファンユニットの前面と前記回転軸P1との間の距離をX1とし、前記サイドファンユニットの前記前面と前記回転軸P2との間の距離をX2としたとき、X1<X2に設定されていることを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気調和機の室内機において、
前記サイドファンユニットは、前記室内機本体の前面から背面の方向に所定距離だけ後退した位置に取り付けられていることを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の空気調和機の室内機において、
前記サイドファンユニットは前記室内機本体の前記側面に形成され前面が開放された切欠形状部の側面に回転可能に取りけられ、前記サイドファンユニットの背面は後方に突出する凸形に湾曲した形状に形成され、前記切欠形状部の壁面が前記サイドファンユニットの背面の回転軌跡に沿って凹型に湾曲した形状に生成されていることを特徴とする空気調和機の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内機本体の側面にサイドファンユニットが取り付けられた空気調和機の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内機には、その室内機本体の左右の両側面にそれぞれサイドファンユニットを取り付けたものが提案されている(特許文献1)。これら左右のサイドファンユニットは、室内機本体から吹き出される熱交換された気流とは別に、熱交換されていない気流を生成するためのものである。このサイドファンユニットで生成される気流は、サイドファンユニットに内蔵されたシロッコファンによって、サイドファンユニットの吸込口から吸い込まれた室内空気がそのまま吹出口から吹き出される気流である。このとき、吹出口が下向きや前向きになるようにサイドファンユニットの吹出口の位置を上下方向に変化させれば、その気流の方向を上下方向に変化させることができる。また、吹出口に左右風向板を取り付ければ、その気流の方向を左右方向に変化させることできる。
【0003】
よって、この室内機では、サイドファンユニットの吹出口から吹き出される気流によって、室内機本体の吹出口から吹き出される熱交換された気流を制御することができる。例えば、冷房運転時には、室内機本体の吹出口から吹き出される冷たい気流と左右のサイドファンユニットの吹出口から吹き出される気流を混合して、冷たい風が直接人体に当たらないようにすることができる。また、暖房運転時には、室内機本体の吹出口から吹き出される暖かい気流を左右のサイドファンユニットの吹出口から吹き出される気流で上から押し広げることによって、部屋の隅々まで温めることができる。
【0004】
ところで、サイドファンユニットには、吸込口を有するサイドファンユニット本体とそのサイドファンユニット本体の吸込口を覆うファンユニット用フィルタを備えているものがある(特許文献2)。そして、このサイドファンユニットを室内機本体の側面に回転可能に取り付ける際に、そのサイドファンユニットの回転軸とサイドファンユニット内のシロッコファンの回転軸を一致させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-070794号公報
【文献】特開2014-149114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように、サイドファンユニットの回転軸とサイドファンユニット内のシロッコファンの回転軸を一致させると、サイドファンユニットを回転させる際に、そのサイドファンユニットが室内機本体の上面から大きく突出する場合があり、室内機の外観が悪い。
【0007】
本発明の目的は、サイドファンユニットを回転させる際に、サイドファンユニットが室内機本体の上面から大きく突出しないようにして、室内機の外観を良くした室内機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明の空気調和機の室内機は、吹出口が下向きとなる第1回転位置と前記吹出口が前方斜め下向きとなる第2回転位置の間で回転するサイドファンユニットが室内機本体の左側面と右側面の少なくとも一方の側面に取り付けられた空気調和機の室内機であって、前記サイドファンユニットは、前記室内機本体の前記側面に回転できるように取り付けられ、内部に設けられたシロッコファンにより側面に形成された吸込口から吸い込んだ空気を下面に形成された前記吹出口から吹き出し、前記シロッコファンの回転軸P1と前記サイドファンユニットの上面との間の距離をY1とし、前記サイドファンユニットの前記室内機本体の前記側面に対する回転軸P2と前記サイドファンユニットの前記上面との間の距離をY2としたとき、Y1<Y2に設定されていることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の空気調和機の室内機において、前記サイドファンユニットの前面と前記回転軸P1との間の距離をX1とし、前記サイドファンユニットの前記前面と前記回転軸P2との間の距離をX2としたとき、X1<X2に設定されていることを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の空気調和機の室内機において、前記サイドファンユニットは、前記室内機本体の前面から背面の方向に所定距離だけ後退した位置に取り付けられていることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1、2又は3に記載の空気調和機の室内機において、前記サイドファンユニットは前記室内機本体の前記側面に形成され前面が開放された切欠形状部の側面に回転可能に取りけられ、前記サイドファンユニットの背面は後方に突出する凸形に湾曲した形状に形成され、前記切欠形状部の壁面が前記サイドファンユニットの背面の回転軌跡に沿って凹型に湾曲した形状に生成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイドファンユニットの室内機本体の側面に対する回転軸P1とサイドファンユニットの上面との間の距離をY1とし、シロッコファンの回転軸P2とサイドファンユニットの上面との間の距離をY2としたとき、Y1<Y2に設定されているので、サイドファンユニットが回転した第2回転位置になったときのサイドファンユニットの室内機本体からの上方への突出量が小さくなる。このため、室内機の外観が良くなる。また、室内機を室内の壁面に取り付ける際に、天井と室内機本体の上面の間の距離を小さくすることができ、壁面への室内機の取付高さの自由度が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の実施例の室内機の斜め右手前の上から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施例の室内機の斜め右手前の下から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施例の室内機の斜め右手前の下から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施例の室内機の斜め左手前前面から見た斜視図である。
【
図6】本発明の実施例の室内機の右サイドファンの分解斜視図である。
【
図7】本発明の実施例の室内機の右サイドファンの断面図である。
【
図8】右サイドファンの筐体の本体側側面部の裏面の前面図である。
【
図11】右サイドファンのフィルタ板のフィルタ部の部分拡大図である。
【
図12】フィルタ板の樹脂成形時の
図11のC1-C2線の断面図である。
【
図13】右サイドファンの第1回転位置での右側面図である。
【
図14】右サイドファンの第2回転位置での右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図5に本実施例の室内機100を示す。室内機100は室内機本体200と、その室内機本体200の左側面210に取り付けられる左サイドファンユニット300Lと、その室内機本体200の右側面220に取り付けられる右サイドファンユニット300Rとを備える。右サイドファンユニット300Rは左サイドファンユニット300Lと左右対称形状である。
【0012】
これら左サイドファンユニット300Lと右サイドファンユニット300Rは、前面となる前面カバー322が後記する第2回転軸P2を中心とするほぼ同じ曲率で前方に突出する湾曲形状に形成され、背面となる背面部315cが後記する第2回転軸P2を中心とするほぼ同じ曲率で後方に突出する湾曲形状に形成されている。また、上面となる上面部315bと下面となる下面部315dが互いに平行な平面形状に形成されている。なお、左サイドファンユニット300Lと右サイドファンユニット300Rはその一方のみが室内機本体200に取り付けられてもよい。
【0013】
室内機本体200は、左側面210に室内機本体200の前面230の側が開放された左切欠形状部211が形成されている。その左切欠形状部211の側面211aに左サイドファンユニット300Lが取り付けられている。また、右側面220に室内機本体200の前面230の側が開放された右切欠形状部221が形成されている。その右切欠形状部221の側面221aに右サイドファンユニット300Rが取り付けられている。
【0014】
また、室内機本体200の左切欠形状部211の奥側の壁面211bは、左サイドファンユニット300Lの背面となる後記する背面部315cの湾曲形状に沿った凹形状に湾曲している。右切欠形状部221の奥側の壁面221bも、右サイドファンユニット300Rの背面となる後記する背面部315cの湾曲形状に沿った凹形状に湾曲している。
【0015】
また、室内機本体200の前面230に上方向に回転可能な前面パネル231が取り付けられている。上面240には複数の四角形状の室内機本体吸込口241が形成されている。さらに、室内機本体200の下面250に横長形状の室内機本体吹出口251が形成されている。その室内機本体吹出口251には上下風向板252が取り付けられている。260は前面230と反対側の背面である。なお、室内機本体200の内部構造は本発明の説明に直接関係しないため説明を省略する。
【0016】
そして、左サイドファンユニット300Lと右サイドファンユニット300Rは、その下面部315dに設けられた吹出口316が、室内機本体200の吹出口251が向く方向と同じ方向である下向きの
図1~
図3に示す第1回転位置と、その吹出口316が、第1回転位置から30度程度前方に回転した、室内機本体200の前面230が向く方向と同じ方向である前方の斜め下向きとなる
図4、
図5に示す第2回転位置との間で回転するように、室内機本体200に取り付けられている。第1回転位置は左サイドファンユニット300Lと右サイドファンユニット300Rが動作を停止しているときの標準的な位置となる停止位置でもある。
【0017】
第1回転位置では、左サイドファンユニット300Lと右サイドファンユニット300Rのフィルタ板320の前面カバー322が、室内機本体200の前面パネル231と同じ前面を向き、且つ、
図1に示すように、室内機本体200の前面230から背面260の方向に距離L1だけ離れ背面260の側に凹んでいる。また、第1回転位置では、左サイドファンユニット300Lと右サイドファンユニット300Rの上面となる上面部315bは、室内機本体200の上面240と同一平面となり、下面となる下面部315dは、室内機本体200の下面250と同一平面となっている。
【0018】
このように、本実施例の室内機100は、左サイドファンユニット300Lと右サイドファンユニット300Rの前面カバー322が、室内機本体200の前面230から背面260の方向に距離L1だけ離れ背面260の側に凹んで取り付けられているので、その室内機100を前面から見た場合に、室内機100の全体の左右方向の幅が小さく見え、外観が向上する。また、前面パネル231はその右側の横端321aが横方向に突出するので、その横端321aの一部を、その前面パネル231を前方に引き起こすための手掛部231bとすることができる。この手掛部231bは前面から見えないので、この面でも外観が向上する。前面パネル231の左側の横端についても同様である。
【0019】
左サイドファンユニット300Lと右サイドファンユニット300Rは、それぞれ、サイドファン本体310の側面にフィルタ板320を組み込んだものである。そして、フィルタ板320に形成された後記する多数の第1吸込孔321eから室内の空気を吸込み、サイドファン本体310の後記する筐体313の下面315dの吹出口316からその吸い込んだ空気を室内に吹き出す。吹出口316の一部には左右風向板317が取り付けられ、この左右風向板317によって吹出方向を左右方向に偏向することが可能となっている
【0020】
次に、サイドファンユニット300Rを代表して
図6にその分解斜視図を示し、
図7に断面図を示す。サイドファン本体310は、モータ311及びそのモータ311によって回転するシロッコファン312が組み込まれた筐体313と、フィルタ板320を取り外した際に指等がシロッコファン312に当たることを防止するための保護板314と、サイドファン本体310を組み込むためのホルダ315を有する。
【0021】
筐体313は、その前面部313aが、上部313a1から下部313a2にかけて中央部313a3が前方(
図6の左方向)に突出するように湾曲形状に形成されている。また、室内機本体200に対面する本体側側面部313bにモータ311が取り付けられている。外観面となる側面部313cに吸込口313c1が形成されている。そして、シロッコファン312の周囲から下面部313dの吹出口316に至る部分に導風路313eが形成されている。吹出口316には左右風向板317が組み込まれている。313fは上面部、313gは背面部である。
【0022】
保護板314は、筐体313の側面部313cの吸込口313c1に指が差し込まれないように、その吸込口313c1を覆っている。この保護板314には多数の第2吸込孔314aが形成され、その保護板314の周囲は複数のネジB1によって筐体313の側面部313cに取り付けられている。
【0023】
ホルダ315は、筐体313の側面部313cの外側の一部を覆う側面部315a、筐体313の上面部313fを覆う上面部315b、筐体313の背面部313gを覆う背面部315c、筐体313の下面部313dの吹出口313d1を除く部分を覆う下面部315dを有する。側面部315aは保護板314の第2吸込孔314aが露出するように、
図6の右側面視でコ字形状に形成されている。そして、側面部315aと筐体313の側面部313cと間には、フィルタ板320の挿入をガイドし保持するためのガイドスロット315eが形成されている。また、背面部315cの背面形状、つまりサイドファンユニット300Rの背面形状は、室内機本体200の右切欠形状部221の壁面221bの凹形の湾曲形状に対応する凸形の湾曲形状に形成されている。
【0024】
フィルタ板320は、サイドファン本体310のガイドスロット315eに挿入されるフィルタ部321と、そのフィルタ部321の前縁321aに一体成型された化粧パネルとしての前面カバー322とで形成されている。前面カバー322はフィルタ部321の前縁321aから、
図6において、サイドファン本体310の筐体313の前面部313aを覆うように、曲折して連続している。
【0025】
フィルタ部321には、上縁321b、後縁321c、下縁321dで囲まれた部分に、後記する網目状のフィルタシート323で覆われた多数の第1吸込孔321eが規則的に配列された配列部321fの全体が、円形になるように形成されている。前面カバー322には、サイドファン本体310の筐体313の前面部313aに嵌り込むように、上部322aから下部322bにかけて中央部322cが前方(
図6の左方向)に突出する凸型の湾曲形状に形成されている。また、この前面カバー322の右側面322dには、凹形状の手掛部322eが形成されている。
【0026】
図8に示すように、サイドファンユニット300Rのサイドファン本体310の筐体313の本体側側面部313bの外面313b3(つまり室内機本体200の右切欠形状部221の側面221aに対面する側)には、筐体313の前面部313aの側から上面313fの側にかけて第1装飾部313b1が形成されている。筐体313の背面313gの側から下面313dの側にかけては第2装飾部313b2が形成されている。つまり、これら第1装飾部313b1と第2装飾部313b2は、右サイドファンユニット300Rが前記した第1回転位置から第2回転位置に回転した際に室内機本体200の右側面220の右切欠形状部221と対面しなくなり露出する部分に形成されている。また、これら第1装飾部313b1と第2装飾部313b2は、筐体313の後記する回転中心、つまり右サイドファンユニット300Rの後記する回転軸P2を中心とする同心円の凹溝が放射方向に複数並ぶように形成された波紋形状である。
【0027】
よって、サイドファンユニット300Rが第1回転位置から第2回転位置に向けて回転すると、その回転開始から回転終了までの期間は、サイドファンユニット300Rのサイドファン本体310の筐体313の本体側側面部313bの裏面313b3の第1装飾部313b1が室内機本体200の上面240から露出し、第2装飾部313b2が室内機本体200の下面部250から露出するので、そこに装飾が全く無い場合と比較して、外観が向上する。特に、第1装飾部313b1と第2装飾部313b2は、右サイドファンユニット300Rの回転方向に沿った波紋形状に形成されているので、右サイドファンユニット300Rの回転動作に合致したイメージを想起しやすくなり、この面でも外観が向上する。
【0028】
また、サイドファンユニット300Rの筐体313の本体側側面部313bの裏面313b3において、第1装飾部313b1と第2装飾部313b2以外には波紋形状が形成されていない。筐体313の本体側側面部313bの全面に波紋形状を形成することもできるが、このようにすると、この筐体313を樹脂成形で形成する際の型抜きが困難となり、成形不良が発生しやすい。しかし、本実施例のように第1装飾部313b1と第2装飾部313b2のみを設けた場合は型抜きが容易となり、成形不良は発生しない。
【0029】
図6の点線で囲ったA部分の拡大図を
図9に示す。313c2は筐体313の側面部313cに形成した上横ガイドスロープである。この上横ガイドスロープ313c2は、ホルダ315の上面部315bに近い側面部315aの上先端部315a1の側から、
図9において筐体313の前面部313aに向けて、裏側面板313bの方向に近づくように傾斜した面となっている。これにより、ホルダ315のガイドスロット315eの上導入部315e1へのフィルタ板320のフィルタ部321の挿入路の横幅が広くなり、フィルタ板320のフィルタ部321bの上端部321c1の左右方向からの挿入が容易となっている。つまり、上横ガイドスロープ313c2は、フィルタ部321の後縁321cの上端部321c1の左右方向からの挿入をガイドする。
【0030】
図6の点線で囲ったB部分の拡大図を
図10に示す。313c3は筐体313の側面部313cに形成した下縦ガイドスロープである。この下縦ガイドスロープ313c3は、ホルダ315の下面部315dに近い側面部315aの下先端部315a2の側から、筐体313の前面部313aに向けて、
図10において下方向に向けて傾斜して伸びている。これにより、ホルダ315のガイドスロット315eの下導入部315e2へのフィルタ板320のフィルタ部321の挿入路の縦幅が広くなり、フィルタ板320のフィルタ部321bの下端部321c2の上下方向からの挿入が容易となっている。つまり、下縦ガイドスローパス13c3は、フィルタ部321の後縁321cの下端部321c2の上下方向からの挿入をガイドする。
【0031】
ここで、
図11、
図12を参照してフィルタ部321について詳しく説明する。
図11は多数の第1吸込孔321eが規則的に配列された配列部321fの輪郭を形成するよう配列部321fの周囲に設けられる周縁部321f1の形状を示す図である。配列部321fの周縁部321f1の第1吸込孔321eの開口面積が、配列部321fの周縁部321f1以外の第1吸込孔321eの開口面積よりも小さくなっていて、周縁部321f1、つまり配列部321fの輪郭が目立たなくなり、外観が向上している。
【0032】
より詳しくは、配列321fの周縁部321f1以外の第1吸込孔321e1は開口直径が6mmと最大となっているが、周縁部321f1の内側321f11ではその開口直径が6mmよりも小さくなり、外側321f12に至るほどその開口直径が順次小さくなっている。つまり、
図11に示す第1吸込孔321e1、321e2、321e3、321e4、321e5の順に開口面積が小さくなり、最外周の第1吸込孔321e5の開口直径は例えば2mm程度となっている。これにより、周縁部321f1にグラデーションが形成されている。よって、すべての第1吸込孔321eを同じ開口面積の小孔で形成する場合と比べて、配列部321fの輪郭を形成する周縁部321fが目立たなくなり、外観が向上している。
【0033】
また、最も外側の第1吸込孔321e5の周方向の並び又はその周辺には、樹脂成型時にフィルタシート323を固定するための固定ピンの抜孔321gが形成されている。この抜孔321gの開口直径は例えば1mm程度であり、第1吸込孔321e5の開口直径と同程度となっていて、目立たなくなくなるため、この面でも外観が向上している。
【0034】
フィルタ板320は樹脂で成形されているが、そのうちのフィルタ部321については、
図11のC1-C2ラインにおける断面図である
図12に示すように、上金型410と下金型420の間に、下金型420の固定ピン421で位置決めした網目状のフィルタシート323を介在させてから、上金型410と下金型420の間に樹脂を注入して形成する。固定ピン421は
図12では1個であるが、金型中ではフィルタシート323を張るために複数設けられている。このため、固定ピン321の跡が抜孔321gとなってフィルタ部321に露出している。
【0035】
さらに、サイドファン本体310の筐体313の吸込口313c1を覆う保護板314は筐体313にネジB1で取り付けられているが、そのネジB1はフィルタ板320のフィルタ部321の第1吸込孔321eの配列部321fの周縁部321f1によって覆われる。このため、ネジB1が目立ち難くなり、この面でも外観が向上している。
【0036】
右サイドファンユニット300Rの組み立ては、サイドファン本体310の筐体313に、シロッコファン311、モータ312、保護板314、ホルダ315、その他必要な部品を組み込んだ後に、
図6に示すように、フィルタ板320の後縁321cを先頭にして、そのフィルタ部310をサイドファン本体310のホルダ315のガイドスロット315eに、フィルタ板320の前面カバー322がサイドファン本体310の前面部313aを完全に覆うまで押し込む。
【0037】
このとき、フィルタ板320のフィルタ部321の後縁321cの下縁321dの側を、サイドファン本体310のガイドスロープ315eの下部315e2に挿入する際に、フィルタ板320の前面カバー322を下方向に傾けて、後縁321cの下端部321c2を、下縦ガイドスロープ313c3に載せることができる。
【0038】
このように、フィルタ板320のフィルタ部321の後縁321cの下縁321dを下縦ガイドスロープ313c3に載せる。そして、フィルタ板320のフィルタ部321の後縁321cの上端部321c1を、サイドファン本体310のガイドスロープ315eの上部315e1に挿入する。このとき、フィルタ板320の全体を、上横ガイドスロープ313c2に沿って、サイドファン本体310の前面部313aの側に傾けることができる。
【0039】
したがって、フィルタ板320のフィルタ部321をサイドファン310のホルダ315のガイドスロット315eに挿入する際に、そのガイドスロット315eに対するフィルタ板320のフィルタ部321の位置合わせが容易となり、フィルタ板320のフィルタ部321をホルダ315に差し込む操作が容易となる。
【0040】
以上のフィルタ板320のサイドファン本体310に対する挿入作業によって、フィルタ板320のフィルタ部321がサイドファン本体310の保護板314の正面に位置した状態に組み込まれる。そして、前記したようにこの右サイドファンユニット300Rは室内機本体200の右側面220の段部221に取り付けられる。
【0041】
このとき、サイドファン本体310の前面部313aはフィルタ板320の前面カバーによって覆われる。そして、フィルタ板320の前面カバー322の上部322aの後端322a1が、サイドファン本体310の筐体313の上面部315bの前端315b1に突き当る。また、フィルタ板320の前面カバー322の下部322bの後端322b1が、サイドファン本体310の筐体313の下面部315dの前端315d1に突き当る。
【0042】
よって、後端322a1と前端315b1が突き当る合わせ目のラインD1は、
図1、
図2に示すように、右サイドファンユニット300Rの上面や側面には露出するが前面には露出しない。また、後端322b1と前端315d1が突き当る合わせ目のラインラインD2も、
図3~
図5に示すように、右サイドファンユニット300Rの下面や側面には露出するが前面には露出しない。したがって、右サイドファンユニット300Rにおける室内機100の前面230と同じ側には、フィルタ板320の前面カバー322のみが現れ、ラインD1、D2が現れないので、外観が向上する。
【0043】
ただ、ラインD2はサイドファンユニット300Rの下面にあるので、室内機100を下から見上げた際に見えるが、このラインD2は室内機本体200の前面230と下面250の間の境界の稜線としてのラインD3と並んでいるので、違和感は生じない。
【0044】
また、サイドファンユニット300Rが前記した第1回転位置と第2回転位置との間で回転するときは、サイドファンユニット300Rのホルダ315の湾曲した背面部315cが、室内機本体200の右側面220の右切欠形状部221の湾曲した壁面221bに沿って回転する。よって、サイドファンユニット300Rの円弧のイメージを保つことができ、外観が向上する。
【0045】
右サイドファンユニット300Rのサイドファン本体310からフィルタ板320を取り外す際は、フィルタ板320の前面カバー322の右側面322dに形成された凹形状の手掛部322eに指を引掛けてから前方(
図6の左方向)に引けば、フィルタ板320を引き出すことができる。これにより、フィルタ板320のみの清掃や交換ができる。
【0046】
右サイドファンユニット300Rのシロッコファン312の回転の中心となるシロッコファン回転軸P1と、右サイドファンユニット300Rの室内機本体200の右側面220の右切欠形状部221に対する回転の中心となるサイドファン回転軸P2とは、一致していない。すなわち、
図13に示すように、右サイドファンユニット300Rのフィルタ板320の前面カバー322から、つまり右サイドファンユニット300Rの前面からシロッコファン回転軸P1までの距離X1と、同じ前面からサイドファン回転軸P2までの距離X2は、X1<X2に設定され、シロッコファン回転軸P1がサイドファン回転軸P2よりも前面カバー222に近づいている。
【0047】
また、サイドファン本体310の筐体313のホルダ315の上面部315bから、つまり右サイドファンユニット300Rの上面からシロッコファン回転軸P1までの距離Y1と、同じ上面からサイドファン回転軸P2までの距離Y2は、Y1<Y2に設定され、サイドファン回転軸P2がシロッコファン回転軸P1よりも上面部315bから離れている。
【0048】
図13に示すように、右サイドファンユニット300Rが前記した第1回転位置にあるときから、
図14に示すように、サイドファン回転軸P2を中心にして前記した第2回転位置に回転したときは、フィルタ板320の前面カバー322の上部322aの上角部322a2が上方向に突出する。しかし、サイドファン回転軸P2がシロッコファン回転軸P1と同じ位置にある場合に比べて、上角部322a2の上方向への室内機本体200の上面240からの突出距離L2が小さくなる。このため、上角部322a2の突出量が少なくなることで、室内機100の外観が向上する。また、角部322a2の突出量が少なくなることで、室内機100を室内の壁面500に取り付ける際に、室内機200を天井600に近づけることができる。すなわち、室内機本体200の上面240の間の距離L3を小さくすることができるので、壁面500への室内機100の取付高さの自由度が大きくなる。
【0049】
さらに、シロッコファン回転軸P1がサイドファン回転軸P2よりも筐体313の前面部313aの方向にシフトしているので、
図7に示すように、筐体313の背面部313gとシロッコファン回転軸P1の間の距離L4が、シロッコファン回転軸P1がサイドファン回転軸P2に一致している場合と比較して、大きくなる。このため、筐体313の背面部313gの内側に配置される導風路313eを
図7において左右方向に拡大できるので、その導風路313eの断面積を大きくすることができ、シロッコファン312の送風抵抗を小さくできる。
【符号の説明】
【0050】
100:室内機
200:室内機本体、210:左側面、211:左切欠形状部、211a:側面、211b:壁面、220:右側面、221:右切欠形状部、221a:側面、221b:壁面、230:前面、231:前面パネル、321a:右端、321b:手掛部、240:上面、241:室内機本体吸込口、250:下面、251:室内機本体吹出口、252:上下風向板、260:背面
300L:左サイドファンユニット、300R:右サイドファンユニット
310:サイドファン本体
311:モータ
312:シロッコファン
313:筐体、313a:前面部、313a1:上部、313a2:下部、313a3:中央部、313b:本体側側面部、313b1:第1装飾部、313b2:第2装飾部、313b3:外面、313c:側面部、313c1:吸込口、313c2:上横ガイドスロープ、313c3:下縦ガイドスロープ、313d:下面部、313f:上面部、313g:背面部
314:保護板、314a:第2吸込孔
315:ホルダ、315a:側面部、315a1:上先端部、315a2:下先端部、315b:上面部、315c:背面部、315d:下面部、315e:ガイドスロット、315e1:上導入部、315e2:下導入部
316:吹出口
317:左右風向板
320:フィルタ板
321:フィルタ部、321a:前縁、321b:上縁、321c:後縁、321d:下縁、321e:第1吸込孔、321f:配列部、321f1:周縁部、321g:抜孔
322:前面カバー、322a:上部、322a1:上角部、322b:下部、322c:中央部、322d:右側面、322e:手掛部
323:フィルタシート
410:上金型、420:下金型、421:固定ピン
500:壁面、600:天井
P1:シロッコファン回転軸、P2:サイドファン回転軸