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  • 特許-外壁耐震性能展示装置 図1
  • 特許-外壁耐震性能展示装置 図2
  • 特許-外壁耐震性能展示装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】外壁耐震性能展示装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20220712BHJP
   G09B 25/04 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G09B9/00 K
G09B25/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018202712
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020071246
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】特許業務法人プロウィン特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上井 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】梶 彩子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕也
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-266345(JP,A)
【文献】特開2008-297848(JP,A)
【文献】特開2003-232091(JP,A)
【文献】特開2009-151199(JP,A)
【文献】特開2008-107630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 25/00-25/08
G09B 9/00
E04G 23/00-23/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に対する角度が可変に支持された可動支柱と、
前記可動支柱に固定された取付金具と、
前記取付金具により保持された外壁パネルと、
前記可動支柱に取り付けられたハンドルを備えることを特徴とする外壁耐震性能展示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁耐震性能展示装置であって、
複数の前記外壁パネルが間隙を設けて並列され、前記間隙に目地シーリングが施されていることを特徴とする外壁耐震性能展示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の外壁耐震性能展示装置であって、
前記可動支柱および前記外壁パネルを収容するケースを有し、
前記ケースの正面には、前記可動支柱および前記外壁パネルの一部を視認可能な窓部が設けられていることを特徴とする外壁耐震性能展示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の外壁耐震性能展示装置であって、
前記ケースの側面には開口部が形成されており、前記開口部から前記ハンドルが外部に突出して設けられていることを特徴とする外壁耐震性能展示装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の外壁耐震性能展示装置であって、
前記窓部の中心は、前記床面から100~160cmの範囲であることを特徴とする外壁耐震性能展示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁耐震性能展示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅展示場では、実際の住宅を展示するだけではなく、住宅建築に用いられている技術を来場者に説明するための展示スペースを設ける場合がある。このような展示スペースで展示される技術としては、住宅基礎の構造や工法、住宅躯体の構造や工法、外壁の遮熱性能や防炎性能、外壁の耐震性能等が挙げられる。これらの技術のうち、外壁の耐震性能を効果的に展示するために、梁材に外壁パネルを取り付けたうえで梁材を動かし、梁材の変位によっても外壁パネルや目地材の破損が生じないことを視認させる装置が提案されている(例えば特許文献1~3等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-224053号公報
【文献】特開2002-221907号公報
【文献】特開2008-107630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、引用文献1~3に記載された技術は、軽量鉄骨や重量鉄骨を用いた工業化住宅の技術を展示するものであり、電動のモータや制御装置を用いて梁材を変異させるため展示装置が大型化するという問題があった。また、モータや制御装置に電力を供給するための電源付近に展示装置を設置する必要があり、設置場所の自由度が低くなるという問題もあった。また、制御装置のスイッチ操作で展示装置を動作させるため、来場者は展示装置の動作を観察するだけで展示内容を体験することで得られる印象を強めることが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、小型化が容易で設置自由度と印象づけを向上できる外壁耐震性能展示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の外壁耐震性能展示装置は、床面に対する角度が可変に支持された可動支柱と、前記可動支柱に固定された取付金具と、前記取付金具により保持された外壁パネルと、前記可動支柱に取り付けられたハンドルを備えることを特徴とする。
【0007】
このような本発明の外壁耐震性能展示装置では、来場者が自らハンドルを操作して可動支柱を揺動させ、可動支柱の変位時における外壁パネルと取付金具の状態を視認することができ、展示内容への寄与度が高まり来場者の印象を強めることができる。また、電動のモータや制御装置が不要なため、小型化を図るとともに設置自由度を向上させることができる。
【0008】
また本発明の一態様では、複数の前記外壁パネルが間隙を設けて並列され、前記間隙に目地シーリングが施されている。
【0009】
また本発明の一態様では、前記可動支柱および前記外壁パネルを収容するケースを有し、前記ケースの正面には、前記可動支柱および前記外壁パネルの一部を視認可能な窓部が設けられている。
【0010】
また本発明の一態様では、前記ケースの側面には開口部が形成されており、前記開口部から前記ハンドルが外部に突出して設けられている。
【0011】
また本発明の一態様では、前記窓部の中心は、前記床面から100~160cmの範囲である。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、小型化が容易で設置自由度と印象づけを向上できる外壁耐震性能展示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明における外壁耐震性能展示装置100の構造を示す模式図であり、図1(a)は上面図であり、図1(b)は正面図である。
図2】ケース10内部に収容されている揺動展示部20の構造を示す模式正面図である。
図3】ケース10内部に収容されている揺動展示部20の構造を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本発明における外壁耐震性能展示装置100の構造を示す模式図であり、図1(a)は上面図であり、図1(b)は正面図である。図1(a)(b)に示すように、外壁耐震性能展示装置100は、ケース10内に揺動展示部20が収容されている。
【0015】
ケース10は、正面11と、側面12,13と、窓部14、ストッパー15を備えた略箱状の部材である。ケース10は、窓部14を介して揺動展示部20の一部を外部から視認可能にするとともに、一部を遮蔽して内部に収容する。ケース10を構成する材料は特に限定されず、樹脂や金属、木材等の公知の材料を用いることができる。図1(a)(b)では、ケース10の上部を開放した例を示しているが、天面を備えて内部空間に埃が入ることを防止し、安全性を高めるとしてもよい。ケース10の大きさは限定されないが、高さを約180~230cmの範囲とし、幅を約100~150cmの範囲とし、奥行きを約10~30cmの範囲とすることで、設置面積を小さくしつつ十分に展示内容を提示可能であり、来場者が操作することも容易である。
【0016】
正面11は、来場者の視認位置に対向して配置された板状部分であり、揺動展示部20の略全面を覆うように設けられている。正面11の幅方向で略中央には、来場者の視線と同程度の高さ位置に窓部14が設けられている。正面11に非透明な材料を用いる場合には、窓部14以外の領域では揺動展示部20の一部を隠蔽することができ、揺動展示部20のうち重要な部分のみを来場者に対して提示することができる。正面11に透明な材料を用い、正面11全体を窓部14として機能させる場合には、揺動展示部20の全領域を来場者に対して提示することができる。
【0017】
側面12,13は、正面11の両側に設けられて揺動展示部20の側方を遮蔽する板状部分である。一方の側面12には開口部(図示省略)が形成されており、開口部からハンドル16がケース10の外部に突出している。側面12,13を設けてハンドル16を突出させることで、来場者は揺動展示部20のハンドル16のみに触れることができ、後述する揺動展示部20の可動部に手が触れることを防止して安全性を高めることができる。側面12,13の内側では、L字金具(図示省略)を用いて背後の壁面に固定し、ケース10の転倒を防止する。
【0018】
窓部14は、正面11に設けられた透明な領域であり、例えば樹脂やガラス等の板状部材で構成することができる。窓部14からはケース10の内部を視認可能であり、揺動展示部20のうち来場者に提示したい領域である外壁パネル21a~21dと、可動支柱22と、取付金具22aと、目地シーリング23の一部を外部に提示する。窓部14の中心位置は限定されないが、床面から約100~160cmの範囲とすることで、来場者が良好に窓部14を介してケース10の内部に展示された揺動展示部20を視認できる。また、窓部14のサイズも特に限定されないが、約70~90cmの範囲とすることで、来場者が内部を視認しやすくなる。
【0019】
ストッパー15は、側面12,13の内側に設けられた衝撃吸収部材であり、例えば板状ゴムやバネ等の弾性体を用いることができる。ストッパー15は、少なくとも可動支柱22の上端部と同程度の高さに設けておくことが好ましい。ストッパー15を設けることで、揺動展示部20を横方向に変位させた場合にも、揺動展示部20が側面12,13に衝突することを防止する。
【0020】
ハンドル16は、揺動展示部20に取り付けられ、側面12に設けられた開口部から外部に取り出される部材である。ハンドル16を取り付ける位置は限定されないが、後述する可動支柱22の側面12に最も近い位置に取り付けることが好ましい。図1ではハンドル16として略コの字形状に折り曲げられた棒状部材を示しているが、来場者が把持して揺動展示部20を動かすことができれば、形状や構造は限定されない。ハンドル16を設ける位置は特に限定されないが、床面から約100~160cmの範囲とすることで、来場者が操作しやすくなる。また、ハンドル16の中心高さを窓部14の中心高さと略同程度とすることで、来場者の操作と揺動展示部20の動作との連動性が高まり、展示内容をより印象づけることができる。
【0021】
外壁パネル21a~21dは、実際に住宅の外壁に用いられるパネル材であり、それぞれが可動支柱22に取付金具22aによって取り付けられている。図示したように外壁パネル21a~21dはそれぞれ隣り合うように所定の間隙を設けて並列に配置されており、間隙には目地シーリング23が施されている。
【0022】
可動支柱22は、床面に対する角度が可変に支持された板状部材であり、取付金具22aが固定されて外壁パネル21a~21dが取り付けられる。また、側面12の開口部と対応する位置にハンドル16が取り付けられている。
【0023】
取付金具22aは、可動支柱22に固定されて外壁パネル21a~21dを保持する部材である。図1(b)では外壁パネル21a~21dから露出した取付金具22aのみを示しているが、外壁パネル21a~21dの各々について上辺2箇所と下辺2箇所に設けられている。取付金具22aの具体的構造は限定されず、外壁パネル21a~21dと目地シーリング23の耐震性能を実現するための展示対象物を用いる。
【0024】
目地シーリング23は、実際に住宅の外壁に用いられるシーリング(コーキング)材であり、公知の材料と施工方法を用いて、外壁パネル21a~21d同士の間隙に充填されている。
【0025】
図1(b)では3本の可動支柱22が等間隔に設けられ、向かって左側に外壁パネル21a,21bを上下に並べ、右側に外壁パネル21c,21dを上下に並べ、4枚を2行2列に配列した例を示したが、枚数や配列方法は限定されない。
【0026】
次に図2,3を用いて、外壁耐震性能展示装置100の内部に収容される揺動展示部20の構造例について説明する。図2は、ケース10内部に収容されている揺動展示部20の構造を示す模式正面図である。図3は、ケース10内部に収容されている揺動展示部20の構造を示す模式側面図である。揺動展示部20は、下部が床面110上に設置され、上部が壁面120に固定されている。
【0027】
図3に示すように、各可動支柱22の上部には上部梁24が設けられており、上部梁24はスライド金具30で摺動可能に支持されている。また、各可動支柱22の下部には支点金具40が設けられている。可動支柱22の下端近傍には貫通孔25が形成されており、上端近傍には貫通孔26が形成されている。上部梁24にも、貫通孔26に対応する位置に貫通孔(図示省略)が形成されている。上部梁24は、図示しないボルト等の連結部材を貫通孔26に挿入することで、可動支柱22上端で回動可能に連結されている。
【0028】
図3中に部分拡大図で示したように、スライド金具30は、壁面固定部31と、フランジ部32と、L字部33と、挟持部34a,34bを備えている。壁面固定部31は、壁面120にアンカー等の固定部材を用いて固定される平板状部分である。フランジ部32は、床面110に略平行に配置された平板状部分である。L字部33は、壁面固定部31およびフランジ部32と一体に形成された断面L字形状の部分であり、フランジ部32を保持している。挟持部34a,34bは、フランジ部32に取り付けられて下方に鉛直に伸びる部材であり、上部梁24の厚みと略同程度の間隔をあけて対向して設けられている。
【0029】
上部梁24は、挟持部34a,34bの間に挟まれて配置されており、壁面120に対して垂直な方向への移動が規制されているが、壁面120に対して平行な方向への移動は許容されている。挟持部34a,34bは、単に円柱状の棒状部材であってもよいが、上部梁24の移動を円滑に行うために軸とローラーを備えて、回転可能なローラーが上部梁24と接触する構造であってもよい。
【0030】
支点金具40は、床面110に固定される平板状部分である床固定部41と、床固定部41から鉛直方向に立設された鉛直部42を備える略コの字形状の金具である。支点金具40の鉛直部42には、貫通孔25に対応した位置に貫通孔(図示省略)が形成されており、ボルト43を貫通孔25に挿入することで、可動支柱22は貫通孔25を中心として回転可能に支持されている。図3に示すように、可動支柱22の下端は床面110および床固定部41とは所定の間隔を隔てて軸支されている。
【0031】
次に、外壁耐震性能展示装置100の動作について図1~3を用いて説明する。来場者は、ケース10の側面12から外部に取り出されたハンドル16を把持し、窓部14からケース10内部を見ながら、揺動展示部20に対して左右方向に力を加える。可動支柱22は、下端が支点金具40で回転可能に軸支されるとともに、上端が上部梁24に回動可能に連結されているため、ハンドル16に左右方向の力が加わると床面110に対する角度が変化する。
【0032】
外壁耐震性能展示装置100では、可動支柱22の回動により揺動展示部20全体も左右方向に変位し、上部梁24および外壁パネル21a~21dも左右方向に変位する。このとき、可動支柱22に固定された取付金具22aも変位し、外壁パネル21a~21dの四隅に位置する取付金具22aで構成される四角形が平行四辺形に変化する。また、左側の外壁パネル21a,21bを保持する取付金具22aと、右側の外壁パネル21c,21dを保持する取付金具22aの相対位置も変化する。
【0033】
仮に外壁パネル21a~21dを可動支柱22に直接固定する構造では、上述した揺動展示部20の左右方向への変位によって外壁パネル21a~21dに割れや脱落が生じ、間隙に充填された目地シーリング23に応力が加わって劣化してしまう。しかし本発明では、取付金具22aを可動支柱22に固定し、取付金具22aで外壁パネル21a~21dを保持する構造としており、揺動展示部20を変位させても外壁パネル21a~21dの割れや脱落を防止でき、目地シーリング23の劣化も抑制できる。
【0034】
来場者は、ハンドル16を操作することで揺動展示部20を左右方向に変位させるとともに、窓部14から可動支柱22の変位と外壁パネル21a~21dおよび取付金具22aの状態を視認する。また、外壁パネル21a~21dと取付金具22aは、実際の住宅に用いられるものが使用されている。実際の住宅では、震度4から5弱に相当する中規模の地震では建物の傾き(層間変形)による横ズレはほとんど生じず、震度6から7に相当する大規模の自身でも1mm程度の横ズレが生じるだけである。本発明の外壁耐震性能展示装置100では、揺動展示部20を来場者が操作すると大地震相当よりも大きな変位を起こし、10mm程度の横ズレを生じさせることができる。したがって、取付金具22aによる外壁パネル21a~21dの変位吸収の機能を来場者に理解しやすく提示し、取付金具22aを用いることの優位性を十分にアピールできる。
【0035】
上述したように外壁耐震性能展示装置100は、ハンドル16を来場者が自ら操作して揺動展示部20を変位させ、取付金具22aの機能を体験可能であり、取付金具22aを用いることの優位性を十分に印象づけることができる。また、手動で揺動展示部20を左右に変位させるため、電動のモータや制御装置が不要となり小型化が容易であり、電源の無い場所にも設置することができるため設置自由度も向上する。
【0036】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
100…外壁耐震性能展示装置
110…床面
120…壁面
10…ケース
20…揺動展示部
30…スライド金具
40…支点金具
11…正面
12,13…側面
14…窓部
15…ストッパー
16…ハンドル
21a~21d…外壁パネル
22…可動支柱
22a…取付金具
23…目地シーリング
24…上部梁
25,26…貫通孔
31…壁面固定部
32…フランジ部
33…L字部
34a…挟持部
41…床固定部
42…鉛直部
43…ボルト
図1
図2
図3