IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-走行制御装置および該方法 図1
  • 特許-走行制御装置および該方法 図2
  • 特許-走行制御装置および該方法 図3
  • 特許-走行制御装置および該方法 図4
  • 特許-走行制御装置および該方法 図5
  • 特許-走行制御装置および該方法 図6
  • 特許-走行制御装置および該方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】走行制御装置および該方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20220712BHJP
【FI】
B60W30/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018239045
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100244
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】立畑 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大村 博志
(72)【発明者】
【氏名】粟根 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔次
(72)【発明者】
【氏名】山本 勇気
(72)【発明者】
【氏名】門間 崇倫
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063098(JP,A)
【文献】特開2012-003452(JP,A)
【文献】特開2004-143974(JP,A)
【文献】特開2013-209047(JP,A)
【文献】特開2003-306055(JP,A)
【文献】特開2002-036908(JP,A)
【文献】特開2004-268643(JP,A)
【文献】特開2001-206097(JP,A)
【文献】国際公開第2013/172281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行状態を測定する走行状態測定部と、
目標の走行状態を含む目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、前記自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する第1走行制御部と、
前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記自車両の走行を制御する第2走行制御部とを備え、
前記第2走行制御部は、
前記走行状態測定部で測定された自車両の走行状態と前記目標の走行状態との偏差に基づいて前記目標の走行状態となるように自車両の加減速度を求める第1処理を行う加減速度演算部と、
前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が所定の加減速度範囲内である場合には、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度を目標加減速度として設定し、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正して目標加減速度を設定する第2処理を行う設定部と、
前記設定部で設定された目標加減速度となるように前記自車両の走行を制御する第3処理を行う補助走行制御部と、
前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記第1処理、前記第2処理および前記第3処理それぞれを前記加減速度演算部、前記設定部および前記補助走行制御部それぞれに繰り返し行わせる繰返し部と、
前記自車両を移動させるための動力を生成する動力部と
前記車両を制動する制動部とを備え、
前記走行状態は、前記先行車両との前記自車両の車間距離および前記自車両の速度であり
前記補助走行制御部は、前記設定部で設定された目標加減速度に基づいて前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御するための制御値を求め、前記求めた制御値を、前記走行状態測定部で測定された車間距離に基づいて修正し、前記修正した制御値で前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御し
前記補助走行制御部は、前記繰り返しでの前回の制御値と今回の制御値との変化量が前記先行車両の有無、前記自車両の走行を制御する際に求められる加速の有無および前記自車両の走行を制御する際に求められる減速の有無における組合せに基づいて設定される所定の制御変化範囲内である場合には、前記修正した制御値を最終的な制御値として設定し、前記変化量が前記制御変化範囲から外れている場合には、前記修正した制御値を、前記変化量が前記制御変化範囲内となるようにさらに修正して最終的な制御値を設定し、前記設定した最終的な制御値で前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御する、
走行制御装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲の上限値を超えている場合には、前記上限値を前記目標加減速度に設定し、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲の下限値を下回っている場合には、前記下限値を前記目標加減速度に設定する、
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記加減速度範囲における上限値および下限値は、前記自車両が前記先行車両に衝突するまでの時間である衝突余裕時間に基づいて設定される、
請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記加減速度範囲における上限値および下限値は、前記自車両の走行状態を入力するための所定の入力操作に基づいて設定される、
請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項5】
自車両の走行状態を測定する走行状態測定工程と、
目標の走行状態を含む目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、前記自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する第1走行制御工程と、
前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記自車両の走行を制御する第2走行制御工程とを備え、
前記第2走行制御工程は、前記走行状態測定工程で測定された自車両の走行状態と前記目標の走行状態との偏差に基づいて前記目標の走行状態となるように自車両の加減速度を求める加減速度演算工程と、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度が所定の加減速度範囲内である場合には、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度を目標加減速度として設定し、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正して目標加減速度を設定する設定工程と、前記設定工程で設定された目標加減速度となるように前記自車両の走行を制御する補助走行制御工程と、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで繰り返し行い、
前記走行状態は、前記先行車両との前記自車両の車間距離および前記自車両の速度であり
前記補助走行制御工程は、前記設定工程で設定された目標加減速度に基づいて、前記自車両を移動させるための動力を生成する動力部および前記車両を制動する制動部のうちの少なくとも一方を制御するための制御値を求め、前記求めた制御値を、前記走行状態測定工程で測定された車間距離に基づいて修正し、前記修正した制御値で前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御し
前記補助走行制御工程は、前記繰り返しでの前回の制御値と今回の制御値との変化量が前記先行車両の有無、前記自車両の走行を制御する際に求められる加速の有無および前記自車両の走行を制御する際に求められる減速の有無における組合せに基づいて設定される所定の制御変化範囲内である場合には、前記修正した制御値を最終的な制御値として設定し、前記変化量が前記制御変化範囲から外れている場合には、前記修正した制御値を、前記変化量が前記制御変化範囲内となるようにさらに修正して最終的な制御値を設定し、前記設定した最終的な制御値で前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御する、
走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する走行制御装置および走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両に先行する先行車両との車間距離を適当な所定の距離に保ちながら前記先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する走行制御装置が知られている(例えば特許文献1等)。このような追従走行の制御をいわゆるPID制御で実現すると、追従走行の制御中における車間距離は、通常、目標の車間距離に近づくと、前記目標の車間距離に対してオーバーシュートやアンダーシュートを繰り返しながら前記目標の車間距離に収束する。これらオーバーシュートやアンダーシュートの繰り返しの際に、車両は、加減速することになるので、搭乗者の乗り心地等を考慮すると、このような制御は、好ましくない。そこで、目標をオーバーシュートすることなく制御する制御方法としてスライディングモード制御が知られており、車両にも応用されている(例えば特許文献2等)。このスライディングモード制御は、良好なロバスト(頑強)性を有する非線形制御であり、大略、制御対象である複数の状態量を変数とする線形関数によりスライディングモード制御用のスライディングモード面(超平面)を設定し、前記状態量を前記スライディングモード面上に収束させ、さらに、前記状態量を前記スライディングモード面上に拘束しつつ前記スライディングモード面上の平衡点に前記状態量を収束させることにより前記状態量を目標の状態量に制御する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-155249号公報
【文献】特開2012-003452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなスライディングモード制御では、状態量をスライディングモード面上に拘束しつつ前記スライディングモード面上の平衡点に前記状態量を収束させる際には、例えば先行車両に対する自車両の相対速度や車間距離等の前記状態量は、前記スライディングモード面上を遷移するので、急激な加減速を生じることなく目標の車間距離まで自車両を制御できる。しなしながら、前記スライディングモード制御を開始する際の前記自車両の前記状態量が前記スライディングモード面から比較的大きく乖離していると、前記自車両の前記状態量を前記スライディングモード面上に乗せようとして比較的急激な加減速が生じてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、スライディングモード制御を用いた追従走行の制御の際に、急激な加減速を低減して、目標の相対車間距離まで自車両を制御できる走行制御装置および走行制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる走行制御装置は、自車両の走行状態を測定する走行状態測定部と、目標の走行状態を含む目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、前記自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する第1走行制御部と、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記自車両の走行を制御する第2走行制御部とを備え、前記第2走行制御部は、前記走行状態測定部で測定された自車両の走行状態と前記目標の走行状態との偏差に基づいて前記目標の走行状態となるように自車両の加減速度を求める第1処理を行う加減速度演算部と、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が所定の加減速度範囲内である場合には、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度を目標加減速度として設定し、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正して目標加減速度を設定する第2処理を行う設定部と、前記設定部で設定された目標加減速度となるように前記自車両の走行を制御する第3処理を行う補助走行制御部と、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記第1処理、前記第2処理および前記第3処理それぞれを前記加減速度演算部、前記設定部および前記補助走行制御部それぞれに繰り返し行わせる繰返し部と、前記自車両を移動させるための動力を生成する動力部と、前記車両を制動する制動部とを備え、前記走行状態は、前記先行車両との前記自車両の車間距離および前記自車両の速度であり、前記補助走行制御部は、前記設定部で設定された目標加減速度に基づいて前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御するための制御値を求め、前記求めた制御値を、前記走行状態測定部で測定された車間距離に基づいて修正し、前記修正した制御値で前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御し、前記補助走行制御部は、前記繰り返しでの前回の制御値と今回の制御値との変化量が前記先行車両の有無、前記自車両の走行を制御する際に求められる加速の有無および前記自車両の走行を制御する際に求められる減速の有無における組合せに基づいて設定される所定の制御変化範囲内である場合には、前記修正した制御値を最終的な制御値として設定し、前記変化量が前記制御変化範囲から外れている場合には、前記修正した制御値を、前記変化量が前記制御変化範囲内となるようにさらに修正して最終的な制御値を設定し、前記設定した最終的な制御値で前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御する。好ましくは、上述の走行制御装置において、前記走行状態は、前記先行車両との前記自車両の車間距離および前記自車両の車速(速度)(または前記先行車両との前記自車両の相対速度)であり、前記加減速度演算部は、前記第1処理として、前記走行状態測定部で測定された自車両の車間距離と目標の車間距離との実車間偏差および前記走行状態測定部で測定された自車両の車速と目標の車速との実車速偏差に基づいて前記目標の車間距離および車速となるように自車両の加減速度を求める。
【0007】
このような走行制御装置は、加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正するので、各制御サイクルそれぞれでの加減速度の各変化を緩和できる。したがって、上記走行制御装置は、スライディングモード制御を用いた追従走行の制御の際に、急激な加減速を低減して、目標の相対車間距離まで自車両を制御できる。比較的車間距離が長い場合、先行車両の速度変化に追従してしまうと、運転者は、自車両の速度変化に、違和感を感じることがある。上記走行制御装置は、車間距離に応じた制御値の修正によって前記車間距離に応じて目標加減速度を修正するので、このような運転者の違和感を低減できる上記走行制御装置は、先行車両の有無、加速要求の有無および減速要求の有無の各シーンに応じた目標加減速度の制御値で走行を制御できる
【0008】
他の一態様では、上述の走行制御装置において、前記設定部は、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲の上限値を超えている場合には、前記上限値を前記目標加減速度に設定し、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲の下限値を下回っている場合には、前記下限値を前記目標加減速度に設定する。
【0009】
このような走行制御装置は、目標加減速度を加減速度範囲の上下限値でクランプできる。
【0010】
他の一態様では、これら上述の走行制御装置において、前記加減速度範囲における上限値および下限値は、前記自車両が前記先行車両に衝突するまでの時間である衝突余裕時間に基づいて設定される。
【0011】
このような走行制御装置は、加減速度範囲を衝突余裕時間に応じて変更できる。したがって、例えば、衝突余裕時間が相対的に短い場合には、上限値を相対的に小さい正値に設定して加速の許容範囲を相対的に狭くし、下限値を相対的に大きな負値に設定して減速の許容範囲を相対的に広くすることができ、一方、衝突余裕時間が相対的に長い場合には、上限値を相対的に大きな正値に設定して加速の許容範囲を相対的に広くし、下限値を相対的に小さな負値に設定して減速の許容範囲を相対的に狭くすることができる。このため、上記走行制御装置は、衝突の回避を優先しつつ、各制御サイクルそれぞれでの加減速度の各変化を緩和できる。
【0012】
他の一態様では、上述の走行制御装置において、前記加減速度範囲における上限値および下限値は、前記自車両の走行状態を入力するための所定の入力操作に基づいて設定される。好ましくは、上述の走行制御装置において、前記入力操作は、目標速度を元の設定速度に戻して速度制御するレジューム動作を指示するレジューム入力操作、予め設定された設定速度で速度制御する設定速度走行を指示する設定速度走行入力操作、および、前記設定速度の増減を指示する設定速度調整入力操作を含む。
【0013】
入力操作の内容によっては、運転者は、入力操作した内容を速やかに走行に反映させて欲しいと思う場合がある。上記走行制御装置は、加減速度範囲における上限値および下限値を入力操作に基づいて設定するので、このような運転者の意図に合わせることが可能となる。
【0018】
本発明の他の一態様にかかる走行制御方法は、自車両の走行状態を測定する走行状態測定工程と、目標の走行状態を含む目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、前記自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する第1走行制御工程と、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記自車両の走行を制御する第2走行制御工程とを備え、前記第2走行制御工程は、前記走行状態測定工程で測定された自車両の走行状態と前記目標の走行状態との偏差に基づいて前記目標の走行状態となるように自車両の加減速度を求める加減速度演算工程と、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度が所定の加減速度範囲内である場合には、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度を目標加減速度として設定し、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正して目標加減速度を設定する設定工程と、前記設定工程で設定された目標加減速度となるように前記自車両の走行を制御する補助走行制御工程と、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで繰り返し行い、前記走行状態は、前記先行車両との前記自車両の車間距離および前記自車両の速度であり、前記補助走行制御工程は、前記設定工程で設定された目標加減速度に基づいて、前記自車両を移動させるための動力を生成する動力部および前記車両を制動する制動部のうちの少なくとも一方を制御するための制御値を求め、前記求めた制御値を、前記走行状態測定工程で測定された車間距離に基づいて修正し、前記修正した制御値で前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御し、前記補助走行制御工程は、前記繰り返しでの前回の制御値と今回の制御値との変化量が前記先行車両の有無、前記自車両の走行を制御する際に求められる加速の有無および前記自車両の走行を制御する際に求められる減速の有無における組合せに基づいて設定される所定の制御変化範囲内である場合には、前記修正した制御値を最終的な制御値として設定し、前記変化量が前記制御変化範囲から外れている場合には、前記修正した制御値を、前記変化量が前記制御変化範囲内となるようにさらに修正して最終的な制御値を設定し、前記設定した最終的な制御値で前記動力部および前記制動部のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御する。
【0019】
このような走行制御方法は、加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度が加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度演算工程で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正するので、各制御サイクルそれぞれでの加減速度の各変化を緩和できる。したがって、上記走行制御方法は、スライディングモード制御を用いた追従走行の制御の際に、急激な加減速を低減して、目標の相対車間距離まで自車両を制御できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる走行制御装置および走行制御方法は、スライディングモード制御を用いた追従走行の制御の際に、急激な加減速を低減して、目標の相対車間距離まで自車両を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態における走行制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】一例として、前記走行制御装置で用いられる、衝突余裕時間と第1上下限値との対応関係を示す図である。
図3】一例として、前記走行制御装置で用いられる、入力操作と第2上下限値との対応関係を示す図である。
図4】一例として、前記走行制御装置で用いられる、車間距離とゲインとの対応関係を示す図である。
図5】一例として、前記走行制御装置で用いられる、スライディングモード面を示す図である。
図6】一例として、前記走行制御装置で応答感度の調整に用いられる、車間距離と調整値との対応関係を示す図である。
図7】前記走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0023】
実施形態における走行制御装置は、自車両の走行状態を測定する走行状態測定部と、目標の走行状態を含む目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、前記自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する第1走行制御部と、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記自車両の走行を制御する第2走行制御部とを備える。そして、本実施形態では、前記第2走行制御部は、前記走行状態測定部で測定された自車両の走行状態と前記目標の走行状態との偏差に基づいて前記目標の走行状態となるように自車両の加減速度を求める第1処理を行う加減速度演算部と、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が所定の加減速度範囲内である場合には、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度を目標加減速度として設定し、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度演算部で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正して目標加減速度を設定する第2処理を行う設定部と、前記設定部で設定された目標加減速度となるように前記自車両の走行を制御する第3処理を行う補助走行制御部と、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記第1処理、前記第2処理および前記第3処理それぞれを前記加減速度演算部、前記設定部および前記補助走行制御部それぞれに繰り返し行わせる繰返し部とを備える。以下、このような走行制御装置について、より具体的に説明する。
【0024】
図1は、実施形態における走行制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、一例として、前記走行制御装置で用いられる、衝突余裕時間と第1上下限値との対応関係を示す図である。図2の横軸は、衝突余裕時間を表し、その縦軸は、上下限値を表す。図3は、一例として、前記走行制御装置で用いられる、入力操作と第2上下限値との対応関係を示す図である。図4は、一例として、前記走行制御装置で用いられる、車間距離とゲインとの対応関係を示す図である。図4の横軸は、車間距離を表し、その縦軸は、ゲイン値を表す。図5は、一例として、前記走行制御装置で用いられる、スライディングモード面を示す図である。図5の横軸は、車間距離を表し、その縦軸は、相対速度を表す。図6は、一例として、前記走行制御装置で応答感度の調整に用いられる、車間距離と調整値との対応関係を示す図である。図6Aは、目標車速に対する自車速の偏差を調整する第1調整値RVsを示し、その横軸は、車間距離を表し、その縦軸は、第1調整値を表す。図6Aは、目標車間に対する現在車間の偏差を調整する第2調整値RDsを示し、その横軸は、車間距離を表し、その縦軸は、第2調整値を表す。
【0025】
実施形態における走行制御装置CTSは、例えば、図1に示すように、走行状態測定部1と、制御処理部2と、記憶部3とを備え、さらに、本実施形態では、スライディングモード制御で先行車両に追従するように走行する自車両の走行動作を実現するために、動力部4と、制動部5と、入力部6とを備える。
【0026】
走行状態測定部1は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って自車両の走行状態を測定する装置である。走行状態測定部1は、その測定した自車両の走行状態を制御処理部2へ出力する。前記走行状態は、スライディングモード制御で先行車両に追従する追従走行の制御を行う上で必要であれば任意の物理量であって良く、走行状態測定部1は、前記物理量を測定可能な装置であれば、任意の装置であって良い。一例では、本実施形態では、前記走行状態は、先行車両との自車両の車間距離および相対速度(先行車両から自車両までの車間距離および前記先行車両に対する自車両の相対速度(相対車速))ならびに自車両の速度(車速、自車速)である。このため、走行状態測定部1は、前記車間距離、前記相対速度および自車速を測定できる装置、例えば、1台で前記車間距離および前記相対速度を測定可能であることからレーダ装置と、前記自車速を測定するための速度センサとを備えて構成される。
【0027】
前記レーダ装置は、所定の送信波を送信し、対象物で反射した送信波の反射波を受信することにより、前記対象物を検出し、前記対象物の方向と前記対象物までの距離を測定する装置である。そして、前記レーダ装置は、送信波に対する反射波のドップラーシフトに基づき、自車両に対する前記対象物の相対速度も求めている。前記レーダ装置は、例えば、本実施形態では、車両の前端部に設けられ、車両の前方を所定の対象範囲(レンジ)で対象物を測定する。一例では、例えば、前記レーダ装置は、ミリ波帯の送信波を対象範囲で走査しながら送信する送信部と、前記送信波が対象物で反射した反射波を受信する受信部と、前記送信波と前記反射波とに基づいて前記対象物の方向と前記対象物までの距離とを求めることで、前記対象物の位置を求める信号処理部とを備える。前記信号処理部は、対象範囲の走査における前記送信波の送信方向から前記対象物の方向を求め、前記送信波の送信タイミングと前記反射波の受信タイミングとの時間差に基づいて、前記対象物までの距離を求める(TOF(Time-Of-Flight)方式)。
【0028】
なお、前記レーダ装置は、このような構成に限らず、適宜な種類のレーダ装置であって良い。例えば、前記レーダ装置は、ミリ波帯ではなく、レーザ光を利用したレーザレーダ装置であって良く、また、前記レーダ装置は、複数の受信アンテナを備え、前記複数の受信アンテナが受信した反射波の位相差から前記対象物の方向を求める装置であっても良い。
【0029】
また、前記車間距離および前記相対速度を測定するための走行状態測定部1は、レーダ装置に限らず他の種類の測定装置であって良い。例えば、走行状態測定部1は、距離画像センサを備えて構成され、距離画像から前記車間距離を求め、その時間変化から前記相対速度を求めて良い。あるいは、例えば、走行状態測定部1は、いわゆるステレオカメラを備えて構成され、ステレオカメラで生成された1対の画像から視差を求めて前記車間距離を求め、その時間変化から前記相対速度を求めて良い。また、走行状態測定部1は、前記車間距離を測定する第1測定装置と、前記相対速度を測定する第2測定装置との2個の装置を備えて構成されても良い。例えば、走行状態測定部1は、前記車間距離を測定する距離画像センサ(またはステレオカメラ)と、前記相対速度を測定するドップラセンサとを備えて構成されても良い。
【0030】
前記速度センサは、車輪の回転速度(車輪速)を測定することによって自車速を測定する装置である。速度センサは、例えば、ロータリエンコーダおよびその周辺回路を備え、単位時間当たりの、車輪(車軸)における回転の変位量から車輪速を測定する。
【0031】
動力部4は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って車両を駆動(移動)する動力を生成する装置である。動力部4が生成した動力は、動力を伝達する動力伝達機構を介して駆動輪に伝達され、駆動輪を回転させる。動力部4は、例えば、エンジン、モータおよびこれらのハイブリッド装置等の原動機およびその付属機器を備えて構成される。
【0032】
制動部5は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って車両に制動力を与え、車両を減速する装置である。制動部5は、車両を減速した結果、停止させることもでき、車両の停止中に制動力を与え続けた結果、車両の停止を維持することもできる。制動部5は、例えば、ディスクブレーキおよび回生ブレーキ等のブレーキ装置およびその付属機器を備えて構成される。
【0033】
動力部4および制動部5それぞれを制御することで、車両の加速度が調整され、車両の速度(車速)が調整され、先行車両との相対速度が調整され、先行車両との車間距離が調整される。
【0034】
入力部6は、制御処理部2に接続され、走行制御装置CTSに所定のデータを入力する装置である。本実施形態では、入力部6には、自車両の走行状態を入力するための所定の入力操作が入力される。前記入力操作は、本実施形態では、例えば、目標速度を元の設定速度に戻して速度制御するレジューム動作を走行制御装置CTSに指示するレジューム入力操作、予め設定された設定速度で速度制御する設定速度走行を走行制御装置CTSに指示する設定速度走行入力操作、および、前記設定速度の増減を走行制御装置CTSに指示する設定速度調整入力操作を含む。
【0035】
記憶部3は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、走行制御装置CTSの各部1、3~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、目標の走行状態を含む目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する第1走行制御プログラムや、前記自車両の走行状態を前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記自車両の走行を制御する第2走行制御プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記第2走行制御プログラムには、走行状態測定部1で測定された自車両の走行状態と前記目標の走行状態との偏差に基づいて前記目標の走行状態となるように自車両の加減速度を求める第1処理を行う加減速度演算プログラムや、前記加減速度演算プログラムで求められた自車両の加減速度が所定の加減速度範囲内である場合には、前記加減速度演算プログラムで求められた自車両の加減速度を目標加減速度として設定し、前記加減速度演算プログラムで求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度演算プログラムで求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正して目標加減速度を設定する第2処理を行う設定プログラムや、前記設定プログラムで設定された目標加減速度となるように前記自車両の走行を制御する第3処理を行う補助走行制御プログラムや、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記第1処理、前記第2処理および前記第3処理それぞれを前記加減速度演算プログラム、前記設定プログラムおよび前記補助走行制御プログラムそれぞれに繰り返し行わせる繰返しプログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、目標のスライディングモード面を表す情報、目標の車間距離、目標の相対速度(通常、0(零))、前記加減速度範囲の上下限値、目標加減速度に基づいて求められた制御値を修正するゲイン、および、前記制御値の時間変化量の許容範囲における上下限値等の、各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。記憶部3は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部3は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部2のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0036】
そして、本実施形態では、各上下限値や各ゲインを記憶するために、記憶部3は、第1上下限値記憶部31、第2上下限値記憶部32、ゲイン記憶部33および制御変化範囲記憶部34を機能的に備える。
【0037】
第1上下限値記憶部31は、加減速度範囲における第1上限値および第1下限値を表す第1上下限値情報を記憶するものである。前記加減速度範囲は、自車両の走行状態をスライディングモード面に収束させる際に各繰り返しで自車両の走行制御に用いられる加減速度の許容範囲である。第1上限値および第1下限値は、本実施形態では、前記自車両が前記先行車両に衝突するまでの時間である衝突余裕時間に基づいて予め設定される。例えば、図2に示すように、第1上限値Nuは、衝突余裕時間が0から所定の第1時間CT1までの範囲にある場合では、小さい正値Nu1に設定され、衝突余裕時間が第1時間CT1から所定の第2時間CT2までの範囲にある場合では、衝突余裕時間が長くなるに従って小さな正値Nu1から大きな正値Nu2に向かって徐々に大きな正値に設定され、衝突余裕時間が第2時間CT2より長い範囲にある場合では、大きな正値Nu2に設定される(0<CT1<CT2、0<Nu1<Nu2)。一方、第1下限値Ndは、衝突余裕時間が0から所定の第1時間CT1までの範囲にある場合では、大きな負値Nd1に設定され、衝突余裕時間が第1時間CT1から所定の第3時間CT3までの範囲にある場合では、衝突余裕時間が長くなるに従って大きな負値Nd1から小さな負値Nd2に向かって徐々に小さな負値に設定され、衝突余裕時間が第3時間CT3より長い範囲にある場合では、小さな負値Nd2に設定される(0<CT1<CT2<CT3、Nd1<Nd2<0)。これにより、本実施形態では、衝突余裕時間が相対的に短い場合には、第1上限値Nuが相対的に小さい正値Nu1に設定されることで加速の許容範囲を相対的に狭くすることができ、第1下限値Ndが相対的に大きな負値Nd1に設定されることで減速の許容範囲を相対的に広くすることができる。一方、衝突余裕時間が相対的に長い場合には、第1上限値Nuが相対的に大きな正値Nu2に設定されることで加速の許容範囲を相対的に広くすることができ、第1下限値Ndが相対的に小さな負値Nd2に設定されることで減速の許容範囲を相対的に狭くすることができる。なお、これら第1上下限値Nu、Ndは、例えば試験走行等によって得られた複数のサンプルから適宜に予め設定される。
【0038】
第2上下限値記憶部32は、前記加減速度範囲における第2上限値および第2下限値を表す第2上下限値情報を記憶するものである。第2上限値および第2下限値は、本実施形態では、前記自車両の走行状態を入力するための所定の入力操作に基づいて設定される。より具体的には、本実施形態では、例えば、図3に示すように、前記レジューム入力操作、前記設定速度入力操作および前記設定速度調整入力操作それぞれに対し、車速別に、加速度で表された各第2上限値が対応付けられている。例えば、レジューム入力操作では、車速が0kph(km/h)以上50kph未満の範囲にある場合には、第2上限値は、相対的に大きな値m/sであり、車速が50kph以上100kph未満の範囲にある場合には、第2上限値は、相対的に中程度の値m/sであり、車速が100kph以上の範囲にある場合には、第2上限値は、相対的に小さな値m/sである。すなわち、レジューム入力操作では、車速が大きくなるに従って第2上限値が小さくなる。前記設定速度入力操作および前記設定速度調整入力操作も同様の傾向で設定されている。なお、これら各値は、一例であって、これに限定されるものではなく、例えば試験走行等によって得られた複数のサンプルから適宜に予め設定される。また、図3に示す例では、第2上限値が予め設定されたが、第2下限値も予め設定されても良い。
【0039】
ゲイン記憶部33は、ゲインを表すゲイン情報を記憶するものである。前記ゲインは、後述のように設定される目標加減速度に基づいて動力部4および制動部5のうちの少なくとも一方を制御するために求められた制御値を、車間距離に基づいて修正する際に用いられる値である。本実施形態では、例えば、図4に示すように、ゲインは、車間距離が0から所定の第1距離Ds1までの範囲にある場合では、1であり、車間距離が第1距離Ds1から所定の第2距離Ds2までの範囲にある場合では、車間距離が長くなりに従って1から0に向かって徐々に小さくなり、車間距離が第2距離Ds2を超えた範囲にある場合では、0である。これにより、本実施形態では、車間距離が第1距離Ds1までは、後述のように求められた目標加減速度に基づく制御値で動力部4および制動部5のうちの少なくとも一方が制御され、車間距離が第1距離Ds1から長くなるに従って前記目標加減速度に基づく制御値より小さな制御値で動力部4および制動部5のうちの少なくとも一方が制御され、車間距離が第2距離Ds2を超えると制御値が0となり、先行車両の変化に追従されなくなる。なお、ゲインは、例えば試験走行等によって得られた複数のサンプルから適宜に予め設定される。
【0040】
制御変化範囲記憶部34は、制御変化範囲を表す制御変化範囲情報を記憶するものである。前記制御変化範囲は、前記繰り返しでの前回の制御値と今回の制御値との変化量に対する許容範囲である。本実施形態では、前記制御変化範囲は、先行車両の有無、自車両の走行を制御する際に求められる加速の有無および自車両の走行を制御する際に求められる減速の有無における組合せに基づいて予め設定される。本実施形態では、例えば、先行車両が無く加速要求されている場合には、制御変化範囲は、第1変化上限値CVu1から第1変化下限値CVd1までの範囲であり、先行車両が無く減速要求されている場合には、制御変化範囲は、第2変化上限値CVu2から第2変化下限値CVd2までの範囲であり、先行車両が有りで加速要求されている場合には、制御変化範囲は、第3変化上限値CVu3から第3変化下限値CVd3までの範囲であり、先行車両が有りで減速要求されている場合には、制御変化範囲は、第4変化上限値CVu4から第4変化下限値CVd4までの範囲であり、これらを除く場合には、制御変化範囲は、第5変化上限値CVu5から第5変化下限値CVd5までの範囲である。なお、制御変化範囲の各上下限値は、例えば試験走行等によって得られた複数のサンプルから適宜に予め設定される。例えば、加速要求時には、先行車に近接してドライバが違和感を感じる可能性があるので、先行車が無い場合に較べて、先行車が有る場合では、大きく制限されるように制限値が設定される。なお、これに限定されるものではない。
【0041】
制御処理部2は、走行制御装置CTSの各部1、3~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、スライディングモード制御で、自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御するための回路である。制御処理部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部2は、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部21、第1走行制御部22および第2走行制御部23を機能的に備える。
【0042】
制御部21は、走行制御装置CTSの各部1、3~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、走行制御装置CTSの全体制御を司るものである。
【0043】
第1走行制御部22は、予め設定された目標の走行状態を含む、予め設定された目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、前記自車両に先行する先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御するものである。第1走行制御部22は、例えば、車間距離Xおよび相対速度Yを図5に示す目標のスライディングモード面SP上に拘束しつつ、目標の車間距離Lxであって相対速度が0である平衡点Ptに、前記車間距離Xおよび相対速度Yを収束させるように、動力部4および制動部5それぞれを制御する。より具体的には、第1走行制御部22は、走行状態測定部1で測定された自車両の走行状態Ps(本実施形態では車間距離xsおよび相対速度ys)と目標のスライディングモード面SPとの差(偏差、本実施形態では車間距離偏差および相対速度偏差)を求め、この求めた差が0となるように動力部4および制動部5のうちの両方またはいずれか一方を制御する。なお、図5では、先行車両VCpの後端(走行状態測定部1の一例としての前記レーダ装置から照射された送信波を反射した先行車両VCpの部分)の位置Ppを座標原点Pp(0、0)とし、先行車両VCpとの自車両CVsの車間距離Xおよび相対速度Yを座標軸とするXY直交座標系が設定されている。そして、スライディングモード制御の状態量がこれら2個の車間距離Xおよび相対速度Yであるので、スライディングモード面SPは、2次元XY直交座標系での線(図5に示す例では直線)で表される。
【0044】
第2走行制御部23は、走行状態測定部1で測定された自車両の走行状態に基づいて、前記自車両の走行状態を前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記自車両の走行を制御するものである。例えば、図5に示すように、自車両VCsの走行状態Ps(xs、ys)が目標のスライディングモード面SPの近傍に無い場合(自車両VCsの走行状態Ps(xs、ys)が目標のスライディングモード面SPから、予め設定された所定の距離(図5に示すXY直交座標系上でのユークリッド距離)以内に無い場合)、自車両VCsの走行状態Ps(xs、ys)が目標のスライディングモード面SP上あるいは近傍となるように(自車両VCsの走行状態Ps(xs、ys)が目標のスライディングモード面SPから前記所定の距離以内となるように)、前記自車両の走行が制御され、これによって、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束される。このために、例えば、第2走行制御部23は、加減速度演算部231、設定部232、補助走行制御部233および繰返し部234を機能的に備える。
【0045】
加減速度演算部231は、走行状態測定部1で測定された自車両の走行状態と目標の走行状態との偏差に基づいて前記目標の走行状態となるように自車両の加減速度を求める第1処理を行うものである。より具体的には、加減速度演算部231は、前記第1処理として、走行状態測定部1で測定された自車両の車間距離と目標の車間距離との実車間偏差および走行状態測定部1で測定された自車両の車速と目標の車速との実車速偏差に基づいて前記目標の車間距離および車速となるように自車両の加減速度を求める。より詳しくは、本実施形態では、例えば、加減速度演算部231は、次式1によって前記自車両の加減速度を求める。
式1;(加減速度G)={(実車速偏差[m/s])/(第1調整値RVs)}×SM1+{(実車間偏差[m])/(第2調整値RDs)}×SM2
ここで、実車速偏差は、目標車速から現在の自車速を減算した値であり((実車速偏差)=(目標車速)-(現在の自車速))、実車間偏差は、目標車間距離Lxから現在の車間距離xsを減算した値である((実車間偏差)=(目標車間距離Lx)-(現在の車間距離xs))。相対速度が0となるように、目標車速は、設定される(すなわち、目標車速は、先行車両の車速であり、自車速が先行車両の車速より速い場合には、自車速から相対速度ysを減算することで求められ、自車速が先行車両の車速より遅い場合には、自車速に相対速度ysを加算することで求められ、自車速と先行車両の車速が等しい場合には、自車速となる((目標車速)=(先行車両の車速)、(先行車両の車速)<(自車速);(目標車速)=(自車速)-(相対速度)、(先行車両の車速)>(自車速);(目標車速)=(自車速)+(相対速度)、(先行車両の車速)=(自車速);(目標車速)=(自車速))。第1調整値RVsは、例えば、図6Aに示すように、車間距離が大きくなるに従って徐々に大きくなる非線形な曲線で表される。このため、車間距離が相対的に短い場合には、実車速偏差がほぼそのまま加減速度の演算に影響し、応答性が良くなり、一方、車間距離が相対的に長い場合には、実車速偏差が加減速度の演算に与える影響が減殺され、応答性が悪くなる。第2調整値RDsは、例えば、図6Bに示すように、車間距離が大きくなるに従って徐々に大きくなる線形な直線で表される。このため、車間距離が相対的に短い場合には、実車速偏差が加減速度の演算に大きく影響し、応答性が良くなり、一方、車間距離が相対的に長い場合には、実車速偏差が加減速度の演算に小さく影響し、応答性が悪くなる。これら第1および第2調整値RVs、RDsは、前記各種の所定のデータの1つとして、記憶部3に予め記憶される。スライディングモード係数SM1、SM2は、パラメータであり、予め設定された所定の定数である。なお、これら第1および第2調整値RVs、RDならびにスライディングモード係数SM1),SM2は、例えば試験走行等によって得られた複数のサンプルから適宜に予め設定される。
【0046】
設定部232は、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度が所定の加減速度範囲内である場合には、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度を目標加減速度として設定し、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲から外れている場合には、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正して目標加減速度を設定する第2処理を行うものである。より具体的には、設定部232は、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲の上限値を超えている場合には、前記上限値を前記目標加減速度に設定し、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲の下限値を下回っている場合には、前記下限値を前記目標加減速度に設定する。
【0047】
より詳しくは、本実施形態では、設定部232は、まず、第1上下限値記憶部31に記憶されている第1上下限値情報で表される第1上限値および第1下限値を用いて目標加減速度を設定する。続いて、設定部232は、第2上下限値記憶部32に記憶されている第2上下限値情報で表される第2上限値および第2下限値(本実施形態では第2上限値のみ)を用いて目標加減速度を修正する。
【0048】
補助走行制御部233は、前記設定部で設定された目標加減速度となるように前記自車両の走行を制御する第3処理を行うものである。より具体的には、本実施形態では、例えば、補助走行制御部233は、設定部232で設定された目標加減速度に基づいて動力部4および制動部5のうちの少なくとも一方を制御するための制御値を求め、前記求めた制御値を、走行状態測定部1で測定された車間距離に基づいて修正し、前記修正した制御値で動力部4および制動部5のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御する。そして、本実施形態では、この修正した制御値で自車両の走行を制御する際(前)に、補助走行制御部233は、前記繰り返しでの前回の制御値と今回の制御値との変化量が前記先行車両の有無、前記自車両の走行を制御する際に求められる加速の有無および前記自車両の走行を制御する際に求められる減速の有無における組合せに基づいて設定される所定の制御変化範囲内である場合には、前記修正した制御値を最終的な制御値として設定し、前記変化量が前記制御変化範囲から外れている場合には、前記修正した制御値を、前記変化量が前記制御変化範囲内となるようにさらに修正して最終的な制御値を設定する。そして、補助走行制御部233は、前記設定した最終的な制御値で動力部4および制動部5のうちの少なくとも一方を制御することによって前記自車両の走行を制御する。
【0049】
繰返し部234は、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面に収束するまで、前記第1処理、前記第2処理および前記第3処理それぞれを加減速度演算部231、設定部232および補助走行制御部233それぞれに繰り返し行わせるものである。より具体的には、繰返し部234は、補助走行制御部233による今回の自車両の走行を制御した結果、走行状態測定部1で測定された自車両の走行状態が目標のスライディングモード面に収束しているか否かを判定し、この判定の結果、前記自車両の走行状態が目標のスライディングモード面に収束していない場合には、前記第1処理、前記第2処理および前記第3処理それぞれを加減速度演算部231、設定部232および補助走行制御部233それぞれに繰り返し行わせ、一方、前記判定の結果、前記自車両の走行状態が目標のスライディングモード面に収束している場合には、この繰り返しを終了する。そして、第1走行制御部22は、目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御を行う。
【0050】
前記収束の判定では、前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面上あるいはその近傍にあるか否か(前記自車両の走行状態が前記目標のスライディングモード面から前記所定の距離以内か否か)が判定される。
【0051】
次に、本実施形態の動作について説明する。図7は、前記走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0052】
このような走行制御装置CTSは、自車両VCsが稼働を始め、図略の追従走行制御をオンオフするスイッチがオンされると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部2には、制御部21、第1走行制御部22および第2走行制御部23が機能的に構成され、第2走行制御部23には、加減速度演算部231、設定部232、補助走行制御部233および繰返し部234が機能的に構成される。そして、制御処理部2は、所定の時間間隔で繰り返し実行される追従走行制御の制御サイクルにおける1回の制御サイクルおいて、次のように動作することで、自車両VCsに先行する先行車両VCpに追従するように自車両VCsの走行を制御している。
【0053】
図7において、まず、制御処理部2は、走行状態測定部1で自車両の走行状態を取得する(S1)。本実施形態では、制御処理部2は、その一例の前記レーダ装置で、先行車両との自車両の車間距離および相対速度を取得し、その一例の前記速度センサで、自車両の速度(自車速)を取得する。ここで、本実施形態では、制御処理部2は、前方の移動している物体(移動体)を先行車両として検出しているが、走行制御装置CTSは、さらに、前方の画像を生成する撮像装置(カメラ)をさらに備え、その画像に基づいて、前方の移動している物体が車両である否かを検証しても良い。
【0054】
次に、制御処理部2は、第2走行制御部23の繰返し部234によって、処理S1で取得した自車両の走行状態が目標のスライディングモード面に収束しているか否かを判定する(S2)。この判定の結果、前記自車両の走行状態が目標のスライディングモード面に収束している場合(Yes)には、制御処理部2は、次に、第1走行制御部22によって、目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、先行車両に追従するように自車両の走行を制御する走行制御を行い(S9)、今般の制御サイクルでの本処理を終了する。一方、前記判定の結果、前記自車両の走行状態が目標のスライディングモード面に収束していない場合(No)には、制御処理部2は、次に、第2走行制御部23によって、処理S3ないし処理S8を順次に実行し、今般の制御サイクルでの本処理を終了する。
【0055】
この処理S3では、第2走行制御部23は、加減速度演算部231によって、自車両の加減速度を求める。より具体的には、加減速度演算部231は、処理S1で取得した自車両の走行状態から、前記式1を用いることによって、自車両の加減速度Gを求める。
【0056】
前記処理S3に続く処理S4では、第2走行制御部23は、設定部232によって、処理S3で求めた自車両の加減速度Gに対し、第1上下限値での修正処理を実行する。より具体的には、第1に、設定部232は、衝突余裕時間を走行状態測定部1で測定した車間距離および相対速度に基づいて求め((衝突余裕時間)=(車間距離)/(相対速度))、この求めた衝突余裕時間に対応する第1上限値および第1下限値を第1上下限値情報から求め、これによって前記加減速度範囲を決定する。第2に、設定部232は、処理S3で加減速度演算部231によって求められた自車両の加減速度Gとこの決定した前記加減速度範囲とを比較し、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度Gが前記加減速度範囲の第1上限値を超えている場合には、目標加減速度を前記第1上限値に設定し、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度Gが前記加減速度範囲の第1下限値を下回っている場合には、前記目標加減速度を第1下限値に設定し、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度Gが前記加減速度範囲内である場合には、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度Gを前記目標加減速度として設定する。
【0057】
前記処理S4に続く処理S5では、第2走行制御部23は、設定部232によって、処理S4で求めた目標加減速度に対し、第2上下限値での修正処理を実行する。より具体的には、第1に、設定部232は、入力部6から所定の入力操作が入力されているか否かを判定し、この判定の結果、前記所定の入力操作(本実施形態ではレジューム入力操作、設定速度走行入力操作および設定速度調整入力操作のうちのいずれかの入力操作)が入力部6から入力されている場合には、前記所定の入力操作に対応する第2上限値を第2上下限値情報から求め、これによって前記加減速度範囲を修正する。図3に示す例では、自車速別に、加速度で表された第2上限値が対応付けられているので、処理S1で取得した自車速に対応する第2上限値が選択される。例えば、前記所定の入力操作として設定速度走行入力操作が入力部6から入力されており、自車速が60kphである場合、図3に示す例では、4行2列の欄の前記中程度の値[m/s]が第2上限値として選択される。第2に、設定部232は、上述のように設定された目標加減速度とこの修正した加減速度範囲とを比較し、前記目標加減速度が前記加減速度範囲の第2上限値を超えている場合には、前記目標加減速度を前記第2上限値に修正し、前記目標加減速度がこの修正した加減速度範囲内である場合には、前記目標加減速度を修正せずに、そのまま目標加減速度とする。なお、図3に示す例では、第2上限値が加速度で表されているので、1回の制御サイクルの実施に要する時間を、加速度で表された第2上限値に乗算することで、速度で表された第2上限値が求められて良い。あるいは、目標加減速度が加速度に換算されてから、加速度で表された第2上限値と比較されても良い。
【0058】
前記処理S5に続く処理S6では、第2走行制御部23は、補助走行制御部233によって、処理S3ないし処理S5で決定された目標加減速度に対し、ゲインでの修正処理を実行する。より具体的には、第1に、補助走行制御部233は、ゲイン記憶部33に記憶されているゲイン情報から、走行状態測定部1で測定された車間距離に対応するゲインを求める。第2に、補助走行制御部233は、処理S3ないし処理S5で決定された目標加減速度に基づいて動力部4および制動部5のうちの少なくとも一方を制御するための制御値を求める。第3に、補助走行制御部233は、この求めた制御値に、前記求めたゲインを乗算することによって修正する。
【0059】
前記処理S6に続く処理S7では、第2走行制御部23は、補助走行制御部233によって、処理S6で修正された制御値に対し、変化上下限値での修正処理を実行する。より具体的には、第1に、補助走行制御部233は、走行状態測定部1の測定結果から先行車両の有無、処理S3ないし処理S5で設定部232によって決定された目標加減速度から、前記自車両の走行を制御する際に求められる加速の有無および減速の有無を求め、これら求めた先行車両の有無、加減速の有無および減速の有無の組合せに対応する制御変化範囲の変化上下限値を、制御変化範囲記憶部34に記憶されている制御変化範囲情報から求め、これによって前記制御変化範囲を決定する。第2に、補助走行制御部233は、前記繰り返しでの前回の制御値と処理S6で修正された今回の制御値との変化量と、前記制御変化範囲とを比較し、前記変化量が前記制御変化範囲内である場合には、処理S6で修正された制御値(前記今回の制御値)を最終的な制御値として設定し、前記変化量が前記制御変化範囲から外れている場合には、処理S6で修正された制御値を、前記変化量が前記制御変化範囲内となるようにさらに修正して最終的な制御値を設定する。
【0060】
例えば、先行車両が無く加速要求されている場合には、上述の例では、制御変化範囲は、第1変化上限値CVu1から第1変化下限値CVd1までの範囲であり、前記変化量が第1変化上限値CVu1を超えている場合には、補助走行制御部233は、処理S6で修正された制御値から、前記変化量における第1変化上限値CVu1を超えている部分の値を減算し、この減算結果を前記最終的な制御値に設定し、一方、前記変化量が第1変化下限値CVd1を下回っている場合には、補助走行制御部233は、処理S6で修正された制御値に、前記変化量における第1変化下限値CVd1を下回っている部分の値を加算し、この加算結果を前記最終的な制御値に設定する。
【0061】
前記処理S7に続く処理S8では、制御処理部2は、補助走行制御部233によって、これら上述の処理S4ないし処理S7で処理された、処理S3で求めた自車両の加減速度で自車両の走行を制御する。すなわち、補助走行制御部233は、処理S7で設定された最終的な制御値で、動力部4および制動部5のうちの少なくとも一方を制御する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態における走行制御装置CTSおよびこれに実装された走行制御方法は、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度が加減速度範囲から外れている場合には、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度を前記加減速度範囲内となるように修正するので、各制御サイクルそれぞれでの加減速度の各変化を緩和できる。したがって、上記走行制御装置CTSおよび走行制御方法は、スライディングモード制御を用いた追従走行の制御の際に、急激な加減速を低減して、目標の相対車間距離まで自車両を制御できる。
【0063】
上記走行制御装置CTSおよび走行制御方法は、加減速度演算部231で求められた自車両の加減速度が前記加減速度範囲から外れている場合には、前記加減速度範囲の上下限値を目標加減速度に設定するので、目標加減速度を加減速度範囲の上下限値でクランプできる。
【0064】
上記走行制御装置CTSおよび走行制御方法は、前記加減速度範囲を衝突余裕時間に応じて変更できる。したがって、例えば、衝突余裕時間が相対的に短い場合には、第1上限値を相対的に小さい正値に設定して加速の許容範囲を相対的に狭くし、第1下限値を相対的に大きな負値に設定して減速の許容範囲を相対的に広くすることができ、一方、衝突余裕時間が相対的に長い場合には、第1上限値を相対的に大きな正値に設定して加速の許容範囲を相対的に広くし、第1下限値を相対的に小さな負値に設定して減速の許容範囲を相対的に狭くすることができる。このため、上記走行制御装置CTSおよび走行制御方法は、衝突の回避を優先しつつ、各制御サイクルそれぞれでの加減速度の各変化を緩和できる。
【0065】
入力操作の内容によっては、運転者は、入力操作した内容を速やかに走行に反映させて欲しいと思う場合がある。上記走行制御装置CTSおよび走行制御方法は、前記加減速度範囲における上限値および下限値を入力操作に基づいて設定するので、このような運転者の意図に合わせることが可能となる。
【0066】
比較的車間距離が長い場合、先行車両の速度変化に追従してしまうと、運転者は、自車両の速度変化に、違和感を感じることがある。上記走行制御装置CTSおよび走行制御方法は、車間距離に応じた制御値の修正によって前記車間距離に応じて目標加減速度を修正するので、このような運転者の違和感を低減できる。
【0067】
上記走行制御装置CTSおよび走行制御方法は、先行車両の有無、加速要求の有無および減速要求の有無の各シーンに応じた目標加減速度の制御値で走行を制御できる。
【0068】
なお、上述の実施形態では、追従走行制御の制御サイクルにおける各制御サイクルで図7に示す動作が実施されるが、処理S2で自車両の走行状態がスライディングモード面に収束したと判定された場合に、図7に示す動作が終了され、以降の各制御サイクルで、第1走行制御部22によって、目標のスライディングモード面を用いたスライディングモード制御で、先行車両に追従するように自車両の走行を制御する走行制御が行われても良い。この場合では、先行車両の走行状態がモニタ(監視)され、先行車両の走行状態が前記収束を判定した際の走行状態から、予め設定された所定の範囲以上に逸脱した場合(例えば相対速度が前記収束を判定した際の相対速度から、予め設定された所定値を越えて増減した場合)に、走行制御装置CTSは、図7に示す動作を再開する。
【0069】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0070】
CTS 走行制御装置
1 走行状態測定部
2 制御処理部
3 記憶部
4 動力部
5 制動部
6 入力部
21 制御部
22 第1走行制御部
23 第2走行制御部
231 加減速度演算部
232 設定部
233 補助走行制御部
234 繰返し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7