(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】車両用内装部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20220712BHJP
B60H 3/06 20060101ALI20220712BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B60R13/02 A
B60H3/06 611Z
F16B5/10 G
(21)【出願番号】P 2018240827
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】米澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】石川 昇吾
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-072606(JP,A)
【文献】特開2014-104854(JP,A)
【文献】特開平11-059164(JP,A)
【文献】特開2015-202676(JP,A)
【文献】特開2014-091502(JP,A)
【文献】特開2001-158307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60H 3/06
F16B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装部品に設けられた第1掛止部と車両の車室内壁に設けられた第2掛止部とを引っ掛けて止めることによって、前記車室内壁に前記内装部品が着脱可能に取り付けられてなる車両用内装部品の取付構造であって、
前記車室内壁の内部に設けられ、一方の開口端が車室内に向けて開口するとともに他方の開口端が前記車室内壁の内部に向けて開口する態様で延びる環状壁部と、
先端部分が前記車室内壁に沿って延びる態様で前記内装部品に突設され、基端側の部分よりも先端側の部分のほうが前記車室内壁に沿う方向において幅広の形状をなす段部を前記先端部分が有し、前記段部よりも先端側の部分が前記環状壁部を通過した状態になるように同環状壁部に挿通される係止爪と、を有
し、
前記第1掛止部および前記第2掛止部の一方がラッチ爪によって構成されるとともに、前記第1掛止部および前記第2掛止部の他方がラッチ本体によって構成され、前記ラッチ爪を前記ラッチ本体の側に押圧する操作を通じて、前記ラッチ爪および前記ラッチ本体が掛止された掛止状態と、前記ラッチ爪および前記ラッチ本体の掛止が解除された解除状態と、を切替可能になっており、
前記解除状態であるときには、前記内装部品は、前記係止爪と前記環状壁部とが係合している部分を中心に前記車室内壁に対して回動可能になっている車両用内装部品の取付構造。
【請求項2】
前記係止爪は、前記先端側の部分と前記基端側の部分との間に、前記基端側の部分よりも前記車室内壁に沿う方向において幅狭の形状をなす凹部を有
し、
前記凹部は、前記車室内壁に前記内装部品が取り付けられた状態において前記環状壁部の前記内装部品の内部側の端部と対向する位置になるように設けられる
請求項1に記載の車両用内装部品の取付構造。
【請求項3】
前記係止爪の前記先端側の部分の各部における前記車室内壁に沿う方向の幅のうちの最大値が、前記環状壁部の各部における前記車室内壁に沿う方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値よりも大きくなっており、
前記係止爪の前記基端側の部分の各部における前記車室内壁に沿う方向の幅のうちの最大値が、前記最小値以下になっている
請求項1または2に記載の車両用内装部品の取付構造。
【請求項4】
前記係止爪の先端は、同先端に向かうに連れて前記車室内壁に沿う方向の幅が小さくなるテーパ形状をなしている
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用内装部品の取付構造。
【請求項5】
前記車室内壁は、車室の天井壁である
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用内装部品の取付構造。
【請求項6】
前記内装部品は、空調装置用のフィルター部材である
請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用内装部品の取付構造。
【請求項7】
内装部品に設けられた第1掛止部と車両の車室内壁に設けられた第2掛止部とを引っ掛けて止めることによって、前記車室内壁に前記内装部品が着脱可能に取り付けられてなる車両用内装部品の取付構造であって、
前記車室内壁の内部に設けられ、一方の開口端が車室内に向けて開口するとともに他方の開口端が前記車室内壁の内部に向けて開口する態様で延びる環状壁部と、
先端部分が前記車室内壁に沿って延びる態様で前記内装部品に突設され、基端側の部分よりも先端側の部分のほうが前記車室内壁に沿う方向において幅広の形状をなす段部を前記先端部分が有し、前記段部よりも先端側の部分が前記環状壁部を通過した状態になるように同環状壁部に挿通される係止爪と、を有し、
前記係止爪は、前記先端側の部分と前記基端側の部分との間に、前記基端側の部分よりも前記車室内壁に沿う方向において幅狭の形状をなす凹部を有し、
前記凹部は、前記車室内壁に前記内装部品が取り付けられた状態において前記環状壁部の前記内装部品の内部側の端部と対向する位置になるように設けられる車両用内装部品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内壁に内装部品を取り付ける車両用内装部品の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ルーフの内壁に空調装置用の空気吹き出し口(いわゆるレジスタ)が設けられた車両が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の車両では、一端がレジスタに固定されるとともに他端が車体に固定されたストラップを有している。このストラップにより、車両衝突などによる衝撃によってレジスタが天井内壁から外れた場合であっても、同レジスタが車室内で飛散することが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内装部品の中には、空調装置の空気吸い込み口に設けられるフィルター部材などのように、定期的なメンテナンスが必要なものがある。そうしたフィルター部材を有する車両に特許文献1に記載のストラップを適用すると、メンテナンスのためにフィルター部材を取り外す際に邪魔にならないように、ストラップを十分に長くする必要がある。このことから上記車両では、ルーフにフィルター部材を取り付けた状態で邪魔にならないようにストラップを収容するスペースが必要になるため、同スペースの分だけ大型化を招いてしまう。しかも、フィルター部材を車両ルーフに取り付ける際に、長いストラップをルーフ内部の収容スペースに収容する作業が必要になるため、取り付けにかかる作業が繁雑になってしまう。
【0005】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で車室内壁からの内装部品の脱落を抑えることのできる車両用内装部品の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両用内装部品の取付構造は、内装部品に設けられた第1掛止部と車両の車室内壁に設けられた第2掛止部とを引っ掛けて止めることによって、前記車室内壁に前記内装部品が着脱可能に取り付けられてなる車両用内装部品の取付構造であって、前記車室内壁の内部に設けられ、一方の開口端が車室内に向けて開口するとともに他方の開口端が前記車室内壁の内部に向けて開口する態様で延びる環状壁部と、先端部分が前記車室内壁に沿って延びる態様で前記内装部品に突設され、基端側の部分よりも先端側の部分のほうが前記車室内壁に沿う方向において幅広の形状をなす段部を前記先端部分が有し、前記段部よりも先端側の部分が前記環状壁部を通過した状態になるように同環状壁部に挿通される係止爪と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、内装部品の係止爪を車室内壁の環状壁部に挿通するとともに内装部品の第1掛止部を車両内壁の第2掛止部に掛止することによって、内装部品を車室内壁に取り付けることができる。しかも、上記構成によれば、車両衝突等による衝撃によって内装部品を車室内壁から離間させる力が内装部品に作用した場合には、内装部品の係止爪の先端部分の段差が車室内壁の環状壁部端部に引っ掛かるようにすることができる。これにより、車室内壁の環状壁部から内装部品の係止爪が脱出する方向への同内装部品の移動が制限されるようになるため、車室内壁から内装部品が脱落することが抑えられるようになる。このように上記構成によれば、ストラップ等の別部材が設けられない簡素な構成で、車室内壁からの内装部品の脱落を抑えることができる。
【0008】
上記取付構造において、前記係止爪は、前記先端側の部分と前記基端側の部分との間に、前記基端側の部分よりも前記車室内壁に沿う方向において幅狭の形状をなす凹部を有することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、内装部品の係止爪における先端側の部分と基端側の部分との間の部分(詳しくは、段差状をなす部分および凹部)が車室内壁の環状壁部の端部に引っ掛かり易い構造にすることができる。
【0010】
上記取付構造において、前記係止爪の前記先端側の部分の各部における前記車室内壁に沿う方向の幅のうちの最大値が、前記環状壁部の各部における前記車室内壁に沿う方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値よりも大きくなっており、前記係止爪の前記基端側の部分の各部における前記車室内壁に沿う方向の幅のうちの最大値が、前記最小値以下になっていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、係止爪の先端側の部分および環状壁部の少なくとも一方を変形させながら係止爪を環状壁部に押し込むことにより、係止爪の先端部分が環状壁部に挿通された状態にすることができる。これにより、係止爪における環状壁部を通過した部分(係止爪の先端側の部分)の幅を環状壁部の開口幅よりも大きい状態にすることができる。したがって、内装部品の係止爪が車室内壁の環状壁部から脱出し難い構造にすることができる。
【0012】
上記取付構造において、前記係止爪の先端は、同先端に向かうに連れて前記車室内壁に沿う方向の幅が小さくなるテーパ形状をなしていることが好ましい。
上記構成によれば、係止爪を環状壁部に挿通させる際に、係止爪の先端外面と環状壁部内面との当接を通じて同係止爪が環状壁部の内部に案内されるようになる。これにより、係止爪を環状壁部にスムーズに挿通させることができるため、内装部品の車室内壁への取り付けをスムーズに行うことができる。
【0013】
上記取付構造において、前記車室内壁は、車室の天井壁である。
車室の天井壁に着脱可能に取り付けられた内装部品は、重力による影響を受け易いため、車両衝突等による衝撃に起因する同天井壁からの脱落が懸念される。上記構成によれば、そうした内装部品の天井壁からの脱落を抑えることができる。
【0014】
上記取付構造において、前記内装部品は、空調装置用のフィルター部材である。
空調装置用のフィルター部材は、定期的なメンテナンスが必要になるため、簡単に着脱することのできる取付構造が求められる。この点、上記構成によれば、フィルター部材の係止爪を車室内壁の環状壁部に挿通した後に、フィルター部材の第1掛止部を車両内壁の第2掛止部に掛止するといった簡単な手順で、フィルター部材を車室内壁に取り付けることができる。また、フィルター部材の第1掛止部と車両内壁の第2掛止部との掛止を解除した後に、フィルター部材の係止爪を車室内壁の環状壁部から脱出させるといった簡単な手順で、フィルター部材を車室内壁から取り外すことができる。さらに、上記構成によれば、車室内壁に取り付けられたフィルター部材が、車両衝突等による衝撃によって車室内壁から外れて脱落することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる車両用内装部品の取付構造によれば、簡素な構成で車室内壁からの内装部品の脱落を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車両用内装部品の取付構造が適用される車両のルーフを斜め下方から見た斜視図。
【
図2】ルーフに取り付けられた状態のフィルター部材およびその周辺の
図3の2-2線に沿った端面図。
【
図3】フィルター部材の(a)は側面図であり、(b)は底面図であり、(c)は側面図。
【
図4】取り付け過程におけるフィルター部材およびその周辺の斜視図。
【
図5】取り付け過程におけるフィルター部材およびその周辺の斜視図。
【
図6】サイドエアバッグ装置の配設態様を示す側面図。
【
図7】第1係止爪およびその周辺の(a)は側面図であり、(b)は底面図であり、(c)は側面図。
【
図8】環状壁部に挿通された状態の第1係止爪の
図2の8-8線に沿った端面図。
【
図9】挿入過程におけるフィルター部材およびその周辺の側端面図。
【
図10】挿入過程における第1係止爪の
図9の10-10線に沿った端面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
車両用内装部品の取付構造の一実施形態を
図1~
図10に基づいて説明する。なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、車両上下方向を上下方向として説明する。また、車幅方向における左右方向は、前方および上下方向を基準に規定する。
【0018】
図1および
図2に示すように、車両の天井壁(以下、ルーフ11)には、空調装置用のフィルター部材20が着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、ルーフ11が車室内壁に相当し、フィルター部材20が内装部品に相当する。
【0019】
図2に示すように、ルーフ11は、合成樹脂材料からなるルーフヘッドアッシー12と、布材からなる内張り13とを有している。ルーフヘッドアッシー12は車両外装を構成するルーフパネル(図示略)の車室内側を覆うように設けられており、内張り13はルーフヘッドアッシー12の車室内側を覆うように設けられている。ルーフ11の内部には、空調装置の空気吸い込み通路の一部を構成するダクト14が設けられている。ルーフ11には開口部15が設けられており、この開口部15において上記ダクト14の車室内側の部分が開口している。そして、フィルター部材20は、開口部15を塞ぐようにルーフ11に取り付けられている。
【0020】
図3(a)、
図3(b)および
図3(c)に示すように、フィルター部材20は、外形が略四角形状をなす本体部21を有している。この本体部21の中央部分は格子状をなしている。本体部21の格子状の部分の上面には不織布からなる濾過部材22が固定されている。
【0021】
本体部21の上面には、2つの係止爪(第1係止爪23および第2係止爪24)が突設されている。第1係止爪23および第2係止爪24は、上方に延びる基部31と、同基部31の突端からルーフ11(
図2参照)の内壁に沿って前方に延びる爪部32とからなる断面L字状をなしている。各係止爪23,24における基部31の後面と爪部32の上面とには、各係止爪23,24の延伸方向において平行に延びる3本のリブ33が一体に設けられている。第1係止爪23は本体部21の前縁における左側の角部分近傍に設けられており、第2係止爪24は本体部21の前縁における右側の角部分の近傍に設けられている。
【0022】
また、本体部21の上面には、第1掛止部としてのラッチ爪25が2つ突設されている。ラッチ爪25は、本体部21の後縁における左側の角部分近傍と右側の角部分の近傍とに設けられている。各ラッチ爪25は、上下方向に延びる基部31と、同基部31の先端部分であり且つ前後方向の幅が基部31よりも広い部分(ラッチ部25A)とによって構成されている。
【0023】
図2および
図4に示すように、ルーフ11における開口部15の周辺には、フィルター部材20を取り付けるための構成として、2つの環状壁部16と2つのラッチ本体17とが設けられている。
【0024】
環状壁部16は、ルーフ11の開口部15の前縁における各係止爪23,24に対応する部分に設けられている。具体的には、2つの環状壁部16の一方は開口部15の前縁における左側の角部分近傍に設けられており、他方は開口部15の前縁における右側の角部分の近傍に設けられている。各環状壁部16は、ルーフ11の内部において、同ルーフ11の開口部15の内縁における前方側の部分から前方に向かって斜め上方に四角筒状で延びている。また各環状壁部16は、一方の開口端が車室内に向けて開口するとともに他方の開口端がルーフ11の内部に向けて開口する態様で延びている。フィルター部材20をルーフ11に取り付ける際には、これら環状壁部16にフィルター部材20の各係止爪23,24が挿通される。
【0025】
ラッチ本体17は、ルーフ11の開口部15の後縁における各ラッチ爪25に対応する部分に固定されている。具体的には、2つのラッチ本体17の一方は開口部15の後縁における左側の角部分近傍に設けられており、他方は開口部15の後縁における右側の角部分の近傍に設けられている。各ラッチ本体17は、下部において開口したボックス状をなしている。本実施形態では、ラッチ本体17が第2掛止部に相当する。
【0026】
各ラッチ本体17は、フィルター部材20の着脱に際して次のように作動する。すなわち、ラッチ本体17の下部開口にラッチ爪25の先端が当接した状態で、同ラッチ爪25(具体的には、フィルター部材20)が上方に押圧されると、ラッチ爪25の先端(ラッチ部25A)がラッチ本体17の内部に進入して掛止されるようになる。また、その状態でフィルター部材20(詳しくは、ラッチ爪25が設けられた部分)の下面が上方に押圧されると、ラッチ爪25とラッチ本体17との掛止が解除されて、ラッチ爪25がラッチ本体17から外れるようになる。
【0027】
フィルター部材20の取り付けは次のように行われる。
図4中に白抜きの矢印で示すように、フィルター部材20を後方から前方に向けて斜め上方に移動させることによって、フィルター部材20の各係止爪23,24がルーフ11の環状壁部16に挿入される。その後、
図5に示すように、各係止爪23,24と環状壁部16とが係合している部分を中心に、フィルター部材20を上方に回動させる。これにより、フィルター部材20のラッチ爪25の先端がルーフ11のラッチ本体17の下部開口に当接した状態になる。そして、この状態でフィルター部材20の下面が上方に押圧される。これにより、フィルター部材20のラッチ爪25がルーフ11のラッチ本体17に引っ掛けられて掛止された状態(
図2に示す状態)になる。
【0028】
このように本実施形態によれば、フィルター部材20の各係止爪23,24をルーフ11の環状壁部16に挿通した後に、同フィルター部材20のラッチ爪25をルーフ11のラッチ本体17に掛止するといった簡単な手順で、フィルター部材20をルーフ11に取り付けることができる。
【0029】
また、フィルター部材20の取り外しは次のように行われる。先ず、フィルター部材20の下面が上方に押圧されて、フィルター部材20のラッチ爪25とルーフ11のラッチ本体17との掛止が解除される。その後、各係止爪23,24と環状壁部16とが係合している部分を中心に、フィルター部材20を下方に回動させる。そして、その状態(
図5に示す状態)でフィルター部材20を前方から後方に向けて斜め下方に移動させることによって、フィルター部材20の各係止爪23,24がルーフ11の環状壁部16から引き抜かれる。
【0030】
このように本実施形態によれば、フィルター部材20のラッチ爪25とルーフ11のラッチ本体17との掛止を解除した後に、同フィルター部材20の各係止爪23,24をルーフ11の環状壁部16から脱出させるといった簡単な手順で、フィルター部材20をルーフ11から取り外すことができる。
【0031】
図6に示すように、ルーフ11(詳しくは、ルーフサイド)の内部にはカーテンエアバッグ装置18が設けられている。このカーテンエアバッグ装置18は、折り畳まれた状態のエアバッグ本体18Aと、エアバッグ本体18Aの内部に膨張用のガスを供給するインフレータ18Bとを有している。
図6に二点鎖線で示すように、カーテンエアバッグ装置18の非作動時には、エアバッグ本体18Aは折り畳まれた状態でルーフ11内部に収容されている。そして、
図6に破線で示すように、車両衝突等による衝撃によってカーテンエアバッグ装置18が作動すると、エアバッグ本体18Aは膨張しつつルーフ11外部に飛び出して、サイドウインドウ19の車室内側で展開する。
【0032】
ここで、エアバッグ本体18Aはルーフ11内部に設けられているため、カーテンエアバッグ装置18の作動に際してエアバッグ本体18Aが膨張展開すると、ルーフ11(詳しくは、ルーフヘッドアッシー12[
図2])が短い時間において撓むようになる。そして、ルーフヘッドアッシー12が撓むことに伴って、フィルター部材20のラッチ爪25とルーフ11のラッチ本体17との掛止が強制的に解除されるおそれがある。フィルター部材20はルーフ11に取り付けられているため、重力による影響を受け易い。そのため、ラッチ爪25とラッチ本体17との掛止が強制解除されたときには、重力によってフィルター部材20が下方に回動するとともに斜め下方に滑り落ちる等して、ルーフ11から脱落してしまうおそれがある。このことから、フィルター部材20の取付構造は、同フィルター部材20がルーフ11から簡単に外れない構造であることが好ましい。
【0033】
その一方で、フィルター部材20は空調装置用のものであり、定期的なメンテナンスが必要になるため、簡単に着脱することのできる取付構造が求められる。また、フィルター部材20のルーフ11への取り付けに際して作業者にかかる荷重(取り付け荷重)をあまり大きくしたくはないといった実情がある。
【0034】
こうした実情をふまえて、本実施形態では、2つの係止爪23,24の一方(第1係止爪23)とこれが挿入される環状壁部16とが、適度な挿入荷重でのフィルター部材20の取り付けとルーフ11からのフィルター部材20の脱落の抑制とを共に実現可能な形状になっている。
【0035】
以下、そうした第1係止爪23および環状壁部16の形状について説明する。
図7(a)、
図7(b)および
図7(c)に示すように、フィルター部材20がルーフ11に取り付けられた状態において、第1係止爪23の爪部32の車幅方向における両端にはそれぞれ凸部34が突設されている。これら凸部34は車幅方向および前後方向に延びている。そして、各凸部34は、第1係止爪23の先端部分(具体的には、爪部32の配設部分)の外形が以下に記載する形状になる態様で突設されている。
【0036】
フィルター部材20がルーフ11に取り付けられた状態において、第1係止爪23の先端部分における先端側の部分(先端部35)と基端側の部分(基端部36)との境界では、先端部35のルーフ11に沿う方向(車幅方向)の幅が、基端部36の車幅方向の幅よりも広くなっている。これにより、第1係止爪23の先端部分における車幅方向の両側面には、先端部35と基端部36との境界にそれぞれ、先端部35が基端部36よりも幅広の形状をなす段部37が形成されている。また、第1係止爪23の先端部35の先端側の部分は、同先端に向かうに連れて車幅方向の幅が小さくなる先細のテーパ形状をなしている。さらに、第1係止爪23の先端部分における車幅方向の両側面、すなわち各凸部34の突端には、先端部35と基端部36との間に、車幅方向に窪んだ形状の凹部38が形成されている。これにより、第1係止爪23の先端部分は、基端部36よりも凹部38の配設部分のほうが車幅方向において幅狭の形状をなしている。
【0037】
図8に示すように、本実施形態では、フィルター部材20がルーフ11に取り付けられた状態、すなわち第1係止爪23が環状壁部16に挿通された状態において、第1係止爪23の先端部35が環状壁部16を通過した状態になる。
【0038】
そして、第1係止爪23の先端部35の各部における車幅方向の幅のうちの最大値(
図8に「W1」で示す値)が、環状壁部16の各部における車幅方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値(
図8に「W2」で示す値)よりも若干(本実施形態では、0.15mm)大きくなっている。また、第1係止爪23の基端部36の各部における車幅方向の幅のうちの最大値(
図8に「W3」で示す値)が、環状壁部16の各部における車幅方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値W2よりも若干(本実施形態では、0.10mm)小さくなっている。なお本実施形態では、環状壁部16における車幅方向で対向する内壁面の間隔が各部において略同一になっている。
【0039】
以下、本実施形態の取付構造を採用することによる作用効果について説明する。
図9に矢印P1で示すように、フィルター部材20のルーフ11への取り付けに際しては先ず、フィルター部材20の第1係止爪23および第2係止爪24がルーフ11の環状壁部16に挿入される(
図4参照)。本実施形態では、第1係止爪23の先端部35の先端側の部分が同先端に向けて先細のテーパ形状をなしている。そのため、第1係止爪23を環状壁部16に挿通させる際に、第1係止爪23の先端外面と環状壁部16の内面との当接を通じて同第1係止爪23が環状壁部16の内部に案内されるようになる。これにより、第1係止爪23を環状壁部16にスムーズに挿通させることができるため、フィルター部材20のルーフ11への取り付けをスムーズに行うことができる。
【0040】
その後、
図9に矢印P2で示すように、第1係止爪23と環状壁部16とが係合している部分を中心に、フィルター部材20が上方に回動される(
図5参照)。
本実施形態では、第1係止爪23の先端部35の各部における車幅方向の幅の最大値W1が、環状壁部16の各部における車幅方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値W2よりも若干大きくなっている。そのため、
図10に示すように、このときには第1係止爪23の先端部35および環状壁部16の少なくとも一方を変形させながら第1係止爪23が環状壁部16に押し込まれる。このようにして、第1係止爪23の先端部分が環状壁部16に挿通された状態にすることができる。
【0041】
また本実施形態では、第1係止爪23の車幅方向の両側面における先端部35と基端部36との間には、車幅方向に窪んだ形状の凹部38が形成されている。そのため、第1係止爪23の先端部35が環状壁部16を通過しているときには作業者にかかる取り付け荷重が比較的大きい状態であるのに対して、第1係止爪23の先端部35が環状壁部16を通過したタイミングで、作業者にかかる取り付け荷重が略「0」になる。このようにして取り付け荷重が瞬時に小さくなることをもって、フィルター部材20の第1係止爪23の環状壁部16への挿通が完了したことを、作業者に感知させることができる。こうした構造を採用することにより、フィルター部材20のルーフ11への取り付けを適切に行うことができるようになる。
【0042】
図8に示すように、フィルター部材20のルーフ11への取り付けが完了すると、第1係止爪23が環状壁部16に挿通された状態になる。このとき第1係止爪23の先端部35が環状壁部16を通過した状態になる。そして、本実施形態では、第1係止爪23の車幅方向の両側面における先端部35と基端部36との境界にそれぞれ、先端部35が基端部36よりも幅広の形状をなす段部37が形成されている。そのため、カーテンエアバッグ装置18の作動に伴ってルーフヘッドアッシー12が変形してフィルター部材20をルーフ11から離間させる力が同フィルター部材20に作用した場合には、第1係止爪23の先端部分の段部37が環状壁部16のルーフ11内部側(
図8の左側)の端部に引っ掛かるようになる。これにより、第1係止爪23の環状壁部16からの脱出が抑えられるようになる。
【0043】
また本実施形態では、第1係止爪23の車幅方向の両側面における先端部35と基端部36との境界にあたる部分に、車幅方向に窪んだ形状の凹部38が形成されている。これにより、そうした凹部38が形成されない場合と比較して、第1係止爪23における先端部35と基端部36との間で上記環状壁部16のルーフ11内部側の端部と対向する部分(段部37の外面および凹部38の内面における先端部35側の部分)の車幅方向の長さが長くなっている。そのため、フィルター部材20の第1係止爪23における先端部35と基端部36との間の部分(詳しくは、段部37および凹部38)が環状壁部16の端部に引っ掛かり易い構造にすることができる。
【0044】
さらに本実施形態では、第1係止爪23の先端部35の各部における車幅方向の幅の最大値W1が、環状壁部16の各部における車幅方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値W2よりも若干大きくなっている。これにより、第1係止爪23における環状壁部16を通過した部分(先端部35)の車幅方向の幅が、環状壁部16の車幅方向における開口幅よりも大きくなっている。こうした構造によっても、フィルター部材20の第1係止爪23がルーフ11の環状壁部16から脱出し難い構造になる。
【0045】
こうしたことから、ルーフ11の環状壁部16からフィルター部材20の第1係止爪23が脱出する方向への同フィルター部材20の移動が制限されるようになるため、ルーフ11からフィルター部材20が脱落することが抑えられるようになる。このように本実施形態によれば、ストラップ等の別部材が設けられない簡素な構成で、ルーフ11からのフィルター部材20の脱落を抑えることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)簡素な構成でルーフ11からのフィルター部材20の脱落を抑えることができる。
【0047】
(2)第1係止爪23の車幅方向の両側面における先端部35と基端部36との境界にあたる部分に、車幅方向に窪んだ形状の凹部38が形成されている。そのため、フィルター部材20の第1係止爪23における先端部35と基端部36との間の部分が環状壁部16の端部に引っ掛かり易い構造にすることができる。
【0048】
(3)第1係止爪23の先端部35の各部における車幅方向の幅の最大値W1が、環状壁部16の各部における車幅方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値W2よりも若干大きくなっている。そのため、フィルター部材20の第1係止爪23がルーフ11の環状壁部16から脱出し難い構造にすることができる。
【0049】
(4)第1係止爪23の先端部35の先端側の部分が、同先端に向けて先細のテーパ形状をなしている。これにより、第1係止爪23を環状壁部16にスムーズに挿通させることができるため、フィルター部材20のルーフ11への取り付けをスムーズに行うことができる。
【0050】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・第1係止爪23の基端部36の各部における車幅方向の幅のうちの最大値W1と、環状壁部16の各部における車幅方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値W2とを同一にしてもよい。
【0051】
・ルーフ11にラッチ爪25を設けるとともにフィルター部材20にラッチ本体17を設けるようにしてもよい。
・ラッチ爪25とラッチ本体17とを掛止する構造に代えて、工具を使用することなく部材の弾性変形を利用してフィルター部材20をルーフ11に掛止して着脱可能に取り付ける構造を採用することができる。そうした構造としては、樹脂クリップによって掛止する構造や、スナップフィット構造などを挙げることができる。
【0052】
・第1係止爪23の先端部35と基端部36との間に形成された凹部38を省略してもよい。
・第1係止爪23の先端部35の各部における車幅方向の幅のうちの最大値(
図8の「W1」参照)と、環状壁部16の各部における車幅方向で対向する内壁面の間隔のうちの最小値(
図8の「W2」参照)とを同一にしてもよい。また、上記最大値W1を最小値W2よりも若干小さくすることも可能である。こうした構成によっても、第1係止爪23の先端部35と基端部36との間の段部37を、ルーフ11の環状壁部16のルーフ11内部側の端部に引っ掛けることが可能になるため、フィルター部材20の第1係止爪23がルーフ11の環状壁部16から脱出することを抑えることができる。
【0053】
・テーパ形状をなす先端部35の先端側の部分における車幅方向の両端部の形状は、
図8に示すように車幅方向の外方に向けて突出する凸状の湾曲形状にすることの他、基端部36側から先端部35の先端に向けて直線状に延びる直線形状にすることもできる。また、第1係止爪23の先端部35の先端側の部分を、車幅方向の幅が同一で延びる形状にするなど、テーパ形状以外の形状に形成することができる。
【0054】
・第2係止爪24を第1係止爪23と同一の構造にしてもよい。
・上記実施形態にかかる取付構造の適用対象とする内装部品は、例えば空気清浄機用のフィルター部材など、ルーフに着脱可能に取り付けられる内装部品であれば任意に変更することができる。また上記実施形態にかかる取付構造は、車室の側壁に取り付けられる内装部品にも適用可能である。
【0055】
・上記実施形態にかかる取付構造は、カーテンエアバッグ装置18が搭載されていない車両にも適用することができる。こうした構成によっても、衝突等によって車両に衝撃が加わったときにおいて車室内壁から内装部品が脱落し難い構造にすることができる。
【符号の説明】
【0056】
11…ルーフ、12…ルーフヘッドアッシー、13…内張り、14…ダクト、15…開口部、16…環状壁部、17…ラッチ本体、18…カーテンエアバッグ装置、18A…エアバッグ本体、18B…インフレータ、19…サイドウインドウ、20…フィルター部材、21…本体部、22…濾過部材、23…第1係止爪、24…第2係止爪、25…ラッチ爪、25A…ラッチ部、31…基部、32…爪部、33…リブ、34…凸部、35…先端部、36…基端部、37…段部、38…凹部。