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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】栽培設備
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/02 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
A01G31/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018245462
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020103147
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】手塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】武田 康志
(72)【発明者】
【氏名】大越 崇博
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-040836(JP,A)
【文献】特開2013-153691(JP,A)
【文献】特開平02-299515(JP,A)
【文献】特開2016-123283(JP,A)
【文献】特開2000-023558(JP,A)
【文献】特開昭63-049023(JP,A)
【文献】特開2016-032441(JP,A)
【文献】特開2017-079680(JP,A)
【文献】特開2014-217383(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106035046(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00 - 7/06
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を入れる水槽(1)と、植物の株(k)を定植する樹脂製の定植用パネル(2)と、定植用パネル(2)の上方に位置し、定植用(3)パネルから伸長する植物の株(k)の上部を案内する案内孔(3a)を形成する遮光パネル(3)と、遮光パネル(3)を上昇動作可能な昇降装置(5)を備え、
遮光パネル(3)の上方に、人工光を照射する人工光用照射部材(13)を設け、
人工光用照射部材(13)を昇降動作可能に構成し
水槽(1)に株(k)の根が通過するための孔(17a)を多数形成するメタル部材(17)を載置し、メタル部材(17)に定植用パネル(2)を載置することを特徴とする栽培設備。
【請求項2】
定植用パネル(2)上には株(k)の周囲を覆う覆い筒体(7)を載置し、栽培開始時には覆い筒体(7)の上部を遮光パネル3の下面に当接させることを特徴とする請求項1記載の栽培設備。
【請求項3】
人工光用照射部材(13)と、遮光パネル(3)との距離を所定間隔に保つように上昇制御させる制御部を設け、遮光パネル(3)の上面に突出する植物の株(k)の生長を検出するセンサ(14)を設け、該センサ(14)の検出結果に基づいて遮光パネル(3)を上昇動作させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養液で植物を栽培する栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、いわゆる軟白ネギ栽培装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-23558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、室内でも栽培できる栽培設備にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
培養液を入れる水槽(1)と、植物の株(k)を定植する樹脂製の定植用パネル(2)と、定植用パネル(2)の上方に位置し、定植用(3)パネルから伸長する植物の株(k)の上部を案内する案内孔(3a)を形成する遮光パネル(3)と、遮光パネル(3)を上昇動作可能な昇降装置(5)を備え、
遮光パネル(3)の上方に、人工光を照射する人工光用照射部材(13)を設け、
人工光用照射部材(13)を昇降動作可能に構成し
水槽(1)に株(k)の根が通過するための孔(17a)を多数形成するメタル部材(17)を載置し、メタル部材(17)に定植用パネル(2)を載置することを特徴とする栽培設備とする。
植物の収穫時には定植用パネル2を持ち上げてメタル部材17と離間させ、当該離間した部分にカッター等の根の切断装置を挿入することで、株kの根を切断する。
これにより、定植用パネル2を持ち上げ易くすることができ、定植用パネル2から植物を引き抜きやすくすることができる。
請求項2記載の発明は、定植用パネル(2)上には株(k)の周囲を覆う覆い筒体(7)を載置し、栽培開始時には覆い筒体(7)の上部を遮光パネル3の下面に当接させることを特徴とする。
これにより、
請求項3記載の発明は、
人工光用照射部材(13)と、遮光パネル(3)との距離を所定間隔に保つように上昇制御させる制御部を設け、遮光パネル(3)の上面に突出する植物の株(k)の生長を検出するセンサ(14)を設け、該センサ(14)の検出結果に基づいて遮光パネル(3)を上昇動作させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の栽培設備とする。
これにより、株の生長に応じた栽培を行うことができる。
また、人工光と株の上端部との距離を一定にでき、良好な栽培がおこなうことができる
【発明の効果】
【0006】
本発明により、室内で人工光による栽培を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】栽培設備の斜視図
図2】定植用パネルと遮光パネルで支持される株を示す図
図3】定植用パネルの下にメタル部材を挿入して栽培することを示す図
図4】定植用パネルの水槽への着脱及び株を定植することを示す模式図
図5】栽培設備のレイアウトの一例を示す図
図6】人工光による栽培の一例を示す図
図7】制御による遮光パネルの上昇を示す図
図8】植物が生長した状態を示す図
図9】昇降装置の一例を示す図
図10】株の生長をセンサで検出することを示す図
図11】定植用パネルと遮光パネルで支持される株を示す図
図12】定植用パネルの下にメタル部材を挿入していることを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態の設備について以下説明する。
【0009】
図2に示すように、培養液を入れる水槽1に植物の株kを定植する定植用パネル2を設ける。
【0010】
定植用パネル2には、植物の株kを定植する定植用の孔2aを多数設けている。すなわち、一つの株kを一つの定植用の孔2aに定植する構成である。
【0011】
定植用パネル2の上方には、植物の株kの上部が貫通する案内孔3aを多数設ける遮光パネル3を設ける。定植用パネル2と遮光パネル3は発泡スチロール等の樹脂性が望ましい。定植用パネル2は水槽1側に支持され、遮光パネル3はステー等の昇降用支持具4に支持される構成とする。なお、定植用パネル2と遮光用パネル3の載置位置は上下方向に同じ位置に設ける。これにより、定植用の孔2aと案内孔3aとが対向する位置に位置決めさせることができる。
【0012】
図1に示すように、昇降用支持具4及び遮光パネル3は、水槽1の上部より上方に向かって延びる昇降装置5によって上下方向に昇降可能に構成する。昇降装置5は例えばギアラックやネジ式のシャフト等で構成するのが望ましい。昇降装置5は架台30の支柱に取り付ける構成でも良いし、架台の支柱を兼ねてもよい。
【0013】
昇降用支持具4は手動用ハンドル12や、昇降装置5の駆動モータMの駆動により上下動する構成である。駆動モータMの配置は適宜行うことができる。
【0014】
水槽1の周囲には水槽1を覆う暗幕18で覆う。暗幕18は昇降用支持具4側に支持される構成である。また、遮光パネル3の上方には天井部6を設ける。
【0015】
定植用パネル2と遮光パネル3は所定間隔で離間し、定植用の孔2aと案内孔3aを上下方向に対向する位置に設ける。栽培の開始時には、植物の株kの下部を定植用の孔2aに挿入し、株kの根を水槽1内の培養液に浸されるようにする。そして、株kの上部を案内孔3aを通過させて、株kの上端部を遮光パネル3より上方に突出させる。すなわち、株kの上端部以外は、遮光パネル3により外光に晒されないように構成している。
【0016】
図2に示すように、定植用パネル2と遮光パネル3の外形は同型に形成しており、相違点は、定植用パネル2の孔の径より遮光パネル3の径を小さく形成している。これにより、遮光パネル3を株kの上部が通過しながら外光が遮光パネル4を通過しにくくすることができながら、株kを定植用パネルの孔2aに定植しやすくすることができる。また、定植用パネル2上には株kの周囲を覆う覆い筒体7を載置する。そして、栽培開始時には覆い筒体7の上部を遮光パネル3の下面に当接させることで、株kの上部が遮光パネル3の案内孔3aに案内しやすいようにしている。また、栽培開始時に覆い筒体7の上部に遮光パネル3が当接する構成にすることで、定植用パネル2と遮光パネル3の距離を一定にすることができる。また、株kを案内孔3aに挿入しやすくすることができる。覆い筒体7は定植用パネル2及び遮光用パネル3に対して特に固定しない構成にすることで、植物の収穫時には、覆い筒体7を簡単に定植用パネル2から取り外すことができる。
【0017】
図11に示すように、遮光パネル3の案内孔3aは上端部から下広がりのテーパー状に形成してもよい。これにより、株kの上部を遮光パネル3の案内孔3aに案内しやすくすることができる。この場合には、案内孔3aの下部の径を定植用パネルの孔2aより大きくしてもよい。この場合にも、案内孔3aの上端部が定植用パネルの孔2aの上端部より小さく形成することが遮光能力上望ましい。
【0018】
図4には、定植用パネル2の水槽1への取り付け構成が示されている。すなわち、水槽1には、定植用パネル2を載置するためのフランジ部1aが側面方向に延びるよう形成されており、定植用パネル2下面をフランジ部1aに載置する構成であり、フランジ部1aに設ける位置決め部1bで位置決めされる。これにより、定植用パネル2を簡単な構成で設置したり取り外したりすることができる。また、配置位置を一定にすることができる。
【0019】
遮光パネル3の上面には高反射フィルムを張り付け、下面には銀イオンを塗布するようにしてもよい。これにより、遮光パネル3より上方に突出した株kの上端部に照射する外光の量を増やして株kの促進を図ると共に、暗幕18に覆われ、かつ、水槽1側に面する下面の汚れを低減や防腐作用を促進させることができる。
【0020】
栽培時には、株kの生長に合わせて昇降装置5を作動させることにより、昇降用支持具4が上昇すると共に、暗幕18も上昇することで、絶えず株kの上端部分のみ外光に晒すようにしている。暗幕18と遮光パネル3により、株kの途中部は外光に晒されないため、株kの途中部の色が白色となる。
【0021】
株kが所定の長さまで生長したら、オペレータは遮光パネル3を取り外し、覆い筒体7を取り外し、定植用パネル2から植物の株kを引き抜いて収穫する。
あるいは、定植用パネル2毎水槽1より取り外して収穫してもよい。
【0022】
本実施の形態は白ネギ等のいわゆる軟白野菜を栽培するのに適している。
【0023】
次に、天井部6に栽培用の人工光用照射部材13を取り付けた場合について図6図7に基づいて説明する。
【0024】
図6に示すように、天井部6に人工光用照射部材13を取り付け、天井部6を昇降装置5で昇降自在に構成している。天井部6は、昇降用支持具4の上昇と共に上昇させる。すなわち、昇降用支持具4の上面と人工光照射部材13との距離を略一定とするよう調節する。これにより、株kの上端部への人工光の照射が一定となり、安定した栽培を行うことが可能である。
【0025】
昇降用支持具4の上昇及び天井部6の上昇は手動でも調節可能であるが、制御で上昇させることも可能である。例えば図10に示すように昇降用支持具4の上面に光電センサ14を配置する。光電センサ14は遮光パネル3より上方に突出する株kの上端部の長さを検出できる構成としており、図6に示すように光電センサ14による株kの上端部の生長の検出を制御部Sで判定する。そして、制御部Sから昇降装置5に出力することで、昇降用支持具4を所定距離上昇させる。光電センサ14も昇降用支持具4と共に上昇可能に構成することで、遮光パネル3から突出する株kの長さを良好に検出できる。光電センサ14はいわゆるエリアセンサでも可能である。
【0026】
人工光用照射部材13は調光器Tにより、光量の調節が可能である。光量は栽培開始から期間毎に変更制御するように設定する構成としてもよい。望ましくは、株kの生長に伴って光量を多くする。
【0027】
人工光用照射部材13を備える天井部6は図1に示すように固定式にして調光器Tにより株kの生長に応じて光量を変更する構成にしてもよい。
【0028】
あるいは、人工光用照射部材が無く、太陽光による栽培でも良い。
【0029】
図3及び図12には、定植用パネル2から植物を収穫する際に、定植用パネル2の下方から伸長する根を除去し易くするための構成である。すなわち、水槽1に株kの根が通過するための孔17aを多数形成するメタル部材17を載置し、メタル部材17に定植用パネル2を載置する。植物の収穫時には定植用パネル2を持ち上げてメタル部材17と離間させ、当該離間した部分にカッター等の根の切断装置Dを挿入することで、株kの根を切断する。これにより、定植用パネル2を持ち上げ易くすることができ、定植用パネル2から植物を引き抜きやすくすることができる。
【0030】
図5には、水槽1に培養液の供給及び排出を行う構成が示されている。水槽1を架台30に載置し、架台30の下方のスペースに培養液を収容する培養液収容タンク8を設置してもよい。培養液収容タンク8には水槽1へ培養液を供給する供給ポンプ18を設け、培養液供給ライン19を水槽1へ接続することで、培養液を水槽1へ供給する構成である。また、水槽1には、培養液を排出する培養液排出ライン20と培養液の排出を行うための排出弁21を設け、培養液排出ライン20は培養液収容タンク8と接続することで、排出した培養液を再度、利用できる構成である。なお、詳細は記載しないが培養液収容タンク8内に水や各種肥料を投入して培養液を生成できる構成としている。
【0031】
培養液収容タンク8内には培養液のEC値を検出するECセンサ及び培養液のph(ペーハ)を検出するpHセンサを設けてもよい。これにより、培養液の濃度,酸度管理が可能となる。また、リン酸イオンセンサを設けてリン酸イオンを管理し,欠乏症を予防できるようにしてもよい。特に、ネギ類はリンが欠乏することによる葉先の白変が生じることによる商品価値の低下を防止することができる。また、NH4+イオンセンサを設け、アンモニア態窒素(NH4+)を所定量供給することで、葉折れを防止することができる。
【0032】
また、水温計及び培養液の加温部材を設け、培養液の水温を所定範囲内の温度に維持することも可能である。
また、酸素濃度計とエアーポンプを加えた構成により、酸素濃度により撹拌用のエアーポンプをON-OFF制御し、溶存酸素濃度管理による生育促進を図ることができる。そして、エアーポンプの吐出口をタンク内水位よりも高く配管することで、撹拌時に水とエアを同時に落とし込むことで培養液内の酸素を確保することができる。エアーポンプは常時駆動でも良い。
【符号の説明】
【0033】
1 水槽
2 定植用パネル
3 遮光パネル
5 昇降装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12