(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
H01F27/29 G
(21)【出願番号】P 2019020882
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2020-10-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 啓雄
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 勇治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】石田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大西 浩司
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-072038(JP,A)
【文献】特開2005-228827(JP,A)
【文献】特開2005-340621(JP,A)
【文献】登録実用新案第3171315(JP,U)
【文献】国際公開第2016/136018(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる巻芯部ならびに前記巻芯部の前記軸線方向における互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、ドラム状コアと、
前記巻芯部に巻回された、ワイヤと、
前記ワイヤの端部に電気的に接続され、かつ前記第1鍔部および前記第2鍔部にそれぞれ取り付けられた、金属板からなる複数の金属端子と、
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々は、前記軸線方向と平行に延びかつ実装時において実装基板側に向けられる底面と、前記巻芯部側とは逆の方向に向きかつ前記軸線方向に対して交差する方向に延びる外側端面を有し、
前記複数の金属端子は、前記第1鍔部または前記第2鍔部の前記底面に沿って延びる基底部と、前記第1鍔部または前記第2鍔部の前記外側端面に沿って延びる立上がり部と、前記基底部と前記立上がり部とを連結し、かつ前記底面と前記外側端面とが交差する稜線部分を覆う屈曲部と、を有し、
前記複数の金属端子は、第1金属端子および第2金属端子を含み、
前記第1金属端子の前記立上がり部の少なくとも一部と前記第1鍔部の前記外側端面の少なくとも一部との双方に接する状態で設けられた第1接着剤層と、
前記第2金属端子の前記立上がり部の少なくとも一部と前記第2鍔部の前記外側端面の少なくとも一部との双方に接する状態で設けられた第2接着剤層と、
をさらに備え、
前記第1金属端子について、前記立上がり部における前記外側端面に対向する面全体が、前記外側端面に対して勾配を形成している勾配面を成しており、
前記第1接着剤層は、前記軸線方向に測定した厚みが最も厚い部分で13μm以上であ
り、
前記第1接着剤層の最も厚い部分は、前記勾配面と前記外側端面と間隔のより広い側に位置される、
コイル部品。
【請求項2】
前記第2接着剤層は、前記軸線方向に測定した厚みが最も厚い部分で13μm以上である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1接着剤層は、前記軸線方向に測定した厚みが最も厚い部分で19μm以上である、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2接着剤層は、前記軸線方向に測定した厚みが最も厚い部分で19μm以上である、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層はエポキシ系接着剤を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1金属端子について、前記基底部と前記立上がり部とが前記屈曲部において成す内角は、70度以上かつ90度未満であり、前記第1接着剤層の最も厚い部分は、前記立上がり部における前記屈曲部により近い側に位置される、請求項
1ないし5のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1金属端子について、前記基底部と前記立上がり部とが前記屈曲部において成す内角は、90度を超えかつ110度以下であり、前記第1接着剤層の最も厚い部分は、前記立上がり部における前記屈曲部からより遠い側に位置される、請求項
1ないし5のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項8】
軸線方向に延びる巻芯部ならびに前記巻芯部の前記軸線方向における互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、ドラム状コアと、
前記巻芯部に巻回された、ワイヤと、
前記ワイヤの端部に電気的に接続され、かつ前記第1鍔部および前記第2鍔部にそれぞれ取り付けられた、金属板からなる複数の金属端子と、
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々は、前記軸線方向と平行に延びかつ実装時において実装基板側に向けられる底面と、前記巻芯部側とは逆の方向に向きかつ前記軸線方向に対して交差する方向に延びる外側端面を有し、
前記複数の金属端子は、前記第1鍔部または前記第2鍔部の前記底面に沿って延びる基底部と、前記第1鍔部または前記第2鍔部の前記外側端面に沿って延びる立上がり部と、前記基底部と前記立上がり部とを連結し、かつ前記底面と前記外側端面とが交差する稜線部分を覆う屈曲部と、を有し、
前記複数の金属端子は、第1金属端子および第2金属端子を含み、
前記第1金属端子の前記立上がり部の少なくとも一部と前記第1鍔部の前記外側端面の少なくとも一部との双方に接する状態で設けられた第1接着剤層と、
前記第2金属端子の前記立上がり部の少なくとも一部と前記第2鍔部の前記外側端面の少なくとも一部との双方に接する状態で設けられた第2接着剤層と、
をさらに備え、
前記第1金属端子について、
前記立上がり部における前記外側端面に対向する面の一部が前記外側端面に対して勾配を形成している勾配面となっており、
前記勾配面は、前記立上がり部において、前記軸線方向に対して交差する方向かつ前記基底部の延びる方向に対して平行な方向に張り出す部分に形成されて
おり、
前記第1接着剤層は、前記軸線方向に測定した厚みが最も厚い部分で13μm以上であり、
前記第1接着剤層の最も厚い部分は、前記勾配面と前記外側端面と間隔のより広い側に位置される、
コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル部品に関するもので、特に、ドラム状コアに金属板からなる金属端子が取り付けられた構造を有するコイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明にとって興味ある技術として、たとえば特開2015-35473号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1には、ドラム状コアに金属板からなる複数の金属端子が取り付けられた構造を有するコイル部品が記載されている。
図10は、特許文献1から引用したもので、特許文献1における
図1に相当する。
【0003】
図10に示したコイル部品61は、コモンモードチョークコイルを構成するもので、たとえばフェライトからなるドラム状コア62と、第1ワイヤ63および第2ワイヤ64とを備えている。ドラム状コア62は、第1および第2ワイヤ63および64がその周面上に巻回される巻芯部(ワイヤ63,64の下に隠れて図示されない。)を備えるとともに、巻芯部の軸線方向における互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部65および第2鍔部66を備えている。
【0004】
第1鍔部65には、金属板からなる2個の金属端子67および69が取り付けられる。第2鍔部66には、金属板からなる2個の金属端子68および70が取り付けられる。なお、金属端子70については、第2鍔部66に隠れて図示されない。
【0005】
第1ワイヤ63の第1端は、第1鍔部65に設けられた第1金属端子67に接続され、第1ワイヤ63の第1端とは逆の第2端は、第2鍔部66に設けられた第2金属端子68に接続される。また、第2ワイヤ64の第1端は、第1鍔部65に設けられた第3金属端子69に接続され、第2ワイヤ64の第1端とは逆の第2端は、第2鍔部66に設けられた、図示されない第4金属端子70に接続される。
【0006】
金属端子67~70の各々がどのような状態で鍔部65および66の各々に取り付けられているかについて説明する。
【0007】
鍔部65および66の各々は、実装時において実装基板側に向けられる底面71と、巻芯部側に向きかつ巻芯部の各端部を位置させる内側端面72と、内側端面72の反対側の外側に向く外側端面73と、を有している。
【0008】
他方、金属端子67~70の各々は、鍔部65および66の各々の底面71側に配置された基底部74と、基底部74から、底面71と外側端面73とが交差する稜線部分を覆う屈曲部75を介して延び、鍔部65および66の各々の外側端面73側に配置された立上がり部76と、を有している。
【0009】
金属端子67~70の各々を鍔部65および66の各々に固定するため、接着剤が用いられる。接着剤は、金属端子67~70の各々の立上がり部76と鍔部65および66の各々の外側端面73とが対向する部分に付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の構造では、通常、立上がり部76を外側端面73に向かって押し付けた状態を維持したまま、接着剤が硬化されるので、接着剤は、薄く均一な厚みを有する接着剤層を形成し、強固な接着状態を実現する。
【0012】
上述のように、ドラム状コア62に金属板からなる第1~第4金属端子67~70が接着剤を介して取り付けられた構造を有するコイル部品61が、プリント基板のような実装基板にはんだ付けなどによって実装された状態においてヒートサイクルを受けると、第1~第4金属端子67~70の少なくとも1つとドラム状コア62との接着部分が剥がれることがある。
【0013】
これは、実装基板とフェライトからなるドラム状コア62との間で、ヒートサイクル時の膨張量および収縮量が比較的大きく異なるためである。すなわち、ヒートサイクルを受けたとき、フェライトからなるドラム状コア62はあまり膨張および収縮しないが、実装基板はそれに比べて大きく膨張および収縮する。そして、第1~第4金属端子67~70は実装基板の挙動に追従しようとするため、第1鍔部65側に取り付けられている第1金属端子67および第3金属端子69と、第2鍔部66側に取り付けられている第2金属端子68および第4金属端子70との間隔が比較的大きく変化する。その結果、金属端子67~70とドラム状コア62とを接着する接着剤層において亀裂が生じ、この亀裂が原因で接着部分が剥がれるという問題に遭遇することがあった。
【0014】
そこで、この発明の目的は、実装基板に実装された状態で付与されるヒートサイクルによっても、金属端子とドラム状コアとの接着部分の剥がれを生じにくくし得る、コイル部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、軸線方向に延びる巻芯部ならびに巻芯部の軸線方向における互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、ドラム状コアと、巻芯部に巻回された、ワイヤと、ワイヤの端部に電気的に接続され、かつ第1鍔部および第2鍔部にそれぞれ取り付けられた、金属板からなる複数の金属端子と、を備える、コイル部品に向けられる。
【0016】
上記第1鍔部および第2鍔部の各々は、軸線方向と平行に延びかつ実装時において実装基板側に向けられる底面と、巻芯部側とは逆の方向に向きかつ軸線方向に対して交差する方向に延びる外側端面を有する。他方、複数の金属端子は、第1鍔部または第2鍔部の底面に沿って延びる基底部と、第1鍔部または第2鍔部の外側端面に沿って延びる立上がり部と、基底部と立上がり部とを連結し、かつ底面と外側端面とが交差する稜線部分を覆う屈曲部と、を有する。
【0017】
この発明に係るコイル部品において、複数の金属端子は、第1金属端子および第2金属端子を含む。また、この発明に係るコイル部品は、第1金属端子の立上がり部の少なくとも一部と第1鍔部の外側端面の少なくとも一部との双方に接する状態で設けられた第1接着剤層と、第2金属端子の立上がり部の少なくとも一部と第2鍔部の外側端面の少なくとも一部との双方に接する状態で設けられた第2接着剤層と、をさらに備える。
この発明の第1の局面では、第1金属端子について、立上がり部における外側端面に対向する面全体が、外側端面に対して勾配を形成している勾配面を成している。この発明の第2の局面では、第1金属端子について、立上がり部における外側端面に対向する面の一部が外側端面に対して勾配を形成している勾配面となっており、勾配面は、立上がり部において、上記軸線方向に対して交差する方向かつ基底部の延びる方向に対して平行な方向に張り出す部分に形成されている。
そして、上述した技術的課題を解決するため、第1接着剤層は、上記軸線方向に測定した厚みが最も厚い部分で13μm以上であることを特徴とするとともに、第1接着剤層の最も厚い部分は、勾配面と外側端面と間隔のより広い側に位置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、実装基板に実装された状態で付与されるヒートサイクルによって生じる、ドラム状コアの寸法変化の挙動と、第1鍔部に取り付けられる金属端子と第2鍔部に取り付けられる金属端子との間隔変化の挙動と、の差異に起因する応力が接着剤層内にもたらされるが、この応力は少なくとも第1接着剤層の13μm以上の厚みを有する比較的厚い部分で受けるため、接着剤層内の応力が厚み方向に有利に分散される。したがって、接着剤層内の応力を低減させることができる。その結果、この発明に係るコイル部品によれば、金属端子とドラム状コアとの接着部分の剥がれを生じにくくすることができる。
【0019】
なお、接着剤層の最も厚い部分での厚みの13μmという下限値は、後述する実験によって求められたものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この
明細書において開示される第1の実施形態によるコイル部品1の外観を示す斜視図であり、(A)は比較的上方から見た図、(B)は比較的下方から見た図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品1における第1鍔部6への第1金属端子16の取付け部分を示す、
図1の線A-Aに沿う拡大断面図である。
【
図3】接着剤層の最も厚い部分での厚みの13μmという下限値を求める根拠となった接着剤層の厚みとヒートサイクル試験前後の端子強度の変化率との関係を示す図である。
【
図4】
図2に示した第1鍔部6への第1および第2金属端子16および17の取付け方法の一例を説明するための断面図である。
【
図5】この
明細書において開示される第2の実施形態を説明するための
図2に相当する拡大断面図である。
【
図6】この
明細書において開示される第3の実施形態を説明するための
図2に相当する拡大断面図である。
【
図7】この
明細書において開示される第4の実施形態を説明するための
図2に相当する拡大断面図である。
【
図8】この
明細書において開示される第5の実施形態を説明するための
図2に相当する拡大断面図である。
【
図9】この
明細書において開示される第6の実施形態によるコイル部品1aの外観を示す斜視図である。
【
図10】特許文献1に記載のコイル部品61の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および
図2を参照して、この
明細書において開示される第1の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図1に示したコイル部品1は、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するものである。なお、
図1において、2本のワイヤの主要部の図示は省略されている。
【0022】
コイル部品1に備えるドラム状コア2は、巻回される第1ワイヤ3および第2ワイヤ4を配置するもので、軸線方向Dに延びる巻芯部5と、巻芯部5の軸線方向Dにおける互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部6および第2鍔部7と、を備える。ドラム状コア2は、好ましくは、フェライトから構成される。なお、ドラム状コア2は、フェライト以外の非導電性材料、たとえば、アルミナのような非磁性体、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成されてもよい。
【0023】
ドラム状コア2に備える巻芯部5ならびに第1鍔部6および第2鍔部7は、たとえば四角形の断面形状を有する四角柱形状をなしている。また、四角柱形状の巻芯部5ならびに第1鍔部6および第2鍔部7の各々の稜線部分には、図示しないが、面取り形状が付与されることが好ましい。なお、巻芯部5ならびに第1鍔部6および第2鍔部7の断面形状は、四角形のほか、六角形などの多角形であっても、円形、楕円形であっても、これらの組み合わせであってもよい。
【0024】
第1鍔部6は、軸線方向Dに平行に延びかつ実装時において実装基板側に向けられる底面8と、底面8とは反対方向に向く天面10と、を有している。第1鍔部6は、また、底面8から立ち上がる面であって、実装基板に対して直交する方向にそれぞれ延びる、巻芯部5側に向く内側端面12aと、巻芯部5側とは逆の方向に向く外側端面12bと、内側端面12aおよび外側端面12b間を結ぶ第1側面12cおよび第2側面12dと、を有している。ここで、直交する方向とは、厳密に実装基板に対して直交している場合の他、直交する方向に対してある程度の角度をなしながら延びる場合をも含む。
【0025】
第2鍔部7についても第1鍔部6の場合と同様であり、軸線方向Dに平行かつ実装時において実装基板側に向けられる底面9と、底面9とは反対方向に向く天面11と、を有している。第2鍔部7は、また、底面9から立ち上がる面であって、実装基板に対して直交する方向にそれぞれ延びる、巻芯部5側に向く内側端面13aと、巻芯部5側とは逆の方向に向く外側端面13bと、内側端面13aおよび外側端面13b間を結ぶ第1側面13cおよび第2側面13dと、を有している。
【0026】
なお、鍔部6および7の外側端面12bおよび13bの各々の上辺に沿って突出する形状の段部は、本質的な特徴ではなく、形成されなくてもよい。
【0027】
第1鍔部6には、第1金属端子16および第3金属端子18が互いに間隔を隔てて取り付けられる。第2鍔部7には、第2金属端子17および第4金属端子19が互いに間隔を隔てて取り付けられる。第1~第4金属端子16~19は、通常、たとえばリン青銅やタフピッチ銅などの銅系合金からなる金属板を加工することにより製造される。第1~第4金属端子16~19の材料となる金属板には、好ましくは、錫めっきが施される。金属板は、たとえば0.10mm以上かつ0.15mm以下の厚みである。
【0028】
第1金属端子16および第3金属端子18の各々は、
図1に示されるように、第1鍔部6の底面8に沿って延びる基底部20と、基底部20から、第1鍔部6の底面8と外側端面12bとが交差する稜線部分21を覆う屈曲部22を介して連結され、第1鍔部6の外側端面12bに沿って延びる立上がり部23と、を有している。第1金属端子16および第3金属端子18の各々には、基底部20から延びる接続片24がさらに形成されている。
【0029】
なお、
図1には、第2金属端子17および第4金属端子19の各一部しか図示されないが、上述した第1金属端子16と第4金属端子19とは、互いに同じ形状であり、第2金属端子17と上述した第3金属端子18とは、互いに同じ形状である。したがって、上述した第1金属端子16および第3金属端子18における基底部、屈曲部、立上がり部および接続片をそれぞれ指すために用いた参照符号20、22、23および24は、必要に応じて、第2金属端子17および第4金属端子19における対応の部分をそれぞれ指すためにも用いることにする。
【0030】
第1ワイヤ3の第1端は、第1金属端子16の接続片24に電気的に接続される。第1ワイヤ3の第1端とは逆の第2端は、第2金属端子17の接続片24に電気的に接続される。第2ワイヤ4の第1端は、第3金属端子18の接続片24に電気的に接続される。第2ワイヤ4の第1端とは逆の第2端は、第4金属端子19の接続片24に電気的に接続される。これらの電気的接続には、たとえばレーザ溶接が適用される。
図1には、レーザ溶接によって形成された半球状に盛り上がる溶接塊部25が図示されている。
【0031】
第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、通常、断面円形であり、線状の中心導体と、中心導体の周面を覆う電気絶縁性樹脂からなる絶縁皮膜とを有する。中心導体の径は、たとえば28μm以上かつ50μm以下である。また、絶縁皮膜の厚みは、たとえば3μm以上かつ6μm以下である。中心導体は、たとえば、銅、銀、金などの良導電性金属からなる。絶縁皮膜は、たとえば、ポリアミドイミド、イミド変成ポリウレタンのような少なくともイミド結合を含む樹脂からなる。
【0032】
第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、
図1において図示を省略したが、巻芯部5に同方向に螺旋状に巻回される。より具体的には、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、いずれか一方を内層側に、いずれか他方を外層側に、というように2層巻きにされても、巻芯部5の軸線方向において各々のターンが交互に配列されかつ互いに同方向に並んだ状態で巻くバイファイラ巻きにされてもよい。
【0033】
第1および第3金属端子16および18は、接着剤によって、第1鍔部6に取り付けられ、第2および第4金属端子17および19は、接着剤によって、第2鍔部7に取り付けられる。これら取付け部分の詳細について、
図1の線A-Aに沿う断面を示した
図2を参照して以下に説明する。
図2では、第1金属端子16の第1鍔部6への取付け部分が図示されている。第2~第4金属端子17~19の取付け部分については、第1金属端子16の取付け部分と実質的に同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0034】
図2に示されるように、上述した接着剤からなる第1接着剤層26aが、第1金属端子16の立上がり部23と第1鍔部6の外側端面12bとの双方に接する状態で形成されている。なお、第2金属端子17、第3金属端子18および第4金属端子19にそれぞれ関連して設けられる第2接着剤層26b、第3接着剤層26cおよび第4接着剤層26dについても、第1接着剤層26aと同様の形態を有している。これら接着剤層26b~26dのうち、第2接着剤層26bのみが後述する
図4に図示され、第3接着剤層26cおよび第4接着剤層26dは、いずれの図面にも図示されないが、便宜上、26cおよび26dの参照符号を付すことにする。第1~第4接着剤層26a~26dを構成する接着剤としては、たとえばエポキシ系接着剤が用いられる。エポキシ系接着剤は、シリカ粒子等のフィラーを含んでいてもよい。このように、接着剤がシリカ粒子等の硬く、粒径の大きい粒子を含むことで、接着剤層の厚みを担保することができる。
【0035】
この実施形態では、第1鍔部6の底面8と外側端面12bとは直交しており、第1金属端子16の立上がり部23は平板状である。立上がり部23における外側端面12bに対向する面は、外側端面12bに対して勾配を形成している勾配面29を成している。より詳細には、第1金属端子16における基底部20と立上がり部23とは、第1鍔部6における底面8と外側端面12bとが交差する稜線部分21を覆う屈曲部22を介して連結されており、立上がり部23における外側端面12bに対向する面全体が勾配面29となっている。
【0036】
基底部20と立上がり部23とが屈曲部22において成す内角は、鋭角、より具体的には、70度以上かつ90度未満である。したがって、第1接着剤層26aは、立上がり部23における屈曲部22により近い側であって、勾配面29と外側端面12bとの間隔のより広い側に、最も厚い部分を形成している。この第1接着剤層26aの軸線方向Dに測定した最も厚い部分での厚みTは、13μm以上とされ、より好ましくは、19μm以上とされる。これらの厚みTの下限値は、後述する
図3に示したデータから求められたものである。なお、屈曲部22は、実際には、製造上のばらつきまたは品質の違いによって、一定の角度をもって屈曲していない場合もあり、たとえば、曲線の部分や、一部角度が異なる部分もある。
【0037】
従来のコイル部品において、実装基板に実装された状態でのヒートサイクルによる接着部分の剥がれの原因となる亀裂は、ヒートサイクル数が多いほど進展すること、および立上がり部の先端側から基底部に向かう方向に進行するという現象があることがわかった。
【0038】
後者の現象に対して、この実施形態によれば、第1接着剤層26aの最も厚い部分が基底部20により近い位置に位置しているので、亀裂が進行し終わる最終段階において第1接着剤層26aに及ぼされる応力が有利に分散される。したがって、第1接着剤層26aに亀裂が完全に進行しきることを防止でき、よって、接着力がゼロになることを防止できる。
【0039】
また、この実施形態のように、第1~第4金属端子16~19の立上がり部23の少なくとも一部と第1鍔部6および第2鍔部7の各々の外側端面12bおよび13bの少なくとも一部との双方に接する状態で第1~第4接着剤層26a~26dが設けられている場合、ヒートサイクルにより、第1~第4接着剤層26a~26dには、剥離方向の力が及ぼされることになる。このような剥離方向の力は、第1~第4接着剤層26a~26dの厚み方向に働く。したがって、第1~第4接着剤層26a~26dの厚みが厚くなるほど、剥離方向の力に対する耐性がより高くなる。
【0040】
他方、厚み方向寸法が相対的に小さい、立上がり部23の先端23a側の第1~第4接着剤層26a~26dは、接着強度の向上に寄与していると推測される。
【0041】
図3および表1には、第1~第4接着剤層26a~26dの厚みと、コイル部品1のヒートサイクル試験後の実装基板に対する端子強度の変化率との関係が示されている。なお、「端子強度」とは、実装基板にはんだ付けされた状態において、部品を基板に平行な向きに押した際に測定される強度である。第1~第4接着剤層26a~26dを構成する接着剤としては、エポキシ系接着剤を用いた。ヒートサイクル試験では、-55℃~150℃の温度変動を1000サイクル繰り返す環境条件を適用した。端子強度の変化率は、ヒートサイクル試験前の端子強度を基準とし、ヒートサイクル試験後の端子強度の低下率を求めたものである。なお、実装基板に対する端子強度の低下は、現象として、第1~第4接着剤層26a~26d部分での剥がれの発生に対応している。
【0042】
【0043】
図3および表1を参照して、第1~第4接着剤層26a~26dの厚みが増すほど、端子強度の変化率の絶対値が小さくなる傾向があるが、表1の「評価」欄に「○」を記入したように、第1~第4接着剤層26a~26dの厚みが13μm以上となったとき、端子強度の変化率の絶対値が40%以下となるサンプルが出始め、端子強度の低下が顕著に抑制される効果が出始める。さらに、第1~第4接着剤層26a~26dの厚みが19μm以上となったとき、端子強度の変化率の絶対値が30%を大きく超えるサンプルがなくなるため、端子強度の低下が確実に抑制される。
【0044】
以上のような結果から、第1~第4接着剤層26a~26dの最も厚い部分での厚みTは、前述したように、13μm以上とされ、より好ましくは、19μm以上とされる。
【0045】
なお、第1~第4接着剤層26a~26dの最も厚い部分での厚みTの上限値は、通常の接着工程を支障なく実施できる点で、100μmとされ、より好ましくは、70μmとされる。
【0046】
図2に示すように、第1鍔部6の底面8と第1金属端子16の基底部20との間には、接着剤が付与されないが、ここに接着剤が付与されてもよい。このことは、後で説明する他の実施形態においても当てはまる。第1鍔部6の底面8と第1金属端子16の基底部20との間に接着剤が付与されると、ここに形成される接着剤層には、ヒートサイクル時にせん断方向の力が及ぼされる。このように、せん断方向の力が加わる接着剤層にあっては、その厚みは13μm未満であってもよい。
【0047】
図2に示した構造を得るため、好ましくは、接着工程を実施する前の第1~第4金属端子16~19として、基底部20と立上がり部23とがなす内角が鋭角、より具体的には、70度以上かつ90度未満のものが用意される。
図4には、第1金属端子16および第2金属端子17となるべき部分を形成した金属板からなるフープ材37の一部が断面図で示されている。
図4では、第3金属端子18および第4金属端子19となるべき部分は、第1金属端子16および第2金属端子17となるべき部分の背後に隠れて図示されない。フープ材37は、
図4紙面に直交する方向にその長手方向を有している。
【0048】
フープ材37によって保持された第1~第4金属端子16~19となるべき部分の各々の立上がり部23の所定の領域に、たとえばエポキシ系接着剤が塗布され、次いで、ドラム状コア2が第1金属端子16と第2金属端子17との間かつ第3金属端子18と第4金属端子19との間に配置される。上述したエポキシ系接着剤は、第1~第4金属端子16~19の各々とドラム状コア2との間に設けられる接着剤層26a~26dとなるべきものである。ドラム状コア2は、これを挟む第1および第3金属端子16および18と第2および第4金属端子17および19とから及ぼされる弾力によって保持される。また、この状態において、第1~第4金属端子16~19となるべき部分の基底部20と立上がり部23とがなす内角が70度以上かつ90度未満に保たれている。
【0049】
上述したフープ材37には、図示しないが、その長手方向に沿って多数のドラム状コア2が等間隔に分布した状態で保持されている。このようなフープ材37は、次に、20個ほどのドラム状コア2を保持している長さごとに切断される。
【0050】
次に、切断された状態のフープ材37は、オーブンに入れられ、たとえば130℃以上かつ170℃以下の温度で30分以上かつ60分以下の時間、加熱され、接着剤が硬化される。これによって、第1~第4接着剤層26a~26dが形成される。
【0051】
その後、フープ材37から第1~第4金属端子16~19となるべき部分が切り離され、ドラム状コア2とともに取り出される。そして、第1および第2ワイヤ3および4の巻芯部5への巻回工程および第1および第2ワイヤ3および4と第1~第4金属端子16~19の各々の接続片24(
図1参照)との接続工程が実施される。
【0052】
このようにして、
図1に示すような構造のコイル部品1が得られる。
【0053】
なお、従来は、薄く均一な厚みを有する接着剤層を形成し、より強固な接着状態を実現するため、接着工程において、金属端子の立上がり部を鍔部の外側端面に向かって比較的強く押し付け、この状態を維持したまま、接着剤が硬化されるが、この実施形態では、第1~第4金属端子16~19の立上がり部23を第1鍔部6および第2鍔部7の外側端面12bおよび13bに接触させる場合、基底部20と立上がり部23とがなす内角が70度以上かつ110度以下となっている状態を維持するようにされる。したがって、この状態を維持したままであれば、第1~第4金属端子16~19の立上がり部23を第1鍔部6および第2鍔部7の外側端面12bおよび13bに押圧してもよく、また、立上がり部23の先端23aだけを押圧してもよい。
【0054】
コイル部品1は、
図1に示されるように、第1鍔部6の天面10および第2鍔部7の天面11間に渡された板状コア42をさらに備えていてもよい。板状コア42についても、ドラム状コア2の場合と同様、好ましくは、フェライトから構成される。また、板状コア42は、フェライト以外の非導電性材料、たとえば、アルミナのような非磁性体、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成されてもよい。
【0055】
板状コア42は、図示しない接着剤によって、第1鍔部6の天面10および第2鍔部7の天面11に接着される。これによって、板状コア42は、ドラム状コア2と協働して閉磁路を形成することができる。接着剤としては、たとえば、エポキシ系樹脂からなるもの、あるいはこれにシリカフィラーを含有したものが用いられる。なお、板状コア42と第1および第2鍔部6および7との間のギャップをできるだけ狭くするためには、フィラーを含有しない接着剤が用いられることが好ましい。
【0056】
以下、
図5ないし
図8を参照して、この
明細書において開示される他の実施形態について説明する。
図5ないし
図8は、
図2に対応する図であり、第1金属端子16の第1鍔部6への取付け部分が図示されている。第2~第4金属端子17~19の取付け部分については、第1金属端子16の取付け部分と実質的に同様であるので、その説明を省略する。また、
図5ないし
図8において、
図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0057】
図5に示した第2の実施形態
は、この発明の参考例となるもので、この実施形態では、第1金属端子16の立上がり部23における、第1接着剤層26aと接する面の一部、より具体的には、第1接着剤層26aと接する面における基底部20側に、凹部27が設けられている。したがって、第1接着剤層26aの最も厚い厚みTを有する部分は、凹部27内に位置される。このように、凹部27があると、第1接着剤層26aの最も厚い厚みTの部分を容易に形成することができる。
【0058】
ここで、第1接着剤層26aの最も厚い部分での厚みTは、前述したように、13μm以上とされ、より好ましくは、19μm以上とされる。また、第1接着剤層26aの最も厚い部分での厚みTの上限値は、通常の接着工程を支障なく実施できる点で、100μmとされ、より好ましくは、70μmとされる。
【0059】
以下の説明において、厚みTは、すべて上述した条件を満たしている厚みのことを言う。
【0060】
上述した立上がり部23への凹部27の形成は、立上がり部23の一部を肉薄にする、たとえばコイニング加工によって実現することができる。また、凹部27の形成は、立上がり部23の一部を押し出す、たとえばエンボシング加工によって実現されてもよい。
【0061】
図6に示した第3実施形態では、第1接着剤層26aの肉厚部分と肉薄部分との位置関係が第1の実施形態の場合とは逆で、第1接着剤層26aは、最も厚い厚みTの部分を基底部20からより遠い位置、すなわち、立上がり部23の先端23a側に位置させている。
【0062】
より詳細には、第1鍔部6の底面8と外側端面12bとは直交しており、第1金属端子16の立上がり部23は平板状である。立上がり部23における外側端面12bに対向する面全体が、外側端面12bに対して勾配を形成している勾配面30を成している。基底部20と立上がり部23とが屈曲部22において成す内角は、鈍角、より具体的には、90度を超えかつ110度以下である。したがって、第1接着剤層26aは、立上がり部23における先端23aにより近い側に、厚みTを有する最も厚い部分を形成している。なお、前述した場合と同様、屈曲部22は、実際には、製造上のばらつきまたは品質の違いによって、一定の角度をもって屈曲していない場合もあり、たとえば、曲線の部分や、一部角度が異なる部分もある。
【0063】
実装基板にはんだ付けされた状態でのヒートサイクルによる接着部分の剥がれの原因となる亀裂は、立上がり部23の先端23a側から基底部20に向かう方向に進行するという前述した現象に対して、この実施形態によれば、最も厚い厚みTの部分が基底部20からより遠い位置、すなわち、立上がり部23の先端23a側に位置しているので、亀裂が発生しようとする初期段階において第1接着剤層26aに及ぼされる応力が有利に分散される。したがって、第1接着剤層26aに亀裂が発生しにくく、かつ進みにくくすることができる。
【0064】
また、第1接着剤層26aの基底部20により近い部分は、厚み方向寸法が相対的に小さいので、接着強度の向上に寄与しているものと推測される。
【0065】
図7に示した第4の実施形態
は、この発明の参考例となるもので、この実施形態では、第1金属端子16の立上がり部23における、第1接着剤層26aと接する面の一部、より具体的には、第1接着剤層26aと接する面における立上がり部23の先端23a側に、凹部28が設けられている。したがって、第1接着剤層26aの最も厚い厚みTを有する部分は、凹部28内に位置される。このように、凹部28があると、第1接着剤層26aの最も厚い厚みTの部分を容易に形成することができる。
【0066】
上述した立上がり部23への凹部28の形成は、
図5に示した第2の実施形態の場合と同様、立上がり部23の一部を肉薄にする、たとえばコイニング加工によって実現することができる。凹部28の形成は、立上がり部23の一部を押し出す、たとえばエンボシング加工によって実現されてもよい。
【0067】
図8に示した第5の実施形態
は、この発明の参考例となるもので、この実施形態では、第1金属端子16の立上がり部23における第1鍔部6の外側端面12bに対向する面は、外側端面12bと平行に延びており、第1接着剤層26aは一様な厚みを有している。この場合、第1接着剤層26aのほぼ全域が最も厚い厚みTを有していることになる。
【0068】
次に、
図9を参照して、この発明の
範囲内の実施形態である第6の実施形態によるコイル部品1aについて説明する。コイル部品1aは、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するものであるが、2本のワイヤの図示およびワイヤの端部の溶接後の状態の図示は省略されている。
図9において、
図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0069】
第6の実施形態では、第1金属端子16および第3金属端子18の各々は、第1の実施形態の場合と同様、第1鍔部6の底面8に沿って延びる基底部20と、基底部20から、第1鍔部6の底面8と外側端面12bとが交差する稜線部分21を覆う屈曲部22を介して連結され、第1鍔部6の外側端面12bに沿って延びる立上がり部23と、を有している。第1金属端子16および第3金属端子18の各々には、基底部20から延びる接続片24がさらに形成されている。
【0070】
第1および第3金属端子16および18は、立上がり部23における第1鍔部6の外側端面12bに対向する面の一部が勾配面31となっている。より詳しくは、第1および第3金属端子16および18は、立上がり部23において、巻芯部5の軸線方向に対して交差する方向かつ基底部20の延びる方向に対して平行な方向に張り出す張出部32を有している。張出部32は、立上がり部23の残りの部分に対して、わずかに屈曲した方向に延びている。勾配面31は、この張出部32における外側端面12bに対向する面側に形成されている。
【0071】
接着剤層は、
図9に図示されないが、張出部32の勾配面31と外側端面12bとの双方に接する状態で形成されている。接着剤層は、張出部32の先端により近い側に、最も厚い部分を形成しており、その厚みは13μm以上とされる。
【0072】
第2鍔部7に取り付けられる第2金属端子17および第4金属端子19は、
図9において一部しか図示されないが、上述した第1金属端子16と第4金属端子19とは、互いに同じ形状であり、第2金属端子17と上述した第3金属端子18とは、互いに同じ形状である。したがって、第2金属端子17および第4金属端子19についても、上述した第1金属端子16および第3金属端子18の場合と同様の接着剤層を形成している。
【0073】
このような第6の実施形態によっても、前述した第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
上述した第1ないし第6の実施形態では、「接着剤層の厚みが最も厚い部分で13μm以上であり、より好ましくは、19μm以上である」という構成が、第1金属端子16~19の各々に関連する第1~第4接着剤層26a~26dのすべてにおいて採用されたが、このような構成は、第1~第4接着剤層26a~26dのすべてにおいてではなく、第1~第4接着剤層26a~26dのうちの1つまたは複数において採用されてもよい。
【0075】
また、
図2および
図6に示した各実施形態では、鍔部6および7の外側端面12bおよび13bが底面8および9に対して直交する形態と、金属端子16~19の各々の立上がり部23が基底部20に対して非直交状態で交わっている形態とによって、接着剤層26a~26dの厚みが最も厚い部分で13μm以上とする構成を実現したが、これに代えて、鍔部6および7の外側端面12bおよび13bが底面8および9に対して非直交状態で交わっている形態と、金属端子16~19の各々の立上がり部23が基底部20に対して直交する形態とによって、接着剤層26a~26dの厚みが最も厚い部分で13μm以上とする構成を実現してもよい。さらに、鍔部6および7の外側端面12bおよび13bが底面8および9に対して非直交状態で交わっている形態と、金属端子16~19の各々の立上がり部23が基底部20に対して非直交状態で交わっている形態との双方によって、接着剤層26a~26dの厚みが最も厚い部分で13μm以上とする構成を実現してもよい。いずれの場合であっても、
図2および
図6に示した各実施形態の場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0076】
また、この発明に係るコイル部品を、より具体的なコモンモードチョークコイルに関する実施形態に基づいて説明したが、この実施形態は、例示的なものであり、その他種々の変形例が可能である。したがって、コイル部品に備えるワイヤの本数およびワイヤの巻回方向、ならびに金属端子の個数等は、コイル部品の機能に応じて変更され得る。
【0077】
また、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1,1a コイル部品
2 ドラム状コア
3,4 ワイヤ
5 巻芯部
6,7 鍔部
8,9 底面
10,11 天面
12b,13b 外側端面
16~19 金属端子
20 基底部
21 稜線部分
22 屈曲部
23 立上がり部
26a,26b 接着剤層
27,28 凹部
29,30,31 勾配面
32 張出部
D 軸線方向
T 最も厚い部分での厚み