(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】動体追跡装置および動体追跡方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20220712BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20220712BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20220712BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61B6/12
A61B6/02 351Z
A61B6/00 350A
A61B6/00 370
(21)【出願番号】P 2019022964
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】松木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 唯
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ウドン
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル ダージス
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124300(JP,A)
【文献】特開2015-66275(JP,A)
【文献】特開2017-29649(JP,A)
【文献】特開2015-106262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/00 - A61B 6/03
A61B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の放射線画像を撮像して前記放射線画像上の複数の検出対象物を追跡する動体追跡装置であって、
前記被検体に放射線を照射する放射線源と放射線検出部とをそれぞれ含む、第1撮像部および第2撮像部と、
前記第1撮像部で検出された放射線に基づき第1放射線画像を取得するとともに、前記第2撮像部で検出された放射線に基づき第2放射線画像を取得する画像取得部と、
前記第1放射線画像上において選択された前記検出対象物に基づいて、前記第1撮像部の前記放射線源と、選択された前記検出対象物と、前記第1撮像部の前記放射線検出部とを通過するエピポーラ線を前記第2放射線画像上に重ね合わせるとともに、前記第2放射線画像上の複数の対象物候補を検出する処理を行う画像処理部と、
前記第2放射線画像上の複数の前記対象物候補と前記エピポーラ線との距離を算出するとともに、算出結果に基づき、前記第1放射線画像で選択された前記検出対象物と同一の前記検出対象物を前記第2放射線画像上の複数の前記対象物候補から選択し、追跡する制御を行う制御部とを備える、動体追跡装置。
【請求項2】
前記第2撮像部は、前記被検体の撮像を複数回行い、
前記画像取得部は、前記第2撮像部の前記被検体の撮像毎に前記第2放射線画像を取得し、
前記制御部は、複数の前記第2放射線画像に基づいて、前記対象物候補毎に、前記対象物候補と前記エピポーラ線との距離の代表値を算出するとともに、算出結果に基づき、前記第1放射線画像で選択された前記検出対象物と同一の前記検出対象物を前記第2放射線画像上の複数の前記対象物候補から選択し、追跡する制御を行う、請求項1に記載の動体追跡装置。
【請求項3】
前記代表値は、複数の前記第2放射線画像に基づいて算出された前記対象物候補と前記エピポーラ線との距離の平均値である、請求項2に記載の動体追跡装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記対象物候補と前記エピポーラ線との距離のうち、前記エピポーラ線との距離が最も小さい前記対象物候補を前記第1放射線画像で選択された前記検出対象物と同一の前記検出対象物として選択する制御を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の動体追跡装置。
【請求項5】
前記第1放射線画像と前記第2放射線画像とを並べて表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記第1放射線画像上の前記検出対象物を選択するための操作部とを備え、
前記操作部により前記第1放射線画像上において前記検出対象物が選択されることに基づいて、前記エピポーラ線を前記第2放射線画像上に重ね合わせて表示するように前記表示部が制御される、請求項1~4のいずれか1項に記載の動体追跡装置。
【請求項6】
前記検出対象物は、マーカー部材である、請求項1~5のいずれか1項に記載の動体追跡装置。
【請求項7】
被検体の放射線画像を撮像して前記放射線画像上の複数の検出対象物を追跡する動体追跡方法であって、
第1撮像部および第2撮像部から、それぞれ前記被検体の第1放射線画像および第2放射線画像を取得するステップと、
前記第1放射線画像上において選択された前記検出対象物に基づいて、エピポーラ線を前記第2放射線画像上に重ね合わせるステップと、
前記第2放射線画像上の対象物候補を検出するステップと、
前記第2放射線画像上の複数の前記対象物候補と前記エピポーラ線との距離を算出するステップと、
算出結果に基づいて、前記第1放射線画像で選択された前記検出対象物と同一の前記検出対象物を前記第2放射線画像上の複数の前記対象物候補から選択するステップと、
算出結果に基づいて選択された、前記検出対象物を追跡するステップと、を備える、動体追跡方法。
【請求項8】
前記第1放射線画像上において前記検出対象物を選択するステップをさらに備え、
前記エピポーラ線を前記第2放射線画像上に重ね合わせるステップは、前記検出対象物が選択されたことに基づいて、前記第2放射線画像上に前記エピポーラ線を重ね合わせて表示するステップを含む、請求項7に記載の動体追跡方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動体追跡装置および動体追跡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の画像中のデバイス(検出対象物)の位置を検出し、追跡する動体追跡装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1の放射線透視装置では、放射線検出器の検出信号に基づいて、デバイスを含む画像を生成し、生成された画像から、画像中の局所的な構造を検出している。そして、検出した局所的な構造が、デバイスであるか否かを判別し、デバイスであると判別された局所的な構造の画像中での位置を、デバイスの位置として取得している。さらに、デバイス位置取得部により取得したフレーム毎のデバイスの位置に基づいて、デバイス追跡部がデバイスを追跡している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には記載されていないが、複数の放射線検出器から取得されたそれぞれの放射線画像上の同一の検出対象物を追跡する動体追跡装置が知られている。その場合、動体追跡装置は、それぞれの放射線画像中に含まれる同一の検出対象物を別々の検出対象物として認識している。そのため、ユーザがそれぞれの画像中に同一の検出対象物を選択して動体追跡装置に認識させる必要がある。すなわち、まず、一方の放射線画像で検出対象物を選択する。その後、他方の放射線画像で検出対象物を選択する。そして、動体追跡装置は、ユーザの操作により同一の検出対象物であることを認識した後、異なる画像中に含まれる同一の検出対象物を追跡する。
【0006】
しかしながら、同一の検出対象物と動体追跡装置に認識させるための検出対象物の選択を、放射線画像ごとに行うことは、検出対象物が多いほどユーザにかかる負担が大きくなるため、ユーザの負担を軽減することが望まれている。また、被検体の生体活動(たとえば、呼吸や心拍など)により検出対象物は移動する。そのため、移動する検出対象物の中から同一の検出対象物を選択することも、ユーザにかかる負担が大きいため、ユーザの負担を軽減することが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ユーザにかかる負担を軽減することが可能な動体追跡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における動体追跡装置は、被検体の放射線画像を撮像して放射線画像上の複数の検出対象物を追跡する動体追跡装置であって、被検体に放射線を照射する放射線源と放射線検出部とをそれぞれ含む、第1撮像部および第2撮像部と、第1撮像部で検出された放射線に基づき第1放射線画像を取得するとともに、第2撮像部で検出された放射線に基づき第2放射線画像を取得する画像取得部と、第1放射線画像上において選択された検出対象物に基づいて、第1撮像部の放射線源と、選択された検出対象物と、第1撮像部の放射線検出部とを通過するエピポーラ線を第2放射線画像上に重ね合わせるとともに、第2放射線画像上の複数の対象物候補を検出する処理を行う画像処理部と、第2放射線画像上の複数の対象物候補とエピポーラ線との距離を算出するとともに、算出結果に基づき、第1放射線画像で選択された検出対象物と同一の検出対象物を第2放射線画像上の複数の対象物候補から選択し、追跡する制御を行う制御部とを備える。ここで、エピポーラ線は、第1放射線画像上で選択された検出対象物が第2放射線画像上に表示される可能性が高い範囲を示す線を指す。
【0009】
この発明の第1の局面による動体追跡装置では、第1放射線画像上において選択された検出対象物に基づいて、第1撮像部の放射線源と、選択された検出対象物と、第1撮像部の放射線検出部とを通過するエピポーラ線を第2放射線画像上に重ね合わせるとともに、第2放射線画像上の複数の対象物候補を検出する処理を行う画像処理部と、第2放射線画像上の複数の対象物候補とエピポーラ線との距離を算出するとともに、算出結果に基づき、第1放射線画像で選択された検出対象物と同一の検出対象物を第2放射線画像上の複数の対象物候補から選択し、追跡する制御を行う制御部とを備える。ここで、第1放射線画像で選択された検出対象物は、第2放射線画像上に重ね合わせられたエピポーラ線上に位置するとともに、それ以外の検出対象物はエピポーラ線から離れる可能性が高い。そのため、第2放射線画像上の複数の対象物候補とエピポーラ線との距離を算出した算出結果に基づいて、対象物候補とエピポーラ線との距離を比較することにより、制御部は、同一の対象物候補を選択することができる。そのため、同一の検出対象物を第2放射線画像上からユーザが選択する必要がないため、ユーザにかかる負担を軽減することができる。
【0010】
この発明の第1の局面による動体追跡装置では、好ましくは、第2撮像部は、被検体の撮像を複数回行い、画像取得部は、第2撮像部の被検体の撮像毎に第2放射線画像を取得し、制御部は、複数の第2放射線画像に基づいて、対象物候補毎に、対象物候補とエピポーラ線との距離の代表値を算出するとともに、算出結果に基づき、第1放射線画像で選択された検出対象物と同一の検出対象物を第2放射線画像上の複数の対象物候補から選択し、追跡する制御を行う。このように構成すれば、第2放射線画像において、第1放射線画像において選択された検出対象物と、選択された検出対象物と異なる検出対象物とが、偶然にも同一のエピポーラ線上に位置している場合であっても、第1放射線画像において選択された検出対象物以外は、被検体の生体活動(たとえば、呼吸や心拍)によりエピポーラ線から離れる。そのため、複数枚の第2放射線画像を撮像することにより、異なる検出対象物とエピポーラ線との距離が変化する。そのため、選択された検出対象物とそれ以外とでは、エピポーラ線からの距離の代表値に差が出るため、エピポーラ線からの距離の代表値を算出することにより、同一の検出対象物か否かを判断することが可能となる。
【0011】
この場合、代表値は、複数の前記第2放射線画像に基づいて算出された対象物候補とエピポーラ線との距離の平均値である。このように構成すれば、平均値を用いて第1放射線画像において選択された検出対象物か否かの同一か否かを判断することが可能となる。
【0012】
この発明の第1の局面による動体追跡装置では、好ましくは、制御部は、対象物候補とエピポーラ線との距離のうち、エピポーラ線との距離が最も小さい対象物候補を第1放射線画像で選択された検出対象物と同一の検出対象物として選択する制御を行う。このように構成すれば、第1放射線画像において選択された検出対象物は、第2放射線画像上ではエピポーラ線上に位置するとともにエピポーラ線からの距離が小さくなるため、エピポーラ線との距離が最も小さい対象物候補を選択することにより、第1放射線画像上で選択された検出対象物と同一の検出対象物を容易に選択することができる。
【0013】
この発明の第1の局面による動体追跡装置では、好ましくは、第1放射線画像と第2放射線画像とを並べて表示する表示部と、表示部に表示された第1放射線画像上の検出対象物を選択するための操作部とを備え、操作部により第1放射線画像上において検出対象物が選択されることに基づいて、エピポーラ線を第2放射線画像上に重ね合わせて表示するように表示部が制御される。このように構成すれば、ユーザが検出対象物か否かを判断した後に、第1放射線画像上の検出対象物を選択することが可能となる。そのため、誤って第1放射線画像に映っているゴミやノイズを選択することを抑制することができる。また、エピポーラ線が表示されるため、ユーザは、エピポーラ線を基準として、第1放射線画像において選択した検出対象物と同一の検出対象物が第2放射線画像において選択されたか否かを確認することができる。
【0014】
この発明の第1の局面による動体追跡装置では、好ましくは、検出対象物は、マーカー部材である。このように構成すれば、動体追跡装置は、治療のために被検体内に配置されたマーカー部材を検出し、追跡することができる。その結果、ユーザは、治療中に第1放射線画像および第2放射線画像上のマーカー部材の位置を容易に確認することができる。
【0015】
この発明の第2の局面による動体追跡方法は、第1撮像部および第2撮像部から、それぞれ被検体の第1放射線画像および第2放射線画像を取得するステップと、第1放射線画像上において選択された検出対象物に基づいて、エピポーラ線を第2放射線画像上に重ね合わせるステップと、第2放射線画像上の対象物候補を検出するステップと、第2放射線画像上の複数の対象物候補とエピポーラ線との距離を算出するステップと、算出結果に基づき、第1放射線画像で選択された検出対象物と同一の検出対象物を第2放射線画像上の複数の対象物候補から選択するステップと、算出結果に基づいて選択された、検出対象物を追跡するステップと、を備える。
【0016】
この発明の第2の局面による動体追跡方法は、第1放射線画像上において選択された検出対象物に基づいて、エピポーラ線を第2放射線画像上に重ね合わせるステップと、第2放射線画像上の対象物候補を検出するステップと、第2放射線画像上の複数の対象物候補とエピポーラ線との距離を算出するステップと、算出結果に基づき、第1放射線画像で選択された検出対象物と同一の検出対象物を第2放射線画像上の複数の対象物候補から選択するステップと、を備える。ここで、第1放射線画像で選択された検出対象物は、第2放射線画像上に重ね合わせられたエピポーラ線上に位置するとともに、それ以外の検出対象物はエピポーラ線から離れる可能性が高い。そのため、第2放射線画像上の複数の対象物候補とエピポーラ線との距離を算出した算出結果に基づいて、対象物候補とエピポーラ線との距離を比較することにより、制御部は、同一の対象物候補を選択することができる。そのため、同一の検出対象物を第2放射線画像上からユーザが選択する必要がないため、ユーザにかかる負担を軽減することができる。
【0017】
この発明の第2の局面による動体追跡方法では、好ましくは、第1放射線画像上において検出対象物を選択するステップをさらに備え、エピポーラ線を第2放射線画像上に重ね合わせるステップは、検出対象物が選択されたことに基づいて、第2放射線画像上にエピポーラ線を重ね合わせて表示するステップを含む。このように構成すれば、ユーザが検出対象物か否かを判断した後に、第1放射線画像上の検出対象物を選択することが可能となる。そのため、第1放射線画像に映っているゴミやノイズを誤って選択することを抑制することができる。また、第2放射線画像にエピポーラ線が表示されるため、ユーザは、第1放射線画像において選択した検出対象物と同一の検出対象物が第2放射線画像において選択されたか否かを確認することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、ユーザにかかる負担を軽減することが可能な動体追跡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態による動体追跡装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】一実施形態による表示部の一例を示す図である。
【
図3】一実施形態による第1X線画像および第2X線画像の一例を示す図である。
【
図4】一実施形態によるエピポーラ線と対象物候補との距離を説明するための図である。
【
図5】一実施形態による第1X線画像および第2X線画像の別の例を示す図である。
【
図6】一実施形態によるエピポーラ線と対象物候補との距離を説明するための図である。
【
図7】一実施形態による同一のマーカー部材を選択した後の第1X線画像および第2X線画像の例を示す図である。
【
図8】一実施形態による同一のマーカー部材をすべて選択した後の第1X線画像および第2X線画像の例を示す図である。
【
図9】一実施形態による第1X線画像のマーカー部材以外を選択した場合の第2X線画像の例を示す図である。
【
図10】一実施形態による第1X線画像のマーカー部材を選択し直した場合の第2X線画像の例を示す図である。
【
図11】一実施形態による動体追跡装置の処理動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(動体追跡装置の構成)
図1および
図2を参照して、一実施形態による動体追跡装置100の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、動体追跡装置100は、第1撮像部1と、第2撮像部2と、画像取得部3と、画像処理部4と、制御部5とを備える。さらに、動体追跡装置100は、表示部6と操作部7を備える。
【0023】
第1撮像部1は、第1X線源11と第1X線検出部12とを含んでいる。また、第2撮像部2は、第2X線源21と第2X線検出部22とを含んでいる。第1X線源11および第2X線源21は、それぞれ高電圧が印加されることによりX線を発生させるX線管を有する。第1X線源11および第2X線源21は、それぞれ管電圧、管電流およびX線照射の時間間隔などの予め設定された撮像条件に従ってX線を発生する。第1撮像部1および第2撮像部2は、それぞれ異なる角度からマーカー部材8が体内に配置された被検体50を同時に撮像する。また、第1撮像部1および第2撮像部2は、それぞれ異なる角度からマーカー部材8が体内に配置された被検体50を複数回撮像する。ここで、第1X線源11および第2X線源21は、特許請求の範囲の「放射線源」の一例である。また、第1X線検出部12および第2X線検出部22は、特許請求の範囲の「放射線検出部」の一例である。さらに、マーカー部材8は、特許請求の範囲の「検出対象物」の一例である。マーカー部材8は、たとえば、金マーカーである。また、
図1では、第1X線検出部12および第2X線検出部22は、第1X線源11および第2X線源21よりも上方に配置されている。
【0024】
第1X線検出部12および第2X線検出部22は、それぞれ第1X線源11および第2X線源21から照射されるとともに被検体50を透過したX線を検出し、検出した放射線強度に応じた検出信号を出力する。第1X線源11および第1X線検出部12を結ぶ線と、第2X線源21および第2X線検出部22を結ぶ線とが交わる点がアイソセンターと呼ばれる。動体追跡装置100では、アイソセンターを原点として、位置座標が決定される。
【0025】
画像取得部3は、制御部5の制御により、第1X線検出部12および第2X線検出部22から出力された信号に基づいて2次元の第1X線画像13および2次元の第2X線画像23をそれぞれ生成する(
図2参照)。ここで、第1X線画像13および第2X線画像23は、それぞれ特許請求の範囲の「第1放射線画像」および「第2放射線画像」の一例である。
【0026】
図2に示すように、第1X線画像13および第2X線画像23には、マーカー部材8が配置された特定部位51が撮像されている。X線透視中に被検体50の生体活動(たとえば、呼吸や心拍など)によって特定部位51が移動する、または、特定部位51が変形することにより、マーカー部材8の第1X線画像13および第2X線画像23上の位置が変わる(
図3および
図5参照)。そのため、マーカー部材8は、特定部位51から脱落し、第1X線画像13および第2X線画像23上に現れない場合があるため、被検体50の特定部位51には複数のマーカー部材8が配置される。
図2に示す例では、マーカー部材8は、特定部位51に3つ配置されている。特定部位51は、例えば、心臓、肺、肝臓、前立腺などの被検体50の治療対象部位である。マーカー部材8は、治療対象部位に形成された腫瘍などを検査、または、治療するための目印となる。また、第1X線画像13および第2X線画像23は、ゴミやノイズなどのマーカー部材8以外の不要部分80を含む場合がある。
【0027】
画像処理部4は、第1X線画像13および第2X線画像23について処理を行う画像処理回路を含む(
図1参照)。
図2に示すように、画像処理部4は、第1X線画像13上のマーカー部材8が選択されたことに基づいて、第2X線画像23上にエピポーラ線9を重ね合わせて表示部6に表示させる。エピポーラ線9は、第1X線源11と第1X線検出部12とマーカー部材8とを通過する線であり、第2X線画像23において選択されたマーカー部材8が存在する可能性が高い範囲を示す線である。
【0028】
図1および
図2に示すように、制御部5は、CPU(Central Processing Unit)などである。制御部5は、第1X線源11と第1X線検出部12と選択されたマーカー部材8との位置座標から、第1X線源11の位置座標と第1X線検出部12の位置座標と選択されたマーカー部材8の位置座標を通過するエピポーラ線9の1次関数を算出する。また、制御部5は、算出した一次関数に基づいて、エピポーラ線9を第2X線画像23上に重ね合わせて表示する処理を行うように画像処理部4を制御する。
【0029】
制御部5は、第2X線画像23上に重ね合わされたエピポーラ線9と、画像処理部4で検出された複数の対象物候補10との距離を算出する(
図4参照)。制御部5の対象物候補10とエピポーラ線9との距離は、点と直線との距離であるため、対象物候補10からエピポーラ線9に垂線を引いた時の、垂線の長さとなる。距離の求め方は、一般的に用いられている方法が用いられる。たとえば、制御部5は、マーカー部材8の座標と、エピポーラ線9の1次関数とから距離を算出する。
【0030】
図2に示すように、表示部6は、第1X線画像13および第2X線画像23が横方向に並べて表示される。表示部6は、例えば、動体追跡装置100に接続されている液晶ディスプレイである。第1X線画像13および第2X線画像23は、画像取得部3で取得される毎に切り替わる。
【0031】
操作部7は、ユーザが第1X線画像13上のマーカー部材8を選択するために用いられる。操作部7は、たとえば、表示部6に接続されたキーボードおよびマウスである。表示部6および操作部7は、動体追跡装置100が配置されている場所と離れた場所に配置される。
【0032】
(動体追跡装置の同一マーカー部材の検出)
図3~
図10を参照して、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を、第2X線画像23から選択する選択動作について説明する。
【0033】
被検体50に、X線を照射し、透視を行っているときに、画像取得部3は、複数枚の第1X線画像13と複数枚の第2X線画像23とを取得する。
【0034】
図3に示すように、画像処理部4は、取得された第1X線画像13全体の画素値から、他の部分との画素値が低い部分を検出することにより、マーカー部材8を検出する。この画素値の小さい部分は、マーカー部材8が第1X線源11からのX線を吸収し、第1X線検出部12に到達するX線量が少ないことに起因して現れる。そのため、画素値の小さい部分は、マーカー部材8である可能性が高い。
【0035】
また、画像処理部4は、第2X線画像23全体の画素値から、他の部分との画素値が低い部分を検出することにより、対象物候補10を検出する。表示部6に表示された第1X線画像13および第2X線画像23には周囲よりも画素値が小さく、黒く(暗く)表示される部分がある。この画素値の小さい部分は、マーカー部材8が第2X線源21からのX線を吸収し、第2X線検出部22に到達するX線量が少ないことに起因して現れる。そのため、画素値の小さい部分は、マーカー部材8である可能性が高い。ただし、ゴミ、または、ノイズによっても画素値が小さくなることがあるため、対象物候補10には、不要部分80が含まれ得る(
図2参照)。
【0036】
画像処理部4で検出された第1X線画像13上のマーカー部材8から、ユーザは、任意のマーカー部材8を選択する。マーカー部材8が選択されると、制御部5は、第1X線源11の位置座標と、第1X線検出部12の位置座標と、選択されたマーカー部材8の位置座標とからエピポーラ線9の1次関数を算出する。画像処理部4は、制御部5で算出された一次関数に基づいて、エピポーラ線9を第2X線画像23上に重ね合わせて表示部6に表示する。
【0037】
第1X線画像13上の情報だけでは、選択されたマーカー部材8が、第1X線源11と第1X線検出部12との間のどの場所に位置するのかという位置情報が不足している。そのため、同一のマーカー部材8が第2X線画像23上のどこに位置するのかが不明である。しかしながら、第1X線源11と第1X線検出部12とマーカー部材8とを通過する線上、または、その近くに位置していることは明らかである。そこで、エピポーラ線9は、対象のマーカー部材8が位置する可能性が高い範囲を示すために第2X線画像23に重ね合わせて表示される。なお、第1X線画像13上で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8は、ノイズにより位置がずれる場合等の例外を除きエピポーラ線9上に位置する可能性が高い。
【0038】
図4に示すように、制御部5は、X線透視中に第1X線画像13上のマーカー部材8が選択された時点(N+1枚目)から所定枚数のN+n枚目の第2X線画像23までのn枚の第2X線画像23を用いて、取得された第2X線画像23ごとのエピポーラ線9と複数の対象物候補10との距離をそれぞれ算出する。
【0039】
図3は、N+1枚目の第1X線画像13および第2X線画像23を示す。ユーザは、操作部7を操作し、第1X線画像上に表示されたマーカー部材8を選択する。画像処理部4は、マーカー部材8を選択するためのアイコン41として白抜きの矢印を表示部6に表示させる。ユーザがアイコン41を操作し、マーカー部材8を選択した場合に、画像処理部4は、第1X線画像13上に選択されたマーカー部材8がどれかを示す四角形の枠42を表示部6に表示させる。
【0040】
図3では、第1X線画像13上に第1マーカー部材81、第2マーカー部材82および第3マーカー部材83の3つのマーカー部材8が表示されている。たとえば、ユーザが、3つのマーカー部材8から第1マーカー部材81を選択した場合は、画像処理部4は、第2X線画像23上には、第1X線源11の位置座標と第1X線検出部12の位置座標と第1マーカー部材81の位置座標を通過するエピポーラ線9を表示部6に表示させる。なお、
図3では、第2X線画像23上に第1対象物候補111、第2対象物候補112、および、第3対象物候補113の対象物候補10が表示されている。制御部5は、所定枚数N+nに達するまで第1対象物候補111とエピポーラ線9との距離301、第2対象物候補112とエピポーラ線9との距離302、および、第3対象物候補113とエピポーラ線9との距離303をそれぞれ算出する。たとえば、所定枚数N+nは、3枚である。以下、所定枚数が3枚である場合を例に説明する。
【0041】
図4に示すように、制御部5は、ユーザによって第1マーカー部材81が選択されたことに伴い、エピポーラ線9と複数の対象物候補10との距離の算出を開始する。制御部5は、画像処理部4で検出されたすべての対象物候補10と第2X線画像23上のエピポーラ線9との距離をそれぞれ算出する。
図4は、
図3の第2X線画像23だけを記載した図である。また、
図4では、説明しやすくするためマーカー部材8を白で表現している。制御部5は、N+1枚目の第2X線画像23上の第1対象物候補111とエピポーラ線9との距離301、第2対象物候補112とエピポーラ線9との距離302、および、第3対象物候補113の中心とエピポーラ線9との距離303をそれぞれ算出する。
【0042】
図5は、画像取得部3が取得したN+2枚目の第1X線画像13および第2X線画像23を示す。被検体50の生体活動により、
図5では、マーカー部材8および対象物候補10の位置が
図3のマーカー部材8および対象物候補10の位置よりも移動している。
図6は、
図5の第2X線画像23だけを示した図である。
図4と同様に、マーカー部材8を白で表現している。
図6に示すように、制御部5は、N+2枚目の第2X線画像23においても第1対象物候補111とエピポーラ線9との距離301、第2対象物候補112とエピポーラ線9との距離302、および、第3対象物候補113とエピポーラ線9との距離303をそれぞれ算出する。
【0043】
制御部5は、所定枚数のN+n枚目に達した後は、画像取得部3による次のN+n+1枚目の第1X線画像13および第2X線画像23の取得中に、対象物候補10毎に蓄積された算出結果に基づいて、エピポーラ線9と対象物候補10との距離の平均値を算出する。第1対象物候補111とエピポーラ線9との距離の平均値は、n枚目までに取得したn個の距離301のデータを合計し、nで割った値となる。同様に、第2対象物候補112とエピポーラ線9との距離の平均値は、n枚目までに取得したn個の距離302のデータを合計し、nで割った値となる。同様に、第3対象物候補113とエピポーラ線9との距離の平均値は、n枚目までに取得したn個の距離303のデータを合計し、nで割った値となる。そして、制御部5は、距離301の平均値、距離302の平均値および距離303の平均値から、エピポーラ線9までの距離の平均値が最小の対象物候補10を算出する。所定枚数が3枚の場合は、画像取得部3が4枚目の第2X線画像23を取得している間に、制御部5は、距離301の平均値、距離302の平均値および距離303の平均値を算出する。
【0044】
図7に示すように、算出結果から、第1対象物候補111とエピポーラ線9との距離が最小となった場合、第1X線画像13上で選択された第1マーカー部材81と同一のマーカー部材8として第1対象物候補111が選択される。制御部5は、N+n+1枚目の第2X線画像23の次に取得されたN+n+2枚目の第2X線画像23から、第2X線画像23上の第1マーカー部材81の追跡を行う。画像処理部4は、第2X線画像23上で選択されたマーカー部材8を囲む枠42を、第1X線画像13と同様に表示部6に表示する。なお、所定枚数が3枚の場合、5枚目の第2X線画像23から画像処理部4は、第2X線画像23上で選択されたマーカー部材8がどれかを示すための枠42を第2X線画像23上に表示する。
【0045】
また、第2X線画像23上においてマーカー部材8が選択された場合、画像処理部4は、第2X線画像23上において選択されたマーカー部材8のエピポーラ線9を、第1X線画像13に重ね合わせて表示部6に表示する。制御部5は、第2X線源21の位置座標と第2X線検出部22の位置座標と選択されたマーカー部材8の位置座標とを通過するエピポーラ線9の1次関数を、第2X線源21の位置座標と第2X線検出部22の位置座標と選択されたマーカー部材8の位置座標とから算出し、表示部6に表示する。
【0046】
制御部5は、第1X線画像13上および第2X線画像23上の同一のマーカー部材8を追跡する制御を行う。
図8に示すように、マーカー部材8が複数の場合であっても、制御部5は、マーカー部材8毎に第2X線画像23から第1X線画像13上のマーカー部材8と同一のマーカー部材8を選択する処理を行うことにより複数のマーカー部材8を同時に追跡する。
図8に示すように、マーカー部材8毎にエピポーラ線9と枠42が表示される。また、制御部5は、複数枚の第1X線画像13および第2X線画像23に基づいて、マーカー部材8が被検体50の生体活動によって移動する速度および加速度を算出し、画像取得部3が新たに取得する第1X線画像13および第2X線画像23上のどこにマーカー部材8が移動し現れるか予測する。そのため、制御部5は、透視中に取得される第1X線画像13および第2X線画像23上のマーカー部材8を追跡することが可能となる。
【0047】
ここで、第1X線画像13上においてマーカー部材8以外の不要部分80が誤って選択された場合について説明する。
図9に示すように、マーカー部材8以外の不要部分80が誤って選択された場合、表示部6の第2X線画像23上に重ね合わされて表示されるエピポーラ線9が対象物候補10と離れた位置に表示されるため、ユーザは、不要部分80が選択されたことがわかる。この場合、再度、ユーザが第1X線画像13上において正しいマーカー部材8を選択することにより、制御部5は、第2X線画像23上の同一のマーカー部材8を選択する。
図10に示すように、制御部5が第2X線画像23上で同一のマーカー部材8を選択することにより、表示部6には、間違ったエピポーラ線9の代わりに正しいエピポーラ線9が表示される。また、動体追跡装置100内に、マーカー部材8の第1X線画像13および第2X線画像23上の正しいマーカー部材8の位置が上書きされる。
【0048】
(動体追跡装置の処理動作)
図11を用いて、動体追跡装置100が、第1X線画像13において選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を第2X線画像23上から検出し、追跡する処理動作について説明する。
【0049】
ステップ210では、第1撮像部1および第2撮像部2は、被検体50にX線を照射し、第1X線画像13および第2X線画像23を取得する。被検体50の特定部位51には、複数のマーカー部材8が予め配置されているため、第1X線画像13および第2X線画像23には複数のマーカー部材8が撮像される。
【0050】
ステップ211では、画像処理部4は、第1X線画像13上の画素値が他の部分よりも低い部分をマーカー部材8として検出する。また、画像処理部4は、第2X線画像23上の画素値が他の部分よりも低い部分を対象物候補10として検出する。
【0051】
ステップ212では、制御部5は、表示部6に、画像取得部3が取得した第1X線画像13と第2X線画像23とを並べて表示するように制御を行う。
【0052】
ステップ213では、ユーザは、操作部7を用いて、表示された第1X線画像13に含まれている複数のマーカー部材8から1つのマーカー部材8を選択する。
【0053】
ステップ214では、制御部5は、第1X線画像13上で選択されたマーカー部材8が、第2X線画像23上に表示される可能性が高い範囲を示すエピポーラ線9を、第2X線画像23上に表示するように画像処理部4を制御する。このとき、制御部5は、第1X線源11の位置座標と選択されたマーカー部材8の位置座標と第1X線検出部12の位置座標に基づいて、エピポーラ線9の1次関数を算出する。そして、画像処理部4は、算出された1次関数に基づいて、エピポーラ線9と第2X線画像23と重ね合わせて表示部6に表示する。
【0054】
ステップ215では、制御部5は、画像処理部4によって検出された第2X線画像23上の複数の対象物候補10と、第2X線画像23に重ね合わせて表示されたエピポーラ線9との距離をそれぞれ算出する。
【0055】
ステップ216では、制御部5は、エピポーラ線9と対象物候補10との距離を算出した第2X線画像23の枚数が所定枚数か否かにより行う制御が異なる。制御部5が、対象物候補10とエピポーラ線9との距離を算出した第2X線画像23の枚数が所定枚数に達している場合は、ステップ217に移り、所定枚数に達していない場合はステップ210に戻る。
【0056】
ステップ217では、ステップ215において所定枚数の第2X線画像23から算出された算出結果に基づいて、制御部5は、複数の対象物候補10とエピポーラ線9との距離の平均値をそれぞれ算出する。
【0057】
ステップ218では、ステップ217において算出された対象物候補10とエピポーラ線9との距離の平均値に基づいて、制御部5は、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を第2X線画像23上の対象物候補10から選択する。具体的には、制御部5は、算出結果から対象物候補10とエピポーラ線9との距離の平均値が最小の対象物候補10を同一のマーカー部材8として選択する。
【0058】
ステップ219では、制御部5は、第1X線画像13および第2X線画像23に撮像された同一のマーカー部材8の追跡を開始する。制御部5は、複数枚の第1X線画像13および第2X線画像23に基づいて、マーカー部材8の速度および加速度を算出し、画像取得部3が新たに取得する第1X線画像13および第2X線画像23上のどこにマーカー部材8が移動し現れるか予測する。そして、制御部5は、透視中に取得される第1X線画像13および第2X線画像23上のマーカー部材8を追跡する。
【0059】
(動体追跡方法)
動体追跡方法は、第1撮像部1および第2撮像部2から、それぞれ被検体50の第1X線画像13および第2X線画像23を取得するステップと、第1X線画像13上において選択されたマーカー部材8に基づいて、エピポーラ線9を第2X線画像23上に重ね合わせるステップと、第2X線画像23上の対象物候補10を検出するステップと、第2X線画像23上の複数の対象物候補10とエピポーラ線9との距離を算出するステップと、算出結果に基づき、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を第2X線画像23上の複数の対象物候補10から選択するステップと、算出結果に基づいて選択された、マーカー部材8を追跡するステップと、を備える。
【0060】
第1撮像部1および第2撮像部2から、それぞれ被検体50の第1X線画像13および第2X線画像23を取得するステップは、ステップ210に相当する。第1X線画像13上において選択されたマーカー部材8に基づいて、エピポーラ線9を第2X線画像23上に重ね合わせるステップは、ステップ214に相当する。第2X線画像23上の対象物候補10を検出するステップは、ステップ211に相当する。第2X線画像23上の複数の対象物候補10とエピポーラ線9との距離を算出するステップは、ステップ215およびステップ217に相当する。算出結果に基づき、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を第2X線画像23上の複数の対象物候補10から選択するステップは、ステップ218に相当する。そして、算出結果に基づいて選択された、マーカー部材8を追跡するステップは、ステップ219に相当する。
【0061】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0062】
本実施形態では、上記のように、動体追跡装置100は、第1X線画像13上において選択されたマーカー部材8に基づいて、第1撮像部1の第1X線源11と、選択されたマーカー部材8と、第1撮像部1の第1X線検出部12とを通過するエピポーラ線9を第2X線画像23上に重ね合わせるとともに、第2X線画像23上の複数の対象物候補10を検出する処理を行う画像処理部4と、第2X線画像23上の複数の対象物候補10とエピポーラ線9との距離を算出するとともに、算出結果に基づき、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を第2X線画像23上の複数の対象物候補10から選択し、追跡する制御を行う制御部5とを備える。ここで、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8は、第2X線画像23上に重ね合わせられたエピポーラ線9上に位置するとともに、それ以外のマーカー部材8はエピポーラ線9から離れる可能性が高い。そのため、第2X線画像23上の複数のマーカー部材8とエピポーラ線9との距離を算出した算出結果に基づいて、マーカー部材8とエピポーラ線9との距離を比較することにより、制御部5は、同一のマーカー部材8を選択することができる。そのため、同一のマーカー部材8を第2X線画像23上からユーザが選択する必要がないため、ユーザにかかる負担を軽減することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第2撮像部2は、被検体50の撮像を複数回行い、画像取得部3は、第2撮像部2の被検体50の撮像毎に第2X線画像23を取得し、制御部5は、複数の第2X線画像23に基づいて、対象物候補10毎に、対象物候補10とエピポーラ線9との距離の代表値を算出するとともに、算出結果に基づき、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を第2X線画像23上の複数の対象物候補10から選択し、追跡する制御を行う。これにより、第2X線画像23において、第1X線画像13において選択されたマーカー部材8と、選択されたマーカー部材8と異なるマーカー部材8とが、偶然にも同一のエピポーラ線9上に位置している場合であっても、第1X線画像13において選択されたマーカー部材8以外は、被検体50の生体活動によりエピポーラ線9から離れていくため、複数枚の第2X線画像23を撮像することにより、異なるマーカー部材8とエピポーラ線9との距離が変化する。そのため、選択されたマーカー部材8とそれ以外とでは、エピポーラ線9からの距離の代表値に差が出るため、代表値を算出することにより、同一のマーカー部材8か否かを判断することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、制御部5は、複数の第2X線画像23に基づいて算出された対象物候補10とエピポーラ線9との距離の平均値を用いる。これにより、平均値を用いて第1X線画像13において選択されたマーカー部材8と同一か否かを判断することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、制御部5は、対象物候補10とエピポーラ線9との距離のうち、エピポーラ線9との距離が最も小さい対象物候補10を第1X線画像13で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8として選択する制御を行う。これにより、第1X線画像13において選択されたマーカー部材8は、第2X線画像23上ではエピポーラ線上に位置するとともにエピポーラ線9からの距離が小さくなるため、エピポーラ線9との距離が最も小さい対象物候補10を選択することにより、第1X線画像13上で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を容易に選択することができる。
【0066】
また、本実施形態では、第1X線画像13と第2X線画像23とを並べて表示する表示部6と、表示部6に表示された第1X線画像13上のマーカー部材8を選択するための操作部7とを備え、操作部7により第1X線画像13上においてマーカー部材8が選択されることに基づいて、エピポーラ線9を第2X線画像23上に重ね合わせて表示するように表示部6が制御される。これにより、ユーザがマーカー部材8か否かを判断した後に、第1X線画像13上のマーカー部材8を選択することが可能となる。そのため、第1X線画像13に映っているゴミやノイズを選択することを抑制することができる。また、エピポーラ線9が表示されるため、ユーザは、エピポーラ線9を基準として、第1X線画像13において選択したマーカー部材8と同一のマーカー部材8が第2X線画像23において選択されたか否かを確認することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、マーカー部材8を検出対象物としているため、ユーザは、治療中に第1X線画像13および第2X線画像23上のマーカー部材8の位置を容易に確認することができる。
【0068】
また、本実施形態では、第1X線画像13上において選択されたマーカー部材8に基づいて、エピポーラ線9を第2X線画像23上に重ね合わせるステップと、第2X線画像23上の対象物候補10を検出するステップと、第2X線画像23上の複数の対象物候補10とエピポーラ線9との距離を算出するステップと、算出結果に基づき、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8と同一のマーカー部材8を第2X線画像23上の複数の対象物候補10から選択するステップと、を備える。ここで、第1X線画像13で選択されたマーカー部材8は、第2X線画像23上に重ね合わせられたエピポーラ線9上に位置するとともに、それ以外のマーカー部材8はエピポーラ線9から離れる可能性が高い。そのため、第2X線画像23上の複数のマーカー部材8とエピポーラ線9との距離を算出した算出結果に基づいて、マーカー部材8とエピポーラ線9との距離を比較することにより、制御部5は、同一のマーカー部材8を選択することができる。そのため、同一のマーカー部材8を第2X線画像23上からユーザが選択する必要がないため、ユーザにかかる負担を軽減することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第1X線画像13上においてマーカー部材8を選択するステップをさらに備え、エピポーラ線9を第2X線画像23上に重ね合わせるステップは、マーカー部材8が選択されたことに基づいて、第2X線画像23上にエピポーラ線9を重ね合わせて表示するステップを含む。これにより、ユーザがマーカー部材8か否かを判断した後に、第1X線画像13上のマーカー部材8を選択することが可能となる。そのため、第1X線画像13に映っているゴミやノイズを誤って選択することを抑制することができる。また、第2X線画像23にエピポーラ線9が表示されるため、ユーザは、第1X線画像13において選択したマーカー部材8と同一のマーカー部材8が第2X線画像23において選択されたか否かを確認することができる。
【0070】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲上でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、検出対象物がマーカー部材である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出対象物は特定部位であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、マーカー部材が3つ用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、マーカー部材が、1つ、2つ、または4つ以上用いられてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、第1X線検出部および第2X線検出部は、第1X線源および第2X線源よりも上方に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1X線検出部および第2X線検出部は、第1X線源および第2X線源よりも下方に配置されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、画像取得部は、第1X線画像および第2X線画像を生成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像取得部は、第1X線画像および第2X線画像を生成せずに、別の画像生成装置が生成した第1X線画像および第2X線画像を取得してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、マーカー部材を選択するためのアイコンとして白抜きの矢印が表示される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アイコンの形状は矢印に限定されない。また、マーカー部材を選択することができれば、アイコンは表示されなくてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、第1X線画像および第2X線画像上に選択されたマーカー部材を示すための四角形の枠を表示される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、枠の形状は四角形に限定されない。また、枠は表示されなくてもよく、枠を表示する代わりに選択されたマーカー部材の色を変えてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、第2X線画像上に対象物候補が3つ表示される例を示したが、本発明はこれに限られない。対象物候補の数は、取得した第2X線画像により異なる。
【0078】
また、上記実施形態では、第2X線画像上のマーカー部材を選択するために、制御部が対象物候補とエピポーラ線との距離の平均値を算出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、対象物候補とエピポーラ線との距離の中央値または最頻値を算出してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、第2X線画像上のマーカー部材を選択するために、制御部が対象物候補とエピポーラ線との距離の平均値を算出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、対象物候補とエピポーラ線との距離の変化量を算出してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、制御部が、透視中に第2X線画像上のマーカー部材の位置を検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、予め撮像した第2X線画像を用いて、マーカー部材の位置を検出してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、被検体に照射される放射線が、X線である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被検体に照射される放射線が、γ線など一般的に用いられている放射線でもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、N+n+1枚目の第2X線画像を取得している間に、制御部が、エピポーラ線との距離を算出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、制御部が、所定枚数の第2X線画像を取得すると同時に算出してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、制御部は、N+n+1枚目の第2X線画像の次に取得されたN+n+2枚目の第2X線画像から、第2X線画像上の第1マーカー部材の追跡を行う例を示したが、本発明はこれに限定されない。本発明では、たとえば、所定枚数の第2X線画像の次に取得された第2X線画像から、制御部が算出結果を反映させてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、エピポーラ線と対象物候補との距離を算出するために、制御部が、所定枚数の第2X線画像を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、画像取得部において取得されたすべての第2X線画像を用いてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、制御部が、エピポーラ線と対象物候補との距離を算出するために複数枚の第2X線画像を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、第2X線画像を1枚だけ用いてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、ユーザが、第1X線画像上のマーカー部材を選択することにより、制御部が、エピポーラ線と対象物候補との距離の算出を開始する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、透視を開始すると同時に制御部が、エピポーラ線を第2X線画像上に表示するように制御し、エピポーラ線と対象物候補との距離の算出を開始してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、ユーザが、第1X線画像上のマーカー部材を選択する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、動体追跡装置が、第1X線画像上のマーカー部材を選択してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、第1X線画像および第2X線画像上にエピポーラ線が重ね合わされて表示される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1X線画像および第2X線画像上にエピポーラ線が表示されなくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、第1X線画像および第2X線画像が並べて表示される例を示したが、本発明はこれに限られない。表示の方法は、特に限定されず、表示されなくともよい。
【0090】
また、上記実施形態では、表示部と操作部とが動体追跡装置から離れた位置に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、表示部および操作部が、動体追跡装置に隣接していてもよく、動体追跡装置に組み込まれていてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では表示部および操作部が別体の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、表示部および操作部が一体となっていてもよく、たとえばタッチパネルでもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、表示部が液晶ディスプレイであるとともに操作部がキーボードおよびマウスである例を示したが、本発明はこれに限られない。
【符号の説明】
【0093】
1 第1撮像部
2 第2撮像部
3 画像取得部
4 画像処理部
5 制御部
6 表示部
7 操作部
8 マーカー部材(検出対象物)
9 エピポーラ線
10 対象物候補
13 第1X線画像
23 第2X線画像
50 被検体
100 動体追跡装置