(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】内釜および炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
A47J27/00 103H
(21)【出願番号】P 2019026722
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 智也
(72)【発明者】
【氏名】橋元 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】椛島 山青
(72)【発明者】
【氏名】木皿 倫子
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-266407(JP,A)
【文献】実開昭64-011130(JP,U)
【文献】特開2003-310427(JP,A)
【文献】特開2009-254563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内釜と、
前記内釜を収容する本体と、
前記内釜を加熱する加熱コイルと、
を備え、
前記内釜は、
少なくとも一部が平坦に形成された底面部と、
前記底面部から上方に向かって形成された筒状の傾斜部と、
前記底面部に形成された、当該底面部から上方に突出する第1の突出部と、
前記底面部の水平方向端部から前記傾斜部の下部に亘って形成された、上方に突出する第2の突出部と、
を備え、
前記傾斜部の内径は、上方に向かうにつれて大きくなり、
水平方向に直交する断面において、前記傾斜部の内面の下端から上端までの鉛直方向距離は当該下端から当該上端までの水平方向距離よりも大きく、
水平方向に直交する断面において、前記傾斜部の内面は、当該内面の下端と上端とを結ぶ円錐曲線をな
し、
前記第1の突出部の水平方向端部には、前記底面部の中央側に向かって高くなるように傾斜した傾斜面が形成されており、
前記第2の突出部の前記底面部側の端部には、前記底面部の中央側に向かって低くなるように傾斜した傾斜面が形成されており、
前記加熱コイルは、前記第1の突出部を加熱する第1の底面部加熱コイルと、前記第2の突出部を加熱する第2の底面部加熱コイルと、前記傾斜部を加熱する傾斜部加熱コイルと、を有し、
前記傾斜部加熱コイルのターン数は、前記第1の底面部加熱コイルのターン数および前記第2の底面部加熱コイルのターン数を合わせたものよりも大きく、
前記第1の底面部加熱コイルのターン数は、前記第2の底面部加熱コイルのターン数よりも小さいことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
水平方向に直交する断面において、前記傾斜部の内面の下端から上端までの鉛直方向距離は、当該下端から当該上端までの水平方向距離の2倍以上である請求項1に記載の
炊飯器。
【請求項3】
水平方向に直交する断面において、前記底面部の中心から前記傾斜部の上端までの水平方向距離は、前記傾斜部の下端から上端までの水平方向距離の2倍以上である請求項1または請求項2に記載の
炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内釜およびこの内釜を備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電気炊飯器が記載されている。この電気炊飯器は、炊飯器に備えられている内釜の一例として、土鍋を備える。この土鍋は、ほぼずんどうな胴部を備えた有底の円筒形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された土鍋のようにずんどうな形状の内釜においては、水位の高さが設定値からずれると、特に炊飯量が少ない場合において、水量が設定値から大幅にずれてしまうという問題がある。このような問題を解決する方法として、内釜の内周面積をできるだけ小さくすることが考えられる。しかしながら、内釜の内周面積を小さくするほど、当該内釜の容積を確保するために必要な高さ方向の寸法が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、炊飯量が少ない場合における水位のずれの影響を抑制することができ、且つ、コンパクトでありながら効率よく内部の容積が確保される内釜を提供することである。また、本発明の目的は、上記の内釜を備える炊飯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内釜は、少なくとも一部が平坦に形成された底面部と、底面部から上方に向かって形成された筒状の傾斜部と、底面部に形成された、当該底面部から上方に突出する第1の突出部と、底面部の水平方向端部から前記傾斜部の下部に亘って形成された、上方に突出する第2の突出部と、を備える。傾斜部の内径は、上方に向かうにつれて大きくなる。水平方向に直交する断面において、傾斜部の内面の下端から上端までの鉛直方向距離は当該下端から当該上端までの水平方向距離よりも大きい。また、水平方向に直交する断面において、傾斜部の内面は、当該内面の下端と上端とを結ぶ円錐曲線をなす。第1の突出部の水平方向端部には、底面部の中央側に向かって高くなるように傾斜した傾斜面が形成されており、第2の突出部の底面部側の端部には、底面部の中央側に向かって低くなるように傾斜した傾斜面が形成されている。
また、本発明に係る炊飯器は、上記の内釜と、この内釜を加熱する加熱コイルと、を備える。加熱コイルは、第1の突出部を加熱する第1の底面部加熱コイルと、第2の突出部を加熱する第2の底面部加熱コイルと、傾斜部を加熱する傾斜部加熱コイルと、を有する。傾斜部加熱コイルのターン数は、第1の底面部加熱コイルのターン数および第2の底面部加熱コイルのターン数を合わせたものよりも大きく、第1の底面部加熱コイルのターン数は、第2の底面部加熱コイルのターン数よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炊飯量が少ない場合における水位のずれの影響を抑制することができ、且つ、コンパクトでありながら効率よく内部の容積が確保される内釜を提供するができる。また、本発明によれば、上記の内釜を備えた炊飯器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る炊飯器の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る炊飯器100の内部構造を示す縦断面図である。
【
図5】水位高さが設定値からずれた場合における、水の容量の理想炊飯容量に対する誤差率を示すグラフである。
【
図7】内釜の内底面からの高さと当該内釜の容積との関係を示すグラフである。
【
図10】実施の形態4に係る内釜の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して説明する。各図における同一の符号は、同一の部分または相当する部分を示す。本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではなく、以下の実施の形態によって開示される構成のあらゆる組み合わせおよび変形例を含み得るものである。また、添付の図面における各構成部材の位置、形状および大きさは、実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る炊飯器100の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る炊飯器100の内部構造を示す縦断面図である。
【0011】
まず、
図1および
図2を参照し、炊飯器100の全体構成について説明する。
図1および
図2に示されるように、炊飯器100は、本体10、蓋体20および内釜30を備えている。なお、本開示においては、原則として、炊飯器100および内釜30が水平面に置かれた状態を基準として、各方向が定義される。
【0012】
本体10は、炊飯器100の主要構造部分である。本体10の形状は、上方に開口した有底の箱状である。
【0013】
内釜30は、米および水等の被加熱物を内部に収容するものである。内釜30は、上方に開口した容器状の部材である。内釜30は、有底の筒状の部材である。本体10には、この内釜30が着脱自在に収容される。
【0014】
蓋体20は、本体10の上部の開口および当該本体10に収容された内釜30の上部の開口を開閉可能に構成されている。蓋体20は、
図2に示されるように、ヒンジ部12によって本体10に接続されている。ヒンジ部12によって本体10に接続された蓋体20は、開閉自在である。蓋体20は、ヒンジ部12を支点とした円弧状の軌道に沿って動くことで開閉する。
図2において、蓋体20は内釜30の上部の開口を閉じている。
【0015】
図2に示されるように、本体10は、カバー10aを有する。カバー10aは、本体10の外殻をなす部材である。カバー10aは、上方に開口した有底の箱状に形成される。一例として、カバー10aは、壁状の部材によって中空に形成される。カバー10aには、炊飯器100の本体10を構成する各種の電子機器等が内蔵される。
【0016】
一例として、内釜30の上端部には、フランジ31が形成されている。フランジ31は、内釜30の上部の開口の外周を囲うように設けられている。フランジ31は、内釜30の上端部から当該内釜30の外側に向かって突出している。この内釜30は、本体10の外殻をなすカバー10aに、着脱自在に収容される。
【0017】
図2に示されるように、炊飯器100の本体10は、加熱コイル11を有する。加熱コイル11は、螺旋状に旋回した円環状の部材である。加熱コイル11は、鍋状容器1を加熱するためのコイルである。
【0018】
カバー10aは、底部10bを有する。底部10bは、カバー10aに収容された状態の内釜30の底面および側面の下部に対向する部分である。加熱コイル11は、この底部10bに設置されている。加熱コイル11は、カバー10aの内側に設けられる。加熱コイル11は、底部10bを挟んで内釜30の底面および側面の下部に対向している。
【0019】
内釜30は、例えば、カーボン、アルミ、鉄またはステンレスとアルミとのクラッド材等によって形成される。また、内釜30には電磁誘導によって発熱する磁性体の金属が含まれる。加熱コイル11には、高周波の電流が供給される。高周波の電流が供給された加熱コイル11は、電磁誘導によって内釜30を発熱させる。本実施の形態における加熱コイル11は、内釜30を加熱する加熱手段の一例である。
【0020】
カバー10aの底部10bの中央には、温度センサ13が設けられている。温度センサ13は、カバー10aに収容された内釜30の温度を検出する。具体的には、温度センサ13は、加熱コイル11によって誘導加熱された内釜30の温度を検出する。
【0021】
図1および
図2に示されるように、カバー10aの前面には、開閉ボタン14が設けられている。蓋体20が閉じている際に開閉ボタン14が使用者によって押下されると、蓋体20と本体10との係止が解除される。使用者は、開閉ボタン14を押下することで、蓋体20を開けることができる。
【0022】
また、カバー10aの内部には、電源基板15が設けられている。電源基板15には、例えば、商用電源を高周波電力に変換して加熱コイル11に供給するためのインバータ回路等が実装されている。電源基板15は、例えば、スイッチング素子等の各種の電子部品によって構成される。電源基板15は、一例として、本体10の背面側に配置される。
【0023】
蓋体20は、
図2に示されるように、外蓋20aおよび内蓋20bを備えている。内蓋20bは、外蓋20aに着脱自在に取り付けられる。外蓋20aの本体10側の面には、内蓋20bを固定するための内蓋係止片20cが設けられている。内蓋20bは、内蓋係止片20cに係止することで、外蓋20aの本体10側の面に取り付けられる。
【0024】
外蓋20aは、蓋体20が閉じた状態において、蓋体20の上部および側部をなしている。外蓋20aは、蓋体20が閉じた状態において、内蓋20bを上方から覆う。外蓋20aは、ヒンジ部12を介して、本体10のカバー10aに接続される。外蓋20aは、ヒンジ部12を支点として開閉自在である。
【0025】
蓋体20が閉じた状態において、内蓋20bは、外蓋20aの下面側に位置している。蓋体20が閉じた状態において、内蓋20bは、本体10に収容された内釜30の上部の開口を覆う。内蓋20bは、外蓋20aが開閉することによって、当該外蓋20aとともに動く。内蓋20bは、外蓋20aとともに動くことで、本体10に収容された内釜30の上部の開口を開放または閉塞する。
【0026】
図1および
図2に示されるように、炊飯器100は、操作パネル21を備える。操作パネル21は、例えば、使用者からの各種の指示の操作を受け付けるボタン等によって構成されている。炊飯器100は、使用者による操作パネル21への操作に応じた動作を行う。操作パネル21は、例えば、外蓋20aの上面に設けられる。
【0027】
操作パネル21が設けられた外蓋20aには、
図2に示されるように、操作基板22が内蔵されている。操作基板22は、操作パネル21に電気的に接続される。操作基板22は、使用者による操作パネル21への操作に応じて、炊飯器100を構成する各種の機器を制御する。例えば、操作基板22は、使用者による操作パネル21への操作に応じて、電源基板15による加熱コイル11への電流の供給を制御する。
【0028】
図2に示されるように、蓋体20には、例えば、蓋センサ23および蓋ヒーター24が取り付けられている。蓋センサ23は、内釜30内の温度または圧力を検出するセンサである。炊飯器100は、蓋センサ23の検出結果に応じた炊飯を実行可能に構成される。また、蓋ヒーター24は、内蓋20bを加熱する装置である。蓋ヒーター24は、例えば、内蓋20bを加熱することで、当該内蓋20bに付着した水滴を蒸発させる。
【0029】
蓋センサ23および蓋ヒーター24は、外蓋20aの内蓋20b側に取り付けられている。蓋センサ23は、例えば、外蓋20aおよび内蓋20bのそれぞれに形成された孔に挿入されている。また、蓋ヒーター24と内蓋20bとの間には、例えば、アルミ等の熱伝導性に優れた素材で形成された部材が設けられている。
【0030】
例えば、外蓋20aには、蒸気カートリッジ26が着脱自在に装着される。蒸気カートリッジ26の内部には、蓋体蒸気経路27が形成されている。蓋体蒸気経路27は、内釜30内の蒸気を炊飯器100の外部へと導く通気路である。蒸気カートリッジ26の上面には、蒸気口28が形成される。蓋体蒸気経路27を通った蒸気は、蒸気口28から排出される。
【0031】
次に、本実施の形態に係る内釜30について、より詳細に説明する。
図3は、実施の形態1に係る内釜30の縦断面図である。
図3は、水平面に置かれた状態の内釜30の縦方向断面を示すものである。
図3に示される状態において、内釜30の底面は、水平面に対向している。
図3に示される内釜30の縦方向断面は、水平方向に直交する断面である。
【0032】
図3に示される実施例において、内釜30の形状は、回転対称となっている。
図3は、内釜30の中心を通る縦方向断面を示している。なお、内釜30の形状は、完全な回転対称でなくてもよい。また、内釜30は、偏った形状をしていてもよい。例えば、
図3に示される内釜30の鉛直方向への投影図の概形は、円形であってもよいし楕円形であってもよい。
【0033】
上記したように、内釜30の形状は、有底の筒状である。内釜30は、例えば、内容量が2300cc以上となるように形成される。この内釜30は、
図3に示されるように、底面部30aを備える。底面部30aは、有底の筒状である内釜30の底面をなす部分である。換言すると、底面部30aの下面は、内釜30の底面となる。底面部30aの少なくとも一部は、平坦に形成されている。
図3に示される状態において、底面部30aは、水平面に対向している。炊飯器100の本体10に内釜30が収容される際、底面部30aは、カバー10aの底部10bに対向する。
【0034】
また、内釜30は、
図3に示されるように、傾斜部30bを備える。傾斜部30bは、有底の筒状である内釜30の側面をなす部分である。傾斜部30bは、底面部30aから上方にむかって形成された筒状の部分である。傾斜部30bは、底面部30aから内釜30の上端部にかけて形成される。傾斜部30bは、底面部30aからフランジ31にかけて形成される。
【0035】
傾斜部30bの内面は、
図3に示されるように、水平方向および鉛直方向に対して傾斜している。傾斜部30bは、
図3に示されるように、内釜30の高さ方向に進むにつれて当該傾斜部30bが広がっていくように形成されたことを特徴としている。すなわち、筒状の傾斜部30bの内径は、上方に向かうにつれて大きくなっている。
【0036】
また、傾斜部30bは、径方向寸法に対して高さ方向寸法が大きくなるように形成されたことを特徴としている。ここで、水平方向に直交する断面における傾斜部30bの内面の下端および上端を、
図3に示されるように、それぞれ基点P1および基点Q1とする。基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1は、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1よりも大きくなっている。
【0037】
一例として、基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1は、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1の2倍以上の寸法になっている。基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1は、例えば、36ミリメートルである。基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1は、例えば、104ミリメートルである。
【0038】
また、内釜30の中心から基点Q1までの水平方向距離r1は、一例として、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1の2倍以上の寸法になっている。内釜30の中心から基点Q1までの距離とは、すなわち、底面部30aの中心から基点Q1まで距離を意味している。底面部30aの中心から基点Q1までの水平方向距離r1は、例えば、91.5ミリメートルである。本実施の形態において、基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1は、底面部30aの中心から基点Q1までの水平方向距離r1よりも大きい。
【0039】
なお、上記した距離W1、距離H1および距離r1の具体的な数値は、あくまで一実施例における参考値である。本開示に係る内釜30の寸法は、上記の例に限定されるものではない。
【0040】
また、
図3に示されるように、傾斜部30bの内面は、上記した基点P1と基点Q1とを結ぶ円錐曲線をなす。本実施の形態に係る傾斜部30bは、基点P1と基点Q1とを結ぶ円錐曲線が当該傾斜部30bの内面に含まれるように形成されていることを特徴としている。
【0041】
一例として、基点P1と基点Q1とを結ぶ円錐曲線は、楕円の一部として表される。この楕円の短軸の長さは、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1の2倍以上である。また、この楕円の長軸の長さは、基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1の2倍以上である。
【0042】
図4は、比較例1に係る内釜32の縦断面図である。内釜32の形状は、内釜30と同様、有底の筒状である。内釜32の形状は、回転対称となっている。内釜32は、
図4に示されるように、底面部32aおよび側面部32bを備える。底面部32aは、内釜32の底面をなす部分である。側面部32bは、内釜32の側面をなす部分である。側面部32bは、底面部32aから上方にむかって形成された筒状の部分である。
【0043】
側面部32bは、鉛直方向に沿うように設けられている。側面部32bは、傾斜部30bのように傾斜してはいない。水平方向に直交する断面における側面部32bの内面の下端および上端を、
図4に示されるように、それぞれ基点P2および基点Q2とする。側面部32bの内面は、基点P2と基点Q2とを鉛直方向に沿って結ぶ直線をなしている。側面部32bの形状は、半径がr2である円筒形状になっている。以上に示されるように、比較例1に係る内釜32は、ずんどうな形状になっている。
【0044】
なお、比較例1における底面部32aの中心から基点Q2までの水平方向距離r2は、実施の形態1における底面部30aの中心から基点Q1までの水平方向距離r1と同一である。また、比較例1における基点P2から基点Q2までの鉛直方向距離H2は、実施の形態1における基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1と同一である。
【0045】
図面および表を更に参照し、実施の形態1に係る内釜30と比較例1に係る内釜32とを比較説明する。
図5は、水位高さが設定値からずれた場合における、水の容量の理想炊飯容量に対する誤差率を示すグラフである。表1は、実施の形態1に係る内釜30と比較例1に係る内釜32との比較結果の具体例を示している。
図5は、表1に示される具体例をグラフ化したものである。理想炊飯容量は、各炊飯量の米を炊き上げるために最適な水の容量として、炊飯量に応じて設定される。
【0046】
【0047】
表1および
図5に示される例において、内釜32の使用時に炊飯量が0.5合である場合に水位が設定値より2ミリメートルだけ高くずれた場合の水の容量の誤差率は、25%である。一方、内釜30の使用時に炊飯量が0.5合である場合に水位が設定値より2ミリメートルだけ高くずれた場合の水の容量の誤差率は、17%である。
【0048】
また、表1および
図5に示される例において、内釜32の使用時に炊飯量が1合である場合に水位が設定値より2ミリメートルだけ高くずれた場合の水の容量の誤差率は、15%である。内釜30の使用時に炊飯量が1合である場合に水位が設定値より2ミリメートルだけ高くずれた場合の水の容量の誤差率は、11%である。
【0049】
このように、内径が上方に向かうにつれて大きくなるように形成された傾斜部30bを有する内釜30を使用することで、ずんどうな形状に形成された内釜32を使用する場合に比べて、水位が設定値からずれた場合における水の容量の理想炊飯容量に対する誤差を抑制することができる。特に、表1および
図5に示されるように、炊飯量が少量である場合において、水位が設定値からずれた場合における水の容量の理想炊飯容量に対する誤差を効果的に抑制することができる。実施の形態1に係る内釜30によれば、炊き上がった米飯がべたつくことまたは炊き上がった米飯が硬すぎること等を抑制することができる。実施の形態1に係る内釜30およびこの内釜30を備えた炊飯器100を使用することで、炊き上げられた米飯の質を改善することができる。
【0050】
また、
図6は、比較例2に係る内釜33の縦断面図である。内釜33の形状は、内釜30と同様、有底の筒状である。内釜33の形状は、回転対称となっている。内釜33は、
図6に示されるように、底面部33aおよび傾斜部33bを備える。底面部33aは、内釜33の底面をなす部分である。傾斜部33bは、内釜33の側面をなす部分である。傾斜部33bは、底面部33aから上方にむかって形成された筒状の部分である。
【0051】
図6に示されるように、傾斜部33bの内面は、水平方向および鉛直方向に対して傾斜している。傾斜部33bは、傾斜部30bと同様、高さ方向に進むにつれて広がっていくように形成されている。すなわち、傾斜部33bの内径は、上方に向かうにつれて大きくなっている。
【0052】
水平方向に直交する断面における傾斜部33bの内面の下端および上端を、
図6に示されるように、それぞれ基点P3および基点Q3とする。傾斜部33bの内面は、基点P2と基点Q2とを結ぶ直線をなしている。水平方向に直交する断面において、傾斜部33bの内面は、傾斜部30bのような円錐曲線をなしてはいない。
【0053】
側面部32bは、鉛直方向に沿うように設けられている。側面部32bは、傾斜部30bのように傾斜してはいない。水平方向に直交する断面における側面部32bの内面の下端および上端を、
図4に示されるように、それぞれ基点P2および基点Q2とする。側面部32bの内面は、基点P2と基点Q2とを鉛直方向に沿って結ぶ直線をなしている。
【0054】
なお、比較例2における底面部33aの中心から基点Q3までの水平方向距離r3は、実施の形態1における底面部30aの中心から基点Q1までの水平方向距離r1と同一である。また、比較例2における基点P3から基点Q3までの鉛直方向距離H3は、実施の形態1における基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1と同一である。また、比較例2における基点P3から基点Q3までの水平方向距離W3は、実施の形態1における基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1と同一である。
【0055】
図7は、内釜の内底面からの高さと当該内釜の容積との関係を示すグラフである。
図7は、実施の形態1に係る内釜30と比較例2に係る内釜33との比較結果をグラフ化したものである。内釜30の内底面とは、内釜30の底面部30aの上面を意味する。内釜33の内底面とは、内釜33の底面部33aの上面を意味する。
【0056】
図7に示されるように、内釜30の容積は、内釜33の容積よりも大きい。特に、内底面からの高さが大きくなるにつれて、内釜30と内釜33と容積の差はより大きくなる。このように、傾斜部30bの内面が基点P1と基点Q1とを結ぶ円錐曲線によって形成されることで、内釜30の容積は内釜33に比べて大きくなる。
【0057】
また、傾斜部30bの内面が基点P1と基点Q1とを結ぶ円錐曲線によって形成されることで、炊飯時に内釜30内で水が沸騰することで生じた泡は、当該内面に沿って滑らかに上昇する。これにより、内釜30の中央部が周囲に比べて集中的に加熱されてしまうことが抑制される。本実施の形態によれば、炊飯時における、米飯の加熱のムラを抑制することができる。
【0058】
上記したように、本実施の形態において、内釜30の中心から基点Q1までの水平方向距離r1は、一例として、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1の2倍以上の寸法になっている。例えば、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1に対して内釜30の中心から基点Q1までの水平方向距離r1が大きくなるということは、内釜30の底面積が大きくなるということである。内釜30の底面積が大きくなることで、当該内釜30は安定的に自立可能となる。内釜30の自立時の安定性を考慮した場合、内釜30の中心から基点Q1までの水平方向距離r1は、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1に対してより大きいことが望ましい。具体的には、内釜30の中心から基点Q1までの水平方向距離r1は、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1の2倍以上であることが、特に望ましい。
【0059】
また、上記したように、本実施の形態において、基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1は、一例として、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1の2倍以上の寸法になっている。基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1に対する基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1が大きいほど、内釜30の容積を大きくしつつ、また、水位が設定値からずれた場合における水の容量の理想炊飯容量に対する誤差を効果的に抑制することができる。内釜30の容積を大きくしつつ水位が設定値からずれた場合における水の容量の理想炊飯容量に対する誤差を効果的に抑制するためには、特に、基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1は、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1の2倍以上であることが望ましい。
【0060】
以上に説明したように、本実施の形態に係る炊飯器100は、内釜30を備える。内釜30は、筒状の傾斜部30bを備える。傾斜部30bの内径は、上方に向かうに大きくなる。水平方向に直交する断面において、基点P1から基点Q1までの鉛直方向距離H1は、基点P1から基点Q1までの水平方向距離W1よりも大きい。また、水平方向に直交する断面において、傾斜部30bの内面は、基点P1と基点Q1とを結ぶ円錐曲線をなす。
【0061】
上記のように構成された内釜30および炊飯器100によれば、水位が設定値からずれた場合における水の容量の理想炊飯容量に対する誤差を抑制することができる。本実施の形態によれば、炊き上げられた米飯の質に対する水位のずれの影響を抑制することができる。特に、炊飯量が少量である場合において、柔らかすぎてべたついた米飯または硬すぎる米飯が炊き上げられてしまうことが効果的に抑制される。
【0062】
また、上記のように構成された内釜30であれば、当該内釜30の容積を効率よく確保することができる。本実施の形態によれば、内釜30の容積を十分に確保しつつ、内釜30および当該内釜30を備える炊飯器100の全体寸法を小さくすることができる。本実施の形態によれば、炊飯量が少ない場合および炊飯量が多い場合の両方に対応可能な、使い勝手のよい内釜30および炊飯器100を得ることができる。また、内釜30の高さ方向寸法が小さくなることで、高さ方向における米飯の加熱のムラも抑制される。
【0063】
ここで、炊飯器100が備える加熱コイル11についてのより好適な実施例について、改めて
図2を参照して説明する。
図2に示されるように、加熱コイル11は、一例として、底面部加熱コイル11a、底面部加熱コイル11bおよび傾斜部加熱コイル11cを有する。
【0064】
底面部加熱コイル11aおよび底面部加熱コイル11bは、内釜30の底面部30aを加熱する。底面部加熱コイル11aおよび底面部加熱コイル11bは、底面部30aに対向する。また、傾斜部加熱コイル11cは、内釜30の傾斜部30bを加熱する。傾斜部加熱コイル11cは、傾斜部30bに対向する。
【0065】
底面部加熱コイル11aは、底面部加熱コイル11bよりも、底面部30aの中心側に寄せて配置される。底面部加熱コイル11aは、底面部30aの中心側を加熱する。また、底面部加熱コイル11bは、底面部30aの水平方向端部側を加熱する。また、傾斜部加熱コイル11cは、傾斜部30bの下端部を加熱する。
【0066】
実施の形態1に係る内釜30の底面積は、例えば比較例1に係る内釜32等のずんどうな形状のものに比べて、底面積が小さい。底面積が小さい内釜30の全体をより均一に加熱するためには、底面部30aよりも傾斜部30bをより強く加熱することが望ましい。本実施例において、加熱コイル11は、底面部加熱コイル11aのターン数および底面部加熱コイル11bのターン数を合わせたものよりも傾斜部加熱コイル11cのターン数が大きくなるように構成される。これにより、内釜30全体がより均一に加熱され、米飯の加熱のムラを抑制することができる。
【0067】
また、例えば、底面部加熱コイル11aのターン数は、底面部加熱コイル11bのターン数よりも小さくてもよい。これにより、内釜30内の中央部が周囲に比べて集中的に加熱されてしまうことがより効果的に抑制される。
【0068】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態1と同一または相当する部分については、同じ符号を付し、また、重複する説明を簡略化および省略する。
【0069】
図8は、実施の形態2に係る内釜40の縦断面図である。本実施の形態に係る内釜40は、実施の形態1に係る内釜30と同様、底面部30aおよび傾斜部30bを有する。また、一例として、内釜40の上端部には、フランジ31が形成されている。
【0070】
本実施の形態において、底面部30aの上面側中央部には、突出部40aが形成されている。突出部40aは、上方に突出する。本実施の形態に係る内釜40の内底面は、凸状に形成されている。
【0071】
突出部40aの上面には、底面部30aの中央側に向かって高くなるように傾斜した傾斜面40bが含まれる。突出部40a、底面部30aの中央側が高い山型に形成される。傾斜面40bは、突出部40aの水平方向端部に形成される。
【0072】
突出部40aを含む内釜40を形成するためには、当該内釜40は、例えば、切削加工または鋳造等の工法によって製作することが望ましい。上記の工法によって制作される内釜40の材質は、カーボン、アルミまたは鉄等であることが望ましい。
【0073】
炊飯時に内釜40内で水が沸騰することで生じた泡は、傾斜面40bを上って突出部40aの頂点まで到達する。突出部40aの頂点に到達した泡は、突出部40aから離れて内釜40の内部の中央に向かって上昇する。泡による熱伝達によって、例えば、底面部30aの中央部の加熱を弱くしても、内釜40の中央部にまで十分に熱を伝えることができる。本実施の形態によれば、米飯の加熱ムラを抑制しつつ、米飯全体を十分に加熱することができる内釜40を得ることができる。
【0074】
また、突出部40aによって米飯の見かけ上のかさが増し、炊き上がった米飯は、表面の中央部が膨らんだふっくらとした形状となる。特に、炊飯量が少ない場合においても、炊き上がった米飯の見栄えがよくなる。本実施の形態によれば、より美味に見える米飯を
炊き上げることができる内釜40を得ることができる。
【0075】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。上記の各実施の形態と同一または相当する部分については、同じ符号を付し、また、重複する説明を簡略化および省略する。
【0076】
図9は、実施の形態3に係る内釜50の縦断面図である。本実施の形態に係る内釜50は、実施の形態1に係る内釜30と同様、底面部30aおよび傾斜部30bを有する。また、一例として、内釜50の上端部には、フランジ31が形成されている。
【0077】
本実施の形態において、底面部30aと傾斜部30bとの境界部分には、上方に突出する突出部50aが形成されている。突出部50aは、底面部30aの水平方向端部から傾斜部30bの下端部に亘って形成されている。本実施の形態に係る内釜50の内底面は、凹状に形成されている。
【0078】
突出部50aの上面には、底面部30aの中央側に向かって低くなるように傾斜した傾斜面50bが含まれる。傾斜面50bは、突出部50aの底面部30aの中央側端部に形成される。換言すると、傾斜面50bは、底面部30aの水平方向端部から傾斜部30bの下端部に向かって高くなるように傾斜している。
【0079】
突出部50aを含む内釜50は、実施の形態2に係る内釜40と同様、例えば、切削加工または鋳造等の工法によって製作することが望ましい。上記の工法によって制作される内釜50の材質は、カーボン、アルミまたは鉄等であることが望ましい。
【0080】
炊飯時に内釜50内で水が沸騰することで生じた泡は、傾斜面50bを上って突出部50aの頂点まで到達する。突出部50aの頂点に到達した泡は、突出部50aから離れて内釜50内を上昇する。傾斜部30bに沿って上昇する泡の一部は、突出部50aから離れて上昇する泡と共に内釜50内を上昇する。本実施の形態においては、傾斜部30bに沿って上昇する泡を内釜50内の広範囲に分散させることができる。内釜50内において泡が広範囲に均一に分散することで、米飯の加熱ムラを抑制することができる。
【0081】
実施の形態4.
次に、実施の形態4について説明する。上記の各実施の形態と同一または相当する部分については、同じ符号を付し、また、重複する説明を簡略化および省略する。
【0082】
図10は、実施の形態4に係る内釜60の縦断面図である。本実施の形態に係る内釜60は、実施の形態2に係る内釜40と実施の形態3に係る内釜50とを組み合わせたものに相当する。
図10に示されるように、内釜60は、底面部30aおよび傾斜部30bを有する。一例として、内釜60の上端部には、フランジ31が形成されている。
【0083】
図10に示されるように、内釜60は、底面部30aの上面側中央部に形成された第1の突出部40aを備える。突出部40aの上面には、底面部30aの中央側に向かって高くなるように傾斜した傾斜面40bが含まれる。
【0084】
また、
図10に示されるように、内釜60は、底面部30aと傾斜部30bとの境界部分に形成された第2の突出部50aを備える。突出部50aの上面には、底面部30aの中央側に向かって低くなるように傾斜した傾斜面50bが含まれる。本実施の形態に係る内釜60の内底面には、複数の凹状の部分が含まれる。
【0085】
突出部40aおよび突出部50aを備える内釜60は、例えば、切削加工または鋳造等の工法によって製作することが望ましい。上記の工法によって制作される内釜60の材質は、カーボン、アルミまたは鉄等であることが望ましい。
【0086】
本実施の形態によれば、実施の形態2と同様、米飯の加熱ムラを抑制しつつ、米飯全体を十分に加熱することができる内釜60を得ることができる。また、炊き上がった米飯の見栄えがよくなる。さらに、本実施の形態によれば、実施の形態3と同様、米飯の加熱ムラを抑制することができる。本実施の形態によれば、実施の形態2および実施の形態3に比べて、米飯の加熱ムラをより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 本体、 10a カバー、 10b 底部、 11 加熱コイル、 11a 底面部加熱コイル、 11b 底面部加熱コイル、 11c 傾斜部加熱コイル、 12 ヒンジ部、 13 温度センサ、 14 開閉ボタン、 15 電源基板、 20 蓋体、 20a 外蓋、 20b 内蓋、 20c 内蓋係止片、 21 操作パネル、 22 操作基板、 23 蓋センサ、 24 蓋ヒーター、 26 蒸気カートリッジ、 27 蓋体蒸気経路、 28 蒸気口、 30 内釜、 30a 底面部、 30b 傾斜部、 31 フランジ、 32 内釜、 32a 底面部、 32b 側面部、 33 内釜、 33a 底面部、 33b 傾斜部、 40 内釜、 40a 突出部、 40b 傾斜面、 50 内釜、 50a 突出部、 50b 傾斜面、 60 内釜、 100 炊飯器