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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】天井搬送車
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20220712BHJP
   B61B 3/02 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B61B13/00 W
B61B3/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019028959
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020131985
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正美
(72)【発明者】
【氏名】大塚 洋
(72)【発明者】
【氏名】衣川 知孝
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-297683(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1982175(CN,A)
【文献】国際公開第2012/157378(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/158373(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 3/02
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメイン軌道および前記複数のメイン軌道同士を接続する分岐軌道を含む搬送軌道に沿って走行する天井搬送車において、
前記天井搬送車は、左右少なくとも一対の走行車輪と、前記走行車輪の上方で走行方向の左側と右側にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられたガイドローラと、を備え、
前記メイン軌道は、その上面で前記走行車輪を支持するメインレールと、前記メインレールにおいて前記走行車輪が通過する領域の上方に設けられており前記ガイドローラをガイドするメインガイドレールを備え、
前記分岐軌道は、その上面で前記走行車輪を支持する分岐レールと、前記分岐レールにおいて前記走行車輪が通過する領域の上方に設けられており前記ガイドローラをガイドする分岐ガイドレールを備え、
前記メインガイドレールおよび前記分岐ガイドレールについて、前記メイン軌道および前記分岐軌道の中心側の側面を内面、反対側の側面を外面として、左側と右側の前記ガイドローラのどちらか一方のみが前記メインガイドレールまたは前記分岐ガイドレールの外面でガイドされ
前記走行台車の上方に、前記ガイドローラを移動させるガイドローラ駆動部を備えたガイドローラ装置が取り付けられており、
右側と左側の前記ガイドローラは、それぞれ前記ガイドローラ駆動部を基部として水平面内で回転するアームの先端に取り付けられており、
前記ガイドローラ駆動部は、左側の前記ガイドローラ用のアームの動きと右側の前記ガイドローラ用のアームの動きとを連動させて、左側と右側の前記ガイドローラのどちらか一方のみが前記メインガイドレールまたは前記分岐ガイドレールの外面でガイドされるようにすること
を特徴とする天井搬送車。
【請求項2】
前記天井搬送車は、前記走行車輪の下方で走行方向の左側と右側にそれぞれ設けられたサイドローラを備えており、
前記サイドローラは前記メインレールおよび前記分岐レールの内面でガイドされること
を特徴とする請求項1に記載の天井搬送車。
【請求項3】
前記サイドローラは、前記ガイドローラの1つ1つに対して走行方向の前後に2つ1組で設けられていること
を特徴とする請求項に記載の天井搬送車。
【請求項4】
前記ガイドローラは、前記メインガイドレールまたは前記分岐ガイドレールによってガイドされている際に、前記メインガイドレールまたは前記分岐ガイドレールとの接点が平面視において前記走行車輪の回転軸上に位置するように設けられていること
を特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の天井搬送車。
【請求項5】
前記メインガイドレールおよび前記分岐ガイドレールは、その外面が平面視において前記走行車輪の走行方向中心線と一致するように設けられていること
を特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の天井搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井搬送車に関するものであり、特に、分岐軌道を含む搬送軌道に沿って走行する天井搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工場などの、物品を搬送する工程を含む作業が行われる設備において、物品の搬送のために図5に示すような天井搬送車80が用いられることがある。この天井搬送車80は、左右一対の車輪88を備えた走行台車86と、走行台車86の下方で左右一対に設けられたサイドローラ89L,89Rと、走行台車86の上方で左右にスライド可能に設けられたガイドローラ87とを有している。そして図5に仮想線で示されているように、走行台車86の下方には、搬送対象となる物品82(例えば半導体基板を収納する筐体など)を保持する物品保持部84が接続されている。
【0003】
走行台車86の車輪88は、左右一対の走行レール92,94に支持される。この走行レール92,94は、設備の天井から吊り下げ装置90によって吊り下げられるなどの方法で、設備の天井側に設置されており、予め定められた搬送軌道に沿って天井搬送車80の走行ルートを形成している。この走行レール92,94上で車輪88が転動するとともに、走行レール92,94の内面(図中内側の側面)にサイドローラ89L,89Rが沿うことにより、走行台車86は搬送軌道に沿って設備内を走行することができる。このようにして走行台車86が走行することにより、走行台車86に接続されている物品保持部84に保持された物品82が搬送軌道に沿って搬送される。なお図5は天井搬送車80をその走行方向の後方から見た様子を示す背面図である。
【0004】
ところで、搬送軌道は設備内において2方向以上に枝分かれ(分岐)することがある。そのような場合に天井搬送車80を適切な枝分かれ先(方向)へと案内するために、分岐地点の近くでは、走行レール92,94の上方にガイドレール96が設けられる。ここでは図示しないが、このガイドレール96は分岐地点において二股状に設けられており、その二股状のガイドレール96のどちらに対してガイドローラ87が接して転動する(ガイドされる)かによって、天井搬送車80の走行方向が変化する。
【0005】
図5に示すガイドローラ87は前述の通り図中左右にスライド可能であり、ガイドレール96の図中右側の側面と左側の側面のどちらに接するのかを選択可能になっている。天井搬送車80の動作を制御する制御器(図示せず)は、ガイドローラ87を左右にスライドさせることにより、物品82が搬送されるべき目的地に応じた適切な枝分かれ先を選択する。例えば搬送軌道が直進するメイン軌道と右方向へ向かう分岐軌道に分岐しており、ガイドレール96がその搬送軌道に沿って、直線状の部分と右曲がりの部分との二股に分岐する構造である場合、図5に示すようにガイドローラ87がガイドレール96の右側面に接してガイドされるならば、天井搬送車80はガイドレール96の右曲がりの部分に案内されて右方向へ向かうことになり、分岐軌道へと案内される。一方、図5に仮想線で示すようにガイドローラ87がガイドレール96の左側面に接してガイドされるならば、天井搬送車80はガイドレール96の直線状の部分に案内されてそのまま直進し、メイン軌道へと案内される。
【0006】
上述の天井搬送車80が予め定められた搬送軌道に沿って正確に、かつなるべく振動を起こさないように走行するためには、走行レール92,94やガイドレール96が正確な位置関係で設置されていなければならない。特許文献1には、こうした各レールの設置状態を検査するためのレール検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-062241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術においては、特許文献1に記載されているようなレール検査装置を用いてもなお、各レールを正確に設置することは困難であった。図5に記載されているように、従来の天井搬送車80をガイドするためのガイドレール96は、左右一対の走行レール92,94に対して左右方向の中央上方に設けられる。このため、ガイドレール96の位置調整にあたっては走行レール92,94同士の間の広い範囲内で調整を行わなければならない。そして上述のように、ガイドローラ87はガイドレール96の左側面にも右側面にも接する可能性がある。したがってガイドレール96はその左側面と右側面との両方が正確な位置、向きとなるように設置されなければならない。このように両方の側面の位置と向きが正確となるようにガイドレール96を設置することは困難である。
【0009】
特許文献1に記載のレール検査装置により、ガイドレール96の一方の側面と一方の走行レールとの間の幅方向(左右方向)間隔を検査することが可能であるが、もう片方の側面の位置が正確となるよう設置されているかどうかは、もう片方の側面に対して改めて検査を行わなければ知ることができない。そして、どちらの側面も正確な位置となるように設置されるまでには、レール位置の微調整と両側面に対する検査が何度も繰り返されることになり、非常に手間のかかる作業が必要である。
【0010】
また従来の天井搬送車80では、搬送軌道の分岐地点付近においてガイドローラ87およびガイドレール96に摩耗が生じてしまう問題もあった。搬送軌道の分岐地点付近では、分岐元から分岐先へと移行するまでの区間において、左右一対の走行レール92,94の一方が一時的に途切れる場合がある。例えば天井搬送車80が直進するメイン軌道から右方向へ向かう分岐軌道へと分岐する経路を辿る場合、一時的に図5に示す左側の走行レール92が存在しない区間を通ることになる。その区間においては走行レール92による支持を受けられない左側の車輪88が重力に引かれ、天井搬送車80を図中の左下方向へと傾ける力が働くが、図5に示すようにガイドレール96の右側面にガイドローラ87が接していれば、天井搬送車80を図中の左下方向へと傾けようとする力はガイドレール96の右側面で受け止められ、天井搬送車80が落下したり、傾いたりすることは防止される。
【0011】
しかしながら、天井搬送車80が左下方向へと傾こうとする動きは、右側の車輪88と右側の走行レール94との接点を中心点として図中の左回りの力を伴うため、右側の車輪88と右側の走行レール94との接点から左右方向に離れているガイドレール96の右側面とガイドローラ87との接点には、図中の左下方向へと向かう力が加わる。
【0012】
すなわち、ガイドレール96とガイドローラ87との間で、左右方向だけでなく上下方向の力が作用する。ガイドローラ87の左右方向の動きはガイドレール96により規制されているが、上下方向の動きは規制されていないため、上下方向の力が作用することでガイドローラ87はガイドレール96の右側面に対して上下へと摺動することになり、ガイドローラ87とガイドレール96との間で摩擦が生じて、ガイドローラ87およびガイドレール96の表面が摩耗してしまうおそれがある。また、この摩耗によりガイドローラ87およびガイドレール96から粉塵が発生すると、半導体製造工場などの搬送設備において求められる高度の清浄性が満たせなくなってしまう。
【0013】
そこで本発明においては、各レールの位置関係の調整が容易であり、かつガイドローラおよびガイドレールの摩耗のおそれの少ない天井搬送車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る天井搬送車の実施形態の一例は、複数のメイン軌道および前記複数のメイン軌道同士を接続する分岐軌道を含む搬送軌道に沿って走行する天井搬送車において、前記天井搬送車は、左右少なくとも一対の走行車輪と、前記走行車輪の上方で走行方向の左側と右側にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられたガイドローラと、を備え、前記メイン軌道は、その上面で前記走行車輪を支持するメインレールと、前記メインレールにおいて前記走行車輪が通過する領域の上方に設けられており前記ガイドローラをガイドするメインガイドレールを備え、前記分岐軌道は、その上面で前記走行車輪を支持する分岐レールと、前記分岐レールにおいて前記走行車輪が通過する領域の上方に設けられており前記ガイドローラをガイドする分岐ガイドレールを備え、前記メインガイドレールおよび前記分岐ガイドレールについて、前記メイン軌道および前記分岐軌道の中心側の側面を内面、反対側の側面を外面として、前記ガイドローラは、前記メインガイドレールまたは前記分岐ガイドレールの外面でガイドされることを特徴とする。
【0015】
また好ましくは、前記天井搬送車は、前記走行車輪の下方で走行方向の左側と右側にそれぞれ設けられたサイドローラを備えており、前記サイドローラは前記メインレールおよび前記分岐レールの内面でガイドされるとよい。
【0016】
また好ましくは、前記サイドローラは、前記ガイドローラの1つ1つに対して走行方向の前後に2つ1組で設けられているとよい。
【0017】
また好ましくは、前記ガイドローラは、前記メインガイドレールまたは前記分岐ガイドレールによってガイドされている際に、前記メインガイドレールまたは前記分岐ガイドレールとの接点が平面視において前記走行車輪の回転軸上に位置するように設けられているとよい。
【0018】
また好ましくは、前記メインガイドレールおよび前記分岐ガイドレールは、その外面が平面視において前記走行車輪の走行方向中心線と一致するように設けられているとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る天井搬送車の実施形態の一例によれば、ガイドローラをメイン軌道へガイドするためのメインガイドレールと分岐軌道へガイドするための分岐ガイドレールが別々に設けられている。このため、メインガイドレールの位置を調整するにあたってはメインレールの内面とメインガイドレールの外面との位置関係のみを調整すればよく、メインガイドレールの内面の位置と向きまで考慮する必要がない。同様に、分岐ガイドレールの位置を調整するにあたっては分岐レールの内面と分岐ガイドレールの外面との位置関係のみを調整すればよく、分岐ガイドレールの内面の位置と向きまで考慮する必要がない。さらに、メインガイドレールはメインレールの上方、分岐ガイドレールは分岐レールの上方に設けられることになるため、メインガイドレールとメインレールとの距離、および分岐ガイドレールと分岐レールとの距離が短くなり、各レールの位置関係の調整はその短い距離内での調整となる。したがって、各レールの位置関係の調整が容易である。
【0020】
また、ガイドローラは走行車輪が通過する領域の上方に設けられたメインガイドレールまたは分岐ガイドレールでガイドされるため、分岐軌道において左右一対の走行車輪のどちらかが支持されていない状態でも、支持されている走行車輪と支持しているレールとの接点から、ガイドローラとメインガイドレールまたは分岐ガイドレールとの接点までの左右方向の距離が短くなる。そのため、メインガイドレールまたは分岐ガイドレールに加わる上下方向の力が小さくなり、ガイドローラ、メインガイドレール、分岐ガイドレールが摩耗すること、および粉塵が発生してしまうことのおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の一例における天井搬送車が走行する搬送経路の一部を概略的に示す平面図。
図2】天井搬送車の構造を示す背面図。
図3図2のA-A矢視図。
図4】ガイドローラが分岐ガイドレールにガイドされる様子を概略的に示す平面図。
図5】従来の天井搬送車の構造を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の平面図には、本発明に係る実施形態の一例において天井搬送車10が走行する搬送軌道が概略的に示されている。この搬送軌道は例えば半導体製造工場などの、搬送対象となる物品12(例えば半導体基板を収納する筐体など)を搬送する工程を含む作業が行われる設備内に設けられている。
【0023】
図1の搬送軌道には複数のメイン軌道RMが含まれる。各メイン軌道RMは、設備内において物品12に対する各種作業が行われる区画を通る軌道であり、物品12に対して行われる作業の種類に応じて、別々のメイン軌道RMが設けられている。例えば半導体製造工場であれば、メイン軌道RMに沿って複数の物品処理部が設けられており、製造される半導体の種類や、加工の段階に応じて天井搬送車10が適切なメイン軌道RMを通過する。
【0024】
そして、搬送軌道には、これら複数のメイン軌道RM同士を接続する分岐軌道RBが設けられている。搬送軌道にはメイン軌道RMと分岐軌道RBとに枝分かれする分岐区画が複数存在し、いずれかのメイン軌道RMを走行する天井搬送車10は、分岐区画において、その後に向かうべきメイン軌道RM(これは上位システムなどによって指定される)に応じて、現在走行しているメイン軌道RMをそのまま走行するか、分岐軌道RBを経由して別のメイン軌道RMへと向かうかを選択する。以降の説明では、図1において仮想線で囲まれている分岐区画MB、すなわち直線状のメイン軌道RMと右方向に向かう分岐軌道RBとに分岐する区画について説明する。
【0025】
図2に、分岐区画MBに位置する天井搬送車10を走行方向の後方から見た背面図を示す。また図3に、図2中のA-A矢視図を示す。この天井搬送車10は左右に少なくとも1対(図3に示すように、ここでは2対とする)の走行車輪18L,18Rを備えた走行台車16によって設備内を走行する。そして走行台車16の下方には、搬送対象となる物品12を保持する物品保持部14が接続されている。ここでは図示しないが、物品保持部14は物品12を昇降させる機構を備えており、搬送軌道の下方において物品12に対する作業が行われる場所(半導体製造工場における物品処理部など)と、天井側の搬送軌道を走行する天井搬送車10との間で物品12を移載することができる。
【0026】
また、逆U字状の枠体25を備えた吊り下げ装置20によって設備の天井から吊り下げ支持されたメインレール22と分岐レール24が搬送軌道に沿って配置されており、分岐区画MBにおける天井搬送車10の走行台車16が備える左右の走行車輪18L,18Rは、これらメインレール22および分岐レール24によって支持される。図2においては左側の走行車輪18Lがメインレール22上面に、右側の走行車輪18Rが分岐レール24上面に支持される。なおメイン軌道RMにおいては左右両方のレールがメインレール22であり、左右の走行車輪18L,18Rはどちらもメインレール22によって支持される。
【0027】
図3には天井搬送車10がメイン軌道RMから分岐区画MBへと進入していく様子が示されている。図3中右側のレールはメイン軌道RMにおいてはメインレール22であり、分岐区画MBにおいては分岐レール24である。図中ではこのメインレール22と分岐レール24とを連続したレールとして描いているが、メインレール22と分岐レール24とを別体とし、その境目にわずかな隙間があってもよい。
【0028】
これらメインレール22と分岐レール24の内面(図2図3中の中央寄りの側面、すなわちメイン軌道RMまたは分岐軌道RBの中心側の側面)には、走行台車16の下方に設けられた左右のサイドローラ50L,50Rが転がり面を向けている。メイン軌道RMにおいては、これらサイドローラ50L,50Rがメインレール22の内面にてガイドされて、天井搬送車10がメイン軌道RMに沿って走行する。
【0029】
走行台車16の上方にはガイドローラ装置30が取り付けられている。このガイドローラ装置30は後述のメインガイドレール40Mまたは分岐ガイドレール40Bにガイドされる左右のガイドローラ32L,32Rと、これらガイドローラ32L,32Rを移動させるガイドローラ駆動部34と、ガイドローラ駆動部34を支持するガイドローラ台座31とを備えている。ガイドローラ駆動部34は、ガイドローラ装置30ひいては天井搬送車10全体に対する左右のガイドローラ32L,32Rの位置を変化させることにより、左側のガイドローラ32Lがメインガイドレール40Mにガイドされる状態と、右側のガイドローラ32Rが分岐ガイドレール40Bにガイドされる状態とを切り替えることができる。ガイドローラ32L,32Rは走行車輪18L,18Rの上方で走行方向の左側と右側にそれぞれ少なくとも1つずつは存在するように設けられており、図3においては、2対の走行車輪18L,18Rに対応して、ガイドローラ装置30が2つ設けられていることにより、左側と右側にそれぞれ2つずつのガイドローラ32L,32Rが存在する。
【0030】
メインガイドレール40Mおよび分岐ガイドレール40Bはそれぞれメインレール22および分岐レール24の上方に設けられており、天井搬送車10よりも高い位置にある。ここでは、メインレール22、分岐レール24を吊り下げ支持する逆U字状の枠体25において逆U字の上辺となる箇所の下面にメインガイドレール40Mおよび分岐ガイドレール40Bが(ネジ留めなどによって)取付けられている。
【0031】
メインガイドレール40Mおよび分岐ガイドレール40Bは、搬送方向に対する左右(図2図3中の左右)に両面を向けた板状の部分を有しており、メイン軌道RMおよび分岐軌道RBの中心側(図2図3中の中央側)の面を内面、反対側の面を外面として、外面でガイドローラ32L,32Rをガイドするように設置されている。図2図3には分岐ガイドレール40Bの外面(図2図3中で右側の面)に右側のガイドローラ32Rがガイドされる様子が示されている。
【0032】
図2図3に示すガイドローラ装置30においては、ガイドローラ32L,32Rはそれぞれガイドローラ駆動部34を基部として水平面内で回転するアームの先端に取り付けられている。このアームはガイドローラ駆動部34において回転の基部となる位置(図3では搬送軌道の中心近く)からメインガイドレール40Mまたは分岐ガイドレール40Bまでの直線距離よりもガイドローラ32L,32Rの半径分長い寸法となっている。図3に示されているガイドローラ装置30は、左側のガイドローラ32L用のアームが走行方向に近い角度(走行方向に対して鋭角)となっており、右側のガイドローラ32R用のアームが右方向に向く角度(走行方向に対して直角)となった状態である。
【0033】
この状態で天井搬送車10が走行することにより、天井搬送車10は右方向へ向かう分岐軌道RBへと案内される。図4の平面図に、右側のガイドローラ32Rが分岐ガイドレール40Bにガイドされる様子を概略的に示す。説明のため、図4においては天井搬送車10について搬送台車16の図示を省略し、ガイドローラ装置30のうちガイドローラ駆動部34と左右のガイドローラ32L,32Rの位置のみを示す。
【0034】
分岐ガイドレール40Bは右方向に向かう分岐軌道RBに沿う分岐レール24の上方に設けられており、図4に示すように、その平面視形状は分岐軌道RBに沿って右方向へ曲がった形状となっている。分岐軌道RBへと向かう予定の天井搬送車10(図4にはガイドローラ装置30のみが示されている)が分岐区画MBに近づくと、ガイドローラ駆動部34が、右側のガイドローラ32R用のアームを右方向に向く角度へと回転させて、ガイドローラ装置30は図4中に実線で示される状態となる。この状態で天井搬送車10が前進していくと、右側のガイドローラ32Rが分岐ガイドレール40Bの外面(図4中で右側の面)にガイドされることにより、ガイドローラ装置30を含む天井搬送車10は、分岐ガイドレール40Bの平面視形状に沿った方向、すなわち右方向に向かう分岐軌道RBへと案内される。
【0035】
一方、メインガイドレール40Mは分岐区画MBにおいて直線状のメイン軌道RMに沿うメインレール22の上方に設けられており、図4に示すように、その平面視形状もメインレール22に沿って直線状となっている。メイン軌道RMを直進する予定の天井搬送車10が分岐区画MBに近づくと、図4に仮想線で示すように、ガイドローラ駆動部34が、左側のガイドローラ32L用のアームを左方向に向く角度へと回転させるとともに、右側のガイドローラ32R用のアームを走行方向に近い角度へと回転させる。この状態の(仮想線で示す)ガイドローラ装置30であれば、左側のガイドローラ32Lがメインガイドレール40Mの外面(図4中で左側の面)にガイドされ、右側のガイドローラはガイドされない。この状態で天井搬送車10が前進していくと、左側のガイドローラ32Lがメインガイドレール40Mの外面にガイドされることにより、ガイドローラ装置30を含む天井搬送車10は、メインガイドレール40Mの平面視形状に沿った方向、すなわち直線状のメイン軌道RMへと案内される。
【0036】
なお、左右のガイドローラ32L、32Rが共にガイドされてしまう状態、すなわち左側のガイドローラ32Lがメインガイドレール40Mにガイドされつつ右側のガイドローラ32Rが分岐ガイドレール40Bにガイドされるという状態が発生しないようにするために、例えば両アームの駆動機構がギアなどで連結されることにより、左側のガイドローラ32L用のアームの動きと右側のガイドローラ32R用のアームの動きとが連動するようになっているのが好ましい。すなわち、どちらか一方のアームが走行方向と直角になれば他方のアームが走行方向と近い角度となり、左側と右側のガイドローラ32L,32Rのどちらか一方しかガイドされないようになっているとよい。
【0037】
以上のような本実施形態の天井搬送車10によれば、従来技術に比べて、各レールの位置関係の調整が容易である。図2に示すように、メインガイドレール40Mと分岐ガイドレール40Bとが別々に設けられているため、天井搬送車10が適切にメイン軌道RMへと案内されるようにするためには、メインガイドレール40Mの位置を調整してメインガイドレール40Mの外面とメインレール22の内面との位置関係が適切となるようにすればよく、メインガイドレール40Mの内面の位置と向きまで考慮する必要がない。また天井搬送車10が適切に分岐軌道RBへと案内されるようにするためには、分岐ガイドレール40Bの位置を調整して分岐ガイドレール40Bの外面と分岐レール24の内面との位置関係が適切となるようにすればよく、分岐ガイドレール40Bの内面の位置と向きまで考慮する必要がない。
【0038】
さらに、メインガイドレール40Mはメインレール22の上方、分岐ガイドレール40Bは分岐レール24の上方に設けられているため、メインガイドレール40Mとメインレール22との距離、および分岐ガイドレール40Bと分岐レール24との距離が短くなっており、各レールの位置関係の調整はその短い距離内での調整となる。したがって、各レールの位置関係の調整が容易である。
【0039】
また、本実施形態の天井搬送車10では、左右の走行車輪18L,18Rのどちらかが支持されていない状態においても、ガイドローラ32L,32R、メインガイドレール40M、分岐ガイドレール40Bが摩耗してしまうおそれが少ない。例えば図4に示すように天井搬送車10が右方向へ向かう分岐軌道RBへと案内される場合、メイン軌道RMから分岐軌道RBへと移行する途中では、図2の左側に位置する走行車輪18Lが、一時的にメインレール22から離れて宙に浮く(支持を受けられない)時期がある。そのような場合、左側の走行車輪18Lが重力に引かれ、天井搬送車10を図中の左下方向へと傾ける力が働くが、その力は右側のガイドローラ32Rと分岐ガイドレール40B外面との接点、図2中に示す点Pで受け止められる。
【0040】
この点Pは図2に示す通り右側の走行車輪18Rの走行方向中心線LZ1(走行車輪18Rの左右方向寸法の中央を通る線)と一致する位置にある。天井搬送車10を図中の左下方向へと傾ける力は天井搬送車10を、右側の走行車輪18Rとメインレール24との接点(走行方向中心線LZ1上に位置する)を中心として左回りへと回転させるように作用するが、前述の点Pが走行方向中心線LZ1上に位置しているため、点Pに作用する力は図中の左右方向に対してのみ作用し、分岐ガイドレール40B外面に上下方向の力が加わることがない。したがって、ガイドローラ32Rが分岐ガイドレール40Bに対して上下に摺動してしまうことはなく、ガイドローラ32Rと分岐ガイドレール40Bが摩耗してしまうおそれは少ない。
【0041】
同様に、天井搬送車10が分岐区画MBにおいてメイン軌道RMへと案内される場合、右側の走行車輪18Rが宙に浮く時期があるが、その時期においても左側のガイドローラ32Lとメインガイドレール40M外面との接点が左側の走行車輪18Lの走行方向中心線LZ2と一致する位置にあるため、ガイドローラ32Lがメインガイドレール40Mに対して上下に摺動してしまうことはなく、ガイドローラ32Rとメインガイドレール40Mが摩耗してしまうおそれは少ない。
【0042】
また本実施形態においては、左右の走行車輪18L,18Rのどちらかが支持されていない状態、例えばメインレール22が途切れており左側の走行車輪18Lが宙に浮いた状態(片持ち状態)において、搬送台車16が走行方向に対して左右に振動してしまう(首振り運動をする)おそれも少ない。なぜならば、図3に示すように、分岐ガイドレール40Bにガイドされる右側のガイドローラ32Rに対して、走行台車16下方で分岐レール24内面に案内されるサイドローラ50Rが、走行方向の前後に2つ1組で設けられている(図3ではガイドローラ32Rが2つあるため、サイドローラ50Rは2組、4つ存在する)からである。このようにサイドローラ50Rが設けられていることにより、片持ち状態の走行台車16は点Pを頂点の1つとする三角形の頂点にそれぞれ配置されたガイドローラ32Rと2つのサイドローラ50Rで支持されることになる。この状態では、図中左向きの力と右向きの力の両方で挟み込むようにして支えられることになり落下がより確実に防止されるとともに、3点で支持されることにより点Pを中心とした首振り運動も防止される。
【0043】
ここで、点Pが平面視において走行車輪18L,18Rの回転軸LX上に位置し、かつ平面視における走行車輪18L,18Rの走行方向中心線LYと一致するように分岐ガイドレール40Bが配置されていれば、ガイドローラ32Rと2つのサイドローラ50Rによって走行台車16を支持する力は点Pを中心として前後左右に均等となる(点Pを中心とする回転が生じない)ように作用することとなり、より走行台車16の姿勢が安定する。
【0044】
分岐ガイドレール40B、右側のガイドローラ32R、右側のサイドローラ50Rに関する以上の説明は、左側の走行車輪18Lが宙に浮いた状態に関するものであるが、右側の走行車輪18Rが宙に浮いた状態では、メインガイドレール40M、左側のガイドローラ32L、左側のサイドローラ50Lが上述したような位置関係に対応する配置となっていれば走行台車16の姿勢が安定する。
【0045】
ただし点Pが回転軸LX、平面視における走行方向中心線LY、背面視における走行方向中心線LZ1と厳密に一致している必要はなく、これらの線とある程度近い位置になってさえいれば、走行台車16の姿勢は十分に安定する。
【0046】
なお本実施形態においては直線状のメイン軌道RMから右方向へ向かう分岐軌道RBへと分岐する図1中の分岐区画MBについて説明したが、左方向へ向かう分岐軌道RBへと分岐する分岐区画であったり、直線状の軌道から右曲がりのカーブと左曲がりのカーブの二股に分岐するような分岐区画であったりしても、分岐区画においてガイドローラ30L,30Rをガイドするガイドレールが走行車輪18L,18Rをそれぞれ支持する走行用レールの上方に設けられて、ガイドローラ30L,30Rが天井搬送車10の進行先に応じて適切なガイドレールの外面でガイドされるようになっていればよい。
【符号の説明】
【0047】
10 天井搬送車
18L 走行車輪
18R 走行車輪
22 メインレール
24 分岐レール
32L ガイドローラ
32R ガイドローラ
40M メインガイドレール
40B 分岐ガイドレール
50L サイドローラ
50R サイドローラ
図1
図2
図3
図4
図5