(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】位置検出装置、印刷装置及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 19/18 20060101AFI20220712BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220712BHJP
A45D 29/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B41J19/18 N
B41J19/18 E
B41J2/01 451
B41J2/01 401
A45D29/00
(21)【出願番号】P 2019035764
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 伸介
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-104382(JP,A)
【文献】特開昭62-288068(JP,A)
【文献】特開平09-039300(JP,A)
【文献】特開昭64-090761(JP,A)
【文献】特開平05-077514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0263552(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 19/18
B41J 2/01-2/215
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置を検出する位置検出装置であって、
前記移動
体を検出して検出信号を出力する位置センサと、
リニアスケール及びスケールセンサを有し、前記移動体の一の方向の移動量を検出するリニアエンコーダと、
前記位置センサ及び前記スケールセンサを制御する位置検出制御部と、
を備え、
前記リニアスケールは、前記スケールセンサの出力がロー
に対応する第1区間と前記スケールセンサの出力がハイ
に対応する第2区間とが交互に配置されてなり、
前記第1区間から前記第2区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を透光タイミング、前記第2区間から前記第1区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を遮光タイミング、前記位置センサが検出する出力変化点を検出タイミング、としたとき、
前記位置検出制御部は、前記検出タイミングに最も近い前記透光タイミングを第1透光タイミング、前記検出タイミングに最も近い前記遮光タイミングを第1遮光タイミングとして、
(1)前記検出タイミング
と前記第1透光タイミング
との間の時間D1が前記検出タイミング
と前記第1遮光タイミング
との間の時間D2より長い場合には、前記検出タイミング後の前記透光タイミングである第2透光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における原点位置又は前記原点位置の基準となる基準位置として設定し、
(2)前記時間D1が前記時間D2より短い場合には、前記検出タイミング後の前記遮光タイミングである第2遮光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置として設定することを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記位置検出制御部は、前記時間D1と前記時間D2とが等しい場合には前記第2透光タイミング又は前記第2遮光タイミングのいずれか一方における前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置として設定することを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記位置検出制御部は、前記時間D1と前記時間D2とを比較し、前記時間D1が前記時間D2より長い場合には前記第2透光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置と設定し、前記時間D1が前記時間D2より短い場合には前記第2遮光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置として設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記位置検出制御部は、前記検出タイミング前後で最も前記検出タイミングに近い前記透光タイミングと、前記遮光タイミングと、をそれぞれ前記第1透光タイミングと、前記
第1遮光タイミングと、とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記位置検出制御部は、前記時間D1が前記時間D2より長い場合には前記検出タイミング後の最も近い前記透光タイミングを前記第2透光タイミングとし、前記時間D1が前記時間D2より短い場合には前記検出タイミング後の最も近い前記遮光タイミングを前記第2遮光タイミングとすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記移動体は所定範囲を往復移動しながら指示制御に基づいて動作するものであり、
前記位置検出制御部は、前記移動体の往路における前記透光タイミング又は前記遮光タイミングいずれかをユーザが所望する前記往復移動を含む動作を前記移動体に行わせる動作指示タイミングとした場合に、前記動作指示タイミングにおける前記移動体の位置を前記往路及び復路における動作指示位置として設定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の位置検出装置を備える印刷装置であって、
前記移動体は、往復移動しながらインク吐出動作を行う印刷ヘッド
を含み、
前記位置検出装置の検出結果に応じて前記移動体の動作を指示制御する印刷制御部を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
移動体の位置を検出する位置検出装置の位置検出方法であって、
前記位置検出装置は、前記移動
体を検出して検出信号を出力する位置センサと、リニアスケール及びスケールセンサを有し、前記移動体の一の方向の移動量を検出するリニアエンコーダと、を備え、
前記リニアスケールは、前記スケールセンサの出力がロー
に対応する第1区間と前記スケールセンサの出力がハイ
に対応する第2区間とが交互に配置されてなり、
前記第1区間から前記第2区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を透光タイミング、前記第2区間から前記第1区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を遮光タイミング、前記位置センサが検出する出力変化点を検出タイミング、としたとき、
前記検出タイミングに最も近い前記透光タイミングを第1透光タイミング、前記検出タイミングに最も近い前記遮光タイミングを第1遮光タイミングとして、
(1)前記検出タイミング
と前記第1透光タイミング
との間の時間D1が前記検出タイミングと前記第1遮光タイミング
との間の時間D2より長い場合には、前記検出タイミング後の前記透光タイミングである第2透光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における原点位置又は前記原点位置の基準となる基準位置として設定し、
(2)前記時間D1が前記時間D2より短い場合には、前記検出タイミング後の前記遮光タイミングである第2遮光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における原点位置又は前記原点位置の基準となる基準位置として設定することを特徴とする位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、印刷装置及び位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置等において、移動しながら動作する移動体の動作のタイミングを正確に把握するために、リニアエンコーダ等で構成される位置検出装置を設けることが知られている。
例えば、特許文献1には、印刷装置の印刷ヘッド(印刷ヘッドを搭載するキャリッジ)の移動方向に沿って設けられたリニアスケールを有するリニアエンコーダが、移動体としての印刷ヘッドの位置を検出する位置検出装置として印刷装置に設けられている例が記載されている。
【0003】
印刷装置では、ずれのない美しい仕上がりの印刷を行うために、印刷ヘッドの位置を正確に把握して適切なタイミングで動作させることが重要である。
適切な位置で印刷を行うようにするために、印刷装置では、イニシャライズ動作時に原点(基準位置、ホームポジションともいう。)を設定し、この原点からの移動量(移動距離)をリニアエンコーダ等で検出して、これに基づいて印刷ヘッド等の動作制御を行うようになっている。
【0004】
特許文献1には、原点(基準位置)を設定する手法として、リニアスケール(特許文献1においてスケール板)の原点(基準位置)側の一端の所定範囲に位置被検出部を設けない部分(特許文献1においてA部)を設けることが記載されている。
このA部にリニアセンサが到達すると出力パルスが変化しなくなる。そこで、特許文献1の発明では、所定時間T1経過してもリニアセンサの出力パルスが変化しないことを検知すると、ポジションカウンタを初期化して、この位置を原点(基準位置)として設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明では、出力パルスが確実に変化しなくなることを確認できるだけの長さのA部をリニアスケールに設ける必要がある。このため、その分位置検出装置が大きくなり、これを備える印刷装置も大型化してしまうという問題がある。
また、上記の構成では、異常により印刷ヘッド(これを支持するキャリッジ)が一時的に停止する等によって、リニアセンサの出力パルスが変化しない時間が所定時間T1を超えた場合には、ポジションカウンタが初期化されてしまう。この場合、本来原点(基準位置)とすべきでない箇所が原点(基準位置)として設定されてしまい、位置ずれが生じるおそれがある。
【0007】
この点、位置検出装置に、印刷ヘッド等の移動体の移動量(移動距離)を検出するリニアエンコーダの他に、原点を検出する原点センサを設けることが考えられる。
しかし、原点センサの検出タイミングは、リニアエンコーダの印刷装置への組み込み精度等により微妙に誤差を生じる場合がある。また、環境の変化や印刷装置の機械的ガタ等によっても原点センサの検出タイミングにずれが生じる可能性がある。
このため、原点センサの検出タイミングがリニアエンコーダの検出タイミングと極めて近いタイミングとなってしまった場合には、原点センサの検出タイミングがわずかにずれるだけで、リニアエンコーダの検出タイミングの前後にずれてしまうおそれがある。
この場合、イニシャライズ動作の度に、最大でリニアエンコーダのエンコーダスケールの1周期分、原点がずれてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、リニアエンコーダと原点センサ(位置センサ)とを用いて移動体の動作位置を検出する場合に、リニアエンコーダ及び原点センサ(位置センサ)の組み込み位置を高精度に調整しなくてもずれのない適切な位置に原点を設定することのできる位置検出装置、位置検出装置を備える印刷装置及び位置検出方法を提供することを利点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の位置検出装置は、
移動体の位置を検出する位置検出装置であって、
前記移動体を検出して検出信号を出力する位置センサと、
リニアスケール及びスケールセンサを有し、前記移動体の一の方向の移動量を検出するリニアエンコーダと、
前記位置センサ及び前記スケールセンサを制御する位置検出制御部と、
を備え、
前記リニアスケールは、前記スケールセンサの出力がローに対応する第1区間と前記スケールセンサの出力がハイに対応する第2区間とが交互に配置されてなり、
前記第1区間から前記第2区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を透光タイミング、前記第2区間から前記第1区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を遮光タイミング、前記位置センサが検出する出力変化点を検出タイミング、としたとき、
前記位置検出制御部は、前記検出タイミングに最も近い前記透光タイミングを第1透光タイミング、前記検出タイミングに最も近い前記遮光タイミングを第1遮光タイミングとして、
(1)前記検出タイミングと前記第1透光タイミングとの間の時間D1が前記検出タイミングと前記第1遮光タイミングとの間の時間D2より長い場合には、前記検出タイミング後の前記透光タイミングである第2透光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における原点位置又は前記原点位置の基準となる基準位置として設定し、
(2)前記時間D1が前記時間D2より短い場合には、前記検出タイミング後の前記遮光タイミングである第2遮光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置として設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リニアエンコーダと原点センサ(位置センサ)とを用いて移動体の動作位置を検出する場合に、リニアエンコーダ及び原点センサ(位置センサ)の組み込み位置を高精度に調整しなくてもずれのない適切な位置に原点を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態におけるネイルプリント装置の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】ネイルプリント装置から筐体を取り外して内部構成を示した要部斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る位置検出装置の要部構成を示した模式的背面図である。
【
図4】本実施形態に係るネイルプリント装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【
図5】リニアエンコーダのスケールセンサの出力波形を示す説明図である。
【
図6】リニアエンコーダのスケールセンサ及び原点センサの検出タイミングと原点の設定例を示す説明図である。
【
図7】(a)及び(b)は、本実施形態に係る位置検出装置における原点の設定手法を説明するための説明図である。
【
図8】(a)は、原点にずれのない状態で印刷した場合の印刷結果の一例を示す平面図であり、(b)は、原点がずれた状態で印刷した場合の印刷結果の一例を示す平面図である。
【
図9】リニアスケールの遮光部・透光部が1対1の比率で形成されている場合の動作指示タイミングと、動作指示タイミングに従ったインク吐出を説明する説明図である。
【
図10】リニアスケールの遮光部・透光部が3対5の比率で形成されている場合の従来の動作指示タイミングと、動作指示タイミングに従ったインク吐出を説明する説明図である。
【
図11】リニアスケールの遮光部・透光部が3対5の比率で形成されている場合の本実施形態における動作指示タイミングと、動作指示タイミングに従ったインク吐出を説明する説明図である。
【
図12】
図10で示す手法にしたがって印刷した場合の印刷結果の一例を示す平面図である。
【
図13】
図11で示す手法にしたがって印刷した場合の印刷結果の一例を示す平面図である。
【
図14】本実施形態における動作開始タイミングの設定例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から
図14を参照しつつ、本発明に係る位置検出装置及びこれを備える印刷装置の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が人の爪に印刷を施すネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置はネイルプリント装置に限定されない。また、ネイルプリント装置は、手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷する場合を例とするが、本発明における印刷装置がネイルプリント装置である場合にその印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象としてもよい。
【0013】
図1は、本実施形態における印刷装置であるネイルプリント装置の外観斜視図である。
図1に示すように、本実施形態におけるネイルプリント装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の上面(天板)には操作部22が設置されている。
操作部22は、ユーザが各種入力を行う入力部である。
操作部22には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、爪Tに印刷するデザイン画像を選択するデザイン選択釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦が配置されている。
【0014】
また、筐体2の上面(天板)には表示部23が設置されている。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
本実施形態において、この表示部23には、例えば、図示しない指を撮影して得た爪画像(爪の画像を含む指の画像)、この爪画像中に含まれる爪の輪郭線等の画像、爪に印刷すべきデザイン画像を選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面等が適宜表示される。
なお、表示部23の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部22として機能する。
【0015】
また、筐体2の前面側(
図1において手前側)であって、ネイルプリント装置1のX方向(
図1においてX方向)のほぼ中央部には、ネイルプリント装置1による撮影時や印刷部40による印刷動作時に印刷対象である爪に対応する指を挿入し、撮影部50による撮影が可能な撮影可能位置、印刷部40による印刷が可能な印刷位置に爪をセットするための開口部24が形成されている。
開口部24の内側には、後述するように、爪を有する指を固定する指固定機構3が配置されている。
【0016】
図2は、
図1に示すネイルプリント装置1から筐体2を外してネイルプリント装置1の内部構成を示した要部斜視図である。
図2に示すように、筐体2内には、各種の内部構造物が組み込まれた基台10が設けられている。
基台上面20における装置手前側(
図2におけるY方向手前側)であって、装置の幅方向(
図2におけるX方向)のほぼ中央部であり、筐体2の開口部24に対応する位置には、指固定機構3が配置されている。
【0017】
指固定機構3は、印刷対象である爪を有する指を安定的に保持する機構を有する。
指固定機構3は、装置手前側に開口部31を有する箱状の部材であり、指固定機構3内部には指を固定する指固定部材32が配置されている。
指固定部材32は、指を下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。本実施形態では、指固定部材32は、幅方向(
図2におけるX方向)のほぼ中央部が窪んだ形状となっており、指を指固定部材32上に載置した際に、指の腹部分を指固定部材32が受けて、装置幅方向(
図1及び
図2におけるX方向)に指ががたつくのを防止することができる。
【0018】
指固定機構3の天面奥側は開口する窓部33となっている。窓部33からは指固定機構3内に挿入された指の爪が露出するようになっている。
また、指固定機構3の天面手前側は指の浮き上がりを防止して指の上方向の位置を規制する指押え部34となっている。
さらに、本実施形態では、指挿入方向の奥側には、印刷対象である爪の先端部分を載置させて爪の高さ方向の位置を規制する爪載置部35が設けられている。爪載置部35の上面に爪の先を載置させることにより、爪の水平方向(すなわち、X方向及びY方向)の位置が規定されるとともに、その高さ方向の位置も規制される。
なお、指固定機構3は、装置内から取り外せるように、着脱自在に構成されていてもよい。
【0019】
また、筐体2の内部には、印刷対象面(すなわち、印刷対象の表面)に印刷を施す印刷部40が設けられている。本実施形態において、印刷対象面は爪の表面である。
印刷部40は、印刷ヘッド41、印刷ヘッド41を支持するヘッドキャリッジ42、印刷ヘッド41をX方向(
図1及び
図2等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)に移動させるための移動機構を構成するX方向移動モータ46(
図4参照)、印刷ヘッド41をY方向(
図1及び
図2等におけるY方向、ネイルプリント装置1の前後方向)に移動させるためのY方向移動ステージ47及びY方向移動モータ48(
図4参照)、移動体である印刷ヘッド41等の位置を検出する位置検出装置70等を備えている。
【0020】
本実施形態において印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を支持するヘッドキャリッジ42)は、X方向(
図1及び
図2等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)に延在するガイド軸455(
図3参照)に摺動可能に取り付けられている。
また、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を支持するヘッドキャリッジ42)は、基台10における装置幅方向(
図1及び
図2等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)の両側部に、それぞれY方向(
図1及び
図2等におけるY方向、ネイルプリント装置1の前後方向)に延在して設けられたY方向移動ステージ47上をガイド軸455に支持されたままY方向に沿って移動可能に構成されている。
【0021】
本実施形態の印刷ヘッド41は、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットヘッドである。
印刷ヘッド41は、往復移動しながらインク吐出動作を行う移動体であり、後述する爪情報検出部812により検出された爪情報等に基づいて、印刷対象である爪に印刷を施す。
印刷ヘッド41は、例えば、イエロー(Y;YELLOW)、マゼンタ(M;MAGENTA)、シアン(C;CYAN)のインクに対応する図示しないインクカートリッジと各インクカートリッジにおける印刷対象(爪Tの表面)に対向する面に設けられた図示しないインク噴射面とが一体に形成されたインクカートリッジ一体型のヘッドである。インク噴射面には、それぞれの色のインクを噴射する複数のノズルからなるノズルアレイの噴射口(インク噴射口、図示せず)が列状に形成されている。印刷ヘッド41は、インクを微滴化し、インク噴射面(インク噴射面のインク噴射口)から爪の表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行う。なお、印刷ヘッド41は、上記3色のインクを噴射させるものに限定されない。その他のインクを貯留するインクカートリッジ及びインク噴射口を備えていてもよい。
【0022】
本実施形態では、X方向移動モータ46とY方向移動モータ48等により印刷ヘッド41をXY平面上においてX方向及びY方向に移動可能なヘッド移動機構49(
図4参照)が構成されており、ヘッド移動機構49は、後述する制御装置80(特に印刷制御部814、
図4参照)によりその動作が制御される。
また、後述するように、移動体である印刷ヘッド41の動作は、位置検出装置70の検出結果に応じて印刷制御部814により指示制御される。
すなわち、本実施形態の印刷ヘッド41は、位置検出装置70の検出結果に応じたインクの吐出開始タイミング(本実施形態における動作開始タイミング)や、印刷中のインク吐出タイミング(本実施形態における動作指示タイミング)にしたがって印刷動作を開始させ、適宜インクを吐出させるようになっている。
【0023】
本実施形態の位置検出装置70は、移動体である印刷ヘッド41のX方向(
図1等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)の位置を検出するものである。
位置検出装置70は、原点センサ71(位置センサ、
図3参照)と、リニアエンコーダ75(
図3参照)と、これらを制御する位置検出制御部816(
図4参照)とを備えている。
図3に、位置検出装置70の原点センサ71及びリニアエンコーダ75と、印刷ヘッド41周辺の構成例を模式的に示す。
図3に示すように、リニアエンコーダ75(リニアエンコーダ75のリニアスケール73)は、X方向(
図1等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向、一の方向ともいう)に延在して設けられており、原点センサ71は、リニアスケール73の左右いずれかの側(原点を設定する側)の端部近傍に配置されている。
【0024】
原点センサ71は、移動体である印刷ヘッド41が所定の基準位置に達したときにこれを検出して検出信号を出力する。原点センサ71は、例えば対向する発光部と受光部(いずれも図示せず)を有し、発光部からの光を物体が遮るのを受光部で検出することによって、物体の有無や位置を判定するフォトインタラプタ(Photointerrupter)等で構成されている。
本実施形態では、例えば移動体である印刷ヘッド41(印刷ヘッド41又はこれを支持するヘッドキャリッジ42、以下「印刷ヘッド41等」という)に遮光板74が設けられており、印刷ヘッド41等の移動に伴い、遮光板74が原点センサ71の発光部と受光部の間を通過すると、遮光板74が発光部からの光を遮光することで原点センサ71の出力が変化する。原点センサ71は、遮光板74の通過によって出力が変化したところ(出力変化点)を、検出タイミングとして検出する。後述する位置検出制御部816は、この検出タイミングに基づいて原点(原点位置)Opを設定する。
なお、具体的な原点Opの設定の仕方については後述する。
【0025】
リニアエンコーダ75は、リニアスケール73及びスケールセンサ72を有し、移動体である印刷ヘッド41等の移動量(移動距離)を検出するものである。
本実施形態のスケールセンサ72は、例えば2個の受光部を、矩形波出力位相差が1/4周期となるように配置した2相式のフォトインタラプタであり、A相出力センサ72a,B相出力センサ72bからなる。
リニアスケール73は、遮光部と透光部(スリット部分)とが1セットで1周期となっており(
図5等参照)、1周期の長さは、数十μm~数百μm程度である。A相出力センサ72a,B相出力センサ72bは、この1周期の長さの1/4周期となる間隔分離れて配置されている。
本実施形態では、移動体である印刷ヘッド41等にスケールセンサ72が取り付けられている。
なお、以下において、A相出力センサ72a,B相出力センサ72bを特に区別しない場合には、単に「スケールセンサ72」とする。
【0026】
本実施形態においては、リニアスケール73においてスケールセンサ72(72a,72b)の出力がロー(Low;
図5等においてL)となる区間を第1区間S1とし、スケールセンサ72(72a,72b)の出力がハイ(High;
図5等においてH)となる区間を第2区間S2とする。
具体的には、スケールセンサ72(72a,72b)の出力がロー(L)となる第1区間S1は、リニアスケール73における遮光部であり、スケールセンサ72(72a,72b)の出力がハイ(H)となる第2区間S2はリニアスケール73における透光部である。
リニアスケール73は、遮光部である第1区間S1と透光部である第2区間S2とが交互に配置されてなり、スケールセンサ72(72a,72b)は移動体である印刷ヘッド41等の移動に伴ってロー(L)及びハイ(H)の出力を交互に繰り返す。
このため、スケールセンサ72から出力されるロー(L)又はハイ(H)の波形の信号(パルス)をカウントすることにより、印刷ヘッド41等が何周期分移動したかが分かり、これを1周期の長さと掛け合わせることで印刷ヘッド41等の移動量(移動距離)を検出することができる。
なお、本実施形態において、リニアスケール73の1周期の長さは、前述のように、数十μm~数百μm程度である。リニアスケール73の1周期の長さは、印刷装置であるネイルプリント装置1の解像度に応じて適宜設定される。高解像度の印刷を行うことが求められる場合には、リニアスケール73も短い周期の(すなわち、遮光部S1と透光部S2の配列パターンの細かい)ものが適用される。
【0027】
また、本実施形態では、印刷ヘッド41を支持するヘッドキャリッジ42の一部に撮影部50が取り付けられている。具体的には、ヘッドキャリッジ42の上面が側方に一部張り出しており、当該張り出し部分の下側面に、撮影部50が設けられている。
撮影部50は、爪を撮影して、爪を含む指の画像である爪画像を取得する撮影手段である。撮影部50は、撮影装置51と、照明装置52とを備えている。
本実施形態の撮影部50は、指を指固定機構3に固定し、爪先を爪載置部35に載置した状態で、照明装置52で爪を照明して、撮影装置51によって撮影する。
この撮影部50は、後述する制御装置80の撮影制御部811(
図4参照)に接続され、該撮影制御部811によって制御されるようになっている。
なお、撮影部50によって撮影された画像の画像データは、後述する爪情報記憶領域822等に記憶される。
本実施形態の撮影部50は、X方向移動モータ46とY方向移動モータ48等で構成されるヘッド移動機構49により、X方向及びY方向に移動可能に構成されている。
なお、撮影部50は、指固定機構3内に配置されている爪を撮影できるものであればよく、その具体的な配置等は特に限定されない。
ヘッド移動機構49とは別に撮影部50をX方向及びY方向に移動させる移動機構を設け、この移動機構により撮影部50が移動するように構成してもよい。また、撮影部50は、筐体2の上面(天板)の内側であって、指固定機構3の窓部33の上方位置等に固定配置されていてもよい。
【0028】
制御装置80は、例えば筐体2天面の下面側(すなわち、装置内側面)等に配置された図示しない基板等に設置されている。なお基板は筐体2天面の下面側等に配置されたメインの基板の他に、X方向移動ステージ45やヘッドキャリッジ42等にも分散して設けられていてもよく、この場合には、これら複数の基板同士が電気的に接続されることで各部が統括的に制御され、連係して動作するように構成される。例えば、後述する位置検出制御部816を構成するサブ基板がメインの基板とは別に位置検出装置70の近傍等に配置されていてもよい。
図4は、本実施形態における制御構成を示す要部ブロック図である。
制御装置80は、
図4に示すように、図示しないCPU(Central Processing Unit)等により構成される制御部81と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0029】
記憶部82には、ネイルプリント装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部82には、例えば爪画像から爪Tの形状や爪Tの輪郭、爪Tの幅、爪Tの曲率等の各種の爪情報を検出するための爪情報検出プログラム、印刷用データを生成するための印刷データ生成プログラム、印刷処理を行うための印刷プログラム、印刷ヘッド41等の位置を検出する位置検出プログラム等の各種プログラムが格納されており、これらのプログラムが制御装置80によって実行されることによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、本実施形態において記憶部82には、爪Tに印刷されるネイルデザインの画像データを記憶するネイルデザイン記憶領域821、撮影部50によって取得されたユーザの爪の爪画像や爪画像を解析することで得られた各種の爪情報(爪Tの輪郭や爪Tの幅、爪Tの傾斜角度(爪Tの曲率)等)を記憶する爪情報記憶領域822、位置検出装置70によって取得された移動体である印刷ヘッド41等の位置情報等が記憶される印刷位置情報記憶領域823等が設けられている。
【0030】
制御部81は、機能的に見た場合、撮影制御部811、爪情報検出部812、印刷データ生成部813、印刷制御部814、表示制御部815、位置検出制御部816等を備えている。これら撮影制御部811、爪情報検出部812、印刷データ生成部813、印刷制御部814、表示制御部815、位置検出制御部816等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0031】
撮影制御部811は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御して撮影装置51により、指固定機構3に固定された指の爪の画像を含む指の画像(爪画像)を撮影させるものである。
撮影部50により取得された爪画像の画像データは、記憶部82の爪情報記憶領域822に記憶される。
【0032】
爪情報検出部812は、撮影装置51によって撮影された爪画像に基づいて爪情報を検出するものである。
ここで、爪情報とは、例えば、爪の輪郭(爪形状、爪の水平位置のXY座標等)、爪の高さ(爪の垂直方向の位置、以下「爪の垂直位置」又は単に「爪の位置」ともいう。)、爪の曲率(湾曲度合)等である。なお、爪情報はここに例示したものに限定されない。
これらの爪情報は、爪情報検出部812が爪画像を解析することにより検出される。解析の具体的な手法は特に限定されない。
爪情報検出部812によって検出された結果である爪情報は、記憶部82の爪情報記憶領域822に記憶される。
【0033】
印刷データ生成部813は、爪情報検出部812により検出された爪情報に基づいて、印刷ヘッド41により爪に施される印刷用のデータを生成する。
具体的には、印刷データ生成部813は、爪情報検出部812により検出された爪の形状等に基づいてネイルデザインの画像データを拡大、縮小、切出し等することにより爪の形状に合わせ込む合せ込み処理を行う。
さらに、印刷データ生成部813は、適宜補正を行って印刷対象面である爪の表面に印刷する印刷用データを生成する。
また、爪情報検出部812により爪の曲率等が取得されている場合には、印刷データ生成部813は、例えば爪Tの曲率に応じて爪Tの両端部における印刷濃度が低下しないように濃度調整を行う等の曲面補正を適宜行ってもよい。
【0034】
印刷制御部814は、印刷データ生成部813によって生成された印刷用データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪に対してこの印刷用データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、印刷ヘッド41等を制御する制御部である。
また、本実施形態の印刷制御部814は、位置検出装置70によって検出された印刷ヘッド41の位置情報等も参照することにより正確な印刷制御を行う。
【0035】
表示制御部815は、表示部23を制御して、各種の表示画面を表示させるものである。
本実施形態では、表示制御部815は、例えば、指を撮影して得られた爪画像や、爪に印刷すべき画像(すなわち、「ネイルデザイン」)を選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面等を表示部23に表示させるようになっている。
【0036】
位置検出制御部816は、位置検出装置70を構成し、原点センサ71及びスケールセンサ72(A相出力センサ72a,B相出力センサ72b)を制御する制御手段である。
本実施形態において、位置検出制御部816は、以下のような手法によりキャリブレーションを行うことで、移動体である印刷ヘッド41等の原点を設定する。キャリブレーションは工場検査時又はユーザによる指示があった際に行われるものであるため、この時に設定される原点は不変であり、イニシャライズ動作の度に変更される原点(以下、「一時的な原点」とする)とは異なる。
本実施形態では、印刷ヘッド41等の移動方向が右の場合に、
図7(a)及び
図7(b)等に示すように、第1区間S1から第2区間S2への切り替わりをA相出力センサ72aが検出する出力変化点T(すなわち、A相出力センサ72aがリニアスケール73の遮光部から透光部に切り替わる境界のエッジを検出した、センサの出力が立ち上がるタイミング)を透光タイミングTa、第2区間S2から第1区間S1への切り替わりをA相出力センサ72aが検出する出力変化点T(すなわち、A相出力センサ72aがリニアスケール73の透光部から遮光部に切り替わる境界のエッジを検出した、センサの出力が立ち下がるタイミング)を遮光タイミングTbとし、原点センサ71が検出する出力変化点(すなわち、本実施形態では、原点センサ71を遮光板74が通過することで原点センサ71の出力がハイ(H)からロー(L)に切り替わる出力変化点)を検出タイミング、とする。
この場合、位置検出制御部816は、検出タイミングと当該検出タイミングに最も近い第1透光タイミングTa1
との間の時間D1と、検出タイミングと当該検出タイミングに最も近い第1遮光タイミングTb1
との間の時間D2とを比較し、時間D1>時間D2との式を満たすときは、当該検出タイミング後の第1区間S1から第2区間S2への切り替わり(出力変化点T)を第2透光タイミングTa2とし、第2透光タイミングTa2である出力変化点Tにおける移動体である印刷ヘッド41等の位置を、移動体である印刷ヘッド41等のX方向における原点Opとして設定する。また、時間D1<時間D2との式を満たすときは、当該検出タイミング後の第2区間S2から第1区間S1への切り替わり(出力変化点T)を第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1とし、第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1である出力変化点Tにおける移動体である印刷ヘッド41等の位置を、移動体である印刷ヘッド41等のX方向における原点Opとして設定する。本実施形態では、A相出力センサ72aがハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力している間に検出タイミングがある場合のため、第1遮光タイミングと第2遮光タイミングとは同一の出力変化点Tとなっているが、A相出力センサ72aがロー(L)の波形の信号(パルス)を出力している間に検出タイミングがある場合においては、第1遮光タイミングと第2遮光タイミングとは異なる出力変化点Tであり、第1透光タイミングと第2透光タイミングとが同一の出力変化点Tとなる。
【0037】
原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)のあと最初に検出されるA相出力センサ72aの出力変化点T(透光タイミングTa又は遮光タイミングTb)における移動体である印刷ヘッド41等位置を、移動体である印刷ヘッド41等のX方向における原点Opとするとき、原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)が、A相出力センサ72aの出力変化点Tである透光タイミングTa又は遮光タイミングTbに近接している場合には、原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)が少しずれるだけで移動体である印刷ヘッド41等の原点Opが大きくずれてしまうおそれがある。
例えば、キャリブレーション時に、原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)のあと最初にA相出力センサ72aにより検出される第1区間S1から第2区間S2への切り替わりである第1透光タイミングTa1(出力変化点T)における移動体である印刷ヘッド41等の位置が原点Opとして設定された場合に、
図6に示すように、原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)がαの場合には、αのあとの直近の透光タイミングTa1(α1)がイニシャライズ処理により一時的な原点として設定されて、ここから1周期目α1が開始され、α2,α3…と動作タイミングがカウントされていくためずれは生じない。
これに対して、原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)がβの場合には、βのあとの直近の第2透光タイミングTa2(β1)がイニシャライズ処理により一時的な原点として設定されて、ここから1周期目β1が開始され、β2,β3…と動作タイミングがカウントされていくため、キャリブレーションで設定された原点Opに対して、リニアスケール73におけるほぼ1周期分のずれが発生する。
【0038】
原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)は、わずかな温度や原点センサ71の光量の変化、波形の鈍り、移動体である印刷ヘッド41の通過速度等によってずれを生じる場合がある。
一時的な原点(
図6のα1及びβ1)は、印刷装置であるネイルプリント装置1についてイニシャライズ処理を行った際に初期化される。このため、原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)のわずかなずれにより、原点Opと一時的な原点にずれが生じることで、印刷開始位置が揃わず、本来
図8(a)に示すように印刷対象領域Ar1である爪領域全面に印刷が行われるべきところ、例えば
図8(b)に示すように印刷対象領域Ar1の一部に塗残し領域Ar2が生じる場合がある。
特に爪にネイルプリントを施す場合、印刷されるインクの発色をよくする等の目的で印刷前に爪に白色等の下地を塗布する場合がある。この場合、塗残し領域Ar2があると、その部分が余計にはっきりと目立ってしまう。
この点、このような原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)のずれを考慮して原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)がA相出力センサ72aの出力変化点T(透光タイミングTa又は遮光タイミングTb)と重なり合ったり近接しないように機械的・物理的に設置位置を微調整することも理論上可能である。しかし、リニアエンコーダ75のリニアスケール73のスケール幅(周期)は前述のように数十μm~数百μm程度とごく細かい。このため、原点センサ71の位置を適切に調整して組付けることは現実的に困難である。
【0039】
この点、本実施形態では、上記のように、時間D1と時間D2とを比較して時間D1>時間D2の場合には第2透光タイミングTa2における移動体である印刷ヘッド41等の位置を、時間D1<時間D2の場合には第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1における移動体である印刷ヘッド41等の位置を、原点Opとしてキャリブレーションにより設定する。このため、原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)が第1透光タイミングTa1から第1遮光タイミングTb1までの時間(すなわち、時間D1+時間D2)の1/2(1/4周期)よりも大きくずれない限りは、同じ出力変化点T(第2透光タイミングTa2又は第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1)における移動体である印刷ヘッド41等の位置が原点Opとして設定される。これにより、原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)に通常発生する程度の多少のずれが生じても、原点Opと一時的な原点とのずれは生じない。
すなわち、移動体である印刷ヘッド41等の移動方向が右で、A相出力センサ72aがハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力している間に検出タイミングがある場合に、原点センサ71の検出タイミングとこれに最も近い第1透光タイミングTa1
との間の時間D1よりも、検出タイミングとこれに最も近い第1遮光タイミングTb1
との間の時間D2の方が大きい(時間D1<時間D2)場合には、
図7(a)に示すように、A相出力センサ72aの出力変化点Tのうち、第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1における移動体である印刷ヘッド41等の位置を原点Opとして設定する。
また、原点センサ71の検出タイミングとこれに最も近い第1透光タイミングTa1
との間の時間D1の方が、検出タイミングとこれに最も近い第1遮光タイミングTb1
との間の時間D2よりも大きい(時間D1>時間D2)場合には、
図7(b)に示すように、A相出力センサ72aの出力変化点Tのうち、第2透光タイミングTa2における移動体である印刷ヘッド41等の位置を原点Opとして設定する。
【0040】
なお、本実施形態において、位置検出制御部816は、時間D1=時間D2との式を満たすときは第2透光タイミングTa2である出力変化点T又は第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1である出力変化点Tのいずれか一方における移動体である印刷ヘッド41等の位置を、移動体である印刷ヘッド41等の原点Opとして設定する。
すなわち上記の場合には、第2透光タイミングTa2である出力変化点T又は第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1である出力変化点Tのいずれを採用しても原点センサ71の検出タイミング(出力変化点)にずれが生じた場合の影響は変わらないため、いずれか一方を選択的に採用する。
【0041】
また、本実施形態における移動体である印刷ヘッド41等は、所定範囲を往復移動しながら指示制御に基づいて動作するものである。すなわち、印刷ヘッド41等は、ネイルプリント装置1に設けられたガイド軸455(
図3参照)に沿って移動可能な範囲内で、ネイルプリント装置1の左右方向(
図1等のX方向)に、往復移動しながらインク吐出動作を行う。
このように移動体(本実施形態では、印刷ヘッド41等)が往復移動しながら動作するものである場合、位置検出制御部816は、往路において移動体(印刷ヘッド41等)の原点Opとして設定した出力変化点Tに対応する出力変化点Tを、復路における移動体(印刷ヘッド41等)の原点Opとしても採用する。
【0042】
例えば、往路において、第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1における移動体(印刷ヘッド41等)の位置を原点Opとして設定された場合には、
図7(a)に示す場合のように、往路で原点Opと設定された位置の出力変化点Tに対応する復路の出力変化点T(すなわち、往路においてA相出力センサ72aが検出したリニアスケール73における第1区間S1・第2区間S2の境目となるエッジと同一のエッジを検出したタイミング)である第1透光タイミングTA1における移動体(印刷ヘッド41等)の位置を、復路における原点Opとして採用する。
また、往路において、第2透光タイミングTa2における移動体(印刷ヘッド41等)の位置を原点Opとして設定された場合には、
図7(b)に示す場合のように、往路で原点Opと設定された位置の出力変化点Tに対応する復路の出力変化点T(すなわち、往路においてA相出力センサ72aが検出したリニアスケール73における第1区間S1・第2区間S2の境目となるエッジと同一のエッジを検出したタイミング)である第2遮光タイミングTB2における移動体(印刷ヘッド41等)の位置を、復路における原点Opとして採用する。
なお、本実施形態では、移動方向が右のときを往路、移動方向が左の場合を復路と呼ぶものとし、復路(移動方向が左)の場合の第1区間S1から第2区間S2への切り替わりの出力変化点Tを透光タイミングTAとし、第2区間S2から第1区間S1への切り替わりの出力変化点Tを遮光タイミングTBとする。以下、透光タイミングと遮光タイミングについて、往路と復路の両方を含む場合には、透光タイミングa(A)、遮光タイミングb(B)と記載するものとする。
【0043】
また、位置検出制御部816は、スケールセンサ72の出力を見ることで、移動体である印刷ヘッド41等が左右どちらの方向に移動しているか、その移動方向を検出する。
すなわち、前述のように、本実施形態のリニアエンコーダ75は、ロー(L)及びハイ(H)の出力を交互に繰り返すスケールセンサ72を矩形波出力位相差が1/4周期となるように2つ配置している。
このため、例えば、移動体である印刷ヘッド41等が右方向に移動している場合、スケールセンサ72のうち、まずA相の波形を出力するA相出力センサ72aが第1区間S1から第2区間S2へと移動し、その区間の切り替わりをA相出力センサ72aが検出すると出力が変化する。すなわち、当該出力変化点Tである透光タイミングTaにおいてA相出力センサ72aは、ハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力する。
この時点では、B相の波形を出力するB相出力センサ72bの出力は未だロー(L)の出力となっており、その後、1/4周期遅れてハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力する(
図5参照)。
【0044】
これに対して、移動体である印刷ヘッド41等が左方向に移動している場合には、スケールセンサ72のうち、B相出力センサ72bの方が先に出力変化する。このため、例えば、B相出力センサ72bが第1区間S1から第2区間S2へと移動し、その区間の切り替わりをB相出力センサ72bが検出すると出力が変化して、当該出力変化点Tである透光タイミングTaにおいてB相出力センサ72bは、ハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力する。その後1/4周期遅れてA相出力センサ72aが第1区間S1から第2区間S2に移動してハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力する。
この場合には、A相出力センサ72aが第1区間から第2区間に移動してハイ(H)の出力となったときには、B相出力センサ72bはすでにハイ(H)の出力となっている。
このため、位置検出制御部816は、A相出力センサ72aがハイ(H)の出力となったときのB相出力センサ72bの出力がロー(L)又はハイ(H)のどちらとなっているかを見ることで、印刷ヘッド41等の移動方向を検出することができる。
【0045】
なお、ここではA相出力センサ72aが第1区間S1から第2区間S2へと移動し、その区間の切り替わりを検出してハイ(H)に出力変化した際のB相出力センサ72bの出力を見る場合を例示したが、A相出力センサ72aが第2区間S2から第1区間S1へと移動し、その区間の切り替わりをA相出力センサ72aが検出して、当該出力変化点Tである遮光タイミングTbにおいてA相出力センサ72aが、ロー(L)の波形の信号(パルス)を出力したときのB相出力センサ72bの出力を見ても同様の関係から移動体である印刷ヘッド41等の移動方向を判断することができる。
【0046】
さらに、本実施形態のように移動体である印刷ヘッド41等が所定範囲を往復移動しながら指示制御に基づいて動作するものである場合、往路における移動体の移動を含む動作タイミング(本実施形態では、インク吐出タイミング)と復路における動作タイミングとがずれると、インクの着弾位置もずれてしまい、印刷結果が美しい仕上がりとならない。
図9から
図11では、往路・復路とも動作指示タイミングに動作指示信号が出力された際に、印刷ヘッド41等が4回ずつ動作(インク吐出)する場合を例示しており、吐出されたインクの着弾位置を模式的に○で示している。また、動作指示タイミングとして設定された出力変化点T(透光タイミングTa(A)又は遮光タイミングTb(B))を太線矢印で示している。
図9に示すように、リニアスケール73における1周期を構成する第1区間S1と第2区間S2との比率が1対1で揃っている場合には、例えば移動体の往路・復路とも第1区間S1から第2区間S2への切り替わりの出力変化点T(透光タイミングTa(A))のみを動作指示タイミングとして設定しても、往路において吐出されたインクと復路において吐出されたインクとがずれなく重なる。このため、例えば
図13に示すようなぶれやずれのない、鮮鋭で美しい仕上がりの画像を印刷することができる。また第2区間S2から第1区間S1への切り替わりの出力変化点T(遮光タイミングTb(B))のみを動作指示タイミングとして設定した場合にも同様に、往路において吐出されたインクと復路において吐出されたインクとがずれなく重なる。
【0047】
しかし、リニアスケール73は1周期の区切りの中にエッチング等の手法により遮光部である第1区間S1と透光部である第2区間S2とを形成するため、
図9から
図11に示すように、各1周期の幅はほぼ等しく揃っているが、1周期を構成する第1区間S1と第2区間S2とは、マスクする範囲が広がってしまう等のずれにより、ばらつきを生じる可能性がある。その結果、第1区間S1と第2区間S2との比率は必ずしも1対1となっているとは限らない。
例えば、
図10及び
図11では、第1区間S1と第2区間S2とが5対3となっている場合を例示している。なお、リニアスケール73の第1区間S1と第2区間S2とが全て同じ比率となっているとは限らず、各1周期を構成する第1区間S1と第2区間S2との比率がばらばらである場合もありうる。
図10及び
図11に示すように、第1区間S1と第2区間S2との比率が1対1でない場合、比率が1対1である
図9と同様に、移動体の往路・復路とも第1区間S1から第2区間S2への切り替わりの出力変化点T(透光タイミングTa(A))を動作指示タイミングとして設定すると、
図10に示すように、往路と復路とで動作タイミングがずれ、往路において吐出されたインクと復路において吐出されたインクとの着弾位置が重なり合わず、例えば
図12に示すように、全体にずれてぶれたような鮮鋭性に欠ける画像が印刷されてしまう。また第2区間S2から第1区間S1への切り替わりの出力変化点T(遮光タイミングTb(B))のみを動作指示タイミングとして設定した場合にも同様に、往路において吐出されたインクと復路において吐出されたインクとの着弾位置が重なり合わない。
【0048】
この点、本実施形態では、位置検出制御部816は、透光タイミング又は遮光タイミングのうちのいずれかを、移動体(印刷ヘッド41)の往路における動作指示タイミングとして設定するとともに、動作指示タイミングとして設定した透光タイミングTa又は遮光タイミングTbにおける移動体(印刷ヘッド41)の位置を動作指示位置として、当該指示位置を移動体(印刷ヘッド41)の復路における動作指示位置としても設定する。
すなわち、
図11に示すように、移動体(印刷ヘッド41)の往路における動作指示タイミングとして透光タイミングTaを設定した場合、復路においては、往路における透光タイミングTaの出力変化点Tに対応する復路の出力変化点T(すなわち、往路においてスケールセンサ72が検出したリニアスケール73における第1区間S1・第2区間S2の境目となるエッジと同一のエッジを検出したタイミング)である遮光タイミングTBを、復路における動作指示タイミングとして採用する。
このように、往路と復路とで、透光タイミングTa(A)か遮光タイミングTb(B)か(すなわち、
図11等における矢印が上向きか下向きか)にかかわらず、スケールセンサ72がリニアスケール73における同じエッジを検出したタイミングを動作指示タイミングとして採用することで、往路と復路との動作指示タイミングのずれがなくなる。これにより、リニアスケール73の第1区間S1と第2区間S2との比率が一定である
図9に示す場合と同様に、動作指示タイミングにおける移動体(印刷ヘッド41)の位置にずれが生じないため、
図13に示すようなぶれやずれのない、鮮鋭で美しい仕上がりの画像を印刷することができる。
なお、位置検出制御部816によって設定された印刷ヘッド41の原点Opや、印刷ヘッド41のインク吐出のきっかけ(トリガー)となる動作指示位置等の情報は、記憶部82の印刷位置情報記憶領域823に記憶される。
【0049】
次に、本実施形態における位置検出装置70による位置検出方法及び位置検出装置70を備えるネイルプリント装置1の作用について説明する。
本実施形態では、このネイルプリント装置1は、キャリブレーションにより原点Opが設定される。
【0050】
具体的には、移動体である印刷ヘッド41等の移動方向が右で、A相出力センサ72aがハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力している間に検出タイミングがある場合に、
図14に示すように、位置検出制御部816が、原点センサ71の検出タイミングとこれに最も近い第1透光タイミングTa1との
間の時間D1、原点センサ71の検出タイミングとこれに最も近い第1遮光タイミングTb1との
間の時間D2とを取得する(ステップS1)。
そして、位置検出制御部816は、時間D1>時間D2との関係を満たすか否かを判断し(ステップS2)、満たす場合(ステップS2;YES)には、検出タイミング後の第1区間S1から第2区間S2への切り替わりを第2透光タイミングTa2とし、第2透光タイミングTa2における移動体である印刷ヘッド41等の位置を原点Opとして設定する(ステップS3、
図7(b)参照)。
他方、時間D1>時間D2との関係を満たさない場合(ステップS2;NO)には、位置検出制御部816は、時間D1<時間D2との関係を満たすか否かを判断し(ステップS4)、満たす場合(ステップS4;YES)には、検出タイミング後の第2区間S2から第1区間S1への切り替わりを第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1とし、第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1における移動体である印刷ヘッド41等の位置を原点Opとして設定する(ステップS5、
図7(a)参照)。
また、時間D1<時間D2との関係も満たさない場合(ステップS4;NO)、すなわち時間D1=時間D2を満たす場合には、位置検出制御部816は、第2透光タイミングTa2である出力変化点T又は第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1である出力変化点Tのいずれか一方における移動体である印刷ヘッド41等の位置を原点Opとして設定する(ステップS6)。
なお、原点Opの設定処理は、
図14に例示した処理順序による場合に限定されない。
【0051】
このネイルプリント装置1により印刷を行う場合、ユーザはまず、電源スイッチを入れて制御装置80を起動させる。
これにより、ネイルプリント装置1各部のイニシャライズ処理が行われる。
イニシャライズ処理により位置検出制御部816は、位置検出装置70の検出結果に応じて印刷ヘッド41がインクを吐出する際の位置の基準となる一時的な原点を設定し、印刷ヘッド41がインクを吐出するタイミングを指示する動作指示信号を動作指示タイミングに出力する。
この前提として、位置検出制御部816は、スケールセンサ72がリニアスケール73におけるどのエッジを検出したときを動作指示タイミングとするかを設定する。そして、印刷ヘッド41が往復しながら動作する場合には、往路における動作指示位置を復路における動作指示位置とする。これにより、
図11に示すように、往路・復路でスケールセンサ72がリニアスケール73の同じ位置のエッジを検出したタイミングが動作指示タイミングとして設定される。
【0052】
また、表示制御部815は、表示部23にデザイン選択画面を表示させ、ユーザは操作部22等を操作して、デザイン選択画面に表示された複数のネイルデザインの中から所望のネイルデザインを選択することにより、操作部22から選択指示信号が出力されて、一つのネイルデザインが選定される。
ユーザが指をネイルプリント装置1内に挿入し、印刷対象となる爪が所定位置にセットされると、撮影制御部811は撮影部50を制御して爪を撮影させ、爪画像を取得する。
爪画像が取得されると、爪情報検出部812は、当該爪画像から爪形状(爪Tの輪郭、爪の領域)等の爪情報を検出する。
爪領域等の爪情報が取得されると、印刷データ生成部813においてネイルデザインの画像データを爪に合せ込み適宜補正を行って印刷用データが生成される。生成された印刷用データは印刷制御部814に送られる。
【0053】
印刷用データが送られると、印刷制御部814は、印刷用データを印刷部40に出力し、印刷部40により当該印刷用データに基づく印刷処理が行われる。
このとき、印刷制御部814は、位置検出制御部816によって設定され印刷位置情報記憶領域823に記憶されている印刷ヘッド41の動作開始タイミングSt(原点Op)等を参照して、印刷開始位置の座標を設定する。
また、位置検出制御部816から動作指示タイミングごとに動作指示信号が出力されると、印刷制御部814は、これを受けて印刷ヘッド41から所定のインクを吐出させ、爪に対する印刷を行わせる。
印刷ヘッド41の位置、移動方向等も位置検出制御部816から送られる検出情報に基づいて印刷制御部814が把握しており、印刷制御部814はこれらの情報も参照して印刷部による印刷動作を制御する。
【0054】
このように、本実施形態のネイルプリント装置1は、位置検出装置70による検出結果を参照しつつ印刷部40を制御して印刷を行うことにより、印刷位置のずれ等のない美しい仕上がりのネイルプリントを爪に施すことができる。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、位置検出装置70は移動体である印刷ヘッド41等の位置を検出するものであり、印刷ヘッド41等が所定位置に達したときにこれを検出して検出信号を出力する原点センサ71と、リニアスケール73及びスケールセンサ72を有し、印刷ヘッド41等の移動量を検出するリニアエンコーダ75と、原点センサ71及びスケールセンサ72を制御する位置検出制御部816とを備えている。これにより、比較的簡易な構成で印刷ヘッド41等の移動体の位置等を把握することができる。
そして、本実施形態のリニアスケール73は、スケールセンサ72の出力がロー
に対応する第1区間S1とスケールセンサ72の出力がハイ
に対応する第2区間S2とが交互に配置されてなる。この場合に第1区間S1から第2区間S2への切り替わりをスケールセンサ72が検出する出力変化点Tを透光タイミングTa(A)、第2区間S2から第1区間S1への切り替わりをスケールセンサ72が検出する出力変化点Tを遮光タイミングTb(B)、原点センサ71が検出する出力変化点を検出タイミング、としたとき、移動体である印刷ヘッド41等の移動方向が右で、A相出力センサ72aがハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力している間に検出タイミングがある場合に、位置検出制御部816は、検出タイミングとこれに最も近い第1透光タイミングTa1
との間の時間D1と検出タイミングとこれに最も近い第1遮光タイミングTb1
との間の時間D2とを比較し、時間D1>時間D2との式を満たすときは検出タイミング後の第1区間S1から第2区間S2への切り替わりを第2透光タイミングTa2とし、第2透光タイミングTa2における移動体である印刷ヘッド41等の位置を印刷ヘッド41等の原点Opとして設定する。また、時間D1<時間D2との式を満たすときは検出タイミング後の第2区間S2から第1区間S1への切り替わりを第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1とし、第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1における移動体である印刷ヘッド41等の位置を印刷ヘッド41等の原点Opとして設定する。
これにより、印刷ヘッド41等移動体における、原点Opと一時的な原点とのずれがリニアスケール73における1周期分等、印刷結果を目視したときに目立つほど大きくずれることを防止して、印刷後の画像が
図8(b)のような塗残し領域Ar2の目立つ仕上がりとなるのを防ぐことができる。
【0056】
また、本実施形態では、時間D1=時間D2との式を満たすときには、位置検出制御部816は、第2透光タイミングTa2又は第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1のいずれか一方における移動体である印刷ヘッド41等の位置を、移動体である印刷ヘッド41等の原点Opとして設定する。
時間D1=時間D2である場合には、第2透光タイミングTa2、第2遮光タイミング(第1遮光タイミング)Tb1のうちいずれの位置を原点Opとしても同程度に位置ずれを生じにくい。このため、このような場合にはいずれか一方を採用することで、処理を簡易にすることができる。
【0057】
また、本実施形態に示すように、移動体である印刷ヘッド41等が所定範囲を往復移動しながら指示制御に基づいて動作するものである場合に、位置検出制御部816は、往路において印刷ヘッド41等の原点Opとして設定した位置を、復路における印刷ヘッド41等の原点Opとしても設定する。
これにより、印刷ヘッド41等が適切な原点Opを基準として折り返して往復動作することができる。
【0058】
また、本実施形態に示すように、移動体である印刷ヘッド41等が所定範囲を往復移動しながら指示制御に基づいて動作するものである場合に、位置検出制御部816は、透光タイミング又は遮光タイミングのうちのいずれかを、印刷ヘッド41等の往路における動作指示タイミングとして設定するとともに、往路における動作指示タイミングとして設定した透光タイミング又は遮光タイミングにおける移動体である印刷ヘッド41等の位置を動作指示位置として、当該動作指示位置における印刷ヘッド41等の復路における出力変化点を動作指示タイミングとしても採用する。
このようにすることで、仮にリニアスケール73の遮光部(第1区間S1)と透光部(第2区間S2)の比率に、
図10及び
図11に示すような偏りやばらつきがある場合であっても、往路と復路とで同じ位置にインクを吐出させることができ(
図11参照)、
図13に示すような、ずれやぶれのない鮮鋭性に優れた画像を印刷することができる。
【0059】
また、上記のような位置検出装置70を印刷装置であるネイルプリント装置1に適用した場合には、移動体である印刷ヘッド41等は、位置検出装置70の検出結果に応じて移動を含む動作を指示制御される。
このため、爪のように印刷対象領域Ar1が小さな印刷対象に印刷を施す場合に、位置ずれのない精鋭性に優れた高精細の印刷を行うことができ、見栄えのいい美しい仕上がりのネイルプリントを実現することができる。
【0060】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0061】
例えば、リニアエンコーダ75は、移動体(例えば印刷ヘッド41等)の移動量を検出することのできるものであればよく、移動方向を知ることは必須ではない。
例えば、移動体が一方向にしか移動しないものである場合等、移動方向を知る必要がない場合には、スケールセンサ72を1つの受光部のみで構成し、1相の波形のみを出力するものとしてもよい。この場合にも出力される信号(パルス)の数をカウントすることで、移動体の移動量(移動距離)を把握することができる。
【0062】
また、本実施形態では、
図7(a)、
図7(b)、
図11等において、移動体である印刷ヘッド41等が右方向に移動し、A相出力センサ72aがハイ(H)の波形の信号(パルス)を出力している間に検出タイミングがある場合に、スケールセンサ72のうち、A相の波形を出力するA相出力センサ72aがリニアスケール73のエッジを検出するいずれかのタイミング(出力変化点T)に着目して、位置検出制御部816が印刷ヘッド41の原点Opや動作指示位置を設定する場合を例示したが、印刷ヘッド41の原点Opや動作指示位置を設定する際に着目するタイミング(出力変化点T)は、これに限定されない。
例えば、移動体である印刷ヘッド41等が左方向に移動する場合の、A相出力センサ72aがリニアスケール73のエッジを検出するいずれかのタイミング(出力変化点T)に着目して設定もよい。
また、移動体である印刷ヘッド41等が右方向又は左方向に移動する場合の、B相出力センサ72bがリニアスケール73のエッジを検出するいずれかのタイミング(出力変化点T)に着目して設定してもよい。
【0063】
また、本実施形態では、時間D1と時間D2とを比較することで、第2透光タイミングと第2遮光タイミングとのどちらか一方のタイミングにおける移動体である印刷ヘッド41等の位置を原点として設定するとしたが、1/4周期にかかる時間と時間D1、時間D2をそれぞれ比較することで時間D1と時間D2のどちらが長いのかを求めてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、第2透光タイミング又は第2遮光タイミングにおける移動体である印刷ヘッド41等の位置を原点としている場合を例示しているが、これに限定されない。例えば、第2透光タイミング又は第2遮光タイミングにおける移動体である印刷ヘッド41等の位置を、原点の基準となる基準位置とし、基準位置から数周期分又は数秒分だけ移動体である印刷ヘッド41等が移動した位置を原点としてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、ネイルデザイン記憶領域821、爪情報記憶領域822、印刷位置情報記憶領域823等が制御装置80の記憶部82内に設けられている場合を例としたが、これら各記憶領域は制御装置80の記憶部82(ROM、RAM)に設けられている場合に限定されず、別途記憶部が設けられていてもよい。
また、ネイルプリント装置1を外部の端末装置と連携させて、外部の端末装置に記憶されている情報を用いてもよい。
【0066】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
移動体の位置を検出する位置検出装置であって、
前記移動体が所定位置に達したときにこれを検出して検出信号を出力する位置センサと、
リニアスケール及びスケールセンサを有し、前記移動体の一の方向の移動量を検出するリニアエンコーダと、
前記位置センサ及び前記スケールセンサを制御する位置検出制御部と、
を備え、
前記リニアスケールは、前記スケールセンサの出力がローとなる第1区間と前記スケールセンサの出力がハイとなる第2区間とが交互に配置されてなり、
前記第1区間から前記第2区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を透光タイミング、前記第2区間から前記第1区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を遮光タイミング、前記位置センサが検出する出力変化点を検出タイミング、としたとき、
前記位置検出制御部は、前記検出タイミングに最も近い前記透光タイミングを第1透光タイミング、前記検出タイミングに最も近い前記遮光タイミングを第1遮光タイミングとして、
(1)前記検出タイミングから前記第1透光タイミングまでの時間D1が前記検出タイミングから前記第1遮光タイミングまでの時間D2より長い場合には、前記検出タイミング後の前記透光タイミングである第2透光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における原点位置又は前記原点位置の基準となる基準位置として設定し、
(2)前記時間D1が前記時間D2より短い場合には、前記検出タイミング後の前記遮光タイミングである第2遮光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置として設定することを特徴とする位置検出装置。
<請求項2>
前記位置検出制御部は、前記時間D1と前記時間D2とが等しい場合には前記第2透光タイミング又は前記第2遮光タイミングのいずれか一方における前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置として設定することを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
<請求項3>
前記位置検出制御部は、前記時間D1と前記時間D2とを比較し、前記時間D1が前記時間D2より長い場合には前記第2透光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置と設定し、前記時間D1が前記時間D2より短い場合には前記第2遮光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における前記原点位置又は前記基準位置として設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置検出装置。
<請求項4>
前記位置検出制御部は、前記検出タイミング前後で最も前記検出タイミングに近い前記透光タイミングと、前記遮光タイミングと、をそれぞれ前記第1透光タイミングと、前記遮光タイミングと、とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の位置検出装置。
<請求項5>
前記位置検出制御部は、前記時間D1が前記時間D2より長い場合には前記検出タイミング後の最も近い前記透光タイミングを前記第2透光タイミングとし、前記時間D1が前記時間D2より短い場合には前記検出タイミング後の最も近い前記遮光タイミングを前記第2遮光タイミングとすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
<請求項6>
前記移動体は所定範囲を往復移動しながら指示制御に基づいて動作するものであり、
前記位置検出制御部は、前記移動体の往路における前記透光タイミング又は前記遮光タイミングいずれかをユーザが所望する前記往復移動を含む動作を前記移動体に行わせる動作指示タイミングとした場合に、前記動作指示タイミングにおける前記移動体の位置を前記往路及び復路における動作指示位置として設定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の位置検出装置。
<請求項7>
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の位置検出装置を備える印刷装置であって、
前記移動体は、往復移動しながらインク吐出動作を行う印刷ヘッドであり、
前記位置検出装置の検出結果に応じて前記移動体の動作を指示制御する印刷制御部を備えることを特徴とする印刷装置。
<請求項8>
移動体の位置を検出する位置検出装置の位置検出方法であって、
前記位置検出装置は、前記移動体が所定位置に達したときにこれを検出して検出信号を出力する位置センサと、リニアスケール及びスケールセンサを有し、前記移動体の一の方向の移動量を検出するリニアエンコーダと、を備え、
前記リニアスケールは、前記スケールセンサの出力がローとなる第1区間と前記スケールセンサの出力がハイとなる第2区間とが交互に配置されてなり、
前記第1区間から前記第2区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を透光タイミング、前記第2区間から前記第1区間への切り替わりを前記スケールセンサが検出する出力変化点を遮光タイミング、前記位置センサが検出する出力変化点を検出タイミング、としたとき、
前記検出タイミングに最も近い前記透光タイミングを第1透光タイミング、前記検出タイミングに最も近い前記遮光タイミングを第1遮光タイミングとして、
(1)前記検出タイミングから前記第1透光タイミングまでの時間D1が前記検出タイミングと前記第1遮光タイミングまでの時間D2より長い場合には、前記検出タイミング後の前記透光タイミングである第2透光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における原点位置又は前記原点位置の基準となる基準位置として設定し、
(2)前記時間D1が前記時間D2より短い場合には、前記検出タイミング後の前記遮光タイミングである第2遮光タイミングにおける前記移動体の位置を前記一の方向における原点位置又は前記原点位置の基準となる基準位置として設定することを特徴とする位置検出方法。
【符号の説明】
【0067】
1 ネイルプリント装置
40 印刷部
50 撮影部
41 印刷ヘッド
70 位置検出装置
71 原点センサ
72 スケールセンサ
73 リニアスケール
75 リニアエンコーダ
814 印刷制御部
816 位置検出制御部