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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】歯磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20220712BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220712BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/25
A61K8/34
A61K8/86
A61Q11/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019521285
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2018020849
(87)【国際公開番号】W WO2018221623
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017107867
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕之
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】栗原 奈保
(72)【発明者】
【氏名】川口 徹也
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-125440(JP,A)
【文献】特開2004-203872(JP,A)
【文献】特開2004-067530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/42
A61K 8/25
A61K 8/34
A61K 8/86
A61Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド 0.00001~0.01質量%、
(B)糖アルコール 10~70質量%
(C)プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上
1~10質量%
及び
(E)シリカ系研磨剤 8~70質量%
を含有し、(A)/(C)が質量比として0.000002~0.001であり、かつ甘味度が80~130である歯磨剤組成物。
【請求項2】
(B)糖アルコールが、ソルビトール、キシリトール及びエリスリトールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
(B)糖アルコールが、ソルビトールである請求項2記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
(B)糖アルコールが、キシリトール及びエリスリトールから選ばれる請求項2記載の歯磨剤組成物。
【請求項5】
(B)糖アルコールが、ソルビトールとキシリトール又はエリスリトールとの2種、又はソルビトールとキシリトールとエリスリトールとの3種である請求項2記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
(B)糖アルコールの総量が15~70質量%であり、かつソルビトールの含有量が10~35質量%であり、キシリトール及びエリスリトールから選ばれる1種又は2種の含有量が5~60質量%である請求項5記載の歯磨剤組成物。
【請求項7】
更に、(B)糖アルコール以外の(D)甘味剤を含有する請求項1~6のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた口臭抑制感を与え、かつ歯磨き時の磨き心地が良く、味も良い歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口臭予防は重要なエチケットの1つであることから、口臭予防実感に優れた口腔用製剤への期待が高い。特に、若者層は、この傾向が顕著である。
従来、殺菌剤による口臭原因菌の殺菌、酵素やローズマリーエキス等の消臭剤の使用によって口臭の発生を抑制する手段が知られており、これらでは一定の効果を得ることができる。
【0003】
しかし、近年、臭いに敏感なユーザーの中には、実際は他人に対して問題とならないのに口臭に悩むケースが増加している。これは、自身の口腔内にこもる僅かな臭いの感知や口腔内の不快感に起因する、口臭不安感であると考えられる。
従来の口臭予防を目的とした口腔用組成物は、口腔内に使用している間や使用直後にある程度の口臭抑制感を与えるが、その口臭抑制感は十分とは言い難い。
【0004】
また、口臭抑制感を得る手段として、メントールや冷感剤による清涼感によってマスキングすることも考えられるが、味などの使用感に影響することもあり、十分な口臭抑制感とは言えない。
口腔用組成物では、一般的に清涼感を与える香料としてメントールが配合され、更に、清涼感を強化する様々な検討が行われ、非メントール系の冷涼化剤であるp-メンタン-3-カルボキサミド類を用いることによって、清涼感やサッパリ感などを強化したり、その持続性を高めた技術などは、特許文献1~6に提案されている。
また、特許文献7~9は、エリスリトール又はキシリトールによる清涼感、冷涼感等を改善した発明を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-125440号公報
【文献】特開2015-182983号公報
【文献】特開2016-102076号公報
【文献】特表2014-507440号公報
【文献】特表2012-508741号公報
【文献】特表2011-520925号公報
【文献】特開2011-68599号公報
【文献】特開2007-70259号公報
【文献】特開2007-223942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた口臭抑制感を与え、かつ歯磨き時の磨き心地が良く、味も良い歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、冷感剤の中でも特定のN-置換-p-メンタンカルボキサミドを選択し、かつ特定の湿潤剤系(糖アルコールと特定の多価アルコールとの併用系)を採用し、組成物の甘味度が特定範囲であることによって、上記課題を解決できることを知見した。即ち、本発明では、(A)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミドと、(B)糖アルコールと、(C)プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上とを、それぞれ特定量で配合し、(A)/(C)の質量比が0.000002~0.001であり、かつ甘味度が80~125である歯磨剤組成物によって、優れた口臭抑制感を与え、かつ歯磨き時の磨き心地が良く、味も良い使用感を保持できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
更に詳述すると、冷涼化剤のp-メンタン-3-カルボキサミド類、特にN-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミドは、増量するにつれて冷感は上がるものの刺激が強くなり味を悪化させることもあるため、口臭抑制感を十分に与えるには使用感の改善が必要であった。一方、湿潤剤の糖アルコールや多価アルコールは、増量に伴ってベタツキ感や味の悪化などが生じて歯磨き時の磨き心地に影響することがあった。しかし、本発明では、p-メンタン-3-カルボキサミド類として(A)成分を使用し、これに(B)及び(C)成分の併用系を組み合わせると、各成分の配合量と(A)/(C)の質量比がそれぞれ特定範囲内で、しかも組成物の甘味度が特定範囲内において、磨き心地の良さを保持し、各成分による嫌味を低減して味の良さも保持しつつ、口臭抑制感の付与効果が向上し、格別な作用効果を与えることができた。本発明の歯磨剤組成物によれば、口臭抑制感が優れることで、口臭測定で検出される口臭だけでなく、いわゆる口臭不安感を抑えることも可能である。
後述の比較例に示すように、(A)、(B)又は(C)成分を含まない場合、あるいは(A)、(B)及び(C)成分を含んでいても、いずれかの含有量が不適切であるか、もしくは(A)/(C)の質量比が不適切である場合、又は甘味度が不適切な場合は、磨き心地や味を良好に保ちつつ口臭抑制感を満足に付与できず、本発明の作用効果が劣った。
【0009】
なお、特許文献1~6は、清涼感やサッパリ感の改善、特許文献7~9は、エリスリトール又はキシリトールによる清涼感、冷涼感の改善であり、これらでは口臭抑制感に関して言及がなく不明である。特許文献1~9から、本発明の(A)成分に(B)及び(C)成分を組み合わせることによって、いずれかの成分を欠く場合には達成されない、口臭抑制感及び使用感(磨き心地や味)の改善をなし得ることは想起できない。
【0010】
従って、本発明は、下記の歯磨剤組成物を提供する。
〔1〕
(A)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチ
ルシクロヘキサンカルボキサミド 0.00001~0.01質量%、
(B)糖アルコール 10~70質量%、
及び
(C)プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種
以上 1~10質量%
を含有し、(A)/(C)が質量比として0.000002~0.001であり、かつ甘味度が80~130である歯磨剤組成物。
〔2〕
(B)糖アルコールが、ソルビトール、キシリトール及びエリスリトールから選ばれる1種又は2種以上である〔1〕に記載の歯磨剤組成物。
〔3〕
(B)糖アルコールが、ソルビトールである〔2〕に記載の歯磨剤組成物。
〔4〕
(B)糖アルコールが、キシリトール及びエリスリトールから選ばれる〔2〕に記載の歯磨剤組成物。
〔5〕
(B)糖アルコールが、ソルビトールとキシリトール又はエリスリトールとの2種、又はソルビトールとキシリトールとエリスリトールとの3種である〔2〕に記載の歯磨剤組成物。
〔6〕
(B)糖アルコールの総量が15~70質量%であり、かつソルビトールの含有量が10~35質量%であり、キシリトール及びエリスリトールから選ばれる1種又は2種の含有量が5~60質量%である〔5〕に記載の歯磨剤組成物。
〔7〕
更に、(B)糖アルコール以外の(D)甘味剤を含有する〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
〔8〕
更に、(E)研磨剤を8~70質量%含有する〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた口臭抑制感を与え、かつ歯磨き時の磨き心地が良く、味も良い使用感を有し、口臭抑制用として好適な歯磨剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の歯磨剤組成物は、(A)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド、(B)糖アルコール、及び(C)プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上を含有し、(A)/(C)の質量比が特定範囲であり、甘味度が特定範囲であることを特徴とする。
【0013】
(A)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミドは、口臭抑制感の付与剤である。
(A)成分の配合量は、組成物全体の0.00001~0.01%(質量%、以下同様)であり、好ましくは0.0001~0.005%である。0.00001%に満たないと、十分な口臭抑制感が得られない。0.01%を超えると、嫌味が強く味が悪くなる。
【0014】
本発明では、湿潤剤として(B)及び(C)成分を併用する。(B)又は(C)成分を欠くと、磨き心地が劣ったり、嫌味が強くなり、良好な使用感のもとで高い口臭抑制感を付与することができない。
【0015】
(B)糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上使用し得る。
【0016】
(B)糖アルコールの配合量は、組成物全体の10~70%である。10%に満たないと、磨き心地が劣る。70%を超えると、口臭抑制感が低下し、また、ベタツキ感が強くなって磨き心地が悪くなる。
上記(B)成分の配合量の範囲内において、ソルビトールを配合する場合、その配合量は、組成物全体の10~70%が好ましく、15~35%がより好ましく、とりわけ15~30%であることが好ましい。
上記(B)成分の配合量の範囲内において、キシリトール又はエリスリトールを配合する場合、あるいはキシリトール及び/又はエリスリトールとソルビトールを併用して配合する場合、これらの配合量は、組成物全体の10~70%が好ましく、15~70%がより好ましく、35~70%が更に好ましく、とりわけ40~70%であることが好ましい。
上記(B)成分の配合量の範囲内において、ソルビトールとキシリトール又はエリスリトールとの2種、又はソルビトールとキシリトールとエリスリトールとの3種を併用して配合する場合、ソルビトールの配合量は、組成物全体の10~35%が好ましく、15~30%がより好ましい。キシリトール及び/又はエリスリトールの配合量は、組成物全体の5~60%が好ましく、10~55%がより好ましく、30~55%が特に好ましい。
(B)成分としては、キシリトール、エリスリトールを好ましくは組成物全体の35%以上、特に40%以上含有すると、口臭抑制感が特に顕著である。
【0017】
(C)成分は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールであり、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールでも、あるいは効果発現の点で、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールでもよい。
ポリエチレングリコールの平均分子量は、190~3,800が好ましく、より好ましくは380~3,800である。ここで、平均分子量は、医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量である(以下、同様)。
具体的には、ポリエチレングリコール200(平均分子量190~210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量290~310)、ポリエチレングリコール400(平均分子量390~410)、ポリエチレングリコール600(平均分子量590~610)、ポリエチレングリコール1540(平均分子量1,290~1,650)、ポリエチレングリコール2000(平均分子量1,850~2,150)、ポリエチレングリコール4000(平均分子量2,600~3,800)が挙げられる。
【0018】
(C)成分の配合量は、組成物全体の1~10%であり、好ましくは3~5%である。1%に満たないと、嫌味が軽減しない。10%を超えると、口臭抑制感が低下し、また、嫌味が強くなる。
【0019】
なお、本発明では、(B)及び(C)成分が湿潤剤として作用することから、(B)及び(C)成分以外の湿潤剤は配合しなくてもよいが、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて他の湿潤剤を配合してもよい。(B)及び(C)成分以外の湿潤剤を配合する場合、その配合量は組成物全体の20%以下、特に10%以下がよく、また、配合せず0%であってもよい。
【0020】
本発明において、(A)成分と(C)成分との配合割合を示す(A)/(C)は、質量比として0.000002~0.001であり、好ましくは0.00001~0.0008であり、より好ましくは0.0001~0.0005である。(A)/(C)比が0.000002に満たないと、口臭抑制感が劣り、また、嫌味が強くなる。0.001を超えると、辛味に近いような嫌味が生じ、味が悪くなる。
【0021】
本発明では、更に、(D)甘味剤として、(B)糖アルコール以外の物質を配合できる。(D)甘味剤としては、具体的にサッカリンナトリウム、グリセリン、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。(D)甘味剤の種類や配合量は、組成物の甘味度が適切な範囲内になればよく、特に制限されない。例えば、サッカリンナトリウムの好ましい配合量は、組成物全体の0.1~0.2%である。
【0022】
本発明の歯磨剤組成物は、甘味度が80~130であり、好ましくは80~125である。80に満たないと味が悪くなり、また、口臭抑制感が十分に得られない場合がある。130を超えると、口臭抑制感が劣る。なお、甘味度は、配合された甘味成分、例えば(B)糖アルコール、更には(D)甘味剤等の種類やその配合量を適切に調整することで、上記範囲に設定し得る。
甘味度は、下記の計算式によって算出した。
組成物の甘味度=Σ(配合された甘味成分の甘味度)×{配合量(%)/100}
ここで、甘味成分の甘味度は、化学総説、No.40(1999年)及び日本醸造協会誌、106巻12号(2011年)に記載の値である。
甘味成分の甘味度を下記に示す。
ショ糖の甘味度:100(基準)
ソルビトールの甘味度:60
キシリトールの甘味度:100
エリスリトールの甘味度:75
サッカリンナトリウムの甘味度:50,000
【0023】
本発明の歯磨剤組成物は、ペースト状、液体等の液状などの形態にして、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の様々な剤型にすることが可能であるが、好ましくは練歯磨であり、また、通常の方法で調製できる。更に、上記成分に加えて、通常、歯磨剤組成物に使用されている公知成分を、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて配合できる。配合できる任意成分としては、研磨剤、粘結剤、界面活性剤、(A)成分以外の香料、防腐剤、pH調整剤、薬効成分等が挙げられる。
【0024】
(E)研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和塩又は無水和物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系研磨剤;沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、チタン結合性シリカ等のシリカ系研磨剤;炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム系研磨剤;水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト、ハイドロキシアパタイトが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。これらの中では、特に沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、チタン結合性シリカ等のケイ酸塩を主成分とするシリカ系研磨剤や炭酸カルシウム系研磨剤、とりわけ沈降性シリカ等のシリカ系研磨剤が好ましい。
【0025】
研磨剤、特に沈降性シリカは、粒径が1~40μm、BET比表面積が1gあたり80~250平方メートルの研磨粒子であることが好ましい。前記粒径は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック粒度分布計、分散媒;水)による測定値である。
このようなシリカ系研磨剤としては、市販品を使用でき、例えば、HUBER社製のZeodent124、Zeodent113、Rhodia社製のTIXOSIL 73、TIXOSIL 63、Degussa社製のSident 3、Sident 20、多木化学(株)製のジルコノシリケート、アルミノシリケート等が挙げられる。
研磨剤の配合量は、組成物全体の8~70%、特に10~50%が好ましい。
【0026】
粘結剤としては、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カーボポール、ビーガム、アルギン酸プロピレングリコール等の有機粘結剤、増粘性シリカ、ケイ酸アルミニウム等の無機粘結剤が配合できる。これらは1種又は2種以上で使用できる。これら粘結剤の配合量は、有機粘結剤の場合、組成物全体の0.8~5%、特に1~3%が好ましく、無機粘結剤の場合、組成物全体の0.5~10%、特に1~8%が好ましい。
【0027】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩、ラウリルスルホ酢酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩等のN-アシルタウレート、アシルサルコシン塩、N-アシル-L-グルタミン酸塩等のアシルアミノ酸塩が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用できる。中でも、泡立ち、泡質の良さの点で、スルホン酸基を含有するアニオン性界面活性剤が好ましく、より好ましくはアルキル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩である。前記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、特にナトリウム塩が好ましい。
【0028】
アルキル硫酸塩は、アルキル基の炭素数が好ましくは12~14であり、具体的には、アルキル硫酸塩としてラウリル硫酸ナトリウム、ミリストイル硫酸ナトリウムが挙げられる。
α-オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数が14~16のα-オレフィンスルホン酸のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩を用いることができ、中でも炭素数14のα-オレフィンスルホン酸塩、特にナトリウム塩(一般名;テトラデセンスルホン酸ナトリウム)が好ましいアニオン性界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.6~2.5%であり、好ましくは1~2.5%である。
【0029】
香料としては、公知の香料、例えばメントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油、丁字油、ユーカリ油等が挙げられる。
なお、香料が(A)成分を含む場合は、上記の(A)成分の配合量の範囲内で使用し得る。
また、香料としてメントールの配合量は、好ましくは組成物全体の0.001~0.15%、特に0.005~0.10%であるが、配合せず0%であってもよい。
【0030】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸又はその塩等の有機酸又はその塩;塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の無機化合物が挙げられる。
【0031】
薬効成分としては、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ等の酵素;トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸塩等の抗炎症剤;塩化ナトリウム、ビタミン類、アラントイン類等の細胞賦活剤;イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌剤;銅クロロフィル、グルコン酸銅等の水溶性銅化合物;ゼオライト等の歯石予防剤;ビタミンE等の血行促進剤;アラニン、グリシン、プロリン等のアミノ酸類を配合できる。なお、薬効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0032】
更に、任意成分として、雲母チタン、酸化チタン、ベントナイト等の無機化合物;結晶性セルロース等のセルロース系の有機粉末;寒天、ゼラチン、デンプン、グルコマンナン等の天然高分子化合物;ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン末、ポリエチレン末等の合成高分子化合物又はそれらの共重合体;カルナバワックス、ロジン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、パラフィンワックス等のワックス類;セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ポリイソブチレン、ポリブタジエン、シリコーン、天然ゴムを、本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【実施例
【0033】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0034】
[実施例、比較例]
表1~6に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を常法によって調製してラミネートチューブ容器に充填した。これらをサンプルとして用い、下記方法で評価した。結果を表1~6に併記した。
【0035】
<評価方法>
被験者4名によって評価した。
歯ブラシ(クリニカアドバンテージハブラシ、4列コンパクトふつうタイプ、ライオン(株)製)にサンプル1gを載せ、3分間歯磨きを行った後、水で口をすすいだ。
歯磨き時の磨き心地と味(嫌味のなさ)、すすぎ後の口臭抑制感(口臭が防止された感じ)について、それぞれ下記に示す評点基準により判定した。4名の平均値を求め、下記の評価基準で評価した。
ここで、口臭抑制感とは、口臭が抑えられて口腔内に臭いを感じることもなく、口臭が抑制されたという感覚である。
また、磨き心地とは、歯磨き中にしっとりした感じで心地よく磨けているという感覚である。
【0036】
なお、表中の甘味度は、下記の計算式によって算出した。
Σ(配合されている甘味成分の甘味度)×配合量(%)/100
配合されている甘味成分は、(B)糖アルコール、甘味剤のサッカリンナトリウムである。使用原料の甘味度(化学総説、No.40(1999年)及び日本醸造協会誌、106巻12号(2011年)に記載)は、後述の通りである。
【0037】
<歯磨き時の磨き心地>
評点基準
5:非常によい
4:よい
3:ややよい
2:どちらとも言えない
1:よくない
評価基準
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0038】
<味(嫌味のなさ)>
評点基準
5:非常によい
4:よい
3:ややよい
2:どちらとも言えない
1:よくない
評価基準
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0039】
<すすぎ後の口臭抑制感>
評点基準
5:非常に感じた
4:感じた
3:やや感じた
2:どちらとも言えない
1:感じなかった
評価基準
☆:4.5点以上
◎:4点以上4.5点未満
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0040】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド:エバクール180(ジボダンジャパン(株)製)
WS-3(比較品)(商品名、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、ジボタンジャパン(株)製)
(B)ソルビトール:D-ソルビトール(関東化学(株)製、甘味度60)
(B)キシリトール:XYLYSORB300(ロケット社製、甘味度100)
(B)エリスリトール:エリスリトール(三菱商事フードテック(株)製、甘味度75)
(C)プロピレングリコール:化粧用プロピレングリコール(ADEKA社製)
(C)ポリエチレングリコール400:PEG#400(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)
(C)ポリエチレングリコール600:PEG#600(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)
(C)ポリエチレングリコール4000:PEG#4000(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)
(D)サッカリンナトリウム:愛三化学工業(株)製、甘味度50,000
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】