IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

<>
  • 特許-蓄電素子 図1
  • 特許-蓄電素子 図2
  • 特許-蓄電素子 図3
  • 特許-蓄電素子 図4
  • 特許-蓄電素子 図5
  • 特許-蓄電素子 図6
  • 特許-蓄電素子 図7
  • 特許-蓄電素子 図8
  • 特許-蓄電素子 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/645 20210101AFI20220712BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20220712BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20220712BHJP
【FI】
H01M50/645
H01G11/78
H01M50/15
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019529803
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2018026493
(87)【国際公開番号】W WO2019013326
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2017138403
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】團野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中西 順
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-103286(JP,A)
【文献】特開2008-117605(JP,A)
【文献】特開2005-190776(JP,A)
【文献】国際公開第2012/160907(WO,A1)
【文献】特開2009-152183(JP,A)
【文献】特開2004-103579(JP,A)
【文献】特開2016-154092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/60-50/77
H01M 50/10-50/198
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を備える蓄電素子であって、
前記容器は、
電解液の注液口が形成された壁部と、
前記注液口を塞ぐ注液栓とを有し、
前記注液栓は、前記注液口に挿入される軸部と、前記軸部の外周から突出して前記壁部に接合される突出部とを有し、
前記壁部は、前記注液口の周囲に段差部を有し、前記壁部には、前記段差部、前記軸部及び前記突出部に囲まれた空間が形成され、
前記軸部の軸方向における前記注液栓の前記軸部側の先端である前記軸部の先端は、前記注液口内に配置されている
蓄電素子。
【請求項2】
前記軸部の軸方向において、前記軸部の先端と前記壁部の内面との距離は、前記軸部と前記注液口の内周面との当接部分の長さよりも大きい
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記軸部の軸方向において、前記軸部と前記注液口の内周面との当接部分の長さは、前記軸部と前記空間との境界部分の長さよりも小さい
請求項1または2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記壁部は、前記空間に隣接して配置され、前記注液口に向かうほど前記容器の内方に向けて傾斜した傾斜面を有する
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記空間と隣接する前記軸部の部分は、前記注液口の内周面と当接する前記軸部の部分と同じ径または小さい径を有する
請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
容器を備える蓄電素子であって、
前記容器は、
電解液の注液口が形成された壁部と、
前記注液口を塞ぐ注液栓とを有し、
前記注液栓は、第1方向に延びて前記注液口に挿入される円柱状の軸部と、断面視において前記軸部の外周から前記第1方向と直交する第2方向に突出して前記壁部の外面に接合される突出部とを有し、
前記軸部と前記突出部とが金属部材で一体的に1ピースに形成され、
前記壁部には、前記注液口の周囲に、前記外面から凹んだ凹部が形成されており、前記軸部と前記突出部と前記凹部とで空間が形成され、
前記軸部は、前記突出部から前記注液口の入り口まで同一径の円柱部を有する
蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注液口が形成された壁部と、注液口を塞ぐ注液栓とを有する容器を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、注液口が形成された壁部と、注液口を塞ぐ注液栓とを有する容器を備えた蓄電素子が広く知られている。例えば、特許文献1には、注液孔(注液口)を有する封口板(壁部)と、注液孔を封止する封止栓(注液栓)とを有する容器を備えた密閉式電池(蓄電素子)が開示されている。この密閉式電池においては、封止栓は、注液孔に圧入されて、注液孔を閉塞する圧入部材を有しており、注液孔の封止性を長期に亘って維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-170648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一般的に、従来の蓄電素子では、注液栓の注液口に挿入された部分は、注液口から内方に突出して配置されている。例えば、上記特許文献1では、封止栓の圧入部材で注液孔を確実に閉塞するために、当該圧入部材は、先端が注液孔から内方に突出するまで注液孔に圧入されて配置されている。しかしながら、この場合、容器内の電解液が、当該圧入部材などの注液栓の注液口に挿入された部分を伝って、注液口から這い上がってくるという問題がある。注液栓を容器の壁部に溶接等接合する際に電解液が注液口から這い上がってくれば、電解液に起因する注液栓と容器の壁部との接合不良が発生する。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、注液栓と容器の壁部との接合不良を抑制することができる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、容器を備える蓄電素子であって、前記容器は、電解液の注液口が形成された壁部と、前記注液口を塞ぐ注液栓とを有し、前記注液栓は、前記注液口に挿入される軸部と、前記軸部の外周から突出して前記壁部に接合される突出部とを有し、前記壁部には、前記注液口の周囲に、前記軸部に隣接する空間が形成され、前記軸部の先端は、前記注液口内に配置されている。
【0007】
本発明の別の態様に係る蓄電素子は、容器を備える蓄電素子であって、前記容器は、電解液の注液口が形成された壁部と、前記注液口を塞ぐ注液栓とを有し、前記注液栓は、第1方向に延びて前記注液口に挿入される円柱状の軸部と、断面視において前記軸部の外周から前記第1方向と直交する第2方向に突出して前記壁部の外面に接合される突出部とを有し、前記軸部と前記突出部とが金属部材で一体的に1ピースに形成され、前記壁部には、前記注液口の周囲に、前記外面から凹んだ凹部が形成されており、前記軸部と前記突出部と前記凹部とで空間が形成され、前記軸部は、前記突出部から前記注液口の入り口まで同一径の円柱部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明における蓄電素子によれば、注液栓と容器の壁部との接合不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電素子が備える各構成要素を示す斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る蓋体の注液口まわりの構成、及び、注液栓の構成を示す斜視図である。
図4図4は、実施の形態に係る蓋体の注液口まわりの構成、及び、注液栓の構成を示す断面図である。
図5図5は、実施の形態の変形例1に係る蓋体の注液口まわりの構成、及び、注液栓の構成を示す断面図である。
図6図6は、実施の形態の変形例2に係る蓋体の注液口まわりの構成、及び、注液栓の構成を示す断面図である。
図7図7は、実施の形態の変形例3に係る蓋体の注液口まわりの構成、及び、注液栓の構成を示す断面図である。
図8図8は、実施の形態の変形例4に係る蓋体の注液口まわりの構成、及び、注液栓の構成を示す断面図である。
図9図9は、実施の形態の変形例5に係る蓋体の注液口まわりの構成、及び、注液栓の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、注液栓と容器の壁部との接合不良を抑制することができる蓄電素子を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、容器を備える蓄電素子であって、前記容器は、電解液の注液口が形成された壁部と、前記注液口を塞ぐ注液栓とを有し、前記注液栓は、前記注液口に挿入される軸部と、前記軸部の外周から突出して前記壁部に接合される突出部とを有し、前記壁部には、前記注液口の周囲に、前記軸部に隣接する空間が形成され、前記軸部の先端は、前記注液口内に配置されている。
【0012】
これによれば、蓄電素子において、容器の壁部には、注液口の周囲に注液栓の軸部に隣接する空間が形成され、注液栓の軸部の先端は、注液口内に配置されている。つまり、電解液が注液栓の軸部に付着すると、当該軸部と注液口内周面との間に浸入して這い上がってくるが、当該軸部と注液口内周面との接触面積が大きいほど、当該浸入して這い上がってくる電解液の量が多くなる。このため、注液口の周囲に注液栓の軸部に隣接する空間を形成し、かつ、注液栓の軸部の先端を注液口内に配置して、当該軸部と注液口内周面との接触面積を小さくし、当該軸部と注液口内周面との間に浸入して這い上がってくる電解液の量を少なくする。また、注液栓の軸部の先端を注液口内に配置すると、軸部の先端が蓋の役割を果たすこととなり、注液口内において注液栓の軸部の先端よりも下側に付着している電解液が当該軸部と注液口内周面との間に浸入するのを抑制することもできる。これにより、電解液が注液口から這い上がってくるのを抑制することができる。また、注液口の周囲に、注液栓の軸部に隣接する空間を形成することで、当該空間に電解液を溜めることもできるため、注液口から電解液が這い上がってくるのをさらに抑制することができる。これらにより、注液栓と容器の壁部との接合不良を抑制することができる。
【0013】
また、前記軸部の軸方向において、前記軸部の先端と前記壁部の内面との距離は、前記軸部と前記注液口の内周面との当接部分の長さよりも大きいことにしてもよい。
【0014】
これによれば、蓄電素子において、注液栓の軸部の軸方向における、当該軸部の先端と容器の壁部の内面との距離が、当該軸部と注液口の内周面との当接部分の長さよりも大きくなるように構成する。このように、当該軸部の先端と壁部の内面との距離を大きくして、当該軸部と注液口内周面との当接部分の長さを小さくすることで、当該軸部と注液口内周面との接触面積を小さくし、当該軸部と注液口内周面との間に浸入する電解液の量を少なくする。これにより、電解液が注液口から這い上がってくるのをさらに抑制することができる。
【0015】
また、前記軸部の軸方向において、前記軸部と前記注液口の内周面との当接部分の長さは、前記軸部と前記空間との境界部分の長さよりも小さいことにしてもよい。
【0016】
これによれば、蓄電素子において、注液栓の軸部の軸方向における、当該軸部と注液口の内周面との当接部分の長さが、当該軸部と空間との境界部分の長さよりも小さくなるように構成する。このように、当該軸部と注液口内周面との当接部分の長さを小さくして、当該軸部と空間との境界部分の長さを大きくすることで、当該軸部と注液口内周面との接触面積を小さくし、かつ、電解液の液溜めを大きくすることができる。これにより、電解液が注液口から這い上がってくるのをさらに抑制することができる。
【0017】
また、前記壁部は、前記空間に隣接して配置され、前記注液口に向かうほど前記容器の内方に向けて傾斜した傾斜面を有することにしてもよい。
【0018】
これによれば、蓄電素子において、容器の壁部は、注液口に向かうほど容器の内方に向けて傾斜した傾斜面を有しているため、電解液が這い上がってくるのを当該傾斜面が抑制することができる。これにより、電解液が注液口から這い上がってくるのをさらに抑制することができる。
【0019】
また、前記空間と隣接する前記軸部の部分は、前記注液口の内周面と当接する前記軸部の部分と同じ径または小さい径を有していてもよい。
【0020】
壁部に注液口を形成する際に、注液口の入り口付近から空間や上方に向けて突出したバリが生じる場合がある。この場合、当該空間と隣接する軸部の部分の径が、注液口の内周面と当接する軸部の部分の径よりも大きいと、当該大径部と当該バリが干渉し、注液栓が浮き上がる。注液栓が浮き上がることで、注液栓の突出部と容器の壁部との接合不良が発生するおそれがある。このため、空間と隣接する軸部の部分を注液口の内周面と当接する軸部の部分と同じ径または小さな径とすることで、当該バリが軸部と干渉して注液栓が浮き上がるのを抑制することができ、注液栓と容器の壁部との接合不良を抑制することができる。
【0021】
また、本発明の別の態様に係る蓄電素子は、容器を備える蓄電素子であって、前記容器は、電解液の注液口が形成された壁部と、前記注液口を塞ぐ注液栓とを有し、前記注液栓は、第1方向に延びて前記注液口に挿入される円柱状の軸部と、断面視において前記軸部の外周から前記第1方向と直交する第2方向に突出して前記壁部の外面に接合される突出部とを有し、前記軸部と前記突出部とが金属部材で一体的に1ピースに形成され、前記壁部には、前記注液口の周囲に、前記外面から凹んだ凹部が形成されており、前記軸部と前記突出部と前記凹部とで空間が形成され、前記軸部は、前記突出部から前記注液口の入り口まで同一径の円柱部を有する。
【0022】
電解液が注液栓の軸部に付着すると、当該軸部と注液口内周面との間に浸入して這い上がってくるが、当該軸部と注液口内周面との接触面積が大きいほど、当該浸入して這い上がってくる電解液の量が多くなる。このため、注液栓の軸部に隣接する空間を形成し、かつ、注液栓の軸部を注液口内に配置して、当該軸部と注液口内周面との接触面積を小さくし、当該軸部と注液口内周面との間に浸入して這い上がってくる電解液の量を少なくする。また、注液栓の軸部を注液口内に配置すると、軸部の先端が蓋の役割を果たすこととなり、注液口内において注液栓の軸部の先端よりも下側に付着している電解液が当該軸部と注液口内周面との間に浸入するのを抑制することもできる。これにより、電解液が注液口から這い上がってくるのを抑制することができる。また、注液口の周囲に、注液栓の軸部に隣接する空間を形成することで、当該空間に電解液を溜めることもできるため、注液口から電解液が這い上がってくるのをさらに抑制することができる。さらに、注液栓の軸部と、壁部に接合される突出部とが別々の部材で構成される場合、当該軸部が注液口から蓄電素子の内部に落下しないように、空間に隣接する軸部の部分の径を大きくする必要がある。しかしながら、空間に隣接する軸部の部分の径を大きくすると、注液口の入り口付近から空間や上方に向けて突出するバリが存在する場合、当該大径部がバリと干渉して当該軸部が注液口から浮き上がる。軸部が注液口から浮き上がると、注液口から這い上がってくる電解液を抑制することができずに、電解液に起因する注液栓と容器の壁部との接合不良が発生するおそれがある。このため、注液栓の軸部と突出部とを金属部材で一体的に1ピースに形成することで、軸部が注液口から蓄電素子の内部に落下することを防ぎつつ、軸部を突出部から注液口の入り口まで同一径の円柱形状とすることで、当該軸部がバリと干渉して注液栓が浮き上がるのを防ぐことができ、注液栓と容器の壁部との接合不良を抑制することができる。
【0023】
なお、本発明は、蓄電素子として実現することができるだけでなく、当該蓄電素子が備える、壁部と注液栓とを有する容器としても実現することができる。
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態及びその変形例は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態及びその変形例で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態及びその変形例における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0025】
また、以下実施の形態での説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、電極体の両端部(一対の活物質層非形成部)の並び方向、電極体の巻回軸方向、集電体の脚部の幅方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。また、容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、または、容器の厚さ方向をY軸方向と定義する。また、蓄電素子の容器本体と蓋体との並び方向、容器の短側面の長手方向、集電体の脚部の延設方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。また、以下の説明において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向やZ軸方向についても同様である。
【0026】
(実施の形態)
[1 蓄電素子10の全般的な説明]
まず、図1及び図2を用いて、本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。また、図2は、本実施の形態に係る蓄電素子10が備える各構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、蓄電素子10から容器本体120及び注液栓400を分離した状態での構成を示す斜視図である。
【0027】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車用電源や、電子機器用電源、電力貯蔵用電源などに使用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよく、さらに、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、本実施の形態では、矩形状(角型)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、矩形状には限定されず、円柱形状や長円柱形状等であってもよいし、ラミネート型の蓄電素子とすることもできる。
【0028】
図1に示すように、蓄電素子10は、蓋体110と容器本体120とを有する容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、図2に示すように、容器100内方には、電極体130と、正極集電体140と、負極集電体150とが収容されている。
【0029】
なお、蓋体110と正極端子200との間、及び蓋体110と正極集電体140との間には、絶縁性及び気密性を高めるためにガスケット等が配置されているが、同図では省略して図示している。負極側についても、同様である。また、容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略する。なお、当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。また、上記の構成要素の他、正極集電体140及び負極集電体150の側方に配置されるスペーサ、容器100内の圧力が上昇したときに当該圧力を開放するためのガス排出弁、または、電極体130等を包み込む絶縁フィルムなどが配置されていてもよい。
【0030】
容器100は、矩形筒状で底を備える容器本体120と、容器本体120の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成された直方体形状(箱型)のケースである。具体的には、蓋体110は、X軸方向に延設された平板状かつ矩形状の壁部であり、容器本体120のZ軸方向プラス側に配置されている。容器本体120は、Z軸方向マイナス側に平板状かつ矩形状の底壁部、Y軸方向両側の側面に平板状かつ矩形状の長側壁部、及び、X軸方向両側の側面に平板状かつ矩形状の短側壁部の5つの壁部を有している。また、容器100は、電極体130等を容器本体120の内方に収容後、蓋体110と容器本体120とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋体110及び容器本体120の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0031】
また、図2に示すように、蓋体110には、電解液の注液口111が形成されている。注液口111は、蓄電素子10の製造時に電解液を注液するために、蓋体110に形成された例えば円形状の貫通孔である。本実施の形態では、注液口111は、蓋体110のX軸方向マイナス側寄り及びY軸方向マイナス側寄りに配置されている。なお、注液口111は、蓋体110のどの位置に配置されていてもよい。
【0032】
また、図1及び図2に示すように、蓋体110には、注液口111を塞ぐ注液栓400が配置されている。つまり、蓄電素子10の製造時に、注液口111から容器100内に電解液を注液し、注液栓400を蓋体110に溶接等接合して注液口111を塞ぐことで、電解液が容器100内に収容される。このように、容器100は、電解液の注液口111が形成された壁部としての蓋体110と、注液口111を塞ぐ注液栓400とを有している。この蓋体110の注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成の詳細な説明については、後述する。
【0033】
電極体130は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる長尺帯状の集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成された極板である。負極板は、銅や銅合金などからなる長尺帯状の集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成された極板である。セパレータは、樹脂等からなる微多孔性のシートである。そして、電極体130は、正極板と負極板との間にセパレータが配置され巻回されて形成されている。なお、本実施の形態では、電極体130の断面形状として長円形状を図示しているが、楕円形状、円形状、多角形状などでもよい。また、電極体130の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層した積層型であってもよい。
【0034】
正極端子200は、電極体130の正極板に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、電極体130の負極板に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体130に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体130に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子200及び負極端子300は、電極体130の上方に配置された蓋体110に取り付けられている。
【0035】
正極集電体140及び負極集電体150は、電極体130と容器100の壁面との間に配置され、正極端子200及び負極端子300と、電極体130の正極板及び負極板とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体140の材質は限定されないが、例えば、電極体130の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。また、負極集電体150についても、材質は限定されないが、例えば、電極体130の負極基材層と同様、銅または銅合金などで形成されている。
【0036】
[2 蓋体110の注液口111まわり及び注液栓400の構成の説明]
次に、蓋体110の注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成について、詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る蓋体110の注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成を示す斜視図である。具体的には、図3は、図2における蓋体110の注液口111まわり及び注液栓400の構成を拡大して示す斜視図である。また、図4は、本実施の形態に係る蓋体110の注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成を示す断面図である。具体的には、図4は、図1における蓋体110及び注液栓400をIV-IV断面で切断した場合の構成を拡大して示す断面図である。
【0037】
[2.1 注液栓400の構成の説明]
まず、注液栓400の構成について、詳細に説明する。注液栓400は、注液口111を塞いだ状態で、蓋体110に溶接等によって接合される部材である。なお、注液栓400の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など蓋体110に溶接可能な金属で形成されている。ここで、図3及び図4に示すように、注液栓400は、軸部410と、突出部420とを有している。
【0038】
軸部410は、Z軸方向(第1方向)に延設され、注液口111に挿入される円柱状の部位である。具体的には、図4に示すように、軸部410は、上面に凹部411が形成された柱部412と、柱部412からZ軸方向マイナス側に向けて徐々に縮径する縮径部413と、縮径部413からZ軸方向マイナス側に延設された先端部414とを有している。
【0039】
柱部412は、軸部410のZ軸方向プラス側の円柱形状の部位であり、柱部412のZ軸方向プラス側の面には、Z軸方向マイナス側に向けて凹んだ円錐状の凹部411が形成されている。この凹部411は、例えば、蓋体110の外面114に注液栓400を接合する際の目印として用いられる。つまり、凹部411によって、注液栓400の位置を把握することができるため、注液栓400を、外面114上の正確な位置に配置して、外面114に接合することができる。縮径部413は、YZ平面で切断した断面形状において、柱部412のZ軸方向マイナス側の端部から、Z軸方向マイナス側に向けてY軸方向の幅が徐々に小さくなるような外縁形状が曲線で形成された部位である。先端部414は、縮径部413のZ軸方向マイナス側の端部から、Z軸方向マイナス側に向けて延設された円柱形状の部位である。つまり、先端部414は、軸部410のZ軸方向マイナス側の先端部分である。
【0040】
突出部420は、断面視において、軸部410の外周からZ軸方向(第1方向)と直交する第2方向に突出して蓋体110に接合される部位である。具体的には、突出部420は、軸部410の上端部(つまり柱部412の上部)の外周の全周から外方に突出した、平板状かつ上面視円環状(ドーナツ状)の部位(鍔部)である。なお、上面視とは、Z軸方向プラス側から見た場合のことであり、例えば上面視円環状とは、Z軸方向プラス側から見た場合に円環状の形状を有していることをいう。
【0041】
また、突出部420は、内面(Z軸方向マイナス側の面)が蓋体110の外面114と当接した状態で外面114上に載置されて、外縁部分が全周に亘って外面114に接合される。これにより、突出部420の外縁部分と外面114とが接合された上面視円環状の接合部430が形成される。具体的には、接合部430は、突出部420の外縁部分と外面114とがレーザ溶接等により溶接されて形成された溶接部である。
【0042】
[2.2 蓋体110の注液口111まわりの構成の説明]
次に、蓋体110の注液口111まわりの構成について、詳細に説明する。注液口111は、軸部410が挿入される上面視円形状の貫通孔であり、注液口111を介して電解液が容器100の内方に注液される。注液口111は、上面視で、軸部410の柱部412の外周形状とほぼ同一の内周形状を有している。また、蓋体110は、注液口111の周囲に配置された段差部112を有している。段差部112は、注液口111の周囲に配置された上面視円形状の凹部によって形成された階段状の部位である。つまり、段差部112は、上面視円環状の底面部と、当該底面部の外周縁から立ち上がる円筒状の側面部とによって形成された部位である。
【0043】
そして、この段差部112により、蓋体110には、注液口111の周囲に、軸部410に隣接する空間113が形成される。空間113は、接合部430と軸部410との間、つまり、突出部420及び外面114の当接面から柱部412の外周面に亘って形成されている。また、空間113は、突出部420の柱部412側の内面と、段差部112の底面部との間に配置されている。言い換えれば、空間113は、段差部112の底面部及び側面部と、軸部410の柱部412の外周面と、突出部420の柱部412側の内面とで囲まれて形成される空間である。
【0044】
このように、注液栓400は、軸部410の周囲に空間113が形成された状態で、軸部410が注液口111に挿入されて配置され、空間113の外側で突出部420が蓋体110の外面114に当接し、突出部420の外周縁に接合部430が形成されている。ここで、軸部410は、柱部412の下部の外周面が注液口111の内周面に当接した状態で、注液口111に挿入されている。なお、本実施の形態では、軸部410は、柱部412の下部の外周面が、全周において注液口111の内周面に当接しているが、柱部412の下部の外周面のうちの一部のみが、注液口111の内周面に当接していることにしてもよい。
【0045】
また、軸部410の先端は、注液口111内に配置されている。つまり、軸部410の先端部414は、注液口111内に配置されている。言い換えれば、先端部414は、先端縁が蓋体110の内面115よりもZ軸方向プラス側に配置されている。このような構成において、軸部410の注液口111内での配置(先端部414及び空間113の位置関係)は、以下の通りである。
【0046】
軸部410の軸方向において、軸部410の先端と蓋体110の内面115との距離は、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さよりも大きい。つまり、軸部410の軸方向(Z軸方向)において、先端部414と内面115との距離(同図のL1)が、柱部412と注液口111の内周面との当接部分の長さ(同図のL2)よりも大きくなる(L1>L2)ように構成されている。
【0047】
また、軸部410の軸方向において、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さは、軸部410と空間113との境界部分の長さよりも小さい。つまり、軸部410の軸方向(Z軸方向)において、柱部412と注液口111の内周面との当接部分の長さ(同図のL2)が、柱部412と空間113との境界部分の長さ(同図のL3)よりも小さくなる(L2<L3)ように構成されている。なお、本実施の形態では、L1>L3>L2の関係となっているが、L1=L3>L2の関係、または、L3>L1>L2の関係となっていてもよい。
【0048】
なお、軸部410の形状は、円柱状には限定されず、例えば角柱状などであってもよく、突出部420の形状も、上面視円環状には限定されず、例えば上面視で楕円形、長円形または多角形の環状などであってもよい。また、注液口111の形状も、上面視円形状には限定されず、例えば上面視で楕円形、長円形または多角形などであってもよく、軸部410の外周形状と異なる形状や異なる大きさであってもよい。また、段差部112の形状及び大きさも特に限定されない。
【0049】
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、容器100の壁部としての蓋体110には、注液口111の周囲に注液栓400の軸部410に隣接する空間113が形成され、注液栓400の軸部410の先端は、注液口111内に配置されている。つまり、電解液が注液栓400の軸部410に付着すると、当該電解液が軸部410と注液口111の内周面との間に浸入して這い上がってくるが、軸部410と注液口111の内周面との接触面積が大きいほど、当該浸入して這い上がってくる電解液の量が多くなる。このため、注液口111の周囲に注液栓400の軸部410に隣接する空間113を形成し、かつ、注液栓400の軸部410の先端を注液口111内に配置して、軸部410と注液口111の内周面との接触面積を小さくし、軸部410と注液口111の内周面との間に浸入して這い上がってくる電解液の量を少なくする。また、注液栓400の軸部410の先端を注液口111内に配置すると、軸部410の先端が蓋の役割を果たすこととなり、注液口111内において注液栓400の軸部410の先端よりも下側に付着した電解液が軸部410と注液口111の内周面との間に浸入するのを抑制することもできる。これにより、電解液が注液口111から這い上がってくるのを抑制することができる。また、注液口111の周囲に、注液栓400の軸部410に隣接する空間113を形成することで、空間113に電解液を溜めることもできるため、注液口111から電解液が這い上がってくるのをさらに抑制することができる。これらにより、注液栓400と蓋体110との接合不良(溶接不良)を抑制することができる。
【0050】
また、注液口111を形成する際に、注液口111の内周面から、注液栓400の突出部420に向けて突出したバリが生じる場合がある。この場合、注液口111の周囲に空間113が形成されていなければ、当該バリが注液栓400の突出部420と干渉し、突出部420が浮き上がることで、突出部420と蓋体110との接合不良が発生するおそれがある。このため、注液口111の周囲に空間113を形成することで、当該バリが突出部420と干渉して突出部420が浮き上がるのを抑制することができ、突出部420と蓋体110との接合不良を抑制することができる。
【0051】
また、注液栓400に軸部410が設けられているため、軸部410を注液口111に挿入することで注液栓400を注液口111に対して容易に配置して、注液栓400を蓋体110に容易に接合することができる。これにより、注液栓400と蓋体110との接合不良を抑制することができる。
【0052】
また、蓄電素子10において、注液栓400の軸部410の軸方向における、軸部410の先端と容器100の蓋体110の内面115との距離(L1)が、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さ(L2)よりも大きくなるように構成する。このように、軸部410の先端と蓋体110の内面115との距離(L1)を大きくして、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さ(L2)を小さくすることで、軸部410と注液口111の内周面との接触面積を小さくし、軸部410と注液口111の内周面との間に浸入する電解液の量を少なくする。これにより、電解液が注液口111から這い上がってくるのをさらに抑制することができる。
【0053】
また、蓄電素子10において、注液栓400の軸部410の軸方向における、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さ(L2)が、軸部410と空間113との境界部分の長さ(L3)よりも小さくなるように構成する。このように、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さ(L2)を小さくして、軸部410と空間113との境界部分の長さ(L3)を大きくすることで、軸部410と注液口111の内周面との接触面積を小さくし、かつ、電解液の液溜めを大きくすることができる。これにより、電解液が注液口111から這い上がってくるのをさらに抑制することができる。
【0054】
[4 実施の形態の変形例の説明]
(変形例1及び2)
次に、上記実施の形態の変形例1及び2について、説明する。図5は、本実施の形態の変形例1に係る蓋体110aの注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成を示す断面図である。また、図6は、本実施の形態の変形例2に係る蓋体110bの注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成を示す断面図である。なお、図5及び図6は、上記実施の形態における図4に対応する図である。
【0055】
図5に示すように、変形例1における蓋体110aは、上記実施の形態における蓋体110の段差部112に代えて、段差部112aを有している。段差部112aは、上記実施の形態における段差部112よりも、段差の高さが低く(段差の位置が高く)形成されている。これにより、蓋体110aには、注液口111の周囲に、上記実施の形態における空間113よりも高さが低い空間113aが形成される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、説明は省略する。
【0056】
このような構成により、軸部410の軸方向(Z軸方向)において、軸部410の先端と蓋体110aの内面115との距離(同図のL1)は、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さ(同図のL4)よりも大きくなる(L1>L4)。また、軸部410の軸方向(Z軸方向)において、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さ(同図のL4)は、軸部410と空間113aとの境界部分の長さ(同図のL5)よりも大きくなる(L4>L5)。つまり、本変形例では、L1>L4>L5の関係となっている。
【0057】
また、図6に示すように、変形例2における蓋体110bは、上記変形例1における蓋体110aの段差部112aに代えて、段差部112bを有している。段差部112bは、上記変形例1における段差部112aよりも、段差の高さが低く(段差の位置が高く)形成されている。これにより、蓋体110bには、注液口111の周囲に、上記変形例1における空間113aよりも高さが低い空間113bが形成される。本変形例のその他の構成については、上記変形例1と同様であるため、説明は省略する。
【0058】
このような構成により、軸部410の軸方向(Z軸方向)において、軸部410の先端と蓋体110bの内面115との距離(同図のL1)は、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さ(同図のL6)よりも小さくなる(L1<L6)。また、軸部410の軸方向(Z軸方向)において、軸部410と注液口111の内周面との当接部分の長さ(同図のL4)は、軸部410と空間113bとの境界部分の長さ(同図のL7)よりも大きくなる(L6>L7)。なお、本変形例では、L6>L1>L7の関係となっているが、L6>L1=L7の関係、または、L6>L7>L1の関係となっていてもよい。
【0059】
以上のように、変形例1及び2に係る蓄電素子によれば、段差部112a、112bの段差の高さが低く(段差の位置が高く)形成されているため、段差部112a、112bを容易に形成することができる。
【0060】
(変形例3)
次に、上記実施の形態の変形例3について、説明する。図7は、本実施の形態の変形例3に係る蓋体110cの注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成を示す断面図である。なお、図7は、上記実施の形態における図4に対応する図である。
【0061】
図7に示すように、本変形例における蓋体110cは、上記実施の形態における蓋体110の段差部112に代えて、段差部112cを有している。段差部112cは、底面として、注液口111に向かうほど容器100の内方に向けて傾斜した傾斜面116を有している。これにより、蓋体110cには、注液口111の周囲に、注液口111に向かうほど高さが高くなる空間113cが形成される。つまり、蓋体110cは、空間113cに隣接して配置され、注液口111に向かうほど容器100の内方に向けて傾斜した傾斜面116を有している。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、説明は省略する。
【0062】
なお、本変形例では、傾斜面116は、注液口111に向かうほど容器100の内方に向けて直線状に傾斜した傾斜面であるが、曲線状に傾斜した傾斜面であってもよいし、その他の形状でもよい。
【0063】
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、容器100の蓋体110cは、注液口111に向かうほど容器100の内方に向けて傾斜した傾斜面116を有しているため、電解液が這い上がってくるのを傾斜面116が抑制することができる。これにより、電解液が注液口111から這い上がってくるのをさらに抑制することができる。
【0064】
(変形例4)
次に、上記実施の形態の変形例4について、説明する。図8は、本実施の形態の変形例4に係る蓋体110dの注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成を示す断面図である。なお、図8は、上記実施の形態における図4に対応する図である。
【0065】
図8に示すように、本変形例における蓋体110dは、上記実施の形態における蓋体110の段差部112に代えて、段差部112dを有している。段差部112dは、底面に凹部117を有している。つまり、凹部117は、段差部112dの突出部420との対向面に形成された上面視円環状の凹部である。このように、蓋体110dは、空間113dに隣接して配置される凹部117を有している。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、説明は省略する。なお、凹部117の上面視形状及び断面形状は特に限定されず、また、大きさについても限定されない。
【0066】
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、空間113dに隣接して凹部117が配置されていることで、凹部117に電解液を溜めることができるため、注液口111から電解液が這い上がってくるのをさらに抑制することができる。
【0067】
(変形例5)
次に、上記実施の形態の変形例5について、説明する。図9は、本実施の形態の変形例5に係る蓋体110eの注液口111まわりの構成、及び、注液栓400の構成を示す断面図である。なお、図9は、上記実施の形態における図4に対応する図である。
【0068】
図9に示すように、本変形例における蓋体110eは、上記実施の形態における蓋体110の段差部112に代えて、段差部112eを有している。段差部112eは、底面に凸部118を有している。つまり、凸部118は、段差部112eの突出部420との対向面に形成された上面視円環状の凸部である。このように、蓋体110eは、空間113eに隣接して配置される凸部118を有している。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、説明は省略する。なお、凸部118の上面視形状及び断面形状は特に限定されず、また、大きさについても限定されない。
【0069】
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、空間113eに隣接して凸部118が配置されていることで、電解液が這い上がってくるのを凸部118が壁になって抑制することができるため、注液口111から電解液が這い上がってくるのをさらに抑制することができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、上記実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0071】
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、容器100の蓋体には、注液口111の周囲に、1段の段差部が設けられていることとした。しかし、容器100の蓋体には、注液口111の周囲に、2段以上の段差部が設けられていることにしてもよい。また、容器100の蓋体の外面114における段差部の周囲の形状は特に限定されず、例えば、外面114における段差部の周囲に、凹部や凸部等が形成されていてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態及びその変形例では、接合部430は、注液栓400の突出部420と容器100の蓋体とがレーザ溶接によって接合された溶接部であることとした。しかし、突出部420と蓋体との接合方法は、レーザ溶接には限定されず、抵抗溶接や超音波溶接等による溶接であってもよい。また、当該接合方法は、溶接にも限定されず、例えば、接合部430は、注液栓400の突出部420と容器100の蓋体とが接着剤等によって接着、熱溶着等によって溶着、または、かしめ等によって機械的に接合された部位であることにしてもよい。この場合でも、注液口111から電解液が這い上がってくるのを抑制することで、注液栓400と蓋体との接合不良を抑制することができる。
【0073】
また、上記実施の形態及びその変形例では、容器100の蓋体に注液口111が形成され、当該注液口111を塞ぐように、容器100の蓋体に注液栓400が配置されることとした。しかし、容器本体120のいずれかの壁部に注液口111が形成され、当該注液口111を塞ぐように、容器本体120の当該壁部に注液栓400が配置されることにしてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0075】
また、本発明は、蓄電素子として実現することができるだけでなく、当該蓄電素子が備える、壁部としての蓋体と注液栓400とを有する容器100としても実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0077】
10 蓄電素子
100 容器
110、110a、110b、110c、110d、110e 蓋体
111 注液口
113、113a、113b、113c、113d、113e 空間
115 内面
116 傾斜面
117 凹部
118 凸部
400 注液栓
410 軸部
414 先端部
420 突出部
430 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9