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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】集塵機
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/24 20060101AFI20220712BHJP
   A47L 9/20 20060101ALI20220712BHJP
   A47L 9/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B01D46/24
A47L9/20 J
A47L9/00 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019558925
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036311
(87)【国際公開番号】W WO2019116681
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2017240053
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】掛川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】羽山 芳雅
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015108558(DE,A1)
【文献】特開2008-296020(JP,A)
【文献】特開2008-173329(JP,A)
【文献】特開2010-042045(JP,A)
【文献】特開2000-254428(JP,A)
【文献】特開平04-341314(JP,A)
【文献】特開平01-106915(JP,A)
【文献】特表2014-504528(JP,A)
【文献】特表2000-507876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0092498(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016101414(DE,A1)
【文献】実開昭49-094569(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/54
A47L 9/00,9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
前記集塵室を内部に有するタンクと、
前記タンクに装着され、モータ及び前記モータにより駆動する集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離する筒状のフィルタ装置と、
前記本体に設けられ、前記フィルタ装置の内側のフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、
前記フィルタ内空間に臨み、前記フィルタ装置の周方向の異なる位置に設けられる複数の第1開口部と、
前記フィルタ装置の径方向における前記モータの外周に設けられ、前記フィルタ装置の周方向に延びる第1ダクト部と、を備え、
前記第1ダクト部に、前記第1開口部が設けられる、集塵機。
【請求項2】
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
モータ及び前記モータにより駆動する集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離する筒状のフィルタ装置と、
前記フィルタ装置の内側のフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、前記フィルタ内空間に臨む複数の第1開口部を、前記フィルタ装置の周方向の異なる位置に有し、
前記複数の第1開口部のうち前記通路部材の外気取入口からの導風距離が遠い第1開口部は、前記導風距離が近い第1開口部と比較して開口面積が大きい、集塵機。
【請求項3】
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
前記集塵室を内部に有するタンクと、
前記タンクに装着され、モータ及び前記モータにより駆動する集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離する筒状のフィルタ装置と、
前記本体に設けられ、前記フィルタ装置の内側のフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、
前記フィルタ装置の径方向における前記モータの外周に設けられ、前記フィルタ装置の周方向に延びる第1ダクト部と、
前記第1ダクト部に設けられ、前記周方向において互いに90度以上異なる位置で前記通路部材の内側の空間と前記フィルタ内空間とを互いに連通させる第1開口部と、を有する、集塵機。
【請求項4】
前記通路部材は、一端が前記第1ダクト部の前記周方向一端に接続された第2ダクト部を有し、
前記第2ダクト部は、外気側に向けて開口した第2開口部を他端に有する、請求項1又は3に記載の集塵機。
【請求項5】
前記閉塞部による前記通路部材の開閉を切り替える操作部を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の集塵機。
【請求項6】
前記閉塞部が前記通路部材を閉じる際に前記吸込口を閉鎖する閉鎖部材を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の集塵機。
【請求項7】
前記集塵室を内部に有するタンク部を備え、
前記本体は、前記タンク部の上方に接続されたヘッド部である、請求項1からのいずれか一項に記載の集塵機。
【請求項8】
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
前記集塵室を内部に有するタンクと、
上下方向に延びる出力軸を有するモータと、
前記モータにより駆動する集塵ファンと、
前記タンクに装着され、前記モータ及び前記集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離するフィルタ装置と、
前記本体に設けられ、前記フィルタ装置を通過した空気が進入するフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、
前記フィルタ内空間に臨み、前記上下方向と平行な軸を中心とする軸周り方向の異なる位置に配置される複数の第1開口部と、
前記軸を中心とする径方向における前記モータの外周に設けられ、前記軸周り方向に延びる第1ダクト部と、
一端が前記第1ダクト部に接続され、他端が前記外気に向けて開口する第2ダクト部と、を備え、
前記第1ダクト部に、前記第1開口部が設けられる、集塵機。
【請求項9】
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
前記集塵室を内部に有するタンクと、
上下方向に延びる出力軸を有するモータと、
前記モータにより駆動する集塵ファンと、
前記タンクに装着され、前記モータ及び前記集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離するフィルタ装置と、
前記本体に設けられ、前記フィルタ装置を通過した空気が進入するフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、
前記フィルタ内空間に臨む第1開口部と、
前記軸を中心とする径方向における前記モータの外周に設けられ、前記軸周り方向に延びる第1ダクト部と、
一端が前記第1ダクト部に接続され、他端が前記外気に向けて開口する第2ダクト部と、を備え、
前記第1開口部は、前記第1ダクト部に設けられ、前記上下方向と平行な軸を中心とする軸周り方向において互いに90度以上異なる位置で前記通路部材の内側の空間と前記フィルタ内空間とを互いに連通させる、集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃を収集する集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
集塵機において、フィルタの作業可能時間を長くするため、フィルタに付着した塵埃を除去する除塵機構を有する集塵機が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-190303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の集塵機における除塵機構は、除塵モータにより除塵子を駆動してフィルタに付着した塵埃を打撃(振動)により叩き落とすものであるが、フィルタの目詰まりを検出する手段や除塵モータ、除塵子等が必要で部品点数が多く、構成が複雑になるという課題があった。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、簡易な構成でフィルタの除塵が可能な集塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、集塵機である。この集塵機は、
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
前記集塵室を内部に有するタンクと、
前記タンクに装着され、モータ及び前記モータにより駆動する集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離する筒状のフィルタ装置と、
前記本体に設けられ、前記フィルタ装置の内側のフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、
前記フィルタ内空間に臨み、前記フィルタ装置の周方向の異なる位置に設けられる複数の第1開口部と、
前記フィルタ装置の径方向における前記モータの外周に設けられ、前記フィルタ装置の周方向に延びる第1ダクト部と、を備え、
前記第1ダクト部に、前記第1開口部が設けられる
【0007】
本発明のもう1つの態様は、集塵機である。この集塵機は、
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
モータ及び前記モータにより駆動する集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離する筒状のフィルタ装置と、
前記フィルタ装置の内側のフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、前記フィルタ内空間に臨む複数の第1開口部を、前記フィルタ装置の周方向の異なる位置に有し、
前記複数の第1開口部のうち前記通路部材の外気取入口からの導風距離が遠い第1開口部は、前記導風距離が近い第1開口部と比較して開口面積が大き
【0008】
本発明のもう1つの態様は、集塵機である。この集塵機は、
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
前記集塵室を内部に有するタンクと、
前記タンクに装着され、モータ及び前記モータにより駆動する集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離する筒状のフィルタ装置と、
前記本体に設けられ、前記フィルタ装置の内側のフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、
前記フィルタ装置の径方向における前記モータの外周に設けられ、前記フィルタ装置の周方向に延びる第1ダクト部と、
前記第1ダクト部に設けられ、前記周方向において互いに90度以上異なる位置で前記通路部材の内側の空間と前記フィルタ内空間とを互いに連通させる第1開口部と、を有する
【0010】
前記通路部材は、一端が前記第1ダクト部の前記周方向一端に接続された第2ダクト部を有し、
前記第2ダクト部は、外気側に向けて開口した第2開口部を他端に有してもよい。
【0011】
前記閉塞部による前記通路部材の開閉を切り替える操作部を備えてもよい。
【0012】
前記閉塞部が前記通路部材を閉じる際に前記吸込口を閉鎖する閉鎖部材を備えてもよい。
【0013】
前記集塵室を内部に有するタンク部を備え、前記本体は、前記タンク部の上方に接続されたヘッド部であってもよい。
本発明のもう1つの態様は、集塵機である。この集塵機は、
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
前記集塵室を内部に有するタンクと、
上下方向に延びる出力軸を有するモータと、
前記モータにより駆動する集塵ファンと、
前記タンクに装着され、前記モータ及び前記集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離するフィルタ装置と、
前記本体に設けられ、前記フィルタ装置を通過した空気が進入するフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、
前記フィルタ内空間に臨み、前記上下方向と平行な軸を中心とする軸周り方向の異なる位置に配置される複数の第1開口部と、
前記軸を中心とする径方向における前記モータの外周に設けられ、前記軸周り方向に延びる第1ダクト部と、
一端が前記第1ダクト部に接続され、他端が前記外気に向けて開口する第2ダクト部と、を備え
前記第1ダクト部に、前記第1開口部が設けられる。
本発明のもう1つの態様は、集塵機である。この集塵機は、
吸込口と連通し、塵埃を収容する集塵室と、
前記集塵室を内部に有するタンクと、
上下方向に延びる出力軸を有するモータと、
前記モータにより駆動する集塵ファンと、
前記タンクに装着され、前記モータ及び前記集塵ファンを有する本体と、
前記集塵室内に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃を分離するフィルタ装置と、
前記本体に設けられ、前記フィルタ装置を通過した空気が進入するフィルタ内空間と外気とを前記フィルタ装置を介さずに連通させる空気通路を形成する通路部材と、
前記通路部材を開閉可能に閉じる閉塞部と、を備え、
前記通路部材は、
前記フィルタ内空間に臨む第1開口部と、
前記軸を中心とする径方向における前記モータの外周に設けられ、前記軸周り方向に延びる第1ダクト部と、
一端が前記第1ダクト部に接続され、他端が前記外気に向けて開口する第2ダクト部と、を備え
前記第1開口部は、前記第1ダクト部に設けられ、前記上下方向と平行な軸を中心とする軸周り方向において互いに90度以上異なる位置で前記通路部材の内側の空間と前記フィルタ内空間とを互いに連通させる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構成でフィルタの除塵が可能な集塵機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る集塵機1の右側断面図。
図2】集塵機1の吸込口11を閉鎖部材19で閉じた状態を示す要部右側断面図。
図3】集塵機1の平面図。
図4】集塵機1の通路部材50を開閉する蓋体60の動作を示す要部断面図。
図5】通路部材50の斜視図。
図6】通路部材50の一部を断面とした斜視図。
図7】通路部材50の下側通路部材57の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
図1により、集塵機(電動集塵機)1における互いに直交する前後、上下方向を定義する。図1において、集塵ファン25の発生する気流の流れを破線の矢印で示す。集塵機1は、タンク部10と、本体としてのヘッド部20と、を備える。タンク部10及びヘッド部20は、相互に分離可能である。
【0019】
タンク部10は、上部が開放された底付の筒状で、水平断面が図3に示すように略四角形(図示の例では丸みを帯びた正方形ないし長方形)となっている。タンク部10は、前側の側面に吸込口11を有し、吸込口11に図示しないホースを着脱可能に接続できる。タンク部10内には、吸込口11から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃(粉塵)を分離する(吸引した塵埃をろ過する)筒状のフィルタ装置12が設けられる。フィルタ装置12は、軸が上下方向と略平行な略円錐台側面形状である。フィルタ装置12の外周面は細かい網目を有する布等で形成されるフィルタ状であり、空気はこの外周面を通過することでフィルタ装置12内部のフィルタ内空間14に進入可能であるが、空気に含まれる塵埃は網目を通過できず、フィルタ装置12の外周面でろ過され、フィルタ装置12の外周面上に付着するか下方へ落下する。タンク部10内の空間は、集塵室13であり、集塵室13のうちフィルタ装置12の外側の空間に、フィルタ装置12により分離された塵埃を収容する。フィルタ内空間14は、タンク部10内におけるフィルタ装置12の内側の空間であって、ファンカバー27の外側の空間である。
【0020】
ヘッド部20は、タンク部10の上部に、例えば図示しないクランプ機構によって着脱可能に固定される。ヘッド部20は、ヘッドハウジング21の内部に、モータ23と、モータ冷却用ファン24と、集塵ファン25と、を有する。ヘッドハウジング21の一部を構成するファンカバー27は、タンク部10の内部に入り込み、フィルタ内空間14と、集塵ファン25を収容したファン室28と、を隔てる。ファンカバー27はフィルタ装置12と略同軸の略筒形状であり、フィルタ装置12の上方からフィルタ装置12の内部へ入り込むように下方(ヘッド部20から見てタンク部10側)へ凸となるため、ファンカバー27の外周とフィルタ装置12の内周とで形成されるフィルタ内空間14は、ファンカバー27の中心軸方向においてファンカバー27と重なる範囲においては、環状に形成される。
【0021】
モータ23は、その出力軸23Aが上下方向に延びるようにヘッド部20内に配設される。モータ23はここではブラシレスモータであり、モータ23の上部には、モータ23に駆動電流を供給するためのスイッチング素子を搭載したスイッチング素子基板26が上下方向と略垂直に設けられる。モータ冷却用ファン24と集塵ファン25は、モータ23の出力軸23Aに取り付けられ、モータ23によって回転駆動される。モータ冷却用ファン24は、モータ23の直下に位置する軸流ファンであり、下方に向かう気流を発生する。集塵ファン25は、モータ冷却用ファン24の下方に設けられた遠心ファンである。
【0022】
図3に示すように、ヘッド部20の前面には、集塵機1の動作を使用者が切り替えるための操作パネル30が設けられる。操作パネル30は、メイン電源スイッチ31と、強弱切替スイッチ32と、単動/連動切替スイッチ33と、電池残量表示スイッチ34と、電池残量表示部35と、を有する。なお、単動とは、集塵機1が単体で動作するモードであり、連動とは、集塵機1に図示しない丸のこ等の他の電動工具を電源ケーブルで接続して電源供給を可能にしておき、他の電動工具への電源供給を検出すると、すなわち他の電動工具が駆動されると集塵機1が駆動するモード(機能)である。図3に示すように、集塵機1は、着脱可能に装着した2つの電池パック40を電源とするコードレスタイプであり、電池残量表示スイッチ34を押すと、電池残量表示部35に各電池パック40の残量がLED等により複数段階で表示される。
【0023】
集塵機1においてモータ23を駆動すると、モータ冷却用ファン24及び集塵ファン25が回転駆動される。集塵ファン25の回転により、タンク部10内が負圧になり、吸込口11に吸込み力が発生する。すると、図1に破線の矢印で示すように、塵埃が空気と共に吸込口11からタンク部10内に吸い込まれる。その後、フィルタ装置12によって塵埃と空気は分離され、塵埃は集塵室13のうちフィルタ装置12の外側の空間に溜められる。一方、空気は、フィルタ装置12の外周面を通過してフィルタ内空間14に入り、ファンカバー27の下面の図示しない開口部からファン室28内に入り、モータ23と隔てられた空間を抜けて外部に排気される。塵埃はフィルタ装置12の外周面で捕集されて集塵室13内に溜められるが、一部の塵埃はフィルタ装置12の外周面に付着し、吸引効率の低下や目詰まりの原因となる。以下、フィルタ装置12の外周面に付着した塵埃を除去する除塵機構について説明する。
【0024】
除塵機構は、通路部材50と、蓋体60と、を有する。通路部材50は、フィルタ内空間14と外気とをフィルタ装置12を介さずに連通させる空気通路(導風路)を形成する部材であり、ヘッド部20内に設けられる。通路部材50は、ヘッドハウジング21と別体であってヘッドハウジング21の特にファンカバー27に着脱可能に取り付けられる。なお、通路部材50は、ヘッドハウジング21と一体の成形体であってもよい。蓋体60は、通路部材50を開閉可能に閉じる閉塞部を成す。
【0025】
通路部材50は、例えば樹脂成形体であって、第1ダクト部51と、第2ダクト部52と、を含む。第1ダクト部51は、フィルタ装置12の周方向(上下方向と平行な軸周り方向)に延び、例えばフィルタ装置12の中心軸と同軸な略円弧状の空気通路を形成する。第1ダクト部51は、フィルタ装置12の周方向に一周してもよい。第1ダクト部51は、自身の下面に複数の第1開口部53を有する。複数の第1開口部53は、フィルタ装置12の周方向の互いに異なる位置に設けられ(図示の例では約120度の間隔(略等間隔)で設けられ)、それぞれフィルタ内空間14に臨む。第2ダクト部52は、一端(下端)が第1ダクト部51に接続され、上下方向に延び、外気側に向けて開口した第2開口部54を他端(上端)に有する。
【0026】
複数の第1開口部53は、通路部材50の外気取入口(第2開口部54)からの導風距離が遠いものほど開口面積が大きい。図3及び図7では、複数の第1開口部53を、導風距離が近いものから順に符号を53a、53b、53cとして区別している。第1開口部53cは、第1開口部53bより開口面積が大きく、第1開口部53bは、第1開口部53aより開口面積が大きい。これは、開口面積が同じ場合、導風距離が遠くなるほど空気の流量が減ることを考慮し、導風距離が遠い第1開口部53ほど開口面積を大きくすることで、各々の第1開口部53を通る空気の流量がなるべく等しくなるようにしたものである。
【0027】
通路部材50は、ここでは上下二分割構造であり、上側通路部材56と、下側通路部材57と、を組み合わせたもの(例えばネジ止め等により一体化したもの)である。上側通路部材56は、第2ダクト部52と、第1ダクト部51の上部と、を成す。下側通路部材57は、第1ダクト部51の下部を成す。下側通路部材57の下面に第1開口部53が設けられる。
【0028】
蓋体60は、揺動軸(回動軸)63を介して第2ダクト部52の上端部に連結され、揺動軸63に対して上下に揺動することで第2開口部54を開閉する。付勢手段としてのねじりバネ62は、蓋体60を下方に(図4の反時計回り方向に)、すなわち第2開口部54を閉じる方向に付勢する。開閉操作部61は、使用者が蓋体60を開ける(蓋体60を上方に揺動させて第2開口部54を開く)ための操作部である。使用者は押しボタンの要領で開閉操作部61を上から下に向けて押すことで、図4に二点鎖線で示すように蓋体60を上方に揺動させ(図4の時計回り方向に回動させ)、第2開口部54を開けることができる。
【0029】
除塵機構による除塵を行う際には、蓋体60が第2開口部54を閉じた状態で、使用者は、吸込口11を手で塞ぎ(あるいは図2に示すようにゴム等の閉鎖部材19で塞ぎ)、操作パネル30の操作により集塵機1を起動する(モータ23の駆動により集塵ファン25を動作させる)。すると、吸込口11からの空気の流入が無いため、タンク部10内は減圧状態となる。使用者は、タンク部10内が減圧された状態で開閉操作部61を操作して蓋体60を開く。すると、第2開口部54から空気が流入し、流入した空気(除塵用の気流)は、通路部材50によってガイド(導風)されて、ファン室28を通らずに、各々の第1開口部53からフィルタ内空間14に勢いよく噴射され、フィルタ装置12の内側から外側に勢いよく抜ける。これにより、フィルタ装置12の外周面に付着した塵埃を除去することができる。
【0030】
上述の除塵機構において、第1開口部53が一つのみであると、除塵用の気流がフィルタ装置12の側面のうち第1開口部53の近傍に位置する一部に集中し、当該一部以外の除塵が不十分になりやすく(除塵が不均一になりやすく)、除塵効率が悪いという課題がある。この点、本実施の形態では、第1開口部53を複数としてフィルタ装置12の周方向の互いに異なる位置に設けているため、除塵用の気流をフィルタ装置12の側面の広範囲に分散させることができ、除塵の均一性を高めて除塵効率を向上させることができる。
【0031】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0032】
(1) フィルタ装置12の周方向の互いに異なる位置に設けた複数の第1開口部53から除塵用の気流をフィルタ内空間14に噴出するため、第1開口部53が一つのみである場合と比較して、フィルタ装置12の側面に均一に除塵用の気流を当てることができ、フィルタ装置12の除塵を均一に行えるため、除塵効率を高めることができる。
【0033】
(2) 第2開口部54からの導風距離が遠い第1開口部53ほど開口面積を大きくしているため、全ての第1開口部53が同じ開口面積である場合と比較して、各々の第1開口部53から吹き出される除塵用の気流の流量差を小さくすることができ、除塵の均一性を高めて除塵効率を向上させることができる。
【0034】
(3) 使用者は、開閉操作部61を押すだけで蓋体60を開くことができ、また開閉操作部61から手を離すだけでねじりバネ62の付勢により蓋体60を閉じることができ、除塵の作業性が良い。
【0035】
(4) 除塵の際に吸込口11を閉鎖する閉鎖部材19がある場合、除塵作業において吸込口11を押さえる必要が無い(吸込口11から手を離すことができる)ため、除塵の作業性が良い。
【0036】
(5) 蓋体60を開けて通路部材50により除塵用の気流をフィルタ内空間14に噴出する簡易な構成であり、フィルタ装置12の目詰まりを検出する手段や除塵モータ、除塵子等が不要で部品点数が少ない。
【0037】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0038】
第1開口部53は、実施の形態では3つとしたが、2つ又は4つ以上であってもよい。いずれの場合も、第1開口部53は、フィルタ装置12の周方向において等角度間隔で配置することで、除塵の均一性を一層高めることができる。
【0039】
第1開口部53は、フィルタ装置12の周方向において90度以上の長さがあれば、一つのみであってもよい。この場合も、一定の除塵均一化の効果は得られる。第1開口部53の長さは、長いほど除塵均一化の効果は高く、120度以上、180度以上、270度以上と長くしていくことで、除塵均一化の効果を高めることができる。また、第1開口部53は、第2開口部54からの導風距離が遠くなる部分ほど幅を広くしてもよく、これも除塵均一化に効果がある。
【0040】
閉鎖部材19は使用者が吸込口11に嵌め込むことで自由に着脱できる構成とすることで、構造を簡単にし故障等の可能性を低減する効果が得られるが、蓋体60を開く開閉操作部61の操作に連動して閉鎖部材19が吸込口11を塞ぐ構成としてもよく、この場合使用者の作業手順を減らし簡単にフィルタ装置12の除塵を行うことが可能となる。この開閉操作部61と閉鎖部材19とを連動させる機構は、開閉操作部61あるいは蓋体60等と閉鎖部材19とを繋ぐ機械的なリンク機構を用いてもよいし、開閉操作部61の操作によってオンとなるスイッチ等を設け、このスイッチの信号によってモータ等を駆動し閉鎖部材19を移動させる電気的な機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…集塵機、10…タンク部、11…吸込口(ホース取付口)、12…フィルタ装置、13…集塵室、14…フィルタ内空間、19…閉鎖部材、20…ヘッド部(本体)、21…ヘッドハウジング、23…モータ(ブラシレスモータ)、24…モータ冷却用ファン、25…集塵ファン、26…スイッチング素子基板、27…ファンカバー、28…ファン室、30…操作パネル、31…メイン電源スイッチ、32…強弱切替スイッチ(タクタイルスイッチ)、33…単動/連動切替スイッチ、34…電池残量表示スイッチ、35…電池残量表示部、40…電池パック、50…通路部材、51…第1ダクト部、52…第2ダクト部、53…第1開口部、54…第2開口部、56…上側通路部材、57…下側通路部材、60…蓋体(閉塞部)、61…開閉操作部、62…ねじりバネ、63…揺動軸(回動軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7