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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】リチウム電池モジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20220712BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/247 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/136 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20220712BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220712BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/59 20210101ALI20220712BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/202 501S
H01M50/202 501P
H01M50/233
H01M50/247
H01M50/103
H01M50/105
H01M50/117
H01M50/121
H01M50/136
H01M10/0587
H01M10/052
H01M50/588
H01M50/59
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020122475
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2021097029
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2019227793
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大江 亮
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022057(JP,A)
【文献】特開2015-185256(JP,A)
【文献】特開2008-300593(JP,A)
【文献】特開2017-016733(JP,A)
【文献】特開2008-262803(JP,A)
【文献】特開2012-252888(JP,A)
【文献】特開2003-151616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/10-50/198
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とがセパレータを介して捲回された捲回体と、
前記捲回体が封入された外装体と、
前記外装体が収納された保護ケースと、
前記外装体と前記保護ケースとの間に設けられた押圧部材と、
を備え、
前記外装体は、ベースとなる第1部材と、一部の領域に設けられた第2部材とで構成され、
前記第2部材は、前記第1部材よりも伸縮性の低い部材であり、
前記押圧部材は、前記保護ケースからの押圧力を、前記第2部材を介して前記捲回体に伝達することにより、前記外装体からの押圧力で前記捲回体を固定する、
ことを特徴とするリチウム電池モジュール
【請求項2】
前記第2部材は、前記外装体の一部の領域に嵌め込まれるように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項3】
前記第2部材は、前記外装体の外部から当該外装体の一部の領域に接着されて設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記外装体が膨張する際に発生する前記押圧力を、非伸縮性部材を介して前記捲回体に伝達する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項5】
前記外装体は、一対の扁平面を有した扁平形状に形成されており、
前記第2部材は、前記一対の扁平面のそれぞれに設けられているとともに、一方の扁平面に設けられた前記第2部材が他方の扁平面に設けられた前記第2部材と重なるように設けられており、
前記押圧部材は、前記一方の扁平面に設けられた第2部材に対応した第1押圧部材と、前記他方の扁平面に設けられた第2部材に対応した第2押圧部材と、で構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項6】
前記押圧部材は、当該押圧部材が前記保護ケースと前記第2部材との間で挟まれた際に、前記保護ケースと前記外装体との間で且つ前記押圧部材の両側に空間が生じるように配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項7】
前記押圧部材は、前記第2部材と接する領域の面積の方が前記第2部材が設けられた領域の面積よりも小さく形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項8】
前記押圧部材が前記保護ケースと非伸縮性部材との間で挟まれた際に、前記第2部材は、前記押圧部材が前記外装体における前記第1部材の領域に接触しない程度の厚みを有している、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項9】
前記第2部材及び前記押圧部材は、円柱状である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項10】
前記第2部材は、前記外装体における扁平面の中央部に設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項11】
前記第2部材は、樹脂、ガラス又はセラミックの板材である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載のリチウム電池モジュールを備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
正極と負極とがセパレータを介して捲回された捲回体と、該捲回体を封入するとともに、第1部材と当該第1部材よりも伸縮性の低い第2部材とを有する外装体と、で構成されたリチウム電池を収納する筐体を備え、
前記筐体からの押圧力を、前記第2部材を介して前記捲回体に伝達することにより、前記捲回体と前記筐体との相対的位置を固定する、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池モジュール及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型電子機器の小型・軽量化に伴い、エネルギ密度の高い二次電池であるリチウム電池が使用されている。このリチウム電池は、正極素材とセパレータと負極素材との積層物を捲回した捲回物が電解質と共に、ラミネートやアルミで形成された外装体の中に収容されたものである。リチウム電池は、充放電の繰り返しにより、ガスが発生し、外装体が膨張する性質がある。この外装体の膨張に対応するための技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の移動端末機は、ケース蓋を電池パックに接触あるいは付勢する手段を備え、電池パック内部の膨張による電池パックの変形に対応した空間をケ-ス蓋あるいは電池収納部の少なくとも一方に設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-5008号公報(要約書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術でも、電池パックの外装体とケース蓋や電子機器の電池収納部とは固定されていない。このため、電池パックが膨張すると、内部の捲回体の構成部材が摺動し、正極と負極とが短絡する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、捲回体における正極と負極との短絡を防止することができるリチウム電池モジュール及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係るリチウム電池モジュールは、正極と負極とがセパレータを介して捲回された捲回体と、前記捲回体が封入された外装体と、前記外装体が収納された保護ケースと、前記外装体と前記保護ケースとの間に設けられた押圧部材と、を備え、前記外装体は、ベースとなる第1部材と、一部の領域に設けられた第2部材とで構成され、前記第2部材は、前記第1部材よりも伸縮性の低い部材であり、前記押圧部材は、前記保護ケースからの押圧力を、前記第2部材を介して前記捲回体に伝達することにより、前記外装体からの押圧力で前記捲回体を固定する、ことを特徴とする。
また、本発明に係る第1の態様の電子機器は、上記のリチウム電池モジュールを備える、ことを特徴とする。
また、本発明に係る第2の態様の電子機器は、正極と負極とがセパレータを介して捲回された捲回体と、該捲回体を封入するとともに、第1部材と当該第1部材よりも伸縮性の低い第2部材とを有する外装体と、で構成されたリチウム電池を収納する筐体を備え、前記筐体からの押圧力を、前記第2部材を介して前記捲回体に伝達することにより、前記捲回体と前記筐体との相対的位置を固定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、捲回体における正極と負極との短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態の電子機器の平面図である。
図2A】本発明の第1実施形態の電子機器の裏面を示す斜視図である。
図2B】本発明の第1実施形態の電子機器の電池蓋を示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態のリチウム電池を収納した状態のリチウム電池モジュールの外観図である。
図4A】本発明の第1実施形態のリチウム電池モジュールの左側面図である。
図4B】本発明の第1実施形態のリチウム電池モジュールの断面図である。
図4C】本発明の第1実施形態のリチウム電池モジュールの平面図である。
図5】本発明の第1実施形態のリチウム電池のセルの斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態のリチウム電池の捲回体の構造図である。
図7A】本発明の第1実施形態のリチウム電池モジュールの外装体の膨張状態の左側面図である。
図7B】本発明の第1実施形態のリチウム電池モジュールの外装体の膨張状態の断面図である。
図8A】本発明の第2実施形態の電子機器の裏面を示す斜視図である。
図8B】本発明の第2実施形態の電子機器の電池蓋を示す斜視図である。
図9A】本発明の第3実施形態のリチウム電池モジュールの左側面図である。
図9B】本発明の第3実施形態のリチウム電池モジュールの断面図である。
図10A】本発明の第3実施形態のリチウム電池モジュールの外装体の膨張状態の左側面図である。
図10B】本発明の第3実施形態のリチウム電池モジュールの外装体の膨張状態の断面図である。
図11】本発明の第1変形例のリチウム電池モジュールの左側面図である。
図12】本発明の第2変形例のリチウム電池モジュールの平面図である。
図13】本発明の第3変形例のリチウム電池モジュールの左側面図である。
図14A】本発明の第4変形例のリチウム電池モジュールの左側面図である。
図14B】本発明の第4変形例のリチウム電池モジュールの平面図である。
図15】本発明の第5変形例のリチウム電池モジュールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。また、リチウム電池が収納された状態のリチウム電池モジュールを単に「リチウム電池」と略して記している。また、リチウム電池には、リチウムイオン電池とリチウムポリマー電池とが含まれる。
【0011】
(第1実施形態)
(電子機器)
図1は、本発明の第1実施形態であるリチウム電池を収容する電子機器の表面を示す平面図である。また、図2Aは、電子機器の裏面を示す斜視図であり、図2Bは、電池蓋を示す斜視図である。
【0012】
電子機器300は、筐体200(図2A)と、電池蓋210(図2B)とを備えたハンディターミナルである。筐体200は、表示部202やキーボード部203等が取り付けられており、電池収納部205が形成されている。図2Aに示すように、この電池収納部205にリチウム電池100が収納される。また、リチウム電池100を収納した状態で、電池蓋210(図2B)が取り付けられる。なお、電子機器は、ハンディターミナルに限らず、スマートフォンやタブレット等の携帯端末でも構わない。
【0013】
図3は、本発明の第1実施形態のリチウム電池の外観図である。
リチウム電池100は、直方体形状の保護ケース70と、保護ケース70の内部に収容されているセル50とを備えて構成される。保護ケース70のY-Z面が大面積面であり、X-Y面が側面である。セル50は、充放電可能な二次電池であり、扁平形状である。また、セル50には、正極5及び負極6が設けられている。
【0014】
図4A図4B図4Cは、本発明の第1実施形態であるリチウム電池の構成図である。なお、図4Aは、左側面(X-Z面)を示し、図4Bは、そのIVB断面を示し、図4Cは、Y-Z面を示す平面図である。
リチウム電池100は、セル50及び保護ケース70の他に、固定手段又は押圧部材としての2つの突起部75a,75bを備えて構成される。セル50は、外装体20と、外装体20に収容される捲回体10(図6)とを備えて構成される。外装体20は、ベースとなる本体部21と、本体部21の一部の領域に設けられた非伸縮性部材30とから構成されている。ここで、特許請求の範囲では、本体部21を第1部材と称し、非伸縮性部材30を第2部材と称している。つまり、第1部材は、外装体20のベース部分であり、第2部材は、外装体20の一部の領域に設けられたものである。
【0015】
非伸縮性部材30は、円形又は長方形の板材、例えば、プラスチック、ガラス、セラミック(陶器)等の非導電性素材である。非伸縮性部材30の伸縮性は、外装体20の本体部21の素材(例えば、ラミネートやアルミニウム)よりも低い。
【0016】
扁平面20a,20bであって、非伸縮性部材30が設けられている領域を非伸縮性領域という。つまり、非伸縮性領域は、一対の扁平面20a,20bのそれぞれに存在しており、一方の扁平面20aに設けられた非伸縮性領域(第1非伸縮性領域)は、他方の扁平面20bに設けられた非伸縮性領域(第2非伸縮性領域)と対応する位置(重なるような位置)に設けられている。このとき、突起部75aが第1固定手段であり、突起部75bが第2固定手段である。言い換えれば、外装体20の一部の領域に設けられた非伸縮性部材30,30は、突起部75a,75bと捲回体10との間に介挿されている。また、押圧部材としての突起部75a,75bは、非伸縮性部材30と保護ケース70との間で挟まれている。
【0017】
保護ケース70は、樹脂製又は金属製の直方体状のケースであり、内部にセル50を収容する。保護ケース70は、一方の側面(例えば、左側面)が開放されており、セル50が挿入可能になっている。なお、図8Aのように筐体201の外部からセル50を嵌め込み、図8Bのように、蓋の内側に押圧部材としての突起部211aを備え、電池蓋211を保護ケース70の一部としてセル50を固定するような構成にしてもよい。2つの突起部75a,75bは、対向するように保護ケース70に延在している。押圧部材としての突起部75a,75bは、図4Cで示すように、直方体形状であり、その大きさ(面積)は、非伸縮性部材30よりも小さい。なお、図12に示すように、2つの突起部は、円柱形状の突起部76で構わない。
【0018】
突起部75a,75bは、所定の厚み(高さ)で形成されている。その厚みは、両面に非伸縮性部材30,30が形成されたセル50(図2)が挿通可能な厚みである。また、非伸縮性部材30は、押圧部材としての突起部75a,75bが外装体20の本体部21に接触しない程度の厚みである。セル50が挿入された保護ケース70は、突起部75a,75bの両側に内部空間80が形成される。
【0019】
なお、非伸縮性部材は、図11の非伸縮性部材31のように、押圧部材としての突起部75a,75bよりも小さい面積で構成することも可能である。その場合、非伸縮性部材31は、押圧部材としての突起部75a,75bが外装体20の本体部21に接触しない程度の厚みを有している。
【0020】
なお、突起部75a,75bが保護ケース70と一体になっておらず、非伸縮性部材30,30と突起部75a,75bの角部75c,75d,75e,75fとが、例えば、接着剤で接着されているような構成としてもよい。その場合、セル50と突起部75a,75bとが一体となるので、リチウム電池を保護ケース70に挿入した際に、突起部75a,75bと保護ケース70とが補助的に支持されることとなる。
【0021】
図5は、セル50の斜視図であり、図6は、捲回体10の斜視図である。
セル50は、扁平形状の外装体20の内部に捲回体10(図6)を有機溶媒やポリマ等の電解液と共に封入したものである。外装体20は、捲回体10を収容した状態で封止される。外装体20は、その一対の扁平面20a,20bの中央部に非伸縮性部材30,30が形成されている。言い換えれば、非伸縮性部材30は、外装体20の両面(扁平面20a,20b)の中央領域に形成されている。外装体20の非伸縮性部材30を除いた本体部21は、ラミネート又はアルミで形成されている。ラミネートやアルミは、非伸縮性部材30を構成するプラスチック、ガラス、セラミックよりも伸縮性が高い。
【0022】
捲回体10(図6)は、正極素材1が塗布された正極タブ7と、セパレータ2と、負極素材3が塗布された負極タブ8との積層物から構成される。捲回体10は、この積層物が扁平形状に捲回されたものである。正極タブ7には、板状の正極5が溶接され、負極タブ8には、板状の負極6が溶接されている。なお、正極素材1は、例えば、コバルト酸リチウムであり、負極素材3は、例えば、カーボンやポリアセチレンである。
【0023】
図7A図7Bは、本発明の第1実施形態であるリチウム電池の外装体20が膨張した状態の構成図である。なお、図4Aは、左側面を示し、図4Bは、VIIB断面を示している。
リチウム電池100は、充放電の繰り返しにより、ガスが発生し、外装体20が膨張する。外装体20(本体部21)の膨張により、内部空間80(図4A)の容積が減少する。容積が減少した空間を内部空間81と称する。また、外装体20は、その膨張により、非伸縮性部材30,30を介して対向した突起部75a,75bの全面を押圧する。この押圧の反作用としての押圧力が外装体20の非伸縮性領域(非伸縮性部材30,30)を介して、捲回体10に伝達し、外装体20からの押圧力が捲回体10を固定する。このため、非伸縮性部材30,30と突起部75a,75bとを、角部75c,75d,75e,75f(図4B図7B)で補助的な支持を行っただけでも、突起部75a,75bの全面で固定される。また、非伸縮性部材30は、突起部75a,75bよりも接触面積が広いので、突起部75a,75bよりも広い領域で外装体20の膨張を防ぐ。これにより、捲回体10の構成部材の摺動が低減し、正極と負極との短絡を防ぐことができる。
【0024】
(第2実施形態)
図8Aは、本発明の第2実施形態の電子機器の裏面を示す斜視図であり、図8Bは、電池蓋を示す斜視図である。
電子機器301は、筐体201(図8A)と、電池蓋211(図8B)とを備えたハンディターミナルであり、リチウム電池としてのセル50(図5)が収納される。なお、電子機器301は、ハンディターミナルに限らず、スマートフォンやタブレット等の携帯端末でも構わない。また、前記第1実施形態のように、セル50の扁平面20a,20bの中央部には、非伸縮性部材30,30が形成されている。
【0025】
筐体201の電池収納部205には、固定手段としての突起部201a(押圧部材)が設けられている。電池蓋211には、固定手段としての突起部211aが設けられている。つまり、本実施形態では、電池収納部205と電池蓋211とが保護ケース70の役割を果たす。電池収納部205に電池蓋211で蓋をしたときには、突起部201aと突起部211aとが対向する。また、電池収納部205の内部にセル50を収納し、電池蓋211で蓋をしたときには、突起部211aは、セル50を押圧する。つまり、突起部201a及び突起部211aは、外装体20の一部である非伸縮性部材30,30を介して捲回体10に押圧力を加え、捲回体10を固定する。なお、前記第1実施形態と同様に、非伸縮性部材30,30の方が突起部201a及び突起部211aよりも広い。
【0026】
(第3実施形態)
前記第1,2実施形態のリチウム電池100及びセル50は、非伸縮性部材30が外装体20の一部の領域に嵌め込まれるように固定されていたが、非伸縮性部材を外装体20の外部から外装体20の一部の領域に接着させることで、外装体20と非伸縮性部材とを固定させることもできる。
【0027】
図9Aは、本発明の第3実施形態のリチウム電池モジュールの左側面図であり、図9Bは、そのIXB断面を示す図である。
リチウム電池103は、前記第1実施形態のリチウム電池100と同様に、保護ケース70と、2つの突起部75a,75bとを備えて構成されるが、セル50の代わりに、セル56を備える点で相違する。
【0028】
セル56は、外装体22と、外装体22に収容される捲回体10(図6)と、2枚の非伸縮性部材34,34とを備えて構成される。非伸縮性部材34,34は、外装体22の一対の扁平面22a,22bの一部の領域に接着されている。前記第1実施形態の外装体20(図4A)は、本体部21と非伸縮性部材30,30とから構成され、これらの組合せで捲回体10を封入していたが、本実施形態の外装体22は、単独で捲回体10を封入する。なお、特許請求の範囲では、外装体22と2枚の非伸縮性部材34,34との組合せを外装体と称し、外装体22をベースとなる第1部材と称し、非伸縮性部材34,34を第2部材と称している。つまり、第2部材は、組合せによる外装体の一部の領域に設けられている。突起部75a,75bの厚みは、外装体22及び非伸縮性部材30,30から構成されるセル56が挿通可能な厚みである。
【0029】
図10A図10Bは、本発明の第3実施形態であるリチウム電池の外装体20が膨張した状態の構成図であり、前記第1実施形態の図7A図7Bに相当する。
外装体22は、その膨張により、非伸縮性部材30,30を介して対向した突起部75a,75bの全面を押圧する。この押圧の反作用としての押圧力が外装体22の非伸縮性部材30,30を介して、捲回体10に伝達し、外装体22からの押圧力が捲回体10を固定する。
【0030】
(変形例)
前記第1実施形態のリチウム電池100は、外装体20の扁平面20a,20bに非伸縮性部材30,30が形成されており、固定手段としての突起部75a,75bが保護ケース70の内面に設けられていた。本発明は、例えば以下のような変形が可能である。なお、各変形例は、第1実施形態の変形例であるが、第3実施形態にも適用可能である。
(1)図11(左側面図)のリチウム電池101は、セル51と、保護ケース71と、突起部75a,75bとを備えて構成される。セル51は、捲回体10と外装体25とを備える。外装体25の中央部には、非伸縮性部材31,31が形成されている。非伸縮性部材31,31は、そのZ方向の長さL3が突起部75a,75bの長さL2よりも短く、且つX方向の厚さが厚く構成されている。
【0031】
(2)図12(平面図)のリチウム電池102は、保護ケース70と、2枚の非伸縮性部材32,32が外装体22に形成されたセル52とを備えて構成される。保護ケース70は、円柱状の突起部76,76が対向するように形成されている。非伸縮性部材32,32は、円形状の板材であり、突起部76,76よりも面積が広い。
【0032】
(3)図13のリチウム電池104は、保護ケース72と、捲回体10及び外装体23を備えたセル53とを備えて構成される。保護ケース72は、一方の内面72aに突起部75gが延在している。外装体23は、一部の領域に1枚の非伸縮性部材30が形成されている。保護ケース72の内面72bと外装体23の本体部21とは、接触しており、内面72bと接触する部分の外装体23には、非伸縮性部材30が介挿されない。突起部75gは、外装体23(非伸縮性部材30)からの押圧力で捲回体10を固定する固定手段として機能する。
【0033】
(4)図14A図14Bのリチウム電池105は、セル54と、保護ケース73とを備えて構成される。ここで、図14Aは、左側面図であり、図14Bは、平面図である。セル54は、捲回体10と、外装体23とから構成される。外装体23は、2枚の非伸縮性部材32,32が本体部21に形成されている。つまり、外装体23は、非伸縮性部材30の多くが内面まで食い込んでいる。保護ケース73は、前記第1実施形態の保護ケース70(図4A)と比較して、突起部75a,75bの代わりに、突起部75k,75lが対向するように延在したものである。突起部75k,75lは、突起部75a,75b(図4A)よりもZ方向に長く、長さがセル54の幅Wに近い。突起部75k,75lは、外装体23の扁平面の中央部に対向して設けられている。非伸縮性部材32,32は、セル54の外装体23に設けられており、突起部75k,75lよりも表面積が広い。非伸縮性部材32,32は、外装体23の扁平面の中央部に固定されている。
【0034】
リチウム電池105によれば、突起部75k,75l及び非伸縮性部材31,31が非伸縮性部材30よりも幅Wの方向に長いので、前記第1実施形態のリチウム電池100(図4A図4B)よりも位置ズレが少ない。これにより、捲回体10の部材の摺動が少なくなり、正極と負極との短絡を防ぐことができる。
【0035】
(5)図15(平面図)は、本発明のリチウム電池モジュールの第5変形例であり、当該リチウム電池モジュール上から見た場合の平面図である。なお、左側面図は、図4Aと同様である。図15のリチウム電池106は、セル55と、突起部75m,75nが形成された保護ケース74とを備えて構成される。セル55は、捲回体10と、外装体24とから構成される。外装体24は、2枚の非伸縮性部材33,33が本体部21と一体となって形成されたものである。非伸縮性部材33,33は、そのy方向の長さが突起部75m,75nの長さL4よりも長く構成されている。
【0036】
また、図15のリチウム電池モジュールにおける非伸縮性部材33,33及び突起部75m,75nは、z方向の長さよりもy方向の長さの方が長く形成されている。これにより、リチウム電池モジュール全体もz方向の長さよりもy方向の長さの方が長く形成されていることから、外装体24が膨張した際に、非伸縮性部材33,33を通して外装体24からの押圧力を効率的に捲回体に伝えることができ、捲回体のズレをより防ぎ易くなる。
【0037】
以上説明したように、前記各実施形態に係るリチウム電池100は、セル50と、セル50を収容する保護ケース70と、突起部75a,75bとを有している。セル50は、捲回体10と、捲回体10を収納する外装体20とを有している。捲回体10は、正極タブ7と負極タブ8とがセパレータ2を介して捲回されたものである。外装体20は、部分的に非伸縮性部材30で形成されることにより非伸縮性領域が設けられている。ここで、非伸縮性部材30は、外装体20の一部として構成されている。突起部75a,75bは、外装体20が膨張するときに発生する圧力の反作用としての保護ケース70からの押圧力を、非伸縮性領域を介して捲回体10に伝達することにより、外装体20からの押圧力で捲回体10を固定するものである。
【0038】
これにより、セル50の外装体20が突起部75a,75bに支持されていることで、充放電の繰り返しによって外装体20が膨張しても、保護ケース70からの押圧力で捲回体10を固定することができる。
【0039】
また、上記の実施形態では、「リチウム電池モジュール」のことを単に「リチウム電池」と略して記す場合もあったが、ここでいう「リチウム電池」とは、捲回体と、外装体(本体部及び非伸縮性部材)と、を備えたものであり、「リチウム電池モジュール」とは、捲回体と、外装体(本体部及び非伸縮性部材)と、保護ケースと、固定手段としての押圧部材(突起部)と、を備えたものである。
【0040】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
正極と負極とがセパレータを介して捲回された捲回体と、
前記捲回体が封入された外装体と、
を備え、
前記外装体は、ベースとなる第1部材と、一部の領域に設けられた第2部材とで構成され、
前記第2部材は、前記第1部材よりも伸縮性の低い部材である
ことを特徴とするリチウム電池。
<請求項2>
正極と負極とがセパレータを介して捲回された捲回体と、
前記捲回体が封入された外装体と、
前記外装体が収納された保護ケースと、
前記外装体と前記保護ケースとの間に設けられた押圧部材と、
を備え、
前記外装体は、ベースとなる第1部材と、一部の領域に設けられた第2部材とで構成され、
前記第2部材は、前記第1部材よりも伸縮性の低い部材であり、
前記押圧部材は、前記保護ケースからの押圧力を、前記第2部材を介して前記捲回体に伝達することにより、前記外装体からの押圧力で前記捲回体を固定する、
ことを特徴とするリチウム電池モジュール。
<請求項3>
前記第2部材は、前記外装体の一部の領域に嵌め込まれるように設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項4>
前記第2部材は、前記外装体の外部から当該外装体の一部の領域に接着されて設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項5>
前記押圧部材は、前記外装体が膨張する際に発生する前記押圧力を、前記非伸縮性部材を介して前記捲回体に伝達する、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項6>
前記外装体は、一対の扁平面を有した扁平形状に形成されており、
前記第2部材は、前記一対の扁平面のそれぞれに設けられているとともに、一方の扁平面に設けられた前記第2部材が他方の扁平面に設けられた前記第2部材と重なるように設けられており、
前記押圧部材は、前記一方の扁平面に設けられた第2部材に対応した第1押圧部材と、前記他方の扁平面に設けられた第2部材に対応した第2押圧部材と、で構成されている、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項7>
前記押圧部材は、当該押圧部材が前記保護ケースと前記第2部材との間で挟まれた際に、前記保護ケースと前記外装体との間で且つ前記押圧部材の両側に空間が生じるように配置される、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項6の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項8>
前記押圧部材は、前記第2部材と接する領域の面積が前記第2部材が設けられた領域の面積より小さく形成されている、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項7の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項9>
前記押圧部材が前記保護ケースと前記非伸縮性部材との間で挟まれた際に、前記第2部材は、前記押圧部材が前記外装体における前記第1部材の領域に接触しない程度の厚みを有している、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項8のいずれか一項に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項10>
前記第2部材及び前記押圧部材は、円柱状である、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか一項に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項11>
前記第2部材は、前記外装体における扁平面の中央部に設けられている、
ことを特徴とする請求項6に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項12>
前記第2部材は、樹脂、ガラス又はセラミックの板材である、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項11の何れか一項に記載のリチウム電池モジュール。
<請求項13>
請求項1に記載のリチウム電池を収納する筐体を備えることを特徴とする電子機器。
<請求項14>
請求項2乃至請求項12のいずれか一項に記載のリチウム電池モジュールを搭載可能な筐体を備えることを特徴とする電子機器。
<請求項15>
正極と負極とがセパレータを介して捲回された捲回体と、該捲回体を封入するとともに、第1部材と当該第1部材よりも伸縮性の低い第2部材とを有する外装体と、で構成されたリチウム電池を収納する筐体を備え、
前記筐体からの押圧力を、前記第2部材を介して前記捲回体に伝達することにより、前記捲回体と前記筐体との相対的位置を固定する、
ことを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0041】
2 セパレータ
7 正極タブ(正極)
8 負極タブ(負極)
10 捲回体
20,21,23 外装体
22 外装体(第1部材)
20a,20b,50g 扁平面
30,31,32 非伸縮性部材(第2部材)
34 非伸縮性部材(第2部材、外装体)
50,51,52,53,54 セル(リチウム電池)
70,71,72,73 保護ケース
75a,75b,75g,75h,75i,75j,75k,75l 突起部(押圧部材、固定手段)
100,101,102,103,104,105 リチウム電池
200,201 筐体
300,301 電子機器
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15