(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】測定器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
A61B5/00 N
(21)【出願番号】P 2020571208
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004069
(87)【国際公開番号】W WO2020162440
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2019017731
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】志牟田 亨
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 純
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/041585(WO,A1)
【文献】特開2018-186880(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/01
A61B 5/02 - 5/03
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/24 - 5/398
A61B 9/00 - 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向にセンサ部と把持部とが設けられ、前記センサ部の前記把持部とは反対側の端部にセンサが設けられ、当該センサの測定面が前記センサ部から露出する本体を備え、
前記本体における前記測定面が露出する側とは反対側には、前記センサを覆うカバー
を固定するための固定部が設けられており、
前記測定面を含む面を基準面とし、前記基準面に沿う方向であって前記長手方向に直交する方向から視て、前記固定部と前記本体とに接する接線を引いたときに、前記基準面と前記接線とが成す角度は50度以下である、
測定器。
【請求項2】
前記本体において前記接線が接する部分は、前記基準面に沿う方向であって前記長手方向に直交する方向に延びる直線状である、請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記センサ部において、前記測定面と、前記測定面と反対側の面は互いに平行である、請求項1又は請求項2に記載の測定器。
【請求項4】
前記固定部を前記センサ部の先端とは反対方向に付勢する付勢部材を備えた、請求項3に記載の測定器。
【請求項5】
前記センサ部の先端側の角部は円弧状である、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の測定器。
【請求項6】
前記基準面に沿う方向であって前記長手方向に直交する方向から視て、前記把持部において、前記把持部の長手方向の軸と前記把持部の上面と前記把持部の下面とのうちの少なくとも1つは、前記センサの前記測定面と平行である、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の測定器。
【請求項7】
前記把持部の上面には測定結果を表示する表示部が設けられている、請求項1~請求項6の何れか一項に記載の測定器。
【請求項8】
前記把持部には凹部が設けられている、請求項1~請求項7の何れか一項に記載の測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測定者が手で保持して対象物を測定する測定器として例えば口腔内水分測定器がある(例えば、特許文献1参照)。この口腔内水分測定器は、静電容量式のセンサを有し、対象物の被測定面にセンサを押し当て、対象物(口腔内)の水分量を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようにセンサの測定面を覆うカバーの厚さは、測定感度に影響するため、薄いカバーが用いられる。しかしながら、厚さの薄いカバーは、そのカバーの装着状態によっては、センサの測定面においてカバーに皺が発生する場合がある。このような皺の発生は、口腔内水分測定器の測定結果に影響する。
【0005】
本開示の目的は、皺の発生を抑制可能とした測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である測定器は、長手方向にセンサ部と把持部とが設けられ、前記センサ部の前記把持部とは反対側の端部にセンサが設けられ、当該センサの測定面が前記センサ部から露出する本体を備え、前記本体における前記測定面が露出する側とは反対側には、前記センサを覆うカバーを引っ掛けて固定するための固定部が設けられており、前記測定面を含む面を基準面とし、前記基準面に沿う方向であって前記長手方向に直交する方向から視て、前記固定部と前記本体とに接する接線を引いたときに、前記基準面と前記接線とが成す角度は50度以下である。
【0007】
この構成によれば、センサを覆うカバーの皺の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、皺の発生を抑制可能とした測定器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は測定器の平面図、(b)は測定器の側面図。
【
図3】(a)は支持部材及び固定部を示す平面図、(b)は支持部及び固定部を示す側面図。
【
図4】(a)は変更例の支持部材及び固定部を示す平面図、(b)は変更例の支持部及び固定部を示す側面図。
【
図9】変更例のセンサ部とカバーを示す部分拡大図。
【
図10】(a)は変更例の測定器の平面図、(b)は変更例の測定器の側面図。
【
図11】(a)は変更例の測定器の平面図、(b)は変更例の測定器の側面図。
【
図12】(a)は変更例の測定器の平面図、(b)は変更例の測定器の側面図。
【
図13】(a)は変更例の測定器の平面図、(b)は変更例の測定器の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を説明する。
【0011】
図1(a)、
図1(b)に示すように、測定器1は、測定対象として例えば口腔内の水分量を測定する口腔内水分測定器である。この測定器1は、本体10と、本体10に取り付けられるカバー60とを有している。
【0012】
本体10は、本体10の長手方向の一端部領域の把持部11と、本体10の長手方向の他端部領域のセンサ部12とを有している。
【0013】
把持部11は、概略直方体状に形成され、上面11a、下面11b、側面11c,11dを有している。把持部11の上面11aには、表示部21と固定部22とが設けられている。把持部11の下面11bには、凹部23aが設けられ、側面11c,11dには凹部23b,23cが設けられている。各凹部23a~23cは、測定器1を測定者が把持する場合に測定者の指がかかるように形成されている。凹部23a~23cにより、把持部11を安定して把持することができる。
【0014】
本実施形態において、センサ部12は、把持部11とは反対側に延びている。センサ部12は、先端の測定部31と、その測定部31を把持部11に接続する連結部32とを備えている。
【0015】
図1(a)に示すように、測定部31は、概略正方形の板状である。センサ部12の先端となる測定部31の上端の辺31cは、直線状である。辺31cは、例えば、センサ部12と把持部11を結ぶ直線に対して略直交する方向に延びる直線である。なお、辺31cを、連結部32の側面の延長方向に対して略直交する方向に延びる直線状としてもよい。また、測定部31を、第1面31aと直交する方向から視て、長方形状や台形状とすることもできる。本実施形態において、測定部31は、角部が円弧状である。
【0016】
図2に示すように、測定部31にはセンサ40が設けられている。このセンサ40は、平板状である。センサ40は、平面状の測定面40aを有している。センサ40は、例えば静電容量式のセンサである。センサ40の測定面40aには、一対の電極41a,41bが設けられている。一対の電極41a,41bは、例えば櫛歯状に形成されている。
【0017】
一対の電極41a,41bは、コンデンサの電極として機能する。つまり、測定面40aと対向する測定対象及びその表面の液体は、一対の電極41a,41bに対する誘電体として機能する。一対の電極41a,41bの容量値は、測定対象及びその表面の水分量に応じた値となる。
【0018】
測定器1は、発振回路、制御回路、等の構成部材が搭載された図示しない回路基板を含む。発振回路は、センサの容量値に応じた周波数の信号を出力する。制御回路は、発振回路の出力信号のパルス数により、測定対象の水分量を検出する。そして、制御回路は、検出した水分量を表示部21に表示する。
【0019】
図1(b)に示すように、測定部31は、センサ40の測定面40aと反対側を向く第2面31bを有している。第2面31bと測定部31の第1面31a及び測定面40aは、互いに平行である。連結部32は、概略長方形の板状である。センサ部12は、測定部31と連結部32とが所定の角度をなすように屈曲している。
【0020】
上述したように、把持部11は、概略直方体状であり、上面11a,下面11b、側面11c,11dを有している。把持部11の長手方向の軸O1、上面11a、下面11bのうちの少なくとも1つは、測定部31の第1面31a、つまりセンサ40の測定面40aと平行である。
【0021】
カバー60は、カバー部材70と、支持部材80とを備えている。本実施形態において、カバー部材70は、長方形の袋状である。カバー部材70は、透明もしくは半透明であることが好ましい。カバー60は、カバー部材70がセンサ部12の先端の測定部31を覆うように取着される。
【0022】
本実施形態のカバー部材70は、第1シート材71と、第1シート材71の端部に接続された第2シート材72とを有して袋状に形成された、マチ無し平袋である。第1シート材71と第2シート材72は、例えば溶着により互いに接続されている。カバー部材70において、第1シート材71と第2シート材72とが接続されていない端部を開口端70aとし、開口端の反対側の端部である先端を口内挿入端70bとする。なお、カバー部材70は、例えば1枚のシート材を2つ折りにして袋状に接続して形成されてもよい。また、カバー部材70は、接着や両面テープによる接着等により形成されてもよい。
【0023】
カバー部材70の材料としては、例えば疎水性を有する樹脂を用いることができる。樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂を用いることができる。このような樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、等を用いることができる。
【0024】
カバー部材70の厚さは、センサ40により測定可能とし、その測定を妨げないよう設定される。カバー部材70の厚さは、例えば5μm以上30μm以下とすることができ、5μm以上15μm以下であることが好ましい。なお、カバー部材70の厚さは、カバー部材70の材料に応じて適宜変更が可能である。カバー部材70の厚さが30μmより大きい場合、センサ40の感度低下が顕著となる。
【0025】
支持部材80は、図示しない接続部材によりカバー部材70に接続されている。接続部材としては、例えば、アクリル系やシリコン系の粘着剤や接着剤、両面テープ、等を用いることができる。接続部材は、透明もしくは半透明であることが好ましい。
【0026】
本実施形態の支持部材80は、長方形の板状である。支持部材80の幅は、測定部31の幅よりも大きい。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、支持部材80は、カバー部材70の口内挿入端70bから開口端70aまで延びている。更に、支持部材80は、カバー部材70よりも長く、カバー部材70の開口端70aよりも突出している。支持部材80は、カバー部材70より突出した部分に、支持部材80を厚さ方向に貫通する貫通孔80aが形成されている。この貫通孔80aは、カバー部材70を本体10に固定するために用いられ、係合部として機能する。つまり、貫通孔80aは、カバー60を把持部11に固定するために利用される。支持部材80は、透明もしくは半透明であることが好ましい。
【0027】
支持部材80は、高剛性部材である。支持部材80としては、曲げ弾性率、曲げ強度がカバー部材70よりも高い材料を用いることができる。この支持部材80の材料としては、例えば、PET、ABS、ポリカーボネート、アクリル、PP、等の樹脂を用いることができる。
【0028】
支持部材80の厚さは、例えば、50μm以上300μm以下とすることができる。なお、支持部材80は、その材料に応じて厚さを設定することもできる。例えば、支持部材80の材料がカバー部材70の材料と同じである場合、カバー部材70の厚さの2倍以上20倍以下であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。なお、カバー部材70の厚さとしては、カバー部材70の最も厚い部分の厚さを用いること、カバー部材70の最も薄い部分の厚さを用いることができる。また、カバー部材70の厚さとして、カバー部材70の最も厚い部分の厚さとカバー部材70の最も薄い部分の厚さとの平均値を用いることもできる。
【0029】
図1(a)、
図1(b)、
図3(a)、
図3(b)に示すように、カバー60は、固定部22を支持部材80の貫通孔80aを挿通することに、把持部11に装着される。そして、支持部材80を固定部22から外すことにより、カバー60が本体10から取り外される。つまり、固定部22と、支持部材80の貫通孔80aとにより、カバー60が把持部11に対して着脱可能となる。
【0030】
図1(b)に示すように、本実施形態において、測定部31の測定面40aを含む面を基準面SCとする。そして、基準面SCに沿う方向であって、本体10の長手方向に直交する方向から視て、固定部22と、本体10のうち測定部31の辺31cとに接する接線Laを引く。ここで、本実施形態においては、上述したとおり、固定部22は、把持部11の上面11aに設けられている。すなわち、固定部22は、本体10における測定面40aが露出する側とは反対側に配置されている。そのため、接線Laは、本体10における把持部11の上面11a側に引かれることになる。そして、この場合に、基準面SCと接線Laとが成す角度θ1は50度以下である。
【0031】
(作用)
測定器1は、本体10と、本体10に取り付けられるカバー60とを有している。本体10は、本体10の長手方向の一端部領域の把持部11と、本体10の長手方向他端部領域のセンサ部12とを備えている。センサ部12は、先端の測定部31と、測定部31を把持部11に接続する連結部32とを備えている。測定部31にはセンサ40が設けられている。センサ部12は、測定部31と連結部32との間で屈曲した形状である。基準面SCに沿う方向であって、本体10の長手方向に直交する方向から視たときに、基準面SCと接線Laとが成す角度θ1は50度以下である。センサ部12の測定部31は、本体10に取り付けられるカバー60により覆われる。このとき、カバー60を固定部22に引っ掛けると、基準面SCに沿う方向であって、本体10の長手方向に直交する方向から視たときに、カバー60のうち固定部22から測定部31の辺31cまでに亘った部分は、接線Laと同一か、基準面SCとの角度が僅かに小さくなる。そのため、角度θ1は、カバー60のうち固定部22から測定部31の辺31cまでに亘った部分が基準面SCに対して最大限傾いた際の角度とみなせる。
【0032】
ここで、評価試験において、基準面SCと接線Laとが成す角度θ1が0度、10度、…、90度と、10度ずつ異なる本体を用意した。そして、カバー60を各本体に取り付けた際に、測定部31の第1面31aに対向する箇所に皺が発生するかしないかを目視によって判定した。その結果、角度θ1が0度~50度の本体においては、目視によって皺が確認できなかった一方で、角度θ1が60度~90度の本体においては、目視によって皺が確認できた。
【0033】
本実施形態の本体10においては、基準面SCと接線Laとが成す角度θ1は50度以下であるため、本実施形態の平袋であるカバー部材70が測定部31に設けられたセンサ40の測定面40aの全体に対して密着し易い。従って、センサ40の測定面40aにおいてカバー60、つまりカバー部材70における皺の発生が抑制される。
【0034】
基準面SCと接線Laとが成す角度θ1が50度より大きいと、平袋であるカバー部材70が測定面40aの全体に密着し難い。このため、センサ40の測定面40aを覆う部分において、カバー部材70に皺がよりやすい。
【0035】
センサ部12において、測定部31は、概略正方形の板状である。測定部31には、第1面31aに露出するようにセンサ40が設けられている。測定部31において、第1面31a及びセンサ40の測定面40aと反対側を向く第2面31bは、センサ40の測定面40aと平行である。このため、測定部31の第2面31bが測定対象物の被測定面に対して平行となるようにセンサ部12を測定対象物に押し当てる。これにより、測定対象物の被測定面に対して、測定部31の第1面31aつまりセンサ40の測定面40aの全体が、被測定面に密着する。このように、測定部31の第2面31bにより、センサ40の測定面40aの状態を確認して測定することができるため、測定値のばらつきを低減できる。
【0036】
把持部11の長手方向の軸O1、上面11a、下面11bのうちの少なくとも1つは、測定部31の第1面31a、つまりセンサ40の測定面40aと平行である。このため、把持部11を視ることで、測定部31の第1面31aが測定対象物の被測定面に対して平行となるようにセンサ部12を測定対象物に押し当てることができる。したがって、測定部31を口腔内に挿入してその測定部31の第2面31bを目視できない場合であっても、測定部31の第1面31a、つまりセンサ40の測定面40aの向きを容易に判定して測定対象物の被測定面に押し当てることができる。
【0037】
把持部11の上面11aには、測定結果を表示する表示部21が設けられている。このため、把持部11により測定対象物に対する接触状態を把握しながら測定値を確認できる。
【0038】
測定部31の辺31cは直線状である。この辺31cには、カバー60の第2シート材72が当接する。第2シート材72には支持部材80が接合され、この支持部材80は第1シート材71及び第2シート材72よりも高剛性材である。このため、支持部材80によって、概略長方形のカバー部材70を測定部31に装着する場合に、測定部31を覆うカバー部材70に対して略均一に引っ張りの力が加わるため、カバー部材70を立体形状とすることなく、センサ40の測定面40aにおける皺の発生を抑制できる。
【0039】
把持部11には、センサ40が設けられた測定部31の第1面31aとは反対側の上面11aに固定部22が設けられている。このため、本体10に対してカバー60を容易に装着できる。例えば、固定部22が把持部11の下面11bに設けられると、その下面11bを上に向けて固定部22にカバー60の支持部材80を固定する必要があり、手間が掛る。
【0040】
カバー60を固定する固定部22は、把持部11の上面11aに設けられ、この把持部11の上面は、センサ部12の測定部31に設けられたセンサ40の測定面40aと反対方向を向いている。したがって、固定部22により固定された支持部材80は、センサ40の測定面40aとは反対側に向かってカバー部材70を引っ張る。このため、カバー部材70をセンサ40の測定面40aに対して密着できる。
【0041】
本実施形態において、カバー60は、本体10の把持部11に対して着脱可能、つまり取り付け、取り外しが可能である。
【0042】
カバー部材70によりセンサ40の測定面40aを覆うようにカバー60を本体10に取り付けた場合、支持部材80は、測定部31において、センサ40の測定面40aとは反対側の第2面31b側に配置される。支持部材80は、カバー部材70より高剛性である。このため、支持部材80は、カバー部材70を測定部31の第2面31bの側に引っ張る。この支持部材80の引張力は、四角形状の測定部31を覆うカバー部材70に対して、測定部31の4つの辺を覆う部分に略均等に働き、カバー部材70をセンサ40の測定面40aに密着させる。このとき、
図2に示すように、カバー部材70には、四角形状の測定部31の各角部より外側の部分に皺70zが発生する。このように、カバー部材70をセンサ40の測定面40aに密着させることにより、センサ40の測定面40aに対して、カバー部材70における皺の発生が抑制される。
【0043】
本実施形態のカバー部材70では、袋形状としては、マチ無し平袋である。マチ無し平袋は、支持部材80による張力を与えやすい。また、マチ無し平袋は、樹脂シートを接合するのみで形成できるため、容易に製造することができる。なお、マチのある袋形状としてもよい。
【0044】
測定によってカバー部材70には唾液が付着し、薄いカバー部材70のみでは測定部31から外し難い、本実施形態では、支持部材80は、カバー部材70の口内挿入端70bから開口端70aまで延びている。従って、測定後において、高剛性の支持部材80によってカバー部材70が測定部31から離れやすく、カバー部材70を容易に外すことができる。
【0045】
支持部材80には、貫通孔80aが形成され、その貫通孔80aを固定部22と係合させることにより、カバー60を本体10に対して容易に取着できる。また、支持部材80の貫通孔80aを固定部22から外すことで、カバー60を本体10から容易に取り外すことができる。
【0046】
また、高剛性の支持部材80に固定のための貫通孔80aを形成することにより、カバー60を取着するときに支持部材80が延びないので、カバー部材70を引っ張って測定部31に取着することができる。
【0047】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
【0048】
(1)測定器1は、本体10と、本体10に取り付けられるカバー60とを有している。本体10は、本体10の長手方向の一端部領域の把持部11と、本体10の長手方向他端部領域のセンサ部12とを備えている。センサ部12は、先端の測定部31と、測定部31を把持部11に接続する連結部32とを備えている。測定部31にはセンサ40が設けられている。基準面SCに沿う方向であって、本体10の長手方向に直交する方向から視たときに、基準面SCと接線Laとが成す角度θ1は50度以下である。センサ部12の測定部31は、本体10に取り付けられるカバー60により覆われる。
【0049】
カバー60に対して、基準面SCと接線Laとが成す角度θ1が50度以下であるため、本実施形態の平袋であるカバー部材70が測定部31に設けられたセンサ40の測定面40aの全体に対して密着し易い。従って、センサ40の測定面40aにおいてカバー60、つまりカバー部材70における皺の発生を抑制できる。
【0050】
(2)センサ部12において、測定部31は、概略正方形の板状である。測定部31には、第1面31aに露出するようにセンサ40が設けられている。測定部31において、センサ40の測定面40aと反対側を向く第2面31bは、センサ40の測定面40aと平行である。このため、測定部31の第2面31bが測定対象物の被測定面に対して平行となるようにセンサ部12を測定対象物に押し当てる。これにより、測定対象物の被測定面に対して、測定部31の第1面31aつまりセンサ40の測定面40aの全体が、被測定面に密着する。このように、測定部31の第2面31bにより、センサ40の測定面40aの状態を確認して測定することができるため、測定値のばらつきを低減できる。
【0051】
(3)把持部11には、センサ40が設けられた測定部31の第1面31aとは反対側の上面11aに固定部22が設けられている。このため、本体10に対してカバー60を容易に装着できる。
【0052】
(4)カバー60を固定する固定部22は、把持部11の上面11aに設けられ、この把持部11の上面は、センサ部12の測定部31に設けられたセンサ40の測定面40aと反対方向を向いている。したがって、固定部22により固定された支持部材80は、センサ40の測定面40aとは反対側に向かってカバー部材70を引っ張る。このため、カバー部材70をセンサ40の測定面40aに対して密着できる。
【0053】
(5)測定器1は、本体10と、本体10に取り付けられるカバー60とを有している。本体10は、先端にセンサ40の測定面40aを有するセンサ部12と、センサ部12が接続された把持部11とを有する。カバー60は、樹脂よりなりセンサ40の測定面を覆うカバー部材70と、少なくともセンサ部12に対して測定面40aとは反対側に配置され、カバー部材70と接合された支持部材80と、を有し、支持部材80は、カバー部材70の厚さよりも厚い。
【0054】
カバー60において、支持部材80によって、カバー部材70が測定面40aとは反対側に引っ張られ、カバー部材70が測定面40aに対して当接するため、その測定面40aにおいてカバー部材70に皺の発生を抑制できる。
【0055】
(6)支持部材80は、カバー部材70の口内挿入端70bから開口端70aまで延びている。従って、測定後において唾液が付着するカバー部材70が、高剛性の支持部材80によって測定部31から離れやすく、カバー部材70を容易に外すことができる。
【0056】
(7)高剛性の支持部材80に固定のための貫通孔80aを形成することにより、カバー60を取着するときに支持部材80が延びないので、カバー部材70を引っ張って測定部31に取着することができる。
【0057】
(8)センサ部12の先端となる測定部31の上端の辺31cは、直線状であり、測定部31は、角部が円弧状である。円弧状の角部では皺が発生し難いため、測定面40aにおける皺の発生を抑制できる。
【0058】
<変更例>
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、カバー60の支持部材80に貫通孔80aを形成し、その貫通孔80aに固定部22を挿入し、支持部材80と固定部22との係合によりカバー60を把持部11に固定した。これに対し、支持部材80と固定部22との係合構造を適宜変更してもよい。少なくとも、カバー60を固定部22に引っ掛けて固定できればよい。
【0060】
図4(a)に示すように、支持部材100に、係合部として機能するスリット101a,101bを形成し、そのスリット101a,101bに対して、把持部11に設けられた固定部111a,111bを係合させる。この固定部111a,111bは、把持部11からセンサ部12の先端に向かう方向に対して直交する方向にそれぞれ延びている。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、固定部111a,111bの上端には、センサ部12の先端と反対方向に突出する係止部111c,111dが形成されている。この係止部111c,111dにより支持部材80が固定部22から抜けるのを防止する。なお、このような形状の係止部111c,111dを、上記実施形態の固定部22に設けても良い。
【0061】
図5に示す測定器1では、付勢部材23により固定部22がセンサ部12の先端方向とは逆方向に付勢されている。付勢部材23としては、例えば、板ばね、コイルバネ、ゴム、等を用いることができる。この固定部22は、把持部11にて本体10の長手方向に沿って移動可能に支持されている。
図5に二点鎖線にて示す位置に固定部22を移動させ、その固定部22をカバー60の支持部材80の貫通孔80aに挿入する。固定部22が付勢部材23により支持部材80を介してカバー部材70をセンサ部12の先端とは反対方向に引っ張ることで、カバー部材70を安定してセンサ部12の測定部31に設けられたセンサ40の測定面40aに対して密着できる。このように固定部22が移動可能である場合には、基準面SCと接線Laとが成す角度θ1が最大となる固定部22の位置、すなわち、
図5に示す例では、固定部22が最もセンサ部12の先端側に位置するときの接線Laを基に、角度θ1を定める。
【0062】
図6に示すように、クリップ24を用いて把持部11にカバー60の支持部材80を固定してもよい。このクリップ24は、バネ25により固定部としての係止部24aが把持部11に向かって付勢されている。クリップ24の操作部24bを操作することにより、支持部材80の固定、取り外しが容易である。
【0063】
図7に示すように、クリップ26の係止部26aをテーパ状としてもよい。このようにすると、クリップ26の操作部26bを操作することなく、支持部材80を係止部26aと把持部11との間に差し込むことで、そのカバー60を容易に固定できる。
【0064】
・上記実施形態に対し、カバー部材70の形状を適宜変更してもよい。例えば、口内挿入端70bから開口端70aに向かうにつれて幅が広くなる形状、例えばカバー部材70を台形状としてもよい。口内挿入端70bがセンサ部12の測定部31より大きくなると、支持部材80の引っ張りによってもカバー部材70がセンサ40の測定面40aに対して密着し難く、皺がより易い。従って、この変更例では、口内挿入端70bがセンサ部12の測定部31より大きくなりすぎないので、皺の発生を抑制できる。また、口内挿入端70bがセンサ部12の測定部31より大きくなりすぎないので、口腔内に挿入し易くなる。また、口内挿入端70bよりも開口端70aを幅広とすることで、カバー部材70の中にセンサ部12が挿入し易くなる。
【0065】
・
図1(a)及び
図1(b)に示す固定部22の位置は、本体10において、基準面SCに沿う方向であって、本体10の長手方向に直交する方向から視て、把持部11の長手方向の軸O1よりも、測定面40aが露出する側とは反対側すなわち上面11a側であればよい。例えば、固定部22は、上面11aと側面11cとの角部に設けられていてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、把持部11に固定部22を設けたが、連結部32に設けてもよい。
【0067】
・上記実施形態に対し、
図1(a)及び
図1(b)に示す支持部材80と第1シート材71とを接合して袋形状としたカバーとしてもよい。また、支持部材80と第2シート材72とを接合して袋形状としたカバーとしてもよい。
【0068】
・上記実施形態に対し、
図1(a)及び
図1(b)に示す支持部材80を複数の樹脂シートを積層して形成してもよい。また、第1シート材71と第2シート材72の少なくとも一方を、複数の樹脂シートを積層して形成してもよい。
【0069】
・上記実施形態に対して、各部材の形状を適宜変更してもよい。
【0070】
図8及び
図9に示す測定器1aにおいて、センサ部12は、測定部31が長い長方形状である。このような測定部31の測定器1
aは、先端のセンサ40を口腔内に挿入し易い。このセンサ部12についても、上記実施形態と同様のカバー60を用いることで、測定部31に設けられたセンサ40の測定面40aに対してカバー部材70における皺の発生を抑制できる。
【0071】
・上記実施形態に対し、測定器の形状を適宜変更してもよい。例えば、上記実施形態では、センサ部12が測定部31と連結部32とで構成されていたが、センサ部12が、複数の部分に明確に別れていないこともありえる。
【0072】
例えば、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、測定器200は、長手方向(
図10(a)において左右方向)にセンサ部12と把持部11とを有している。把持部11は、長手方向に延びる柱状である。把持部11の形状は、長手方向と直交する断面における形状が例えば四角形等の多角形、円形、楕円形、又はこれらの形状を組み合わせた形状、角部が円弧状に丸められた形状、等とすることができる。
図10(b)に示すように、把持部11は、センサ部12の側に向けて、上下の厚さが薄くなるように形成されている。センサ部12全体が略直線状となっており、センサ部12の延びる方向に対してセンサ40の測定面40aが所望の角度で傾いている。なお、この測定器200では、センサ部12に固定部22が設けられている。
【0073】
また、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、測定器210は、
図10(a)及び
図10(b)に示す測定器200と比べ、センサ部12が全体的に湾曲している。センサ部12は、把持部11において表示部21が設けられた上部から、先端に向かうほど下方に位置するように湾曲している。
【0074】
・さらに、センサ部12が、3つ以上の部分に分かれていることもある。
図12(a)及び
図12(b)に示すように、測定器220は、連結部32が把持部11の上部から長手方向に延びる第1の部分221と、第1の部分221の先端から下方に向かって斜めに延びる第2の部分222と、第2の部分222の先端から長手方向に延びる第3の部分223とを有し、第3の部分223の先端にセンサ40が設けられている。なお、第1の部分221と第2の部分222との接続部と、第2の部分222と第3の部分223との接続部は、湾曲している。
【0075】
・また、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、測定器230の把持部11は、長手方向に延びた楕円球状であり、センサ部12は、全体的に湾曲して先端に向かうほど下方に位置している。
【0076】
・上記実施形態は、口腔内において水分量を測定する測定器1について説明したが、口腔外において水分量を測定するようにしてもよい。
【0077】
・上記実施形態は、水分量を測定する測定器としたが、その他を測定する測定器としてもよい。例えば、pH測定器や口腔細菌測定器等の測定器としてもよい。また、血流や血中酸素を測定する測定器としてもよい。また、複数種類の測定値を測定する測定器としてもよい。その際、上記実施形態の静電容量式のセンサを測定対象に対応するセンサとすることは言うまでもない。
【0078】
・上記実施形態及び上記変更例は、適宜その一部を公知の構成で置き換えても良い。また、上記実施形態及び上記変更例は、適宜その一部又は全部を組み合わせてもよい。
【0079】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0080】
・長手方向にセンサ部と把持部とが設けられ、前記センサ部は、第1面に測定面が露出するセンサが設けられた測定部と、前記測定部を前記把持部に接続する連結部とを備えた、本体と、少なくとも前記測定部を覆うカバーと、を備え、前記連結部は、前記測定部の第1面とは反対側に向かって前記測定部から斜めに延びており、前記測定部の第1面を基準面とし、前記基準面と前記測定部の前記第1面と同じ側の前記連結部の第1面と前記基準面とが成す角度が5度以上50度以下である、測定器。
【符号の説明】
【0081】
1…測定器、10…本体、11…把持部、22…固定部、12…センサ部、31…測定部、31a…第1面、31b…第2面、31c…上端の辺、32…連結部、40…センサ、40a…測定面、60…カバー、70…カバー部材、80…支持部材、80a…貫通孔、La…接線、SC…基準面。