(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 25/00 20060101AFI20220712BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B66B25/00 B
B66B31/00 C
(21)【出願番号】P 2021056549
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小村 章
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114584(JP,A)
【文献】特開2005-112616(JP,A)
【文献】特開2011-11901(JP,A)
【文献】特開平08-169681(JP,A)
【文献】実開昭60-173581(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 25/00
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行方向が異なる第1乗客コンベアと第2乗客コンベアを併設してなり、
前記第1乗客コンベアは、利用者が乗る第1ステップと第1ハンドレールを循環移動する第1駆動手段と、前記第1乗客コンベアの第1乗り口に配置され、前記第1乗り口の利用者を検知可能な第1検知手段と、を具え、
前記第2乗客コンベアは、利用者が乗る第2ステップと第2ハンドレールを循環移動する第2駆動手段と、前記第2乗客コンベアの第2降り口に配置され、前記第2降り口の利用者を検知可能な第2検知手段と、を具え、
前記第1検知手段の検知結果に基づいて前記第1駆動手段を制御する第1制御手段と、
前記第2検知手段の検知結果に基づいて前記第2駆動手段を制御する第2制御手段と、を具える、
乗客コンベアであって、
前記第1検知手段は、前記第1乗り口内の第1領域と、前記第2降り口内の第2領域の利用者を検知可能であり、
前記第1制御手段は、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段が停止している状態で、前記第1検知手段が前記第2領域に利用者を検知したとき、前記第1駆動手段を作動させる、
乗客コンベア。
【請求項2】
前記第2検知手段は、前記第2降り口内の前記第2領域よりも前記第2ステップ側に形成された第3領域を検知可能であり、
前記第2制御手段は、前記第2駆動手段が停止している状態で、前記第3領域に利用者を検知したとき、前記第2駆動手段を作動させる、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記第1領域は、前記第1乗客コンベアの前記第1ステップが繰り出されるコムの先端から700mm~1700mmの領域であり、
前記第2領域は、前記第2乗客コンベアの前記第2ステップが引き込まれるコムの先端から1200mm~1700mmの領域である、
請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記第1領域は、前記第1乗客コンベアの前記第1ハンドレールの折り返し部から0mm~1000mmの領域であり、
前記第2領域は、前記第2乗客コンベアの前記第2ハンドレールの折り返し部から500mm~1000mmの領域である、
請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記第1制御手段は、前記第1駆動手段が停止している状態で、前記第1検知手段が、前記第1乗客コンベアの前記第1領域よりも以遠側又は前記第2乗客コンベアの以遠側の第4領域から、前記第1領域又は前記第2領域に利用者が進入したことを検知したとき、前記第1駆動手段を作動させる、
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記第4領域は、前記第1領域及び前記第2領域から以遠側の0mm~200mmである、
請求項5に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者を検知して自動発停止運転を行なうことのできる乗客コンベアに関するものであり、より詳細には、上りと下りが併設された乗客コンベアへの逆進入を防止しつつ、省エネ効果を発揮できる乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗降口に利用者を検知する検知手段を配置し、利用者がいない状態で運転を停止し、利用者を検知すると起動する所謂自動発停止運転を行なうエスカレーターや動く歩道がある。この種の乗客コンベアでは、停止時にステップ等が停止しているから、利用者は乗客コンベアの走行方向(上り、下り)を判別することができない。このため、利用者の降車側の乗客コンベアへの逆進入を防止する必要がある。
【0003】
特許文献1では、降車口にセンサーを設置し、利用者の逆進入を検知すると、乗客コンベアを順方向に作動させ、利用者に逆進入であることを気付かせ、乗客コンベアに乗り込ませないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この場合、乗客が乗車しない降車側の乗客コンベアを作動させることになるから、電力消費に繋がり、省エネ効果が期待できない。
【0006】
本発明は、省エネを図りつつ、利用者に逆進入であることを気付かせることのできる乗客コンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の乗客コンベアは、
走行方向が異なる第1乗客コンベアと第2乗客コンベアを併設してなり、
前記第1乗客コンベアは、利用者が乗る第1ステップと第1ハンドレールを循環移動する第1駆動手段と、前記第1乗客コンベアの第1乗り口に配置され、前記第1乗り口の利用者を検知可能な第1検知手段と、を具え、
前記第2乗客コンベアは、利用者が乗る第2ステップと第2ハンドレールを循環移動する第2駆動手段と、前記第2乗客コンベアの第2降り口に配置され、前記第2降り口の利用者を検知可能な第2検知手段と、を具え、
前記第1検知手段の検知結果に基づいて前記第1駆動手段を制御する第1制御手段と、
前記第2検知手段の検知結果に基づいて前記第2駆動手段を制御する第2制御手段と、を具える、
乗客コンベアであって、
前記第1検知手段は、前記第1乗り口内の第1領域と、前記第2降り口内の第2領域の利用者を検知可能であり、
前記第1制御手段は、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段が停止している状態で、前記第1検知手段が前記第2領域に利用者を検知したとき、前記第1駆動手段を作動させる。
【0008】
前記第2検知手段は、前記第2降り口内の前記第2領域よりも前記第2ステップ側に形成された第3領域を検知可能であり、
前記第2制御手段は、前記第2駆動手段が停止している状態で、前記第3領域に利用者を検知したとき、前記第2駆動手段を作動させる構成とすることができる。
【0009】
前記第1領域は、前記第1乗客コンベアの前記第1ステップが繰り出されるコムの先端から700mm~1700mmの領域であり、
前記第2領域は、前記第2乗客コンベアの前記第2ステップが引き込まれるコムの先端から1200mm~1700mmの領域とすることができる。
【0010】
前記第1領域は、前記第1乗客コンベアの前記第1ハンドレールの折り返し部から0mm~1000mmの領域であり、
前記第2領域は、前記第2乗客コンベアの前記第2ハンドレールの折り返し部から500mm~1000mmの領域とすることができる。
【0011】
前記第1制御手段は、前記第1駆動手段が停止している状態で、前記第1検知手段が、前記第1乗客コンベアの前記第1領域よりも以遠側又は前記第2乗客コンベアの以遠側の第4領域から、前記第1領域又は前記第2領域に利用者が進入したことを検知したとき、前記第1駆動手段を作動させる構成とすることができる。
【0012】
前記第4領域は、前記第1領域及び前記第2領域から以遠側の0mm~200mmとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乗客コンベアによれば、第1乗客コンベアの第1乗り口側に配備された第1検知手段により、併設された第2乗客コンベアの第2降り口に逆進入する利用者を検知する。そして、降車側の第2乗客コンベアを作動させることなく、乗車側の第1乗客コンベアを作動させる。これにより、利用者は、併設された乗客コンベアのうち、第2乗客コンベアは停止しており、第1乗客コンベアは乗車方向に作動しているから、乗車すべき乗客コンベアが第1乗客コンベアであることを認識でき、降車側の第2乗客コンベアへの逆進入を防止できる。
【0014】
利用者の逆進入に対して、降車側の第2乗客コンベアを作動させないことで、第2乗客コンベアを無駄に作動させることがないから、省エネ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るエスカレーターの概略平面図である。
【
図2】
図2は、第1エスカレーターの第1乗り口に設置された検知手段の配置を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明のエスカレーターの制御装置の要部ブロック図である。
【
図5】
図5は、(a)第1測域センサーの検知可能範囲、(b)第2測域センサーの検知可能範囲を示す説明図である。
【
図6】
図6は、第1測域センサーによる第1制御手段のフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1光電センサーによる第1制御手段のフローチャートである。
【
図8】
図8は、第1制御手段の自動発停止運転のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る乗客コンベアについて説明を行なう。なお、乗客コンベアとして、以下では、自動発停止運転を行なうことのできるエスカレーター10を例に挙げるが、乗客コンベアは自動発停止運転を行なうことができれば、所謂動く歩道等であっても構わない。
【0017】
図1は、本発明のエスカレーター10の概略平面図である。エスカレーター10は、併設された2基のエスカレーター、すなわち、第1エスカレーター20(第1乗客コンベア)と第2エスカレーター50(第2乗客コンベア)を含む。第1エスカレーター20と第2エスカレーター50は、走行方向が異なるように設定されており、本実施形態では、左側の第1エスカレーター20が上向き矢印で示す上り方向、右側の第2エスカレーター50が下向き矢印で示す下り方向に走行する。図では、上階側をU、下階側をDとしている。
【0018】
上りエスカレーターである第1エスカレーター20は、
図1に示すように、下階側Dの第1乗り口21と上階側Uの第1降り口22まで、利用者が乗車する第1ステップ30と、利用者が掴む第1ハンドレール31が循環移動可能に配置される。第1ステップ30は、乗降口21,22に配置されたコム23から繰り出し或いは引き込まれる。また、第1ハンドレール31は、第1乗り口21側ではコム23よりも手前、第1降り口22側ではコム23よりも奥側に折り返し部32を有し、第1ステップ30と同期して循環移動する。第1ステップ30と第1ハンドレール31は、夫々モーターや減速機、スプロケット等からなる駆動機構により作動する。これら第1ステップ30と第1ハンドレール31の駆動機構をまとめて第1駆動手段33(
図4参照)と称する。
【0019】
下りエスカレーターである第2エスカレーター50は、
図1に示すように、上階側Uの第2乗り口51と下階側Dの第2降り口52まで、第2ステップ60と第2ハンドレール61が循環移動可能に配置される。第2ステップ60と第2ハンドレール61も、夫々モーターや減速機、スプロケット等からなる駆動機構に連繋されて、循環移動可能となっている。第2ステップ60は、乗降口51,52に配置されたコム53から繰り出し或いは引き込まれる。また、第2ハンドレール61は、第2乗り口51側ではコム53よりも手前、第2降り口52側ではコム53よりも奥側に折り返し部62を有し、第2ステップ60と同期して循環移動する。これら第2ステップ60と第2ハンドレール61の駆動機構をまとめて第2駆動手段63(
図4参照)と称する。
【0020】
第1エスカレーター20及び第2エスカレーター50には夫々、自動発停止運転を行なうための検知手段が配置される。検知手段は、たとえば、乗降口21,22,51,52内の利用者を検知可能な測域センサー40,70の如き検知手段(第1検知手段、第2検知手段)と、ステップ30,60乗降口との間を移動する利用者を検知可能な光電センサー42,72の如き検知手段とすることができる。
【0021】
以下、下階側Dについて説明すると、
図1に示すように、第1エスカレーター20の測域センサーは、符号40で示す第1測域センサー、第2エスカレーター50の測域センサーは、符号70で示す第2測域センサーである。測域センサー40,70は、たとえばToF(Time of Flight)式センサー等の反射型ビームセンサーを採用できる。ToF式センサーは、レーザー光の投光部と受光部を回転させながら、投光部から発せられたレーザー光が物体に反射して受光部に戻ってくるまでの時間を計測し、回転角度毎に物体までの距離データを出力するセンサーである。測域センサー40,70は、乗降口21,52に配置することができる。なお、測域センサー40,70は、第1乗り口21の左右、第2降り口52の左右に夫々配置することもできる。
【0022】
本実施形態では、第1測域センサー40は、
図2及び
図3に示すように第1乗り口21の乗車方向左側のデッキボード24に配置している。また、第2測域センサー70は、第2降り口52の降車方向左側のデッキボードに配置している。なお、測域センサー40,70の設置位置は、スカートガード、インレットガード等であってもよい。
【0023】
そして、
図1に示すように、第1測域センサー40は、第1乗り口21に向けて第1レーザー光41を発射し、検知された物体までの距離データを取得する。また、第2測域センサー70は、第2降り口52に向けて第2レーザー光71を発射し、検知された物体までの距離データを取得する。
【0024】
また、光電センサー42,72は、
図1に示すように、ハンドレール31,61の折り返し部32,62とコム23,53との間に配置され、乗降口21,22,51,52と各ステップ30,60間を移動する利用者を検知する。光電センサー42,72は、光電ビームの投光器と受光器から構成でき、ステップ30,60の移動方向に対して直交した向きに光43,73を発する。第1エスカレーター20の第1乗り口21に配置される第1光電センサー42を
図2、
図3に示している。第2エスカレーター50の光電センサーは第2光電センサー72である。
【0025】
図4は、本発明の実施例に関連するエスカレーター20,50の制御装置80を示す要部ブロック図である。
図4に示すように、制御装置80は、第1エスカレーター20を制御する第1制御手段44と、第2エスカレーター50を制御する第2制御手段74を含んでいる。
【0026】
第1制御手段44は、第1測域センサー40及び第1光電センサー42に接続されており、次に説明する一般的な制御においては、これらの検知結果に基づいて第1エスカレーター20、すなわち、第1駆動手段33の自動発停止運転を行なう。また、第2制御手段74は、第2測域センサー70及び第2光電センサー72に接続されており、一般的な制御においては、これらの検知結果に基づいて第2エスカレーター50、すなわち、第2駆動手段63の自動発停止運転を行なう。
【0027】
第1エスカレーター20の一般的な自動発停止運転として、第1駆動手段33が停止している状態から、第1乗り口21の第1測域センサー40が所定領域内に利用者を検知すると、第1制御手段44は、第1駆動手段33の駆動を開始し、利用者が第1ステップ30に安全に乗り込める速度まで加速する。そして、第1乗り口21の第1光電センサー42が利用者を検知すると、第1制御手段44は、利用者が第1ステップ30に乗車したものと見做して、所定の設定時間(たとえば、第1ステップ30が1/2周循環する時間プラス30秒)、第1駆動手段33の駆動を継続した後、減速停止する。第1測域センサー40が所定領域内に利用者を検知した後、所定時間内に当該所定領域から利用者が検知できなくなった場合、又は、第1光電センサー42が利用者を検知しない場合には、第1制御手段44は、利用者が乗車しなかったものと見做して、所定時間(たとえば、10秒)、第1駆動手段33を駆動した後、減速停止する。第2エスカレーター50についても上りと下りが逆である以外は同様である。
【0028】
上記構成のエスカレーター10について、測域センサー40,70の設置位置や発射するレーザー光41,71の出力を調整することで、第1測域センサー40から発射されるレーザー光41を、
図5(a)に示すように、第1エスカレーター20の第1乗り口21だけでなく、併設された第2エスカレーター50の第2降り口52の一部の範囲R1まで届かせることができる。また、第2測域センサー70から発射されるレーザー光71は、
図5(b)に示すように、第2エスカレーター50の第2降り口52だけでなく、第1エスカレーター20の第1乗り口21の一部の範囲R2まで届かせることができる。
【0029】
そこで、本発明では、第1測域センサー40により、第1乗り口21だけでなく、第2降り口52の一部の領域を検知範囲とし、第1測域センサー40が検知した第2降り口52の検知結果に基づいて、第2降り口52から第2エスカレーター50に逆進入しようとする利用者を検知する。
【0030】
第1測域センサー40により検知される第1乗り口21の検知領域の所定の領域は、
図1に示すように、第1領域91として設定される。第1領域91は、第1乗り口21のコム23の先端から所定距離(たとえば、700mm~1700mm)の領域、または、第1ハンドレール31の折り返し部32から所定距離(たとえば、0mm~1000mm)の領域として設定できる。
【0031】
また、第1測域センサー40により検知される第2降り口52の検知領域の所定の領域は、
図1に示すように、第2領域92として設定される。第2領域92は、第2乗り口51のコム53の先端から所定距離(たとえば、1200mm~1700mm)の領域、または、第2ハンドレール61の折り返し部62から所定距離(たとえば、500mm~1000mm)の領域として設定できる。
【0032】
上記第1領域91、第2領域92は、第1測域センサー40の距離データを規定することで設定でき、これ以外の領域については、距離データにゼロを代入することで除外可能である。
【0033】
なお、第2測域センサー70により検知される第2降り口52の検知領域は、
図1に示すように、上記した第2領域92と第2領域92よりも第2ステップ60側の第3領域93とすることができる。
【0034】
そして、
図4に示すように、本発明では、第1制御手段44と第2制御手段74を電気的に接続し、第1制御手段44は第2エスカレーター50の運転状態、すなわち、第2駆動手段63が駆動又は停止の何れの状態にあるかを第2制御手段74から受信可能とする。また、第2制御手段74は第1エスカレーター20の運転状態、すなわち、第1駆動手段33が駆動又は停止の何れの状態にあるかを第1制御手段44から受信可能とする。
【0035】
然して、第1制御手段44は、第1駆動手段33及び第2駆動手段63の何れもが停止している状態で、
図1に示すように、第2エスカレーター50に逆進入する利用者P1を検知すると、第1駆動手段33を駆動させるように制御する。つまり、第2エスカレーター50に逆進入する利用者P1に対し、第2エスカレーター50を順方向に駆動させて利用者P1に逆進入であることを認識させるのではなく、第1エスカレーター20を順方向、すなわち、利用者の乗車すべき方向に所定時間駆動させることで、利用者が乗車すべきエスカレーターが第1エスカレーター20であることを認識させる。
【0036】
第1駆動手段33は、緩やかに駆動を開始して、利用者が第1乗り口21へ方向転換し、第1ステップ30に安全に乗り込むまでに所定の速度まで加速することが望ましい。そして、第1ステップ30に利用者が乗車したことを第1光電センサー42が検知した場合には、従前の自動発停止運転と同様、所定の設定時間(たとえば、第1ステップ30が1/2周循環する時間プラス30秒)、第1駆動手段33を駆動させればよい。
【0037】
一方、利用者が第2領域92で検知された後、第1領域91に移動したが、第1ステップ30に移動しなかった場合には、所定時間(たとえば、10秒)、第1駆動手段33を駆動させた後、停止させることで、電力消費を低減できる。また、利用者が第2領域92から退出した場合には、所定時間(たとえば、5秒)、第1駆動手段33を駆動させた後、停止させることで、電力消費を低減できる。
【0038】
これにより、本来作動させる必要のない第2エスカレーター50を作動させなくて済み、利用者が乗車すべき、或いは、乗車する可能性のある第1エスカレーター20を作動させることができるから、省エネ効果を発揮できる。
【0039】
なお、第2領域92に逆進入した利用者P1が第1エスカレーター20の第1ステップ30の駆動を見落とし、逆進入であることを気付かずにさらに第3領域93にまで移動してしまうことも想定される。しかしながら、第2領域92の利用者P1は、第2測域センサー70でも検知されている。そこで、第2制御手段74は、第2領域92から第3領域93に逆進入する利用者を検知すると、第2駆動手段63を順方向、すなわち、利用者P1の進入方向とは逆方向に作動させればよい。これにより、利用者P1に第2エスカレーター50は、乗車すべきエスカレーターではなく、逆進入であることを認識させることができる。
【0040】
エスカレーター10の乗降口は、エスカレーター10の利用者だけでなく、単に乗降口を横切る利用者も通過する。たとえば、
図1に符号P2で示す利用者は、矢印で示すように、第2領域92を斜め方向に単に通過する利用者である。このような利用者P2が第2領域92に進入したことを検知して、第1エスカレーター20を駆動させると、省エネ効果が低減する。そこで、利用者P2のように第2領域92を通過する利用者を除外し、第2エスカレーター50に逆進入しようとする利用者を正しく検知することが望まれる。
【0041】
そこで、
図1に示すように、第1測域センサー40は、第1領域91及び第2領域92よりも以遠側の第4領域94の利用者P3をさらに検知可能とする。そして、第1駆動手段33が停止している状態で、利用者P3が第4領域94から第1領域91又は第2領域92に進入した場合に、第1制御手段44は、第1駆動手段33を作動させる。これにより、第2領域92を斜め方向に単に通過する利用者P2を検知から除外でき、第1エスカレーター20が無駄に作動することを防止して、省エネを図ることができる。また、第4領域94の利用者P3は、乗車すべき方向に作動し始めた第1エスカレーター20が乗車すべきエスカレーターであることを認識でき、逆進入を防止できる。
【0042】
第4領域94は、第1領域91及び第2領域92から0mm~200mm乃至0mm~300mm以遠側の領域とすることができる。
【0043】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0044】
たとえば、上記実施形態では、下階側Dについて説明したが、上階側Uについても同様の構成、制御を行なうことで、第1エスカレーター20への逆進入を防止できる。
【0045】
実施形態で採用した第1検知手段40、第2検知手段70は、ToF式センサーを含む測域センサーに限定されるものではない。また、光電センサー42,72も他方式のセンサーで代用可能である。
【0046】
また、上記した第1領域91や第2領域92、第4領域94の範囲は一例であり、エスカレーターの仕様等に応じて適宜長さ等を設定可能である。
【0047】
更に、第1制御手段44は、第2制御手段74が検知した利用者の逆進入に基づいて、第1制御手段44を所定時間継続して作動する構成としてもよい。具体的には、第2測域センサー70が、第2領域92から第3領域93に逆進入する利用者を検知した場合に、第2制御手段74は、第1制御手段44に逆進入検知の信号を送信する。第1制御手段44は、第2制御手段74からの逆進入検知の信号を受信すると、第1駆動手段33を所定時間継続して作動する。これにより、第3領域93で逆進入に気付いた利用者は、第1エスカレーター20が作動している状態で、第1領域91から第1ステップ30に安全に乗車することが可能となる。なお、第2制御手段74は、第2測域センサー70が、第2領域92から第3領域93に移動した利用者を検知しなくなった場合、第1制御手段44に逆進入検知がなくなった旨の信号を送信して、第1制御手段44は、第1駆動手段33を停止するよう制御してもよい。
【実施例】
【0048】
第1制御手段44による第1エスカレーター20の自動発停止運転の制御フローについて、
図6乃至
図8を用いて説明する。
【0049】
図6は、第1測域センサー40の検知結果に基づくフローチャートである。ステップS11では、第1制御手段44のタイマーTMをゼロリセットする。この状態で、第1測域センサー40が第2領域92に利用者を検知すると(ステップS12のYes)、タイマーTMをTA(たとえば、5秒)に設定し(ステップS13)、第1制御手段44に送信する(ステップS14)。第2領域92で検知される利用者は逆進入の利用者である。一方、第2領域92に利用者の検知はなく(ステップS12のNo)、第1領域91で利用者を検知した場合には(ステップS15のYes)、タイマーTMをTAよりも長いTB(たとえば、10秒)に設定し(ステップS16)、第1制御手段44に送信する(ステップS14)。ステップS14または第1領域91に利用者の検知がなければ(ステップS15のNo)、ステップS11からの処理を繰り返す。
【0050】
図7は、第1光電センサー42の検知結果に基づくフローチャートである。ステップS21では、第1制御手段44のタイマーTMをゼロリセットする。この状態で、第1光電センサー42が利用者を検知すると(ステップS22のYes)、タイマーTMをTCに設定する(ステップS23)。TCは、一般的な自動発停止運転の第1駆動手段33の駆動時間とすることができ、たとえば、第1ステップ30が1/2周循環する時間プラス30秒である。そして、設定されたタイマーTMは、第1制御手段44に送信される(ステップS24)。ステップS24または第1光電センサー42が利用者を検知しなければ(ステップS22のNo)、S21からの処理を繰り返す。
【0051】
図8は、上記した第1測域センサー40からの検知結果に基づいて設定されたタイマーTM(
図6)と、第1光電センサー42からの検知結果に基づいて設定されたタイマーTM(
図7)により、第1制御手段44が第1駆動手段33を作動させるフローチャートである。
【0052】
第1制御手段44は、第1エスカレーター20が停止状態、すなわち、第1駆動手段33が停止している状態で、設定時間をゼロリセットする(ステップS31)。設定時間は、第1駆動手段33を作動させるべき運転時間である。
【0053】
この状態で、
図6又は
図7のフローからタイマーTMを受信すると(ステップS32のYes)、設定時間がゼロであるか判断する(ステップS33)。タイマーTMは、TA、TBまたはTCである。設定時間がゼロである場合には(ステップS33のYes)、設定時間をタイマーTMに設定する(ステップS34)。そして、第1制御手段44は、第1駆動手段33を作動させて、第1エスカレーター20の運転を開始する(ステップS35)。
【0054】
第1エスカレーター20の運転は、運転時間が設定時間になるまで継続され(ステップS36のNo、ステップS32のNo、ステップS38のYes)、運転時間が設定時間に到達すると(ステップS36のYes)、第1エスカレーター20(第1駆動手段33)を停止させる(ステップS37)。設定時間がTAの場合には5秒、TBの場合には10秒、TCの場合には第1ステップ30が1/2周循環する時間プラス30秒だけ第1エスカレーター20が作動する。
【0055】
ステップS32において、タイマーTMが受信されなかった場合には(ステップS32のNo)、第1制御手段44が記憶している設定時間を確認し、設定時間がゼロより大であれば(ステップS38のYes)、ステップS36に移動し、設定時間が運転時間に到達するまで第1エスカレーター20の運転を続ける。ステップS38において設定時間がゼロである場合には(ステップS38のNo)、タイマーTMの受信を待つ(ステップS32)。
【0056】
一方、タイマーTMを受信したときに(ステップS32のYes)、ステップS33で設定時間がゼロでない、すなわち、TA、TBまたはTCである場合に、新たに受信したタイマーTMが設定時間よりも長いかどうかを判断する(ステップS39)。そして、受信したタイマーTMが設定時間よりも長い場合には(ステップS39のYes)、受信したタイマーTMを設定時間に置き換えて(ステップS40)、第1エスカレーター20の運転を継続する。一方で、受信したタイマーTMが設定時間以下である場合には(ステップS39のNo)、元の設定時間のまま、第1エスカレーター20の運転を継続すればよい。
【0057】
上記フローにより、第1エスカレーター20が停止している状態で、第2領域92に利用者が進入した場合に(ステップS12)、第1エスカレーター20を作動させて、利用者に乗車すべきエスカレーターであることを示すことができる(フローチャート
図8)。この運転時間は、短めのTAである。TAを短めに設定しているのは、利用者が第1エスカレーター20の動作を確認して、第1エスカレーター20に向かって移動し、第1領域91に進入すると、ステップS15においてTAよりも長いタイマーTBが設定されるためである。第2領域92の利用者に対し、第2エスカレーター50を作動させることなく、第1エスカレーター20を作動させることで、利用者に乗車すべきエスカレーターを認識させることができると共に、第2エスカレーター50は作動しないから省エネを図ることができる。なお、第2領域92から第3領域93に利用者が逆進入した場合には、第2測域センサー70の検知結果に基づいて、第2制御手段74が順方向、すなわち、進入方向とは逆向きに作動させて、利用者に逆進入であることを気付かせざるを得ない。
【0058】
第1光電センサー42が利用者を検知した場合には(ステップS22)、利用者は第1領域91から第1ステップ30に移動し、第1エスカレーター20に乗車したものと見做されるため、自動発停止運転の一般的な駆動時間TC(たとえば、第1ステップ30が1/2周循環する時間プラス30秒)の間、第1駆動手段33を作動させることで、利用者を上階側Uに搬送することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 エスカレーター(乗客コンベア)
20 第1エスカレーター(第1乗客コンベア)
21 第1乗り口
23 コム(第1エスカレーター)
30 第1ステップ
31 第1ハンドレール
32 折り返し部(第1エスカレーター)
40 第1測域センサー(第1検知手段)
44 第1制御手段
50 第2エスカレーター(第2乗客コンベア)
52 第2降り口
53 コム(第2エスカレーター)
60 第2ステップ
61 第2ハンドレール
62 折り返し部(第2エスカレーター)
70 第2測域センサー(第2検知手段)
74 第2制御手段
91 第1領域
92 第2領域
93 第3領域
94 第4領域
【要約】
【課題】本発明は、省エネを図りつつ、利用者に逆進入であることを気付かせることのできる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】本発明の乗客コンベア10は、走行方向が異なる第1乗客コンベア20と第2乗客コンベア50を併設してなり、前記第1乗客コンベアは、ステップ30を循環移動する第1駆動手段33と、前記第1乗客コンベアの第1乗り口に配置されて利用者を検知可能な第1検知手段40と、を具え、前記第2乗客コンベアは、ステップ60を循環移動する第2駆動手段63と、前記第2乗客コンベアの第2降り口に配置されて利用者を検知可能な第2検知手段70と、を具え、前記第1検知手段は、前記第1乗り口内の第1領域91と、前記第2降り口内の第2領域92の利用者を検知可能であり、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段が停止している状態で、前記第1検知手段が前記第2領域に利用者P1を検知したとき、前記第1駆動手段を作動させる。
【選択図】
図1