(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】間仕切り
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20220712BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20220712BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
E04B2/74 561H
B32B3/30
B32B27/18 Z
(21)【出願番号】P 2021196263
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2020215540
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名:第5回[高性能]建材・住設EXPO2020展示日:令和2年12月2日~令和2年12月4日開催場所:東京ビッグサイト(東京都江東区有明3丁目11-1)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 真友子
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝史
(72)【発明者】
【氏名】折原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】山村 菜月
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3021305(JP,U)
【文献】特開2005-067142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する透明袋体と、前記透明袋体を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、前記開口部が下を向いた状態の前記透明袋体を、当該透明袋体の内側下方から支持す
る間仕切り
であって、
前記透明袋体は、透明性を有する基材シートと、前記基材シートの表裏面の一面に積層され、エンボス部が形成された表面保護層とを含む透明フィルムからなり、前記エンボス部が形成された側の面が外側となるように形成され、
前記透明フィルムは、前記基材シートと前記表面保護層とのいずれか少なくとも一方には、耐候剤が添加され、
前記表面保護層には抗ウイルス剤が添加され、
前記抗ウイルス剤の添加量が、前記表面保護層の固形分100質量部に対して4~10質量部であることを特徴とする間仕切り。
【請求項2】
筒状の透明筒体と、前記透明筒体を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、開口部が上下方向を向いた状態の前記透明筒体を、当該透明筒体の内側から支持す
る間仕切り
であって、
前記透明袋体は、透明性を有する基材シートと、前記基材シートの表裏面の一面に積層され、エンボス部が形成された表面保護層とを含む透明フィルムからなり、前記エンボス部が形成された側の面が外側となるように形成され、
前記透明フィルムは、前記基材シートと前記表面保護層とのいずれか少なくとも一方には、耐候剤が添加され、
前記表面保護層には抗ウイルス剤が添加され、
前記抗ウイルス剤の添加量が、前記表面保護層の固形分100質量部に対して4~10質量部であることを特徴とする間仕切り。
【請求項3】
前記エンボス部の深さが、150μm以下であることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の
間仕切り。
【請求項4】
前記エンボス部の深さが、前記エンボス部の幅方向中央部から端部に向かって徐々に浅くなっていることを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の
間仕切り。
【請求項5】
前記表面保護層の厚さが、3~15μmであることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の
間仕切り。
【請求項6】
前記抗ウイルス剤の平均粒径を「φ」(μm)とし、前記表面保護層の厚みを「D」(μm)としたとき、下記の式(1)の関係が成立することを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の
間仕切り。
0.5D≦φ≦2D ・・・式(1)
【請求項7】
前記抗ウイルス剤の粒度分布のピークが、複数存在することを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の
間仕切り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、店舗や家での窓際、入り口などに設置するクリアカーテン、オーニング、テント等に使用でき、透明性を維持させながら、耐候性及び抗ウイルス性能を有する多機能な透明フィルムを用いた間仕切りを提供できる。
【背景技術】
【0002】
コロナ禍により抗ウイルス性能の需要が高まり、抗ウイルス製品の開発が急務となっている。
オープンウェアの利用が増え、耐候性能、遮熱性能を有するカーテンなどの仕切りに需要がある。
また、セキュリティの観点から透明や半透明のカーテンが求められている。
従来、抗菌性、抗ウイルス性等の効果を有し、かつ、化粧板の意匠性への影響を小さくすることができる化粧板が知られている(特許文献1の段落[0009]及び
図1参照)。
また、従来、透明性を備え、一方の面に、凸部が設けられたカーテンが知られている(特許文献2の段落[0011]及び[0012]、並びに
図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-27694号公報
【文献】特開2015-131048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の化粧板(特許文献1)は、透明でなく、抗ウイルス性の効果も化粧板の表面に限られ、カーテン等には適していなかった。
また、上記した従来のカーテンは(特許文献2)、透明性を備えているが、抗ウイルス性の機能を持っていなかった。
本発明は、上記した各種の問題点に鑑み、透明性を維持させながら、耐候性及び抗ウイルス性能を有する透明フィルムを用いた間仕切りを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る間仕切りは、開口部を有する透明袋体と、前記透明袋体を支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、前記開口部が下を向いた状態の前記透明袋体を、当該透明袋体の内側下方から支持する間仕切りであって、前記透明袋体は、透明性を有する基材シートと、前記基材シートの表裏面の一面に積層され、エンボス部が形成された表面保護層とを含む透明フィルムからなり、前記エンボス部が形成された側の面が外側となるように形成され、前記透明フィルムは、前記基材シートと前記表面保護層とのいずれか少なくとも一方には、耐候剤が添加され、前記表面保護層には抗ウイルス剤が添加され、前記抗ウイルス剤の添加量が、前記表面保護層の固形分100質量部に対して4~10質量部であることを特徴としている。
【0006】
本発明の一態様に係る間仕切りは、前記エンボス部の深さが、150μm以下であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る間仕切りは、前記エンボス部の深さが、前記エンボス部の幅方向中央部から端部に向かって徐々に浅くなっていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る間仕切りは、前記表面保護層の厚さが、3~15μmであることを特徴とする。
本発明の一態様に係る間仕切りは、前記抗ウイルス剤の平均粒径を「φ」とし、前記表面保護層の厚みを「D」としたとき、下記の式(1)の関係が成立することを特徴とする。
0.5D≦φ≦2D ・・・式(1)
本発明の一態様に係る間仕切りは、前記抗ウイルス剤の粒度分布のピークが、複数存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、透明性を維持させながら、耐候性及び抗ウイルス性能を有する多機能な透明フィルムを用いた間仕切りを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係わる透明フィルムの断面図である。
【
図2】実施形態2に係わる透明フィルムの断面図である。
【
図3】実施形態3に係わる透明フィルムの断面図である。
【
図4】実施形態4に係わる間仕切りの一例を示す概略構成図である。
【
図5】実施形態4に係わる透明フィルムの断面図である。
【
図6】実施形態4に係わる間仕切りの使用例を示す斜視図である。
【
図7】実施形態4に係わる間仕切りの変形例を示す概略構成図である。
【
図8】実施形態4に係わる間仕切りの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態1~4について、以下に
図1~
図5を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(実施形態1に係わる透明フィルム10)
図1中、10は、透明フィルムであり、透明フィルム10は、図示しないが、例えば店舗や家での窓際、入り口などに設置するクリアカーテン、オーニング、テント等に使用される。
透明フィルム10は、
図1に示すように、次の各層を3層に積層して形成する。
なお、次の(1)~(3)については後述する。
(1)基材シート20
(2)第一の表面保護層30
(3)第二の表面保護層40
なお、透明フィルム10として、上記した(1)~(3)を例示したが、これに限定されず、
図2を用いて後述するように、基材シート20と第二の表面保護層40との間に、印刷層50を設けても良い。
【0013】
(透明フィルム10の主な特徴)
本実施形態1に係わる透明フィルム10の特徴は、次の通りである。
(1)透明性を有する基材シート20と、基材シート20の表裏面の一面に積層された第一の表面保護層30と、基材シート20の表裏面の他面に積層された第二の表面保護層40と、から形成された透明フィルム10であって、第一の表面保護層30側の面には基材シート20にまで至るエンボス部31が形成され、第二の表面保護層40側の面にはエンボス部が形成されていない。基材シート20と、第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40と、のいずれか少なくとも一方には、耐候剤が添加され、第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40には、抗ウイルス剤が添加され、抗ウイルス剤の添加量が、表面保護層30,40の固形分100質量部に対して4~10質量部である。
【0014】
上記した透明フィルム10によれば、透明性を維持させながら、耐候性に加え、基材シート20の両面に抗ウイルス性能を持たせることができ、多機能な透明フィルム10を提供できる。
そして、透明フィルム10の片側の面だけに、エンボス部31を有するので、透明フィルム10の表裏面から見た印象を異ならせ、意匠性を向上できる。
抗ウイルス剤の添加量が、4質量部未満であると、少なすぎ、効果が発現せず、抗ウイルス性の活性値が大きく低下する傾向にある。抗ウイルス剤の添加量が10質量部を超えると、耐候性が低下する傾向にある。
【0015】
(2)エンボス部31の深さが、150μm以下である。
上記した透明フィルム10によれば、耐候性を維持できる。
すなわち、エンボス部31の深さが150μmを超え、深すぎると、耐候性試験後、シートの変色、白化、亀裂などが生ずるおそれがある。
【0016】
(3)エンボス部(例えば後述の
図3に示す第二のエンボス部32)の深さが、エンボス部32の幅方向中央部から端部に向かって徐々に浅くなっている。
エンボス部32の深さは、浅い程、抗ウイルス性の点からは、有利なものと考える。これに対し、エンボス部32の深さを、浅くすると、高低差が減少し、エンボス効果が低下するものと考える。
このため、エンボス部32の幅方向中央部から端部に向かって徐々に浅くなるように形成し、エンボス部32の深さを変化させることで、抗ウイルス性とエンボス効果とを両立できるようにした。
【0017】
(4)第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40それぞれの厚みが、3μm~15μmである。
上記した透明フィルム10によれば、第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40それぞれの厚みが3μmを下回ると薄すぎ、その他の耐候剤等の含有量が相対的に低下するため耐候性が低下するおそれがある。
また、第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40それぞれの厚みが15μmを上回ると厚すぎ、抗ウイルス性の活性値が大きく低下するおそれがある。
【0018】
(5)抗ウイルス剤の平均粒径を「φ」とし、表面保護層30,40の厚みを「D」としたとき、下記の式(1)の関係が成立する。
0.5D≦φ≦2D ・・・式(1)
上記式(1)の関係が成り立つとき、表面保護層30,40と抗ウイルス剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス剤自体の表面積の拡大により、抗ウイルス効果、すなわち抗ウイルス性を向上できる。
また、表面保護層30,40の厚みと抗ウイルス剤の粒径との関係で、ある程度の量の抗ウイルス剤を表面に露出させた方が、効果が発現し易い。
【0019】
(6)抗ウイルス剤の粒度分布のピークが、複数存在する。
上記した透明フィルム10によれば、抗ウイルス剤の充填密度を高める効果に加え、表面保護層30,40と抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス剤自体の表面積を拡大でき、抗ウイルス性を向上できる。
また、抗ウイルス剤を表面に露出させるためには、粒径がある程度、大きい方が有利である。例えば抗ウイルス剤としての銀イオンを発生させ易くするためには、粒径が小さく、表面積を広くした方が望ましく、その両方の効果を発現させることができる。
【0020】
(基材シート20)
基材シート20は、本発明の透明フィルム10の支持体となるものであって、透明性を有するシート状或いはフィルム状のものである。
基材シート20の素材として、ポリ塩化ビニル(PVC)製のシートを用いている。
基材シート20の素材として、ポリ塩化ビニルを例示したが、これに限定されず、透明性を有する他のフィルムを使用しても良い。
基材シート20の素材としては、例えば、エチレンビニルアルコール(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレートシート(PET)、ポリエチレン(PE)製のものが使用できる。
基材シート20の厚みは、例えば200μm~600μmのものを用いる。
基材シート20が薄すぎると加工性、耐久性が悪くなり、厚すぎると重量や視認性、加工性に問題がでるためである。
例えば、基材シート20としては、厚みが300μmのPVCシート(株式会社タツノ化学製)を用いている。
基材シート20の透明性は、半透明を含み、波長400nm~800nmにおける光透過率が50%以上を目指している。
【0021】
(第一の表面保護層30)
第一の表面保護層30は、基材シート20の表裏面の一面に積層され、透明性を有し、基材シート20にまで至るエンボス部31が形成されている。
第一の表面保護層30としては、後述する第二の表面保護層40と同様に、例えばメタアクリレートをモノマー成分として含有するアクリル系樹脂組成物を主成分としている。
第一の表面保護層30として、アクリル系樹脂組成物を例示したが、これに限定されない。
第一の表面保護層30には、基材シート20と同様に、耐候性を向上させるため、耐候剤を添加させても良い。後述する第二の表面保護層40も同様である。
また、第一の表面保護層30には、基材シート20と同様に、抗ウイルス剤が添加されているが、抗ウイルス剤については後述する。
【0022】
(エンボス部31)
エンボス部31は、第一の表面保護層30の表面に基材シート20にまで至るように形成され、質感を向上させたり、意匠性を向上できる。
エンボス部31は、例えば断面矩形に形成されている。
エンボス部31は、例えば、深さ150μmのエンボス加工を行った。
エンボス部31の深さが150μmを超え、深すぎると、耐候性試験後、シートの変色、白化、亀裂などが生ずるおそれがある。
エンボス部31の形状として、断面矩形を例示したが、これに限定されず、
図3を用いて後述するように、断面「V」字形に形成しても良い。
【0023】
(第二の表面保護層40)
第二の表面保護層40は、基材シート20の表裏面の他面に積層され、透明性を有する。
第二の表面保護層40は、エンボス部31が無いほかは、第一の表面保護層30と同様に形成されている。
【0024】
(耐候剤)
第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40(以下、「表面保護層30,40」ともいう。)には、透明フィルム10の耐候性を向上させるため、耐候剤を添加させる。
耐候剤を、表面保護層30,40に添加したが、これに限らず、基材シート20に添付しても良いし、両方に添付しても良い。
耐候剤としては、例えばトリアジン系やベンゾトリアジン系等があり、例えば紫外線吸収剤(UVA)と、光安定剤(HALS)とを含む。
紫外線吸収剤(UVA)には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、サリシレート系、シアノアクリレート系がある。
光安定剤(HALS)には、ヒンダードアミン系等がある。
耐候剤としては、上記したものを用途に応じ、任意で組み合わせて添加するのが一般的である。
耐候剤を表面保護層30,40に添加することで、後述するが、メタルウェザー試験機による耐候性試験を10サイクル実施し、変色、亀裂が入らないという効果が得られた。
【0025】
(耐候剤の添加量)
耐候剤の添加量は、例えば0.5~30質量部である。
添加量が0.5質量部を下回ると、耐候性が低下し、又、30質量部を超えると、その他の抗ウイルス剤等の含有量が相対的に低下するため、抗ウイルス性が低下するおそれもある。
なお、耐候剤を、基材シート20と、表面保護層30,40との両方に添加する場合には、添加量を同じくしても良いし、或いは異ならせても良い。
このとき、耐候剤の添加量について、基材シート20は1質量部、表面保護層30,40は10質量部で固定することが望ましい。
また、耐候剤を、第一の表面保護層30と、第二の表面保護層40との両方に添加する場合にも、添加量を同じくしても良いし、或いは異ならせても良い。
【0026】
(マット剤の添加)
マット剤を、表面保護層30,40に添加させても良い。
マット剤の添付により、表面保護層30,40の表面の艶を調節できる。
マット剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、合成マイカ、酸化チタン、ガラス粒子等の無機微粒子;ポリエチレン微粒子、アクリル樹脂微粒子、ウレタン樹脂微粒子、尿素樹脂微粒子、ナイロン樹脂微粒子、バルーン等の有機微粒子が挙げられる。
なお、マット剤を、表面保護層30,40に添付した場合を例示したが、これに限らず、基材シート20に添付しても良いし、両方に添付しても良い。
【0027】
(抗ウイルス剤)
抗ウイルス剤は、無機系であり、中でも銀系を主成分として用いる。
銀成分は、無機物で担持されている。
ここで、「無機物」としては、「ガラス」を使用するが、「無機物」は「ガラス」に限定されない。
銀成分を無機物で担持することで、ウイルス効果の持久性を向上できる。
銀系の抗ウイルス剤としては、例えば、TB-B100(株式会社タイショーテクノス製)を使用し、固形分に対して4質量部添加し、塗工した。
なお、抗ウイルス剤として、TB-B100(株式会社タイショーテクノス製)を例示したが、これに限定されず、大日精化工業株式会社製の抗ウイルス剤(PTC-NT ANV添加剤(ST))や、(PTC-NT ANV添加剤(ST))を用いても良い。
【0028】
(抗ウイルス剤の添加量)
抗ウイルス剤の添加量として、先に4質量部を例示したが、これに限定されず、表面保護層30,40の固形分100質量部に対して4~10質量部であることが望ましい。
抗ウイルス剤の添加量が4質量部未満であると、少なすぎ、効果が発現せず、抗ウイルス性の活性値が大きく低下する傾向にある。抗ウイルス剤の添加量が10質量部を超えると、耐候性が低下する傾向にある。
【0029】
(抗ウイルス剤の厚み)
抗ウイルス剤の厚みは、例えば3μm~15μmが望ましい。
厚みが3μmを下回ると、薄すぎ、効果が発現せず、抗ウイルス性の活性値が大きく低下する傾向にある。
また、厚みが15μmを上回ると、厚すぎ、その他の耐候剤等の含有量が相対的に低下するため、耐候性が低下する傾向にある。
【0030】
(抗ウイルス剤の特徴)
抗ウイルス剤は、次の特徴を有する。
(1)抗ウイルス剤の粒度分布のピークが、複数存在すること。
上記した特徴点によれば、抗ウイルス剤の充填密度を高める効果に加え、表面保護層30,40と抗ウイルス剤との接触面積が拡大し、抗ウイルス剤自体の表面積を拡大でき、抗ウイルス性を向上できる。
また、表面に露出させるためには、粒径がある程度、大きい方が有利である。抗ウイルス剤としての銀イオンを発生させ易くするためには、粒径が小さく、表面積を広くした方が望ましく、その両方の効果を発現させることができる。
複数のピークとしては、1μm~5μmの間と5μm~10μmの間の2つのピークを持つことが好ましい。
【0031】
(2)抗ウイルス剤の平均粒径が1μm~10μmの範囲内にあること。
抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上である場合、表面保護層30,40と抗ウイルス剤との接触面積が向上し、抗ウイルス性が良好になる。抗ウイルス剤の平均粒径が10μm以下である場合、10μmを超える場合と比べて耐傷性が良好になる。
【0032】
(3)抗ウイルス剤の平均粒径を「φ」、表面保護層30,40の厚みを「D」とした時、「0.5D≦φ≦2D・・・式(1)」の関係が成り立つこと。
上記式(1)の関係が成り立つとき、表面保護層30,40と抗ウイルス剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス剤自体の表面積の拡大により、抗ウイルス効果、すなわち抗ウイルス性を向上できる。
また、表面保護層30,40の厚みと抗ウイルス剤の粒径との関係で、ある程度の量の抗ウイルス剤を表面に露出させた方が、効果が発現し易い。
【0033】
(4)表面保護層30,40中に抗ウイルス剤が添加された系において、更に界面活性剤が添加されていること。
界面活性剤は、カチオン性、両性、非イオン性のいずれかのタイプを単独若しくは、複数種類を組み合わせて使用しても良い。
界面活性剤を添加することにより、抗ウイルス剤と表面保護層30,40のバインダー中との相溶性が良好となり、塗工中の抗ウイルス剤の沈殿等による濃度のバラツキを抑制できる。
【0034】
(製造方法)
透明フィルム10は、上記した構成を備え、その製造方法は、次の工程を含む。
(1)第1工程
第1工程は、透明性を有する基材シート20の表裏面のいずれか一面に、第一の表面保護層30を積層し、他面に第二の表面保護層40を積層する工程である。
基材シート20には、塩ビシートを用い、例えば厚さが300μmのPVCシート(株式会社タツノ化学製)を用いた。
表面保護層30,40は、例えばメタアクリレートをモノマー成分として含有するアクリル系樹脂組成物を主成分とし、銀系の抗ウイルス剤を添加し、基材シート20の表裏面にそれぞれ塗工した。
抗ウイルス剤には、例えばTB-B100(株式会社タイショーテクノス製)を用い、固形分に対し、例えば4質量部添加した。
【0035】
(2)第2工程
第2工程は、第一の表面保護層30の表面に、基材シート20にまで至るエンボス部31を形成する工程である。
第2工程の実行により、透明フィルム10を得ることができる。
【0036】
(
図2に示す実施形態2の説明)
図2を用いて、実施形態2について説明する。
本実施形態2は、第一に、基材シート20と第二の表面保護層40との間に、印刷層50を形成し、透明フィルム10を4層としたものである。
印刷層50は、透明フィルム10の表面を加飾するための層である。
印刷層50は、第二の表面保護層40と対向する基材シート20の他面に、絵柄やイラスト等を印刷することで形成され、印刷インキの塗膜を用いる。
絵柄としては、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。
印刷インキは、例えばアクリル系樹脂を主原料とする。
基材シート20に透明なシートを用いていることから、印刷層50の絵柄が、基材シート20を透して、エンボス部31を有する第一の表面保護層30の表面側から見える。
【0037】
(印刷層50の絵柄とエンボス部31との同調)
第二に、本実施形態2は、エンボス部31の形状を、印刷層50の絵柄と同調させている。
ここで、「同調」とは、印刷層50の絵柄と、エンボス部31の形状とが、平面視の輪郭により形成された絵柄であるともに、50%以上の割合で合致していることを特徴とする。
【0038】
(アンカー層)
そのほか、印刷層50と関連し、図示しないが、アンカー層を設けても良い。
アンカー層は、基材シート20の表面全体を覆うように形成した層であって、透明フィルム10に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。
基材シート20に印刷層50を印刷する際に、透明フィルム10に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、その印刷系内を汚染することがある。
【0039】
(
図3に示す実施形態3の説明)
図3を用いて、実施形態3について説明する。
本実施形態3は、
図1に示す実施形態1のエンボス部31の変形例を示すものであり、
図3に示すように、第二のエンボス部32を第二のエンボス部32の幅方向中央部から端部に向かって徐々に浅く形成したものである。
第二のエンボス部32は、例えば断面V字形に形成している。
第二のエンボス部32を断面V字形に形成することで、第二のエンボス部32の深さを変化させることができる。
第二のエンボス部32の深さは、浅い程、抗ウイルス性の点からは、有利なものと考える。これに対し、第二のエンボス部32の深さを、浅くすると、高低差が減少し、エンボス効果が低下するものと考える。
このため、第二のエンボス部32を断面V字形に形成し、深さを変化させることで、抗ウイルス性とエンボス効果とを両立できるようにしたものである。
なお、第二のエンボス部32の断面形状として、V字形を例示したが、これに限定されず、第二のエンボス部32の幅方向中央部から端部に向かって徐々に浅く形成されていれば足り、図示しないが、断面半円形や、斜面を有する断面台形等の多角形に凹ませても良い。
【0040】
(透明フィルム10の他の特徴)
本実施形態1~3に係わる透明フィルム10の他の特徴は、次の通りである。
(1)基材シート20と第二の表面保護層40との間には、
図2に示すように、印刷層50が形成され、エンボス部31は、印刷層50の絵柄と同調している。
上記した透明フィルム10によれば、印刷層50により、透明フィルム10の意匠性を向上でき、又、印刷層50の絵柄とエンボス部31とを同調させることで、意匠性を一層、向上できる。
なお、エンボス部31を、印刷層50の絵柄と同調させたが、これに限らず、エンボス部31を同調させなくとも良い。
【0041】
(2)透明性を有する基材シート20の表裏面のいずれか一面に、第一の表面保護層30を積層し、基材シート20の他面に第二の表面保護層40を積層する第1工程と、第一の表面保護層30の表面に、エンボス部31を形成する第2工程と、を含む。
基材シート20と、第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40とのいずれか少なくとも一方には、耐候剤が添加され、第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40には、抗ウイルス剤が添加される。
抗ウイルス剤の添加量は、表面保護層30、40の固形分100質量部に対して4~10質量部である。
上記した透明フィルム10の製造方法によれば、透明性を維持させながら、耐候性に加え、基材シート20の両面に抗ウイルス性能を持たせることができ、多機能な透明フィルム10を製造できる。
なお、第1工程と第2工程とを逆にし、基材シート20にエンボス部31を形成してから、第一の表面保護層30及び第二の表面保護層40を積層しても良い。
【0042】
(
図4に示す実施形態4の説明)
図4~
図6を用いて、実施形態4について説明する。
(実施形態4に係わる間仕切り100)
本実施形態4に係わる間仕切り100は、
図4(a)及び(b)に示すように、透明袋体101と、透明袋体101を支持する支持部材102とを備える。
透明袋体101は、平面視が長方形であり、短辺の一つが開口部となり他の三辺が閉じた袋状を有する。透明袋体101は、例えば、幅900mm、高さ1000mm以上2000mm以下であり、支持部材102の後述する平行部104aの長さは420mm程度である。
【0043】
透明袋体101は、
図1に示す実施形態1の透明フィルム10において、第二の表面保護層40を設けない透明フィルム10aから形成される。すなわち、透明フィルム10aは、
図5に示すように、基材シート20と基材シート20の上に積層された第一の表面保護層(表面保護層)30とを備え、基材シート20の、第一の表面保護層30が形成された側の面には、基材シート20にまで至るエンボス部31が形成されている。エンボス部31が形成された側の面が透明袋体101の外側の面となり、基材シート20の第一の表面保護層30が形成されていない側の面が透明袋体101の内側の面となっている。なお、基材シート20及び第一の表面保護層30の少なくとも一方には、上記実施形態1と同様に耐候剤が添加され、第一の表面保護層30には、抗ウイルス剤が添加されている。なお、透明フィルム10aの、実施形態1の透明フィルム10と同一部には同一符号を付与する。
【0044】
支持部材102の各部は棒材で形成され、支持部材102は、枠部103と脚部104とを備える。枠部103は、カタカナの「コ」の字状を有し、同一形状の一対の柱部103aと、一対の柱部103aどうしを連結する連結部103bとを備える。柱部103aの上端同士が連結部103bで連結されて枠部103を構成している。脚部104は、アルファベットの「H」の字状を有し、同一形状の一対の平行部104aと、一対の平行部104a間を連結する連結部104bとを備える。平行部104aのそれぞれの中央部どうしが連結部104bで連結されて脚部104を構成している。各平行部104aの、連結部104bとの接続部分に、柱部103aの下端それぞれが連結されて、枠部103が脚部104に対して略垂直に支持されている。
【0045】
枠部103に、透明袋体101の開口部側を下にして被せることによって、略矩形状の間仕切り100が形成される。透明袋体101と枠部103とは、枠部103に透明袋体101を被せることが可能な大きさに形成される。枠部103の高さ及び幅は、間仕切り100の設置場所に応じて、間仕切り100として要求される大きさであればよい。透明袋体101の高さ及び幅は枠部103に被せることで、略板状に且つ略垂直に維持され得る長さであればよい。例えば、透明袋体101の長さは、
図4に示すように、枠部103に被せたときに、枠部103の上端から脚部104に達する程度の長さであってもよく、又は枠部103の上端から高さ方向中央部に達する程度の長さであってもよく、任意に設定することができる。
【0046】
(効果)
このような間仕切り100は、透明袋体101を枠部103に被せるだけで、容易に形成することができる。また、透明袋体101は折り畳むことができるため、収納時には、透明袋体101と支持部材102とを別々にし、透明袋体101どうし、及び支持部材102どうしそれぞれをまとめて収納することによって、間仕切り100の占有面積の増加を抑制しつつ保管することができる。
【0047】
また、透明フィルム10aの一方の面にはエンボス部31が形成されているため透明ではなく多少曇った半透明程度である。間仕切り100として用いる透明袋体101は、二枚の透明フィルム10aを重ねたものと同等であるため、透明袋体101はさらに透明度が低くなる。そのため、間仕切り100としての透明袋体101は、透明ではないため、間仕切り100を挟んで反対側にいる人の顔の表情等はわからないものの、人の動き程度は認識することができる。したがって、プライバシーを守りつつ、外部の様子も認識することができる。したがって、間仕切り100の組み立て、設置、保管、間仕切りとしてのプライバシーの保護、除菌等の観点から、特に避難所等における間仕切りとして好適である。間仕切り100を、避難所等において用いる場合には、例えば
図6に示すように複数の間仕切り100を接するように配置してもよい。また、透明袋体101を、その下端と、脚部104との間に隙間ができる程度の長さに形成することによって、換気を行い易くしてもよい。
【0048】
なお、透明フィルム10aは、一方の面にのみ第一の表面保護層30が設けられ、他方の面には表面保護層は設けられていないが、透明フィルム10aの表面保護層が設けられていない側の面は、透明袋体101の内側となる面であるため、表面保護層を設けなくとも問題はなく、コスト的に有利になる。
【0049】
(変形例)
上記実施形態4においては、実施形態1の透明フィルム10において、第二の表面保護層40を持たない透明フィルム10aを用いて透明袋体101を形成した場合について説明したが、これに限るものではない。実施形態1の透明フィルム10を用いて透明袋体101を形成してもよい。また、実施形態2又は3の透明フィルム10を用いて透明袋体101を形成してもよく、この場合には、第二の表面保護層40を設けなくともよい。
【0050】
透明袋体101は、2枚の同一形状の長方形状の透明フィルム10aを、エンボス部31が形成された面が外側となるように重ねて、一つの短辺を除く三辺を融着して袋状に形成してもよく、或いは、長方形状の透明フィルム10aを、エンボス部31が形成された面が外側となるように長手方向中央部で折り曲げて、一つの短辺と、長辺の輪ではない方の辺とをそれぞれ融着することで透明袋体101を形成してもよい。
【0051】
支持部材102は、
図4に示す構成に限るものではなく、脚部104にキャスターを設け、移動しやすく構成することも可能である。
また、支持部材102を幅方向に伸縮可能に構成し、設置場所に応じて、間仕切り100の幅を調整可能に構成してもよい。透明袋体101は変形可能であるため、支持部材102の幅の変更に伴って透明袋体101も変形する。そのため、間仕切り100の幅の調整を容易に行うことができる。また、幅の異なる複数種の透明袋体101であっても、支持部材102の幅を調整することによって、枠部103に被せることができ、汎用性を持たせることができる。
【0052】
また、上記実施形態4では、袋状の透明袋体101を枠部103に被せる場合について説明したが、必ずしも袋状でなくともよい。例えば、
図7(a)、(b)に示すように、透明袋体101において二つの短辺を共に開放した筒状(以下、透明筒体101aという。)であってもよい。この場合、透明筒体101aを枠部103に被せ、透明筒体101aの下端と柱部103aとで、透明筒体101aを略垂直状態に維持することになる。
【0053】
また、支持部材102が幅方向に伸縮可能に構成されている場合、支持部材102の幅を調整することによって、
図8に示すように、柱部103aによって透明筒体101aを展張させた状態に維持すること、或いは、留め具等で透明筒体101aを柱部103aに固定すること等により、透明筒体101aを脚部104から浮かせた状態で支持するようにしてもよい。
また、透明袋体101に代えて透明筒体101aを用いる場合には、必ずしも連結部103bを設けなくともよい。したがって、その分、間仕切り100の軽量化を図ることができる。
【0054】
また、上記実施形態4では、透明袋体101全体を、透明フィルム10aを用いて形成した場合について説明したが、例えば、間仕切り100の一方の面は、透明フィルム10aで形成し、他方の面は印刷層50を備える実施形態2における透明フィルム10を用いて形成する等、異なる組み合わせで透明袋体101を形成してもよい。
また、上記実施形態4において、透明袋体101の左右の長辺の部分は、必ずしも全体が表側の面と裏側の面とが融着されていなくてもよく、少なくとも一部が融着されていればよい。
【0055】
また、上記実施形態4において、透明袋体101及び透明筒体101aは、必ずしも平面視で矩形状でなくともよく、透明袋体101及び透明筒体101aを開口部が下となる状態で立てたときに、間仕切り100の側部となる部分の少なくとも一部において、表側の面及び裏側の面が融着されていればどのような形状であってもよい。
同様に、枠部103は、
図4に示すように、カタカナの「コ」の字状でなくともよく、透明袋体101又は透明筒体101aを開口部が下となるように立てたときにこの状態を維持することができればどのような形状であってもよい。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明に係る化粧シートの実施例1~10及び比較例1~12について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~5に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
実施例1の主な構成は、次の表1の通りである。
なお、次の表1には、実施例1の外、実施例2~10、並びに比較例1~比較例12の主な構成についても記入している。
【0058】
【0059】
実施例1は、基材シート20に厚さ300μmのPVCシート(株式会社タツノ化学製)を用いた。
基材シート20に、銀系の抗ウイルス剤としてTB-B100(株式会社タイショーテクノス製)を固形分に対して4質量部添加して塗工し、表面保護層30,40をそれぞれ形成した。また、深さ150μmのエンボス部31の加工を行い、実施例1の透明フィルム10を作製した。
表面保護層30,40の厚みは、それぞれ10μmである。
耐候剤は、表面保護層30,40だけに添加し、添加量は、10質量部である。
【0060】
(実施例2)
実施例2は、抗ウイルス剤の添加量を固形分に対して10質量部添加し、基材シート20の厚さを200μmとし、表面保護層30,40の厚みをそれぞれ3μmとし、又、耐候剤は、基材シート20だけに10質量部添加し、その他は実施例1と同様であり、実施例2の透明フィルム10を作製した。
【0061】
(実施例3)
実施例3は、エンボス部31の深さを100μmにて加工し、基材シート20の厚さを600μmとし、表面保護層30,40の厚みをそれぞれ15μmとし、又、耐候剤は、基材シート20及び表面保護層30,40の両層に10質量部ずつ添加し、その他は実施例1と同様であり、実施例3の透明フィルム10を作製した。
【0062】
(実施例4)
実施例4は、耐候剤を、表面保護層30,40だけに0.5質量部添加し、その他は実施例1と同様であり、実施例4の透明フィルム10を作製した。
(実施例5)
実施例5は、耐候剤を、表面保護層30,40だけに30質量部添加し、その他は実施例1と同様であり、実施例5の透明フィルム10を作製した。
【0063】
(実施例6)
基材シート20に厚さ300μmのPVCシート(株式会社タツノ化学製)を用いた。
基材シート20に、銀系の抗ウイルス剤としてTB-B100(株式会社タイショーテクノス製)を固形分に対して4質量部添加して塗工し、表面保護層30を形成した。また、深さ150μmのエンボス部31の加工を行った。基材シート20の表面保護層30が形成されていない側を重ね合わせ実施例6の透明袋体101を作製した。
表面保護層30の厚みは、10μmである。
耐候剤は、表面保護層30だけに添加し、添加量は、10質量部である。
【0064】
(実施例7)
実施例7は、抗ウイルス剤の添加量を固形分に対して10質量部添加し、基材シート20の厚さを200μmとし、表面保護層30の厚みを3μmとし、又、耐候剤は、基材シート20だけに10質量部添加し、その他は実施例6と同様であり、実施例7の透明袋体101を作製した。
(実施例8)
実施例8は、エンボス部31の深さを100μmにて加工し、基材シート20の厚さを600μmとし、表面保護層30の厚みを15μmとし、又、耐候剤は、基材シート20及び表面保護層30に10質量部ずつ添加し、その他は実施例6と同様であり、実施例8の透明袋体101を作製した。
【0065】
(実施例9)
実施例9は、耐候剤を、表面保護層30だけに0.5質量部添加し、その他は実施例6と同様であり、実施例9の透明袋体101を作製した。
(実施例10)
実施例10は、耐候剤を、表面保護層30だけに30質量部添加し、その他は実施例6と同様であり、実施例10の透明袋体101を作製した。
【0066】
(比較例1)
比較例1は、抗ウイルス剤を固形分に対して3質量部添加し、その他は実施例1と同様であり、比較例1の透明フィルム10を作製した。
(比較例2)
比較例2は、抗ウイルス剤を固形分に対して11質量部添加し、その他は実施例1と同様であり、比較例2の透明フィルム10を作製した。
【0067】
(比較例3)
比較例3は、エンボス部31の深さを160μmにて加工し、その他は実施例1と同様であり、比較例3の透明フィルム10を作製した。
(比較例4)
比較例4は、基材シート20の厚さを100μmとし、その他は実施例1と同様であり、比較例4の透明フィルム10を作製した。
【0068】
(比較例5)
比較例5は、基材シート20の厚さを700μmとし、その他は実施例1と同様であり、比較例5の透明フィルム10を作製した。
(比較例6)
比較例6は、表面保護層30,40の厚みをそれぞれ2μmとし、その他は実施例1と同様であり、比較例6の透明フィルム10を作製した。
【0069】
(比較例7)
比較例7は、表面保護層30,40の厚みをそれぞれ16μmとし、その他は実施例1と同様であり、比較例7の透明フィルム10を作製した。
(比較例8)
比較例8は、耐候剤を、基材シート20及び表面保護層30,40の両層に添加せず、その他は実施例1と同様であり、比較例8の透明フィルム10を作製した。
【0070】
(比較例9)
比較例9は、耐候剤を、表面保護層30,40だけに0.4質量部添加し、その他は実施例1と同様であり、比較例8の透明フィルム10を作製した。
(比較例10)
比較例10は、耐候剤を、表面保護層30,40だけに31質量部添加し、その他は実施例1と同様であり、比較例10の透明フィルム10を作製した。
【0071】
(比較例11)
比較例11は、抗ウイルス剤を固形分に対して3質量部添加し、その他は実施例6と同様であり、比較例11の透明袋体101を作製した。
(比較例12)
比較例12は、抗ウイルス剤を固形分に対して11質量部添加し、その他は実施例6と同様であり、比較例12の透明袋体101を作製した。
【0072】
(評価基準)
以上のようにして得た実施例1~実施例10、比較例1~比較例12の透明フィルム10に対し、下記の(1)~(4)の性能評価を行なった。
(1)抗ウイルス活性
抗ウイルス活性は、ブラーク法(ISO 21702に準拠)により、活性値「2」以上を「〇」、「2」未満を「×」とした。
ウイルスはエンベロープ型(インフルエンザウイルス)を使用した。
【0073】
(2)耐候性
耐候性は、耐候性試験後、シートの変色、白化、亀裂のすべてが生じなかったとき、「〇」とし、変色、白化、亀裂の1つ以上が生じたとき、「×」とした。
耐候性試験は、次の条件で、ダイプラ・ウィンテス株式会社製・メタルウェザー試験機(KU-R5DCI-A)で行った。
ブラックパネル温度:53℃、照度:65mW/cm2(UV照射20時間+結露4時間)を1サイクルとし、10サイクル実施した。
【0074】
(3)透明性
透明性は、波長400~800nmにおける光透過率が50%以上で「〇」とし、50%未満で「×」とした。
紫外可視分光光度計にて光透過率を測定し、評価した。
(4)加工性
加工性は、主として耐久性、重量を考慮した作業性、視認性の観点から総合して評価した。耐久性、作業性、視認性のすべて問題がない場合を「○」とし、それ以外を「×」とした。
【0075】
【0076】
(実施例1~実施例10と比較例1~比較例12)
実施例1~実施例10と比較例1~比較例12のうち、実施例1~実施例10は、すべての性能評価の項目が「○」で、「合格」である。
これに対し、比較例1~比較例12は、性能評価の項目のうち、一つ以上の「×」があり、すべて「不合格」であった。
【0077】
(抗ウイルス活性について)
抗ウイルス活性については、比較例1、比較例6及び比較例11が不合格であった。
比較例1及び比較例11は、抗ウイルス剤の添加量が「3質量部」であり、少なすぎたことが原因と推測できる。
比較例6は、表面保護層30,40の厚みが共に「2μm」であり、薄すぎたことが原因と推測できる。
その結果、抗ウイルス剤の添加量が「3質量部」を超え、表面保護層30,40の厚みが共に「2μm」を超えていることが必要なものと推測できる。
【0078】
(耐候性について)
耐候性については、比較例2、比較例3、及び比較例7~比較例9、比較例12が不合格であった。
比較例2、比較例12は、抗ウイルス剤の添加量が「11質量部」であり、多すぎたことが原因と推測できる。
その結果、抗ウイルス剤の添加量が「11質量部」未満であることが必要なものと推測できる。
比較例3は、エンボス部31の深さが「160μm」であり、深すぎたことが原因と推測できる。
その結果、エンボス部31の深さが「160μm」未満であることが必要なものと推測できる。
【0079】
比較例7は、表面保護層30,40の厚みがそれぞれ「16μm」であり、厚すぎたことが原因と推測できる。
その結果、厚みが「16μm」が未満であることが必要なものと推測できる。
比較例8は、耐候剤を、基材シート20及び表面保護層30,40の両層に添加していないことが原因と推測できる。
比較例9は、耐候剤の添加量が、表面保護層30,40だけの「0.4質量部」であり、少なすぎたことが原因と推測できる。
その結果、耐候剤の添加量が「0.4質量部」を超えていることが必要なものと推測できる。
【0080】
(透明性について)
透明性については、比較例1~比較例12のすべてが合格であった。
(加工性について)
加工性については、比較例4、比較例5及び比較例10が不合格であった。
比較例4は、基材シート20の厚さが「100μm」であり、薄すぎたことが原因と推測できる。
比較例5は、基材シート20の厚さが「700μm」であり、厚すぎたことが原因と推測できる。
その結果、基材シート20の厚さが「100μm」を超え、「700μm」未満であることが必要なものと推測できる。
比較例10は、耐候剤の添加量が、表面保護層30,40だけの「31質量部」であり、多すぎたことが原因と推測できる。
その結果、耐候剤の添加量が「31質量部」未満であることが必要なものと推測できる。
【符号の説明】
【0081】
10 透明フィルム
20 基材シート
30 第一の表面保護層
31 エンボス部
32 第二のエンボス部
40 第二の表面保護層
50 印刷層
100 間仕切り
101 透明袋体
102 支持部材
103 枠部
103a 柱部
103b 連結部
104 脚部
104a 平行部
104b 連結部