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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】コネクタ構造及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/61 20110101AFI20220712BHJP
【FI】
H01R12/61
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522234
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2020019614
(87)【国際公開番号】W WO2020241347
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019097672
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小幡 孝義
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-93503(JP,A)
【文献】特開2006-147294(JP,A)
【文献】特開平6-188047(JP,A)
【文献】特開2000-36340(JP,A)
【文献】特開2004-22414(JP,A)
【文献】特開2004-103517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/61
H01R 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子部を有するコネクタと、
前記端子部に接続可能な電極部を有するフレキシブルプリント基板と、を備え、
前記コネクタは、
前記端子部を有するコネクタ本体と、
前記電極部が前記端子部と予め設定された正規位置で接触するように前記コネクタ本体に対する前記フレキシブルプリント基板の位置を決定するための位置決め突起と、を有し、
前記フレキシブルプリント基板のうち前記電極部から離間した部位には、前記位置決め突起を挿通させるための挿通孔が設けられており、
前記位置決め突起は、前記挿通孔に挿通されるにしたがって、前記フレキシブルプリント基板の位置が前記正規位置となるように前記フレキシブルプリント基板を移動させ
前記挿通孔への前記位置決め突起の挿通方向における前記フレキシブルプリント基板よりも先側に設けられており、前記挿通孔に前記位置決め突起が挿通されたときに前記挿通方向に膨出した前記フレキシブルプリント基板の一部を受け入れながら前記フレキシブルプリント基板を支持する支持部材をさらに備える、コネクタ構造。
【請求項2】
端子部を有するコネクタと、
前記端子部に接続可能な電極部を有するフレキシブルプリント基板と、を備え、
前記コネクタは、
前記端子部を有するコネクタ本体と、
前記電極部が前記端子部と予め設定された正規位置で接触するように前記コネクタ本体に対する前記フレキシブルプリント基板の位置を決定するための位置決め突起と、を有し、
前記フレキシブルプリント基板のうち前記電極部から離間した部位には、前記位置決め突起を挿通させるための挿通孔が設けられており、
前記位置決め突起は、前記挿通孔に挿通されるにしたがって、前記フレキシブルプリント基板の位置が前記正規位置となるように前記フレキシブルプリント基板を移動させ、
前記フレキシブルプリント基板のうちの前記挿通孔の周囲の部位を補強する孔周囲補強部をさらに備え、
前記孔周囲補強部は、前記挿通孔を包囲する内周面を有し、
前記内周面は、前記挿通孔の外形よりも大きく、かつ、前記位置決め突起の外形と同じかそれよりも小さい、コネクタ構造
【請求項3】
前記位置決め突起は、
前記コネクタ本体に接続された基端部と、
前記基端部に接続された挿通端部と、を有しており、
前記挿通端部は、前記コネクタ本体から離間するにしたがって次第に当該挿通端部の外形が小さくなる形状を有する、請求項1又は2に記載のコネクタ構造。
【請求項4】
前記挿通孔は、前記基端部と前記挿通端部との境界部の外形よりも小さな形状を有し、
前記フレキシブルプリント基板は、前記挿通孔への前記位置決め突起の挿入時に前記挿通孔が拡大するように弾性変形可能である、請求項に記載のコネクタ構造。
【請求項5】
前記フレキシブルプリント基板は、前記挿通孔から前記位置決め突起を離脱させた際に前記挿通孔が縮小するように弾性変形可能である、請求項に記載のコネクタ構造。
【請求項6】
前記フレキシブルプリント基板は、
前記電極部が形成されたパターン形成面を有する絶縁層と、
前記パターン形成面に設けられており、前記電極部を含む配線パターンと、を有し、
前記孔周囲補強部は、前記パターン形成面に設けられている、請求項に記載のコネクタ構造。
【請求項7】
前記電極部を補強する電極部補強部をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載のコネクタ構造。
【請求項8】
前記電極部は、前記フレキシブルプリント基板の厚さ方向と直交する直交方向に並ぶ複数のパターンを有し、
前記挿通孔は、前記直交方向における前記電極部の両側に設けられた一対の孔を有し、
前記位置決め突起は、前記一対の孔のそれぞれに挿通される一対のピンを有し、
前記一対のピンは、前記一対の孔に挿通された際に前記電極部に対して前記直交方向における外向きの引っ張り力を作用させる位置に設けられている、請求項1からのいずれかに記載のコネクタ構造。
【請求項9】
前記コネクタ本体は、
前記電極部をその厚さ方向の両側から挟持可能な第1ボディ及び第2ボディと、
前記第1ボディ及び前記第2ボディのいずれか一方のボディのうち他方のボディと対向する部位に固定されており、前記端子部を有する基板と、を有し、
前記位置決め突起は、前記第1ボディのうち前記第2ボディと対向する部位に接続されており、
前記第1ボディ及び前記第2ボディは、前記位置決め突起が前記挿通孔に挿通された状態で前記電極部と前記端子部とが互いに接触するように前記基板及び前記フレキシブルプリント基板を挟持する、請求項1からのいずれかに記載のコネクタ構造。
【請求項10】
電極部と、前記電極部から離間した位置に設けられた挿通孔と、を有するフレキシブルプリント基板と接続可能なコネクタであって、
前記電極部と接続可能な端子部を有するコネクタ本体と、
前記電極部が前記端子部と予め設定された正規位置で接触するように前記コネクタ本体に対する前記フレキシブルプリント基板の位置を決定するための位置決め突起と、を備え、
前記位置決め突起は、前記挿通孔に挿通されるにしたがって、前記フレキシブルプリント基板の位置が前記正規位置となるように前記フレキシブルプリント基板を移動させ
前記コネクタ本体は、
前記端子部を有する基板と、
前記基板を保持するボディと、を有し、
前記基板には、前記位置決め突起を挿通させるための貫通孔が設けられており、
前記位置決め突起は、前記ボディのうち前記ボディに保持された前記基板の前記貫通孔に挿通される部位に接続されている、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタ構造及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板を電子機器等に接続するためのコネクタ構造が知られている。例えば、特開2000-77122号公報(以下、「特許文献1」という。)には、クリップ本体と、フレキシブルプリント基板と、を備えるクリップ式中継コネクターが開示されている。クリップ本体は、フレキシブルプリント基板の幅方向の縁部を位置決めするスペーサと、フレキシブルプリント基板の挿入方向の先端部を位置決めするストッパ部材と、フレキシブルプリント基板の端子に接触するプローブを備えたピンブロック部材と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-77122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のクリップ式中継コネクターでは、クリップ本体に対してフレキシブルプリント基板が適切な位置で接触する状態を確保するためには、クリップ本体に対するフレキシブルプリント基板の位置決め、すなわち、フレキシブルプリント基板の幅方向の縁部の加工とフレキシブルプリント基板の挿入方向の先端部の加工との双方に高い精度が要求される。
【0005】
本発明の目的は、コネクタに対するフレキシブルプリント基板の位置決めを行うためのフレキシブルプリント基板の加工精度の要件を緩和可能なコネクタ構造及びコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面にしたがったコネクタ構造は、端子部を有するコネクタと、前記端子部に接続可能な電極部を有するフレキシブルプリント基板と、を備え、前記コネクタは、前記端子部を有するコネクタ本体と、前記電極部が前記端子部と予め設定された正規位置で接触するように前記コネクタ本体に対する前記フレキシブルプリント基板の位置を決定するための位置決め突起と、を有し、前記フレキシブルプリント基板のうち前記電極部から離間した部位には、前記位置決め突起を挿通させるための挿通孔が設けられており、前記位置決め突起は、前記挿通孔に挿通されるにしたがって、前記フレキシブルプリント基板の位置が前記正規位置となるように前記フレキシブルプリント基板を移動させる。
【0007】
また、本発明の一局面にしたがったコネクタは、電極部と、前記電極部から離間した位置に設けられた挿通孔と、を有するフレキシブルプリント基板と接続可能なコネクタであって、前記電極部と接続可能な端子部を有するコネクタ本体と、前記電極部が前記端子部と予め設定された正規位置で接触するように前記コネクタ本体に対する前記フレキシブルプリント基板の位置を決定するための位置決め突起と、を備え、前記位置決め突起は、前記挿通孔に挿通されるにしたがって、前記フレキシブルプリント基板の位置が前記正規位置となるように前記フレキシブルプリント基板を移動させる。
【発明の効果】
【0008】
以上に説明したように、この発明によれば、コネクタに対するフレキシブルプリント基板の位置決めを行うためのフレキシブルプリント基板の加工精度の要件を緩和可能なコネクタ構造及びコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のコネクタ構造においてコネクタ本体が挟持姿勢である状態を示す斜視図である。
図2図1に示されるコネクタ構造においてコネクタ本体が開放姿勢である状態を示す斜視図である。
図3】第1ボディと位置決め突起とフレキシブルプリント基板との関係を示す斜視図である。
図4】フレキシブルプリント基板を概略的に示す平面図である。
図5】コネクタにフレキシブルプリント基板を接続する前の状態を概略的に示す断面図である。
図6】コネクタにフレキシブルプリント基板が接続された状態を概略的に示す断面図である。
図7】挿通孔の加工精度を説明するための図である。
図8】コネクタにフレキシブルプリント基板が接続された状態においてフレキシブルプリント基板に外力が作用した状態を概略的に示す断面図である。
図9】位置決め突起を挿通孔から離脱させた状態を概略的に示す断面図である。
図10】支持部材の設置位置の変形例を示す断面図である。
図11】支持部材の設置位置の変形例を示す断面図である。
図12】位置決め突起の変形例を示す断面図である。
図13】挿通孔の大きさの変形例を示す断面図である。
図14】挿通孔の大きさの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態のコネクタ構造においてコネクタ本体が挟持姿勢である状態を示す斜視図である。図2は、図1に示されるコネクタ構造においてコネクタ本体が開放姿勢である状態を示す斜視図である。図3は、第1ボディと位置決め突起とフレキシブルプリント基板200との関係を示す斜視図である。
【0012】
本実施形態のコネクタ構造1は、コネクタ100と、フレキシブルプリント基板200と、補強層300(図4を参照)と、支持部材400(図5及び図6を参照)と、を備えている。
【0013】
コネクタ100は、フレキシブルプリント基板200と接続可能である。コネクタ100は、コネクタ本体110と、位置決め突起120と、を有している。
【0014】
コネクタ本体110は、フレキシブルプリント基板200と接続される端子部116を有している。本実施形態では、コネクタ本体110は、第1ボディ111と、第2ボディ112と、支軸113と、付勢部材114と、端子部116を有する基板115と、を有している。
【0015】
図3に示されるように、第1ボディ111は、支軸113を保持している。第2ボディ112は、第1ボディ111に対して支軸113まわりに揺動可能に保持されている。具体的に、第2ボディ112は、第1ボディ111とともにフレキシブルプリント基板200を挟持する挟持姿勢(図1に示される姿勢)と、フレキシブルプリント基板200の挟持を開放する開放姿勢(図2に示される姿勢)と、の間で第1ボディ111に対して揺動可能である。第2ボディ112は、第1ボディ111に向けてフレキシブルプリント基板200を押し付ける押付部112aを有している。
【0016】
付勢部材114は、第1ボディ111及び第2ボディ112間に配置されている。付勢部材114は、第2ボディ112が挟持姿勢となるように第1ボディ111に対して第2ボディ112を付勢している。本実施形態では、付勢部材114として、コイルバネが用いられている。
【0017】
以上のように、第1ボディ111、第2ボディ112、支軸113及び付勢部材114は、いわゆるクリップ形状に形成されている。
【0018】
基板115は、図3に示されるように、第1ボディ111に固定されている。基板115の端子部116は、支軸113を基準として付勢部材114が配置された側とは反対側に配置されている。なお、図3では、端子部116のうちフレキシブルプリント基板200で隠れている部分が破線で示されている。基板115は、ケーブル2(図3を参照)と接続可能な部位を有している。
【0019】
位置決め突起120については、後述する。
【0020】
図4は、フレキシブルプリント基板を概略的に示す平面図である。図4に示されるように、フレキシブルプリント基板200は、絶縁層210と、配線パターン220と、を有している。
【0021】
絶縁層210は、一方側の主面(以下、「パターン形成面S1」と表記する。)と、他方側の主面(以下、「反対面S2」と表記する。)と、を有している。絶縁層210の厚さは、例えば、40μm程度に設定される。絶縁層210は、第1ボディ111及び第2ボディ112間に差し込まれる差込方向(図4における下方向)における先端部である差し込み端部214を有している。
【0022】
配線パターン220は、絶縁層210のパターン形成面S1に設けられている。配線パターン220の厚さは、例えば、20μm程度に設定される。配線パターン220は、端子部116に接続される電極部222を有している。なお、図示は省略されているが、配線パターン220は、電極部222につながる所定のパターンを含んでいる。
【0023】
電極部222は、差し込み端部214のパターン形成面S1に設けられている。電極部222は、フレキシブルプリント基板200の厚さ方向及び前記差込方向の双方と直交する直交方向(図4における左右方向)に並ぶ複数のパターンを有している。
【0024】
ここで、電極部222が端子部116とが予め設定された正規位置で接触するようにコネクタ本体110に対してフレキシブルプリント基板200の位置を決定する構造について説明する。この構造は、コネクタ100の位置決め突起120と、フレキシブルプリント基板200の絶縁層210に設けられた挿通孔210hと、により構成される。
【0025】
位置決め突起120は、電極部222が端子部116とが正規位置で接触するようにコネクタ本体110に対するフレキシブルプリント基板200の位置を決定するための部位である。位置決め突起120は、挿通孔210hに挿通されるにしたがって、フレキシブルプリント基板200の位置が正規位置となるようにフレキシブルプリント基板200を移動させる。位置決め突起120は、第1ボディ111のうち第2ボディ112と対向する部位から第2ボディ112に向かって突出する形状を有している。
【0026】
本実施形態では、位置決め突起120は、第1ピン121と、第2ピン122と、を有している。第1ピン121は、支軸113と平行な方向において、第1ボディ111のうち押付部112aと対向する部位の一方側に設けられている。第2ピン122は、支軸113と平行な方向において、第1ボディ111のうち押付部112aと対向する部位の他方側に設けられている。各ピン121,122は、基端部124と、挿通端部126と、を有している。
【0027】
基端部124は、第1ボディ111から第2ボディ112に向かって突出する形状を有している。本実施形態では、基端部124は、円柱状に形成されている。
【0028】
挿通端部126は、基端部124に接続されている。挿通端部126は、第1ボディ111から離間するにしたがって次第に当該挿通端部126の外形が小さくなる形状を有している。本実施形態では、挿通端部126は、円錐状に形成されている。挿通端部126における基端部124側の端部の径は、基端部124の径と同じである。
【0029】
なお、基端部124及び挿通端部126は、全体として例えば円錐状に形成されていてもよい。
【0030】
また、図3に示されるように、基板115には、位置決め突起120を挿通させるための貫通孔115hが設けられている。つまり、位置決め突起120は、第1ボディ111に対して基板115を位置決めする機能と、コネクタ本体110に対してフレキシブルプリント基板200を位置決めする機能と、を兼ねている。
【0031】
次に、挿通孔210hについて説明する。図4に示されるように、挿通孔210hは、絶縁層210のうち電極部222から離間した部位に設けられている。本実施形態では、挿通孔210hは、第1孔211hと、第2孔212hと、を有している。第1孔211hは、絶縁層210のうち直交方向における電極部222の一方側に設けられている。第2孔212hは、絶縁層210のうち直交方向における電極部222の他方側に設けられている。第1ピン121及び第2ピン122は、各孔211h,212hに挿通された際に電極部222に対して直交方向における外向きの引っ張り力を作用させる位置に設けられている。各孔211h,212hは、円形に設定されている。ただし、各孔211h,212hの形状は、円形に限られず、楕円形や多角形等であってもよい。各孔211h,212hは、位置決め突起120の基端部124の外形よりも小さい。
【0032】
絶縁層210は、挿通孔210hへの位置決め突起120の挿入時に挿通孔210hが拡大するように弾性変形可能な材料からなることが好ましい。絶縁層210は、挿通孔210hから位置決め突起120が離脱した際に挿通孔210hが縮小するように弾性変形可能な材料からなることがさらに好ましい。本実施形態では、絶縁層210は、熱可塑性ポリウレタンからなる。なお、絶縁層210は、シリコーン樹脂またはその変性樹脂からなってもよい。
【0033】
補強層300は、フレキシブルプリント基板200を補強する層である。補強層300は、フレキシブルプリント基板200の剛性よりも高い剛性を有している。例えば、補強層300は、ショアD硬度70以上80以下のアクリル樹脂からなる。ただし、補強層300は、ウレタン樹脂からなってもよい。絶縁層210の厚さに対する補強層300の厚さの割合は、例えば、1:1以上1:4以下に設定されることが好ましく、1:2以上1:3以下に設定されることがさらに好ましい。本実施形態では、補強層300の厚さは、0.1mm程度に設定されている。
【0034】
補強層300は、絶縁層210のパターン形成面S1及び反対面S2の少なくとも一方に設けられる。本実施形態では、補強層300は、パターン形成面S1にのみ設けられている。補強層300は、配線パターン220のうちの電極部222以外の部位の一部を被覆し、かつ、電極部222を露出させている。なお、図4では、補強層300は、斜線で示されている。また、補強層300が反対面S2に設けられる場合、補強層300は、反対面S2の任意の部位に設けられることが可能である。
【0035】
本実施形態では、補強層300は、孔周囲補強部310と、電極部補強部320と、を有している。
【0036】
孔周囲補強部310は、フレキシブルプリント基板200のうちの挿通孔210hの周囲の部位を補強する。図4に示されるように、孔周囲補強部310は、挿通孔210hを包囲する内周面312を有している。本実施形態では、内周面312は、円筒状に形成されている。この内周面312の径は、挿通孔210hの径よりも大きく、かつ、基端部124の径と同じかそれよりも小さく設定されている。
【0037】
電極部補強部320は、フレキシブルプリント基板200のうち電極部222を補強する部位である。本実施形態では、電極部補強部320には、電極部222を露出させる露出口320hが設けられている。電極部補強部320は、絶縁層210の差し込み端部214を補強している。
【0038】
支持部材400は、挿通孔210hへの位置決め突起120の挿通方向におけるフレキシブルプリント基板200よりも先側に設けられている。図5及び図6に示されるように、本実施形態では、支持部材400は、フレキシブルプリント基板200の反対面S2に接着されている。支持部材400は、絶縁層210の反対面S2の全域を被覆する形状に形成されることが好ましい。なお、図1図3では、支持部材400の図示は省略されている。支持部材400は、挿通孔210hに位置決め突起120が挿通されたときに前記挿通方向に膨出したフレキシブルプリント基板200の一部213(図6を参照)を受け入れながら、フレキシブルプリント基板200を支持する。支持部材400は、位置決め突起120が挿通孔210hに挿通された状態においてフレキシブルプリント基板200の一部213や位置決め突起120の形状に合わせて変形し、かつ、位置決め突起120が挿通孔210hから離脱することによって元の形状に復帰する材料からなる。支持部材400は、低反発性の材料(ゴムスポンジ等)からなる。
【0039】
次に、コネクタ100にフレキシブルプリント基板200を接続するときの操作について説明する。
【0040】
まず、第2ボディ112が開放姿勢となるように付勢部材114の付勢力に抗しながら第1ボディ111及び第2ボディ112を操作する(摘まむ)。
【0041】
そして、挿通孔210hが位置決め突起120とフレキシブルプリント基板200の厚さ方向に概ね一致するまで差込方向に沿ってフレキシブルプリント基板200を差し込む。なお、図5は、このときの状態を示している。
【0042】
続いて、付勢部材114の付勢力によって第2ボディ112が挟持姿勢となるように第1ボディ111及び第2ボディ112の操作を開放する。これにより、第1ボディ111及び第2ボディ112は、図5において矢印AR1で示される方向に移動する。
【0043】
そうすると、図5に示されるように、位置決め突起120と挿通孔210hとがフレキシブルプリント基板200の差込方向にわずかにずれていたとしても、位置決め突起120が挿通孔210hに挿通されるにしたがって、図6において矢印AR2で示されるように、挿通端部126が絶縁層210のうち挿通孔210hを規定する部位を押圧することによってフレキシブルプリント基板200が正規位置に移動する。このため、コネクタ100に対するフレキシブルプリント基板200の位置決めを行うためのフレキシブルプリント基板200の加工精度の要件が緩和される。
【0044】
また、位置決め突起120が挿通孔210hに挿通される際、挿通孔210hが拡大する。このため、図7に示されるように、挿通孔210hの形状が予め設定された形状(本実施形態では円形)とわずかに異なっていたとしても、位置決め突起120が挿通孔210hに挿通されることによってフレキシブルプリント基板200が正規位置に移動する。なお、図6は、位置決め突起120の挿通孔210hへの挿通後の状態を示している。
【0045】
また、フレキシブルプリント基板200が正規位置に移動するのと同時に、電極部222のうち各孔211h,212h間に位置する部位が押付部112aによって端子部116に向けて押し付けられる。このため、電極部222が端子部116に良好に接触した状態が確保される。
【0046】
また、このコネクタ構造1では、図8に示されるように、位置決め突起120が挿通孔210hに挿通された状態において、コネクタ100に対してフレキシブルプリント基板200を例えば前記差込方向と反対方向(図8において矢印で示される方向)に変位させる外力がフレキシブルプリント基板200に作用した場合においても、孔周囲補強部310が位置決め突起120に当接しているため、コネクタ100に対するフレキシブルプリント基板200の相対変位、すなわち、端子部116と電極部222との接触状態の悪化が抑制される。
【0047】
次に、コネクタ100からフレキシブルプリント基板200を取り外すときの操作について説明する。
【0048】
コネクタ100にフレキシブルプリント基板200を接続するときと同様に、まず、第2ボディ112が開放姿勢となるように付勢部材114の付勢力に抗しながら第1ボディ111及び第2ボディ112を操作する。
【0049】
そして、フレキシブルプリント基板200を第1ボディ111から離間させることによって位置決め突起120を挿通孔210hから離脱させる。
【0050】
そうすると、図9に示されるように、挿通孔210hは、その外形が基端部124の外形よりも小さくなるように収縮する。よって、その挿通孔210hに再度位置決め突起120が挿通される際に、挿通孔210hが拡大しながらフレキシブルプリント基板200が正規位置に移動する。なお、図9では、配線パターン220の図示は省略されている。
【0051】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
例えば、図10及び図11に示されるように、支持部材400は、第2ボディ112のうち位置決め突起120と対向する部位に固定されていてもよい。
【0053】
また、図12に示されるように、各ピン121,122は、各孔211h,212hに挿入されるにしたがってフレキシブルプリント基板200に対して直交方向(電極部222を構成する複数のパターンが並ぶ方向)における外向きの引っ張り力を作用させる形状に形成されてもよい。この態様では、絶縁層210のうち電極部222を支持する部位の撓みが抑制されるため、電極部222と端子部116との良好な接触状態が確保される。
【0054】
また、孔周囲補強部310の内周面312の径は、位置決め突起120の基端部124の径よりも大きく設定されてもよい。この態様では、基端部124が内周面312内に位置するまで位置決め突起120が挿通孔210hに挿通されるため、例えば、フレキシブルプリント基板200に対して差込方向と反対方向の外力が作用したときに、内周面312が基端部124に当接することによってフレキシブルプリント基板200が前記反対方向に変位することが抑制される。
【0055】
また、図13及び図14に示されるように、挿通孔210hの径は、基端部124の外形と同じに設定されてもよい。
【0056】
以上に説明したコネクタ構造1及びコネクタ100の構成と、そのコネクタ構造1及びコネクタ100によって奏される効果と、のまとめは、以下のとおりである。
【0057】
コネクタ構造は、端子部を有するコネクタと、前記端子部に接続可能な電極部を有するフレキシブルプリント基板と、を備え、前記コネクタは、前記端子部を有するコネクタ本体と、前記電極部が前記端子部と予め設定された正規位置で接触するように前記コネクタ本体に対する前記フレキシブルプリント基板の位置を決定するための位置決め突起と、を有し、前記フレキシブルプリント基板のうち前記電極部から離間した部位には、前記位置決め突起を挿通させるための挿通孔が設けられており、前記位置決め突起は、前記挿通孔に挿通されるにしたがって、前記フレキシブルプリント基板の位置が前記正規位置となるように前記フレキシブルプリント基板を移動させる。
【0058】
このコネクタ構造では、位置決め突起は、フレキシブルプリント基板に設けられた挿通孔に挿通されるにしたがって、フレキシブルプリント基板の位置が正規位置となるようにフレキシブルプリント基板を移動させるため、位置決め突起が挿通孔に挿通されるようにフレキシブルプリント基板がコネクタ本体に組み付けられることにより、電極部と端子部とが有効に正規位置で接触する。よって、コネクタに対するフレキシブルプリント基板の位置決めを行うためのフレキシブルプリント基板の加工精度の要件が緩和される。
【0059】
また、前記位置決め突起は、前記コネクタ本体に接続された基端部と、前記基端部に接続された挿通端部と、を有しており、前記挿通端部は、前記コネクタ本体から離間するにしたがって次第に当該挿通端部の外形が小さくなる形状を有することが好ましい。
【0060】
この態様では、上記の効果が有効に奏される。
【0061】
具体的に、前記挿通孔は、前記基端部と前記挿通端部との境界部の外形よりも小さな形状を有し、前記フレキシブルプリント基板は、前記挿通孔への前記位置決め突起の挿入時に前記挿通孔が拡大するように弾性変形可能であることが好ましい。
【0062】
この態様では、挿通孔への位置決め突起の挿通時に挿通孔が拡大しながらフレキシブルプリント基板が正規位置に移動するため、挿通孔の形成位置の設計位置からのずれが許容される。
【0063】
また、前記コネクタ構造において、前記挿通孔への前記位置決め突起の挿通方向における前記フレキシブルプリント基板よりも先側に設けられており、前記挿通孔に前記位置決め突起が挿通されたときに前記挿通方向に膨出した前記フレキシブルプリント基板の一部を受け入れながら前記フレキシブルプリント基板を支持する支持部材をさらに備えることが好ましい。
【0064】
この態様では、支持部材が挿通方向に膨出したフレキシブルプリント基板の一部(余肉)を受け入れながらフレキシブルプリント基板を支持するため、挿通孔に位置決め突起が挿通される際に、フレキシブルプリント基板が挿通方向に変形することの抑制と、位置決め突起が有効に挿通孔に挿通されるように挿通孔が拡大することと、が両立される。
【0065】
また、前記フレキシブルプリント基板は、前記挿通孔から前記位置決め突起を離脱させた際に前記挿通孔が縮小するように弾性変形可能であることが好ましい。
【0066】
この態様では、位置決め突起の離脱後に挿通孔が縮小するため、その挿通孔に再度位置決め突起が挿通される際に、挿通孔が拡大しながらフレキシブルプリント基板が正規位置に移動する。
【0067】
また、前記コネクタ構造において、前記フレキシブルプリント基板のうちの前記挿通孔の周囲の部位を補強する孔周囲補強部をさらに備えていてもよい。この場合において、前記孔周囲補強部は、前記挿通孔を包囲する内周面を有し、前記内周面は、前記挿通孔の外形よりも大きく、かつ、前記位置決め突起の外形と同じかそれよりも小さいことが好ましい。
【0068】
この態様では、位置決め突起の孔周囲補強部に対する相対変位が抑制され、かつ、コネクタに対してフレキシブルプリント基板をその厚さ方向と直交する方向に変位させる外力がフレキシブルプリント基板に作用した場合においても、孔周囲補強部が位置決め突起に当接しているため、コネクタに対するフレキシブルプリント基板の相対変位が抑制される。
【0069】
さらにこの場合において、前記フレキシブルプリント基板は、前記電極部が形成されたパターン形成面を有する絶縁層と、前記パターン形成面に設けられており、前記電極部を含む配線パターンと、を有し、前記孔周囲補強部は、前記パターン形成面に設けられていることが好ましい。
【0070】
このようにすれば、絶縁層に対する配線パターンの形成と孔周囲補強部の形成とを同じ工程で行うことが可能となる。
【0071】
また、前記コネクタ構造において、前記電極部を補強する電極部補強部をさらに備えることが好ましい。
【0072】
このようにすれば、電極部のコネクタ本体への接続が安定する。
【0073】
また、前記電極部は、前記フレキシブルプリント基板の厚さ方向と直交する直交方向に並ぶ複数のパターンを有し、前記挿通孔は、前記直交方向における前記電極部の両側に設けられた一対の孔を有し、前記位置決め突起は、前記一対の孔のそれぞれに挿通される一対のピンを有していてもよい。この場合において、前記一対のピンは、前記一対の孔に挿通された際に前記電極部に対して前記直交方向における外向きの引っ張り力を作用させる位置に設けられていることが好ましい。
【0074】
このようにすれば、電極部の撓みが抑制されるため、電極部と端子部との良好な接触状態が確保される。
【0075】
また、前記コネクタ本体は、前記電極部をその厚さ方向の両側から挟持可能な第1ボディ及び第2ボディと、前記第1ボディ及び前記第2ボディのいずれか一方のボディのうち他方のボディと対向する部位に固定されており、前記端子部を有する基板と、を有していてもよい。この場合において、前記位置決め突起は、前記第1ボディのうち前記第2ボディと対向する部位に接続されており、前記第1ボディ及び前記第2ボディは、前記位置決め突起が前記挿通孔に挿通された状態で前記電極部と前記端子部とが互いに接触するように前記基板及び前記フレキシブルプリント基板を挟持することが好ましい。
【0076】
また、コネクタは、電極部と、前記電極部から離間した位置に設けられた挿通孔と、を有するフレキシブルプリント基板と接続可能なコネクタであって、前記電極部と接続可能な端子部を有するコネクタ本体と、前記電極部が前記端子部と予め設定された正規位置で接触するように前記コネクタ本体に対する前記フレキシブルプリント基板の位置を決定するための位置決め突起と、を備え、前記位置決め突起は、前記挿通孔に挿通されるにしたがって、前記フレキシブルプリント基板の位置が前記正規位置となるように前記フレキシブルプリント基板を移動させる。
【0077】
また、前記コネクタ本体は、前記端子部を有する基板と、前記基板を保持するボディと、を有していてもよい。この場合において、前記基板には、前記位置決め突起を挿通させるための貫通孔が設けられており、前記位置決め突起は、前記ボディのうち前記ボディに保持された前記基板の前記貫通孔に挿通される部位に接続されていることが好ましい。
【0078】
この態様では、位置決め突起は、コネクタ本体に対するフレキシブルプリント基板の位置決めを行う機能に加え、ボディに対する基板の位置決めを行う機能を兼ねるため、ボディに対する基板の位置決めを行うための専用の部位を設ける場合に比べ、構造が簡素化される。
【符号の説明】
【0079】
1 コネクタ構造、2 ケーブル、100 コネクタ、110 コネクタ本体、111 第1ボディ、112 第2ボディ、113 支軸、114 付勢部材、115 基板、115h 貫通孔、116 端子部、120 位置決め突起、121 第1ピン、122 第2ピン、124 基端部、126 挿通端部、200 フレキシブルプリント基板、210 絶縁層、210h 挿通孔、211h 第1孔、212h 第2孔、214 差し込み端部、220 配線パターン、222 電極部、300 補強層、310 孔周囲補強部、312 内周面、320 電極部補強部、320h 露出口、400 支持部材、S1 パターン形成面、S2 反対面。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14