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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】多重電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/483 20070101AFI20220712BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20220712BHJP
【FI】
H02M7/483
H02M7/493
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021534458
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 JP2019028870
(87)【国際公開番号】W WO2021014573
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一誠
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅博
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-011606(JP,A)
【文献】特開2003-070263(JP,A)
【文献】特開2012-100401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/00~ 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの直流正側が接続され、互いの直流負側が接続され、互いの直流中性点が短絡されない複数の単位電力変換器と、
前記複数の単位電力変換器の直流中性点にそれぞれ接続された複数の単位抵抗と、
前記複数の単位抵抗は2つ以上の複数の組に分けられ、
前記複数の組は、その各々の組に属する単位抵抗の、単位電力変換器の直流中性点に接続されない一端同士を互いに接続した電位検出点を、各々備え、
前記複数の組の各々が持つ電位検出点の間の電圧を検出する電圧検出手段と、
を備えた多重電力変換システム。
【請求項2】
前記電圧検出手段に検出された電圧に基づいて、保護動作を行う制御装置、
を備えた請求項1に記載の多重電力変換システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電圧検出手段による電圧検出値に基づいて、単位電力変換器の少なくとも1台を構成するすべてのスイッチング素子群のゲートにオフ信号を与える請求項に記載の多重電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多重電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数台の3レベル電力変換器を備える多重電力変換システムを開示する。当該多重電力変換システムによれば、直流平滑コンデンサの温度上昇の予防および直流母線の電位の安定性を図り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開平11-046481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の多重電力変換システムにおいては、各々の単位電力変換器の直流中性点は互いに母線で短絡されている。この場合、ある単位電力変換器において、直流正側と直流中性点との間または直流負側と直流中性点との間で短絡故障が発生すると、複数の単位電力変換器との間で、母線を通って短絡電流が流れる。そのため、他の健全な単位電力変換器に故障が拡大する恐れがある。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、容易な構成で故障の拡大を防ぐことができる多重電力変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る多重電力変換システムは、互いの直流正側が接続され、互いの直流負側が接続され、互いの直流中性点が短絡されない複数の単位電力変換器と、前記複数の単位電力変換器の直流中性点にそれぞれ接続された複数の単位抵抗と、前記複数の単位抵抗は2つ以上の複数の組に分けられ、前記複数の組は、その各々の組に属する単位抵抗の、単位電力変換器の直流中性点に接続されない一端同士を互いに接続した電位検出点を、各々備え、前記複数の組の各々が持つ電位検出点の間の電圧を検出する電圧検出手段と、を備えた
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、複数の単位電力変換器において、互いの直流中性点は、短絡されない。この場合、互いの直流中性点の間に短絡電流は流れない。このため、容易な構成で故障の拡大を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における多重電力変換システムの構成図である。
図2】実施の形態1における多重電力変換システムの単位電力変換器の第1例の構成図である。
図3】実施の形態1における多重電力変換システムの単位電力変換器の第2例の構成図である。
図4】実施の形態1における多重電力変換システムの制御装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
図5】実施の形態1における多重電力変換システムの制御装置のハードウェア構成図である。
図6】実施の形態2における多重電力変換システムの構成図である。
図7】実施の形態2における多重電力変換システムの要部の構成図である。
図8】実施の形態3における多重電力変換システムの要部の構成図である。
図9】実施の形態4における多重電力変換システムの要部の構成図である。
図10】実施の形態5における多重電力変換システムの要部の構成図である。
図11】実施の形態6における多重電力変換システムの要部の構成図である。
図12】実施の形態7における多重電力変換システムの要部の構成図である。
図13】実施の形態8における多重電力変換システムの要部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における多重電力変換システムの構成図である。
【0011】
図1に示されるように、多重電力変換システムは、複数の単位電力変換器1を備える。例えば、複数の単位電力変換器1の各々において、直流側は、図示されない直流電源に接続される。例えば、複数の単位電力変換器1の各々において、図示されない交流側は、負荷に接続される。
【0012】
複数の単位電力変換器1の各々は、スイッチング素子群2と正側コンデンサ3と負側コンデンサ4と複数のリアクトル5とを備える。
【0013】
スイッチング素子群2は、図示されない複数のスイッチング素子を備える。
【0014】
正側コンデンサ3は、単位電力変換器1の直流正側Pと直流中性点Mとの間に接続される。負側コンデンサ4は、単位電力変換器1の直流負側Nと直流中性点Mとの間に接続される。
【0015】
複数のリアクトル5の各々は、交流側の各相に直列に接続される。
【0016】
複数の単位電力変換器1において、互いの直流正側Pは、互いに接続される。互いの直流負側Nは、互いに接続される。互いの直流中性点Mは、互いに短絡されない。例えば、互いの直流中性点Mは、互いに接続されない。
【0017】
例えば、正側電圧センサ6は、複数の単位電力変換器1のうちのいずれか1つの単位電力変換器1に設けられる。正側電圧センサ6は、当該単位電力変換器1において直流正側Pと直流中性点Mとの電位差を検出し得るように設けられる。
【0018】
複数の負側電圧センサ7の各々は、複数の単位電力変換器1の各々に設けられる。複数の負側電圧センサ7の各々は、複数の単位電力変換器1の各々において直流負側Nと直流中性点Mとの電位差を検出し得るように設けられる。
【0019】
例えば、制御装置8は、複数の単位電力変換器1の各々に対して同一のゲート信号を送信する。例えば、制御装置8は、複数の単位電力変換器1の各々に対して同一電圧指令値と異なるキャリア波とから生成されたゲート信号を送信する。
【0020】
制御装置8は、正側電圧センサ6と複数の負側電圧センサ7の各々の検出結果に基づいて複数の単位電力変換器1の各々において直流正側Pと直流中性点Mとの電位差の不均一量を演算する。制御装置8は、複数の負側電圧センサ7の各々の検出結果に基づいて複数の単位電力変換器1の各々において直流負側Nと直流中性点Mとの電位差の不均一量を演算する。
【0021】
例えば、制御装置8は、多重電力変換システムを構成するn台の単位電力変換器の各々において、直流負側Nと直流中性点Mとの間の電位差の不均一量を検出する。具体的には、例えば、制御装置8は、n台のうち第iの単位電力変換器の直流負側Nと直流中性点Mとの間の電位差をvとして、次の(1)式を用いて各々の単位電力変換器の直流負側Nと直流中性点Mとの間の電位差の不均一量を演算する。
【0022】
【数1】
【0023】
制御装置8は、不均一量の演算結果に基づいて複数の単位電力変換器1のスイッチング素子群2を動作させる。
【0024】
次に、図2を用いて、単位電力変換器1の第1例を説明する。
図2は実施の形態1における多重電力変換システムの単位電力変換器の第1例の構成図である。
【0025】
図2は、自励式半導体素子とダイオードを用いた三相3レベル電力変換器の一構成例である。当該単位電力変換器1においては、直流端子間に2つの直流コンデンサが直列接続され、その中間点である直流中性点を有する。単位電力変換器内の自励式半導体素子の各々のゲートにオン、オフ信号を与えることで、それらの信号に応じて直流正側P、直流中性点M、直流負側Nのいずれかの電位が各相交流端子に出力される。
【0026】
次に、図3を用いて、単位電力変換器1の第2例を説明する。
図3は実施の形態1における多重電力変換システムの単位電力変換器の第2例の構成図である。
【0027】
図3は、自励式半導体素子とダイオードを用いた三相3レベル電力変換器の一構成例である。当該単位電力変換器1においても、図2に示した電力変換器と同様に、単位電力変換器内の自励式半導体素子の各々のゲートにオン、オフ信号を与えることで、それらの信号に応じて直流正側P、直流中性点M、直流負側Nのいずれかの電位が各相交流端子に出力される。
【0028】
実施の形態1において、例えば、各々の単位電力変換器の電圧vPMと電圧vMNの差を直流中性点Mの電位とする。電圧vPMと電圧vMNが一致すれば、直流中性点Mの電位は0となる。電圧vPMと電圧vMNが不均一となると、直流正側P、直流負側Nの一方の直流コンデンサ、またはスイッチング素子に過大な電圧が印加されるため、通常、直流中性点Mの電位は0に近づくように制御されるか、または直流中性点Mの電位の絶対値を閾値と比較して、閾値を超えた場合には電力変換器の保護動作を行い、過大な電圧の印加を防ぐ。
【0029】
ここでは、三相3レベル電力変換器の2つの例を示したが、構成はこれら2つに限定しない。また、ここでは例として三相電力変換器の例を示したが、相数は三相に限定するものではなく、何相であっても同様である。また、ここでは例として3レベル電力変換器の例を示したが、レベル数は3に限定するものではなく、3レベル以上の何レベルの電力変換器であっても同様である。
【0030】
次に、図4を用いて、制御装置8の動作の概要を説明する。
図4は実施の形態1における多重電力変換システムの制御装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0031】
ステップS1では、制御装置8は、各々の単位電力変換器の直流負側Nと直流中性点Mとの間の電位差の不均一量を演算し、当該演算値が予め設定された閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0032】
ステップS1で各々の単位電力変換器の直流負側Nと直流中性点Mとの間の電位差の不均一量が予め設定された閾値よりも大きくなかった場合、制御装置8は、ステップS2の動作を行う。ステップS2では、制御装置8は、複数の正側電圧センサ6と複数の負側電圧センサ7の各々との検出値に基づいて複数のスイッチング素子群2に対するゲート信号を送信する。その後、制御装置8は、ステップS1の動作を行う。
【0033】
ステップS1で各々の単位電力変換器の直流負側Nと直流中性点Mとの間の電位差の不均一量が予め設定された閾値よりも大きかった場合、制御装置8は、ステップS3の動作を行う。ステップS3では、制御装置8は、複数のスイッチング素子群2をオフにするゲート信号を送信する。その後、制御装置8は、動作を終了する。
【0034】
以上で説明した実施の形態1によれば、複数の単位電力変換器1において、互いの直流中性点Mは、短絡されない。この場合、単位電力変換器1が直流中性点Mの電位を交流端子に出力する期間において、複数の単位電力変換器1の交流側と直流側を通る電流ループに直流コンデンサが含まれている。互いの直流中性点Mを母線で短絡した場合には、このループにおいて直流コンデンサは母線でバイパスされ、電流ループに直流コンデンサは含まれない。したがって、互いの直流中性点Mは短絡しない方が、互いの直流中性点Mを短絡した場合と比較して、循環電流に対するインピーダンスは大きい。そのため、循環電流は抑制される。その結果、電気部品の選定において、考慮すべき循環電流の重畳分が減少し、電気部品の定格を小さくすることで多重電力変換システムのコストを下げることができる。
【0035】
また、ある単位電力変換器1の直流正側Pと直流中性点Mとの間において短絡故障が発生しても、各々の単位電力変換器1の直流中性点Mの間には短絡電流が流れない。このため、互いの直流中性点Mを接続する場合に、単位電力変換器1の短絡故障による他の単位電力変換器1への故障の拡大を防ぐために挿入されるヒューズが不要となる。その結果、ヒューズの分だけコストを下げることができる。
【0036】
次に、図5を用いて、制御装置8の例を説明する。
図5は実施の形態1における多重電力変換システムの制御装置のハードウェア構成図である。
【0037】
制御装置8の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ9aと少なくとも1つのメモリ9bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア10を備える。
【0038】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ9aと少なくとも1つのメモリ9bとを備える場合、制御装置8の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ9bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ9aは、少なくとも1つのメモリ9bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置8の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ9aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ9bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0039】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア10を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、制御装置8の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置8の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0040】
制御装置8の各機能について、一部を専用のハードウェア10で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、ゲート信号を送信する機能については専用のハードウェア10としての処理回路で実現し、ゲート信号を送信する機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ9aが少なくとも1つのメモリ9bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0041】
このように、処理回路は、ハードウェア10、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで制御装置8の各機能を実現する。
【0042】
実施の形態2.
図6は実施の形態2における多重電力変換システムの構成図である。図7は実施の形態2における多重電力変換システムの要部の構成図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0043】
図6に示されるように、実施の形態2の多重電力変換システムにおいては、実施の形態1の多重電力変換システムと同様に、互いの直流中性点Mは、短絡されない。
【0044】
ただし、図7に示されるように、実施の形態2の多重電力変換システムは、分圧回路を備える。分圧回路は、複数の単位抵抗11と電位検出点12を備える。
【0045】
複数の単位抵抗11の各々は、複数の直流中性点Mの各々とその一端が接続され、各々の単位抵抗11の直流中性点Mと接続されない一端同士は互いに接続される。複数の単位抵抗11の各々の定格は、単位電力変換器1の直流側の短絡時に焼損しない抵抗値および定格である。単位電力変換器1の直流側の短絡時には、単位抵抗11ではインバータの直流側または交流側または直流コンデンサからエネルギーが流入する。このエネルギーは直流側および交流側のヒューズ、ブレーカなどの保護、直流コンデンサの静電エネルギーで制限される。したがって、単位抵抗11は、その考えうる流入エネルギーの範囲内で焼損しないように選定される。
【0046】
前記の直流側の短絡により印加される電圧は、直流負側Nと直流中性点Mとの間の電圧、直流正側と直流中性点Mとの間の電圧、のいずれかの電圧である。
【0047】
電位検出点12は、複数の単位抵抗11と直列に接続される。
【0048】
正側電圧センサ6は、複数の単位電力変換器1の直流正側Pと電位検出点12との間の電位差を検出する。
【0049】
負側電圧センサ7は、複数の単位電力変換器1の直流負側Nと電位検出点12との間の電位差を検出する。
【0050】
以上で説明した実施の形態2によれば、2つの電圧センサにおいて、直流正側Pと電位検出点12との間の電位差および、直流負側Nと電位検出点12との間の電位差を検出する。このとき、複数の単位抵抗11の抵抗値が同じ値であれば、正側電圧センサ6では複数の単位電力変換器1の直流正側Pと直流中性点Mとの間の電圧vPMの平均値を、負側電圧センサ7では複数の単位電力変換器1の直流中性点Mと直流負側Nとの間の電圧vMNの平均値を検出することができる。そのため、各々の単位電力変換器1の直流中性点Mの電位の平均値を検出することができる。そのため、直流中性点Mの電位の平均値を検出する場合、電圧センサの数を減らすことができる。
【0051】
なお、単位抵抗11の抵抗値は必ずしも同じである必要はない。抵抗値が等しくない場合は、電位検出点12には、それぞれの抵抗値に応じた加重平均値が現れ、これを検出することができる。
【0052】
実施の形態3.
図8は実施の形態3における多重電力変換システムの要部の構成図である。なお、実施の形態2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0053】
図8に示されるように、実施の形態3の多重電力変換システムは、複数の単位電圧センサ13を備える。単位電圧センサ13の数は、単位電力変換器1の数よりも1つ少ない。
【0054】
図8において、最も上の単位電圧センサ13は、最も上の単位抵抗11にかかる電圧vM1Mを検出する。上から2番目の単位電圧センサ13は、上から2番目の単位抵抗11にかかる電圧vM2Mを検出する。上から3番目の単位電圧センサ13は、上から3番目の単位抵抗11にかかる電圧vM3Mを検出する。
【0055】
制御装置8は、最も上の単位電圧センサ13の検出値に基づいて最も上の単位抵抗11にかかる電圧vM1Mを把握する。制御装置8は、2番目の単位電圧センサ13の検出値に基づいて上から2番目の単位抵抗11にかかる電圧vM2Mを把握する。制御装置8は、3番目の単位電圧センサ13の検出値に基づいて上から3番目の単位抵抗11にかかる電圧vM3Mを把握する。
【0056】
制御装置8は、次の(2)式を用いて最も下の抵抗にかかる電圧vM4Mを把握する。
【0057】
【数2】
【0058】
なお、本実施形態において、単位電圧センサ13の数は、単位電力変換器の数よりも1つ少ないとし、単位電圧センサ13によって検出しない単位抵抗11の両端電圧は、数2によって把握するとしたが、単位電圧センサ13の数は、単位電力変換器の数と同じとし、単位抵抗11のそれぞれの両端電圧をすべて単位電圧センサ13によって検出してもよい。
【0059】
以上で説明した実施の形態3によれば、複数の単位抵抗11の各々にかかる電圧の不均一量を把握し、各々の単位電力変換器1の直流中性点Mの電位の不均一量を把握することが出来る。したがって、単位電力変換器1の故障によって発生した直流中性点Mの電位の不均一を検出および、故障が発生した単位電力変換器1の特定が可能である。その結果、故障を検出して単位電力変換器1の保護動作を行うことで、他の健全部分への故障の拡大を防ぐことができる。
【0060】
例えば、保護動作として、単位電力変換器の少なくとも1台を構成するすべてのスイッチング素子群のゲートにオフ信号を与えて、スイッチングを停止させてもよい。また、例えば、3台以上の単位電力変換器1がある場合、直流正側と直流負側とのうち少なくとも一方に設けられたスイッチを設け、故障した単位電力変換器に対応したスイッチを切り離してもよい。
【0061】
なお、単位抵抗11を用いずに複数の単位電力変換器1の直流中性点Mの電位を検出する場合には、例えば各々の単位電力変換器1の直流中性点Mと直流負側Nとの間の電圧を検出するセンサを設けるが、その場合と比べ、単位電圧センサ13に印加される電圧は、通常小さい。そのため、定格の小さい単位電圧センサ13を用いることができる。単位電力変換器1の故障が発生した場合、例えば直流正側Pと直流中性点Mとの間で短絡が発生した場合には、単位電圧センサ13の定格に対して過大な電圧が印加される可能性があるが、単位電圧センサ13と検出点の間に直列に電圧制限抵抗を設け、単位電圧センサ13に並列に電圧制限素子、例えばツェナーダイオードやバリスタを設けることで、単位電圧センサ13に過大な電圧が印加されることを防ぐことができる。
【0062】
また、単位抵抗11に印加される電圧を検出するために、単位抵抗11に流れる電流を検出する単位電流センサを用いる方法もある。この場合、単位電流センサの定格は小さくてよい。
【0063】
実施の形態4.
図9は実施の形態4における多重電力変換システムの要部の構成図である。なお、実施の形態2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0064】
図9に示されるように、複数の単位抵抗11は、複数の抵抗群に分かれる。複数の抵抗群において、複数の単位抵抗11は、互いに並列に接続される。
【0065】
複数の統合抵抗14の各々は、複数の抵抗群の各々に対応して設けられる。複数の統合抵抗14の各々は、複数の抵抗群の各々に直列に接続される。複数の統合抵抗14は、電位検出点12に直列に接続される。
【0066】
統合電圧センサ15は、単位電力変換器1の直流中性点Mの電位の不均一によって発生する電圧を検出する。すべての単位電力変換器1の直流中性点Mの電位が一致していれば、図9に示した単位抵抗11、統合抵抗14のいずれにも電圧は印加されないため、統合電圧センサ15において検出される電圧は0である。仮に、複数の単位電力変換器1のうちの一つで直流中性点Mの電位に不均一が発生すると、それにより発生した電位差で単位抵抗11、15に電流が流れる。このとき、統合電圧センサ15の両端には0でない電圧が発生し、これを検出することができる。
【0067】
以上で説明した実施の形態4によれば、統合電圧センサ15は、単位電力変換器1の直流中性点Mの電位の不均一によって発生する電圧を検出する。したがって、単位電力変換器1の故障によって発生した直流中性点Mの電位の不均一を検出することができる。その結果、故障を検出して単位電力変換器1の保護動作を行うことで、他の健全部分への故障の拡大を防ぐことができる。故障が発生した単位電力変換器1を特定することは出来ないが、電圧センサの数を、少なくすることができる。
【0068】
実施の形態5.
図10は実施の形態5における多重電力変換システムの要部の構成図である。なお、実施の形態4の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0069】
図10に示されるように、複数の抵抗群の一方は、統合抵抗14を介することなく、電位検出点12に接続される。複数の抵抗群の一方は、電位検出点12に接続されない。
【0070】
以上で説明した実施の形態5によれば、統合抵抗14を要することなく、単位電力変換器1の故障を検出することができる。
【0071】
実施の形態6.
図11は実施の形態6における多重電力変換システムの要部の構成図である。なお、実施の形態4の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0072】
図11は、5つの単位電力変換器1がある場合を示す。この場合、複数の単位抵抗11の数は、5つである。
【0073】
この際、複数の抵抗群の一方は、2つの単位抵抗11を備える。複数の抵抗群の他方は、残りの3つの単位抵抗11を備える。
【0074】
以上で説明した実施の形態6によれば、実施の形態4と同様に、単位電力変換器1の故障を検出することができる。
【0075】
実施の形態7.
図12は実施の形態7における多重電力変換システムの要部の構成図である。なお、実施の形態2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0076】
図12に示されるように、複数の単位電力変換器1の各々の出力側は、多重巻線トランス16に接続される。
【0077】
以上で説明した実施の形態7によれば、複数の単位電力変換器1において、互いの直流中性点Mは、短絡されない。そのため、実施の形態1と同様に、循環電流は抑制される。その結果、電気部品の選定において、考慮すべき循環電流の重畳分が減少し、電気部品の定格を小さくすることで多重電力変換システムのコストを下げることができる。
【0078】
また、ある単位電力変換器1の直流正側Pと直流中性点Mとの間において短絡故障が発生しても、各々の単位電力変換器1の直流中性点Mの間には短絡電流が流れない。このため、実施の形態1と同様に、互いの直流中性点Mを接続する場合に、単位電力変換器1の短絡故障による他の単位電力変換器への故障の拡大を防ぐために挿入されるヒューズが不要となる。その結果、ヒューズの分だけコストを下げることができる。
【0079】
実施の形態7の多重電力変換システムは、例えば、図示されないが、実施の形態2の分圧回路と同等の分圧回路を備える。
【0080】
以上で説明した実施の形態7によれば、実施の形態2と同様に、実施の形態1と比べ、電圧センサの数を減らすことができる。
【0081】
実施の形態8.
図13は実施の形態8における多重電力変換システムの要部の構成図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0082】
図13に示されるように、実施の形態8の単位電力変換器1は、5レベル電力変換器である。5レベル電力変換器は、例えば、直列に接続された4つの直流コンデンサを有し、それら直流コンデンサの電極のうち、最高電位極Pと、最低電位極Nと、これらの中間の電位にある3つの電極の、計5つの電極のうちいずれかひとつを選択して出力する交流端子を、一相分または複数相分備える電力変換器である。図13では、直流側の電極の電位を交流側に出力する機能を開閉器の図記号を用いて示しているが、多くの場合、自励式半導体素子とダイオードの組み合わせによって、同等の機能を果たすよう、構成される。また、図13は単位電力変換器1が一相分の交流端子を備える場合の一例である。
【0083】
この際、複数の単位電力変換器1において、複数の直流中性点Mの各々は、複数のコンデンサの最高電位および最低電位以外の点の中から選定される。複数の直流中性点Mは、互いに短絡されない。
【0084】
以上で説明した実施の形態8によれば、実施の形態1と同様に、安易な構成で故障の拡大を防ぐことができる。また、単位電力変換器1の故障を検出することができる。
【0085】
なお、複数の単位電力変換器1において、複数の直流中性点の全ての電位差を検出する必要がある場合は、抵抗を介して対応した直流中性点を接続し、複数の接続点の各々の電位差を検出すればよい。
【0086】
なお、実施の形態1から実施の形態8の単位電力変換器1において、単位電力変換器1は、直流電力を交流電力に変換する、または交流電力を直流電力に変換する、または無効電力を補償する。いずれにおいても、安易な構成で故障の拡大を防ぐことができる。また、単位電力変換器1の故障を検出することができる。
【0087】
なお、複数の単位電力変換器1の各々において、直流正側Pと直流負側Nと直流中性点Mとのうちの少なくとも2つに設けられた複数のスイッチを設けてもよい。この場合、複数の正側電圧センサ6の検出値に基づいて、故障した単位電力変換器1において複数のスイッチを切り離せばよい。その結果、故障していない単位電力変換器1を残して多重電力変換システムの運転を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、この発明に係る多重電力変換システムは、容易な構成で電力変換器の故障の拡大を防ぐシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 単位電力変換器、 2 スイッチング素子群、 3 正側コンデンサ、 4 負側コンデンサ、 5 リアクトル、 6 正側電圧センサ、 7 負側電圧センサ、 8 制御装置、 9a プロセッサ、 9b メモリ、 10 ハードウェア、 11 単位抵抗、 12 電位検出点、 13 単位電圧センサ、 14 統合抵抗、 15 統合電圧センサ、 16 多重巻線トランス
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