IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図1A
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図1B
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図2
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図3
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図4
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図5
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図6
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図7
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図8
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図9
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図10
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図11
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図12
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図13
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図14
  • 特許-電子機器及び熱拡散デバイス 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】電子機器及び熱拡散デバイス
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20220712BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F28D15/04 D
F28D15/02 L
F28D15/02 101H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022523236
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036118
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2020169337
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 慶次郎
(72)【発明者】
【氏名】沼本 竜宏
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-50682(JP,A)
【文献】特許第6442594(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/131599(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/104819(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
F28D 15/02
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱拡散デバイスと、発熱素子と、を備える電子機器であって、
前記熱拡散デバイスは、厚さ方向に対向する第1内壁面および第2内壁面を有する筐体と、前記筐体の内部空間に封入された作動媒体と、前記筐体の前記内部空間に配置されるウィックと、を備え、
前記筐体は、前記作動媒体を蒸発させる蒸発部を有し、
前記発熱素子は、前記蒸発部に位置する前記筐体の外壁面に配置され、
前記ウィックは、前記蒸発部から線状に延びる複数の毛細管構造体を含み、
少なくとも一部が前記毛細管構造体に囲まれた領域、及び、前記毛細管構造体の内部に、前記作動媒体の液体流路が形成され、
前記厚さ方向からの平面視において、前記蒸発部内の前記液体流路の面積の合計が、前記蒸発部の面積の15%以上であり、
前記液体流路は、第1液体流路および第2液体流路を有し、
前記第1液体流路の蒸発部側の端部および前記第2液体流路の蒸発部側の端部は、いずれも前記蒸発部内に位置し、
前記第1液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部側の端部までの前記第1液体流路の流路長は、前記第1液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部の重心までの最短距離の30%以上であり、
前記第2液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部側の端部までの前記第2液体流路の流路長は、前記第2液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部の重心までの最短距離の10%以上、30%未満である、ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
熱拡散デバイスと、発熱素子と、を備える電子機器であって、
前記熱拡散デバイスは、厚さ方向に対向する第1内壁面および第2内壁面を有する筐体と、前記筐体の内部空間に封入された作動媒体と、前記筐体の前記内部空間に配置されるウィックと、を備え、
前記筐体は、前記作動媒体を蒸発させる蒸発部を有し、
前記発熱素子は、前記蒸発部に位置する前記筐体の外壁面に配置され、
前記ウィックは、前記蒸発部から線状に延びる複数の毛細管構造体を含み、
少なくとも一部が前記毛細管構造体に囲まれた領域、及び/又は、前記毛細管構造体の内部に、前記作動媒体の液体流路が形成され、
前記厚さ方向からの平面視において、前記蒸発部内の前記液体流路の面積の合計が、前記蒸発部の面積の15%以上であり、
前記液体流路は、第1液体流路および第2液体流路を有し、
前記第1液体流路の蒸発部側の端部および前記第2液体流路の蒸発部側の端部は、いずれも前記蒸発部内に位置し、
前記第1液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部側の端部までの前記第1液体流路の流路長は、前記第1液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部の重心までの最短距離の30%以上であり、
前記第2液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部側の端部までの前記第2液体流路の流路長は、前記第2液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部の重心までの最短距離の10%以上、30%未満であり、
前記液体流路は、複数本の前記第1液体流路を有し、
前記第1液体流路の前記蒸発部側の端部同士は前記蒸発部の重心で接続され、前記第1液体流路同士が連通している、ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
前記液体流路は、第3液体流路をさらに有し、
前記第3液体流路の蒸発部側の端部は、前記蒸発部の外側に位置する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2液体流路の前記蒸発部側の端部は、前記第1液体流路と接続されていない、請求項1~3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記厚さ方向からの平面視において、前記蒸発部内の前記液体流路の面積の合計が、前記蒸発部の面積の80%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
厚さ方向に対向する第1内壁面および第2内壁面を有する筐体と、前記筐体の内部空間に封入された作動媒体と、前記筐体の前記内部空間に配置されるウィックと、を備える熱拡散デバイスであって、
前記筐体は、前記作動媒体を蒸発させる蒸発部を有し、
前記ウィックは、前記蒸発部から線状に延びる複数の毛細管構造体を含み、
少なくとも一部が前記毛細管構造体に囲まれた領域、及び、前記毛細管構造体の内部に、前記作動媒体の液体流路が形成され、
前記厚さ方向からの平面視において、前記蒸発部内の前記液体流路の面積の合計が、前記蒸発部の面積の15%以上であり、
前記液体流路は、第1液体流路および第2液体流路を有し、
前記第1液体流路の蒸発部側の端部および前記第2液体流路の蒸発部側の端部は、いずれも前記蒸発部内に位置し、
前記第1液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部側の端部までの前記第1液体流路の流路長は、前記第1液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部の重心までの最短距離の30%以上であり、
前記第2液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部側の端部までの前記第2液体流路の流路長は、前記第2液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部の重心までの最短距離の10%以上、30%未満である、ことを特徴とする熱拡散デバイス。
【請求項7】
厚さ方向に対向する第1内壁面および第2内壁面を有する筐体と、前記筐体の内部空間に封入された作動媒体と、前記筐体の前記内部空間に配置されるウィックと、を備える熱拡散デバイスであって、
前記筐体は、前記作動媒体を蒸発させる蒸発部を有し、
前記ウィックは、前記蒸発部から線状に延びる複数の毛細管構造体を含み、
少なくとも一部が前記毛細管構造体に囲まれた領域、及び/又は、前記毛細管構造体の内部に、前記作動媒体の液体流路が形成され、
前記厚さ方向からの平面視において、前記蒸発部内の前記液体流路の面積の合計が、前記蒸発部の面積の15%以上であり、
前記液体流路は、第1液体流路および第2液体流路を有し、
前記第1液体流路の蒸発部側の端部および前記第2液体流路の蒸発部側の端部は、いずれも前記蒸発部内に位置し、
前記第1液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部側の端部までの前記第1液体流路の流路長は、前記第1液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部の重心までの最短距離の30%以上であり、
前記第2液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部側の端部までの前記第2液体流路の流路長は、前記第2液体流路が前記蒸発部に差し掛かる地点から前記蒸発部の重心までの最短距離の10%以上、30%未満であり、
前記液体流路は、複数本の前記第1液体流路を有し、
前記第1液体流路の前記蒸発部側の端部同士は前記蒸発部の重心で接続され、前記第1液体流路同士が連通している、ことを特徴とする熱拡散デバイス。
【請求項8】
前記液体流路は、第3液体流路をさらに有し、
前記第3液体流路の蒸発部側の端部は、前記蒸発部の外側に位置する、請求項6または7に記載の熱拡散デバイス。
【請求項9】
前記第2液体流路の前記蒸発部側の端部は、前記第1液体流路と接続されていない、請求項6~8のいずれかに記載の熱拡散デバイス。
【請求項10】
前記厚さ方向からの平面視において、前記蒸発部内の前記液体流路の面積の合計が、前記蒸発部の面積の80%以下である、請求項6~9のいずれかに記載の熱拡散デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び熱拡散デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、素子の高集積化および高性能化による発熱量が増加している。また、製品の小型化が進むことで、発熱密度が増加するため、放熱対策が重要となっている。この状況はスマートフォンおよびタブレットなどのモバイル端末の分野において特に顕著である。熱対策部材としては、グラファイトシートなどが用いられることが多いが、その熱輸送量は十分ではないため、様々な熱対策部材の使用が検討されている。中でも、非常に効果的に熱を拡散させることが可能である熱拡散デバイスとして、面状のヒートパイプであるベーパーチャンバーの使用の検討が進んでいる。
【0003】
ベーパーチャンバーは、筐体の内部に、作動媒体と、毛細管力によって作動媒体を輸送するウィックとが封入された構造を有する。上記作動媒体は、発熱素子からの熱を吸収する蒸発部において発熱素子からの熱を吸収してベーパーチャンバー内で蒸発した後、ベーパーチャンバー内を移動し、冷却されて液相に戻る。液相に戻った作動媒体は、ウィックの毛細管力によって再び発熱素子側の蒸発部に移動し、発熱素子を冷却する。これを繰り返すことにより、ベーパーチャンバーは外部動力を有することなく自立的に作動し、作動媒体の蒸発潜熱および凝縮潜熱を利用して、二次元的に高速で熱を拡散することができる。
【0004】
スマートフォンおよびタブレットなどのモバイル端末の薄型化に対応するため、ベーパーチャンバーにも薄型化が求められている。このような薄型のベーパーチャンバーでは、機械的強度および熱輸送効率の確保が難しくなる。
【0005】
そこで、特許文献1に記載されているように、ベーパーチャンバーを構成する筐体の機械的強度を確保するために、筐体の内部に配置されるウィックを、筐体の形状を保つための支持体として利用することが提案されている。
【0006】
特許文献1に記載されたベーパーチャンバーでは、筐体の対向する一対の内壁面、上記一対の内壁面に接触しないウィックの側面、および、上記ウィックの側面と隙間をあけて形成された対向面によって囲まれた空間に、凝縮した作動流体の液溜まり流路が形成されていることを特徴としている。特許文献1によれば、ウィックと液溜まり流路を組み合わせることによって、ウィックに常に液体が供給される状態を作ることができるため、液体流路の全体としての液体の圧力損失を低減し、その結果、ベーパーチャンバーの最大熱輸送量を大きくすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-113270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているように、ウィックの内部に液溜まり流路が設けられていると、該液溜まり流路が液相の作動媒体を移動させる液相部となるため、液相の作動媒体の流れが滞ることを防止することができる。しかし、液相の作動媒体だけでなく気相の作動媒体の循環効率も高め、ベーパーチャンバーの熱輸送効率を高くする観点からは、改善の余地がある。
【0009】
なお、上記の問題は、ベーパーチャンバーに限らず、ベーパーチャンバーと同様の構成によって熱を拡散させることが可能な熱拡散デバイスに共通する問題である。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、筐体の機械的強度を確保しつつ、高い熱輸送効率を有する熱拡散デバイスを備える電子機器を提供することを目的とする。本発明はまた、筐体の機械的強度を確保しつつ、高い熱輸送効率を有する熱拡散デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子機器は、熱拡散デバイスと、発熱素子と、を備える電子機器であって、上記熱拡散デバイスは、厚さ方向に対向する第1内壁面および第2内壁面を有する筐体と、上記筐体の内部空間に封入された作動媒体と、上記筐体の上記内部空間に配置されるウィックと、を備え、上記筐体は、上記作動媒体を蒸発させる蒸発部を有し、上記発熱素子は、上記蒸発部に位置する上記筐体の外壁面に配置され、上記ウィックは、上記蒸発部から線状に延びる複数の毛細管構造体を含み、少なくとも一部が上記毛細管構造体に囲まれた領域、及び/又は、上記毛細管構造体の内部に、上記作動媒体の液体流路が形成され、上記厚さ方向からの平面視において、上記蒸発部内の上記液体流路の面積の合計が、上記蒸発部の面積の15%以上であり、上記液体流路は、第1液体流路および第2液体流路を有し、上記第1液体流路の蒸発部側の端部および上記第2液体流路の蒸発部側の端部は、いずれも上記蒸発部内に位置し、上記第1液体流路が上記蒸発部に差し掛かる地点から上記蒸発部側の端部までの上記第1液体流路の流路長は、上記第1液体流路が上記蒸発部に差し掛かる地点から上記蒸発部の重心までの最短距離の30%以上であり、上記第2液体流路が上記蒸発部に差し掛かる地点から上記蒸発部側の端部までの上記第2液体流路の流路長は、上記第2液体流路が上記蒸発部に差し掛かる地点から上記蒸発部の重心までの最短距離の10%以上、30%未満である、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の熱拡散デバイスは、厚さ方向に対向する第1内壁面および第2内壁面を有する筐体と、上記筐体の内部空間に封入された作動媒体と、上記筐体の上記内部空間に配置されるウィックと、を備える熱拡散デバイスであって、上記筐体は、上記作動媒体を蒸発させる蒸発部を有し、上記ウィックは、上記蒸発部から線状に延びる複数の毛細管構造体を含み、少なくとも一部が前記毛細管構造体に囲まれた領域、及び/又は、前記毛細管構造体の内部に、上記作動媒体の液体流路を構成する液相部を有し、上記厚さ方向からの平面視において、上記蒸発部内の上記液体流路の面積の合計が、上記蒸発部の面積の15%以上であり、上記液体流路は、第1液体流路および第2液体流路を有し、上記第1液体流路の蒸発部側の端部および上記第2液体流路の蒸発部側の端部は、いずれも上記蒸発部内に位置し、上記第1液体流路が上記蒸発部に差し掛かる地点から上記蒸発部側の端部までの上記第1液体流路の流路長は、上記第1液体流路が上記蒸発部に差し掛かる地点から上記蒸発部の重心までの最短距離の30%以上であり、上記第2液体流路が上記蒸発部に差し掛かる地点から上記蒸発部側の端部までの上記第2液体流路の流路長は、上記第2液体流路が上記蒸発部に差し掛かる地点から上記蒸発部の重心までの最短距離の10%以上、30%未満である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筐体の機械的強度を確保しつつ、高い熱輸送効率を有する熱拡散デバイスを備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電子機器の一例を模式的に示す斜視図である。
図1B図1Bは、本発明の第1実施形態に係る電子機器の構成の一部である発熱素子付き熱拡散デバイスの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1Bに示す発熱素子付き熱拡散デバイスを構成する熱拡散デバイスのII-II線断面図である。
図3図3は、図1Bに示す発熱素子付き熱拡散デバイスを構成する熱拡散デバイスのIII-III線断面図である。
図4図4は、図2に示す熱拡散デバイスの蒸発部近傍の拡大図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る熱拡散デバイスの一例の蒸発部近傍の部分拡大断面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係る熱拡散デバイスの一例の蒸発部近傍の部分拡大断面図である。
図7図7は、本発明の第4実施形態に係る熱拡散デバイスの一例の蒸発部近傍の部分拡大断面図である。
図8図8は、本発明の第5実施形態に係る熱拡散デバイスの一例の蒸発部近傍の部分拡大断面図である。
図9図9は、本発明の第6実施形態に係る熱拡散デバイスの一例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、本発明の第7実施形態に係る熱拡散デバイスの一例を模式的に示す断面図である。
図11図11は、本発明の第8実施形態に係る熱拡散デバイスの一例を模式的に示す断面図である。
図12図12は、本発明の第9実施形態に係る熱拡散デバイスの、毛細管構造体が延びる方向に垂直な方向における断面図である。
図13図13は、本発明の第10実施形態に係る熱拡散デバイスの、毛細管構造体が延びる方向に垂直な方向における断面図である。
図14図14は、本発明の第10実施形態に係る熱拡散デバイスにおける毛細管構造体を毛細管構造体が延びる方向に垂直な方向における断面図である。
図15図15は、本発明の第10実施形態に係る熱拡散デバイスの、蒸発部近傍の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の電子機器および熱拡散デバイスについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0016】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0017】
以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明の電子機器」または「本発明の熱拡散デバイス」という。
【0018】
以下では、本発明の電子機器の一実施形態として、熱拡散デバイスとしてベーパーチャンバーを用いた場合を例にとって説明する。本発明の電子機器では、ヒートパイプ等の熱拡散デバイスを用いてもよい。
また、本発明の熱拡散デバイスの一実施形態として、ベーパーチャンバーを例にとって説明する。本発明の熱拡散デバイスは、ヒートパイプなどの熱拡散デバイスにも適用可能である。
【0019】
以下に示す図面は模式的なものであり、その寸法や縦横比の縮尺などは実際の製品とは異なる場合がある。
【0020】
[第1実施形態]
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電子機器の一例を模式的に示す斜視図である。
図1Aに示す電子機器100は、熱拡散デバイス1と、電子部品110とを有している。
電子部品110は、熱拡散デバイス1の筐体10の外壁面に取り付けられている。
電子部品110は、筐体10の外壁面に直に取り付けられていてもよいし、熱伝導性の高い粘着剤、シート、テープ等の他の部材を介して取り付けられていてもよい。
【0021】
電子部品110としては、例えば、中央処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱素子が挙げられる。
【0022】
電子機器100としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、ゲーム機器、ウェアラブルデバイス等が挙げられる。
【0023】
本発明の電子機器において、上記筐体は、蒸発部を内部空間に有し、厚さ方向からの平面視で、上記電子部品は、上記蒸発部に重なる。
【0024】
電子機器100において、電子部品110は、後述する図1Bに示す発熱素子HEに相当する。つまり、厚さ方向Zからの平面視で、電子部品110は、筐体10の蒸発部EPに重なっている。
【0025】
なお、電子機器100は、図1Aに示すように、機器筐体120を更に有していることが好ましい。
【0026】
図1Bは、図1Aに示す電子機器の構成の一部である発熱素子付き熱拡散デバイスである。図1Bに示す熱拡散デバイスは、本発明の第1実施形態に係る熱拡散デバイスである。
発熱素子付き熱拡散デバイスは、熱拡散デバイス1と、発熱素子(heating element)HEとを備える。
発熱素子HEとしては、上述した電子部品110が用いられる。
【0027】
本発明の電子機器を構成する熱拡散デバイスは、本発明の熱拡散デバイスでもある。
なお、図1に示す形状の熱拡散デバイスは、ベーパーチャンバーとも呼ばれる。
【0028】
図2は、図1Bに示す発熱素子付き熱拡散デバイスを構成する熱拡散デバイスのII-II線断面図である。図3は、図1Bに示す発熱素子付き熱拡散デバイスを構成する熱拡散デバイスのIII-III線断面図である。
図2に示すように、熱拡散デバイス1は、気密状態に密閉された中空の筐体10を備える。筐体10は、図3に示すように、厚さ方向Zに対向する第1内壁面11aおよび第2内壁面12aを有する。図2および図3に示すように、熱拡散デバイス1は、筐体10の内部空間に配置されるウィック30を備える。さらに、筐体10の内部空間には、作動媒体20が封入されている。ウィックとは、毛細管力により作動媒体を輸送する毛細管構造を有する構造体を指す。
【0029】
筐体10には、図2に示すように、封入した作動媒体を蒸発させる蒸発部(evaporation portion)EPが設定されている。筐体10には、さらに、蒸発した作動媒体20を凝縮させる凝縮部(condensation portion)CPが設定されていてもよい。
筐体10の内部空間のうち、発熱素子HEの近傍であって発熱素子HEによって加熱される部分が、蒸発部EPに相当する。
一方、蒸発部EPから離れた部分が、凝縮部CPに相当する。
なお、発熱素子HEによって加熱される部分が蒸発部EPに相当するため、蒸発部EPの大きさと、発熱素子HEの大きさとが完全に一致してなくてもよい。ただし、熱輸送効率の設計および発熱素子HEと蒸発部EPの位置合わせの検知の観点から、蒸発部EPの大きさと発熱素子HEの大きさは、ほぼ同等であることが好ましい。
また、蒸発した作動媒体20は凝縮部CP以外でも凝縮され得る。本実施形態では、蒸発した作動媒体20を特に凝縮させやすい部分を凝縮部CPとして図2にも表現する。
【0030】
発熱素子HEは、筐体10の外壁面に配置される。発熱素子HEは、筐体10の外壁面に直接接触していてもよく、熱伝導性グリスや銅板等の金属板等を介して接触していてもよい。熱伝導性グリスや金属板は、筐体10の外壁面と発熱素子HEの表面との間の凹凸(隙間)による熱輸送効率の低下を抑制することができる。
筐体10の外壁面には、予め発熱素子HEを配置する位置を示す凹凸やマーカー等の意匠が施されていてもよい。また、筐体10の外壁面には、蒸発部EPの位置を示す凹凸やマーカー等の意匠が施されていてもよい。
【0031】
図2および図3では、ウィック30は、蒸発部EPから線状に延びる複数の毛細管構造体31を含む。毛細管構造体31は、毛細管力によって作動媒体20を輸送するウィックとして機能する。多孔体31は、例えば、金属多孔体、セラミックス多孔体または樹脂多孔体等の多孔体から構成される。多孔体31は、例えば、金属多孔質焼結体、セラミックス多孔質焼結体等の焼結体から構成されてもよい。多孔体31は、銅またはニッケルの多孔質焼結体から構成されることが好ましい。
【0032】
毛細管構造体31は、多孔体の代わりに、複数の繊維を線状に束ねた繊維束から構成されていてもよい。この場合、毛細管構造体31は、編み込み状の繊維束を含むことが好ましい。複数の繊維が編み込まれた編み込み状の繊維束では、表面に凹凸が存在しやすくなるため、毛細管構造体が編み込み状の繊維束を含む場合、液相の作動媒体が蒸発部に輸送されやすくなる。
【0033】
繊維束を構成する繊維としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属線、カーボン繊維、ガラス繊維等の非金属線等が挙げられる。中でも、金属線は、熱伝導率が高いことから好ましい。例えば、直径が0.03mm程度の銅線を200本程度束ねることにより、繊維束とすることができる。
【0034】
以下には、毛細管構造体が多孔体である場合の例を示す。
毛細管構造体31の内部には、毛細管構造体31が延びる方向に沿った液相部51が設けられている。液相部51は、毛細管構造体31を構成する第1毛細管構造体31aおよび第2毛細管構造体31b、並びに、筐体10の第1内壁面11aおよび第2内壁面12aにより区画されている。従って、液相部51は、少なくとも一部が毛細管構造体31により囲まれた領域であるといえる。
液相部51では液相の作動媒体が蒸発部EPへ向かって輸送される。また、第1毛細管構造体31a及び第2毛細管構造体31bも、液相の作動媒体を輸送する作用を有している。そのため、液相部51と、液相部51を区画する第1毛細管構造体31aおよび第2毛細管構造体31bとをあわせて液体流路50ともいう。液体流路50は、少なくとも一部が第1毛細管構造体31a及び第2毛細管構造体31bで囲まれた領域(液相部51)、並びに、第1毛細管構造体31a及び第2毛細管構造体31bの内部に形成されているといえる。
1つの毛細管構造体31において、第1毛細管構造体31aと第2毛細管構造体31bとの間の距離aは、液相部51の幅に相当する。
一方、筐体10の内部空間のうち、液体流路50ではない部分が蒸気流路52となる。蒸気流路52を介して対向する毛細管構造体31同士の距離bは、蒸気流路52の幅に相当する。
図3に示すように、液相部51の幅aは、蒸気流路52の幅bよりも短い。
【0035】
図2に示すように、液体流路50は、蒸発部EPから凝縮部CPまで延びていてもよい。蒸発部EPにおいて、液体流路50は放射状に延びており、各液体流路50は、蒸発部EP内において、蒸発部EP側の端部が接続されていない。一方、凝縮部CPにおいて、全ての液体流路50の凝縮部CP側の端部は、互いに接続されている。
液体流路50は、蒸発部EPから凝縮部CPに到達するまでの間に、延びる方向が変わってもよく、分岐または合流していてもよい。
互いに隣接する液体流路50と蒸気流路52は、略平行に延びている。また、液体流路50が延びる方向に略垂直な方向において、液体流路50と蒸気流路52は交互に配置されている。
【0036】
熱拡散デバイス1は、全体として面状である。すなわち、筐体10は、全体として面状である。ここで、「面状」とは、板状およびシート状を包含し、幅方向Xの寸法(以下、幅という)および長さ方向Yの寸法(以下、長さという)が厚さ方向Zの寸法(以下、厚さまたは高さという)に対して相当に大きい形状、例えば幅および長さが、厚さの10倍以上、好ましくは100倍以上である形状を意味する。
【0037】
熱拡散デバイス1の大きさ、すなわち、筐体10の大きさは、特に限定されない。熱拡散デバイス1の幅および長さは、用途に応じて適宜設定することができる。熱拡散デバイス1の幅および長さは、各々、例えば、5mm以上500mm以下、20mm以上300mm以下または50mm以上200mm以下である。熱拡散デバイス1の幅および長さは、同じであっても、異なっていてもよい。
【0038】
筐体10は、外縁部が接合された対向する第1シート11および第2シート12から構成されることが好ましい。第1シート11および第2シート12を構成する材料は、熱拡散デバイスとして用いるのに適した特性、例えば熱伝導性、強度、柔軟性、可撓性等を有するものであれば、特に限定されない。第1シート11および第2シート12を構成する材料は、好ましくは金属であり、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、またはそれらを主成分とする合金等であり、特に好ましくは銅である。第1シート11および第2シート12を構成する材料は、同じであっても、異なっていてもよいが、好ましくは同じである。
【0039】
第1シート11および第2シート12は、これらの外縁部において互いに接合されている。かかる接合の方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー溶接、抵抗溶接、拡散接合、ロウ接、TIG溶接(タングステン-不活性ガス溶接)、超音波接合または樹脂封止を用いることができ、好ましくはレーザー溶接、抵抗溶接またはロウ接を用いることができる。
【0040】
第1シート11および第2シート12の厚さは、特に限定されないが、各々、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは30μm以上100μm以下、さらに好ましくは40μm以上60μm以下である。第1シート11および第2シート12の厚さは、同じであっても、異なっていてもよい。また、第1シート11および第2シート12の各シートの厚さは、全体にわたって同じであってもよく、一部が薄くてもよい。
【0041】
第1シート11および第2シート12の形状は、特に限定されない。例えば、図3に示す例では、第1シート11は、厚みが一定の平板形状であり、第2シート12は、外縁部が外縁部以外の部分よりも厚い形状である。
【0042】
熱拡散デバイス1全体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは50μm以上500μm以下である。
【0043】
作動媒体20は、筐体10内の環境下において気-液の相変化を生じ得るものであれば特に限定されず、例えば、水、アルコール類、代替フロン等を用いることができる。例えば、作動媒体20は水性化合物であり、好ましくは水である。
【0044】
ウィック30は、本実施形態では筐体10の第1内壁面11aおよび第2内壁面12aを内側から支持している。ウィック30を筐体10の内部空間に配置することにより、筐体10の機械的強度を確保しつつ、筐体10外部からの衝撃を吸収することができる。さらに、筐体10の支持体としてウィック30を利用することにより、熱拡散デバイス1の軽量化を図ることができる。
【0045】
図3に示す例では、第1毛細管構造体31aおよび第2毛細管構造体31bは、第1内壁面11aおよび第2内壁面12aに接している。第1毛細管構造体31aおよび第2毛細管構造体31bは、第1内壁面11aおよび第2内壁面12aのいずれか一方に接していてもよく、第1内壁面11aおよび第2内壁面12aに接していなくてもよい。
【0046】
蒸発部EPでは、液相部51に位置する液相の作動媒体20が、筐体10の内壁面を介して加熱されて蒸発する。作動媒体20が蒸発することで、蒸発部EP近傍における蒸気流路52内の気体の圧力が高まる。これにより、気相の作動媒体20が、蒸気流路52内を凝縮部CP側に向かって移動する。
【0047】
凝縮部CPに到達した気相の作動媒体20は、筐体10の内壁面を介して熱を奪われて凝縮し、液滴となる。上述のとおり、液相の作動媒体20は凝縮部CP以外でも凝縮され得る。作動媒体20の液滴は、毛細管力によって毛細管構造体31の細孔内に浸み込む。また、毛細管構造体31の細孔内に浸み込んだ液相の作動媒体20の一部は、液相部51内に流入する。
【0048】
液体流路50内に流入した液相の作動媒体20は、毛細管力によって蒸発部EPまで移動し、蒸発部EPにおいて加熱されて蒸発する。
【0049】
蒸発して気相となった作動媒体20は、再び蒸気流路52を通って凝縮部CP側へと移動する。このように、熱拡散デバイス1は、作動媒体20の気-液の相変化を繰り返し利用して、蒸発部EP側で回収した熱を凝縮部CP側に繰り返し輸送することができる。
【0050】
本発明の熱拡散デバイスにおいて、蒸発部には液体流路の一部が差し掛かっている。
厚さ方向からの平面視において、蒸発部内の液体流路の面積の合計は、蒸発部EPの面積の15%以上である。
蒸発部内の液体流路の面積の合計を、蒸発部の面積の15%以上とすることにより、蒸発部内に、液相の作動媒体を充分な量供給することができるため、ドライアウトの発生を抑制することができる。
【0051】
厚さ方向からの平面視において、蒸発部内の液体流路の面積の合計は、蒸発部の面積の80%以下であることが好ましい。
蒸発部内の液体流路の面積の合計が、蒸発部の面積の80%を超えると、蒸発部内において蒸気流路の充分な通り道を確保しにくくなる。その結果、蒸発部内における気液交換が充分に行われず、ドライアウトが発生しやすくなる。
【0052】
液体流路は、第1液体流路および第2液体流路を有する。
第1液体流路および第2液体流路は、いずれも、蒸発部側の端部が蒸発部内に位置する液体流路である。
第1液体流路および第2液体流路は、蒸発部EP内における流路長が、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の重心までの最短距離に占める割合によって区別できる。
蒸発部に差し掛かる液体流路のうち、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の末端までの流路長が、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の重心までの最短距離の30%以上である場合が、第1液体流路である。また、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の末端までの流路長が、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の重心までの最短距離の10%以上、30%未満である場合が、第2液体流路である。
第1液体流路および第2液体流路について、図4を参照しながら説明する。
【0053】
図4は、図2に示す熱拡散デバイスの蒸発部近傍の拡大図である。
図4に示すように、蒸発部EP内には、液体流路50A、50B、50C、50D、50E、50F、50G、50Hが存在する。液体流路50A、50B、50C、50D、50E、50F、50G、50Hはいずれも、蒸発部EP側の端部が、蒸発部EP内に位置している。
【0054】
液体流路50Aの蒸発部EP内における流路長は、液体流路50Aが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Aから、液体流路50Aの蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T1Aまでの長さ(図4中、両矢印L1Aで示す長さ)である。また、液体流路50Aが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Aから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、両矢印D1Aで示す距離である。長さL1A/距離D1Aは約20%である。したがって、液体流路50Aは第2液体流路である。なお、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点とは、液体流路の幅方向の中央を示す線と蒸発部の境界線とが交わる地点である。
【0055】
液体流路50Cの蒸発部EP内における形状は、蒸発部EPの重心Cを通り、長さ方向Yに沿った方向に延びる線分に対して、液体流路50Aと線対称となっている。また、液体流路50Gおよび液体流路50Eの蒸発部EP内における形状は、蒸発部EPの重心Cを通り、幅方向Xに沿った方向に延びる線分に対して、それぞれ、液体流路50Aおよび液体流路50Cと線対称となっている。
したがって、液体流路50C、50E、50Gに関して、蒸発部EP内における流路長および各液体流路が蒸発部EPに差し掛かる地点E1C、E1E、E1Gから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離はいずれも、液体流路50Aと同様である。そのため、液体流路50C、50E、50Gはいずれも、第2液体流路である。
【0056】
液体流路50Bの蒸発部EP内における流路長は、液体流路50Bが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Bから、液体流路50Bの蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T1Bまでの長さ(図4中、両矢印L1Bで示す長さ)である。また、液体流路50Bが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Bから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、両矢印D1Bで示す距離である。長さL1B/距離D1Bは約75%である。したがって、液体流路50Bは第1液体流路である。
【0057】
液体流路50Fの蒸発部EP内における形状は、蒸発部EPの重心Cを通り、幅方向Xに沿った方向に延びる線分に対して、液体流路50Bと線対称となっている。したがって、液体流路50Fに関して、蒸発部EP内における流路長および液体流路50Fが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Fから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、液体流路50Bと同様である。そのため、液体流路50Fは第1液体流路である。
【0058】
液体流路50Dの蒸発部EP内における流路長は、液体流路50Dが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Dから、液体流路50Dの蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T1Dまでの長さ(図4中、両矢印L1Dで示す長さ)である。また、液体流路50Dが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Dから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、両矢印D1Dで示す長さである。長さL1D/距離D1Dは約28%となる。したがって、液体流路50Dは第2液体流路である。
【0059】
液体流路50Hの蒸発部EP内における形状は、蒸発部EPの重心Cを通り、長さ方向Yに沿った方向に延びる線分に対して、液体流路50Dと線対称となっている。したがって、液体流路50Hに関して、蒸発部EP内における流路長および液体流路50Hが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Hから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、液体流路50Dと同様である。そのため、液体流路50Hは第2液体流路である。
【0060】
以上より、図4に示す蒸発部EPには、2本の第1液体流路(液体流路50B、液体流路50F)と、6本の第2液体流路(液体流路50A、50C、50D、50E、50G、50H)が存在する。また、蒸発部EP内の液体流路の面積の合計は、蒸発部EPの面積の46.6%となっている。
【0061】
本発明の第1実施形態に係る放熱デバイスでは、液体流路の蒸発部側の端部が蒸発部内に位置しているため、蒸発部内まで液相の作動媒体を直接還流させて、ドライアウトの発生を抑制することができる。さらに、液体流路として第1液体流路と第2液体流路の両方を有し、かつ、厚さ方向からの平面視において、蒸発部内の液体流路の面積が、蒸発部の面積の15%以上である。このような状態であると、気相の作動媒体の循環と液相の作動媒体の循環のバランスがよく、高い熱輸送効率を発揮することができる。
液体流路が第2液体流路を有していない場合には、第1液体流路によって蒸発部内の蒸気流路を塞いでしまいやすく、気相の作動媒体の循環効率が充分ではない。
液体流路が第1液体流路を有していない場合、蒸発部の中央付近まで液体の作動媒体を還流させることができないため、液相の作動媒体の循環効率が充分ではない。
厚さ方向からの平面視において、蒸発部内の液体流路の面積が、蒸発部の面積の15%未満であると、液相の作動媒体に対して充分な加熱を行うことができず、液相の作動媒体の循環効率が充分ではなくなる。
【0062】
本発明の放熱デバイスにおいて、第2液体流路の蒸発部側の端部は、第1液体流路と接続されていないことが好ましい。
第2液体流路の蒸発部側の端部が第1液体流路と接続されていると、蒸気部内において蒸気の通り道を塞ぎ、作動媒体が蒸発部から凝縮部に移動することを妨げてしまう。
【0063】
蒸発部内における蒸気流路の最小幅は、500μm以上であることが好ましい。蒸発部内における蒸気流路の最小幅が上記範囲であると、蒸気流路中を気相の作動媒体が通過しやすくなり、気相の作動媒体の循環効率が向上する。
【0064】
液体流路が有する第1液体流路の数は特に限定されず、1本であってもよく、複数本であってもよい。
液体流路が有する第1液体流路の数は、6本以下であることが好ましく、4本以下であることがさらに好ましい。
【0065】
液体流路が有する第2液体流路の数は特に限定されず、1本であってもよく、複数本であってもよいが、複数本であることが好ましい。
液体流路が、第2液体流路を複数本有していると、蒸発部内に占める液体流路の割合をそれほど高めることなく、液相の作動媒体の循環効率を向上させることができる。
液体流路が有する第2液体流路の数は、6本以下であることが好ましく、4本以下であることがさらに好ましい。
【0066】
続いて、本発明の他の実施形態に係る電子機器および熱拡散デバイスについて説明する。ただし、本発明の他の実施形態に係る電子機器において、熱拡散デバイス以外の構成は本発明の第1実施形態に係る電子機器と同様である。したがって、以降では、本発明の他の実施形態に係る熱拡散デバイスを説明する。
【0067】
[第2実施形態]
【0068】
本発明の第2実施形態に係る熱拡散デバイスにおいては、液体流路は、複数本の第1液体流路を有している。さらに、複数の第1液体流路の蒸発部側の端部同士が、蒸発部の重心で接続され、第1液体流路同士が連通している。
【0069】
図5は、本発明の第2実施形態に係る熱拡散デバイスの一例の蒸発部近傍の部分拡大断面図である。図5に示す熱拡散デバイスは、図4に示す熱拡散デバイスから、液体流路50B、50D、50F、50Hの形状を変形させた変形例でもある。
図5に示すように、蒸発部EP内には、液体流路50A、50B’、50C、50D’、50E、50F’、50G、50H’が存在する。液体流路50A、50B’、50C、50D’、50E、50F’、50G、50H’はいずれも、蒸発部EP側の端部が、蒸発部EP内に位置している。
液体流路50B’、50D’、50F’、50H’はいずれも、液体流路の蒸発部EP側の端部が蒸発部EPの重心Cまで到達している。さらに液体流路50B’、50D’、50F’、50H’は、液体流路同士が連通している。すなわち、液体流路50B’、50D’、50F’、50H’の蒸発部EP側の端部における液相部の各末端T1B’、T1D’、T1F’、T1H’は、蒸発部EPの重心Cで重なっている。
【0070】
液体流路50B’の蒸発部EP内における流路長は、液体流路50B’が蒸発部EPに差し掛かる地点E1B’から、液体流路50B’の蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T1B’までの長さ(図5中、両矢印L1B’で示す長さ)である。また、液体流路50B’が蒸発部EPに差し掛かる地点E1B’から蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、両矢印D1B’で示す距離である。液体流路50B’においては、蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T1B’が蒸発部EPの重心Cと重なっているから、長さL1B’と距離D1B’は等しく、長さL1B’/距離D1B’は100%である。したがって、液体流路50B’は第1液体流路である。
蒸発部EPに差し掛かる地点がそれぞれ地点E1D’、E1F’、E1H’である液体流路50D’、50F’、50H’に関しても、蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T1D’、T1F’、T1H’が蒸発部EPの重心Cと重なっている。したがって、液体流路50D’、50F’、50H’も液体流路50B’と同様に第1液体流路である。
【0071】
液体流路50A、50C、50E、50Gは図4に示す熱拡散デバイスと同様である。したがって、液体流路50A、50C、50E、50Gはいずれも、第2液体流路である。
【0072】
以上より、図5に示す蒸発部EPには、4本の第1液体流路(液体流路50B’、50D’、50F’、50H’)と、4本の第2液体流路(液体流路50A、50C、50E、50G)が存在する。また、蒸発部EP内の液体流路の面積の合計は、蒸発部EPの面積の55.7%となっている。
【0073】
本明細書において、蒸発部に差し掛かる地点をn箇所有する液体流路については、n本の液体流路が所定の位置で互いに接続されていると考える。液体流路を分割する手順は、以下の通りである。液体流路を分割することで、蒸発部内に配置される液体流路の本数、および、各液体流路の蒸発部側の端部が決定される。
(1)液体流路のうち、蒸発部の重心に最も近い位置を基準点と定める。
(2)定められた基準点を基準として、液体流路を分割する。
【0074】
手順(1)
まず、蒸発部に差し掛かる地点をn箇所有する液体流路のうち、蒸発部の重心に最も近い地点を基準点と定める。
蒸発部の重心に最も近い地点が液体流路上に2箇所以上ある場合、該基準点によって分割される液体流路の数が多い地点を選択する。一方、基準点によって分割される液体流路の数が同じである場合には、各液体流路について、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の重心までの距離に対する、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から液体流路の蒸発部側の端部における液相部の末端までの距離の割合を求め、この割合の合計値が最も高くなる地点を選択する。
【0075】
手順(2)
続いて、定められた基準点によって、液体流路を分割する。
基準点の位置および液体流路の形状によって、分割される液体流路の数は異なる。例えば、直線状の液体流路上に基準点が位置する場合は、該基準点によって液体流路を2分割する。また、Y字形状の液体流路の分岐点上に基準点が位置する場合、該基準点によって液体流路を3分割する。
【0076】
上記手順を、図5に示す熱拡散デバイスに当てはめて説明する。
図5に示す熱拡散デバイスは、蒸発部EP内に十字形状の液体流路を有している。この十字形状の液体流路は、蒸発部EP内に、蒸発部EPに差し掛かる地点を4箇所(地点E1B’、E1D’、E1F’、E1H’)有している。この十字形状の液体流路のうち、蒸発部EPの重心Cに最も近い地点は、蒸発部EPの重心Cである。従って、蒸発部の重心Cが、液体流路を分割する基準点となる[手順(1)]。
このように定められた蒸発部EPの重心Cを基準点として、十字形状の液体流路が、4本の液体流路(液体流路50B’、50D’、50F’、50H’)に分割される[手順(2)]。
その結果、図5に示す十字形状の液体流路では、4本の液体流路(液体流路50B’、50D’、50F’、50H’)の蒸発部EP側の端部における液相部51の末端(それぞれT1B’、T1D’、T1F’、T1H’)同士が、蒸発部EPの重心Cにおいて、接続し、連通している、と考える。
【0077】
上記手順(2)によって分割された各液体流路は、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点を2箇所以上有していてもよい。この場合、以下の手順(3)および手順(4)によって液体流路をさらに分割する。
【0078】
手順(3)
手順(2)によって分割された各液体流路が、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点を2箇所以上有している場合、流路長が最も長くなるように液体流路を分割する。
具体的には、液体流路が蒸発部に差し掛かる各地点から基準点までの液体流路に沿った長さ(流路長)を比較して、流路長が最も長い液体流路を親流路(1次流路)とする。残った液体流路については、親流路からの分岐点において、親流路から分岐する子流路(2次流路)とする。子流路は、液体流路の蒸発部側の端部が、親流路からの分岐点において親流路に接続していると考える。
【0079】
手順(4)
手順(3)の操作を、液体流路が分割できなくなるまで繰り返す。
例えば、手順(3)において残った子流路が、蒸発部に差し掛かる地点を2箇所有する場合、以下の手順で子流路から孫流路を分割する。
流路長が最も長い液体流路が子流路(2次流路)とする。残った液体流路については、子流路からの分岐点において子流路から分岐する孫流路(3次流路)とする。孫流路は、液体流路の蒸発部側の端部が、子流路からの分岐点において子流路に接続していると考える。
【0080】
上記手順(1)および(2)では、蒸発部内において、基準点を通る液体流路であり、かつ、基準点を一方の端部とみたときに、他方の端部が蒸発部内に位置する液体流路を考慮していない。
このような液体流路は、手順(1)および(2)で分割された液体流路のうち、蒸発部内における流路長が最も長い液体流路の上流部分であるとみなす。また、このような液体流路が2本以上存在する場合、上流部分の流路長と、手順(1)および(2)で分割された液体流路の蒸発部内における流路長(下流部分の流路長)の合計が、最も長くなる組み合わせとする。
【0081】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る熱拡散デバイスにおいては、液体流路は、第3液体流路をさらに有している。
第3液体流路は、液体流路の蒸発部側の端部が蒸発部の外側に位置する液体流路である。
【0082】
図6は、本発明の第3実施形態に係る熱拡散デバイスの一例の蒸発部近傍の部分拡大断面図である。また、図6は、図4に示した熱拡散デバイスの液体流路50Bの形状を変更した変形例でもある。
図6に示すように、液体流路50B’’は、蒸発部EPに差し掛かっていない。すなわち、液体流路50B’’の蒸発部EP側の端部が、蒸発部の外側に位置している。
液体流路のうち、蒸発部EP側の端部が蒸発部の外側に位置している液体流路50B’’は、第3液体流路である。
【0083】
以上より、図6に示す蒸発部EPには、1本の第1液体流路(液体流路50F)と、6本の第2液体流路(液体流路50A、50C、50D、50E、50G、50H)が存在する。また、蒸発部EP内の液体流路の面積の合計は、蒸発部EPの面積の36.4%となっている。
【0084】
筐体の形状並びに蒸発部の形状および位置によっては、液相の作動媒体の循環効率を高める目的で第1液体流路または第2液体流路を配置しようとすると、蒸気流路を塞いでしまい、蒸発部における気相の作動媒体の循環効率を低下させてしまう場合がある。これに対して、第3液体流路は蒸発部に差し掛からない液体流路であるため、気相の作動媒体の循環効率を低下させることなく、蒸発部における液相の作動媒体の循環効率を高めることができる。
【0085】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る熱拡散デバイスは、蒸発部内に第4液体流路をさらに有している。第4液体流路は、蒸発部内における流路長が、液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の重心までの最短距離の0%を超えて10%未満となる液体流路である。
【0086】
図7は、本発明の第4実施形態に係る熱拡散デバイスの一例の蒸発部近傍の部分拡大断面図である。また、図7は、図4に示した熱拡散デバイスの液体流路50Bの形状を変更した変形例でもある。
【0087】
図7に示すように、液体流路50B’’’は、蒸発部EPに差し掛かっている。液体流路50’’’の蒸発部EP内における流路長は、液体流路50B’’’が蒸発部EPに差し掛かる地点E1B’’’から、液体流路50B’’’の蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T1B’’’までの長さ(図7中、両矢印L1B’’’で示す長さ)である。また、液体流路50B’’’が蒸発部EPに差し掛かる地点E1B’’’から蒸発部EPの重心Cまでの最短距離はD1B’’’である。長さL1B’’’/距離D1B’’’は約9%である。したがって、液体流路50B’’’は第4液体流路である。
【0088】
以上より、図7に示す蒸発部EPには、1本の第1液体流路(液体流路50F)と、6本の第2液体流路(液体流路50A、50C、50D、50E、50G、50H)と1本の第4液体流路(液体流路50B’’’)が存在する。また、蒸発部EP内の液体流路の面積の合計は、蒸発部EPの面積の37.5%となっている。
【0089】
筐体の形状並びに蒸発部の形状および位置によっては、蒸発部内に配置される第1液体流路および第2液体流路の位置および本数を調整しても、蒸発部における液体の作動媒体の循環効率と気体の作動媒体の循環効率のバランスを取れない場合がある。そのような場合であっても、第4液体流路を用いると、液体の作動媒体の循環効率と気体の作動媒体の循環効率のバランスを調整しやすくなる。
【0090】
[第5実施形態]
図8は、本発明の第5実施形態に係る熱拡散デバイスの一例の蒸発部近傍の部分拡大断面図である。
図8に示すように、蒸発部EP内には、液体流路50I、50J、50K、50L、50M、50Nが存在している。
【0091】
液体流路50Iの蒸発部EP内における流路長は、液体流路50Iが蒸発部EPに差し掛かる地点E2Iから、液体流路50Iの蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T2Iまでの長さ(図8中、両矢印L2Iで示す長さ)である。また、液体流路50Iが蒸発部EPに差し掛かる地点E2Iから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、両矢印D2Iで示す距離である。長さL2I/距離D2Iは約29%である。したがって、液体流路50Iは第2液体流路である。
【0092】
蒸発部EP内における液体流路50Kの形状は、蒸発部EPの重心Cを通り、長さ方向Yに沿った方向に延びる線分に対して、液体流路50Iと線対称となっている。したがって、液体流路50Kに関して、蒸発部EP内における流路長および液体流路50Kが蒸発部EPに差し掛かる地点から蒸発部の重心Cまでの最短距離は、液体流路50Iと同様である。そのため、液体流路50Kは第2液体流路である。
【0093】
液体流路50Jの蒸発部EP内における流路長は、液体流路50Jが蒸発部EPに差し掛かる地点E2Jから、液体流路50Jの蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T2Jまでの長さ(図8中、両矢印L2Jで示す長さ)である。また、液体流路50Jが蒸発部EPに差し掛かる地点E2Jから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、両矢印D2Jで示す距離である。ここで、長さL2J/D2Jは約9%である。したがって、液体流路50Jは第4液体流路である。
【0094】
液体流路50Lの蒸発部EP内における流路長は、液体流路50Lが蒸発部EPに差し掛かる地点E2Lから、液体流路50Lの蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T2Lまでの長さL2L(図8中、両矢印L2L1で示される長さと、両矢印L2L2で示される長さの合計)である。また、液体流路50Lが蒸発部EPに差し掛かる地点E2Lから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、両矢印D2Lで示す距離である。ここで、長さL2L/距離D2Lは約110%となる。したがって、液体流路50Lは第1液体流路である。
【0095】
蒸発部EP内における液体流路50Nの形状は、蒸発部EPの重心Cを通り、長さ方向Yに沿った方向に延びる線分に対して、液体流路50Lと線対称となっている。したがって、液体流路50Nに関して、蒸発部EP内における流路長および液体流路50Nが蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の重心Cまでの最短距離は、液体流路50Lと同様である。そのため、液体流路50Nは第1液体流路である。
【0096】
液体流路50Mの蒸発部EP内における流路長は、液体流路50Mが蒸発部EPに差し掛かる地点E2Mから、液体流路50Mの蒸発部EP側の端部における液相部51の末端T2Mまでの長さ(図8中、両矢印L2Mで示される長さ)である。また、液体流路50Mが蒸発部EPに差し掛かる地点E2Mから蒸発部EPの重心Cまでの最短距離は、両矢印D2Mで示す長さである。長さL2M/距離D2Mは約29%となる。したがって、液体流路50Mは第2液体流路である。
【0097】
以上より、図8に示す蒸発部EPには、2本の第1液体流路(液体流路50L、50N)と、3本の第2液体流路(液体流路50I、50K、50M)と、1本の第4液体流路(液体流路50J)が存在する。
また、蒸発部EP内の液体流路の面積の合計は、蒸発部EPの面積の53.3%である。
【0098】
上述したように、本発明の熱拡散デバイスでは、第1液体流路の蒸発部内における流路長は、液体流路が蒸発部内に差し掛かる地点から蒸発部の重心までの最短距離の100%を超えていてもよい。
【0099】
[第6実施形態]
図9は、本発明の第6実施形態に係る熱拡散デバイスの一例を模式的に示す断面図である。
【0100】
図9に示す熱拡散デバイス1Aでは、図2に示す熱拡散デバイス1と異なり、液相部51の凝縮部CP側の端部が互いに接続されていない。
【0101】
すなわち、本発明の熱拡散デバイスでは、液相部の凝縮部側の端部は互いに接続されていなくてもよい。また、液相部の凝縮部側の端部は、毛細管構造体で閉じられていなくてもよい。
【0102】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態では、筐体は、複数の蒸発部を有する。
【0103】
図10は、本発明の第7実施形態に係る熱拡散デバイスの一例を模式的に示す断面図である。
【0104】
図10に示す熱拡散デバイス1Bでは、筐体10には、複数の蒸発部EPおよびEPと凝縮部CPとが設定されている。蒸発部の数、配置、サイズは特に限定されない。
蒸発部EPおよび蒸発部EPの少なくとも一方において、蒸発部内の液体流路の面積の合計が、蒸発部の面積の15%以上であり、かつ、該蒸発部が、第1液体流路と第2液体流路を有していればよい。熱拡散デバイス1Bでは、蒸発部EPが上記条件を満たしている。
【0105】
すなわち、本発明の熱拡散デバイスでは、筐体が複数の蒸発部を備えていてもよい。
【0106】
[第8実施形態]
本発明の第8実施形態では、筐体の平面形状が第1実施形態~第7実施形態と異なり、筐体の平面形状に沿った蒸気流路および液体流路が形成されている。
【0107】
図11は、本発明の第8実施形態に係る熱拡散デバイスの一例を模式的に示す断面図である。
【0108】
図11に示す熱拡散デバイス1Cでは、筐体10Aの平面形状がL字型である。蒸発部EPから凝縮部CPに向かう液体流路50は、長さ方向Yに沿って延びる液体流路501と、幅方向Xに沿って延びる液体流路502とを有する。
【0109】
液体流路501と液体流路502とは、略直角に接続されているが、液体流路501と液体流路502の接続方向は、上記方向に限定されない。例えば、液体流路501と液体流路502とが90°以外の角度で接続されていてもよいし、曲線により接続していてもよい。
【0110】
本発明の熱拡散デバイスにおいて、筐体の平面形状は特に限定されず、例えば、三角形または矩形などの多角形、円形、楕円形、これらを組み合わせた形状などが挙げられる。また、筐体の平面形状は、L字型、C字型(コの字型)などであってもよい。また、筐体の内部に貫通口を有していてもよい。筐体の平面形状は、熱拡散デバイスの用途、熱拡散デバイスの組み入れ箇所の形状、近傍に存在する他の部品に応じた形状であってもよい。
【0111】
[第9実施形態]
本発明の第9実施形態では、毛細管構造体と支持体と筐体の第1内壁面に囲まれた領域、及び、毛細管構造体の内部に、液体流路が形成されている。
【0112】
図12は、本発明の第9実施形態に係る熱拡散デバイスの、毛細管構造体が延びる方向に垂直な方向における断面図である。
図12に示すように、熱拡散デバイス2は、厚さ方向Zに対向する第1内壁面11a及び第2内壁面12aを有する筐体10と、筐体10の内部空間に配置されるウィック30とを備える。ウィック30は、毛細管構造体131を含む。
【0113】
筐体10の内部空間には、毛細管構造体131と、毛細管構造体131を介して第1内壁面11a及び第2内壁面12aを内側から支持し、毛細管構造体131と平行に延びる支持体140a及び支持体140bが配置されている。支持体140aと支持体140bは、所定の距離だけ離れて対向している。支持体140aと支持体140bとの距離が液相部151の幅に相当する。
【0114】
毛細管構造体131、支持体140a及び支持体140b、並びに、第1内壁部11aに囲まれた領域が液相部151となる。毛細管構造体131及び液相部151をまとめて、液体流路150ともいう。
液相部151の幅や液体流路150に関する構成は、本発明の第1実施形態と同様であることが好ましい。
【0115】
支持体140a及び支持体140bは、筐体10の第1内壁面11a及び第2内壁面12aを内側から支持することができるものであればよく、その材料は特に限定されない。
支持体140a及び支持体140bを構成する材料としては、例えば、樹脂、金属、セラミックス、またはそれらの混合物、積層物等が挙げられる。また、支持体は、筐体と一体であってもよく、例えば、第1シートまたは第2シートの内壁面をエッチング加工すること等により形成されていてもよい。
さらに、支持体140a及び支持体140bは、毛細管構造体で構成されていてもよい。
【0116】
本発明の熱拡散デバイスは、図12に示した熱拡散デバイスにおいて、第1内壁面11aに代わって第2内壁面12aの表面に毛細管構造体131が配置されていてもよいし、第1内壁面11aに加えて第2内壁面12aの表面にさらに毛細管構造体が配置されていてもよいし、支持体140a及び/又は支持体140bが毛細管構造体で構成されていてもよい。
【0117】
[第10実施形態]
本発明の第10実施形態では、毛細管構造体が複数の繊維を線状に束ねた繊維束から構成されている。
複数の繊維を線状に束ねた繊維束から構成される毛細管構造体は、多孔体と同様に毛細管構造を有し、作動媒体を輸送することができる。繊維束から構成される毛細管構造体は、繊維束が延びる方向に沿って作動媒体を輸送する能力が高いため、作動媒体を輸送したい方向に沿って繊維束を構成する繊維を配置することが好ましい。
【0118】
図13は、本発明の第10実施形態に係る熱拡散デバイスの、毛細管構造体が延びる方向に垂直な方向における断面図である。
図13に示すように、熱拡散デバイス3は、厚さ方向Zに対向する第1内壁面11a及び第2内壁面12aを有する筐体10と、筐体10の内部空間に配置されて第1内壁面11aと第2内壁面12aを内側から支持するウィック30を備える。
【0119】
繊維束からなる液体流路について、図14を参照しながら説明する。
図14は、本発明の第10実施形態に係る熱拡散デバイスにおける毛細管構造体の一例の、毛細管構造体が延びる方向に垂直な方向における断面図である。
図14に示すように、ウィック30は、複数の繊維235を束ねた繊維束231を有している。複数の繊維231の間には隙間が存在している。該隙間は、毛細管力が作用し液相の作動媒体が移動することのできる空間、すなわち液相部251である。液相部251は毛細管構造体である繊維束231の内部に存在している。そのため、繊維間の隙間を含む繊維束231全体が、液体流路250であるといえる。
【0120】
図15は、本発明の第10実施形態に係る熱拡散デバイスの、蒸発部近傍の部分拡大断面図である。
図15に示すように、蒸発部EP内には、液体流路250A、250B、250C、250D、250E、250F、250G、250Hが存在する。
液体流路250A、250B、250C、250D、250E、250F、250G、250Hはいずれも、蒸発部EP側の端部が、蒸発部EP内に位置している。
【0121】
液体流路250Aの蒸発部EP内における流路長は、液体流路250Aが蒸発部EPに差し掛かる地点E1Aから、液体流路250Aの蒸発部EP側の端部における液相部の末端T3Aまでの長さ(図15中、両矢印L3Aで示す長さ)である。
【0122】
ここで、液体流路250Aの蒸発部EP側の端部における液相部の末端T3Aの位置は、図4に示す熱拡散デバイスにおける液体流路50Aの蒸発部EP側の端部における液相部の末端T1Aの位置と同じである。すなわち、図15における長さL3Aは、図4における長さL1Aに等しい。また、図15における蒸発部EPの位置及び大きさも図4と同じである。そのため、長さL3A/距離D3Aは、図4における長さL1A/距離D1Aと同様に約20%となる。従って、液体流路250Aは第2液体流路である。
【0123】
液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の重心までの最短距離に対する液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部側の端部までの流路長の割合は、図15に示す他の液体流路(250B~250H)でも、図4と同様である。すなわち、図4に示す熱拡散デバイスと同様に、液体流路250A、250C、250D、250E、250G、250Hは第2液体流路であり、液体流路250B及び250Fは第1液体流路である。
【0124】
なお、蒸発部EP内の毛細管構造体の長さが短くなっているため、蒸発部EP内に占める液体流路の面積の合計は、図4に示す熱拡散デバイス1よりも低下している。蒸発部EP内の液体流路の面積の合計は、蒸発部EPの面積の36.0%である。
【0125】
[その他の実施形態]
本発明の熱拡散デバイスにおいて、毛細管構造体は厚さ方向で幅が一定であってもよく、厚さ方向で幅が一定でなくてもよい。また、毛細管構造体の第1内壁面側の端部の幅と第2内壁面側の端部の幅は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
毛細管構造体は、第1内壁面側の端部から第2内壁面側の端部に向かって幅が連続的に狭くなっていてもよい。
毛細管構造体は、第1内壁面側の端部から第2内壁面側の端部に向かって幅が段階的に狭くなっていてもよい。
液相部を構成する毛細管構造体の第1内壁面側の端部は、互いに接続されていてもよい。毛細管構造体の端部が互いに接続されていると、毛細管構造体と第1内壁面との接触面積が増えることにより、接着強度が増すため、曲げまたは振動などの機械的なストレスに対する耐性を向上させることができる。
毛細管構造体は、第1内壁面側の端部と第2内壁面側の端部との間に、第1内壁面側の端部および第2内壁面側の端部よりも幅が広い部分を有していてもよい。
毛細管構造体は、第1内壁面側の端部と第2内壁面側の端部との間に、第1内壁面側の端部および第2内壁面側の端部よりも幅が狭い部分を有していてもよい。
【0126】
本発明の熱拡散デバイスにおいては、ウィックが、毛細管構造体のほかに、第1内壁面に沿って配置される第1ウィックおよび/または第2内壁面に沿って配置される第2ウィックを有していてもよい。
第1ウィックおよび第2ウィックは、毛細管力により作動媒体を移動させることができる毛細管構造を有するウィックであれば特に限定されない。ウィックの毛細管構造は、従来の熱拡散デバイスにおいて用いられている公知の構造であってよい。毛細管構造としては、細孔、溝、突起などの凹凸を有する微細構造、例えば、多孔構造、繊維構造、溝構造、網目構造などが挙げられる。
【0127】
第1ウィックおよび第2ウィックの材料は特に限定されず、例えば、エッチング加工または金属加工により形成される金属多孔膜、メッシュ、不織布、焼結体、多孔体などが用いられる。ウィックの材料となるメッシュは、例えば、金属メッシュ、樹脂メッシュ、もしくは表面コートしたそれらのメッシュから構成されるものであってよく、好ましくは銅メッシュ、ステンレス(SUS)メッシュまたはポリエステルメッシュから構成される。ウィックの材料となる焼結体は、例えば、金属多孔質焼結体、セラミックス多孔質焼結体から構成されるものであってよく、好ましくは銅またはニッケルの多孔質焼結体から構成される。ウィックの材料となる多孔体は、例えば、金属多孔体、セラミックス多孔体、樹脂多孔体から構成されるもの等であってもよい。
【0128】
第1ウィックおよび第2ウィックの大きさおよび形状は、特に限定されないが、例えば、筐体の内部において蒸発部から凝縮部まで連続して設置できる大きさおよび形状を有することが好ましい。
【0129】
第1ウィックおよび第2ウィックの厚さは、特に限定されないが、各々、例えば2μm以上200μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下である。第1ウィックおよび第2ウィックの厚さは、部分的に異なっていてもよい。第1ウィックの厚さは、第2ウィックの厚さと同じでもよく、異なっていてもよい。
【0130】
本発明の熱拡散デバイスは、蒸気流路内に配置され、筐体の第1内壁面および第2内壁面を内側から支持する複数の支柱をさらに備えていてもよい。
【0131】
支柱を形成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミックス、またはそれらの混合物、積層物等が挙げられる。また、支柱は、筐体と一体であってもよく、例えば、第1シートまたは第2シートの内壁面をエッチング加工すること等により形成されていてもよい。
【0132】
支柱の形状は、筐体を支持できる形状であれば特に限定されないが、支柱の高さ方向に垂直な断面の形状としては、例えば、矩形等の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0133】
支柱の高さは、特に限定されず、毛細管構造体の高さと同じでもよく、異なっていてもよい。
【0134】
支柱の高さは、一の熱拡散デバイスにおいて、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、ある領域における支柱の高さと、別の領域における支柱の高さが異なっていてもよい。
【0135】
支柱の幅は、熱拡散デバイスの筐体の変形を抑制できる強度を与えるものであれば特に限定されないが、支柱の端部の高さ方向に垂直な断面の円相当径は、例えば100μm以上2000μm以下であり、好ましくは300μm以上1000μm以下である。支柱の円相当径を大きくすることにより、熱拡散デバイスの筐体の変形をより抑制することができる。一方、支柱の円相当径を小さくすることにより、作動媒体の蒸気が移動するための空間をより広く確保することができる。
【0136】
支柱の配置は、特に限定されないが、好ましくは所定の領域において均等に、より好ましくは全体にわたって均等に、例えば支柱間の距離が一定となるように配置される。支柱を均等に配置することにより、熱拡散デバイス全体にわたって均一な強度を確保することができる。
【0137】
本発明の熱拡散デバイスは、放熱を目的として電子機器に搭載され得る。したがって、本発明の熱拡散デバイスを備える電子機器は本発明の電子機器である。本発明の電子機器としては、例えばスマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、ゲーム機器、ウェアラブルデバイス等が挙げられる。本発明の熱拡散デバイスは上記のとおり、外部動力を必要とせず自立的に作動し、作動媒体の蒸発潜熱および凝縮潜熱を利用して、二次元的に高速で熱を拡散することができる。そのため、本発明の放熱デバイスまたは熱拡散デバイスを備える本発明の電子機器では、電子機器内部の限られたスペースにおいて、放熱を効果的に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の電子機器または熱拡散デバイスは、携帯情報端末等の分野において、広範な用途に使用できる。例えば、CPU等の熱源の温度を下げ、電子機器の使用時間を延ばすために使用することができ、スマートフォン、タブレット、ノートPC等に使用することができる。
【符号の説明】
【0139】
1、1A、1B、1C、2、3 熱拡散デバイス(ベーパーチャンバー)
10 筐体
11 第1シート
12 第2シート
20 作動媒体
30 ウィック
31、131 毛細管構造体(多孔体)
31a 第1毛細管構造体(多孔体)
31b 第2毛細管構造体(多孔体)
231 毛細管構造体(繊維束)
235 繊維
50、150、250、501、502 液体流路
50B、50B’、50D’、50F、50F’、50H’、50L、50N、250B、250F 第1液体流路
50A、50C、50D、50E、50G、50H、50I、50K、50M、250A、250C、250D、250E、250G、250H 第2液体流路
50B’’ 第3液体流路
50B’’’、50J 第4液体流路
51、151、251 液相部
52 蒸気流路
100 電子機器
110 電子部品(発熱素子)
120 機器筐体
140a、140b 支持体
a 液相部の幅
b 蒸気流路の幅
、C 蒸発部の重心
CP 凝縮部
D1A、D1B、D1B’、D1B’’’、D1D、D2I、D2J、D2L、D2M
液体流路が蒸発部に差し掛かる地点から蒸発部の重心までの最短距離
E1A、E1B、E1B’、E1B’’’、E1C、E1D、E1D’、E1E、E1F、E1F’、E1G、E1H、E1H’、E2I、E2J、E2L、E2M 液体流路が蒸発部内に差し掛かる地点
EP、EP、EP 蒸発部
HE 発熱素子
L1A、L3A、L1B、L1B’、L1B’’’、L3B、L1D、L2I、L2J、L2L、L2M、L3D 液体流路の蒸発部内における流路長
T1A、T1B、T1B’、T1B’’’、T1D、T1D’、T1F’、T1H’、T2I、T2J、T2L、T2M、T3A、T3B、T3D 液体流路の蒸発部側の端部における液相部の末端
X 幅方向
Y 長さ方向
Z 厚さ方向

【要約】
熱拡散デバイス(1)において、蒸発部内の液体流路(50)の面積が、蒸発部(EP)の面積の15%以上であり、液体流路(50)の蒸発部(EP)側の端部が蒸発部(EP)内に位置し、液体流路(50)が蒸発部(EP)に差し掛かる地点(E1B)から蒸発部(EP)の末端までの流路長(L1B)が、液体流路(50)が蒸発部(EP)に差し掛かる地点(E1B)から蒸発部(EP)の重心(C1)までの最短距離(D1B)の30%以上である第1液体流路(50B)と、液体流路(50)が蒸発部(EP)に差し掛かる地点(E1A)から蒸発部(EP)の末端(T1A)までの流路長(L1A)が、液体流路(50)が蒸発部(EP)に差し掛かる地点(E1A)から蒸発部(EP)の重心(C1)までの最短距離(D1A)の10%以上、30%未満である第2液体流路(50A)と、を有することを特徴とする。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15