(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】アンテナシステム及び端末デバイス
(51)【国際特許分類】
H01Q 5/378 20150101AFI20220712BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20220712BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20220712BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H01Q5/378
H01Q1/24 Z
H01Q9/42
H01Q21/28
(21)【出願番号】P 2020558484
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 CN2018086932
(87)【国際公開番号】W WO2019218168
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ハンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジアキン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ドン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、リアン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チエン-ミン
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0069301(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064820(US,A1)
【文献】特表2015-533047(JP,A)
【文献】特表2016-500239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/378
H01Q 1/24
H01Q 9/42
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の給電点、第1のグラウンド点、第2の給電点、第2のグラウンド点、第3のグラウンド点、第4のグラウンド点、第1の放射器、第2の放射器、第1の共振構造体、及び第2の共振構造体を備えるアンテナシステムであって、前記第1のグラウンド点、前記第2のグラウンド点、前記第3のグラウンド点、及び前記第4のグラウンド点はメインボードのグラウンド部に位置しており、
前記第1の給電点は前記第1の放射器に接続され、また前記第1の給電点は高周波信号及び第1の低周波信号を前記第1の放射器に送信するように構成されており、前記第2の給電点は前記第2の放射器に接続され、また前記第2の給電点は中間周波信号及び第2の低周波信号を前記第2の放射器に送信するように構成されており、前記第1の放射器は前記第1のグラウンド点に接続され、前記第2の放射器は前記第2のグラウンド点に接続され、前記第2の低周波信号の周波数は前記第1の低周波信号の周波数より高く、
前記第1の共振構造体と前記第1の放射器との間に第1のスロットがあり、前記第1の共振構造体は前記第1のスロットを介して前記第1の放射器に電磁結合され、前記第2の共振構造体と前記第2の放射器との間に第2のスロットがあり、前記第2の共振構造体は前記第2のスロットを介して前記第2の放射器に電磁結合され、前記第1の共振構造体は前記第3のグラウンド点に接続され、前記第2の共振構造体は前記第4のグラウンド点に接続され、
前記第1の放射器は端末デバイスの下部フレームの第1の部分を含み、前記第2の放射器は前記端末デバイスの前記下部フレームの第2の部分を含み、第3のスロットが前記第1の部分と前記第2の部分との間にあり、
前記第1の共振構造体は前記端末デバイスの第1の側部フレームの一部を含み、前記第2の共振構造体は前記端末デバイスの第2の側部フレームの一部を含み、
前記第1のスロットは前記端末デバイスの前記下部フレームにある、且つ/又は前記第2のスロットは前記端末デバイスの前記下部フレームにあ
り、
前記端末デバイスはさらに、前記端末デバイスの面に対して平行方向に、金属製スクリーンパネルを有し、前記下部フレームと前記金属製スクリーンパネルとの間の距離がDであり、前記第1の側部フレーム及び第2の側部フレームと前記金属製スクリーンパネルとの間の距離がSであり、Dは第1の閾値より小さく、Sは第2の閾値より小さく、
前記端末デバイスの前記面に対して直交方向において、前記金属製スクリーンパネルと前記下部フレーム又は前記第1の側部フレーム及び前記第2の側部フレームとの間の距離がHであり、Hは第3の閾値より小さく、
D又はSが0より小さい又は0に等しい場合、Hは0より大きい、
アンテナシステム。
【請求項2】
前記高周波信号は新無線NRの周波数帯域を含む、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項3】
前記アンテナシステムはさらに第5のグラウンド点及び第6のグラウンド点の少なくとも一方を備え、前記第5のグラウンド点は前記メインボードのグラウンド部に位置しており、前記第1の共振構造体は第1のデバイスを用いて前記第5のグラウンド点に接続され、
前記第6のグラウンド点は前記メインボードのグラウンド部に位置しており、前記第2の共振構造体は第2のデバイスを用いて前記第6のグラウンド点に接続され、
前記第1のデバイス又は前記第2のデバイスは、フィルタ、スイッチ、ゼロオーム抵抗器、キャパシタ、及びインダクタのうちの少なくとも1つを含む、請求項1
又は2に記載のアンテナシステム。
【請求項4】
前記第1の給電点は第3のデバイスを用いて前記第1の放射器に接続される、
前記第2の給電点は第4のデバイスを用いて前記第2の放射器に接続される、又は
前記第1の給電点は第3のデバイスを用いて前記第1の放射器に接続され、前記第2の給電点は第4のデバイスを用いて前記第2の放射器に接続され、
前記第3のデバイス又は前記第4のデバイスは、整合回路網、調節可能なキャパシタ、スイッチのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項5】
前記第1の給電点、前記第1のグラウンド点、及び前記第1の放射器は、逆F型アンテナ又は右手/左手系複合伝送線路CRLHアンテナを形成する、且つ/又は
前記第2の給電点、前記第2のグラウンド点、及び前記第2の放射器は、逆F型アンテナ又はCRLHアンテナを形成する、請求項1から
4のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載のアンテナシステムを備える端末デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、アンテナ技術の分野に関し、具体的には、アンテナシステム及び端末デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話技術の急速な発展によって、携帯電話の速度に対する要件が増え続けている。キャリアアグリゲーション(CA)及び多重入力多重出力(MIMO)などの技術が第4世代(4G)又は第5世代(5G)の通信技術に適用されて、速度が改善されている。これには、複数のアンテナを有する携帯電話が必要とされる。5G通信技術では、新無線(NR)の周波数帯域が追加されている。具体的には、n77、n78、及びn79が、3.3GHzから5GHzの高周波部を含む。これには、携帯電話のアンテナがより高い周波数帯域をサポートできることが必要とされる。さらに、携帯電話の本体に対する画面の比率を高くするためには、アンテナの大きさを継続的に縮小することが必要になる。
【0003】
一般に、前述の要件により、携帯電話のアンテナ設計はますます困難になっている。
【発明の概要】
【0004】
本願の実施形態が、低周波デュアルCA及びNRの周波数帯域をサポートするアンテナシステム及び端末デバイスを提供する。
【0005】
前述の目的を達成するために、以下の技術的解決手段が本願の実施形態に用いられる。
【0006】
第1の態様によれば、アンテナシステムが提供され、本システムは、第1の給電点、第1のグラウンド点、第2の給電点、第2のグラウンド点、第3のグラウンド点、第4のグラウンド点、第1の放射器、第2の放射器、第1の共振構造体、及び第2の共振構造体を含む。第1のグラウンド点、第2のグラウンド点、第3のグラウンド点、及び第4のグラウンド点は、メインボードのグラウンド部に位置している。第1の給電点は第1の放射器に接続され、第1の給電点は、高周波信号と第1の低周波信号とを第1の放射器に送信するように構成される。第2の給電点は第2の放射器に接続され、第2の給電点は、中間周波信号と第2の低周波信号とを第2の放射器に送信するように構成される。第1の放射器は第1のグラウンド点に接続され、第2の放射器は第2のグラウンド点に接続される。第2の低周波信号の周波数は、第1の低周波信号の周波数より高い。第1の共振構造体は、第1の放射器から一定の距離だけ離れて第1の放射器に電磁結合され、第2の共振構造体は、第2の放射器から一定の距離だけ離れて第2の放射器に電磁結合される。第1の共振構造体は第3のグラウンド点に接続され、第2の共振構造体は第4のグラウンド点に接続される。本願で提供されるアンテナシステムは、デュアルフィードアンテナである。共振構造体によって、単一のアンテナが低周波をカバーすることが可能になり、デュアルアンテナ共振構造体によって低周波デュアルCAを実施することができる。さらに、2つのアンテナの放射器によって、ロングタームエボリューション(long term evolution、LTE)の周波数帯域をカバーすることができるので、低周波デュアルCAをサポートすることができる。
【0007】
実行可能な一実装例では、高周波信号は新無線NRの周波数帯域を含む。この実装例では、アンテナシステムはNRの周波数帯域をサポートする。
【0008】
実行可能な一実装例では、第1の放射器は端末デバイスの下部フレームの第1の部分を含み、第2の放射器は端末デバイスの下部フレームの第2の部分を含み、第1の部分及び第2の部分は絶縁されており、第1の共振構造体は第1の放射器の側部に端末デバイスの側部フレームの一部又は全部を含み、且つ第1の共振構造体は第1の部分から絶縁されておらず、第2の共振構造体は第2の放射器の側部に端末デバイスの側部フレームの一部又は全部を含み、且つ第2の共振構造体は第2の部分から絶縁されていない。この設計では、端末デバイスのフレームは、放射器及びアンテナシステムの共振構造体として用いられるので、端末デバイスの内側の空間を節約することができる。
【0009】
実行可能な一実装例では、端末デバイスはさらに、端末デバイスの面に対して水平方向に金属製スクリーンパネルを含み、下部フレームと金属製スクリーンパネルとの間の距離がDであり、側部フレームと金属製スクリーンパネルとの間の距離がSであり、Dは第1の閾値より小さく、Sは第2の閾値より小さい。この実装例は、一定のアンテナクリアランスエリアを確保できる。
【0010】
実行可能な一実装例では、端末デバイスの面に対して鉛直方向において、金属製スクリーンパネルと下部フレーム又は側部フレームとの間の距離がHであり、Hは第3の閾値より小さい。この実装例では、D及びSの値に関係なく(0mmであっても)、依然として、一定のアンテナクリアランスエリアを確保することができる。
【0011】
実行可能な一実装例では、D又はHが0より小さい又はこれに等しい場合、Hは0より大きい。この実装例は、一定のアンテナクリアランスエリアを確保できる。
【0012】
実行可能な一実装例では、アンテナシステムはさらに第5のグラウンド点を含み、第5のグラウンド点はメインボードのグラウンド部に位置しており、第1の共振構造体は第1のデバイスを用いて第5のグラウンド点に接続される、且つ/又はアンテナシステムはさらに第6のグラウンド点を含み、第6のグラウンド点はメインボードのグラウンド部に位置しており、第2の共振構造体は第2のデバイスを用いて第6のグラウンド点に接続される。第1のデバイス又は第2のデバイスは、フィルタ、スイッチ、ゼロオーム抵抗器、キャパシタ、及びインダクタのうちの少なくとも1つを含む。第1のデバイス又は第2のデバイスが異なる場合、異なる効果が実装され得る。例えば、第1のデバイス又は第2のデバイスがフィルタである場合、対応する共振構造体によって新たな低周波が発生し得る。第1のデバイス又は第2のデバイスが開スイッチである場合、対応する放射器が単一の低周波状態であってよい。第1のデバイス又は第2のデバイスが閉スイッチ、ゼロオーム抵抗器、又はキャパシタである場合、対応する放射器が単一の高周波状態であってよい。
【0013】
実行可能な一実装例では、第1の給電点は第3のデバイスを用いて第1の放射器に接続される、且つ/又は第2の給電点は第4のデバイスを用いて第2の放射器に接続される。第3のデバイス又は第4のデバイスは、整合回路網、調節可能なキャパシタ、及びスイッチのうちの少なくとも1つを含む。第3のデバイス又は第4のデバイスが異なる場合、異なる効果が実装され得る。例えば、第3のデバイス又は第4のデバイスが整合回路網又は調節可能なキャパシタである場合、アンテナのインピーダンス特性が改善されてよく、且つアンテナの出力電力が増えてよい。第3のデバイス又は第4のデバイスがスイッチである場合、スイッチがオフになると、対応する放射器が休止状態になり、側方放射器の共振構造体として用いられるので、側方放射器の効率が改善される。
【0014】
実行可能な一実装例では、第1の給電点、第1のグラウンド点、及び第1の放射器は、逆F型アンテナ若しくは右手/左手系複合伝送線路CRLHアンテナを形成する、且つ/又は第2の給電点、第2のグラウンド点、及び第2の放射器は、逆F型アンテナ若しくはCRLHアンテナを形成する。この実装例は、第1のアンテナ及び第2のアンテナの実行可能な一実装例を提供する。
【0015】
第2の態様によれば、端末デバイスが提供され、本デバイスは、第1の態様及び第1の態様の実装例のうちのいずれか1つによるアンテナシステムを含む。この部分の技術的効果については、第1の態様及び第1の態様のいずれかの実装例の技術的効果を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願の一実施形態によるアンテナシステムの概略構造
図1である。
【0017】
【
図2】本願の一実施形態によるアンテナシステムの概略構造
図2である。
【0018】
【
図3】本願の一実施形態によるアンテナシステムの概略構造
図3である。
【0019】
【
図4】本願の一実施形態によるアンテナシステムの概略構造
図4である。
【0020】
【
図5】本願の一実施形態によるアンテナシステムの概略構造
図5である。
【0021】
【
図6】本願の一実施形態によるアンテナシステムのアンテナクリアランスエリアの概略
図1である。
【0022】
【
図7】本願の一実施形態によるアンテナシステムのアンテナクリアランスエリアの概略
図2である。
【0023】
【
図8】本願の一実施形態によるアンテナシステムのリターンロスの概略
図1である。
【0024】
【
図9】本願の一実施形態によるアンテナシステムのアンテナ効率の概略
図1である。
【0025】
【
図10】本願の一実施形態によるアンテナシステムのリターンロスの概略
図2である。
【0026】
【
図11】本願の一実施形態によるアンテナシステムのアンテナ効率の概略
図2である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願の説明では、「中央」、「上部」、「下部」、「前方」、「後方」、「左側、「右側」、「鉛直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「内側」、又は「外側」などの用語で示される方向又は位置関係は、添付図面に基づいて示される方向又は位置関係であって、本願の実施形態の内容の説明を容易にし、且つ説明を簡略化するのに用いられているだけであり、示された装置又は要素が特定の方向を有する必要があること、また特定の方向に構築され動作する必要があることを示す又は示唆することを意図するものではなく、したがって、本願に対する制限と解釈することはできないことが理解されるであろう。
【0028】
図1を参照すると、本願はアンテナシステムを提供する。本システムは、第1の給電点101、第1のグラウンド点102、第2の給電点103、第2のグラウンド点104、第3のグラウンド点105、第4のグラウンド点106、第1の放射器107、第2の放射器108、第1の共振構造体109、及び第2の共振構造体110を含む。
【0029】
第1のグラウンド点102、第2のグラウンド点104、第3のグラウンド点105、及び第4のグラウンド点106は、メインボードのグラウンド部に位置している。「メインボードのグラウンド部」とは、無線周波数デバイスが位置しているメインボード又はプリント回路基板(PCB)のグラウンド層のことを指す。
【0030】
第1の給電点101は第1の放射器107に接続され、第1の給電点101は、高周波信号及び第1の低周波信号を第1の放射器107に送信するように構成される。第2の給電点103は第2の放射器108に接続され、第2の給電点103は、中間周波信号及び第2の低周波信号を第2の放射器108に送信するように構成される。第1の放射器107は第1のグラウンド点102に接続され、第2の放射器108は第2のグラウンド点104に接続される。第2の低周波信号の周波数は、第1の低周波信号の周波数より高い。具体的に、第1の低周波信号の周波数は、700MHz以上、N MHzまでであってよく、第2の低周波信号の周波数は、N MHz以上、960MHzまでであってよく、Nは700MHzと960MHzとの間の周波数を表す。中間周波信号の周波数は、1710MHz以上、2400MHzまでであってよく、高周波信号の周波数は、2500MHz以上、2690MHzまでであってよい。言い換えれば、高周波信号はNRの周波数帯域を含む。あるいは、本発明の一実施形態では、高周波信号、中間周波信号、及び低周波信号の特定の周波数が限定されない。ただし、高周波信号の周波数が中間周波信号の周波数より高く、中間周波信号の周波数は低周波信号の周波数より高いことが条件である。
【0031】
第1の共振構造体109は、第1の放射器107から一定の距離だけ離れて第1の放射器107に電磁結合され、第2の共振構造体110は、第2の放射器108から一定の距離だけ離れて第2の放射器108に電磁結合される。第1の共振構造体109は第3のグラウンド点105に接続され、第2の共振構造体110は第4のグラウンド点106に接続される。第1の共振構造体109及び第1の放射器107は第1のアンテナとして用いられ、第2の共振構造体110及び第2の放射器108は第2のアンテナとして用いられる。
【0032】
第1のアンテナの第1の放射器107と第2のアンテナの第2の放射器108とは両方ともモノポールアンテナであり、第1の放射器107及び第2の放射器108の共振帯域幅は比較的狭く、高周波数又は中間周波数に集中する。第1の放射器107及び第2の放射器108の共振構造体に対して結合給電が行われ、これらの共振構造体に低周波共振を発生させることにより、第1のアンテナ及び第2のアンテナは両方とも低周波数をカバーすることができる。言い換えれば、第1のアンテナ及び第2のアンテナは、低周波デュアルCAをサポートすることができる。
【0033】
第1の給電点101、第1のグラウンド点102、及び第1の放射器107を含むアンテナの形状が、本願において限定されることはなく、また、第2の給電点103、第2のグラウンド点104、及び第2の放射器108を含むアンテナの形状が限定されることはない。例えば、第1の給電点101、第1のグラウンド点102、及び第1の放射器107は、逆F型アンテナ(IFA)、右手/左手系複合伝送線路(CRLH)アンテナ、又は別の形状のアンテナを形成してよく、且つ/又は第2の給電点103、第2のグラウンド点104、及び第2の放射器108は、IFAアンテナ、CRLHアンテナ、又は別の形状のアンテナを形成してよい。例えば、
図1に示すように、第1の給電点101、第1のグラウンド点102、及び第1の放射器107は逆F型アンテナを形成し、第2の給電点103、第2のグラウンド点104、及び第2の放射器108は逆F型アンテナを形成する。
図2に示すように、第1の給電点101、第1のグラウンド点102、及び第1の放射器107は逆F型アンテナを形成し、第2の給電点103、第2のグラウンド点104、及び第2の放射器108はCRLHアンテナを形成する。
【0034】
図3を参照すると、任意選択で、アンテナシステムはさらに第5のグラウンド点111を含んでよく、第5のグラウンド点111はメインボードのグラウンド部に接続され、第1の共振構造体109は第1のデバイス112を用いて第5のグラウンド点111に接続される。任意選択で、アンテナシステムはさらに第6のグラウンド点113を含んでよく、第6のグラウンド点113はメインボードのグラウンド部に接続され、第2の共振構造体110は第2のデバイス114を用いて第6のグラウンド点113に接続される。第1のデバイス112又は第2のデバイス114は、フィルタ、スイッチ、ゼロオーム抵抗器、キャパシタ、及びインダクタのうちの少なくとも1つを含む。
【0035】
以下では、説明の一例として、アンテナシステムの第2のデバイス114の機能を用いる。第1のデバイス112もアンテナシステムの同じ効果を有することが理解されるであろう。したがって、その詳細はここで説明しない。
【0036】
例えば、第2の共振構造体110と第1の放射器107との共振によって発生する低周波共振に加えて、第2のデバイス114がフィルタである場合、第2の共振構造体110は新たな低周波共振を発生させて、さらに低い周波数帯域をカバーしてよく、これにより、低周波デュアルCAが実装される。第2のデバイス114がスイッチである場合、スイッチがオンに切り替わると、第2の放射器108は単一の高周波状態になり、スイッチがオフになると、第2の放射器108は単一の低周波状態になる。両方の状態はフィルタの影響を受けないので、効率がより高くなる。第2のデバイス114がゼロオーム抵抗器、小型キャパシタ、又は小型インダクタである場合、第2の放射器108は単一の高周波状態になる。
【0037】
図4を参照すると、任意選択で、第1の給電点101は第3のデバイス115を用いて第1の放射器107に接続されてよい。任意選択で、第2の給電点103は第4のデバイス116を用いて第2の放射器108に接続されてよい。第3のデバイス115又は第4のデバイス116は、整合回路網、調節可能なキャパシタ、及びスイッチのうちの少なくとも1つを含む。以下では、アンテナシステムの整合回路網、調節可能なキャパシタ、及びスイッチの機能を説明する。
【0038】
インピーダンスの観点から、無線信号の送信処理では、送信機又は転送装置(例えば、テレビ、放送局、無線通信、又は携帯電話の信号を送出する装置)の送信電気特性(インピーダンス特性など)が互いに整合している場合、無線信号送信の損失及び歪みが最小限に抑えられ得る。したがって、アンテナと同じ電気特性を有する回路網が、整合回路網と呼ばれる。整合回路網の品質がアンテナの定在波比(standing wave ratio、SWR)及びアンテナの効率に直接影響を与える。給電点と放射器との間に接続される整合回路網又は調節可能なキャパシタが、アンテナのインピーダンス特性を改善して、アンテナの出力電力を増やすのに用いられ得る。
【0039】
給電点と放射器との間に接続されたスイッチがオンに切り替わった場合、内容が
図1~
図3の内容と一致するので、詳細は説明しない。給電点と放射器との間に接続されたスイッチがオフである場合、対応する放射器は休止状態である。例えば、第2の給電点103と第2の放射器108との間のスイッチがオフである場合、第2の放射器108は休止状態(すなわち、非CA状態)であり、第2の放射器108及び第2の共振構造体110が第1の放射器107の共振構造体になるので、第1の放射器107の効率を改善することができる。あるいは、第1の給電点101と第1の放射器107との間のスイッチがオフである場合、第1の放射器107は休止状態であり、第1の放射器107及び第1の共振構造体109が第2の放射器108の共振構造体になるので、第2の放射器108の効率を改善することができる。非CAのシナリオでは、共振構造体の長さが短縮され得るので、アンテナの帯域幅が狭くなってよく、その結果、単一の周波数帯域の性能が確保される。
【0040】
アンテナシステムが携帯電話などの端末デバイスの上部に設置された場合、通話中に人の頭部が端末デバイスの上部に比較的近づくため、アンテナシステム全体の比吸収率(specific absorption rate、SAR)が過剰に高くなり、アンテナシステムの効率が低下する。したがって、アンテナシステムは端末デバイスの下部に設置されるのが好ましい。SARとは、携帯電話又は無線製品の電磁波エネルギー吸収率である。人体の様々な臓器が損失媒体であるため、外部電磁場の作用を受けて誘導電磁場が人体に発生し、この誘導電磁場は電磁エネルギーを吸収して消散させる電流を発生させる。
【0041】
アンテナシステムを端末デバイス内に設置する場合、端末デバイスの内側の空間を節約して、本体に対する画面の比率をさらに改善するために、端末デバイスのフレームが、第1の放射器107、第2の放射器108、第1の共振構造体109、及び第2の共振構造体110として設計され得る。具体的には、端末デバイスの下部フレームが第1の放射器107及び第2の放射器108として設計されてよく、端末デバイスの側部フレームが第1の共振構造体109及び第2の共振構造体110として設計されてよい。
【0042】
具体的には、第1の放射器107は端末デバイスの下部フレームの第1の部分を含んでよく、第2の放射器108は端末デバイスの下部フレームの第2の部分を含んでよく、第1の部分及び第2の部分は絶縁されていない。第1の共振構造体109は、第1の放射器107の側部に、端末デバイスの側部フレームの一部又は全部を含んでよく、第1の部分から絶縁されていない。第2の共振構造体110は、第2の放射器108の側部に、端末デバイスの側部フレームの一部又は全部を含んでよく、第2の部分から絶縁されていない。放射器同士の間、及び放射器と共振構造体との間にはスロット(slot)があり、スロットは非金属物質で充填されてよく、又は放射器若しくは共振構造体と電気的に接触していない別のデバイス(例えば、ユニバーサルシリアルバス(universal serial bus、USB)インタフェース)がスロットに設置される。
図1に示すように、第1の共振構造体109及び/又は第2の共振構造体110はさらに、端末デバイスの下部フレームの一部を別々に含んでよい。
図5に示すように、第1の放射器107及び/又は第2の放射器108はさらに、端末デバイスの側部フレームの一部を別々に含んでよい。
【0043】
本願のアンテナは端末デバイスのフレームを用いてよいので、アンテナクリアランスエリアが非常に小さくなり得る。アンテナクリアランスエリアは、アンテナが接地されていない領域の大きさを示す。アンテナ素子がグラウンドに近づきすぎると、グラウンドに対するキャパシタンスが増えるため、アンテナ整合に影響を与える。
図6に示すように、端末デバイスの強度を高めるために、金属製スクリーンパネル117が、通常、ハウジングの内側に配置される。これは、端末デバイスの面に対して水平方向において、下部フレームと金属製スクリーンパネル117との間の距離がDであり、側部フレームと金属製スクリーンパネル117との間の距離がSであるということに対応し、Dは第1の閾値より小さく、Sは第2の閾値より小さく、D及びSは3mmより小さい又はこれに等しくてよく、あるいは負の値でさえもよい。任意選択で、
図7に示すように、端末デバイスの面に対して鉛直方向において、金属製スクリーンパネル117と端末デバイスの下部フレーム又は側部フレームとの間に一定の距離Hがあってよく、Hは第3の閾値より小さい。D又はHが0より小さい又はこれに等しい場合、Hは0より大きくてよい。D及びHが両方とも0より大きい場合、Hは0より小さい又はこれに等しくてもよく、0より大きくてもよい。距離Hによって、一定のアンテナクリアランスエリアを確保することができる。D、S、及びHの値が、本願において限定されることはない。
【0044】
図8は、S=1.5mmの場合に異なるDを有する第1のアンテナ及び第2のアンテナのリターンロスの概略図である。リターンロスは反射損失とも呼ばれ、アンテナインピーダンスの不整合で生じる反射である。インピーダンス不整合は主に、インピーダンスが変化する接続点又はポイントで発生する。リターンロスは、信号の変動を引き起こす。反射信号は、誤って受信された信号とみなされ、混乱を引き起こす。曲線(1)は、D=0mmの場合の第1のアンテナのリターンロスを示しており、曲線(2)は、D=2mmの場合の第1のアンテナのリターンロスを示しており、曲線(3)は、D=0mmの場合の第2のアンテナのリターンロスを示しており、曲線(4)は、D=2mmの場合の第2のアンテナのリターンロスを示している。リターンロスが-3dBより小さい周波数が、利用可能な周波数である。この図から、2.5GHz付近、4.5GHz付近、及びN MHzから900MHzまでの周波数が第1のアンテナに利用可能であり、700MHz付近からN MHzまで及び1.8GHz付近の周波数が第2のアンテナに利用可能であることが分かる。
【0045】
図9は、S=1.5mmの場合に異なるDを有する第1のアンテナ及び第2のアンテナのアンテナ効率の概略図である。アンテナ効率とは、アンテナによって放射される電力(すなわち、電磁波に有効に変換された電力)のアンテナに入力された有効電力に対する比率である。曲線(1)は、D=0mmの場合の第1のアンテナのアンテナ効率を示しており、曲線(2)は、D=2mmの場合の第1のアンテナのアンテナ効率を示しており、曲線(3)は、D=0mmの場合の第2のアンテナのアンテナ効率を示しており、曲線(4)は、D=2mmの場合の第2のアンテナのアンテナ効率を示している。この図から、2.5GHz付近、4.5GHz付近、及びN MHzから900MHzまでの周波数で、第1のアンテナのアンテナ効率が比較的高く、700MHz付近からN MHzまで及び1.8GHz付近の周波数で、第2のアンテナのアンテナ効率が比較的高いことが分かる。
【0046】
D=2mm、S=1.5mm、第1の給電点101と第1の放射器107との間のスイッチがオフであり、第1の放射器107及び第1の共振構造体109が第2の放射器108の共振構造体になり(この場合、非CA状態)、第4のデバイス116が整合回路網である場合に、整合回路網が異なるインダクタであるときに得られるリターンロスが
図10に示されている。曲線(1)は、CA状態におけるリターンロスを示しており、曲線(2)は、第4のデバイス116が14nHのインダクタである場合の非CA状態におけるリターンロスを示しており、曲線(3)は、第4のデバイス116が16nHのインダクタである場合の非CA状態におけるリターンロスを示しており、曲線(4)は、第4のデバイス116が18nHのインダクタである場合の非CA状態におけるリターンロスを示している。図の矢印で示す最小値が、第1の放射器107と第1の共振構造体109との共振で生じるリターンロスの減少である。
【0047】
図11は、第4のデバイス116が整合回路網であり、整合回路網が
図10と同じ条件下の異なるインダクタである場合のアンテナ効率の概略図である。曲線(1)は、CA状態におけるアンテナ効率を示しており、曲線(2)は、第4のデバイス116が14nHのインダクタである場合の非CA状態におけるアンテナ効率を示しており、曲線(3)は、第4のデバイス116が16nHのインダクタである場合の非CA状態におけるアンテナ効率を示しており、曲線(4)は、第4のデバイス116が18nHのインダクタである場合の非CA状態におけるアンテナ効率を示している。図の矢印で示す最小値が、第1の放射器107と第1の共振構造体109との共振で生じるアンテナ効率の増加である。
【0048】
本願で提供されるアンテナシステムは、デュアルフィードアンテナである。共振構造体によって、単一のアンテナが低周波をカバーすることが可能になり、デュアルアンテナ共振構造体によって低周波デュアルCAを実施することができる。さらに、2つのアンテナの放射器で、ロングタームエボリューション(LTE)の周波数帯域と新たに追加されるNRの周波数帯域とをカバーすることができるので、低周波デュアルCAとNRの周波数帯域との両方をサポートすることができる。
【0049】
当業者であれば、本明細書に開示された実施形態で説明された複数の例を組み合わせて、複数のユニット及び複数のアルゴリズム段階が、電子的ハードウェア又はコンピュータソフトウェアと電子的ハードウェアとの組み合わせによって実装され得ることを認識するであろう。これらの機能がハードウェアで実行されるのか、又はソフトウェアで実行されるのかは、特定の用途及び技術的解決手段の設計制約条件で決まる。当業者であれば、異なる方法を用いて、説明された機能を特定の用途ごとに実装するであろうが、この実装例が本願の範囲を超えるものとみなされるべきではない。