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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】部材の組み付け構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/07 20060101AFI20220712BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20220712BHJP
   B60K 13/02 20060101ALN20220712BHJP
【FI】
F16B5/07 L
F16B5/02 A
B60K13/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018204501
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020070852
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】志水 広征
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-135618(JP,A)
【文献】特開平08-254205(JP,A)
【文献】特開2011-202508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/07
F16B 5/02
B60K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に設けられた係合爪を、第2部材に設けられた係合孔に嵌め込んで、前記第1部材と前記第2部材とを組み付ける組み付け構造であって、
前記係合爪は、
該係合爪を前記係合孔に嵌め込んだ際に、第1開口縁および該第1開口縁と交差する第2開口縁に囲われた前記係合孔を通るように配置される挿通部と、
前記挿通部の先端部から突出し、前記第1開口縁と引っ掛かって該係合爪を抜け止めする返し部と、
該係合爪を前記係合孔に嵌め込んだ際に、前記第2開口縁に対して隙間をあけて相対する前記挿通部の離間面に、該離間面から該第2開口縁に向けて出っ張るように設けられた位置決め部と、を備え、
前記位置決め部は、一方の前記第1開口縁に向かってから該一方の第1開口縁に向かい合う他方の前記第1開口縁に向けて折り返すように曲がる屈曲部を有する板状に形成され、
前記位置決め部は、前記離間面からの出っ張り方向の幅が、前記隙間よりも大きく形成された部分を有し、前記第2開口縁との干渉により、前記離間面に連なる根元と反対側の先端縁が、該先端縁が該離間面に向けて近づく方向へ弾性変形可能に構成されている
ことを特徴とする部材の組み付け構造。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記先端縁が前記第1開口縁と前記第2開口縁とがなす角部に当たり、前記屈曲部における少なくとも1つが、該角部をなす第1開口縁と別の第1開口縁に当たるように構成されている請求項1記載の部材の組み付け構造。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記張り出し方向において前記返し部よりも前記挿通部の先端側の位置から、該挿通部の前記第1部材に連なる根元側へ向けて設けられている請求項1または2記載の部材の組み付け構造。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記挿通部の先端側が、前記係合爪を前記係合孔に嵌め込んだ際に該位置決め部が前記第2開口縁に干渉する位置よりも前記返し部の突出方向の寸法が小さく形成されている請求項1~3の何れか一項に記載の部材の組み付け構造。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記挿通部の先端側から前記第1部材に連なる根元側へ向かうにつれて、前記離間面からの出っ張り方向の幅が大きくなるように形成されている請求項1~4の何れか一項に記載の部材の組み付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部材同士を爪嵌合構造により組み付ける組み付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車両に用いられる吸気ダクトは、射出成形などによって一対の分割体を形成し、これらを互いに爪嵌合構造によって結合することで、筒状に形成されている(例えば、特許文献1参照)。また、車両では、ダクトを含めた様々な部材を爪嵌合構造によって組み付けることが行われている。爪嵌合構造は、第1部材に形成した係合爪を、第2部材に形成した係合孔に圧入し、係合孔を通した係合爪の返し部が、係合孔の開口縁に引っ掛かることで、第1部材と第2部材とを組み付ける構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-202508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した爪嵌合構造では、係合孔の幅を係合爪よりも大きく形成することで、第1部材や第2部材の成形誤差を許容したり、係合爪を嵌め込み易くしたりすることが行われている。このため、係合爪を係合孔に嵌め合わせた際に、係合爪と係合孔の開口縁との間に必然的に隙間ができてしまう。このような隙間に起因して、第1部材と第2部材との間でガタつきが生じ、車両走行時の振動により、異音が発生したり、第1部材と第2部材とを繋ぐ他の締結部分へ負担が大きくなったりするなどのおそれがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、部材のガタつきを防止できる組み付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る部材の組み付け構造は、
第1部材に設けられた係合爪を、第2部材に設けられた係合孔に嵌め込んで、前記第1部材と前記第2部材とを組み付ける組み付け構造であって、
前記係合爪は、
該係合爪を前記係合孔に嵌め込んだ際に、第1開口縁および該第1開口縁と交差する第2開口縁に囲われた前記係合孔を通るように配置される挿通部と、
前記挿通部の先端部から突出し、前記第1開口縁と引っ掛かって該係合爪を抜け止めする返し部と、
該係合爪を前記係合孔に嵌め込んだ際に、前記第2開口縁に対して隙間をあけて相対する前記挿通部の離間面に、該離間面から該第2開口縁に向けて出っ張るように設けられた位置決め部と、を備え、
前記位置決め部は、一方の前記第1開口縁に向かってから該一方の第1開口縁に向かい合う他方の前記第1開口縁に向けて折り返すように曲がる屈曲部を有する板状に形成され、
前記位置決め部は、前記離間面からの出っ張り方向の幅が、前記隙間よりも大きく形成された部分を有し、前記第2開口縁との干渉により、前記離間面に連なる根元と反対側の先端縁が、該先端縁が該離間面に向けて近づく方向へ弾性変形可能に構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る部材の組み付け構造によれば、部材のガタつきを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る部材の組み付け構造の要部を示す概略斜視図である。
図2】実施例の組み付け構造の要部を示す平面図である。
図3】実施例の組み付け構造の要部を示す側面図である。
図4】実施例の組み付け構造の要部を示す正面図である。
図5図2のA-A線に対応する位置で切断した断面図であり、(a)は右側の係合爪の拡大図であり、(b)は左側の係合爪の拡大図である。
図6】係合爪を係合孔に嵌め込む過程を示す説明図である。
図7図2のA-A線に対応する位置で切断した断面図であり、左右方向2つの係合爪のそれぞれに位置決め部を設ける変更例である。
図8図2のA-A線に対応する位置で切断した断面図であり、位置決め部の変更例を示す。
図9図2のA-A線に対応する位置で切断した断面図であり、位置決め部の変更例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る部材の組み付け構造につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例
【0010】
図1に示すように、第1部材10と第2部材12とは、第1部材10に設けられた係合爪14を、第2部材12に設けられた係合孔16に嵌め込む爪嵌合構造によって、互いに組み付いている。本開示に係る組み付け構造は、例えば、オイルクーラーダクト(第1部材10)を車体側の設置部材(第2部材12)へ組み付ける場合や、複数の分割体(第1部材10、第2部材12)を組み合わせて筒状にして、吸気ダクトなどのダクトを構成する場合など、車両に設置される車両用部材の組み付けに好適に用いることができる。なお、以下の説明では、係合孔16の貫通方向へ係合爪14の先端側から見た状態を基準として方向を指称する。図1に示すように、位置決め部26が配置された側が右側であり、その反対側が左側であり、返し部24が挿通部22から突出する方向が上側であり、その反対側が下側である。そして、係合爪14(挿通部22)が第1部材10から張り出す方向において係合爪14の突端を先端側といい、その反対側を根元側という。
【0011】
第1部材10および第2部材12としては、係合爪14などの各部が一体的に形成された合成樹脂の成形品を採用することができる。合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリカABSポリマーアロイ、またはポリアセタール(POM)などを用いることができる。なお、第2部材12は、ステンレスなどの金属を用いてもよい。
【0012】
図1図4に示すように、係合爪14は、第1部材10から突出するように形成されており、実施例では、共通する係合孔16に嵌め込まれる2つの係合爪14,14が、左右方向に並べて設けられている。左右2つの係合爪14,14は、左右方向に離して配置されており、後述する位置決め部26を除いて左右対称な形状である。係合孔16は、第2部材12において車体側に沿って設置される設置部12aから折り曲げて立ち上がる係合部12bを貫通するように設けられ、左右方向が幅広な矩形状に形成されている。係合孔16は、上下方向に向かい合う第1開口縁18,18と、左右方向に向かい合う第2開口縁20,20とに囲まれており、左右2つの係合爪14,14を受け入れ可能である。なお、上下の第1開口縁18,18を区別する場合、上側を上第1開口縁18Aといい、下側を下第1開口縁18Bという。左右方向の第2開口縁20,20を区別する場合、右側を右第2開口縁20Aといい、左側を左第2開口縁20Bという。
【0013】
図1および図2に示すように、係合爪14は、該係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、係合孔16を通るように配置される挿通部22と、挿通部22の先端部に設けられた返し部24とを備えている。挿通部22は、第1部材10から張り出すように形成された平板形状であり、上下方向が該挿通部22の厚み方向になっている。図4に示すように、左右2つの係合爪14,14は、左右方向に並ぶ挿通部22,22の外側面間の左右幅が、係合孔16における左右方向の開口幅(左右方向の第2開口縁20,20間の幅)よりも小さく設定されている。従って、係合爪14は、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、挿通部22における係合孔16の第2開口縁20に相対する外側面と、該第2開口縁20との間に隙間があくようになっている(図5(a)参照)。また、挿通部22は、その厚み(上下寸法)が、係合孔16における上下方向の開口幅(上下方向の第1開口縁18,18間の幅)よりも小さく設定されている(図4参照)。従って、係合爪14は、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、挿通部22における係合孔16の第1開口縁18に相対する面と、該第1開口縁18との間に隙間があくようになっている。なお、実施例では、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、挿通部22の上面が上第1開口縁18Aに当たり、挿通部22の下面と下第1開口縁18Bとの間に隙間があく。また、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、右側の挿通部22の右外側面に設けられた位置決め部26によって、左側の挿通部22の左外側面が左第2開口縁20Bに当たり、右側の挿通部22の右外側面と右第2開口縁20Aとの間に隙間があく。このように実施例では、右側の係合爪14の挿通部22の右外側面が、右第2開口縁20Aから離れる離間面である。
【0014】
図1に示すように、返し部24は、挿通部22における第1部材10からの張り出し方向と交差する方向へ挿通部22の先端部から突出している。返し部24は、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、第1開口縁18と引っ掛かって、係合爪14を抜け止めするようになっている。返し部24は、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、係合孔16の第1開口縁18と張り出し方向に向かい合うように配置される。実施例の返し部24は、挿通部22から上側へ突出し、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、係合孔16の上第1開口縁18Aと張り出し方向に向かい合って配置される。そして、係合爪14は、返し部24が挿通部22から突出する上側にある上第1開口縁18Aに、挿通部22が当たるように構成される(図5参照)。係合爪14は、挿通部22を当てる上第1開口縁18A側となる上側方向へ、返し部24を挿通部22から突出させているともいえる。係合爪14は、返し部24の突端における上下寸法(返し部24の突出方向の寸法)が、係合孔16における上下方向の開口幅(上下方向の第1開口縁18,18間の幅)よりも大きく形成されている。従って、係合爪14を係合孔16に嵌め込む際に、第1開口縁18などを変形させながら、係合孔16に返し部24を押し込む。また、係合爪14には、挿通部22における第1部材10に連なる根元部下面から下方へ突出する支持片28が設けられている。そして、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、設置部12aに載置される支持片28により、係合爪14が支持される。このような構成とすることで、支持片28によって係合爪14を上側に押し上げる力を働かせて、挿通部22の上面を上第1開口縁18Aに強く押し当てることができる。
【0015】
図1図4に示すように、係合爪14は、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、係合孔16の第2開口縁20に対して隙間をあけて相対する挿通部22の離間面に設けられた位置決め部26を備えている。実施例では、左側の係合爪14の挿通部22の左外側面を左第2開口縁20Bに当てて、右側の係合爪14における挿通部22の右外側面と右第2開口縁20Aとの間に隙間があくように設定されているので、右側の挿通部22の右外側面が、位置決め部26が設けられる離間面となる(図5参照)。位置決め部26は、挿通部22の右外側面から右第2開口縁20Aへ向けて出っ張るように形成された板状部分であり、挿通部22と一体的に形成されている。位置決め部26は、一方の第1開口縁18に向かってから該一方の第1開口縁18に向かい合う他方の第1開口縁18に向けて折り返すように曲がる屈曲部30を、少なくとも1つ有する折れ曲がった形状に形成されている。
【0016】
図5(a)の二点鎖線で示すように、位置決め部26は、挿通部22の右外側面(離間面)からの左右方向(位置決め部26の出っ張り方向)の幅が、前記隙間よりも大きく形成された部分を有しており、この部分が係合孔16に嵌まるようになっている。実施例の位置決め部26は、挿通部22の右外側面と該右外側面に連なる根元と反対側の先端縁との間隔が、該右外側面と右第2開口縁20Aとの間の隙間(設計上の余裕寸法)よりも、大きく形成されている。このように、位置決め部26は、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、右第2開口縁20Aに干渉するように設定されている。そして、位置決め部26は、右第2開口縁20Aとの干渉により、先端縁が挿通部22の右外側面に向けて近づく方向へ弾性変形可能に構成されている(図5(a)の実線参照)。
【0017】
図4および図5(a)に示すように、実施例の位置決め部26は、挿通部22の右外側面から、返し部24の突出方向と反対側の下第1開口縁18Bへ向かう根元片26aと、根元片26aから折り返して上第1開口縁18Aに向かう延出片26bとを有し、正面視(係合孔16の貫通方向へ係合爪14の先端側から見た場合)において略「U」字状に形成されている。位置決め部26は、根元片26aと延出片26bとを繋ぐ屈曲部30が、下第1開口縁18B側へ凸になるように湾曲し、延出片26bにおいて上方へ指向する開放端縁が、位置決め部26における前述の先端縁となる。そして、位置決め部26は、延出片26bおよび/または根元片26aが、挿通部22の右外側面に近づく方向へ弾性変形可能である。
【0018】
図5(a)に示すように、位置決め部26は、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、先端縁が上第1開口縁18Aと右第2開口縁20Aとがなす角部に当たり、屈曲部30が、該角部をなす上第1開口縁18Aと別の下第1開口縁18Bに当たるように構成されている。より具体的には、位置決め部26は、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に、先端縁が上第1開口縁18Aと右第2開口縁20Aとがなす角部に当たり、先端縁が挿通部22の右外側面に向けて近づく方向に弾性変形する。これに伴って、屈曲部30が、前記角部をなす上第1開口縁18Aと別の下第1開口縁18Bに押し当てられる。この際、屈曲部30は、係合孔16への嵌め込み前に比べて該屈曲部30の湾曲の程度が緩やかになるように変形し、下第1開口縁18Bと屈曲部30との接触面積が大きくなる。位置決め部26は、先端縁を上第1開口縁18Aに干渉するように設定して屈曲部30を下第1開口縁18Bへ向けて付勢したり、屈曲部30を下第1開口縁18Bに干渉するように設定して先端縁を上第1開口縁18Aへ向けて付勢したり、これら両方であったり、何れであってもよい。このように、位置決め部26は、挿通部22の右外側面と係合孔16の右第2開口縁20Aとの間において左右方向の突っ張りとなるだけでなく、係合孔16の上下方向の第1開口縁18A,18Bの間において上下方向の突っ張りとなる。
【0019】
図1および図2に示すように、位置決め部26は、張り出し方向において返し部30よりも挿通部22の先端側の位置から、該挿通部22の第1部材10に連なる根元側へ向けて設けられている。換言すると、位置決め部26と返し部24とを右側から見た際に、位置決め部26と返し部24とが上下方向に重なるように設けられている。実施例では、係合爪14の先端に、位置決め部26が設けられておらず、係合爪14において前記張り出し方向の途中位置から第1部材10に向けて位置決め部26が設けられている。
【0020】
図3に示すように、位置決め部26は、挿通部22の先端側が、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に位置決め部26が第2開口縁20に干渉する位置よりも、上下寸法(返し部24の突出方向の寸法)が小さく形成されている。位置決め部26は、挿通部22の第1部材10からの張り出し方向において、該位置決め部26と返し部24とを右側から見た際に重なる位置が、係合孔16における上下方向の開口寸法よりも小さく形成するとよい。実施例の位置決め部26は、係合爪14の先端側から、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際の該係合孔16への嵌め込み位置に向かうにつれて上下寸法が大きくなるように形成されている。位置決め部26は、その上下寸法が前記嵌め込み位置において係合孔16の上下方向の開口幅と同じまたはわずかに大きくなるように設定され、該嵌め込み位置よりも根元側の上下寸法が同じにしてある。位置決め部26は、上下寸法を変化させる際に、先端縁の上下位置を変えずに屈曲部30の上下位置が変化するように形成され、前記嵌め込み位置よりも根元側において該位置決め部26の上下寸法が同じにしてある。
【0021】
図2に示すように、位置決め部26は、挿通部22の先端側から第1部材10に連なる根元側へ向かうにつれて、挿通部22の右外側面(離間面)からの出っ張り方向の幅が大きくなるように形成されている。実施例の位置決め部26は、挿通部22の先端側から第1部材10に連なる根元側へ向かうにつれて、挿通部22の右外側面(離間面)と先端縁との間隔が大きくなっている。位置決め部26は、係合爪14の先端側から根元側に向かうにつれて挿通部22の右外側面からの左右方向の延出寸法が大きくなり、係合爪14の根元側を係合孔16に通すほど、位置決め部26と係合孔16の右第2開口縁20Aとの干渉度合いが大きくなる。なお、位置決め部26の左右寸法は、前記嵌め込み位置において、挿通部22の右外側面と右第2開口縁20Aとの間の隙間(設計上の余裕寸法)よりもわずかに大きくなるように設定され、挿通部22の先端側において前記隙間よりもわずかに小さくなっている。
【0022】
前述した係合爪14の係合孔16への嵌め込みを、図6を参照して説明する。係合爪14を先端が下になるように斜めに傾けて、返し部24の先端に設けられたテーパ面を係合孔16の上第1開口縁18Aに沿わせつつ、係合爪14を係合孔16に押し込む(図6(b)参照)。返し部24によって係合孔16が押し広げられ、これにより返し部24の通過が許容され、返し部24および位置決め部26が係合孔16を通って挿通部22が係合孔16に配置される(図6(c)参照)。斜めにしていた係合爪14を水平にして支持片28を第2部材12の設置部12aに載置することで、挿通部22の上面が係合孔16の上第1開口縁18Aに当たった姿勢になる(図6(d)参照)。そして、第1部材10の図示しない締結部において車体側にボルト等の締結具で固定することで、第1部材10を車体側に固定する。このように組み付けた第1部材10は、締結具を外しても、係合爪14の返し部24が係合孔16の上第1開口縁18Aに引っ掛かることで抜け止めされる。
【0023】
係合爪14を係合孔16に嵌め合わせた際に、右側の挿通部22の右外側面に設けられた位置決め部26が、該右外側面と隙間をあけて相対する係合孔16の右第2開口縁20Aに弾力的に当たる。これにより、左右2つの係合爪14,14は、係合孔16において左第2開口縁20Bに向けて押されて、左側の挿通部22の左外側面が左第2開口縁20Bに当たった状態で左右方向の位置決めがされる。また、位置決め部26は、右側の挿通部22の右外側面と係合孔16の右第2開口縁20Aとの間において突っ張りとして作用するので、左右2つの係合爪14,14と係合孔16との間において左右方向の位置関係を維持できる。従って、第1部材10と第2部材12との間で左右方向にガタつきが生じることを防止でき、車両走行時の振動によるガタつきに起因する異音の発生を回避できる。また、第1部材10のガタつきを防止できるので、車両走行時の振動に起因する、第1部材10を車体側に固定する締結部への負担を抑えることができる。しかも、係合爪14と係合孔16の左右方向の第2開口縁20,20との間に隙間があるように寸法設定しても、位置決め部26によってガタつきを防止できるので、第1部材10や第2部材12の成形等による寸法誤差に適切に対応することができる。また、係合爪14と係合孔16との間に隙間ができるような余裕がある寸法設定にすることで、係合爪14を係合孔16に嵌め込み易くなり、組み付け作業性を向上することができる。
【0024】
位置決め部26は、先端縁が上第1開口縁18Aと右第2開口縁20Aとがなす角部に当たり、屈曲部30が下第1開口縁18Bに当たるよう構成されている。これにより、位置決め部26は、上下方向の第1開口縁18A,18B間において突っ張りとして作用するので、係合爪14と係合孔16との間において上下方向の位置関係を決めることができ、また、この状態を維持できる。従って、位置決め部26は、第1部材10と第2部材12との間で上下方向にガタつきが生じることを防止でき、車両走行時の振動によるガタつきに起因する異音の発生を回避できる。しかも、実施例では、支持片28によって係合爪14を支持して挿通部22の上面を上第1開口縁18Aに押し当てているので、第1部材10および第2部材12を上下方向にガタつかないように安定させることができる。そして、第1部材10のガタつきを防止できるので、車両走行時の振動に起因する、第1部材10を車体側に固定する締結部への負担を抑えることができる。しかも、係合爪14と係合孔16の上下方向の第1開口縁18,18との間に隙間があるように寸法設定しても、位置決め部26によってガタつきを防止できるので、第1部材10や第2部材12の成形等による寸法誤差に適切に対応することができる。また、係合爪14と係合孔16との間に隙間できるような余裕がある寸法設定にすることで、係合爪14を係合孔16に嵌め込み易くなり、組み付け作業性を向上することができる。
【0025】
位置決め部26は、前記張り出し方向において返し部24よりも挿通部22の先端側の位置から、該挿通部22の第1部材10に連なる根元側へ向けて設けられているので、返し部24によって係合孔16を押し広げたときに、位置決め部26を係合孔16に挿入することができる。従って、位置決め部26を設けても係合爪14を係合孔16に嵌め込み易く、組み付け作業性を向上することができる。
【0026】
位置決め部26は、挿通部22の先端側が、係合爪14を係合孔16に嵌め込んだ際に該位置決め部26が第2開口縁20に干渉する位置よりも、上下寸法(返し部24の突出方向の寸法)が小さく形成されている。すなわち、返し部24が係合孔16を通るときに、位置決め部26が係合孔16に干渉し難く、位置決め部26を設けても係合爪14を係合孔16に嵌め込み易く、組み付け作業性を向上することができる。そして、返し部24が係合孔16を通った後は、位置決め部26を係合孔16の開口縁18,20に干渉させることができるから、第1部材10のガタつきを適切に防止できる。
【0027】
位置決め部26は、挿通部22の先端側から第1部材10に連なる根元側へ向かうにつれて、左右方向(挿通部22の右外側面からの出っ張り方向)の幅が大きくなるように形成されている。これにより、位置決め部26を係合孔16に通すときに、位置決め部26が係合孔16に干渉し難く、位置決め部26を設けても係合爪14を係合孔16に嵌め込み易く、組み付け作業性を向上することができる。そして、返し部24が係合孔16を通った後は、位置決め部26を係合孔16の開口縁18,20に干渉させることができるから、第1部材10のガタつきを適切に防止できる。
【0028】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)実施例では、係合孔16における片側の第2開口縁20だけに対応して、位置決め部26を設けたが、図7に示すように、係合孔16における両側の第2開口縁20,20に対応するように、2つの係合爪14,14の外側のそれぞれに、位置決め部26を設けてもよい。
(2)位置決め部26は、屈曲部30が1つである正面視「U」字形状の実施例の形態に限らず、図8に示すように、2つ以上の屈曲部30を備えていてもよい。この場合、少なくとも1つの屈曲部30を、返し部24が突出する側と反対の第1開口縁18に当てて、位置決め部26の先端縁を、返し部24が突出する側の第1開口縁18に当てる構成にするとよい。
(3)実施例では、第1開口縁18と第2開口縁20とがなす角部を直角に形成したが、これに限らず、図9(a)に示すように、第1開口縁18と第2開口縁20とがなす角部を鋭角に形成してもよい。その際、位置決め部26の先端縁(延出片26b)を、第2開口縁20の一部または全部に当るようにしてもよい。
(4)実施例では、位置決め部26を略均一な厚みで形成したが、これに限らず、部位によって厚みを変えてもよい。例えば、図9(b)に示すように、位置決め部26の先端縁側を、根元側よりも肉厚に形成してもよい。これにより、位置決め部26の弾力性が増し、第1部材10と第2部材12との間に生じるガタつきを、より低減することができる。
(5)図9(c)に示すように、位置決め部26は、第1開口縁18と第2開口縁20とがなす角部に当たる先端縁に、先端縁から挿通部22の離間面に向かう方向に返し26cを形成してもよい。返し26cによって、位置決め部26の弾力性が増し、第1部材10と第2部材12との間に生じるガタつきを、より低減することができる。なお、返し26cは、位置決め部26の一部にのみ設けても、全体に設けても、何れであってもよい。
(6)実施例では、2つの係合爪を1つの係合孔に嵌め込む構成であるが、1つの係合孔に1または3つ以上の係合爪を嵌め込む構成であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 第1部材,12 第2部材,14 係合爪,16 係合孔,18 第1開口縁,
20 第2開口縁,22 挿通部,24 返し部,26 位置決め部,30 屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9