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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】車両用ラッチシステム
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/54 20140101AFI20220712BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20220712BHJP
   E05B 81/44 20140101ALI20220712BHJP
   E05B 83/18 20140101ALI20220712BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20220712BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
E05B77/54
E05B81/20 B
E05B81/44
E05B83/18
B60J5/10 H
B60J5/00 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019134891
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021017769
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 道夫
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-114061(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0218670(US,A1)
【文献】特開昭61-183588(JP,A)
【文献】特開昭51-100528(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10314124(DE,A1)
【文献】実開平05-057259(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00-49/04
77/00-85/28
B60J 5/00
5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、前記車両本体に対して開閉可能に支持されたリッドとの間に設けられ、前記車両本体に対して前記リッドが閉じられた場合にストライカ及びラッチを互いに噛み合った状態に維持することにより前記車両本体に対する前記リッドの開放方向への移動を制限する車両用ラッチシステムであって、
前記車両本体と前記リッドとの間には、前記ストライカ及び前記ラッチが噛み合った状態を維持した状態で前記ストライカを移動させることにより、前記車両本体に対して前記リッドを移動させるストライカ駆動装置が設けられ、
前記ストライカ駆動装置は、変速機が走行可能なポジションを選択していない場合、前記車両本体に対して前記リッドを全閉位置に配置し、かつ前記リッドが全閉位置に配置されている状態で前記変速機が走行可能なポジションを選択している場合、前記ストライカをクローズ動作させることにより前記車両本体に対して前記リッドを前記全閉位置よりも閉じ方向に設定したオーバーストローク位置に保持することを特徴とする車両用ラッチシステム。
【請求項2】
車両本体と、前記車両本体に対して開閉可能に支持されたリッドとの間に設けられ、前記車両本体に対して前記リッドが閉じられた場合にストライカ及びラッチを互いに噛み合った状態に維持することにより前記車両本体に対する前記リッドの開放方向への移動を制限する車両用ラッチシステムであって、
前記車両本体と前記リッドとの間には、前記ストライカ及び前記ラッチが噛み合った状態を維持した状態で前記ストライカを移動させることにより、前記車両本体に対して前記リッドを移動させるストライカ駆動装置が設けられ、
前記ストライカ駆動装置は、サービスブレーキが制動状態にある場合、前記車両本体に対して前記リッドを全閉位置に配置し、かつ前記リッドが全閉位置に配置されている状態で前記サービスブレーキが非制動状態にある場合、前記ストライカをクローズ動作させることにより前記車両本体に対して前記リッドを前記全閉位置よりも閉じ方向に設定したオーバーストローク位置に保持することを特徴とする車両用ラッチシステム。
【請求項3】
前記ストライカ駆動装置は、
前記ストライカを移動可能に支持する取付ベースと、
前記ストライカの移動方向に対して交差する向きに移動する態様で前記取付ベースに支持された可動部材と、
前記可動部材及び前記ストライカの間に設けられ、前記可動部材の移動を前記ストライカの移動に変換するカム機構と
を備え、前記可動部材の移動によって前記ストライカを前記取付ベースに対して移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ラッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テールゲート等のリッドを車両本体に対して閉じた状態に維持する車両用ラッチシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両本体とリッドとの間に設けられる車両用ラッチシステムとしては、例えば特許文献1に記載のものがある。この車両用ラッチシステムでは、車両本体に対してストライカが移動可能に設けられているとともに、ストライカを移動するためのアクチュエータが設けられている。リッドには、閉じた場合にストライカに係合可能となるラッチを有したラッチユニットが設けられている。この車両用ラッチシステムによれば、ストライカがポップアップ位置に配置されている状態でラッチがストライカに係合すると、ストライカがクローズ動作することでストライカがポップアップ位置から全閉位置に配置され、車両本体に対してリッドが閉じた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-100225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、車両本体とリッドとの間には、雨水等の外部の水が車内に浸入するのを防止するため、ウェザストリップと称されるシール部材が設けられている。このため、走行中において振動や衝撃等の外力が加えられると、シール部材が撓むことにより車両本体に対してリッドが全閉位置よりも閉じ方向に移動する場合がある。全閉位置よりも閉じ方向に移動したリッドは、シール部材の反力によって元の全閉位置まで復帰することになる。上記のようにしてリッドが移動した場合には、ストライカも連動するため、ラチェットに対してラッチが離接移動を繰り返すことになり、両者が接触した際に打撃音が生じ得る。ラッチとラチェットとの打撃音を防止するには、シール部材の反力を大きく設定することで解決可能である。すなわち、シール部材の反力を大きく設定すれば、走行中に外力が加えられた場合にも、車両本体に対するリッドの移動が抑えられることになり、打撃音の原因となるラッチとラチェットとの離接移動が防止されるようになる。しかしながら、シール部材の反力を大きく設定した場合には、リッドを閉じている際に常にシール部材に大きな外力が加えられた状態となるため、シール部材に早期に劣化が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、シール部材が早期に劣化する事態を招来することなく走行中の打撃音を防止することのできる車両用ラッチシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ラッチシステムは、車両本体と、前記車両本体に対して開閉可能に支持されたリッドとの間に設けられ、前記車両本体に対して前記リッドが閉じられた場合にストライカ及びラッチを互いに噛み合った状態に維持することにより前記車両本体に対する前記リッドの開放方向への移動を制限する車両用ラッチシステムであって、前記車両本体と前記リッドとの間には、前記ストライカ及び前記ラッチが噛み合った状態を維持した状態で前記ストライカを移動させることにより、前記車両本体に対して前記リッドを移動させるストライカ駆動装置が設けられ、前記ストライカ駆動装置は、所定の走行条件が成立していないと判断した場合、前記車両本体に対して前記リッドを全閉位置に配置し、かつ前記リッドが全閉位置に配置されている状態で前記走行条件が成立したと判断した場合、前記ストライカをクローズ動作させることにより前記車両本体に対して前記リッドを前記全閉位置よりも閉じ方向に設定したオーバーストローク位置に保持することを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上述した車両用ラッチシステムにおいて、前記ストライカ駆動装置は、前記ストライカを移動可能に支持する取付ベースと、前記ストライカの移動方向に対して交差する向きに移動する態様で前記取付ベースに支持された可動部材と、前記可動部材及び前記ストライカの間に設けられ、前記可動部材の移動を前記ストライカの移動に変換するカム機構とを備え、前記可動部材の移動によって前記ストライカを前記取付ベースに対して移動させることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述した車両用ラッチシステムにおいて、前記ストライカ駆動装置は、車速センサによって検出した車速が予め設定した閾値を超えた場合に前記リッドを前記オーバーストローク位置に保持させることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述した車両用ラッチシステムにおいて、前記ストライカ駆動装置は、変速機が走行可能なポジションを選択している場合に前記リッドを前記オーバーストローク位置に保持させることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述した車両用ラッチシステムにおいて、前記ストライカ駆動装置は、サービスブレーキが非制動状態にある場合に前記リッドを前記オーバーストローク位置に保持させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両が走行していると判断された場合、ストライカ駆動装置の駆動によってリッドが全閉位置よりも閉じ方向に設定されたオーバーストローク位置に引き込まれるため、リッドと車両本体との間に介在されているシール部材の変形量が増える。このため、シール部材の反力が大きくなってラッチとラチェットとの接触圧力も高くなる。これにより、車両の走行中に振動や衝撃等の外力が加えられた場合にも、ラッチとラチェットとが離隔するおそれがなくなり、これらラッチ及びラチェットの再接触に伴って生じる打撃音等の騒音を抑えることが可能となる。しかも、車両が停止している状態においては、リッドがオーバーストローク位置よりも開き方向の全閉位置に配置されるため、シール部材に早期に劣化が生じるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態である車両用ラッチシステムを適用した車両の後端部を概念的に示すもので、リッドであるテールゲートが全閉の状態の右側面一部拡大図である。
図2図2は、図1に示した車両においてテールゲートがポップアップ位置に配置された状態の右側面一部拡大図である。
図3図3は、図1に示した車両においてテールゲートがオーバーストローク位置に配置された状態の車両用ラッチシステムの右側面である。
図4図4は、図1に示した車両においてテールゲートが全開位置に配置された状態の側面図である。
図5図5は、図1に示した車両用ラッチシステムに適用するラッチユニットの外観斜視図である。
図6図6は、図4に示したラッチユニットの内部構成を示す斜視図である。
図7図7は、図4に示したラッチユニットの内部構成を別の角度から示す要部斜視図である。
図8図8は、図4に示したラッチユニットにおいてストライカに係合する部分を示すもので、(a)はラッチがフルラッチ位置に配置された状態の図、(b)はラッチがハーフラッチ位置に配置された状態の図、(c)はラッチが開放位置に配置された状態の図である。
図9図9は、図1に示した車両用ラッチシステムに適用するストライカ及びストライカ駆動装置の要部分解斜視図である。
図10図10は、図1に示した車両用ラッチシステムに適用するストライカ及びストライカ駆動装置を示すもので、(a)はストライカが最前方位置に配置された状態の底面図、(b)はその要部平面図である。
図11図11は、図1に示した車両用ラッチシステムの動作状態を示すもので、(a)は取付ベースに対してカムプレートが右側の移動端まで移動した場合の平面概念図、(b)は取付ベースに対してカムプレートが中間の位置に移動した場合の平面概念図、(c)は取付ベースに対してカムプレートが左側の移動端まで移動した場合の平面概念図である。
図12図12は、図1に示した車両用ラッチシステムの制御系を示すブロック図である。
図13図13は、図1に示した車両用ラッチシステムで適用するスライドモータ及びリリースモータの動作タイミングを示すタイミングチャートである。
図14図14は、テールゲートの位置とシール部材の反力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る車両用ラッチシステムの好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1図4は、本発明の実施の形態である車両用ラッチシステムを適用した車両の要部を示したものである。ここで例示する車両は、背面に開口Aを有した車両本体Bと、車両本体Bの背面開口Aを開閉するテールゲート(リッド)Cとを備えた、いわゆるミニバンやワンボックスと称されるタイプのものである。車両本体Bの背面開口Aは、車内空間に通じるもので、背面のほぼ全面が開放可能となるように設けてある。テールゲートCは、背面開口Aの上縁部との間にヒンジDを有し、車両本体Bの左右方向に沿って延在する水平軸心(図1図4において紙面に垂直となる方向)を中心として回転することにより、背面開口Aを開閉することが可能である。テールゲートCを閉じて全閉位置に配置した場合には、図1に示すように、車両本体Bにおいて背面開口Aの周囲に設けたシール部材EがテールゲートCに圧接した状態となり、車内への水の浸入を防止することが可能である。
【0014】
この車両には、テールゲートCの下縁部にラッチユニット10が設けてある一方、車両本体Bにおいて背面開口Aの下縁となる部分にストライカ20が設けてある。以下、ラッチユニット10及びストライカ20の構成について説明し、併せて本願発明の特徴部分について詳述する。なお、以下においては便宜上、車両本体Bに搭載された状態の姿勢でラッチユニット10及びストライカ20のそれぞれの構成要素の方向を特定することとする。この場合、車両本体Bの右側に位置する部分を右方、左側に位置する部分を左方という。
【0015】
ラッチユニット10は、後述するストライカ20を係合保持するためのもので、図5図7に示すように、ケース11を介してテールゲートCに取り付けてある。ラッチユニット10には、ケース11の内部にラッチ12及びラチェット13が配設してある。
【0016】
ラッチ12は、ケース11に設けたストライカ進入溝11aの一方側となる部分に上下に延在するラッチ軸12aを介して回転可能に配設したプレート状部材である。ラッチ12には、ストライカ進入溝11aに進入したストライカ20に係合することによってストライカ20の逸脱を制限するフック部12bが設けてある。このラッチ12には、図8においてラッチ12を反時計回りに回転させるように付勢するリターンスプリング12cがケース11との間に設けてある(図7参照)。
【0017】
ラチェット13は、ストライカ進入溝11aの他方側となる部分に上下に延在するラチェット軸13aを介して回転可能に配設したプレート状部材である。このラチェット13は、図8(c)に示す開放位置から時計回りに回転したラッチ12に係合することにより、ラッチ12の反時計回りの回転を制限することが可能である。より具体的に説明すると、ラチェット13は、図8(b)に示すように、フック部12bがストライカ進入溝11aの開口端部に位置したハーフラッチ位置においてラッチ12に係合可能、かつ図8(a)に示すように、フック部12bがストライカ進入溝11aの奥側端部に位置したフルラッチ位置においてラッチ12に係合可能である。このラチェット13には、図8においてラチェット13を時計回りに回転させるように付勢するラチェットバネ13bがケース11との間に設けてある(図7参照)。なお、図8(c)に示すように、ラッチ12が開放位置に配置された場合には、ラッチ12に対してラチェット13は係合しない。
【0018】
また、ラッチユニット10は、カーテシスイッチ14、リリースレバー15及びリリースアクチュエータ16を備えている。カーテシスイッチ14は、ラッチ12の端面に設けた検出突部12dを介してケース11に対するラッチ12の回転位置を検出するものである。本実施の形態では、ラッチ12がフルラッチ位置に配置された場合にOFF信号を出力し、フルラッチ位置以外に配置されている場合にON信号を出力するカーテシスイッチ14が設けてある。
【0019】
リリースレバー15は、レバー軸15aを介してケース11に回転可能に配設したものである。レバー軸15aは、ラチェット13よりも上方となる位置において車両のほぼ前後方向に沿って延在するもので、リリースレバー15の作用端部15bが下方に向けて延在する状態でケース11にリリースレバー15を回転可能に支持している。このリリースレバー15は、図6において時計回りに回転した場合に作用端部15bを介してラチェット13の入力端部13cに当接し、ラチェットバネ13bの付勢力に抗してラチェット13を反時計回りに回転させることが可能である。このリリースレバー15には、図6において反時計回りに回転させるように付勢するリリースバネ15cがケース11との間に設けてある(図5参照)。
【0020】
リリースアクチュエータ16は、駆動した場合にリリースバネ15cの付勢力に抗してリリースレバー15を図6において時計回りに回転させるものである。本実施の形態では、リリースモータ16aと、ウォームギヤ16bと、渦巻きカム16cとを備えてリリースアクチュエータ16が構成してある。リリースモータ16aは、正逆方向に回転が可能な電動モータである。ウォームギヤ16bは、リリースモータ16aの駆動軸16a1に取り付けたウォーム16b1と、ウォーム軸16b2を介してケース11に回転可能に配設したウォームホイール16b3とを備えて構成した減速機である。渦巻きカム16cは、ウォームホイール16b3に一体に設けたもので、外周面を介してリリースレバー15の入力端部15dに当接している。図示の例では、リリースバネ15cの付勢力により、ウォームホイール16b3の回転中心よりも下方となる部分においてリリースレバー15の入力端部15dが渦巻きカム16cの外周面に当接した状態に維持されている。この渦巻きカム16cは、ウォームホイール16b3が回転した場合に回転中心から外周面までの距離が漸次変化するように形成してある。
【0021】
具体的に説明すると、ウォームホイール16b3が初期位置にある場合、図7に示すように、渦巻きカム16cの外周面においてリリースレバー15が当接する部分は、ウォームホイール16b3の回転中心にもっとも近接した位置となる。従って、リリースレバー15は、作用端部15bがラチェット13の入力端部13cよりも左側において入力端部13cから離隔した状態に維持されている。この状態から、ウォームホイール16b3が図6において反時計回りに回転すると、渦巻きカム16cの外周面がウォームホイール16b3の中心から漸次離隔するようになり、この結果、リリースレバー15がリリースバネ15cの付勢力に抗して、図6において時計回りに回転し、リリースレバー15の作用端部15bがラチェット13の入力端部13cに当接する。その後、ウォームホイール16b3の回転が進むにつれてリリースレバー15の回転が進行し、ラチェット13が図6において反時計回りに回転することにより、ラッチ12との係合状態が解除される。ラチェット13とラッチ12との係合状態が解除された場合には、ラッチ12がリターンスプリング12cの付勢力によって反時計回りに回転し、ラッチ12によるストライカ20の係合状態が解除される。なお、その後、ウォームホイール16b3が逆方向に回転すれば、リリースレバー15がリリースバネ15cの付勢力によって反時計回りに回転し、作用端部15bがラチェット13の入力端部13cから離隔した状態に復帰するため、再びラチェット13がラッチ12に係合可能な状態となる。
【0022】
ストライカ20は、図9図11に示すように、ベースプレート21と、ベースプレート21に保持した係合ロッド22とを備えて構成したものである。ベースプレート21は、後縁が直線状で前縁部が突出した略五角形状を成すもので、左右の両端部にスライドガイド孔21aを有し、かつ前方の突出部にピン装着孔21bを有している。スライドガイド孔21aは、前後方向に沿って延在する長孔状を成すもので、互いに平行となるように形成してある。ピン装着孔21bは、ベースプレート21を貫通する円形の孔である。係合ロッド22は、略U字状を成すもので、両端部が前後に並んだ姿勢で、両端部を介してベースプレート21の中央部分に固定してある。係合ロッド22の外径は、ラッチユニット10のケース11に設けたストライカ進入溝11aに進入可能となるように、ストライカ進入溝11aの幅よりも小さく構成してある。このストライカ20は、ストライカ駆動装置30を介して車両本体Bに取り付けてある。
【0023】
ストライカ駆動装置30は、上述したストライカ20を支持する取付ベース31と、取付ベース31の下面側に配設したカムプレート(可動部材)32及び3つの位置検出スイッチ33A,33B,33Cとを備えて構成してある。
【0024】
取付ベース31は、前後方向の寸法に対して左右方向の寸法を大きく構成した板状部材であり、固定ボルトF(図1参照)を介して車両本体Bに取り付けてある。この取付ベース31には、カム貫通孔(カム機構)31a及び2つのプレートガイド孔31bが設けてある。カム貫通孔31aは、取付ベース31を左右に二等分する中心線上に形成した長孔状の貫通孔であり、車両本体Bの前後に沿うように形成してある。プレートガイド孔31bは、カム貫通孔31aの両側となる部分に設けた溝状の切欠であり、それぞれ車両の左右方向に沿うように形成してある。上述のストライカ20は、スライドガイド孔21aを介して取付ベース31にスライドガイドピン23を装着することにより、ピン装着孔21bがカム貫通孔31aの内部に位置する状態で取付ベース31の上面中央部に配設してある。図からも明らかなように、スライドガイドピン23は、スライドガイド孔21aよりも小径の軸部23aと、大径の頭部23bとを有したものである。これにより、ストライカ20は、取付ベース31に対して離隔する方向の移動が阻止された状態で、車両本体Bの前後方向に沿って移動することが可能である。
【0025】
取付ベース31の取り付け位置及び取付ベース31に対するストライカ20の移動範囲は、上述したラッチユニット10のラッチ12が係合ロッド22に係合した状態で、取付ベース31に対してストライカ20がもっとも後方(以下、最後方位置という)に移動した場合に、車両本体Bに対してテールゲートCがポップアップ位置に配置されるように調整してある。ポップアップ位置とは、テールゲートCが全閉位置よりもわずかに開き方向に配置され、図2に示すように、車両本体Bに設けたシール部材EがテールゲートCから離隔した状態となる位置である。なお、ポップアップ位置においては必ずしもテールゲートCからシール部材Eを離隔させる必要はない。
【0026】
ラッチユニット10のラッチ12が係合ロッド22に係合した状態で、取付ベース31に対してストライカ20がもっとも前方(以下、最前方位置という)に移動した場合には、車両本体Bに対してテールゲートCがオーバーストローク位置となるように、取付ベース31の取り付け位置及び取付ベース31に対するストライカ20の移動範囲が調整してある。オーバーストローク位置とは、テールゲートCが全閉位置よりもわずかに閉じ方向に配置され、図3に示すように、車両本体Bに設けたシール部材Eが全閉位置のときよりも大きく変形された状態となる位置である。
【0027】
ラッチユニット10のラッチ12が係合ロッド22に係合した状態で、取付ベース31に対してストライカ20が最後方位置と最前方位置との間(以下、中途位置という)に移動した場合には、図1に示すように、車両本体Bに対してテールゲートCが全閉位置に配置されることになる。
【0028】
カムプレート32は、取付ベース31に対して前後方向に沿った寸法がほぼ1/2で、左右方向に沿った寸法が1/2より小さい板状部材である。このカムプレート32は、プレートガイド孔31bを介して装着した取付ピン24により取付ベース31の裏面において前方側に位置する部分に配設してある。取付ピン24は、プレートガイド孔31bよりも小径の軸部24aと、大径の頭部24bとを有したものである。この取付ピン24により、カムプレート32は、取付ベース31に対して離隔する方向の移動が阻止された状態で、車両本体Bの左右方向に沿って移動することが可能である。このカムプレート32には、カム孔(カム機構)32a、2つのケーブルフック32b及び2つのスイッチ駆動部32cが設けてある。
【0029】
カム孔32aは、取付ベース31のカム貫通孔31aとほぼ同じ幅を有した溝状の切欠であり、取付ベース31に対してカムプレート32が左右に移動した場合にカム貫通孔31aに対する開口位置が変化するように傾斜して形成してある。より具体的に説明すると、カム孔32aは、取付ベース31に対してカムプレート32が左右方向の一方の移動端、例えば図11(a)に示すように、右側の移動端まで移動した場合にカム貫通孔31aの後端部に位置し、かつ左右方向の他方の移動端、例えば図11(c)に示すように、左側の移動端まで移動した場合にカム貫通孔31aの前端部に位置するように設けてある。図からも明らかなように、カム孔32aは、カムプレート32の左側に位置する傾斜部分(以下、区別する場合に開閉傾斜部分32a1という)と右側に位置する傾斜部分(以下、区別する場合に追加傾斜部分32a2という)とで互いに傾斜角度が異なるように構成したもので、追加傾斜部分32a2の傾斜角度が開閉傾斜部分32a1の傾斜角度よりも緩やかである。また、開閉傾斜部分32a1は、左右方向の長さが追加傾斜部分32a2よりも大きくなるように形成してある。本実施の形態では、ラッチユニット10のラッチ12が係合ロッド22に係合した状態で、図11(a)に示すように、カムプレート32が右側の移動端に位置し、後述のカムローラ(カム機構)25が開閉傾斜部分32a1の左側端部に配置された場合にテールゲートCがポップアップ位置に配置され、かつ図11(c)に示すように、カムプレート32が左側の移動端に位置し、カムローラ25が追加傾斜部分32a2の右側端部に配置された場合にテールゲートCがオーバーストローク位置に配置されるように、カム孔32aが形成してある。さらに、図11(b)に示すように、カムプレート32が中途位置に移動し、カムローラ25が追加傾斜部分32a2の左側端部に配置された場合には、テールゲートCが全閉位置に配置されるように、カム孔32aが形成してある。
【0030】
上述のカム孔32aには、カムローラ25が配設してある。カムローラ25は、カム孔32aに嵌合する外径を有した円筒状部材であり、カム孔32a及び取付ベース31のカム貫通孔31aを貫通した状態で、中心部を貫通するカムピン(カム機構)26を介してベースプレート21に取り付けてある。カムピン26は、円柱状を成す軸部26aの先端部にカムローラ25よりも太径円板状の頭部26bを有したもので、軸部26aの基端部をピン装着孔21bに装着することによってベースプレート21に取り付けてある。ベースプレート21に取り付けたカムピン26は、取付ベース31に対向する下面から下方に突出し、カム貫通孔31aに移動可能に配置されている。
【0031】
ケーブルフック32bは、カムプレート32の左右両端部に設けた鉤状部分である。これらのケーブルフック32bには、それぞれケーブル34A,34Bの一端部が係合してある。ケーブル34A,34Bは、筒状を成すアウタチューブ34aの内部に移動可能に配設したもので、他端部が共通のドライブプーリ35に係合してある。図には明示していないが、アウタチューブ34aは、一方の端部が取付ベース31の端部に固定してあり、他方の端部がドライブプーリ35の支持体36に固定してある。ドライブプーリ35は、中心部の両端面にボス部35aを有した円板状を成すもので、一方のケーブルフック32bに係合したケーブル34Aが一方のボス部35aに係合し、他方のケーブルフック32bに係合したケーブル34Bが他方のボス部35aに係合している。2つのケーブル34A,34Bは、一方をボス部35aから引き出した場合に他方がボス部35aの周囲に巻回され、かつ他方をボス部35aから引き出した場合に一方がボス部35aの周囲に巻回されるように、それぞれのボス部35aに係合してある。一方のケーブル34Aがボス部35aから引き出された際の他方のケーブル34Bの巻回長さは、取付ベース31に形成したプレートガイド孔31bの延在長さとほぼ等しくなるように設定してある。つまり、ドライブプーリ35が一方方向に回転すると、一方のケーブル34Aがボス部35aから引き出されるとともに他方のケーブル34Bがボス部35aに巻き取られることになり、巻き取られたケーブル34Bが係合するケーブルフック32bを介してカムプレート32が一方側へ移動する。同様に、ドライブプーリ35が他方方向に回転すると、他方のケーブル34Bがボス部35aから引き出されるとともに一方のケーブル34Aがボス部35aに巻き取られることになり、巻き取られたケーブル34Aが係合するケーブルフック32bを介してカムプレート32が他方側へ移動する。
【0032】
上述のドライブプーリ35は、スライドモータ37の駆動により軸心を中心として回転することが可能である。スライドモータ37は、リリースモータ16aと同様、正逆方向に回転が可能な電動モータである。つまり、スライドモータ37によって駆動されるドライブプーリ35は、軸心を中心として正逆方向に往復回転することが可能である。スライドモータ37の駆動軸とドライブプーリ35との間には、ウォーム38aとウォームホイール38bとによって構成したウォームギヤ38が設けてある。本実施の形態では、ドライブプーリ35の軸心とスライドモータ37の駆動軸とがねじれの位置となるようにそれぞれが配設してある。
【0033】
スイッチ駆動部32cは、カムプレート32の後方側に位置する縁部の両端部から後方に向けて突出した突出部分である。これらのスイッチ駆動部32cは、取付ベース31に対してカムプレート32が左右方向に移動した場合に、後述する3つの位置検出スイッチ33A,33B,33Cを選択的に駆動するものである。
【0034】
3つの位置検出スイッチ33A,33B,33Cは、それぞれスイッチ本体33aに対して接触子33bが傾動可能に設けられ、接触子33bの傾動方向に応じた検出信号を出力するものである。これらの位置検出スイッチ33A,33B,33Cは、接触子33bが取付ベース31においてカムプレート32の後方側に位置する縁部に対向する状態で、カムプレート32の移動方向に沿って互いに並設してある。3つの位置検出スイッチ33A,33B,33Cの取り付け位置は、以下のとおりである。
【0035】
すなわち、取付ベース31の右側に配設した位置検出スイッチ(以下、区別する場合にポップアップ位置スイッチ33Aという)は、カムプレート32が右側の移動端に位置した場合にのみ、カムプレート32の右側に設けたスイッチ駆動部32cにより動作されてOFF信号を出力するものである。取付ベース31の中央部に配設した位置検出スイッチ(以下、区別する場合にクローズ位置スイッチ33Bという)は、カムプレート32のカム孔32aにおいて追加傾斜部分32a2のいずれかがカム貫通孔31aに対向して配置されている場合にのみ、カムプレート32の右側に設けたスイッチ駆動部32cにより動作されてOFF信号を出力するものである。取付ベース31の左側に配設した位置検出スイッチ(以下、区別する場合にオーバーストローク位置スイッチ33Cという)は、カムプレート32が左側の移動端に位置した場合にのみ、カムプレート32の左側に設けたスイッチ駆動部32cにより動作されてON信号を出力するものである。
【0036】
図12は、車両用ラッチシステムの制御系を示すブロック図である。図12に示す制御部100は、オープンスイッチ101、カーテシスイッチ14、3つの位置検出スイッチ33A,33B,33C、車速センサ102、変速ポジションスイッチ103、サービスブレーキスイッチ104から出力信号が与えられた場合に予め設定したプログラムやメモリに格納したデータに基づいてリリースモータ16a及びスライドモータ37の駆動を制御するものである。この制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現しても良いし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現しても良いし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現しても良い。オープンスイッチ101は、車両本体Bの車内や運転者が所有する無線リモコンに設けられたものである。オープンスイッチ101を操作すれば、制御部100に対してテールゲートCを開くためのリクエスト信号が与えられることになる。車速センサ102は、車両の走行速度を検出し、検出結果を出力信号として制御部100に与えるものである。変速ポジションスイッチ103は、変速機が選択しているポジションを検出し、検出結果を出力信号として制御部100に与えるものである。サービスブレーキスイッチ104は、サービスブレーキ(フットブレーキ)の動作状態を検出し、検出結果を出力信号として制御部100に与えるものである。
【0037】
以下、図13に示すタイミングチャートを適宜参照しながら、制御部100の制御内容について説明する。なお、以下の説明では便宜上、取付ベース31に対してストライカ20が閉じ方向に向けて移動する動作をクローズ動作、開き方向に向けて移動する動作をポップアップ動作という。
【0038】
いま、図4に示すように、車両が停止している状態において、テールゲートCが全開位置に配置され、車両本体Bの背面開口Aが開放されているものとする。このとき、ラッチユニット10では、図8(c)に示すように、ラッチ12が開放位置に配置され、ストライカ駆動装置30においては、図11(a)に示すように、カムプレート32が右側の移動端に配置されており、カムローラ25がカム貫通孔31aの後端側に位置し、取付ベース31に対してストライカ20が最後方位置に配置されている。ストライカ20が最後方位置に配置されていることは、ポップアップ位置スイッチ33Aがカムプレート32の右側に設けたスイッチ駆動部32cにより動作されて制御部100にOFF信号を出力することによって検出されている(T1)。
【0039】
上述の状態から、車両本体Bの背面開口Aを閉じるようにテールゲートCを手動操作すると、やがてラッチユニット10のケース11に設けたストライカ進入溝11aにストライカ駆動装置30のストライカ20が進入し、ストライカ20がラッチ12を回転させることになる。この結果、ラッチ12は、図8(b)に示すハーフラッチ位置を経由して図8(a)に示すフルラッチ位置に至る。但し、ラッチ12がフルラッチ位置に配置された直後では、ストライカ駆動装置30のストライカ20が最後方位置に配置されているため、図2に示すように、車両本体Bに対してテールゲートCは全閉位置とはならず、わずかに開いたポップアップ位置に配置されることになる。
【0040】
ラッチ12がフルラッチ位置に移動すると、カーテシスイッチ14からOFF信号が出力され、制御部100によってこれが検出される。ラッチ12がフルラッチ位置に配置されたことを検出した制御部100は、スライドモータ37を正転方向に駆動し、取付ベース31に対してカムプレート32を左側に移動させる(T2)。これにより、カムプレート32のカム孔32a及び取付ベース31のカム貫通孔31aに配置されたカムローラ25がカム孔32aの傾斜作用によって前方側に移動することになり、これに伴ってストライカ20がクローズ動作し、中途位置に至る。この結果、ストライカ20に係合したラッチユニット10がストライカ20とともに移動することになり、図1に示すように、車両本体Bに対してテールゲートCが全閉位置に配置される。クローズ位置スイッチ33Bによってカムプレート32が中途位置に配置されていることが検出されると、制御部100によってスライドモータ37の駆動が停止される(T3)。テールゲートCが全閉位置に配置された状態では、上述したように、車両本体Bにおいて背面開口Aの周囲に設けたシール部材EがテールゲートCに圧接した状態となり、テールゲートCと車両本体Bとの間に所望の水密性が確保されることになる。
【0041】
ここで、テールゲートCが全閉位置に配置された状態においても、走行中の振動や衝撃等の外力が加えられると、シール部材Eが撓むことにより車両本体Bに対してテールゲートCが全閉位置よりも閉じ方向に移動する場合がある。シール部材Eが撓んでテールゲートCが閉じ方向に移動すると、ラッチユニット10においては、図8(a)に示す状態からラッチ12が図中において時計回りに回転するため、ラッチ12とラチェット13との接触状態が解除される。ラッチ12とラチェット13との接触状態が解除された後においては、リターンスプリング12cによって再びラッチ12とラチェット13とが接触状態に復帰し、その際に打撃音が発生するおそれがある。
【0042】
このため、上述の車両では、制御部100によって予め設定した走行条件が成立したと判断された場合、スライドモータ37を正転方向に駆動し、取付ベース31に対してカムプレート32をさらに左側に向けて移動させ、図3に示すように、テールゲートCをオーバーストローク位置に配置させる処理を行うようにしている(T4)。これにより、車両本体Bに設けたシール部材Eが全閉位置のときよりも大きく変形された状態となり、シール部材Eの反力が大きくなってラッチ12とラチェット13との接触圧力も全閉位置に配置されたときより高くなる。従って、車両の走行中に振動や衝撃が加えられた場合にも、ラッチ12とラチェット13とが離隔するおそれがなくなり、これらラッチ12及びラチェット13の再接触に伴って生じる打撃音等の騒音を抑えることが可能となる。なお、オーバーストローク位置スイッチ33Cによってカムプレート32が最前方位置に移動したことが検出されると、制御部100によってスライドモータ37の駆動が停止される(T5)。以降、走行条件が成立している間においては、継続してテールゲートCがオーバーストローク位置に配置された状態に維持され、ラッチ12及びラチェット13による打撃音の発生が防止される。
【0043】
上述した走行条件とは、車両が走行中であると判断できるための条件である。本実施の形態では、車速センサ102、変速ポジションスイッチ103、サービスブレーキスイッチ104から与えられた出力信号により、以下の条件がすべて成立した場合に車両が走行中であると判断している。
(1)車速が0km/hを超えている
(2)変速機の選択ポジションがパーキング以外である
(3)サービスブレーキが非制動状態である
【0044】
走行状態から車両が停止し、上述の走行条件が不成立になったと判断した場合、制御部100は、スライドモータ37を逆転方向に駆動し、ストライカ20を中途位置に移動させて、テールゲートCを全閉位置に戻す処理を行う(T6)。これにより、依然としてテールゲートCと車両本体Bとの間に水密性は確保されるものの、シール部材Eの変形量が減少することになり、大きく変形された状態が継続することはない(T7)。従って、シール部材Eに早期に劣化が生じるおそれがなくなり、長期間にわたって上述の水密性を確保することができるようになる。
【0045】
加えて、上述の車両においては、テールゲートCがオーバーストローク位置に配置された時点でラッチ12とラチェット13とが離隔しないように反力Gが設定されたシール部材Eを適用すれば良いため、図14中の実線で示すように、全閉位置においてラッチ12とラチェット13とが離隔しないように反力が設定された比較例となるシール部材(破線)に比べて反力の小さいシール部材Eを適用することが可能となる。従って、テールゲートCを全閉位置まで閉じる際の操作力が小さくなり、テールゲートCの開閉操作性を向上させることも可能となる。
【0046】
テールゲートCが全閉位置に配置された状態からオープンスイッチ101を操作すると、制御部100は、上述した走行条件が成立していないことを条件に、つまり、車両が停止していることを条件に、リリースモータ16aを正転方向に駆動し、リリースレバー15を介してラッチ12に対するラチェット13の係合状態を解除する。また制御部100は、スライドモータ37を逆転方向に駆動し、取付ベース31に対してカムプレート32を右側に移動させる処理を行う(T8)。
【0047】
これにより、ラッチ12がリターンスプリング12cによって開放位置に向けて回転し、車両本体BとテールゲートCとの間に介在するシール部材Eの反力によってテールゲートCが開く方向に押し出される。また、カムローラ25が後方側に移動し、これに伴ってストライカ20がポップアップ動作することになり、やがてストライカ20が最後方位置に至る(T9)。なお、ラッチ12に対するラチェット13の係合状態が解除された後、適宜のタイミングでリリースモータ16aが逆転方向に駆動され、ラチェット13がラッチ12に係合可能状態となる。また、スライドモータ37の駆動は、ポップアップ位置スイッチ33Aによってカムプレート32が最後方位置に移動したことを検出した時点で制御部100によって停止される。
【0048】
なお、上述した実施の形態では、車内空間に通じる車両本体Bの背面開口Aに設けられたテールゲートCを対象とした車両用ラッチシステムを例示しているが、本発明はこれに限定されず、例えば3ボックスタイプの車両においてトランクを開閉するトランクリッドを対象とすることも可能である。この場合、リッドは必ずしも水平方向に沿った軸心を中心として開閉するものに限らない。
【0049】
また、上述した実施の形態では、車両本体Bにストライカ駆動装置30を設け、リッドにラッチユニット10を設けるようにしているが、本発明はこれに限定されず、ラッチユニット10を車両本体Bに配設し、ストライカ駆動装置30をリッドに配設するようにしても構わない。
【0050】
さらに、上述した実施の形態では、可動部材としてプレート状を成すカムプレート32を適用し、さらには、ドライブプーリ35の軸心とスライドモータ37の駆動軸とがねじれの位置となるようにそれぞれが配設してあるため、ストライカ駆動装置30を薄型化することができ、設置スペースの点で有利となる。しかしながら、ストライカ駆動装置の構成は実施の形態のものに限定されない。
【0051】
またさらに、走行条件として、(1)車速が0km/hを超えている、(2)変速機の選択ポジションがパーキング以外である、(3)サービスブレーキが非制動状態である、の3つがすべて成立しているとしているが、本発明はこれに限定されず、その他車両が走行中であると判断することのできる条件を走行条件として適用しても良い。なお、(1)~(3)を適用する場合に上述した実施の形態では、少なくとも1つが成立している場合に走行条件が成立していると判断しても良いし、少なくとも2つが成立している場合に走行条件が成立していると判断しても良い。また、車速を走行条件とする場合、0km/hを閾値として設定しているが、例えば10km/hを超えた場合等、必ずしも閾値は0km/hである必要はない。
【0052】
さらに、上述した実施の形態では、ストライカ駆動装置30として、リッドであるテールゲートCがポップアップ位置から全閉位置を経てオーバーストローク位置までの間を移動できるものを例示しているが、本発明はこれに限定されず、全閉位置とオーバーストローク位置との間にのみリッドを移動させるものであれば十分である。
【符号の説明】
【0053】
12 ラッチ、20 ストライカ、25 カムローラ、26 カムピン、30 ストライカ駆動装置、31 取付ベース、31a カム貫通孔、32 カムプレート、32a カム孔、102 車速センサ、103 変速ポジションスイッチ、104 サービスブレーキスイッチ、B 車両本体、C テールゲート
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