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  • 特許-はんだ接合部を有する電気部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】はんだ接合部を有する電気部品
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20220712BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20220712BHJP
   B23K 1/14 20060101ALI20220712BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H05K1/18 H
B23K1/00 330D
B23K1/14 B
H01R4/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019565889
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018068999
(87)【国際公開番号】W WO2019016076
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】102017116381.6
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100154656
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 英彦
(72)【発明者】
【氏名】クロイバー, ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ストロールホーファー, ハインズ
【審査官】赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119277(JP,A)
【文献】特開2004-335793(JP,A)
【文献】特開2004-273494(JP,A)
【文献】登録実用新案第3074022(JP,U)
【文献】特表2016-525787(JP,A)
【文献】国際公開第2014/173595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/18
B23K 1/00
B23K 1/14
H01R 3/00 - 4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのはんだ接合部を有する電気装置(B)であって、
当該電気装置に、1つの端部がはんだ付けされた電線を備え、
前記電線が、当該電気装置における支承面(F)で支承し、
前記電線が、当該電気装置における、前記電線の前記支承面(F)の区域に少なくとも1つの湾曲部(K1)を有し、
前記電線が、前記支承面(F)の前記区域に平坦化部を有し、
前記湾曲部(K1)が、前記平坦化部の前記端部で前記電線に配置され、その部分の前記電線が、円形の断面形状の区域(R)にな
前記電線が、平坦化部(F)の前記区域に、接触面(E)に向けられた別の湾曲部(K2)を有し、
前記支承面(F)から見たときに、前記電線が、前記接触面(E)に対するギャップ(A)を伴って湾曲部(K2)の後に続いて延び、
前記はんだ接合部がはんだを備え、前記はんだの大部分が、前記電線が前記接触面(E)に対するギャップ(A)を伴って延びる前記区域に配置され、
円形の断面形状の前記区域(R)と、前記接触面(E)との間の前記ギャップ(A)は、前記はんだで充填されている、電気装置(B)。
【請求項2】
前記はんだ付けされた端部から見たときに、前記別の湾曲部(K2)が、前記少なくとも1つの湾曲部(K1)の後に配置される、請求項に記載の電気装置(B)。
【請求項3】
前記電線の前記支承面(F)が、平面図において丸められた端部(D)を有する、請求項1に記載の電気装置(B)。
【請求項4】
導電性金属で被覆された、前記はんだ接合部に対する少なくとも1つの接触面(E)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の電気装置(B)。
【請求項5】
前記電線の前記支承面(F)が、接触面(E)よりも短い、請求項に記載の電気装置(B)。
【請求項6】
円形の断面形状の前記区域(R)内でのみ始まる、合成高分子材料の電線絶縁体(J)を備える、請求項1に記載の電気装置(B)。
【請求項7】
NTCセラミックを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の電気装置(B)。
【請求項8】
当該電気装置、前記はんだ接合部、及び前記電線を最後の湾曲部の後ろまで覆うポリマーのカバーを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の電気装置(B)。
【請求項9】
前記電線と形状が同一の別の電線がはんだ付けされる別の接触面を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の電気装置(B)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ接合部、及びそこに固定された電線を含む電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気装置は特に、はんだ接合部によって電線が固定される少なくとも1つの接触面を有する。既知の装置において、この電線は、はんだ付けされる端部が平坦化されており、浸漬はんだ付け中の装置の保持が容易になる。しかしながら、この平坦化の結果、装置と電線との接触点に集まるはんだが少なくなる。これは、しばしばボイド又はキャビティの形成につながる。はんだの量が少ないことはボイドの形成と相まって、はんだ接合部の強度に悪影響を及ぼすおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、基本的な目的は、電気装置と電線との間のはんだ接合部の安定性を改善する方法を見つけることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の電気装置によって達成される。従属クレームは、好適な実施形態を示す。
【0005】
少なくとも1つの接触面と、そこに配置されたはんだ接合部とを備えるとともに、そこに電線が固定される電気装置を提案する。電線は端部に支承部を有し、支承部によって装置上で支承され、かつ支承部の端部に少なくとも1つの湾曲部を有する。
【0006】
この支承部は、電気装置の接触面よりも短くなるように選択される。湾曲部、したがって支承部の後には、電線が接触面に対して10°~90°の角度αを形成している部分が続く。45°~90°の角度範囲、又はより小さい60°~90°の角度範囲が選択されることが好ましい。支承部及び湾曲部をより短くすることを意図した結果として、電線のはんだ付け中に、接触面に対するギャップを有する電線部分において、電線のはんだの濡れの向上が達成される。これによってはんだの量が大幅に多くなり、したがってはんだ接合部の安定性を向上させることにもつながる。
【0007】
電線は、その固定される端部に平坦化部を有してもよく、その平坦化部は長方形であることによって、楕円形の電線断面と区別される。平坦化部は、電線が端部から離れて延びるにつれて、元の平坦化されていない断面になることによって区別される。このように電線を平坦化することによって、装置上で電線の支承面が大きくなり、円形の断面形状と比較して、はんだ付け工程中に装置の保持を向上させることが可能になる。しかしながら、このような平坦化の欠点は、はんだ付け中に、接触点と平坦化された電線との間で収集できるはんだの量が少なくなることである。このような区域では、はんだにキャビティ又はボイドの形成が見られる場合がたびたびある。接触点におけるはんだの量の少なさ、及びボイドの形成は、はんだ接合部の安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。これについても、支承面の後に続く湾曲部によって補償される。
【0008】
電線の平坦化された端部は、はんだが確実に均一に分布するように、水平断面図及び垂直断面図の両方において、そのすべての角部及び縁部が丸められるとよい。湾曲部、及び任意でさらに電線に沿って配置された第2の湾曲部、あるいはまったく別の湾曲部は、同様に丸められた形状を有し、かつ鋭く湾曲させなくてもよい。丸められた部分によって、電線の平坦化部が鋭い角部を有する場合よりも、はんだが接触点全体の周囲を良好に流れることが可能になる。
【0009】
接触を良くするために、はんだ接合部が生成される電気装置の接触面は、銀その他の導電性金属で被覆されるとよい。このような被覆は、スクリーン印刷法を使用する装置に適用され得る。接触面を導電性金属で被覆することにより、特に前述した電線などの、はんだ付けした部品との電気接続を良好にすることが可能になる。
【0010】
電線の平坦化部は、通常は任意の望ましい長さであり、電線の固定された端部から、又は支承面から、前述した湾曲部を越えて延びてもよい。湾曲部は、平坦化部の端部に配置されてもよい。
【0011】
はんだ付けされた端部から見たときに、電線は、第1の湾曲部の後に続く別の湾曲部を有してもよい。別の湾曲部がやはり平坦化部の区域にあるか、それともその境界にあるかどうかについては、検討の余地が残され得る。電線の別の湾曲部は、電線の形状の大部分が直線であると想定される場合は、電線が延びるにつれて接触面と電線との間の角度が変化する。新しい角度は、0°~80°の範囲になる。角度範囲は0°~45°まで延びてもよく、あるいは好ましい事例では0°~20°まで延びてもよい。電線の別の湾曲部は、結果として電気装置の接触面と、はんだ付けされた電線との間の区域になっていてもよく、ここに電線が、接触面の上方に可変のギャップを伴って配置される。
【0012】
はんだによる濡れが生じたとき、このようなギャップの存在が、はんだ接合部の安定性にとって好適なことがわかるであろう。接触面の上方で可変のギャップを伴って延びる電線の区域で、収集されるはんだの量が増加し得る。結果として増加したはんだの量は、はんだ接合部の安定性に良い影響を及ぼし得る。
【0013】
はんだ点から離れる方向に、別の湾曲部の後に続いて電線が延びている場合、その電線には絶縁が施されてもよい。電線は、別の湾曲部の後に続く可変のギャップから始まる、合成高分子材料からなる絶縁体を有してもよく、絶縁体は電線の残りの長さ全体にわたって延びてもよい。電線の絶縁体は、装置上の別の接触点との、又は他の導電性部品との望ましくない電気接触を防止し、これによって2本の電線の短絡をさらに防止する。このように、装置の機能性は妨害されない。
【0014】
1つの具体的な例において、装置はその本体としてNTCセラミックを含んでもよい。これは、スピネル又はペロブスカイトセラミックに基づいた、切片、又はプレスされた薄片の形態をとってもよい。電線は、この本体の接触面にはんだ付けされる。
【0015】
前述した電線に加えて、装置に別の電線がさらにはんだ付けされてもよい。この別の電線は、すでに説明した電線と同じ特徴を有してもよい。しかしながら、前述した電線又は接触点のすべての特徴又は特性を、前述の実施形態とは異なるものにすることも可能である。
【0016】
電線の既存のはんだ点及び部品をすべて備える装置は、エポキシドなどのポリマーのカバーを備えてもよい。カバーの形状は液滴に似ていてもよく、1本又は複数の電線を所与の長さまで囲む。このようなカバーは、装置及び1つ以上のはんだ点を機械的負荷から、及び/又は湿気などの周囲条件の影響から保護することを可能にする。
【0017】
本発明の好ましい例示的実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】互いに反対向きとなっている接触点に2本の電線を有するNTCセラミックの斜視図である。
図2】装置を電線とともに断面図及び平面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、電気装置Bの好ましい実施形態の斜視図である。NTCセラミックCの本体の、互いに反対向きとなっている2つの接触面Eは銀で被覆されている。平坦化部Fを有する、又は平坦化された支承面を有する電線は、これらの接触面Eのそれぞれに置かれる。電線には、第1の湾曲部K1が平坦化部Fの区域に存在する。支承面を構成し、接触面で支承している平坦化された電線部分の長さ、すなわち各電線端部Dの第1の湾曲部までの長さは、装置の接触面よりも小さくなるように選択されている。これに関して、電線端部Dは、接触面Eの1つの縁部に近接して位置し、その結果電線は、接触面Eの上方に延びる別の部分M~Oを有する。この第1の湾曲部K1の後に続く電線は、この部分ではまだ平坦化されており、セラミック本体Cから離れて約60°の角度で接触面Eに延びている。平坦化部Fの末端で、電線は円形の断面形状を有する区域Rになる。また、電線は、これらの平坦化部Fの端部に第2の湾曲部K2を有する。第2の湾曲部は、第1の湾曲部とは反対方向に角度付けされ、その結果、電線は、接触面に対して約10°のより小さく、かつより鋭い角度で延びる。この円形断面の区域Rと、接触面Eとの間のギャップAは、はんだ付け工程中にはんだで充填されてもよく、はんだ接合部の安定性を向上させることにつながる。電線が延びるのに伴い、ポリマー材料からなる絶縁体Jが設けられる。
【0020】
図2は、電線を有する電気装置Bの概略断面図、及び電線を上から見た平面図を示す。NTCセラミックの図示されている接触面Eは、銀で被覆されている。電線は、平坦化部Fで接触面Eに置かれる。平坦化された側に、電線は丸められた端部Eを有する。平坦化部の区域Fには、第1の湾曲部K1が電線に存在し、角度αを形成している。接触面で支承している平坦化された電線部分Lの長さ、すなわち電線の端部からその第1の湾曲部K1までの長さは、装置の接触面Eよりも小さくなるように選択される。この第1の湾曲部K1の後に続く平坦化された電線は、セラミック本体Cから離れて約60°の角度αで接触面Eに延びる。部分M全体にわたってセラミックから移動して離れた後に、電線は別の湾曲部K2を有する。後に続く部分N-Pでは、電線は角度βで接触面Eに延び、β<αである。部分Nの末端で、電線は円形の断面形状Rの区域Oになる。部分N及びOと、接触面Eとの間にあるギャップAの区域の体積は、はんだ付け工程中にはんだで充填されてもよく、はんだ接合部の安定性の向上につながる。部分P全体にわたって、電線は高分子絶縁体Jを備える。
【0021】
はんだ接合部を有する電気装置に関する本発明は、前述した、又は図面で示した例示的な実施形態に限定されない。例示的な実施形態との相違があってもよく、相違は請求項1の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
A はんだを収容するギャップ
B 装置
C NTCセラミック
D はんだ付けされた電線端部
E 装置の接触面
F 支承面
K1 第1の角度を有する第1の湾曲部
K2 第2の角度を有する第2の湾曲部
J 高分子絶縁体
R 円形断面の区域
L 支承区域の部分
M 第1の湾曲部の後に続く平坦化部
N 別の湾曲部の後に続く平坦化部
O 円形断面を有する部分
P 円形断面を有し、かつ絶縁体を有する部分
図1
図2