(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】下水汚泥と生ごみの混合メタン発酵方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20220712BHJP
C02F 11/10 20060101ALI20220712BHJP
C02F 11/08 20060101ALI20220712BHJP
B09B 3/65 20220101ALI20220712BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
C02F11/10 Z
C02F11/08
B09B3/65
(21)【出願番号】P 2018067494
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085109
【氏名又は名称】田中 政浩
(72)【発明者】
【氏名】冨田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】辻 猛志
(72)【発明者】
【氏名】李 玉友
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-015228(JP,A)
【文献】特開2005-238103(JP,A)
【文献】特開2012-192351(JP,A)
【文献】特開2004-000837(JP,A)
【文献】特開2008-290041(JP,A)
【文献】特開平11-221548(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102557373(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
B09B 3/00-3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初沈汚泥と余剰汚泥よりなる下水汚泥と生ごみを膜分離メタン発酵法でメタン発酵させる際に、下水汚泥の初沈汚泥は生ごみとともにメタン発酵槽に投入し、余剰汚泥は可溶化度を15~40%に予め可溶化してから
、固形物の重量比で生ゴミ1に対し可溶化した余剰汚泥0.25~1.0の混合比でメタン発酵槽に投入することを特徴とする、下水汚泥と生ごみの混合メタン発酵方法。
【請求項2】
可溶化を余剰汚泥の熱処理又は水熱処理で行なう請求項1記載の混合メタン発酵方法。
【請求項3】
可溶化を、余剰汚泥を60~90℃で0.5~2時間加熱処理することによって行う請求項1記載の混合メタン発酵方法。
【請求項4】
メタン発酵中に発生したバイオガスを用いて発電し、その廃熱を余剰汚泥の可溶化に用いる請求項1ないし3のいずれかに記載の混合
メタン発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥と生ごみを混合してメタン発酵槽内に供給し、槽内液を膜分離しながらメタン発酵を行うメタン発酵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では国土交通省所管の下水汚泥メタン発酵施設に環境省所管の一般ごみから生ごみを分別して、分別した生ごみを上記のメタン発酵施設に導入する検討がなされている。
【0003】
浄化槽の汚泥と生ごみを処理する技術としては、し尿と浄化槽汚泥を脱水して脱水汚泥と脱水分離液に分離し、脱水分離液を生物処理工程で生物処理し、生物処理工程で発生する余剰汚泥をオゾン反応槽で可溶化して易分解性有機物を生成し、このオゾン可容化汚泥を生物処理工程に返送して生物処理することで余剰汚泥を消滅させ、脱水汚泥と生ごみ等の有機性廃棄物とをメタン発酵工程でメタン発酵させ、メタン発酵工程で発生する発酵汚泥をコンポスト工程でコンポスト化する方法(特許文献1)が開発されている。この方法は、発酵汚泥の一部もしくは全量を生物処理工程に導くことでコンポストの生産量を減産調整し、余剰汚泥の一部もしくは全量をメタン発酵工程に導くことでコンポストの生産量を増産調整するものである。
【0004】
また、消化汚泥中において有機性物質のメタン発酵処理を行なうメタン発酵槽と、流動性を有し且つメタン発酵槽内の消化汚泥よりも高温である有機性物質をメタン発酵槽に供給する原料供給手段と、膜分離手段を有し、メタン発酵槽内の消化汚泥中の固形分を膜分離手段によって濃縮しながらメタン発酵処理を行なうメタン発酵処理装置であって、膜分離手段の分離膜を透過した膜透過液を外部へ取り出す膜透過液導出配管と、膜透過液導出配管内を流れる膜透過液と原料供給手段によってメタン発酵槽に供給される有機性物質との間で熱交換を行なって膜透過液を加温する熱交換手段が備えられていることを特徴とするメタン発酵処理装置(特許文献2)も開発されている。
【0005】
この技術は、蒸留酒やアルコール製造工程からの蒸留廃液、食品工場廃棄物等のリン、マグネシウム、窒素分を多く含んだ有機性物質をメタン発酵処理する際に配管等に析出するリン酸マグネシウムアンモニウムを低コストで抑制しうるようにしたものである。
【0006】
生ゴミを破砕機でペースト状に細分化し、ペースト状生ゴミを圧送ポンプにより配管を通して密閉状態で生ゴミ処理設備へ供給し、生ゴミ処理設備でメタン発酵によりペースト状生ゴミ中の有機物を分解してメタンガスと炭酸ガスにガス化することを特徴とする生ゴミ処理方法(特許文献3)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-273491号公報
【文献】特開2010-207700号公報
【文献】特開2002-119937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、生ごみを膜分離メタン発酵法でメタン発酵処理している施設で下水汚泥も処理することを考え、検討したところ、下水汚泥を混合すると膜分離装置に目詰まりを生じて、下水汚泥の混合が困難であることを見出した。
【0009】
この点に関し、特許文献1では、生物処理工程で発生する余剰汚泥は、基本的にオゾン反応槽で可溶化して生物処理工程に返送しており、メタン発酵工程で問題を生ずることは認識されていない。
【0010】
また、特許文献2では、有機性廃棄物を可溶化することが示されているが、この有機性廃棄物には下水汚泥は含まれていない。
【0011】
特許文献3でも、生ごみを可溶化しているが、やはり下水汚泥を可溶化することは示されていない。
【0012】
本発明の目的は、下水汚泥と生ごみの混合発酵を行う施設において、効率的なメタン発酵処理できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、このような課題を解決するべく鋭意検討を進め、生ごみの消化汚泥は生分解性が高く膜ろ過性が良好であるが、余剰汚泥は既に下水を分解して発生した汚泥のため生分解性が低く、また、汚泥濃度が例えば約4容積%と低いためハンドリング性は問題ないが膜ろ過性が低いことを見出した。そこで、本発明者は下水汚泥を予め可溶化してからメタン発酵槽に加える方法に着目するに到り、これによって膜の目詰まりの問題を解決できることを見出して本発明を完成することができた。
【0014】
すなわち、本発明は、下水汚泥と生ごみを膜分離メタン発酵法でメタン発酵させる際に、下水汚泥の余剰汚泥を予め可溶化してからメタン発酵槽に投入することを特徴とする、下水汚泥と生ごみの混合メタン発酵方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、生ごみを膜分離メタン発酵法で処理している既存の施設で下水汚泥も安価で効率よく処理することができ、メタン発酵で生じたバイオガスで発電できるなど、下水汚泥を有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施態様を示すフローシートである。
【
図2】この実施態様を実施する装置の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のメタン発酵が適用される生ごみは、特に限定されないが、家庭やスーパー、コンビニ、レストラン等から排出されるものの外、食品工場、魚加工場、畜産物加工場などから排出されるものなどである。それらは、必要により、破砕処理したり、生ごみ以外の廃棄物を分別する等の前処理をしてからメタン発酵される。この生ごみは一般的にハンドリング性(発酵槽へのポンプ投入等)のために水を加えて希釈してからメタン発酵槽に投入するのがよく、希釈度は全固形分濃度で7~10容積%程度とするのが適当である。
【0018】
下水汚泥は、下水処理場から排出される汚泥であり、初沈汚泥と余剰汚泥に分けられる。初沈汚泥は、受入れた下水をまず沈殿池で沈降させて分離される汚泥であり、余剰汚泥は曝気槽や無酸素槽等の生物処理槽で発生するものである。
【0019】
曝気槽等から排出された余剰汚泥は、機械濃縮等により約1容積%から4容積%に濃縮される。その後、可溶化槽に投入され、連続式に、または、回分式に可溶化処理され、メタン発酵槽に投入される。
【0020】
余剰汚泥の可溶化とは、熱エネルギーや物理エネルギー、化学処理により細胞膜を破壊し、細胞質を抽出したり、高分子有機物の結合を切断させ、低分子化を図るものである。
【0021】
この可溶化度を測定する方法としては、TS分解率(TS:Total Solid)や溶解性CODcr増加率(今後、溶解性CODcrをS-CODcrと表記する)がある。
TS分解率は、原汚泥のTSと処理後汚泥のTSを測定し、各々の分析値をTS1、TS2として、次の計算により求める。TSは全蒸発残留物のJISK0102に該当する。概要は、所定容量のサンプルを採取して、蒸発皿に投入する。105℃にて2時間加熱し、デシケーター中で放冷した後、乾燥物の重量を測定し、mg/Lにて換算する。
(TS1-TS2)/TS1×100
CODcr増加率は、原汚泥のCODcr、S-CODcr、処理後汚泥のS-CODcrを各々、CODcr1、S-CODcr1、S-CODcr2として以下の式で表される。
(S-CODcr2-S-CODcr1)/CODcr1×100
【0022】
本発明では、余剰汚泥を溶解性COD
cr
増加率で10~70%程度、好ましくは15~40%程度可溶化することが望ましい。
【0023】
可溶化する方法としては、熱処理、ビーズミル処理、水熱処理、超音波処理、アルカリ超音波処理、アルカリ処理などがある。
【0024】
熱処理は、余剰汚泥を熱処理槽に入れて、撹拌しながら60~90℃に加熱処理をする方法で、加熱時間は、通常60~90℃では0.5~2時間程度でよい。60℃未満は、可溶化度10に達せず、やはり100℃以上は、卵がゆで卵になるように、たんぱく質が固まりやすく可溶化率が低下する。加熱処理は通常の攪拌機の付いた槽でよい。
【0025】
ビーズミル処理は、粒径が0.2~1.0mm程度のアルミナやセラミック製のビーズを30~60%程度充填した反応槽に汚泥を投入し、常温程度で10分~1時間程度混合すればよい。余剰汚泥はそのままでよく、特に水を加える必要はない。
【0026】
水熱処理は、余剰汚泥に水蒸気を流入して、温度を160~180℃、圧力を0.6~0.8MPaとする高温高圧容器内で20分~30分程度処理すればよい。圧力が0.5MPa以下では可溶化率が低下する。一方1MPa以上でもかまわないが、容器コストがかさむなどの点で好ましくない。
【0027】
超音波処理は、余剰汚泥を超音波照射装置を有する水槽に投入して、0.01~0.5kwhで5~20kHz程度の波長の超音波を10~60分程度照射すればよい。
【0028】
アルカリ超音波処理は、余剰汚泥にアルカリ添加してpH10~12にし、これに超音波を照射する方法であり、予めアルカリ性にしておくことによって、可溶化度を高めあるいは超音波照射時間を短縮することができる。
【0029】
アルカリ処理は、余剰汚泥にアルカリを添加してpH10~12にし、これを30分~2時間程度撹拌する方法である。
【0030】
これらのなかで、熱処理、ビーズミル処理、水熱処理および超音波処理が比較的、ランニングコストが安価で可溶化効果が高いことから好ましく、熱処理と水熱処理がガスエンジンの廃熱の一部を適用できることから特に好ましい。
【0031】
本発明のメタン発酵方法は、生ごみにこの可溶化した余剰汚泥を混合して行われる。混合比は特に問わないが、通常は固形物の重量比で生ごみ1に対し可溶化した余剰汚泥0.25~1.0程度である。但し、生ごみや余剰汚泥の被処理量は、季節等により大きく変動し、生ごみ単独の場合や余剰汚泥単独の場合もある。また、生ごみと余剰汚泥に限らずその他の有機性廃棄物等も併せてメタン発酵処理することができる。その他の有機性廃棄物もメタン発酵できるものであり、例えば、下水汚泥の初沈汚泥、し尿汚泥や家畜糞尿等を一緒にメタン発酵させることができる。
【0032】
メタン発酵は公知の方法に従って行えばよい。メタン発酵槽は、メタン発酵が嫌気発酵であり、また、発酵で生成したメタンを有効利用するために密閉構造とする。形状は箱形や円筒形などでよい。内部には攪拌機は設けなくてもよいが、ドラフトチューブなどを設けてもよい。
【0033】
メタン発酵槽でメタン発酵が行われて流出する発酵液には、メタン菌が大量に含まれているので、メタン菌を高濃度に維持して発酵を効率よく行わせるために、膜分離槽で処理水を分離して残った発酵汚泥を回収してメタン発酵槽に返送する。このメタン発酵槽に付設する膜分離槽は特開2001-170631号公報に開示されているものなどを利用でき、メタン発酵槽内外のいずれに設けてもよい。用いる膜は、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)等を用いることができ、膜の形状は、平膜、中空糸膜等がある。膜の下には散気装置を設けて膜面の流速を高めるとともに発酵汚泥等の膜面への付着を防止する。散気装置に使用するガスは、窒素ガスや炭酸ガスなどを用いてもよいが、メタン発酵で発生するメタンを主成分とするバイオガスを利用するのがよい。
【0034】
本発明の一実施態様を
図1および
図2に示す。この装置は、余剰汚泥の可溶化槽(熱処理槽)、メタン発酵槽、膜分離装置、バイオガスの脱硫塔、ガスエンジンおよび熱交換器からなる。この装置では、機械濃縮などによりTS4容積%程度に濃度調整された余剰汚泥を可溶化槽に投入し、70℃で1時間程度加熱して、例えば、HRT1時間で連続処理して可溶化し、メタン発酵槽に投入される。重力沈降によりTS4容積%に濃縮された初沈汚泥はそのままメタン発酵槽に投入され、生ごみは必要により破砕処理され、TS7~10容積%程度に水を用いて希釈してからメタン発酵槽に投入されて、メタン発酵が行われる。余剰汚泥、初沈汚泥、生ごみの投入量は、それぞれ搬入され、発生する量に応じており、投入量比は変動する。メタン発酵中は、メタン発酵液は膜分離装置でろ過して膜ろ過水を取出し、メタン菌を含む発酵汚泥はメタン発酵槽に返送される。膜ろ過水はアンモニア性窒素や有機物が含まれており、これらは別途生物処理等される。メタン発酵中にはメタンを主成分とするバイオガスが発生し、これを脱硫塔で脱硫してからガスエンジンに送って発電させる。ガスエンジンから排出される水蒸気は高温であるのでこれを熱交換器に送って水蒸気に含まれている廃熱を回収し、残余の熱は可溶化槽に送ってさらに有効利用する。一方、可溶化槽で加熱源として使用されて排出する温水は、上記の熱交換器で水蒸気の熱を回収して有効利用できる。
【0035】
仮に熱処理の場合における熱収支イメージ
40万人都市、下水発生量は200L/人/日、生ごみ発生量200g/日※とする。
※生ごみについて、家庭系生ごみは、1050万t/年(平成22年度、消費者庁推計)
人口1.2億人、365日換算で240g/人/日より、約200g/人/日
【0036】
[下水処理における汚泥発生量]
都市の合計処理量8万m3/日、初沈越流水SS200mg/L、処理水SS約0mg/L、初沈からのSS発生率0.9、余剰汚泥(濃縮)4.0%とすると、余剰汚泥量180m3/日
初沈でのSS除去率50%とすると、初沈汚泥量は余剰汚泥量と同等と試算される。(4.0%、180m3/日)
【0037】
[生ごみ発生量]
200g/人/日、40万人の場合には、生ごみ量8t/日
水分率10%とすると、乾燥重量7.2t
【0038】
[バイオガス量の試算]
【0039】
【0040】
SS(懸濁固形分):100℃で水を蒸発させた残渣の重量%
VTS:SSを600℃でそこに含まれている有機物を燃やして残った灰分の重量を求め、
【0041】
【0042】
[発電廃熱の試算]
バイオガス熱量22MJ/Nm3、発電機の廃熱回収率40%とすると、バイオガスからの回収可能熱量82GJ/日
【0043】
[必要熱量の試算]
15℃の余剰汚泥を90℃に加温、4.18kJ/kcalとすると、
56GJ/日
発電廃熱>必要熱量より発電廃熱にて必要熱量を賄うことが可能となりうる。
【実施例】
【0044】
生ごみ、初沈汚泥および余剰汚泥について、メタン発酵後の膜ろ過性について検討した。
【0045】
生ごみはTS7~10容積%に希釈したスラリーを用いた。初沈汚泥は下水処理場の重力濃縮されたTS2~4容積%の汚泥を用いた。余剰汚泥は機械濃縮された下水処理場のTS3~5容積%の汚泥を用いた。余剰汚泥に関しては、無処理のものと熱処理のもので比較した。熱処理条件は70℃でHRT1時間の連続処理とした。これらの各々を膜分離メタン発酵処理を行った。メタン発酵は中温発酵(38℃)、HRT15日とした。膜ろ過は住友電工製の中空糸膜(有効面積0.1m2、孔径0.2μm、PTFE製)を用いて膜透過速度0.1m3/m2/日にてろ過した。実験期間は3週間である。
【0046】
結果を表2に示す。
【0047】
【0048】
表中の○は、3週間、0.1m/日のフラックス(膜1m2当たりの1日の透過水量m3)で9分吸引-1分停止の間欠吸引を行った際の膜間差圧の上昇度合いが10kPa未満であったことをあらわしている。
【0049】
膜分離メタン発酵においては、メタン発酵により生じる汚泥を膜ろ過して、ろ過水と汚泥に分離することが必須であるため、メタン発酵汚泥の膜ろ過性を評価した。実験期間を通じて生ごみのメタン発酵から発生するメタン発酵汚泥濃度はTS1.5~2容積%、初沈汚泥のメタン発酵汚泥濃度はTS1~2容積%であり、3週間の膜ろ過において膜間差圧の上昇傾向は見られず、膜に汚泥が付着して膜が閉塞する傾向は見られなかった。しかし、余剰汚泥のメタン発酵汚泥はTS2~4容積%であり、膜間差圧は10KPa以上上昇し、膜面が汚泥により閉塞する傾向が見られ、長期間の安定運転は困難であると考えられた。しかし、余剰汚泥を熱処理することで、可溶化度は25~40%が得られた。この熱処理した余剰汚泥のメタン発酵汚泥はTS濃度が1.5~2容積%まで低下し、安定した膜ろ過が可能となった。よって、熱処理により膜分離メタン発酵が適用可能な汚泥性状にできると考えられる。
【0050】
生ごみと下水汚泥(初沈汚泥、余剰汚泥)について膜ろ過性を検討した結果、余剰汚泥が膜ろ過性が低いこと、および、余剰汚泥を熱処理で可溶化することで、膜ろ過性が改善されることがわかった。
【0051】
なお、本検討では、生ごみの収集量は毎週月、金曜に収集する等の収集日の影響を受けるため、各種ごみが混合することの影響を考慮せず、各汚泥による膜ろ過性が良好である必要があると考えた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、下水汚泥も既存の生ごみをメタン発酵処理施設で安価で効率よく処理できるので、本発明は幅広く利用することができる。