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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】車両用アームレスト装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20220712BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018085345
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019189092
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-030300(JP,A)
【文献】実開平02-088562(JP,U)
【文献】米国特許第05636899(US,A)
【文献】特開昭58-224818(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005006977(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
A47C 7/00 - 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートにおいて着座者の側方側となる位置においてシート前後方向を長手方向として配置され、上方に向けて開口する上側開放部を有するケース状のアームレスト本体部と、
前記アームレスト本体部の上部に設けられ、前記アームレスト本体部の前記上側開放部を塞ぐ位置に配置可能とされ、着座者の腕部を支持する腕支持部と、
前記アームレスト本体部の内部に設けられ、ガスが封入されたシリンダと、前記シリンダから突出するロッドと、を有し、長手方向一端部側が前記アームレスト本体部に連結されると共に長手方向他端部側が前記腕支持部に連結され、前記ロッドの突出量に応じて前記腕支持部を前記アームレスト本体部に対してシート上下方向に変位させるガススプリングと、
前記ロッドの移動を直接又は部材を介してロックすると共に当該ロックを解除可能とされたロック機構と、
を備えた車両用アームレスト装置。
【請求項2】
前記ガススプリングは、前記ロック機構を有するロック付ガススプリングとされて前記ロッドの先端部にロック解除部材を有し、前記ロック解除部材が作動位置まで押されていない状態では前記ロッドの移動がロックされ、前記ロック解除部材が前記作動位置まで押された状態では前記ロッドのロック状態が解除されるように構成され、
前記アームレスト本体部には、着座者が操作可能な操作部を有すると共に前記操作部の操作に応じて前記ロック解除部材を押す操作機構が設けられている、請求項1に記載の車両用アームレスト装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記腕支持部のシート前後方向の端部側の部位と装置平面視で重なる位置に配置されている、請求項2に記載の車両用アームレスト装置。
【請求項4】
シート幅方向に見て互いに平行とされた前リンクと後リンクとを有して前記腕支持部を前記アームレスト本体部に対して昇降可能に連結した平行リンク機構が設けられ、
前記ガススプリングは、シート幅方向に見て前記前リンク及び前記後リンクの一方又は両方と交差するように配置されて長手方向一端部側が前記アームレスト本体部の下部に対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されると共に長手方向他端部側が前記腕支持部に対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用アームレスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アームレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートにおいて使用状態にあるアームレストを上下に移動させるアームレスト支持構造が開示されている。このアームレスト支持構造では、ラチェットリンクを備えたリンク機構と、ラチェットリンクのラチェット歯が係合するポールと、を備えており、アームレストを上下に段階的に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-274646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造ではアームレストの腕支持部の高さ位置が段階的に調整されることになるので、調整位置が制限される。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、腕支持部の高さ位置を無段階に調整することができる車両用アームレスト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用アームレスト装置は、車両用シートにおいて着座者の側方側となる位置においてシート前後方向を長手方向として配置され、上方に向けて開口する上側開放部を有するケース状のアームレスト本体部と、前記アームレスト本体部の上部に設けられ、前記アームレスト本体部の前記上側開放部を塞ぐ位置に配置可能とされ、着座者の腕部を支持する腕支持部と、前記アームレスト本体部の内部に設けられ、ガスが封入されたシリンダと、前記シリンダから突出するロッドと、を有し、長手方向一端部側が前記アームレスト本体部に連結されると共に長手方向他端部側が前記腕支持部に連結され、前記ロッドの突出量に応じて前記腕支持部を前記アームレスト本体部に対してシート上下方向に変位させるガススプリングと、前記ロッドの移動を直接又は部材を介してロックすると共に当該ロックを解除可能とされたロック機構と、を備えている。なお、「シート上下方向に変位させる」とは、シート上下方向の位置を変化させることを意味する。
【0007】
請求項1に記載の車両用アームレスト装置では、アームレスト本体部が車両用シートにおいて着座者の側方側となる位置においてシート前後方向を長手方向として配置される。アームレスト本体部は、上方に向けて開口する上側開放部を有するケース状に形成されている。アームレスト本体部の上部には、着座者の腕部を支持する腕支持部が設けられ、この腕支持部は、アームレスト本体部の上側開放部を塞ぐ位置に配置可能となっている。また、アームレスト本体部の内部にはガススプリングが設けられている。ガススプリングは、ガスが封入されたシリンダからロッドが突出しており、長手方向一端部側がアームレスト本体部に連結されると共に長手方向他端部側が腕支持部に連結され、ロッドの突出量に応じて腕支持部をアームレスト本体部に対してシート上下方向に変位させる。また、ロック機構は、ガススプリングのロッドの移動を直接又は部材を介してロックすると共に当該ロックを解除可能となっている。このため、腕支持部の高さ位置が無段階に調整される。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る車両用アームレスト装置は、請求項1に記載の構成において、前記ガススプリングは、前記ロック機構を有するロック付ガススプリングとされて前記ロッドの先端部にロック解除部材を有し、前記ロック解除部材が作動位置まで押されていない状態では前記ロッドの移動がロックされ、前記ロック解除部材が前記作動位置まで押された状態では前記ロッドのロック状態が解除されるように構成され、前記アームレスト本体部には、着座者が操作可能な操作部を有すると共に前記操作部の操作に応じて前記ロック解除部材を押す操作機構が設けられている。
【0009】
請求項2に記載の車両用アームレスト装置では、ガススプリングは、ロック機構を有するロック付ガススプリングとなっており、ロッドの先端部にロック解除部材を有している。このロック付ガススプリングは、ロック解除部材が作動位置まで押されていない状態ではロッドの移動がロックされ、ロック解除部材が作動位置まで押された状態ではロッドのロック状態が解除される。また、アームレスト本体部には、着座者による操作部の操作に応じてロック解除部材を押す操作機構が設けられている。したがって、簡易な構成でありながら、着座者による操作部の操作によって、腕支持部の高さ位置を無段階に調整することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る車両用アームレスト装置は、請求項2に記載の構成において、前記操作部は、前記腕支持部のシート前後方向の端部側の部位と装置平面視で重なる位置に配置されている。
【0011】
請求項3に記載の車両用アームレスト装置では、操作部が、腕支持部のシート前後方向の端部側の部位と装置平面視で重なる位置に配置されているので、操作性が確保されつつ誤操作が防止又は効果的に抑制される。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る車両用アームレスト装置は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の構成において、シート幅方向に見て互いに平行とされた前リンクと後リンクとを有して前記腕支持部を前記アームレスト本体部に対して昇降可能に連結した平行リンク機構が設けられ、前記ガススプリングは、シート幅方向に見て前記前リンク及び前記後リンクの一方又は両方と交差するように配置されて長手方向一端部側が前記アームレスト本体部の下部に対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されると共に長手方向他端部側が前記腕支持部に対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されている。
【0013】
請求項4に記載の車両用アームレスト装置では、シート幅方向に見て互いに平行とされた前リンクと後リンクとを有する平行リンク機構が腕支持部をアームレスト本体部に対して昇降可能に連結している。また、ガススプリングは、シート幅方向に見て前リンク及び後リンクの一方又は両方と交差するように配置され、長手方向一端部側がアームレスト本体部の下部に対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されており、長手方向他端部側が腕支持部に対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されている。このため、省スペースで構造を複雑化しなくても、ガススプリングを用いて腕支持部を安定的に昇降させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る車両用アームレスト装置によれば、腕支持部の高さ位置を無段階に調整することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用アームレスト装置を備えた車両用シートの側面図である。
図2図1の車両用アームレスト装置を斜め側方側から見て一部破断した状態で示す斜視図である。
図3図1の車両用アームレスト装置を、可動体を外して斜め上方側から見た状態で示す斜視図である。
図4図3のF4-F4線に沿った切断面に対応した断面図である。
図5図5(A)は、可動体がロアモスト位置に位置する状態の車両用アームレスト装置を示す正面図である。図5(B)は、図5(A)の5B-5B線に沿った切断面に対応した断面図である。
図6図6(A)は、ロック付ガススプリングのロックが解除された状態の車両用アームレスト装置を示す正面図である。図6(B)は、図6(A)の6B-6B線に沿った切断面に対応した断面図である。
図7図7(A)は、可動体がアッパモスト位置に位置する状態の車両用アームレスト装置を示す正面図である。図7(B)は、図7(A)の7B-7B線に沿った切断面に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図7を用いて本発明の一実施形態に係る車両用アームレスト装置20について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、UP、Wは、車両用シート10の前方、上方、幅方向をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0017】
(車両用シート10の構成)
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、着座者Pの臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座者Pの背部を支持するシートバック14と、着座者Pの頭部を支持するヘッドレスト16と、着座者Pの腕部PWを支持する車両用アームレスト装置20と、を備えている。
【0018】
車両用アームレスト装置20は、シートバック14の側部に取り付けられてアームレスト本体部22と、アームレスト本体部22に取り付けられた可動部30と、を備えている。
【0019】
(アームレスト本体部22について)
アームレスト本体部22は、車両用シート10において着座者Pの側方側となる位置に配置される。図2及び図3に示されるように、アームレスト本体部22は、長尺状に形成された本体フレーム24と、上方側が開放されて内部に本体フレーム24を収容した本体カバー26とによって構成されている。
【0020】
本体フレーム24は、例えば板金がプレス成形されて形成されたものである。この本体フレーム24は、正面視で略U字状に形成されており、下壁を構成するアンダフレーム部24Aと、側壁を構成するサイドフレーム部24Bと、を備えている。左右一対のサイドフレーム部24Bの下端部側における後部同士は、図2に示される下側軸部材28によってシート幅方向に架け渡されている。また、左右一対のサイドフレーム部24Bの上下方向中間部で後端側(下側軸部材28よりも後方側)の部位同士は、パイプ部材25によってシート幅方向に架け渡されている。図3に示されるように、アームレスト本体部22においてパイプ部材25はシートバック14(図1参照)の側面側に突出している。そして、アームレスト本体部22は、図2に示されるパイプ部材25内に挿通された軸部材100の軸線周りに回動可能とされるように、シートバック14(図1参照)の側面側に取り付けられている。
【0021】
アームレスト本体部22が使用位置に位置する状態では、車両用アームレスト装置20の前後左右上下の方向と、車両用シート10(図1参照)の前後左右上下の方向とが一致又は略一致する構成になっている。本実施形態の説明において、車両用アームレスト装置20に関して記載する前後左右上下の方向は、アームレスト本体部22が使用位置に位置する状態での車両用シート10(図1参照)に対する方向を示すものとする。
【0022】
図2及び図3に示される本体カバー26は、一例として樹脂製とされている。なお、図2では、本体カバー26の各壁部を中実に示しているが、本体カバー26の各壁部は中空状に形成されてもよい。図2及び図3に示される本体カバー26は、上部における前端から長手方向中間部にかけての部位が開放されている。本体カバー26は、アンダフレーム部24Aの下面に固定された下壁部26A(図2参照)と、左右一対のサイドフレーム部24Bの各シート幅方向外側の面に固定された左右一対の側壁部26B(図3参照)と、を備えている。また、本体カバー26は、側壁部26Bの後端部同士を繋ぐ後壁部26Cと、左右一対の側壁部26Bの各後部上端部と後壁部26Cの上端部とを繋ぐ後側上壁部26Dと、を備えている。図3に示されるように、左右一対の側壁部26Bは、後側上壁部26Dよりも前側に設定された第一部位26B1におけるシート幅方向外側の面が、第一部位26B1よりも後側に設定された第二部位26B2におけるシート幅方向外側の面よりも、シート幅方向内側に一段凹んで設定されている。
【0023】
また、本体カバー26のシート前方側の端部寄りにおいて左右一対の側壁部26Bの間に配置される前壁部26Eは、後壁部26Cと対向配置されてシート前後方向及び上下方向にスライド変位可能とされている。図2に示されるように、前壁部26Eの上部には、シート前方側の面が凹状とされたスイッチ配置用の凹部26E1が形成されている。また、前壁部26Eの上端部からはシート前方側に延出された前側上壁部26Fが形成されている。さらに、前側上壁部26Fの前端部からはシート下方側に突出して突出先端側がシート側面視で凸湾曲状とされた凸部26Gが形成されている。
【0024】
(可動部30について)
アームレスト本体部22に取り付けられた可動部30は、可動体32と、上下調整機構40とによって構成されている。可動体32は、アームレスト本体部22の後側上壁部26Dよりも前側に配置されている。また、上下調整機構40は、可動体32をアームレスト本体部22に対してシート上下方向に安定的に変位させるための機構とされている。以下、各々の構成について説明する。
【0025】
(可動体32について)
可動体32は、板金製の可動フレーム34と、樹脂製の可動カバー36と、を備えている。なお、図中では、可動カバー36の各壁部を中実に示しているが、可動カバー36の各壁部は中空状に形成されてもよい。
【0026】
図5(A)に示されるように、可動フレーム34は、正面視で略逆U字状に形成されており、上壁を構成するアッパフレーム部34Aと、側壁を構成するサイドフレーム部34Bと、を備えている。アッパフレーム部34Aは、アームレスト本体部22の上側開放部22U(図3参照)を塞ぐ位置に配置可能とされている。図5(B)に示されるように、アッパフレーム部34Aの前端部側の部位は、前側上壁部26Fの上面側に接している。図5(A)に示されるように、サイドフレーム部34Bは、アームレスト本体部22の側壁部26Bの第一部位26B1におけるシート幅方向外側の面に隣接して配置される。
【0027】
可動カバー36は、正面視で略逆U字状に形成されており、アッパフレーム部34Aの上面に固定された上壁部36Aと、左右一対のサイドフレーム部34Bの各シート幅方向外側の面に固定された左右一対の側壁部36Bと、を備えている。ここで、可動体32においては、可動カバー36の上壁部36Aと可動フレーム34のアッパフレーム部34Aとで、着座者Pの腕部PW(いずれも図1参照)を支持する腕支持部32Aが構成されている。すなわち、腕支持部32Aは、アームレスト本体部22の上部に設けられている。そして、図2に示される腕支持部32Aの上面(可動カバー36の上面)は、着座者Pの腕部PW(いずれも図1参照)を支持する腕支持面とされている。なお、本実施形態では、腕支持部32Aの前端部は、前側上壁部26Fの前端部に揃えられた位置に配置されている。
【0028】
(上下調整機構40について)
上下調整機構40は、可動体32の腕支持部32Aをアームレスト本体部22に対して昇降可能に連結した平行リンク機構42と、可動体32をシート前方斜め上方側へ付勢するロック付ガススプリング70と、ロック付ガススプリング70を操作するための操作機構80と、を有している。なお、以下の説明に記載する「回動」は、何れもシート幅方向に沿った軸線周りの回動である。
【0029】
平行リンク機構42は、腕支持部32Aのシート下方側においてアームレスト本体部22の本体カバー26内に収容されている。この平行リンク機構42は、アンダフレーム部24Aに固定された板金製のロアブラケット44、46と、アッパフレーム部34Aに固定された板金製のアッパブラケット48、50とが平行リンク60によって連結された構成になっている。
【0030】
第一のロアブラケット44は、アンダフレーム部24Aの前端部側の部位におけるシート幅方向両側に左右一対で配置されている。第二のロアブラケット46は、アンダフレーム部24Aの長手方向中間部におけるシート幅方向両側に左右一対で配置されている。ロアブラケット44、46における各対の間には、シート幅方向に沿って配置されるシャフト52、54が架け渡されている。また、第一のアッパブラケット48は、アッパフレーム部34Aの長手方向中間部におけるシート幅方向両側に左右一対で配置されている(図2では左側の第一のアッパブラケット48のみ図示)。第二のアッパブラケット50は、アッパフレーム部34Aの後端部側の部位におけるシート幅方向両側に左右一対で配置されている(図2では左側の第二のアッパブラケット50のみ図示)。アッパブラケット48、50における各対の間には、シート幅方向に沿って配置されるシャフト56、58(図3参照)が架け渡されている。
【0031】
平行リンク60は、前側に配置される左右一対の前リンク62と、後側に配置される左右一対の後リンク64と、を有している。前リンク62と後リンク64とは、シート幅方向に見て互いに平行とされている。左右一対の前リンク62の長手方向一端部(下端部)は、それぞれシャフト52を介して第一のロアブラケット44に回動可能に連結されている。左右一対の前リンク62の長手方向他端部(上端部)は、それぞれシャフト56を介して第一のアッパブラケット48に回動可能に連結されている。また、左右一対の後リンク64の長手方向一端部(下端部)は、それぞれシャフト54を介して第二のロアブラケット46に回動可能に連結されている。左右一対の後リンク64の長手方向他端部(上端部)は、それぞれシャフト58を介して第二のアッパブラケット50に回動可能に連結されている。
【0032】
上記構成の平行リンク機構42では、前リンク62及び後リンク64が同じ方向に回動することにより、アッパブラケット48、50が固定された腕支持部32Aがロアブラケット44、46に対して図5及び図6に示されるロアモスト位置と図7に示されるアッパモスト位置との間で昇降する構成になっている。
【0033】
一方、図2に示されるように、アームレスト本体部22の本体カバー26内には、その長手方向中間部にロック付ガススプリング70が収容されている。なお、図2の右下の楕円内には、ロック付ガススプリング70及びその周辺部の一部を、車両用アームレスト装置20から抜き出して図示している。
【0034】
ロック付ガススプリング70は、シート幅方向に見て後リンク64と交差するように配置されている。ロック付ガススプリング70は、高圧のガス(例えば窒素ガス)が封入されたシリンダ74を備えると共に、シリンダ74の軸線方向の一端側から突出して伸縮可能とされたロッド76を備えている。また、シリンダ74においてロッド76が突出する側とは反対側の端部からは取付部72が延出されている。この取付部72を下側軸部材28が貫通することで、ロック付ガススプリング70は、下側軸部材28に回動可能に連結されている。言い換えれば、ロック付ガススプリング70の下端部(長手方向一端部)側は、アームレスト本体部22の下部に対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されている。
【0035】
ロック付ガススプリング70は、ロック機構78を有しており、このロック機構78は、ロッド76の移動を直接的にロックすると共に当該ロックを解除可能とされている。ロック付ガススプリング70は、ロッド76の先端部にロック機構78の一部を構成するロック解除部材としてのロック解除ピン78Pを有する。そして、ロック付ガススプリング70は、ロック解除ピン78Pが作動位置まで押されていない状態ではロッド76の移動がロックされ、ロック解除ピン78Pが作動位置まで押された状態ではロッド76のロック状態が解除されるように構成されている。また、ロック付ガススプリング70は、ロッド76のロック状態が解除された状態ではガス反力の作用でシリンダ74からのロッド76の突出量が大きくなるようになっている。なお、ロック付ガススプリング70の基本構成については、例えば特開平05-106674号公報等に開示された公知のロック付ガススプリングの基本構成を適用することができるので、詳細説明を省略する。
【0036】
ロック付ガススプリング70のロッド76は、略U字状(コ字状)の取付ブラケット66を介してシャフト56に回動可能に連結されている。取付ブラケット66は、シャフト56が貫通する左右一対の側壁部66Aと、左右一対の側壁部66Aの端部同士を繋いでロック付ガススプリング70のロッド76が貫通する繋壁部66Bと、を備えている。左右一対の側壁部66Aは、シャフト56に回動可能に連結され、繋壁部66Bは、締結具68によってロッド76に固定されている。これらにより、ロック付ガススプリング70の上端部(長手方向他端部)側は、腕支持部32Aに対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されている。
【0037】
以上により、アームレスト本体部22の内部に設けられたロック付ガススプリング70は、ロッド76の突出量に応じて腕支持部32Aをアームレスト本体部22に対してシート上下方向に変位させるようになっている。
【0038】
(操作機構80について)
このロック付ガススプリング70を操作するための操作機構80は、腕支持部32Aの前部のシート下方側に設けられている。操作機構80は、着座者P(図1参照)が操作可能な操作部としての操作スイッチ82を有すると共に、操作スイッチ82の操作に応じてロック解除ピン78Pを押すように構成されている。操作スイッチ82は、腕支持部32Aのシート前後方向の前端部側の部位と装置平面視で重なる位置に配置されている。この操作スイッチ82は、シート前後方向に変位可能とされ、少ない指の力で押すことができるように人間工学的に押しやすい形状に形成されている。操作スイッチ82の後部側は、前壁部26Eの上部における凹部26E1に配置されている。なお、凹部26E1の正面側には、操作スイッチ82の外周側に位置するスイッチ用開口部が形成されているが、図2では操作スイッチ82を見易く示すために、前記スイッチ用開口部の一部を切除した状態で示している。図4に示されるように、操作スイッチ82には、前壁部26Eを貫通してシート後方側に延びる連結軸部材84を介して、ロック解除片86に接続されている。
【0039】
連結軸部材84の軸方向一端部(前端部)は、操作スイッチ82の後部にシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されている。連結軸部材84の軸方向他端部(後端部)には、ロック解除片86の外周側の部位がピン88を介してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されている。ロック解除片86は、平板状とされてシート幅方向を板厚方向とするように配置されている。ロック解除片86の中央部寄りの部位は、シャフト56に回動可能に連結されている。そして、図5(B)に示される状態で操作スイッチ82が押圧されることで、連結軸部材84が変位すると、ロック解除片86は、シャフト56の周りを回転して図6(B)に示される位置に達してロック解除ピン78P(図5(B)参照)を押圧する(言い換えればロック状態を解除する)ように構成されている。
【0040】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
図1に示される車両用アームレスト装置20では、アームレスト本体部22が車両用シート10において着座者Pの側方側となる位置に配置される。図2に示されるように、アームレスト本体部22の上部には腕支持部32Aが設けられ、アームレスト本体部22の内部にはロック付ガススプリング70が設けられている。ロック付ガススプリング70は、ガスが封入されたシリンダ74からロッド76が突出しており、長手方向一端部側がアームレスト本体部22に連結されると共に長手方向他端部側が腕支持部32Aに連結されている。そして、図5(B)及び図7(B)に示されるように、ロック付ガススプリング70は、ロッド76の突出量に応じて腕支持部32Aをアームレスト本体部22に対してシート上下方向に変位させる。このロック付ガススプリング70は、ロック機構78を有しており、このロック機構78は、ロッド76の移動を直接的にロックすると共に当該ロックを解除可能となっている。このため、腕支持部32Aの高さ位置が無段階に調整される。
【0042】
より具体的に説明すると、ロック付ガススプリング70は、ロッド76の先端部にロック機構78の一部を構成するロック解除ピン78P(図5(B)参照)を有している。そして、ロック付ガススプリング70は、図5(B)に示されるようにロック解除ピン78Pが作動位置まで押されていない状態ではロッド76の移動がロックされ、図6(B)に示されるようにロック解除ピン78P(図5(B)参照)が作動位置まで押された状態ではロッド76のロック状態が解除される。ロッド76のロック状態が解除されると、図7(B)に示されるようにロッド76が移動してシリンダ74からの突出量が大きくなる。一方、図5(B)及び図6(B)に示されるように、アームレスト本体部22には、着座者P(図1参照)による操作スイッチ82の操作に応じてロック解除ピン78P(図5(B)参照)を押す操作機構80が設けられている。したがって、簡易な構成でありながら、図5図7に示されるように、着座者P(図1参照)による操作スイッチ82の操作によって、腕支持部32Aの高さ位置を無段階に調整することができる。
【0043】
また、本実施形態では、シート幅方向に見て互いに平行とされた前リンク62と後リンク64とを有する平行リンク機構42が腕支持部32Aをアームレスト本体部22に対して昇降可能に連結している。また、ロック付ガススプリング70は、シート幅方向に見て後リンク64と交差するように配置され、長手方向一端部側がアームレスト本体部22の下部に対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されており、長手方向他端部側が腕支持部32Aに対してシート幅方向に沿った軸線周りに回動可能に連結されている。このため、省スペースで構造を複雑化しなくても、ロック付ガススプリング70を用いて腕支持部32Aを安定的に昇降させることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用アームレスト装置20によれば、腕支持部32Aの高さ位置を無段階に調整することができる。また、本実施形態では、部品点数が抑えられると共に質量も抑えられる。
【0045】
また、本実施形態では、操作スイッチ82が腕支持部32Aのシート前後方向の端部側の部位と装置平面視で重なる位置に配置されている。このため、操作性が確保されつつ誤操作が防止又は効果的に抑制される。
【0046】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、ガススプリングがロック付ガススプリング70とされているが、上記実施形態の変形例として、ガススプリングがロック機構を有さず、前記ガススプリングとは別にロック機構が設けられると共に、当該ロック機構は、ロッドの移動を直接又は部材(例えば可動体(32)等)を介してロックすると共に当該ロックを解除可能とされている、といった構成とされてもよい。
【0047】
また、上記実施形態の変形例として、上記実施形態の図2等に示される車両用アームレスト装置20のうちシートバック14(図1参照)に取り付けるための構造部を除いて前後逆にしたような構成も採り得る。
【0048】
また、上記実施形態の変形例として、操作スイッチ(82)が装置平面視で腕支持部(32A)と重ならない位置に配置される構成も採り得る。
【0049】
また、上記実施形態の変形例として、操作機構は、着座者(P)が操作可能な操作部としての操作レバーを有すると共に前記操作レバーの操作に応じてロック解除部材(例えば、ロック解除ピン(78P)やロック解除ボタン等)を押すような操作機構とされてもよい。
【0050】
また、上記実施形態の変形例として、ガススプリング(70)は、シート幅方向に見て前リンク(62)と交差するように配置される構成も採り得るし、シート幅方向に見て前リンク(62)及び後リンク(64)の両方と交差するように配置される構成も採り得る。
【0051】
また、上記実施形態の変形例として、平行リンク機構42に代えて、腕支持部(32A)をアームレスト本体部(22)に対して昇降可能に連結したXリンク機構が設けられる構成も採り得る。
【0052】
また、上記実施形態の車両用アームレスト装置20は、フロントシートに適用できる他、リヤシートにも適用できる。
【0053】
なお、上記実施形態及び上述の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0054】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用シート
20 車両用アームレスト装置
22 アームレスト本体部
22U 上側開放部
32A 腕支持部
42 平行リンク機構
62 前リンク
64 後リンク
70 ロック付ガススプリング(ガススプリング)
74 シリンダ
76 ロッド
78 ロック機構
78P ロック解除ピン(ロック解除部材)
80 操作機構
82 操作スイッチ(操作部)
P 着座者
PW 着座者の腕部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7