(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ドアロック装置及びそのドアロック装置の車両ドアへの取付方法
(51)【国際特許分類】
E05B 79/16 20140101AFI20220712BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220712BHJP
E05B 79/18 20140101ALI20220712BHJP
E05B 85/02 20140101ALI20220712BHJP
E05B 85/06 20140101ALI20220712BHJP
【FI】
E05B79/16
B60J5/00 M
E05B79/18
E05B85/02
E05B85/06
(21)【出願番号】P 2017242350
(22)【出願日】2017-12-19
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【氏名又は名称】矢田 歩
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 浩司
(72)【発明者】
【氏名】越智 勲
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真介
(72)【発明者】
【氏名】森脇 裕介
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-003606(JP,A)
【文献】特開2015-227585(JP,A)
【文献】特開2009-270347(JP,A)
【文献】特開2001-234659(JP,A)
【文献】特開2012-087552(JP,A)
【文献】特開2010-190030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアに設けられ、アンロック状態及びロック状態に切り換えるキーロータを有するロック機構と、
前記車両ドアに設けられ、キーによる操作で前記キーロータを動作させる操作部と、を備え、
前記操作部は、
キーの挿入によって回転可能となるシリンダと、
前記ロック機構に作動連結し、前記シリンダの回転を前記ロック機構に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材を揺動可能に支持し、前記伝達部材に前記シリンダの回転を伝達可能に前記シリンダと前記伝達部材を連結する連結部と、を備え、
前記キーロータは、前記伝達部材の先端部を挿脱可能に受け入れるとともに、前記先端部を相対回転不能に係合する係合部を備え、
前記ロック機構を第1位置
側から前記第1位置の反対側に向かって前記伝達部材側に近づけて前記伝達部材を揺動させて作動連結する前の状態のときに、前記伝達部材が作動連結後の前記伝達部材の回転軸線に対して、前記第1位置側に所定の角度で傾いた状態となるように、前記伝達部材を受ける受部を備え、
前記連結部は、前記伝達部材が連結される連結部材を備え、
前記伝達部材は、前記連結部材を受け入れる凹部を備え、
前記伝達部材の揺動可能な支持は、前記伝達部材の前記凹部に挿入された前記連結部材の部分が前記伝達部材に軸支されることで行われ、
前記受部を前記凹部の内面に当接する前記連結部材の外面に形成し、
前記伝達部材が前記ロック機構に作動連結する状態では、前記第1位置側と反対側へ前記所定の角度が小さくなるように前記伝達部材を揺動させることを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記シリンダの回転を前記連結部材に伝達するギアを備えていることを特徴とする請求項1に記載のドアロック装置。
【請求項3】
前記凹部内に配置され、前記伝達部材を前記所定の角度で傾く方向に位置決めする弾性部材を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドアロック装置。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記伝達部材の前記先端部を前記係合部に挿入可能に開口する開口部を有するハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記伝達部材を揺動させて作動連結するときに、前記伝達部材の前記先端部を掬って前記開口部に誘導する掬い部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のドアロック装置。
【請求項5】
アンロック状態及びロック状態に切り換えるキーロータを有するロック機構と、
キーによる操作で前記キーロータを動作させる操作部と、を備えるドアロック装置の車両ドアへの取付方法であって、
前記操作部は、
キーの挿入によって回転可能となるシリンダと、
前記ロック機構に作動連結し、前記シリンダの回転を前記ロック機構に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材を揺動可能に支持し、前記伝達部材に前記シリンダの回転を伝達可能に前記シリンダと前記伝達部材を連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、前記伝達部材が連結される連結部材を備え、
前記伝達部材は、前記連結部材を受け入れる凹部を備え、
前記伝達部材の揺動可能な支持は、前記伝達部材の前記凹部に挿入された前記連結部材の部分が前記伝達部材に軸支されることで行われ、
前記伝達部材を受ける受部を前記凹部の内面に当接する前記連結部材の外面に形成し、
直接的又は間接的に前記車両ドアに対して前記操作部を取り付ける第1取付手順と、
前記第1取付手順の後に、前記ロック機構を第1位置
側から前記第1位置の反対側に向かって前記伝達部材側に近づけて前記伝達部材を揺動させて作動連結するとともに、前記ロック機構を直接的又は間接的に前記車両ドアに取り付ける第2取付手順と、を含み、
前記第2取付手順を行う前の前記伝達部材が、
前記受部によって、前記ロック機構に作動連結された前記伝達部材の回転軸線に対して、前記第1位置側に所定の角度で傾いた状態とされており、
前記ロック機構を前記第1位置側から前記伝達部材側に近づけるように移動させて前記伝達部材を前記回転軸線に対する前記所定の角度を小さくするように揺動させて前記伝達部材を前記ロック機構に作動連結することを特徴とする取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアロック装置及びそのドアロック装置の車両ドアへの取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロック機構にシリンダの回転をパドルで伝達し、アンロック状態とロック状態を切り換えるようにしたドアロック装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなドアロック装置を車両ドアに取り付ける場合、まず、ロック機構を車両ドアに取り付ける。
その後、パドルやシリンダ等を有するキーで操作するための操作部が取り付けられたドアハンドルの車両ドアへの取り付けが行われる。
具体的には、車両ドアの外側からロック機構のパドルを連結する部分にパドルを差し込むようにしてパドルとロック機構の連結を行いつつ、ドアハンドルが車両ドアの所定の位置に位置するようにしてドアハンドルの取り付けが行われる。
【0005】
一方、この手順を逆にすると、先にドアハンドルが車両ドアに取り付けられ、その後、ロック機構のパドルを連結する部分にパドルを連結させるようにしながら、ロック機構の車両ドアへの取り付けを行うことになる。
【0006】
この場合、ロック機構は、車両ドア内に設けられるため、ロック機構を車両の外側からパドルが差し込まれる方向に動かして取り付けることができず、車両ドア内でパドルに対して横側(例えば、車両の方向で見て下側又は後側)からパドルに近づけるように動かすことになる。
【0007】
しかし、このような動かし方では、パドルがロック機構のパドルを連結する部分に至る前に、パドルとロック機構が干渉するため、従来のドアロック装置では、後からロック機構を取り付ける手順を行うことができなかった。
【0008】
しかしながら、できれば、後からロック機構を取り付ける手順でドアロック装置の取り付けを行いたいという要望もある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両ドアに対するドアロック装置の取り付け手順として、先に操作部を取り付け、その後に、ロック機構を取り付けることが可能なドアロック装置及びそのドアロック装置の車両ドアへの取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成によって把握される。
(1)本発明のドアロック装置は、車両ドアに設けられ、アンロック状態及びロック状態に切り換えるキーロータを有するロック機構と、前記車両ドアに設けられ、キーによる操作で前記キーロータを動作させる操作部と、を備え、前記操作部は、キーの挿入によって回転可能となるシリンダと、前記ロック機構に作動連結し、前記シリンダの回転を前記ロック機構に伝達する伝達部材と、前記伝達部材を揺動可能に支持し、前記伝達部材に前記シリンダの回転を伝達可能に前記シリンダと前記伝達部材を連結する連結部と、を備え、前記キーロータは、前記伝達部材の先端部を挿脱可能に受け入れるとともに、前記先端部を相対回転不能に係合する係合部を備え、前記ロック機構を第1位置から前記伝達部材側に近づけて前記伝達部材を揺動させて作動連結する前の状態のときに、前記伝達部材が作動連結後の前記伝達部材の回転軸線に対して、前記第1位置側に所定の角度で傾いた状態となるように、前記伝達部材を受ける受部を備えている。
【0011】
(2)上記(1)の構成において、前記連結部は、前記伝達部材が連結される連結部材を備え、前記伝達部材は、前記連結部材を受け入れる凹部を備え、前記伝達部材の揺動可能な支持は、前記凹部に挿入された前記連結部材の部分と前記伝達部材とを貫挿するピンで行われており、前記凹部には、前記受部となる当接面が形成されている。
【0012】
(3)上記(2)の構成において、前記連結部は、前記シリンダの回転を前記連結部材に伝達するギアを備えている。
【0013】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記凹部内に配置され、前記伝達部材を前記所定の角度で傾く方向に位置決めする弾性部材を備えている。
【0014】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記ロック機構は、前記伝達部材の先端部を前記係合部に挿入可能に開口する開口部を有するハウジングを備え、前記ハウジングは、前記伝達部材を揺動させて作動連結するときに、前記伝達部材の先端部を掬って前記開口部に誘導する掬い部を備えている。
【0015】
(6)本発明の取付方法は、アンロック状態及びロック状態に切り換えるキーロータを有するロック機構と、キーによる操作によって前記キーロータを動作させるための伝達部材であって、前記ロック機構に揺動して作動連結する前記伝達部材を有する操作部と、を備えるドアロック装置の車両ドアへの取付方法であって、直接的又は間接的に前記車両ドアに対して前記操作部を取り付ける第1取付手順と、前記第1取付手順の後に、前記ロック機構を第1位置から前記伝達部材側に近づけて前記伝達部材を揺動させて作動連結するとともに、前記ロック機構を直接的又は間接的に前記車両ドアに取り付ける第2取付手順と、を含み、前記第2取付手順を行う前の前記伝達部材が、前記ロック機構に作動連結された前記伝達部材の回転軸線に対して、前記第1位置側に所定の角度で傾いた状態にされている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両ドアに対するドアロック装置の取り付け手順として、先に操作部を取り付け、その後に、ロック機構を取り付けることが可能なドアロック装置及びそのドアロック装置の車両ドアへの取付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る第1実施形態のドアロック装置を説明するための図である。
【
図2】本発明に係る第1実施形態の操作部のパドル側を主に見えるようにした斜視図である。
【
図3】本発明に係る第1実施形態のパドルのロック機構への作動連結が始まる直前の状態を示す図である。
【
図4】本発明に係る第1実施形態のパドルのロック機構への作動連結が完了した状態を示す図である。
【
図5】本発明に係る第2実施形態のパドルの周辺を拡大した図である。
【
図6】本発明に係る第2実施形態のパドルとピンだけを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0019】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態のドアロック装置1を説明するための図であり、
図2は操作部10のパドル12側を主に見えるようにした斜視図である。
なお、
図1では、内部の構造を示したい部分について、一部を透視図の状態として描いており、また、ロック機構20については、断面図として描いている。
【0020】
ドアロック装置1は、
図1に示すように、車両ドアに取り付けられるドアハンドルのハンドルベース2に取り付けられ、キーによる操作でロック機構20のキーロータ21を動作させる操作部10と、車両ドアに設けられ、操作部10の操作によって、車両ドアの鍵の状態をアンロック状態(解錠状態)及びロック状態(施錠状態)に切り換えるキーロータ21を有するロック機構20と、を備えている。
【0021】
なお、本実施形態では、操作部10がハンドルベース2に取り付けられて、そのハンドルベース2が車両ドアに取り付けられるようになっており、操作部10は、ハンドルベース2を介して間接的に車両ドアに取り付けられている。
【0022】
しかし、車両の設計によっては、操作部10が車両ドアに、直接、取り付けられる場合も考えられるため、操作部10は、必ずしも、間接的に車両ドアに取り付けられるものではなく、直接、車両ドアに取り付けるようにしてもよい。
【0023】
また、操作部10が間接的に車両ドアに取り付けられる場合でも、ハンドルベース2と異なる部材を介して取り付けられる場合も考えられるため、間接的に取り付けられる場合であっても、ハンドルベース2を介して取り付けることに限定されるものではない。
したがって、操作部10は、間接的又は直接的に車両ドアに対して取り付けられることで、操作部10が車両ドアに設けられていればよい。
【0024】
(操作部10)
操作部10は、
図1に示すように、キーの挿入によって回転可能となるシリンダ11と、後ほど説明するように、ロック機構20に作動連結し、シリンダ11の回転をロック機構20に伝達する伝達部材であるパドル12と、後ほど説明するように、パドル12を揺動可能に支持(軸支)し、パドル12にシリンダ11の回転を伝達可能にシリンダ11とパドル12を連結する連結部13と、を備えている。
【0025】
本実施形態では、連結部13が、パドル12に連結される連結部材であるシャフト13Aと、ギアボックス13B内に設けられた複数のギア(ギア13BA及びギア13BB)と、を備えている。
ギア13BAは、シャフト13Aのギアボックス13B内に位置する基端部に固定されており、ギア13BBは、シリンダ11のギアボックス13B内に位置する回転軸の先端に固定されている。
【0026】
なお、本実施形態では、ギアボックス13Bが、上側筐体13BU(以下、筐体の第1半体ともいう。)と、下側筐体13BL(以下、筐体の第2半体ともいう。)と、を備え、それらを合わせることでギアボックス13Bが形成されているが、このような構成に限定される必要はない。
【0027】
例えば、上側筐体13BUをシリンダ11の筐体と一体化したものとして、そのシリンダ11の筐体に一体化されている上側筐体13BUに下側筐体13BLを取り付けるようにして、ギアボックス13Bの部分が形成されるものであってもよい。
【0028】
また、シャフト13Aが、直接、シリンダ11の回転軸の先端に固定され、連結部13がシャフト13Aだけからなるものとしてもよい。
ただし、本実施形態のように、連結部13がギア(ギア13BA及びギア13BB)を備える場合、直接、シリンダ11の回転軸の先端にシャフト13Aを固定するのに比べ、ギアの設計によって、シャフト13Aの配置を簡単に変更できる。
【0029】
このため、連結部13がギア(ギア13BA及びギア13BB)を備える場合、車種の違い等によって、車両ドアに設けられるロック機構20と操作部10が設けられるハンドルベース2との相対位置関係が変化しても、適切な位置にパドル12が位置するように、シャフト13Aの配置を変更する設計が可能である。
【0030】
パドル12は、先端部12Aの周方向に均等間隔(本例では90度ピッチ)で配置され、外側に張り出した複数(本例では4つ)の係合片12AAを備えており、後ほど説明するように、ロック機構20に作動連結すると、ロック機構20のキーロータ21内に固定された係合部22と、相対回転不能に係合できるようになっている。
【0031】
なお、パドル12の先端部12Aに設けられる係合片12AAの形状及び数は、ロック機構20の係合部22がパドル12の先端部12Aを挿脱可能に受け入れることができる形状であって、パドル12が回転したときに、それによる先端部12Aの回転とともに係合部22が一体的に回転できる係合(相対回転不能な係合)ができる限り、特に限定されるものではない。
【0032】
また、パドル12は、先端部12Aと反対側となる基端部に形成された凹部12Bを備えている。
そして、凹部12Bに挿入されたシャフト13Aの部分(ギアボックス13Bの外側に位置するシャフト13Aの一部)とパドル12とが貫挿するピン14で連結されている。
【0033】
具体的には、凹部12Bに挿入されるシャフト13Aの部分には、ピン14の外径よりも若干大きい内径のシャフト13Aを貫通する第1貫通孔が形成されている。
また、パドル12の凹部12Bに対応する部分には、ピン14の外径とほぼ等しい内径のパドル12を貫通する第2貫通孔が形成されている。
【0034】
なお、第2貫通孔は、パドル12の凹部12Bに対応する部分の一方の壁部、及び、その一方の壁部に対向する他方の壁部を貫通するものとなっているので、貫通孔の数として見れば2つの貫通孔からなるものになっている。
【0035】
そして、第1貫通孔と第2貫通孔の位置が合うように、ギアボックス13Bの外側に位置するシャフト13Aの一部が、パドル12の凹部12Bに挿入された状態で、第1貫通孔と第2貫通孔を通すようにピン14が貫挿され、パドル12が揺動可能にシャフト13Aに支持(軸支)されたものになっている。
【0036】
したがって、本実施形態でのパドル12の揺動可能な支持(軸支)は、パドル12の凹部12Bに挿入されたシャフト13Aの部分とパドル12とを貫挿するピン14で行われたものになっている。
なお、言うまでもないが、パドル12の凹部12Bは、パドル12が後述するように揺動するときに、凹部12Bを形成している壁部とシャフト13Aが干渉しないで、少なくとも揺動が必要な範囲の揺動ができるサイズに形成されている。
【0037】
また、本実施形態では、ピン14の長さが、第2貫通孔が形成されているパドル12の凹部12Bに対応する部分の一方の壁部、及び、一方の壁部に対向する他方の壁部の両方の壁部から弾性部材であるバネ15の抜け止めが可能な長さ分だけ突出する長さになっている。
【0038】
具体的には、バネ15は、パドル12の凹部12Bに対応する部分の一方の壁部側に配置される第1ねじりコイルバネ構造と、パドル12の凹部12Bに対応する部分の一方の壁部に対向する他方の壁部側に配置される第1ねじりコイルバネ構造と同じ構造の第2ねじりコイルバネ構造(
図1では反対側のため見えていない)と、を備えている。
【0039】
また、バネ15は、第1ねじりコイルバネ構造と第2ねじりコイルバネ構造が所定の距離離間するようにするために、第1ねじりコイルバネ構造及び第2ねじりコイルバネ構造の有する一対の弾性アームのうちの一方の弾性アーム同士を連結する連結アームを備えている。
【0040】
そして、ピン14の長さは、2つのねじりコイルバネ構造(第1ねじりコイルバネ構造及び第2ねじりコイルバネ構造)のコイル部分を貫通できる程度の長さとなるようにされている。
【0041】
一方、パドル12には、ピン14を貫挿する第2貫通孔よりも、若干、パドル12の先端部12A寄りの位置にねじりコイルバネ構造の他方の弾性アームを受けるアーム受部12Cが形成されている。
なお、
図1では、パドル12の凹部12Bに対応する部分の一方の壁部に形成されたアーム受部12Cしか見えていないが、
図2に示すように、一方の壁部に対向する他方の壁部にもこのアーム受部12Cと対向する位置に同様のアーム受部12Cが形成されている。
【0042】
また、上述したように、パドル12は、揺動可能な支持(軸支)の状態になっているため、
図1に示すように、ロック機構20に作動連結する前の状態のときには、自重で下側に傾いた状態となり、アーム受部12Cは、このように傾いた状態のときに、第2貫通孔よりも、若干、シリンダ11側から離れる側に位置している。
【0043】
そして、バネ15は、連結アームがシャフト13A又はギアボックス13Bに接触し、第1ねじりコイルバネ構造及び第2ねじりコイルバネ構造の他方の弾性アームがアーム受部12Cに当接し、パドル12を下側に付勢するように配置されるとともに、第1ねじりコイルバネ構造及び第2ねじりコイルバネ構造がピン14によって抜け止めされるように設けられている。
【0044】
なお、後述するが、本実施形態において、下側は、ロック機構20を第1位置からパドル12(伝達部材)側に近づけてパドル12(伝達部材)を揺動させて、ロック機構20に作動連結させるときの第1位置に当たる。
【0045】
したがって、アーム受部12Cは、ロック機構20にパドル12が作動連結する前の下側(第1位置側)に傾いた状態において、第2貫通孔よりも、若干、シリンダ11側から離れる側に位置している。
【0046】
このように、本実施形態では、パドル12が自重で下側(第1位置側)に傾くだけでなく、バネ15の付勢力によっても、パドル12が下側(第1位置側)に傾くようにされている。
このため、後ほど説明するが、パドル12がロック機構20に作動連結される前の状態のときに、確実に、下側(第1位置側)に傾くようになっている。
【0047】
また、操作部10は、ギアボックス13Bのシリンダ11と反対側に位置する外面(下側筐体13BLの外面)から突出するように形成され、パドル12が下側(第1位置側)に所定の角度で傾いた状態となるように、パドル12を受ける受部13BCを備えている。
さらに、パドル12には、パドル12の外面から延在し、受部13BCで受けられる突出片12Dが形成されている。
【0048】
そして、
図2に示すように、突出片12Dは、受部13BCが嵌合される嵌合凹部12DAが形成されており、受部13BCは、先端側にその嵌合凹部12DAに嵌合される嵌合凸部13BCAが形成されている。
なお、嵌合凹部12DAと嵌合凸部13BCAの関係は逆であってもよく、したがって、突出片12Dに嵌合凸部を設け、受部13BCに嵌合凹部を設けるようにしてもよい。
【0049】
このように、パドル12の突出片12Dと受部13BCとの間に嵌合構造(嵌合凹部12DAと嵌合凸部13BCA)を設け、嵌合するようにしておけば、受部13BCで受けられたパドル12のガタ付きを抑制することができ、後述するパドル12を揺動させてロック機構20に作動連結する作業が行いやすくなる。
【0050】
(ロック機構20)
ロック機構20は、
図1に示すように、キーロータ21を有しており、このキーロータ21の回動が車体(図示せず)に設けられるストライカ(図示せず)をラッチ又はラッチ解除する部分に伝達されることで、車両ドアがロック状態(施錠状態)又はアンロック状態(解錠状態)になる。
【0051】
なお、キーロータ21の回動に伴って、車体(図示せず)に設けられるストライカ(図示せず)をラッチ又はラッチ解除する構成は、一般的な構成でよく、特に、限定されるものではない。
【0052】
そして、先にも少し触れたが、キーロータ21内には、パドル12の先端部12Aに形成された係合片12AAに係合(相対回転不能に係合)して、パドル12の回転とともにキーロータ21が回転できるようにする係合部22が固定されている。
【0053】
ただし、本実施形態のように、キーロータ21に一体に係合部22が形成されていてもよく、または、キーロータ21と係合部22を別部品としてキーロータ21に係合部22を固定してもよい。
したがって、キーロータ21が、少なくともパドル12の先端部12Aを挿脱可能に受け入れるとともに、先端部12Aを相対回転不能に係合する係合部22を備えていればよい。
【0054】
(ドアロック装置1の取付方法)
以上のような構成を有するドアロック装置1を車両ドアに取り付ける取付方法を説明しながら、更に、ドアロック装置1についての説明を行う。
図3はパドル12のロック機構20への作動連結が始まる直前の状態を示す図であり、
図4はパドル12のロック機構20への作動連結が完了した状態を示す図である。
なお、
図3及び
図4においても
図1と同様にロック機構20については断面図として描いている。
【0055】
まず、第1取付手順として、操作部10が取り付けられたハンドルベース2を車両ドアに取り付けることで、操作部10が車両ドアに対して取り付けられる。
なお、先にも触れたとおり、直接、操作部10が車両ドアに取り付けられる場合もあるため、第1取付手順としては、直接的又は間接的に車両ドアに対して操作部10を取り付ける手順となる。
【0056】
そして、第1取付手順の後に、ロック機構20を直接的又は間接的に車両ドアに取り付ける第2取付手順を行うことになり、ドアロック装置1の構成を含めより詳細に説明する。
図1に示すように、ロック機構20は、第1ハウジング半体23Aと、第2ハウジング半体23Bと、を合わせたハウジング23を備えており、そのハウジング23(第1ハウジング半体23A)は、パドル12の先端部12Aを係合部22に挿入可能に開口する開口部23BAを有している。
【0057】
そして、
図3に示すように、ハウジング23は、パドル12のロック機構20への作動連結を始めるときに、パドル12の先端部12Aの下側(第1位置側)に位置する掬い部23BBを備えている。
【0058】
具体的には、掬い部23BBは、ハウジング23(第1ハウジング半体23A)の開口部23BAの外周の縁部に沿って形成されており、開口部23BA側にパドル12の先端部12Aを誘導するように、開口部23BA側に傾斜する内面を有するものになっている。
【0059】
また、掬い部23BBは、パドル12を受け入れることができるように、上側(第1位置の反対側)の一部を開放する形状に形成されており、パドル12がスムーズに掬い部23BB内に侵入できるようになっている。
【0060】
したがって、
図3に示す状態から、更に、ロック機構20をパドル12側に動かして、パドル12を上側に揺動させて、
図4に示すように、パドル12がロック機構20に作動連結するまでの過程で、掬い部23BBは、掬い部23BB内に侵入したパドル12の先端部12Aを掬って、そのパドル12の先端部12Aを開口部23BAに誘導する。
【0061】
そして、掬い部23BBに誘導され、開口部23BAのところまで移動してきたパドル12の先端部12Aは、更に上側(第1位置の反対側)に揺動していくときに、今度は、開口部23BAから係合部22内に侵入していき、
図4に示す状態のところまで、ロック機構20が来ると、完全にパドル12がロック機構20に連結された状態となる。
【0062】
なお、パドル12が完全に鉛直方向下側に傾いていると、パドル12を掬い部23BBで掬って開口部23BAに誘導する動きが行い難くなる。
このため、ロック機構20を下側(第1位置)からパドル12に近づけてパドル12を揺動させて作動連結する前の状態(第2取付手順を行う前)のときに、パドル12が
図4に示す作動連結後のパドル12の回転軸線に対して、下側(第1位置側)に所定の角度で傾いた状態は、完全にパドル12の軸線が下側(第1位置側)に向かない程度、つまり、若干、上側(第1位置の反対側)にも傾いている程度になっていることが好ましく、そのような傾きとなるように、パドル12を受ける受部13BCが形成されるのがよい。
【0063】
そして、
図4に示す状態になったところで、ロック機構20が車両ドアに固定され、第2取付手順が終了し、車両ドアへのドアロック装置1の取り付けが完了する。
なお、ロック機構20の車両ドアへの固定は、ロック機構20が
図4に示す位置に位置する状態を保った上で、ネジ等によって固定作業を行うものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
例えば、車両ドア側にロック機構20が
図4に示す位置に来ると、ロック機構20が自動的にラッチ係合されるような固定構造を設けておき、ロック機構20が
図4に示す位置に来ると、自然と固定されるようになっていてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態のドアロック装置1によれば、先に、車両ドアに操作部10を設けておき、その後に、操作部10のパドル12に対して横側(本例では、車両の方向で見て下側となる横側)からロック機構20をパドル12に近づけるように動かすようにしても、パドル12が下側(第1位置側)に傾いた状態から揺動することで作動連結できるため、従来のように、パドル12が干渉して連結が行えないということがない。
【0066】
なお、本実施形態では、ロック機構20を下側となる第1位置からパドル12に近づけるため、パドル12を下側に傾けた状態としているが、例えば、車両の方向で後側となるパドル12の横側を第1位置として、ロック機構20を車両の方向で前側に動かしてパドル12に近づけるようにしてもよく、この場合であっても、パドル12は第1位置となる後側に傾けた状態とされればよい。
【0067】
したがって、パドル12を傾けておく方向は、第1位置からロック機構20をパドル12に近づけていくときの第1位置側になっていればよい。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態のドアロック装置1について、
図5及び
図6を参照して説明する。
第2実施形態においても、ロック機構20の構成は、第1実施形態と同様であるため、以下では、説明を省略する。
【0069】
また、第1実施形態と異なっているのは、パドル12を下側(第1位置側)に所定の角度で傾いた状態となるようにするための部分であるため、以下では、主に、この部分について説明を行い、操作部10においても、第1実施形態と同様である点については、説明を省略する場合がある。
【0070】
図5は、第2実施形態のパドル12の周辺を拡大した図であり、パドル12については断面図としている。
また、
図6は、第2実施形態のパドル12とピン14だけを示した斜視図である。
【0071】
本実施形態では、バネ15を用いないため、
図6に示すように、パドル12には、アーム受部12Cが設けられておらず、ピン14の長さも、パドル12の凹部12Bに対応する部分に形成された第2貫通孔から飛び出ない程度の長さになっている。
【0072】
また、本実施形態では、パドル12に設けられていた突出片12D及びギアボックス13Bに設けられていたパドル12を受ける受部13BCが設けられていない。
【0073】
一方、本実施形態では、パドル12が下側(第1位置側)に所定の角度で傾いた状態となるように、パドル12が下側(第1位置側)に所定の角度で傾いたときに、シャフト13Aの下側(第1位置側)の外面が、パドル12の凹部12Bの下側(第1位置側)に位置する内面12BAに当接するようになっている。
【0074】
したがって、本実施形態では、この内面12BAと当接するシャフト13Aの外面(以下、当接面ともいう。)が、パドル12を下側(第1位置側)に所定の角度で傾いた状態となるように、パドル12を受ける受部となっている。
【0075】
なお、パドル12の下側(第1位置側)に傾く所定の角度に合わせて、受部となる当接面(内面12BAと当接するシャフト13Aの外面)又は内面12BAの状態が設計される。
ただし、どちらか一方ではなく、受部となる当接面(内面12BAと当接するシャフト13Aの外面)及び内面12BAの双方の状態をパドル12の下側(第1位置側)に傾く所定の角度に合わせて設計するようにしてもよい。
【0076】
本実施形態では、シャフト13Aの形状に対して、内面12BAの傾斜を調節するようにして、パドル12が下側(第1位置側)に所定の角度傾くようにしている。
【0077】
また、本実施形態では、バネ15に代えて、パドル12の凹部12B内に配置される弾性部材としてのゴム部材16が設けられており、このゴム部材16がパドル12を下側(第1位置側)に所定の角度で傾く方向に位置決めする。
【0078】
そして、このような態様としても、パドル12がロック機構20(図示せず)に作動連結されるときには、ゴム部材16が弾性変形するので、パドル12の揺動を阻害することがない。
【0079】
また、本実施形態であれば、パドル12にアーム受部12C及び突出片12Dを形成する必要がなく、パドル12の形状がシンプルな形状となるため、パドル12の製造コストを低減することが可能である。
【0080】
さらに、本実施形態であれば、複雑な形状のバネ15に代えて、シンプルな形状のゴム部材16が用いられているため、弾性部材の製造コストを低減することも可能であるとともに、ゴム部材16をパドル12の凹部12B内に配置するだけのため、バネ15を取り付ける作業に比べ、組み立ての手間も軽減できる。
【0081】
なお、本実施形態のドアロック装置1でも、車両ドアへの取付方法は、第1実施形態と同じである。
【0082】
以上、具体的な実施形態を基に本発明の説明を行ってきたが、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、技術的思想を逸脱することのない変更や改良を行ったものも発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0083】
1 ドアロック装置
2 ハンドルベース
10 操作部
11 シリンダ
12 パドル
12A 先端部
12AA 係合片
12B 凹部
12BA 内面
12C アーム受部
12D 突出片
12DA 嵌合凹部
13 連結部
13A シャフト
13B ギアボックス
13BA、13BB ギア
13BC 受部
13BCA 嵌合凸部
13BL 下側筐体
13BU 上側筐体
14 ピン
15 バネ
16 ゴム部材
20 ロック機構
21 キーロータ
22 係合部
23 ハウジング
23A 第1ハウジング半体
23B 第2ハウジング半体
23BA 開口部
23BB 掬い部