(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】飲食物搬送装置
(51)【国際特許分類】
A47G 23/08 20060101AFI20220712BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A47G23/08 Z
B65G1/00 501B
(21)【出願番号】P 2018105369
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390010319
【氏名又は名称】株式会社石野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】石野 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】本岡 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 茂
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-219043(JP,A)
【文献】特開平05-207916(JP,A)
【文献】特開2005-185326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 23/08
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食店の客席沿いに飲食物の搬送路を形成する搬送機構と、
前記搬送路上に設けられており、前記搬送機構に搬送させる飲食物のトレイを該トレイの両側から一対の爪で支持するトレイ保持機構と、
搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている飲食物のトレイを前記搬送路に下ろす制御装置と、を備え
、
前記搬送路のうち少なくとも前記トレイ保持機構の下側の部位は、複数のローラが隙間を空けて配列されたローラ群で形成されており、
前記飲食物搬送装置は、前記ローラ群が有するローラの隙間から上方へ向かって支持部材を出し入れさせる昇降機構を更に備え、
前記制御装置は、前記搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構と前記昇降機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている飲食物のトレイを前記ローラ群に下ろす、
飲食物搬送装置。
【請求項2】
前記搬送機構は、飲食店の厨房から客席へ至る搬送路を形成するベルトコンベアを有し、
前記トレイ保持機構は、前記ベルトコンベアの厨房部分に設けられており、
前記制御装置は、搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている飲食物のトレイを前記搬送路に下ろし、前記ベルトコンベアを作動させて飲食物のトレイを客席へ搬送させる、
請求項1に記載の飲食物搬送装置。
【請求項3】
前記制御装置は、特定の客席へ飲食物を搬送するための搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている飲食物のトレイを前記搬送路に下ろし、前記ベルトコンベアを作動させて飲食物のトレイを前記特定の客席へ搬送させる、
請求項2に記載の飲食物搬送装置。
【請求項4】
前記トレイ保持機構は、飲食物のトレイを上下に複数段セット可能であり、
前記制御装置は、搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている各段の飲食物のトレイを下側から順に前記搬送路へ下ろし、前記
ベルトコンベアを作動させて飲食物のトレイを各段で指定されていた客席へ搬送させる、
請求項2または3に記載の飲食物搬送装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記複数のローラの隙間の部分に収まる形態を有し、上下動されても前記複数のローラに干渉しないように形作られた部材である、
請求項
1から4の何れか一項に記載の飲食物搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食物搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食店においては、搬送装置を使った飲食物の提供が行なわれている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲食物を搬送する場合、例えば、厨房から客席へ至るベルトコンベアに飲食物の皿を載せて搬送することが考えられる。しかし、厨房から客席までの搬送路が1つのベルトコンベアで形成されている場合、ベルトコンベアが飲食物を客席へ運んでいる間は厨房で次の飲食物をベルトコンベアに乗せることができない。よって、厨房の作業者は、ベルトコンベアが停止するのを待つことになる。
【0005】
また、例えば、飲食物をトレイに載せて運ぶことが多い定食屋などでは、回転寿司店のように食事中の飲食客が注文を度々入れる飲食店とは異なり、注文された複数の飲食物を同時期に搬送することが多い。特にファミリーレストランのようなボックス席のある店では、当該ボックス席に着席した複数人の客が複数の飲食物をまとめて注文するのが通常であるため、複数の飲食物の用意が同時期に整うことが多い。このタイミングで他の客の飲食物の用意も整うと、厨房のスタッフは、搬送先の異なる複数の飲食物をベルトコンベアへ載せるために、ベルトコンベアが飲食物の搬送を終えて停止するのを待つ必要に迫られる。よって、スタッフの作業効率が低下する。
【0006】
そこで、本願は、飲食物の搬送に起因する作業効率の低下を可及的に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、飲食物のトレイを両側から一対の爪で支持するトレイ保持機構を搬送路上に設けておき、搬送開始操作が行われると、当該トレイ保持機構を作動させて飲食物のトレイを搬送路に下ろすようにした。
【0008】
詳細には、本発明は、飲食物搬送装置であって、飲食店の客席沿いに飲食物の搬送路を形成する搬送機構と、前記搬送路上に設けられており、前記搬送機構に搬送させる飲食物のトレイを該トレイの両側から一対の爪で支持するトレイ保持機構と、搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている飲食物のトレイを前記搬送路に下ろす制御装置と、を備える。
【0009】
上記の飲食物搬送装置であれば、用意された飲食物のトレイは、搬送路の上にあるトレイ保持機構にセットされた状態となっているため、例えば、ベルトコンベアで搬送路を形成する搬送機構が飲食物を搬送中であっても、作業者は、飲食物のトレイをトレイ保持機構にセット可能である。したがって、作業者は、搬送機構が作動中であると否とに関わり無く、飲食物を次々に用意してトレイ保持機構にセットすることができる。
【0010】
なお、前記搬送機構は、飲食店の厨房から客席へ至る搬送路を形成するベルトコンベアを有し、前記トレイ保持機構は、前記ベルトコンベアの厨房部分に設けられており、前記制御装置は、搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている飲食物のトレイを前記搬送路に下ろし、前記ベルトコンベアを作動させて飲食物のトレイを客席へ搬送させるものであってもよい。ベルトコンベアを使った搬送機構であれば、飲食物のトレイをベルトに載せるだけで搬送可能となるため、飲食物のトレイの搬送に好適である。
【0011】
また、前記制御装置は、特定の客席へ飲食物を搬送するための搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている飲食物のトレイを前記搬送路に下ろし、前記ベルトコンベアを作動させて飲食物のトレイを前記特定の客席へ搬送させるものであってもよい。このような飲食物搬送装置であれば、飲食物のトレイを特定の客席へ搬送可能であるため、注文を受けて用意される飲食物の搬送に好適である。この場合、当該飲食物搬送装置は、注文飲食物搬送装置として捉えることができる。
【0012】
また、前記トレイ保持機構は、飲食物のトレイを上下に複数段セット可能であり、前記制御装置は、搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている各段の飲食物のトレイを下側から順に前記搬送路へ下ろし、前記ベルトコンベアを作動させて飲食物のトレイを各段で指定されていた客席へ搬送させるものであってもよい。飲食物のトレイをトレイ保持機構において上下に複数段セット可能であれば、多数の飲食物を搬送可能である。
【0013】
また、前記搬送路のうち少なくとも前記トレイ保持機構の下側の部位は、複数のローラが隙間を空けて配列されたローラ群で形成されており、前記飲食物搬送装置は、前記ローラ群が有するローラの隙間から上方へ向かって支持部材を出し入れさせる昇降機構を更に備え、前記制御装置は、前記搬送開始操作が行われると前記トレイ保持機構と前記昇降機構を作動させて、前記一対の爪で支持されている飲食物のトレイを前記ローラ群に下ろすものであってもよい。この場合、前記支持部材は、前記複数のローラの隙間の部分に収まる形態を有し、上下動されても前記複数のローラに干渉しないように形作られた部材であってもよい。このような昇降機構であれば、飲食物のトレイを搬送路へ安定した姿勢で下ろすことが可能である。
【発明の効果】
【0014】
上記の飲食物搬送装置であれば、飲食物の搬送に起因する作業効率の低下を可及的に抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る注文飲食物搬送装置の全体構成図である。
【
図2】
図2は、ストッカの内部構造を示した図である。
【
図3】
図3は、支持板がローラよりも上に位置する状態を示した図である。
【
図4】
図4は、ストッカの操作パネル付近を示した図である。
【
図6】
図6は、注文飲食物搬送装置の動作内容を示したフローチャートである。
【
図7】
図7は、ストッカ内の動作状態の具体例を示した図である。
【
図8】
図8は、ベルトコンベアの動作状態の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。下記に示す各実施形態や変形
例は、例えば、寿司や飲料物、ラーメンやうどんといった丼物、から揚げや天ぷらといった各種の飲食物を提供する飲食店に好適である。
【0017】
図1は、実施形態に係る注文飲食物搬送装置1(本願でいう「飲食物搬送装置」の一例である)の全体構成図である。注文飲食物搬送装置1は、客の注文を受けて用意された飲食物を飲食店の厨房2から客席3へ搬送する装置であり、
図1に示すように、客が飲食する各客席3の脇や横を通る搬送路を形成する。注文飲食物搬送装置1は、飲食店の厨房2に設置されたストッカ4(本願でいう「トレイ保持機構」の一例である)と、ストッカ4から客席3へ至る搬送路を形成するベルトコンベア5(本願でいう「搬送機構」の一例である)とを備えている。なお、本実施形態では、ベルトコンベア5が直線状に形成されているが、ベルトコンベア5を複数組み合わせることにより、注文飲食物搬送装置1がコーナー部分を有する搬送路を形成するようにしてもよい。また、注文飲食物搬送装置1の筐体内には、使用済みの食器を客席3から厨房2へ搬送する下げ搬送装置が内蔵されていてもよい。
【0018】
客席エリアには、例えば、
図1に示すように、注文飲食物搬送装置1のベルトコンベア5が形成する搬送路沿いに設けられたカウンター席用のテーブル6や、テーブル6に設置された注文端末7が備わっている。注文飲食物搬送装置1は、何れかの客席3に座る客の注文を注文端末7で受けて厨房で用意された飲食物を、当該注文を行った客が座る客席3へ搬送する。なお、注文飲食物搬送装置1のベルトコンベア5が形成する搬送路沿いには、ボックス席が設けられていてもよい。また、注文飲食物搬送装置1のベルトコンベア5が形成する搬送路沿いには、カウンター席とボックス席とが混在する状態で設けられていてもよい。また、注文飲食物搬送装置1は、カウンター席等の無い立食形式の店舗に設置することもできる。
【0019】
注文飲食物搬送装置1は、飲食物が盛り付けられた食器を載せたトレイ(以下、「食器トレイ」という)を搬送する。よって、注文飲食物搬送装置1のベルトコンベア5は、上面視略長方形の食器トレイの短手方向の長さと同等かそれよりも幅広のベルトを厨房2と客席エリアとの間で循環させる。また、ストッカ4とベルトコンベア5との間には連絡経路8が設けられている。連絡経路8は、複数のローラを備え、ストッカ4からベルトコンベア5へ至る左カーブの搬送路を形成する。
【0020】
図2は、ストッカ4の内部構造を示した図である。ストッカ4は、
図2に示されるように、食器トレイを上下方向に昇降させるトレイ下降装置41と、トレイ下降装置41の下部に食器トレイを降下させる昇降機構50とを備える。トレイ下降装置41の下部には、昇降機構50によって降下させられた食器トレイを下側から支持するローラ57F,57Rが設けられている。ローラ57F,57Rの隣には連絡経路8が延設されており、ローラ57F,57Rと連絡経路8のローラ81L,81Rが形成する搬送路は、トレイ下降装置41の下部からベルトコンベア5へ向かって徐々に下がる下り勾配となっている。この勾配の傾斜は、極めて緩慢な傾斜角となっている。よって、所定の曲率のカーブを形成する連絡経路8のローラ81L,81R上をスライドして移動する食器トレイが何らかの障害物への接触により停止しても、食器トレイに載っている食器は転倒しない。
【0021】
トレイ下降装置41は、食器トレイを左側で支持する下降機構41Lと、食器トレイを右側で支持する下降機構41Rとを備える。下降機構41Lは、食器トレイを支持するための爪46Lが等間隔で取り付けられている昇降ベルト43L,44Lを備える。昇降ベルト43Lは、トレイ下降装置41の上部と下部にそれぞれ配置された2つのプーリ42Lに掛け渡されており、適度な張力が付与されている。昇降ベルト44Lも昇降ベルト43Lと同様、トレイ下降装置41の上部と下部にそれぞれ配置された2つのプーリ45Lに掛け渡されており、適度な張力が付与されている。そして、トレイ下降装置41の下部
にあるプーリ42Lとプーリ45Lは、同一の回転軸で互いに連結されており、モータ47からプーリ48を介して伝達される動力で回転する駆動ベルト49Aにより回転駆動される。よって、モータ47が作動してプーリ42L,45Lが回転すると、昇降ベルト43L,44Lに取り付けられている爪46Lが動く。
【0022】
下降機構41Rも下降機構41Lと同様であり、下降機構41Rは、食器トレイを支持するための爪46Rが等間隔で取り付けられている昇降ベルト43R,44Rを備える。昇降ベルト43Rは2つのプーリ42Rに掛け渡され、昇降ベルト44Lは2つのプーリ45Rに掛け渡されている。そして、トレイ下降装置41の下部にあるプーリ42Rとプーリ45Rは、同一の回転軸で互いに連結されており、下降機構41Lから駆動ベルト49Bを介して伝達されるモータ47の動力で回転駆動される。よって、モータ47が作動してプーリ42R,45Rが回転すると、昇降ベルト43R,44Rに取り付けられている爪46Rが動く。
【0023】
下降機構41Lと下降機構41Rは、互いに向かい合う昇降ベルト43Lと昇降ベルト43Rのベルト面、及び、互いに向かい合う昇降ベルト44Lと昇降ベルト44Rのベルト面が、何れも下方向へ移動するように作動する。そして、互いに向かい合う昇降ベルト43Lと昇降ベルト43Rのベルト面、及び、互いに向かい合う昇降ベルト44Lと昇降ベルト44Rのベルト面に取り付いている爪46Lと爪46Rは、対向する爪46L,46R同士が同じ高さとなるように、下降機構41Lと下降機構41Rが同期して作動する。
【0024】
連絡経路8は、進路の中心線の左側に並ぶローラ81Lと、進路の中心線の右側に並ぶローラ81Rとにより構成されている。各ローラ81L,81Rは、互いに独立して回転自在である。よって、連絡経路8は、進路の中心線を挟んで左右に分割されており、且つ、左右で互いに独立して回転自在に構成されたローラ81L,81Rで構成されている。したがって、連絡経路8では食器トレイが以下のように動く。
【0025】
すなわち、食器トレイは、ローラ57F,57Rに載置されると、ローラ57F,57Rやローラ81L,81Rの各ローラを自重で転がしながら連絡経路8をスライドする。連絡経路8のカーブを形成している各ローラ81L,81Rが互いに独立して回転自在に構成されており、また、各ローラ81L,81Rの回転軸が連絡経路8の経路の中心線に対し直角であるため、食器トレイの視点で見ると、食器トレイが各ローラ81L,81Rの上を順に進んでいくに従い、食器トレイに接している各ローラ81L,81Rの回転方向の角度が徐々にコーナーの内側へ向かう方向に変化することになる。食器トレイは、基本的に食器トレイに接しているローラ81L,81Rの回転方向に沿うように進むため、食器トレイに接しているローラ81L,81Rの回転方向の角度が変化すれば、食器トレイの進路もこれに従うことになる。この結果、食器トレイは、コーナーの外側へ向かうことなく、連絡経路8の経路の中心線に寄るよう、コーナーの内側寄りに軌道修正される。その結果、食器トレイは、連絡経路8の傾斜をスムーズに下ってゆき、ベルトコンベア5へ到達することになる。なお、ローラ57F,57Rやローラ81L,81Rは、モータに駆動されるものであってもよい。また、連絡経路8は、カーブを有しない直線状であってもよい。
【0026】
なお、トレイ下降装置41の下部にある昇降機構50は、ローラ57F,57Rの隙間の部分に収まる形態を有し、上下動されてもローラ57F,57Rに干渉しないように形作られた支持板51(本願でいう「支持部材」の一例である)と、支持板51を下側から支持するロッド52、ロッド52の下端にリンク53を介して連結されたプーリ54に連動のクランク58、駆動ベルト55を介してプーリ54を回転させるモータ56を備える。リンク53の下端は、プーリ54と共に回転するクランク58の先端に連結されている
。また、ロッド52は、上下方向に摺動可能なリニアガイドに取り付けられている。よって、プーリ54がモータ56によって回転されると、プーリ54と共に回転するクランク58がロッド52を動かし、ロッド52の上端に固定された支持板51が上下に動く。そして、クランク動作を行うクランク58の上死点において支持板51がローラ57F,57Rよりも上になり、クランク58の下死点において支持板51がローラ57F,57Rよりも下になるよう、ロッド52やクランク58の長さが設計されている。したがって、食器トレイがトレイ下降装置41の最下段において爪46L,46Rに支持されている状態でモータ56が作動し、支持板51がローラ57F,57Rよりも上へ上昇すると、爪46L,46Rに支持されていた食器トレイが支持板51に支持されることになる。また、支持板51がローラ57F,57Rよりも下に位置する状態においては、トレイ下降装置41の下部から連絡経路8へ移動する食器トレイの進行を支持板51が妨げることはない。なお、本実施形態では、リンク53がプーリー54やクランク53を介してモータ56に動かされているが、ロッド52はこのような形態の駆動方式に限定されるものではない。本実施形態は、プーリ54や駆動ベルト55を省略した形態、例えば、リンク53が直交軸モータにより直接動かされる形態であってもよい。
【0027】
図3は、支持板51がローラ57F,57Rよりも上に位置する状態を示した図である。下降機構41Lと下降機構41Rが作動すると、
図3において矢印で示すように、対向する爪46L,46R同士が同じ高さを保ったまま下へ動く。また、昇降機構50が作動すると、支持板51がローラ57F、57Rより上へ移動したり、支持板51がローラ57F、57Rより下へ移動したりする。そして、
図2と
図3とを見比べると判るように、支持板51の昇降と、爪46L,46Rの動きは同期している。すなわち、ストッカ4では、支持板51が上昇してクランク53の上死点に達したタイミングで、トレイ下降装置41の下部にあるプーリ42L,45Lのところで爪46Lが下回りで左側へ向かうように旋回し、トレイ下降装置41の下部にあるプーリ42R,45Rのところで爪46Rが下回りで右側へ向かうように旋回する。よって、食器トレイが爪46L,46Rに載っている場合、支持板51が上昇してクランク53の上死点に達すると、爪46L,46Rに載っている食器トレイが、トレイ下降装置41の下部で支持板51へ乗り移り、その後の支持板51の下降に合わせて下へ下がることになる。
【0028】
図4は、ストッカ4の操作パネル付近を示した図である。ストッカ4には、食器トレイTをセットするスペースが5段分備わっており、食器トレイTの行先を入力するための行先入力パネル4C1~5がストッカ4の正面に設けられている。注文飲食物搬送装置1に備わる図示しない制御装置は、行先入力パネル4C1~5に食器トレイTの行先が入力されると、ストッカ4を作動させて食器トレイTを下降させ、ベルトコンベア5を作動させて食器トレイTを指定の行先へ搬送する。なお、本実施形態のストッカ4には、5つの行先入力パネル4C1~5が設けられているが、ストッカ4は、1つの行先入力パネルで各段の食器トレイTの行先を入力できるものであってもよい。
【0029】
図5は、行先入力パネル4C1の拡大図である。行先入力パネル4C1には、対応する段に設定されている搬送先の情報、及び搬送先の指定等の操作を受け付ける操作ボタン類が設けられている。例えば、行先入力パネル4C1で搬送先の指定操作が行われると、当該指定操作時に行先入力パネル4C1の段にセットされている食器トレイTは、行先入力パネル4C1で指定された搬送先へ搬送される。行先入力パネル4C2~5も行先入力パネル4C1と同様である。ストッカ4が作動することにより、各段にセットされている食器トレイTが1段ずつ下に移ると、各行先入力パネル4C1~5に表示されている搬送先の表示も一段下に移る。なお、
図5では、搬送先が数字キーで指定されるようになっているが、行先入力パネル4C1~5は、実際のテーブル配置をイメージした図を表示し、当該イメージ図で搬送先の指定操作を受け付けるようにしてもよい。
【0030】
以下、注文飲食物搬送装置1の動作について説明する。
図6は、注文飲食物搬送装置1の動作内容を示したフローチャートである。注文飲食物搬送装置1の動作について、
図6に示すフローチャートに沿って説明する。
【0031】
注文飲食物搬送装置1の制御装置は、行先入力パネル4C1~5の何れかで発送ボタンが押下されたことを検知すると、トレイ下降装置41に下降動作を開始させる(S101)。そして、制御装置は、トレイ下降装置41にセットされていた食器トレイTがローラ57F,57Rに載ったか否かの判定を行う(S102)。制御装置は、ステップS102の処理において肯定判定を行った場合、トレイ下降装置41を次段の位置で停止させる(S103)。
次に、制御装置は、ベルトコンベア5を始動する(S104)。そして、制御装置は、ベルトコンベア5によって搬送される食器トレイTが指定の搬送先の客席3へ到着したか否かの判定を行う(S105)。制御装置は、S105の処理で肯定判定を行った場合、ベルトコンベア5を停止する(S106)。また、制御装置は、食器トレイTが到着したことを客へ知らせるための信号を、客席3に設置されている注文端末7へ送信する(S107)。そして、制御装置は、食器トレイTがベルトコンベア5から無くなったか否かの判定処理を行う(S108)。指定された搬送先へ搬送された食器トレイTがベルトコンベア5から取り除かれれば、制御装置は、S108の処理で肯定判定を行う。制御装置は、S108の処理で肯定判定を行った場合、他の食器トレイTがストッカ4に残っているか否かの判定を行い(S109)、残っていないと判定した場合は一連の搬送処理を終える。
【0032】
図7は、ストッカ4内の動作状態の具体例を示した図である。また、
図8は、ベルトコンベア5の動作状態の一例を示した図である。上述したステップS101からステップS109までの一連の処理が実行されることにより、ストッカ4では以下のような動作が実現される。
【0033】
すなわち、
図7(A)に示されるように、ストッカ4に食器トレイTがセットされている状態で発送ボタンが押下されると、注文飲食物搬送装置1の制御装置は、支持板51が1往復だけ昇降動作するようにモータ56を作動させると共に、互いに対向する爪46L,46Rが1段分だけ下へ移動するようにモータ47を一定時間だけ作動させる。また、注文飲食物搬送装置1の制御装置は、ベルトコンベア5を作動させる。すると、
図7(B)に示されるように、ストッカ4内の最下段で爪46L,46Rに支持されていた食器トレイTは、下降する爪46L,46Rから、上昇する支持板51へ乗り移る。そして、支持板51へ乗り移った食器トレイTは、
図7(C)に示されるように、上昇を終えて下降する支持板51によってベルトコンベア57F,57Rへ載せられる。そして、更に下降する支持板51が食器トレイTから離れると、ベルトコンベア57F,57Rに載置された食器トレイTは、
図7(D)に示されるように、自重でベルトコンベア57F,57Rを転がしてベルトコンベア57F,57R上をスライドし、ベルトコンベア57F,57Rから連絡経路8へ移動する。
【0034】
図8(A)に示されるように、ベルトコンベア57F,57Rに載置された食器トレイTは、連絡経路8上をスライドする。そして、食器トレイTは、
図8(B)に示されるように、やがてベルトコンベア5へ乗り移る。ベルトコンベア5へ乗り移った食器トレイTは、
図8(C)に示されるように、指定された搬送先の客席3へ向かって移動する。注文飲食物搬送装置1の制御装置は、ベルトコンベア5へ乗り移った食器トレイTが、指定された搬送先の客席3へ到着したことをセンサで検知すると、ベルトコンベア5を停止すると共に、搬送先の客席3に着席している客に客席3の到着を注文端末7の画面や電子音で知らせる。搬送先の客席3に着席している客は、食器トレイTの到着を認知すると、
図8(D)に示されるように、食器トレイTを手でベルトコンベア5からテーブル6へ移動す
る。
【0035】
上記実施形態の注文飲食物搬送装置1であれば、厨房2で同時期に食器トレイTが複数用意されても、各食器トレイTをストッカ4にセットして各々の行先を設定することができるため、厨房2のスタッフは、食器トレイTを次々に用意することができる。よって、厨房2のスタッフの作業効率を向上させることができる。
【0036】
また、上記実施形態の注文飲食物搬送装置1では、上面視略長方形の食器トレイTを食器トレイTの両短辺側から一対の爪46L,46Rで支持している。よって、食器トレイTを、例えば、食器トレイTの四隅或いは食器トレイTの両長辺側から一対の爪で支持する場合に比べると、食器トレイTに接触する部分の範囲を抑制することができる。その理由は、例えば、食器トレイTの四隅に設けた爪で食器トレイTを支持する形態において、大小様々な大きさの食器トレイTに対応可能にする場合、食器トレイTの四隅に設けられる爪は、食器トレイTの長辺の長さのバリエーションと短辺の長さのバリエーションの両方に対応する必要があり、爪をある程度大きいものにする必要がある。また、例えば、食器トレイTの両長辺側から一対の爪で支持する形態においては、食器トレイTに載る食器の状態によって変動する食器トレイTの様々な重心位置に対応するため、食器トレイTの長辺の中心から比較的広い範囲を爪で支持する必要がある。この点、上記実施形態の注文飲食物搬送装置1のように、食器トレイTの両短辺から一対の爪46L,46Rで食器トレイTを支持する形態であれば、食器トレイTの短辺方向沿いにおける重心位置の変動範囲が、食器トレイTの長辺方向沿いにおける重心位置の変動範囲に比べて狭いため、食器トレイTを支持する爪46L,46Rの接触部分の範囲は、食器トレイTの四隅或いは食器トレイTの両長辺側から一対の爪で支持する場合よりも小さくすることができる。食器トレイTを支持する爪46L,46Rが小さくなれば、ストッカ4全体の構成もより簡略化可能となる。但し、本願で開示する飲食物搬送装置は、このように食器トレイTを食器トレイTの両短辺側から一対の爪46L,46Rで支持する形態に限定されるものでなく、例えば、食器トレイTを食器トレイTの両長辺側から一対の爪で支持することも可能である。
【0037】
また、上記実施形態の注文飲食物搬送装置1では、ストッカ4が1台だけであったが、例えば、ストッカ4が複数台設けられていてもよい。この場合、ストッカ4は、連絡経路8が形成する1つの進路上に直列に並んでいてもよいし、或いは、連絡経路8が形成する複数の分岐経路に各々設けられていてもよい。
【0038】
また、上記実施形態の注文飲食物搬送装置1では、ベルトコンベア5が1台だけであったが、例えば、ベルトコンベア5が並列に複数設けられており、各ベルトコンベア5から繰り出される食器トレイTが各ベルトコンベア5で共用のストッカ4へ搬送される形態であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、客の注文を受けて用意された飲食物のトレイをストッカ4にストックして搬送する形態を採っていたが、注文飲食物搬送装置1は、注文を受けずに用意された飲食物のトレイを、厨房から客席へ至る搬送路で搬送するものであってもよい。この場合、当該搬送路は、例えば、飲食物のトレイを循環させる循環搬送路であることが好ましい。
【0040】
また、上記実施形態のストッカ4では、爪46L,46Rが昇降ベルト43L,43R,44L,44Rで動いていたが、爪46L,46Rは、ベルト以外の機械要素を使って動いてもよい。ベルト以外の機械要素としては、例えば、ワイヤ、チェーン、ボールねじ、その他各種のものが挙げられる。
【0041】
また、上記実施形態のストッカ4は、使用済みの食器が載った食器トレイをストックする機能を有していてもよい。この場合、使用済みの食器が載った食器トレイは、ベルトコンベア5に載置され、ベルトコンベア5からストッカ4へ移送されることになるため、トレイ下降装置41は逆方向の動作、すなわち、ベルトコンベア5からストッカ4の下部へ移送された食器トレイをベルトコンベア57F,57R上で支持板51に突き上げさせ、支持板51に突き上げさせた食器トレイをトレイ下降装置41の下段側から上段側へ向かって上昇させることになる。また、この場合、連絡経路8には、ストッカ4からベルトコンベア5への食器トレイの移動とベルトコンベア5からストッカ4への食器トレイの移動の両方を実現するべく、連絡経路81L,81Rを回転させる駆動機構を設けることになる。
【0042】
使用済みの食器が載った食器トレイをストックする機能をストッカ4に設ける場合、注文飲食物搬送装置1には、厨房2に設けられたストッカ4の他に、例えば、ベルトコンベア5の客席エリア側の端部にもストッカ4を設けてもよい。ベルトコンベア5の客席エリア側の端部に設けられるストッカ4は、使用済みの食器が載った食器トレイのストックをする機能のみを担うことになる。注文飲食物搬送装置1がこのような形態であれば、使用済みの食器が載った食器トレイを客席エリア側の端部にあるストッカ4に一旦ストックした後、厨房2にあるストッカ4へ移送してストックし直すことも可能である。
【符号の説明】
【0043】
T・・食器トレイ
1・・注文飲食物搬送装置
2・・厨房
3・・客席
4・・ストッカ
4C1~5・・行先入力パネル
5・・ベルトコンベア
6・・テーブル
7・・注文端末
8・・連絡経路
41・・トレイ下降装置
41L,41R・・下降機構
42L,42R,45L,45R,48,54・・プーリ
43L,43R,44L,44R・・昇降ベルト
46L,46R・・爪
47・・モータ
49A,49B,55・・駆動ベルト
50・・昇降機構
51・・支持板
52・・ロッド
53・・リンク
56・・モータ
57F,57R,81L,81R・・ローラ
58・・クランク