IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テクニカ合同株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社中部シー・アイ・アイの特許一覧

特許7103608未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20220712BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20220712BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20220712BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220712BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220712BHJP
   E01C 5/06 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B28C7/04
B28C5/42
C04B22/10
C04B24/26 D
C04B28/02
E01C5/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020216792
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022039897
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2020143655
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用 令和2年10月26日カタログ「コンバラス」にて発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511123429
【氏名又は名称】テクニカ合同株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520328947
【氏名又は名称】株式会社中部シー・アイ・アイ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洋克
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秋浩
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024919(JP,A)
【文献】特開2010-036178(JP,A)
【文献】登録実用新案第3147832(JP,U)
【文献】国際公開第2018/224523(WO,A1)
【文献】特開2019-044054(JP,A)
【文献】特開2017-124569(JP,A)
【文献】特開2005-313581(JP,A)
【文献】特開2014-181147(JP,A)
【文献】JISハンドブック 非鉄 1979 ,第1版,p.734
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
C04B103/00-111/94
E01C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未使用のスラリー状の生コンクリートに、粒径が50メッシュパス又はそれ以下の粒径の粉末状の高分子凝集剤を、0.3~1.3kg/m の割合で、当該高分子凝集剤に炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー、ベントナイト、ゼオライトから選ばれた粉末材料のみを含有させた状態で、添加、混合し、高分子凝集剤の凝集作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化することを特徴とする未使用生コンクリートを用いた再生クラッシャランの製造方法。
【請求項2】
前記粒径が50メッシュパス又はそれ以下の粒径の粉末状の高分子凝集剤を、前記粉末材料のみを含有させた状態で、スラリー状の生コンクリートによって溶解する袋に封入した状態で、スラリー状の生コンクリートが残留するアジテータ車のドラム内又は生コンクリート製造工場のミキサー内に投入するようにすることを特徴とする請求項に記載の未使用生コンクリートを用いた再生クラッシャランの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生コンクリート製造工場で製造された生コンクリートは、アジテータ車によって工事現場へ搬送されるが、一般に工事現場では生コンクリートの量に余裕を持たせて多めに発注することから、余剰分として残ってしまい、一部未使用のまま戻されたり(本明細書において、「残コン」という。)、荷下ろし検査に不合格となって使用されないまま戻されたり(本明細書において、「戻りコン」という。)する場合がある。
また、生コンクリート製造工場で製造された生コンクリートについても、出荷されずに未使用となるものがある。
そして、このような未使用の生コンクリート(本明細書において、「未使用生コンクリート」という。)は、通常、硬化する前にアジテータ車のドラムや生コンクリート製造工場のミキサーから排出され、産業廃棄物として廃棄処理されている。
【0003】
このようにして産業廃棄物として廃棄処理される未使用生コンクリートの割合は、建設工事現場等で使用される生コンクリートのうちの1~2%、年間で150~200万mに上るといわれており、資源の無駄使い、処理コスト、産業廃棄物処理場等の点で問題視されていた。
【0004】
また、未使用生コンクリートは、アジテータ車のドラムや生コンクリート製造工場のミキサーから硬化する前に排出する必要があるが、排出場所の制約等によって、未使用生コンクリートがドラムやミキサー内で硬化を開始する問題があり、その対処方法が要請されていた。
【0005】
この問題に対処するために、未使用のスラリー状の生コンクリートに、吸水性高分子重合体を添加、混合し、吸水性高分子重合体の吸水作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化する未使用生コンクリートの処理方法が提案されている(必要があれば、例えば、特許文献1~2参照。)。
【0006】
ところで、未使用生コンクリートの処理に、吸水性高分子重合体を用いた場合、吸水性高分子重合体が未使用生コンクリート中の水を吸収して体積が膨張し、立体網目状構造を有するゲルを形成するとともに、その網目状構造とセメントペーストとが絡み合い、網目構造の中に砂や砂利等の骨材が取り込まれ、さらに、撹拌することによって、網目構造が骨材を核として成長し造粒されて、団子状の造粒体が形成される。
しかしながら、この方法によって得られた造粒体は、立体網目状構造を有するゲルを骨格構造としているため、保水性が高く、乾燥しにくく、安定的な構造体になりにくいという問題があった。
【0007】
この問題に対処するために、未使用のスラリー状の生コンクリートに、高分子凝集剤を添加、混合し、高分子凝集剤の凝集作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化する未使用生コンクリートの処理方法が提案されている(必要があれば、例えば、特許文献3~5参照。)。
【0008】
ところで、未使用生コンクリートの処理に、高分子凝集剤を用いる方法は、吸水性高分子重合体を用いる方法の上記問題点を解決できるものであるが、一般的には顆粒状である高分子凝集剤を用いる場合、未使用生コンクリートに対する分散性が悪く、このため、未使用生コンクリートの処理に時間を要したり、多量の高分子凝集剤を用いる必要があり、経済性の点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-62943号公報
【文献】実用新案登録第3147832号公報
【文献】特開2017-124569号公報
【文献】特開2005-313581号公報
【文献】特開2014-181147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の未使用生コンクリートの処理に関する問題点に鑑み、未使用生コンクリートを、処理コストをかけることなく、任意の場所で、再資源化でき、かつ、安定的な構造体からなる造粒体を得ることができる未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法は、未使用のスラリー状の生コンクリートに、粒径が50メッシュパス又はそれ以下の粒径の粉末状の高分子凝集剤を添加、混合し、高分子凝集剤の凝集作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化することを特徴とする。
【0012】
この場合において、前記高分子凝集剤が、無機系粉末材料からなる分散剤を含有してなるようにすることができる。
【0013】
また、前記高分子凝集剤をスラリー状の生コンクリートによって溶解する袋に封入した状態で、スラリー状の生コンクリートが残留するアジテータ車のドラム内又は生コンクリート製造工場のミキサー内に投入するようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法によれば、高分子凝集剤の未使用生コンクリートに対する分散性が良好で、未使用生コンクリートの処理を短時間で、少量の高分子凝集剤を用いて行うことが可能となり、これにより、未使用生コンクリートを、処理コストをかけることなく、任意の場所で、再資源化することでき、かつ、安定的な構造体からなる造粒体を得ることができ、従来の未使用生コンクリートの処理にあった多くの問題点を一挙に解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法の実施の形態を説明する。
【0016】
本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法は、未使用のスラリー状の生コンクリートに、高分子凝集剤を添加、混合し、高分子凝集剤の凝集作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化するようにしたものである。
これにより、放置すれば、硬化してコンクリート塊になる未使用生コンクリートを、粒状の再生材として再資源化することができる。
【0017】
ここで、高分子凝集剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性のいずれの高分子凝集剤を用いることができるが、特に、環境に与える影響等の点で、アニオン性高分子凝集剤を好適に用いることができる。
また、その形態(固体、液体等)には制約はないが、粉末状の高分子凝集剤を好適に用いることができる。
高分子凝集剤として、具体的には、例えば、アニオン性高分子凝集剤としては、以下の(A)~(B)の物質を、カチオン性高分子凝集剤としては、以下の(C)~(D)の物質を、それぞれ単独又は複数を混合したものを用いることができる。
(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体)
(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体)
(C)アルキルアミノアクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体)
(D)アルキルアミノメタクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体)
【0018】
アニオン性高分子凝集剤の重量平均分子量は、1000万~2500万、好ましくは、1300万~2200万である。1000万より低かったり、2500万より高かったりすると安定的な構造体からなる造粒体を得ることが困難となる。
【0019】
アニオン性高分子凝集剤は、粒径が50メッシュパス又はそれ以下の粒径(例えば、100メッシュパスや150メッシュパス)の粉末状のものである。粒径が50メッシュパスより大きい粒径のものを多く含むものは、未使用生コンクリートに対する分散性が悪く、このため、未使用生コンクリートの処理に時間を要したり、多量の高分子凝集剤を用いる必要があり、経済性の点で問題がある。
ここで、アニオン性高分子凝集剤は、一般的には顆粒状のため、これを粉砕、篩い分けすることで粒径が50メッシュパス又はそれ以下の粒径の粉末状に調製するが、調製方法は、これに限定されない。
【0020】
この場合において、(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のポリカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、等を挙げることができる。
また、(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のポリスルホン酸としては、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等を挙げることができる。
また、(C)アルキルアミノアクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のアルキルアミノアクリレート塩重合体としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイル2-ヒドロキシプロピルリド等を挙げることができる。
また、(D)アルキルアミノメタクリレート塩重合体物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のアルキルアミノメタクリレート塩重合体としては、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイル2-ヒドロキシプロピルリド等を挙げることができる。
【0021】
高分子凝集剤に含有させる分散剤は、未使用のスラリー状の生コンクリートに、高分子凝集剤を添加、混合した際に、高分子凝集剤が、「ダマ」にならずに、生コンクリートに均一に混合されるようにするために、必要に応じて含有させることができ、炭酸カルシウム等の無機塩類、酸化チタン、カオリン、クレー、ベントナイト、ゼオライト等の無機系粉末材料を好適に用いることができる。
【0022】
高分子凝集剤及び必要に応じて含有させる分散剤は、例えば、スラリー状の生コンクリートによって溶解する袋、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性プラスチック製の袋に封入した状態で、スラリー状の生コンクリートが残留するアジテータ車のドラム内又は生コンクリート製造工場のミキサー内に投入し、稼働させることで、そのまま添加、混合ようにすることができる。
【0023】
このほか、高分子凝集剤及び必要に応じて含有させる分散剤は、適当な混合容器やパレットにあけたスラリー状の生コンクリートを、撹拌ミキサー等の混練機やバックホウー等の土木機械を用いて混合することもできる。
【0024】
ところで、未使用生コンクリートの処理に、高分子凝集剤を用いた場合、高分子凝集剤が、サブミクロンレベルのフロックを形成し、これらが吸着することで、フロック同士の隙間の架橋を促進させ、これにより、粒子が互いに近づくと、凝集のエネルギ障壁が減少するためファンデルワールス力の有効範囲が広がり、緩やかな塊としてのフロックが形成され、撹拌することによって、骨材を核として成長し造粒されて、団子状の造粒体が形成される。
このとき、未使用生コンクリート中の水は、高分子凝集剤の分子間に取り込まれるが、この水は強く捕らえられていて、圧力をかけても離脱することはなく、その一方で、保水性が低く、乾燥しやすいため、吸水性高分子重合体を用いた場合と比較して、強度のある安定的な構造体からなる造粒体を得ることができる。
【0025】
以下、本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法を、実証試験(1)~(2)に基づいて説明する。
【0026】
[実証試験(1)]
本実証試験では、高分子凝集剤として、重量平均分子量が1600万~2200万の範囲のアニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤(テクニカ合同社製「ウォーターフロックP A046(S)」(商品名)、剤形:顆粒状)を、粉砕、篩い分けした、粒径が50メッシュパスの粉末状(実施例)のものを用い、無機系粉末材料からなる分散剤として、無機塩類である炭酸カルシウムを用いて、未使用生コンクリートの改質を行った。
【0027】
試験材料には、生コンクリート(JIS規格品)を使用し、再生クラッシャランの粒度範囲の規格が篩通過率20mm以下(RC-20)となるため、本試験判断基準(造粒化基準)として、完全乾燥後(高分子凝集剤及び必要に応じて含有させる分散剤を添加、混合してから48時間後)に解した材料の20mm通過率を下に評価した。
実証試験(1)の結果を、表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
[実証試験(2)]
本実証試験では、高分子凝集剤として、重量平均分子量が1600万~2200万の範囲のアニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤(テクニカ合同社製「ウォーターフロックP A046(S)」(商品名)、剤形:顆粒状)(比較例)と、これを、粉砕、篩い分けした、粒径が50メッシュパスの粉末状(実施例)のものを用い、無機系粉末材料からなる分散剤として、無機塩類である炭酸カルシウムを用いて、以下の内容で、未使用生コンクリートの改質を行った。
【0030】
[試験条件]
・使用ミキサー:傾胴ミキサー50L
・練り混ぜ量:20L
・撹拌時間:60秒
・配合:21-21-20N(21-18-20Nの加水後)(配合割合の詳細を表2に示す。)
【0031】
【表2】
【0032】
[確認項目]
・撹拌開始から反応完了までの時間
・改質直後の分離性(粗骨材に付着する微粒子、造粒状態を確認)
・固化後の粉砕性、分離性(改質後、厚さ10cmのテストピースを作成し、翌日ハンマーを20回落下させ粉砕の容易性、固化後の分離性を確認)
・篩い分け(粗骨材の最大寸法が20mmであるため、表3に示す、RC-20の基準値に従い行う。〇:一致、△:80%一致、×:80%未満)
【0033】
【表3】
【0034】
実証試験(2)の結果を、表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表1及び表4の試験結果により、粒径が50メッシュパスの粉末状の高分子凝集剤(実施例)(粒径が50メッシュパス以下の粒径(例えば、100メッシュパスや150メッシュパス)のものも同様。)や、この高分子凝集剤に無機系粉末材料(無機塩類である炭酸カルシウム)からなる分散剤を添加したもの(実施例)は、顆粒状(比較例)のものと比較して、高分子凝集剤の未使用生コンクリートに対する分散性が良好で、未使用生コンクリートの処理を短時間で、少量の高分子凝集剤を用いて行うことが可能となることを確認した。
【0037】
以上、本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法について、その実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法は、未使用生コンクリートを、処理コストをかけることなく、任意の場所で、再資源化することでき、かつ、安定的な構造体からなる造粒体を得ることができる、従来の未使用生コンクリートの処理にあった多くの問題点を一挙に解消することができることから、未使用生コンクリート、具体的には、残コンや戻りコンのほか、生コンクリート製造工場で製造され、出荷されずに未使用となった生コンクリートの有効利用に好適に供することができる。