(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】エアロゾル化可能材料を加熱する装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20220712BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20220712BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F47/00
H05B6/10 371
(21)【出願番号】P 2020526243
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2018085684
(87)【国際公開番号】W WO2019129552
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-07-13
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】ホロド, マーティン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト, ジュリアン ダーリン
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/068094(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106617325(CN,A)
【文献】特表2017-515490(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103783668(CN,A)
【文献】国際公開第2018/178095(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110049586(CN,A)
【文献】中国実用新案第207939775(CN,U)
【文献】中国実用新案第207733013(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であって、
エアロゾル化可能材料を含む1つ又は複数の物品を受容する加熱ゾーンと、
変動磁場の侵入による加熱によって前記加熱ゾーンを加熱可能な加熱材料を含む加熱要素であり、前記加熱ゾーンに囲まれた、加熱要素と、
使用中に前記加熱要素の各長手方向部に侵入する変動磁場を生成する磁場生成器であり、前記加熱ゾーンの長手方向軸に沿って順次、各平面において配置された導電性材料の複数の平坦螺旋コイルを備えた、磁場生成器と、
を備えた、装置。
【請求項2】
前記加熱要素が、前記加熱ゾーンの長手方向軸と平行又は同軸に延びた、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記加熱要素が、管状である、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記加熱要素が、耐熱支持部及び前記支持部上の被膜を備え、前記被膜が、前記加熱材料を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記被膜の前記加熱材料が、強磁性材料である、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記強磁性材料が、ニッケル又はコバルトを含む、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記加熱要素が、
変動磁場の侵入により加熱可能な前記加熱材料を含み、壁厚が1ミリメートル以下であり、
内径又は内側寸法が、0.1ミリメートル~2.1ミリメートルである、管状加熱要素を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記加熱ゾーンに対して前記加熱要素を適所に保持するとともに、使用中に空気が前記加熱ゾーンに進入し得る少なくとも1つの空気入口を規定する本体を備えた、
請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記加熱要素が、取り外し可能である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記加熱要素及び前記本体の組合せが取り外し可能である、
請求項8に従属する場合の
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記平面が、互いに実質的に平行である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記加熱ゾーンが、前記複数の平坦螺旋コイルそれぞれの孔を通って延びた、
請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記平坦螺旋コイルの前記孔にエアロゾル化可能材料を含む物品を支持する細長支持部を備えた、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記細長支持部が、管状であり、前記加熱ゾーンを囲む、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記細長支持部が、非透磁性及び/又は非導電性である、
請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
タバコ加熱製品である、
請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記加熱材料が、導電性材料、磁性材料、及び磁気導電性材料から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む
、請求項1~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記加熱材料が、金属又は合金を含む
、請求項1~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記加熱材料が、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性カーボン、グラファイト、鋼、普通炭素鋼、軟鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、銅、及び青銅から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む
、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の装置と、
エアロゾル化可能材料を含み、前記装置の前記加熱ゾーンに存在する物品と、
を備えた、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられる管状加熱要素と、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置と、このような装置及びエアロゾル化可能材料を含む物品を備えたシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ、葉巻タバコ等の喫煙品は、使用中にタバコを燃焼させて、タバコ煙を生成する。燃焼なしに化合物を放出する製品の創出によって、これらの物品の代替物を提供しようとする試みがなされている。このような製品の例は、いわゆる「非燃焼加熱式」製品又はタバコ加熱デバイス若しくは製品であり、材料を燃焼させずに加熱することによって化合物を放出する。この材料は、例えばタバコ又は他の非タバコ製品が考えられ、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられる管状加熱要素であって、変動磁場の侵入により加熱可能な加熱材料を含み、壁厚が1ミリメートル以下である、管状加熱要素を提供する。
【0004】
例示的な一実施形態において、壁厚は、0.5ミリメートル以下である。例示的な一実施形態において、壁厚は、0.3ミリメートル以下である。例示的な一実施形態において、壁厚は、少なくとも0.05ミリメートルである。
【0005】
例示的な一実施形態において、管状加熱要素の外径又は外側寸法は、5ミリメートル以下である。例示的な一実施形態において、外径又は外側寸法は、2.4ミリメートル以下である。例示的な一実施形態において、外径又は外側寸法は、少なくとも0.3ミリメートルである。
【0006】
例示的な一実施形態において、管状加熱要素の内径又は内側寸法は、少なくとも0.1ミリメートルである。例示的な一実施形態において、内径又は内側寸法は、少なくとも0.19ミリメートルである。例示的な一実施形態において、内径又は内側寸法は、2.1ミリメートル以下である。
【0007】
例示的な一実施形態において、管状加熱要素は、耐熱支持部及び支持部上の被膜を備え、被膜は、加熱材料を含む。例示的な一実施形態において、被膜は、支持部の半径方向外方に位置付けられる。
【0008】
本発明の第2の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられる管状加熱要素であって、耐熱支持部及び支持部上の被膜を備え、被膜が、変動磁場の侵入により加熱可能な加熱材料を含み、被膜が、支持部の半径方向外方に位置付けられた、管状加熱要素を提供する。
【0009】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、被膜は、厚さが50ミクロン以下である。例示的な一実施形態において、被膜は、厚さが20ミクロン以下である。
【0010】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、被膜は、環状である。
【0011】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、被膜の加熱材料は、強磁性材料である。例示的な一実施形態において、強磁性材料は、ニッケル又はコバルトを含む。
【0012】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、管状加熱要素は、耐熱支持部の半径方向内方に加熱材料を含む被膜がない。
【0013】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、支持部は、金属、合金、セラミック材料、及びプラスチック材料から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む。
【0014】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、管状加熱要素は、耐熱保護被膜を備え、加熱材料を含む被膜は、支持部と耐熱保護被膜との間に位置付けられる。
【0015】
例示的な一実施形態において、加熱材料を含む被膜は、封入されている。例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜及び支持部は、加熱材料を含む被膜を一体的に封入している。例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜は、支持部及び加熱材料を含む被膜を封入している。
【0016】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜は、セラミック材料、金属窒化物、窒化チタン、及びダイヤモンドから成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む。
【0017】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜は、厚さが50ミクロン以下である。例示的な一実施形態において、耐熱保護被膜は、厚さが20ミクロン以下である。
【0018】
第1又は第2の態様の管状加熱要素の例示的な一実施形態において、管状加熱要素は、ニードルを備える。
【0019】
本発明の第3の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であって、エアロゾル化可能材料を含む1つ又は複数の物品を受容する加熱ゾーンと、変動磁場の侵入による加熱によって加熱ゾーンを加熱可能な加熱材料を含む加熱要素であり、加熱ゾーンに囲まれた、加熱要素と、使用中に加熱要素の各長手方向部に侵入する変動磁場を生成する磁場生成器であり、加熱ゾーンの長手方向軸に沿って順次、各平面において配置された導電性材料の複数の平坦螺旋コイルを備えた、磁場生成器と、を備えた、装置を提供する。
【0020】
例示的な一実施形態において、加熱要素は、加熱ゾーンの長手方向軸と平行又は同軸に延びている。
【0021】
例示的な一実施形態において、加熱要素は、管状である。
【0022】
例示的な一実施形態において、加熱要素は、ニードルを備える。
【0023】
例示的な一実施形態において、加熱要素は、耐熱支持部及び支持部上の被膜を備え、被膜は、加熱材料を含む。例示的な一実施形態において、被膜の加熱材料は、強磁性材料である。例示的な一実施形態において、強磁性材料は、ニッケル又はコバルトを含む。例示的な一実施形態において、被膜は、支持部の半径方向外方に位置付けられる。
【0024】
例示的な一実施形態において、この装置の加熱要素は、本発明の第1の態様の管状加熱要素又は本発明の第2の態様の管状加熱要素を備える。
【0025】
例示的な一実施形態において、この装置は、加熱ゾーンに対して加熱要素を適所に保持するとともに、使用中に空気が加熱ゾーンに進入し得る少なくとも1つの空気入口を規定する本体を備える。
【0026】
例示的な一実施形態において、加熱要素は、この装置から取り外し可能である。例示的な一実施形態においては、加熱要素及び本体の組合せがこの装置から取り外し可能である。
【0027】
例示的な一実施形態において、平面は、互いに実質的に平行である。
【0028】
例示的な一実施形態において、加熱ゾーンは、複数の平坦螺旋コイルそれぞれの孔を通って延びている。
【0029】
例示的な一実施形態において、この装置は、平坦螺旋コイルの孔にエアロゾル化可能材料を含む物品を支持する細長支持部を備える。例示的な一実施形態において、細長支持部は、管状であり、加熱ゾーンを囲む。例示的な一実施形態において、細長支持部は、非透磁性及び/又は非導電性である。
【0030】
例示的な一実施形態において、この装置は、平坦螺旋コイルのうちの少なくとも1つの動作を他の少なくとも1つの平坦螺旋コイルとは独立に制御する制御装置を備える。
【0031】
例示的な一実施形態において、この装置は、タバコ加熱製品である。
【0032】
第1若しくは第2の態様の管状加熱要素又は第3の態様の装置の例示的な一実施形態において、加熱材料は、導電性材料、磁性材料、及び磁気導電性材料から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む。例示的な一実施形態において、加熱材料は、金属又は合金を含む。例示的な一実施形態において、加熱材料は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性カーボン、グラファイト、鋼、普通炭素鋼、軟鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、銅、及び青銅から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含む。
【0033】
本発明の第4の態様は、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、本発明の第3の態様の装置と、エアロゾル化可能材料を含み、装置の加熱ゾーンに存在する物品と、を備えた、システムを提供する。
【0034】
例示的な一実施形態において、エアロゾル化可能材料は、タバコ並びに/又は1つ若しくは複数の保湿剤を含む。
【0035】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、これらは一例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられる管状加熱要素の一例の模式側断面図である。
【
図2】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられる別の管状加熱要素の一例の模式側断面図である。
【
図3】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられる別の管状加熱要素の一例の模式側断面図である。
【
図4】エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置と、エアロゾル化可能材料を含み、装置の加熱ゾーンに存在する物品とを備えたシステムの一例の模式側断面図である。
【
図5】
図4に示す装置の誘導コイル構成体の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書において、用語「エアロゾル化可能材料(aerosolisable material)」は、通常は蒸気又はエアロゾルの形態で、加熱時に揮発成分を与える材料を含む。「エアロゾル化可能材料」は、非タバコ含有材料であってもよいし、タバコ含有材料であってもよい。「エアロゾル化可能材料」としては、例えば、タバコそれ自体、タバコ派生物、拡張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコ、及びタバコ代替品のうちの1つ又は複数が挙げられる。エアロゾル化可能材料としては、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生エアロゾル化可能材料、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊等の形態が可能である。また、「エアロゾル化可能材料」としては、他の非タバコ製品も挙げられ、製品によっては、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「エアロゾル化可能材料」には、グリセロール又はプロピレングリコール等の1つ又は複数の保湿剤を含んでいてもよい。
【0038】
本明細書において、用語「加熱材料(heating material又はheater material)」は、変動磁場の侵入により加熱可能な材料を表す。
【0039】
誘導加熱は、物体への変動磁場の侵入によって導電性物体が加熱されるプロセスである。このプロセスは、ファラデーの誘導の法則及びオームの法則によって記述される。誘導加熱器は、電磁石と、交流電流等の変動電流を電磁石に通過させるデバイスとを備えていてもよい。電磁石及び加熱対象の物体が好適に、電磁石により生成される結果としての変動磁場が物体に侵入するように相対位置決めされると、物体の内側には、1つ又は複数の渦電流が生成される。物体は、電流の流れに対する抵抗を有する。したがって、物体中にこのような渦電流が生成されると、その物体の電気抵抗に対する流れによって、物体が加熱される。このプロセスは、ジュール加熱、オーム加熱、又は抵抗加熱と称する。誘導加熱可能な物体は、サセプタとして知られている。
【0040】
サセプタが閉回路の形態である場合は、使用中のサセプタと電磁石との磁気結合が増強されて、ジュール加熱が増大又は向上することが分かっている。
【0041】
磁気ヒステリシス加熱は、物体への変動磁場の侵入によって、磁性材料で構成された物体が加熱されるプロセスである。磁性材料は、多くの原子スケールの磁石すなわち磁気双極子を含むものと考えられ得る。磁場がこのような材料に侵入すると、磁気双極子が磁場と一致する。したがって、例えば電磁石が生成するような交番磁場等の変動磁場が磁性材料に侵入すると、変動磁場の印加に伴って、磁気双極子の配向が変化する。このような磁気双極子の再配向によって、磁性材料中に熱が発生する。
【0042】
物体が導電性且つ磁性の両方である場合は、物体への変動磁場の侵入によって、ジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱の両方が物体中に生じ得る。さらに、磁性材料の使用により磁場が強くなり得るため、ジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱が増大され得る。
【0043】
上記プロセスのそれぞれにおいては、外部熱源からの伝熱ではなく、物体自体の内側で熱が発生するため、特に、好適な物体材料及び形状並びに好適な変動磁場の大きさ及び物体に対する配向の選択によって、物体中の急速な昇温及びより均等な熱分布が実現され得る。さらに、誘導加熱及び磁気ヒステリシス加熱では、変動磁場源と物体との物理的な接続が不要であるため、加熱プロファイルの設計自由度及び制御が増すとともに、コストが低下する可能性がある。
【0044】
図1を参照して、この図は、本発明の一実施形態に係る、管状加熱要素の一例の模式側断面図である。管状加熱要素1は、
図4に示すとともに以下に説明する装置100等、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられるものである。
【0045】
管状加熱要素1は、変動磁場の侵入により加熱可能な加熱材料1bを含む。本実施形態等のいくつかの実施形態において、管状加熱要素1は、加熱材料1bから成る。加熱材料1bは、ステンレス鋼等、本明細書に記載の材料のいずれであってもよい。
【0046】
本実施形態において、加熱要素1bは、実質的に円形の断面を有する実質的な円筒状であるが、他の実施形態においては、加熱要素1bは、長円又は楕円断面を有していてもよい。いくつかの実施形態において、加熱要素1bは、例えば多角形状、四角形状、長方形状、正方形状、三角形状、星形状、又は不規則な断面を有していてもよい。
【0047】
本実施形態において、加熱要素1bは、細長であり、長手方向軸A-Aを有する。他の実施形態において、加熱要素1bは、細長でなくてもよい。このような他のいくつかの実施形態においても、加熱要素1bは依然として、当該加熱要素1bの断面に垂直な軸方向A-Aを有する。
【0048】
加熱要素1bは、中空の内側領域1iと、当該加熱要素1bの内径IDと外径ODとの間(又は、軸方向A-Aに垂直な寸法間)で測定される壁厚Tとを有する。本実施形態の管状加熱要素1は、壁厚Tがおよそ0.13ミリメートルである。他の実施形態において、壁厚Tは、これ以外であってもよい。いくつかの実施形態において、壁厚Tは、1ミリメートル以下、好ましくは0.5ミリメートル以下、より好ましくは0.3ミリメートル以下である。いくつかの実施形態において、壁厚Tは、少なくとも0.05ミリメートルである。壁厚Tは、0.05ミリメートル~0.3ミリメートルであるのが最も好ましい。
【0049】
本実施形態の管状加熱要素1は、外径又は外側寸法ODがおよそ1.65ミリメートルである。他の実施形態において、外径又は外側寸法ODは、これ以外であってもよい。いくつかの実施形態において、外径又は外側寸法ODは、5ミリメートル以下、好ましくは2.4ミリメートル以下である。いくつかの実施形態において、外径又は外側寸法ODは、少なくとも0.3ミリメートルである。外径又は外側寸法ODは、0.3ミリメートル~5ミリメートルであるのが最も好ましい。
【0050】
本実施形態の管状加熱要素1は、内径又は内側寸法IDがおよそ1.39ミリメートルである。他の実施形態において、内径又は内側寸法IDは、これ以外であってもよい。いくつかの実施形態において、内径又は内側寸法IDは、少なくとも0.1ミリメートル、好ましくは少なくとも0.19ミリメートルである。いくつかの実施形態において、内径又は内側寸法IDは、2.1ミリメートル以下である。内径又は内側寸法IDは、0.1ミリメートル~2.1ミリメートルであるのが最も好ましい。
【0051】
図2は、本発明の一実施形態に係る、別の管状加熱要素の一例の模式側断面図である。この場合も、管状加熱要素2は、
図4に示すとともに以下に説明する装置100等、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられるものである。
【0052】
図2の加熱要素2は、耐熱支持部2aと、支持部2a上に位置付けられた加熱材料を含む被膜2bと、加熱材料を含む被膜2bが支持部2aとの間に位置付けられるように配置された耐熱保護被膜2cとを備える。この場合も、加熱材料は、変動磁場の侵入により加熱可能である。
【0053】
本実施形態において、加熱要素2は、実質的に円形の断面を有する実質的な円筒状であるが、他の実施形態においては、長円又は楕円断面を有していてもよい。いくつかの実施形態において、加熱要素2は、例えば多角形状、四角形状、長方形状、正方形状、三角形状、星形状、又は不規則な断面を有していてもよい。
【0054】
本実施形態において、加熱要素2は、細長であり、長手方向軸A-Aを有する。他の実施形態において、加熱要素2は、細長でなくてもよい。このような他のいくつかの実施形態においても、加熱要素2は依然として、当該加熱要素2の断面に垂直な軸方向A-Aを有する。
【0055】
加熱要素2は、中空の内側領域2iと、当該加熱要素2の内径IDと外径ODとの間(又は、軸方向A-Aに垂直な寸法間)で測定される壁厚Tとを有する。いくつかの実施形態において、壁厚Tは、0.5ミリメートル以下又は0.3ミリメートル以下等、1ミリメートル以下である。いくつかの実施形態において、外径又は外側寸法ODは、0.3ミリメートル~5ミリメートルである。いくつかの実施形態において、内径又は内側寸法IDは、0.1ミリメートル~2.1ミリメートルである。
【0056】
本実施形態の耐熱支持部2aは、管状である。本実施形態の耐熱支持部2aは、鋼、より具体的にはステンレス鋼を含む。ただし、他の実施形態において、耐熱支持部2aは、例えば金属、合金、セラミック材料、及びプラスチック材料から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、耐熱支持部2aは、鋼、軟鋼、アルミニウム、銅、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)若しくはカプトン等の高温ポリマーを含んでいてもよい。
【0057】
加熱材料を含む被膜2bは、支持部2a上の層又は被膜2bである。本実施形態において、被膜2bは、コバルトを含む。ただし、他の実施形態において、被膜2bは、ニッケル等、コバルト以外の加熱材料を含むことも可能である。ただし、被膜2bの加熱材料は、強磁性材料であるのが好ましい。
【0058】
本実施形態において、被膜2bは、支持部2aの半径方向外方に位置付けられる。すなわち、被膜2bは、耐熱支持部2aの外側にある。さらに、本実施形態において、耐熱支持部2aの半径方向内方対向面には、加熱材料を含む被膜がない。他の実施形態においては、耐熱支持部2aの半径方向外方の追加又は代替として、耐熱支持部2aの半径方向内方に、加熱材料(強磁性材料(例えば、コバルト又はニッケル)等)を含む被膜が設けられていてもよい。ただし、このような被膜が半径方向外方の追加として半径方向内方に設けられている場合は、加熱要素2の熱質量が増大する可能性があり、使用中の所与の変動磁場によって加熱要素2を加熱可能な速度が低下し得る。
【0059】
本実施形態において、被膜2bは、環状であり、支持部2aを囲む。他の実施形態において、被膜2bは、非環状又は一部のみ環状で、これにより支持部2a全体を囲んでいなくてもよい。
【0060】
本実施形態において、被膜2bは、厚さがおよそ10ミクロンである。ただし、他の実施形態において、被膜2bは、厚さ50ミクロン以下又は20ミクロン以下等、異なる厚さを有していてもよい。例えば、被膜の強磁性材料がニッケルの場合、被膜2bは、厚さがおよそ15ミクロンであってもよい。被膜2bは、膜又はめっきであってもよい。
【0061】
耐熱保護被膜2cは、加熱材料を含む被膜2b上に設けられている。より具体的に、被膜2bは、支持部2aと耐熱保護被膜2cとの間に位置付けられる。本実施形態の耐熱保護被膜2cは、窒化チタンを含む。ただし、他の実施形態において、耐熱保護被膜2cは、例えばセラミック材料、金属窒化物、窒化チタン、及びダイヤモンドから成る群から選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよい。本実施形態において、耐熱保護被膜2cは、厚さがおよそ10ミクロンである。ただし、他の実施形態において、耐熱保護被膜2cは、厚さ50ミクロン以下又は20ミクロン以下等、異なる厚さを有していてもよい。
【0062】
本実施形態において、耐熱保護被膜2cは、耐熱支持部2a及び加熱材料を含む被膜2bの半径方向外方に位置付けられる。すなわち、耐熱保護被膜2cは、被膜2bの外側にある。さらに、本実施形態において、耐熱支持部2aの半径方向内方対向面には、耐熱保護被膜2cがない。ただし、他の実施形態においては、耐熱支持部2aの半径方向外方の追加又は代替として、耐熱支持部2aの半径方向内方に、耐熱保護被膜2cが設けられていてもよい。ただし、この場合も、耐熱保護被膜2cが半径方向外方の追加として半径方向内方に設けられている場合は、加熱要素2の熱質量が増大する可能性がある。
【0063】
本実施形態において、耐熱保護被膜2cは、環状であり、支持部2a及び加熱材料を含む被膜2bを囲む。他の実施形態において、耐熱保護被膜2cは、非環状又は一部のみ環状で、これにより支持部2a及び加熱材料を含む被膜2b全体を囲んでいなくてもよい。
【0064】
加熱材料被膜を含む被膜2bは、温度が高くなると、酸化の影響をさらに受けやすくなり得る。このため、未酸化面に対する相対放射率(εr)が高くなり、放射によりエネルギーが失われる速度が増すことによって、放射による熱損失が増大し得る。放射エネルギーが最終的に環境中へ失われる場合は、このような放射によって、システムのエネルギー効率が低下し得る。また、酸化によって、化学的腐食に対する被膜2bの耐性が低下し得るため、加熱要素2の耐用年数が短くなる可能性もある。したがって、
図2の実施形態等のいくつかの実施形態において、加熱材料を含む被膜2bは、耐熱保護被膜2c(上述したうちの1つ等)で被覆されている。窒化チタンは、例えば物理的気相成長法を用いて適用可能である。他の例示的な耐熱保護被膜は、セラミック材料、金属窒化物、及びダイヤモンドである。いくつかの実施形態において、耐熱保護被膜2cは、加熱材料を含む被膜2cを化学的に処理して、加熱材料を含む被膜2b上の保護膜の成長を促進する方法又は陽極酸化等のプロセスを用いて保護酸化層を形成する方法等、異なる方法で設けることができる。下層の被膜2bを酸化から保護することのほか、耐熱保護被膜2cは、加熱材料を含む被膜2bを機械的摩耗から物理的に保護することにも役立ち得る。
【0065】
図示の実施形態の変形例であるいくつかの実施形態において、加熱材料を含む被膜2bは、封入されている。いくつかの実施形態において、耐熱保護被膜2c及び支持部2aは、加熱材料を含む被膜2bを一体的に封入している。他のいくつかの実施形態において、耐熱保護被膜2cは、支持部2a及び加熱材料を含む被膜2bを封入している。
【0066】
いくつかの実施形態において、耐熱保護被膜2cは、加熱材料を含む被膜2bではなく当該耐熱保護被膜2c中に電流を誘導することのないように(又は、著しく誘導することのないように)低導電性又は非導電性であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、耐熱保護被膜2cは、省略される。例えば、
図3は、本発明の一実施形態に係る、別の管状加熱要素の一例の模式側断面図である。この場合も、
図3の管状加熱要素3は、
図4に示すとともに以下に説明する装置100等、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置に用いられるものである。
【0068】
図3の管状加熱要素3は、耐熱保護被膜2cが省略された点を除いて、
図2のものと同一である(したがって、同じ特徴は同じ参照番号を有する)。
図2の管状加熱要素2に対する本明細書に記載の変形例のいずれかが、
図3の管状加熱要素3になされて、別の実施形態を構成していてもよい。いくつかの実施形態において、管状加熱要素3の壁厚Tは、0.5ミリメートル以下又は0.3ミリメートル以下等、1ミリメートル以下である。いくつかの実施形態において、管状加熱要素3の外径又は外側寸法ODは、0.3ミリメートル~5ミリメートルである。いくつかの実施形態において、管状加熱要素3の内径又は内側寸法IDは、0.1ミリメートル~2.1ミリメートルである。
【0069】
いくつかの実施形態において、管状加熱要素1、2、3は、ニードルである。
本発明のいくつかの例示的な実施形態の管状加熱要素の寸法を以下の表に示す。
【0070】
【0071】
いくつかの実施形態において、ODは、上表に示す関連数値から±0.13mmだけ変動し得る。いくつかの実施形態において、壁厚Tは、上表に示す関連数値から±15%だけ変動し得る。いくつかの実施形態において、上表の複数行のうちの1つに示す寸法を有する管状加熱要素は、ステンレス鋼を含んでいてもよいし、ステンレス鋼から成っていてもよい。
【0072】
誘導加熱中、変動磁場からのエネルギーが管状加熱要素1、2、3の加熱材料に移動して、加熱材料の温度が上昇する。加熱材料を可能な限り効率的に加熱するため、加熱材料へのエネルギーの移動は、可能な限り損失を多くして、移動エネルギーが急速に熱に変換されるようにする。管状加熱要素1、2、3の熱質量を小さくすると、所与のエネルギー入力に対する温度変化が増大する。管状加熱要素1、2、3の壁厚を1ミリメートル以下とすることにより、管状加熱要素1、2、3の熱質量を小さく保つことができる。
【0073】
導電性(且つ、磁化可能)媒体の場合は、電磁場が侵入可能な特性深さ(「表皮深さ」)が存在する。本発明者らは、使用中の磁場生成器に対向する表面等、管状加熱要素2、3の表面が加熱材料(ニッケル、コバルト、又は別の強磁性材料等)を含む薄い(数ミクロン等)被膜2bで被覆されている場合、より厚い軟鋼板と同じ吸収を達成するには、被膜2bを極薄にしさえすればよいことを見出している。被膜2bは、例えば化学めっき法、電気化学めっき法によって、又は真空蒸着によって適用することも可能である。ニッケルが用いられる場合、被膜2b又は層の厚さは、わずか15ミクロンであってもよい。さらに、コバルトが用いられる場合、被膜2b又は層の厚さは、約10ミクロンまで減らすことができる。1つ又は複数の表皮深さの厚さは、利用可能なエネルギーの大部分を加熱要素2、3へと案内するのに役立つものとする。いくつかの実施形態においては、2つ前後の表皮深さの厚さが任意選択であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、加熱材料被膜2bは、コバルトを含む。コバルトは、本発明の実施形態の加熱要素の通常の動作温度を十分に上回るキュリー点温度(1,120~1,127℃前後)を有する。キュリー点温度すなわちキュリー温度は、特定の磁性材料の磁気特性が急激に変化する温度である。キュリー点温度は、それを下回る場合に外部からの磁場の印加なく自然な磁化が存在し、それを上回る場合に材料が常磁性となる温度であることが了解される。例えば、キュリー点温度は、強磁性材料の強磁性相と常磁性相との間の磁気変態温度である。このような磁性材料がそのキュリー点温度に達すると、その透磁率が低下又はゼロになって、変動磁場の侵入による材料の加熱能力も低下又はゼロになる。すなわち、磁気ヒステリシス加熱によって材料をそのキュリー点温度より高くまで加熱するのは、不可能と考えられる。コバルトは、本発明の実施形態の加熱要素の通常の動作温度を十分に上回るキュリー点温度を有するため、通常の動作においては、例えばニッケルが代わりに用いられる場合よりも、キュリー点温度の影響がはるかに抑えられることになる(或いは、いくつかの実施形態においては、識別不可能となる)。
【0075】
加熱材料を含む被膜2b又は層が設けられた支持部2aは、印加変動磁場と相互作用して当該支持部2a中に熱を発生させる必要がない。すなわち、支持部2aは、それ自体が変動磁場の侵入により加熱可能である必要がない。支持部2aは、内部に発生した熱に耐えつつ、加熱材料被膜2bを支持可能でありさえすればよい。したがって、支持部2aは、本明細書に記載のもの等、任意好適な耐熱材料で構成可能である。
【0076】
したがって、当然のことながら、本発明の例示的な実施形態の加熱要素によれば、相対的な低コスト、材料の入手の容易性、及び製造時の構成の容易性といった利益を保ちつつ、変動磁場から加熱要素へのエネルギーの効率的な移動が可能となる。
【0077】
図4を参照して、この図は、本発明の一実施形態に係る、システムの一例の模式断面図である。システム1000は、エアロゾル化可能材料12を含む物品10と、エアロゾル化可能材料12を加熱して、エアロゾル化可能材料12の少なくとも1つの成分を揮発させる装置100とを備える。本実施形態において、エアロゾル化可能材料12は、タバコを含み、装置100は、タバコ加熱製品(当技術分野においては、タバコ加熱デバイス又は非燃焼加熱式デバイスとしても知られる)である。
【0078】
本実施形態において、エアロゾル化可能材料12は、中空管の形態であり、物品10は、エアロゾル化可能材料12の周りのカバー14を含む。物品10は全体として、中空内部10iを有する中空管である。本実施形態において、中空内部10iは、エアロゾル化可能材料12により規定されるが、他の実施形態において、物品10は、中空内部10iを規定する内側ラッパー等の別の構成要素を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、物品10は、非中空ロッドであってもよい。
【0079】
カバー14は、エアロゾル化可能材料12を囲み、物品10の輸送及び使用中の損傷からエアロゾル化可能材料12を保護するのに役立つ。また、カバー14は、使用中に空気の流れをエアロゾル化可能材料12へと案内して通過させるのに役立つとともに、エアロゾルの流れをエアロゾル化可能材料12に通過させて放出させるのに役立ち得る。本実施形態において、カバー14は、自由端が互いに重なるようにエアロゾル化可能材料12に巻き付けられたラッパーを含む。これにより、ラッパーは、物品10の円周方向外面の全体又は大部分を構成する。ラッパーは、紙、再生タバコ、アルミニウム等で形成されていてもよい。また、カバー14は、ラッパーの重なった自由端を互いに接着する接着剤(図示せず)を含む。接着剤としては、例えばアラビアガム、天然若しくは合成樹脂、デンプン、並びにワニスのうちの1つ又は複数が挙げられる。接着剤は、ラッパーの重なった自由端の分離を防止するのに役立つ。他の実施形態においては、接着剤及び/又はカバー14が省略されてもよい。さらに他の実施形態において、物品は、上述のいずれとも異なる形態であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、物品10は、使用中に当該物品10中で生成されたエアロゾルをフィルタリングするフィルタを含んでいてもよい。
【0080】
全般的に、装置100は、加熱ゾーン110と、変動磁場の侵入による加熱によって加熱ゾーン110を加熱可能な加熱材料を含む加熱要素2と、使用中に加熱要素2の各長手方向部21、22、23、24、25、26に侵入する変動磁場を生成する磁場生成器130とを備える。本実施形態において、加熱要素2は、
図2を参照して本明細書に記載したものである。ただし、他の実施形態において、装置100の加熱要素は、
図1若しくは
図3を参照して本明細書に記載したもの、又は、本明細書に記載の加熱要素1、2、3の変形例のいずれか等、異なる形態も可能である。ただし、加熱要素は、管状であるのが好ましい。
【0081】
加熱ゾーン110は、加熱要素2を囲む。本実施形態において、加熱要素2は、加熱ゾーン110の長手方向軸H-Hと同軸に延びている。他のいくつかの実施形態において、加熱要素2は、加熱ゾーン110の長手方向軸H-Hと平行、加熱ゾーン110の長手方向軸H-Hと垂直、又は加熱ゾーン110の長手方向軸H-Hと斜めに延びている。
【0082】
加熱ゾーン110は、上述の物品10等、エアロゾル化可能材料を含む1つ又は複数の物品を受容する。すなわち、物品10は、加熱ゾーン110中に存在する。本実施形態において、加熱ゾーン110は、物品10を受容する凹部を含む。より具体的に、中空の物品10は、当該物品10の挿入時に加熱要素2が当該物品10の中空内部10iに位置付けられるように、加熱ゾーン110及び加熱要素2に対して移動可能である。物品10の中空内部10iは、装置100の加熱要素2を受容するように寸法規定されている。物品10が非中空ロッドである実施形態においては、物品10の挿入時に加熱要素2が物品10(物品10のエアロゾル化可能材料12等)に押し込まれて、加熱要素2用の空間が物品10に形成されるようになっていてもよい。
【0083】
物品10は、装置100の壁のスロットを通す様態、口金等の装置100の部分を最初に動かして加熱ゾーン110にアクセスする様態等、任意好適な様態でユーザにより加熱ゾーン110に挿入可能であってもよい。他の実施形態において、加熱ゾーン110は、棚、表面、又は突起等、凹部以外であってもよく、また、物品10との協働又は物品10の受容のため、物品10との機械的係合を要するものであってもよい。本実施形態において、加熱ゾーン110は、物品10全体を収容するようにサイズ規定及び成形されている。他の実施形態において、加熱ゾーン110は、使用中に物品10の一部のみを受容するように寸法規定されていてもよい。
【0084】
装置100は、加熱ゾーン110を装置100の外部と流体接続する複数の空気入口101と、使用中に加熱ゾーン110から装置100の外部への揮発材料の通過を可能にする出口102とを有する。ユーザは、出口102を通じてエアロゾル化可能材料12の(1つ又は複数の)揮発成分を取り込むことにより、(1つ又は複数の)揮発成分を吸引可能であってもよい。(1つ又は複数の)揮発成分が加熱ゾーン110から取り出されると、装置100の空気入口101を介して、空気が加熱ゾーン110に取り込まれ得る。加熱ゾーン110の第1の端部111が出口102に最も近く、加熱ゾーン110の第2の端部112が空気入口101に最も近い。他の実施形態においては、空気入口101が1つだけ設けられていてもよい。
【0085】
磁場生成器130は、加熱ゾーン110の長手方向軸H-Hに沿って順次、各平面において配置された導電性材料の複数の平坦螺旋コイル31、32を備える。より具体的に、装置100の磁場生成器130は、保持器131と、保持器131に接続又は取り付けがなされた複数の誘導コイル構成体とを備える。保持器131は、誘導コイル構成体を相互に対して、当該保持器131に対して並びに加熱ゾーン110及び加熱要素2に対して、固定位置に保持していてもよい。誘導コイル構成体のうちの1つの模式斜視図を
図5に示す。
【0086】
誘導コイル構成体132は、ボード、パネル、又はプレート33と、銅等の導電性材料の一対の平坦螺旋コイル31、32とを備える。使用時は、変動(例えば、交流)電流がコイル31、32それぞれを通過し、加熱要素2に侵入して加熱要素2を加熱するのに使用可能な変動(例えば、交番)磁場を生成する。
【0087】
プレート33は、第1の面331及び反対の第2の面332を有する。プレート33の第1及び第2の面331、332は、互いに対向していない。本実施形態において、プレート33は、実質的に平面状であり、第1及び第2の面331、332がプレート33の主面である。プレート33は、コイル31、32を互いに絶縁するため、プラスチック材料等の非導電性材料で構成されるものとする。本実施形態において、プレート33は、難燃性のエポキシ樹脂バインダを含むガラス繊維織布で構成された複合材であるFR-4で構成されているが、他の実施形態においては、他の材料が用いられるようになっていてもよい。導電性材料の第1の平坦螺旋コイル31は、プレート33の第1の面331に搭載されており、導電性材料の第2の平坦螺旋コイル32は、プレート33の第2の面332に搭載されている。したがって、プレート33は、コイル31、32間に位置付けられる。
【0088】
コイル31、32は、任意好適な方法でプレート33に固定されていてもよい。本実施形態においては、誘導コイル構成体132がプリント回路板(PCB)から形成されているため、第1及び第2の平坦螺旋コイル31、32は、PCBの製造時に導電性材料をボード又はプレート33の第1及び第2の各面331、332に印刷した後、第1及び第2の平坦螺旋コイル31、32の形態の導電性材料のパターンがプレート33上に残るように導電性材料の一部を(エッチング等により)選択的に除去することによって形成されている。したがって、第1及び第2の平坦螺旋コイル31、32は、プレート33上の導電性材料の薄膜又は被膜である。
【0089】
したがって、本実施形態の誘導コイル構成体132は、(第1の平坦螺旋コイル31を含む)第1の層、(第2の平坦螺旋コイル32を含む)第2の層、及び第1及び第2の層の中間の第3の層(プレート33)を有する薄板を備える。これにより、プレート33は、第1及び第2の層を離隔する。プレート33が非導電性材料で構成されていることから、コイル31、32は、互いに絶縁されている(後述の導電性コネクタの場合以外)。すなわち、コイル31、32は、互いに接触していない。他の実施形態において、コイル31、32は、コイル32、32間の空隙等、異なる方法で互いに絶縁されていてもよい。いくつかの実施形態において、コイル31、32は、予備形成した後にプレート33に取り付ける方法等、その他任意の好適な方法でプレート33上に設けられていてもよい。いくつかの実施形態において、プレート33は、PCBの層以外であってもよい。例えば、樹脂又は接着剤等の材料の層又はシートであってもよく、乾燥、硬化、又は固化されていてもよい。
【0090】
上述のように薄く印刷された導電性材料で形成されたコイルの使用により、リッツ線の必要性が低下する。リッツ線は、編み込まれた極細線の多くのストランドで構成され、高励起周波数において表皮深さを損なう影響を克服する。PCB上のトラックは薄い(通常、1オンスのCuで38μm厚前後、2オンスのCuで76μm厚前後)ため、その高周波における性能は、同等の断面積のリッツ線に匹敵し得る。その上、脆弱性、リッツ線の成形、又は他の構成要素への接続に関する問題が発生しない。
【0091】
第1及び第2の平坦螺旋コイル31、32は、プレート33上に露出しており、使用中にコイル31、32に発生した熱の放出を可能にするのに役立つ。ただし、他の実施形態においては代替として、プレート33を構成する材料等の材料中に第1及び第2の平坦螺旋コイル31、32が埋め込まれ、輸送、保管、及び使用中の損傷からコイル31、32を保護するのに役立ち得る。
【0092】
本実施形態において、誘導コイル構成体132は、第1の平坦螺旋コイル31を第2の平坦螺旋コイル32に対して電気的に接続する導電性コネクタ(図示せず)を有する。より具体的に、導電性コネクタは、第1の平坦螺旋コイル31の半径方向内端31aから第2の平坦螺旋コイル32の半径方向内端まで延びて、コイル31、32を直列に接続する。本実施形態において、導電性コネクタは、当業者であれば理解できるように、PCBのプレート33を通る「ビア」として形成されている。他の実施形態において、導電性コネクタは、プレート33の内部又は外部の導電性リード又はワイヤ等、異なる形態であってもよい。
【0093】
本実施形態において、平坦螺旋コイル31、32は、実質的に平行な各平面において配置されている。すなわち、平坦螺旋コイル31、32はそれぞれ、当該コイル31、32が存在する平面に直交する(変動)半径を有する。さらに、平坦螺旋コイル31、32は、互いに軸方向に位置合わせされている。すなわち、コイル31、32の一方の経路が延びる起点となる仮想点は、コイル31、32の他方の経路が延びる起点となる仮想点と同じ軸上にあり、この軸は、コイル31、32が存在する各平面とそれぞれ直交する。さらに、本実施形態において、誘導コイル構成体132の一方側から見た場合、第1の平坦螺旋コイル31は、当該第1の平坦螺旋コイル31の半径方向内端31aからの時計回り経路に追従し、第2の平坦螺旋コイル32は、当該第2の平坦螺旋コイル32の半径方向内端からの反時計回り経路に追従する。本構成において、使用中にコイル31、32により生成される磁場は、互いに補強し合うため、コイル31、32のインダクタンスが効果的に倍増するとともに、コイル軸に沿った磁場が2倍になる。
【0094】
図5に示すように、プレート33の第1の面331からプレート33の第2の面332まで、プレート33を貫通するように開口部333が延びている。さらに、平坦螺旋コイル31、32はそれぞれ、プレート33を通る開口部333と実質的に位置合わせされた孔に巻回されている。すなわち、平坦螺旋コイル31、32それぞれの中心に孔が存在する。開口部333及び孔はそれぞれ、貫通孔である。以下により詳しく説明する通り、加熱ゾーン110及び加熱要素2は、開口部333及び両孔を通って延び、使用中にコイル31、32により生成される変動磁場が加熱要素2に侵入する。
【0095】
第1及び第2の平坦螺旋コイル31、32それぞれの厚さは、プレート33の第1及び第2の面331、332から測定して、例えばおよそ70マイクロメートル、およそ100マイクロメートル、又はおよそ140マイクロメートル等、50マイクロメートル超且つ200マイクロメートル未満であってもよい。他の実施形態においては、コイル31、32の一方又は両方の厚さが、50マイクロメートル未満であってもよいし、200マイクロメートル超であってもよい。選定される厚さは、コイル31、32の抵抗及びコイル31、32が使用中に自己加熱する程度を決定するのに役立つ。プレート33の厚さは、プレート33の第1及び第2の面331、332間で測定して、例えば1ミリメートル未満等、2ミリメートル未満であってもよい。
【0096】
原理上は、PCBの各層に3つ以上の平坦螺旋コイルを設けることも可能であるが、伝熱のため、PCBの外側層は、PCBの任意の内側層の2~3倍の通電容量を有する。したがって、上述のような二重コイル構造が性能と複雑さとの均衡をもたらす。さらに、本実施形態において、コイル31、32はそれぞれ、丸形又は円形の平坦螺旋コイルである。他の実施形態においては代替として、コイル31、32の一方又は両方を長方形(例えば、正方形)の平坦螺旋コイルとすることも可能である。長方形プロファイルのコイルは所与のプロファイルに対してわずかに高いインダクタンスを有するが、円形コイルであれば、より容易な交互配置及び/又はコイル間の構成要素の詰め込みが可能であるため、PCBエリアの利用が全体として向上する。また、長方形プロファイルの場合は、コイル軸に沿った所与の強度の磁場に対して、より大きなトラック長が必要となるため、同じような幅の円形コイルと比較して、抵抗が増大するとともにQ値が低下する。
【0097】
本実施形態の磁場生成器130は、それぞれが
図5に示す誘導コイル構成体132と同一で、保持器131に取り付け又は接続がなされた第1~第6の誘導コイル構成体132を備える。本実施形態において、保持器131は、3D印刷SLS(選択的レーザ焼結)ナイロンである。他の実施形態において、保持器131は、PCB又はその他任意の好適な材料等、その他任意の好適な方法で形成されていてもよい。いくつかの実施形態において、保持器131は基部131を備え、誘導コイル構成体132は、基部131の表面と直交する方向又は垂直な方向において、基部131から離れるように延びている。
【0098】
本実施形態において、誘導コイル構成体132は、保持器131とは別個の構成要素であり、保持器131とともに組み立てられる。誘導コイル構成体132はそれぞれ、コイル31、32を回路に対して電気的に接続するとともに、誘導コイル構成体132を保持器131に固定する電気的コネクタを備える。他の実施形態において、構成体132はそれぞれ、コイル31、32を回路に接続する電気的コネクタと、誘導コイル構成体132を保持器131に固定する1つ又は複数の付加的な構造的コネクタとを備えていてもよい。本実施形態のさらに別の変形例において、保持器131は、誘導コイル構成体132のプレート33と(場合によっては、コイル31、32とも)一体的に形成されていてもよい。
【0099】
図4に示すように、加熱ゾーン110の長手方向軸H-Hに沿って順次、各平面において誘導コイル構成体132の平坦螺旋コイル31、32が配置されるように、保持器131が誘導コイル構成体132を互いに保持する。本実施形態において、誘導コイル構成体132の平坦螺旋コイル31、32は、それぞれが軸H-Hと直交する実質的に平行な各平面に存在する。さらに、平坦螺旋コイル31、32は互いに軸方向に、完全に位置合わせされている。コイル31、32の経路が延びる起点となる各仮想点がすべて、共通軸(この場合は、加熱ゾーン110の長手方向軸H-H)上に存在するためである。また、各プレート33を通る孔333は互いに軸方向に、完全に位置合わせされており、すべて、コイル31、32の経路が延びる起点となる各仮想点と同じ軸H-H上に存在する。
【0100】
本実施形態において、磁場生成器130は、平坦螺旋コイル31、32の動作を制御する制御装置133を備える。制御装置133は、保持器131に収容され、集積回路(IC)を備えるが、他の実施形態においては、制御装置は、異なる形態であってもよい。いくつかの実施形態において、制御装置は、平坦螺旋コイル31、32のうちの少なくとも1つの動作を他の少なくとも1つの平坦螺旋コイル31、32とは独立に制御する。例えば、制御装置133は、誘導コイル構成体132それぞれのコイル31、32に対して、その他の誘導コイル構成体132のコイル31、32とは独立に電力を供給するようにしてもよい。いくつかの実施形態において、制御装置133は、誘導コイル構成体132それぞれのコイル31、32に対して、電力を順次供給するようにしてもよい。或いは、少なくとも1つの動作モードにおいて、制御装置は、すべての誘導コイル構成体132の動作を同時に制御するようにしてもよい。
【0101】
保持器131は、基部131の表面に直交する方向又は垂直な方向且つ誘導コイル構成体132と実質的に平行な方向において、基部131から離れるように延びた2つのアーム134、135をさらに備える。本実施形態において、アーム134、135は、3D印刷SLS(選択的レーザ焼結)ナイロンであり、基部131と一体になっている。他の実施形態において、アーム134、135は、異なる形態であってもよく、また、基部131とは別個の構成要素で、基部131とともに組み立てられるようになっていてもよい。アーム134、135はそれぞれ、開口134a、135aが通っており、開口134a、135aは、コイル31、32の経路が延びる起点となる各仮想点と同じ軸H-Hと軸方向に、完全に位置合わせされている。他の実施形態においては、アーム134、135の一方又は両方が省略されていてもよいし、このようなアームが3つ以上設けられていてもよい。
【0102】
本実施形態の装置100は、加熱ゾーン110に対して加熱要素2を適所に保持する本体150を備える。加熱要素2の一部が加熱ゾーン110の外側で、本体150に埋め込まれる。本実施形態において、本体150は、一方のアーム135の開口135aに嵌合するプラグであるが、他の実施形態においては、異なる形態も可能である。本体150は、耐熱材料で構成されるものとする。例えば、本体150は、ガラスで構成されていてもよいし、セラミックスで構成されていてもよいし、プラスチック材料(PEEK等)で構成されていてもよい。ただし、本体150に埋め込まれた加熱要素2の部分が加熱ゾーン110の外側であるため、加熱要素2の当該部分ひいては本体150は使用中、実質的には加熱され得ない。本実施形態の本体150は、前述の空気入口101を規定しており、使用中はそれを通じて、空気が加熱ゾーン110に進入し得る。他の実施形態において、本体150は、空気入口101を1つだけ規定していてもよいし、空気入口を規定していなくてもよい。本実施形態において、加熱要素2は、洗浄又は交換等のため、装置100から取り外し可能である。より具体的に、本実施形態においては、アーム135の開口135aからの本体150の抜き取り等によって、加熱要素2及び本体150の組合せが装置100から取り外される。他の実施形態において、加熱要素2は、装置100から取り外し不可能であってもよいし、本体150を伴わない方法等、異なる方法で装置100から取り外し可能であってもよい。
【0103】
装置100は、平坦螺旋コイル31、32の孔にエアロゾル化可能材料を含む物品10を支持する細長支持部140をさらに備える。本実施形態においては、支持部140が管状で、加熱ゾーン110を囲み、軸H-Hと同軸の長手方向軸を有する。いくつかの実施形態において、支持部140の長手方向軸は、加熱ゾーン110の長手方向軸H-Hと同軸ではなく、平行であってもよい。いくつかの実施形態において、支持部140は、ロッド状又はピン状等、非管状であってもよいし、部分的又は実質的に管状となるように、長手方向に延びた円周方向間隙を内部に有していてもよい。
【0104】
支持部140は、アーム134、135によって適所に保持されており、アーム134、135の開口134a、135a、複数の平坦螺旋コイル31、32の孔、及びプレート33の開口部333を通って延びている。本実施形態において、細長支持部140は、非透磁性且つ非導電性であるため、使用中にコイル31、32により生成される変動磁場と干渉しない。細長支持部140は、例えばガラスで構成されていてもよいし、セラミックスで構成されていてもよいし、プラスチック材料(PEEK等)で構成されていてもよい。ただし、いくつかの実施形態において、細長支持部140は、透磁性及び/又は導電性であってもよく、また、変動磁場の侵入により使用中に加熱されて、加熱ゾーン110及びその内部の物品10の使用中の加熱を補助するようにしてもよい。さらに別の実施形態においては、細長支持部140が省略されてもよい。
【0105】
また、磁場生成器130は、電力源(図示せず)と、制御装置133のユーザ操作のためのユーザインターフェース(図示せず)とを備える。本実施形態において、電力源は、充電式バッテリである。他の実施形態において、電力源は、非充電式バッテリ、キャパシタ、又は商用電源への接続等、充電式バッテリ以外であってもよい。
【0106】
制御装置133は、電力源と誘導コイル構成体132のコイル31、32との間で電気的に接続されるとともに、装置100の外部に位置付け可能なユーザインターフェースに対して通信可能に接続されている。本実施形態において、制御装置133は、ユーザインターフェースのユーザ操作によって動作する。ユーザインターフェースは、押しボタン、トグルスイッチ、ダイヤル、タッチスクリーン等を備えていてもよい。
【0107】
本実施形態においては、ユーザによるユーザインターフェースの操作によって、制御装置133が誘導コイル構成体132のコイル31、32のうちの1つ又は複数に交流電流を通過させ、一方又は両方のコイル31、32が交番磁場を生成する。コイル31、32及び加熱要素2は、(1つ又は複数の)コイル31、32により生成された(1つ又は複数の)交番磁場が加熱要素2の加熱材料に侵入するように、相対的に位置決めされている。これにより、加熱要素2の加熱材料が導電性材料である場合は、加熱材料中に1つ又は複数の渦電流が生成され得る。加熱材料の電気抵抗に対する加熱材料中の渦電流の流れによって、加熱材料がジュール加熱により加熱される。さらに、加熱要素2の加熱材料が磁性材料である場合、加熱材料中の磁気双極子の配向は、印加された変動磁場とともに変化するため、加熱材料中に熱が発生する。
【0108】
本実施形態において、物品10は、長手方向軸C-Cを有する細長状である。使用中、物品10が加熱ゾーン110に位置付けられている場合、この軸C-Cは、加熱ゾーン110の長手方向軸H-Hと同軸又は平行である。したがって、物品10が加熱ゾーン110に位置付けられている場合は、加熱要素2の1つ又は複数の部分21、22、23、24、25、26の加熱によって、加熱ゾーン110の1つ又は複数の対応部分が加熱されるとともに、物品10のエアロゾル化可能材料12の1つ又は複数の対応部分12a、12b、12c、12d、12e、12fが加熱される。
【0109】
いくつかの実施形態において、制御装置133は、エアロゾル化可能材料12の第2の部分の加熱前に、エアロゾル化可能材料12の第1の部分を加熱させるように動作可能である。すなわち、制御装置133は、第2の誘導コイル構成体132のコイル31、32の一方又は両方に変動電流を通過させて、第2の誘導コイル構成体132に隣り合うエアロゾル化可能材料12の第2の部分12bの少なくとも1つの成分の揮発及び内部でのエアロゾルの形成を開始させる前に、第1の誘導コイル構成体132のコイル31、32の一方又は両方に変動電流を通過させて、第1の誘導コイル構成体に隣り合うエアロゾル化可能材料12の第1の部分12aの少なくとも1つの成分の揮発及び内部でのエアロゾルの形成を開始させるように動作可能であってもよい。したがって、物品10のエアロゾル化可能材料12が時間とともに順次加熱されるようになっていてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、第1の誘導コイル構成体132及びエアロゾル化可能材料12の関連する第1の部分12aは、加熱ゾーン110の第1の端部111に最も近くてもよく、第2の誘導コイル構成体132及びエアロゾル化可能材料12の関連する第2の部分12bは、加熱ゾーン110の第2の端部112により近くてもよい。このことは、出口102に比較的近いエアロゾル化可能材料12の第1の部分12aにおいて、エアロゾルが形成され、物品10から比較的急速に放出されてユーザが吸引可能となるのに役立つ。その上、エアロゾルの時間に依存した放出がもたらされるため、エアロゾル化可能材料12の第1の部分12aがエアロゾルを生成しなくなった後でも、エアロゾルの形成及び放出が継続する。このようなエアロゾルの生成の中断は、エアロゾル化可能材料12の第1の部分12aで揮発可能な成分が使い果たされた結果として起こり得る。
【0111】
装置100は、加熱ゾーン110、物品10、又は加熱要素2の温度を検知する温度センサ(図示せず)を備えていてもよい。温度センサは、制御装置133が温度をモニタリングできるように、制御装置133に対して通信可能に接続されていてもよい。温度センサから受信された1つ又は複数の信号に基づいて、制御装置133は、コイル31、32を通過する変動又は交流電流の特性を必要に応じて調整することにより、エアロゾル化可能材料12の温度が所定の温度範囲内に保たれるようにしてもよい。この特性は、例えば振幅、周波数、又はデューティサイクルであってもよい。所定の温度範囲内での使用時は、エアロゾル化可能材料12の十分な加熱によって、エアロゾル化可能材料12の燃焼なく、エアロゾル化可能材料12の少なくとも1つの成分が揮発する。したがって、制御装置133(全体として、装置100)は、エアロゾル化可能材料12の加熱によって、エアロゾル化可能材料12の燃焼なく、エアロゾル化可能材料12の少なくとも1つの成分を揮発させるように構成されている。
【0112】
いくつかの実施形態において、温度範囲は、およそ150℃~およそ300℃である。温度範囲は、例えば150℃超であってもよいし、200℃超であってもよいし、250℃超であってもよい。温度範囲は、例えば300℃未満であってもよいし、290℃未満であってもよいし、250℃未満であってもよい。いくつかの実施形態において、温度範囲の上限としては、300℃超も可能である。いくつかの実施形態においては、温度センサが省略されてもよい。
【0113】
本実施形態の変形例において、加熱要素2は、使用中に変動磁場が全体に侵入し得ない可能性もある。このようないくつかの変形例においては、加熱要素2の(1つ又は複数の)侵入部からの伝熱によって、加熱要素2の(1つ又は複数の)非侵入部が使用中に加熱されるようになっていてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、物品10は、使用中に変動磁場のうちの1つ又は複数の侵入による加熱によって当該物品10のエアロゾル化可能材料12を加熱し得る加熱材料を含む少なくとも1つの加熱要素を具備していてもよい。物品10の(1つ又は複数の)加熱要素は、物品10のエアロゾル化可能材料12と熱的接触(いくつかの実施形態においては、表面接触)することになる。例えば、このような物品10の加熱要素は細長で、物品10の第1の端部から物品10の反対の第2の端部まで延びていてもよい。物品10の加熱要素は、例えば管状又はロッド状であってもよい。このようないくつかの実施形態において、エアロゾル化可能材料は、物品10の管状加熱要素の半径方向内方又は半径方向外方であってもよい。いくつかの実施形態において、物品10は、当該物品10のエアロゾル化可能材料12内に分散した加熱材料を含んでいてもよい。例えば、物品10は、エアロゾル化可能材料12と要素との混合物を含む材料を含んでいてもよく、各要素は、変動磁場の侵入により加熱可能な加熱材料を含む。各要素は、加熱材料の閉回路を含んでいてもよい。要素の一部又は全部は、例えばリング状であってもよいし、球状であってもよいし、加熱材料の複数の離散ストランドで形成されていてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、装置100は、当該装置100で使用可能な物品10とは別個に販売、供給、或いは提供される。ただし、いくつかの実施形態においては、場合により洗浄用具等の付加的な構成要素とともに、キット又はアセンブリ等のシステムとして、装置100並びに1つ若しくは複数の物品10が一体的に提供されるようになっていてもよい。
【0116】
上記実施形態それぞれにおいて、物品10は、消耗品である。物品10中のエアロゾル化可能材料12の(1つ又は複数の)揮発可能な成分のすべて又は実質的にすべてが使い果たされた場合に、ユーザは、装置100の加熱ゾーン110から物品10を取り外して破棄するようにしてもよい。その後、ユーザは、別の物品10とともに装置100を再利用するようにしてもよい。ただし、他の各実施形態においては、物品が非消耗品であってもよく、エアロゾル化可能材料の(1つ又は複数の)揮発可能な成分が使い果たされた場合に、装置及び物品が一体的に破棄されるようになっていてもよい。
【0117】
上述の実施形態それぞれにおいて、加熱材料は、ステンレス鋼である。ただし、他の実施形態において、加熱材料は、導電性材料、磁性材料、及び磁気導電性材料から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、加熱材料は、金属又は合金を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、加熱材料は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性カーボン、グラファイト、鋼、普通炭素鋼、軟鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、銅、及び青銅から成る群から選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよい。他の実施形態においては、(1つ又は複数の)他の加熱材料が用いられるようになっていてもよい。
【0118】
上記実施形態それぞれにおいて、エアロゾル化可能材料は、タバコを含む。ただし、これらの実施形態それぞれの各変形例において、エアロゾル化可能材料は、タバコから成っていてもよいし、実質的に全体がタバコから成っていてもよいし、タバコ及びタバコ以外のエアロゾル化可能材料を含んでいてもよいし、タバコ以外のエアロゾル化可能材料を含んでいてもよいし、タバコを含んでいなくてもよい。いくつかの実施形態において、エアロゾル化可能材料は、蒸気若しくはエアロゾル形成剤又はグリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、若しくはジエチレングリコール等の保湿剤を含んでいてもよい。
【0119】
様々な問題に対処するとともに技術を進歩させるため、本開示は全体として、特許請求の範囲に係る発明を実施可能であり、優れた管状加熱要素と、エアロゾル化可能材料を加熱して、エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置と、このような装置及びエアロゾル化可能材料を含む物品を備えたシステムとを可能にする種々実施形態を例示的な一例として示している。本開示の利点及び特徴は、実施形態の代表的なサンプルに過ぎず、網羅的及び/又は排他的なものではない。これらは、理解の手助け及び特許請求の範囲或いは開示の特徴の教示のみを目的として提示される。本開示の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の態様は、特許請求の範囲により規定される本開示に対する制限とも、特許請求の範囲の同等物に対する制限とも考えるべきではなく、また、本開示の範囲及び/又は主旨から逸脱することなく、他の実施形態の利用及び改良が可能であることが了解されるものとする。種々実施形態は、開示の要素、構成要素、特徴、部分、ステップ、手段等の種々組合せを好適に含んでいてもよいし、種々組合せから成っていてもよいし、種々組合せから本質的に成っていてもよい。本開示は、現時点では請求されていないものの、将来的に請求され得る他の発明を含んでいてもよい。