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特許7103621レーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法、およびこれを用いたレーダーセンシング装置、その算出方法を記録したコンピューティング装置によって判読可能な記録媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】レーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法、およびこれを用いたレーダーセンシング装置、その算出方法を記録したコンピューティング装置によって判読可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
A63B69/36 541S
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021537938
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 KR2019018609
(87)【国際公開番号】W WO2020139023
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2018-0171784
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】315019182
【氏名又は名称】ゴルフゾン カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】735, YEONGDONG-DAERO, GANGNAM-GU, SEOUL, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、テ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ダ ビン
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525521(JP,A)
【文献】特開2016-107087(JP,A)
【文献】特開2014-070935(JP,A)
【文献】特開2007-130245(JP,A)
【文献】特開2013-130569(JP,A)
【文献】特開平8-266701(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0133667(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0200274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B69/00-71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダー信号の反射波を受信して生成したレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法として、
前記レーダーセンシングデータを利用してゴルフクラブとボールのインパクト時点を特定する段階と、
前記レーダーセンシングデータからゴルフクラブのスイング軌跡を表示するための軌跡表示領域を生成する段階と、
前記軌跡表示領域上に前記特定されたインパクト時点でのインパクト位置を設定する段階と、
前記軌跡表示領域上のインパクト時点の位置を基準に、その前後の多数のセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出することにより生成されるゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階と、
を含む、レーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項2】
前記インパクト時点を特定する段階は、
前記レーダー信号の反射波を受信し、前記レーダーセンシングデータとしてボールに対する信号データとゴルフクラブに対する信号データを含むデータを生成する段階と、
前記ボールに対する信号データを基にした前記ゴルフクラブに対する信号データ上の時点を、前記インパクト時点として特定する段階を含む、請求項1に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項3】
前記軌跡表示領域を生成する段階は、
前記軌跡表示領域として、上から見た第1座標平面と側面から見た第2座標平面をそれぞれ生成する段階を含む、請求項1に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項4】
前記インパクト位置を設定する段階は、
レーダーセンシング装置とボールが置かれた位置との間の距離である基準距離と、前記特定されたインパクト時点でのゴルフクラブに対する信号の位相情報を用いて、前記軌跡表示領域上に前記インパクト位置を表示することにより、設定する段階を含む、請求項1に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項5】
前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階は、
前記軌跡表示領域上のゴルフクラブの座標を基に、ゴルフクラブの移動の傾向性を導き出すことにより、前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階を含む、請求項1に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項6】
前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階は、
前記設定されたインパクト位置を基準にそれ以前のゴルフクラブの位置について、前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブについての信号データから、前記インパクト時点の以前の前記ゴルフクラブについてのそれぞれのセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出し、前記軌跡表示領域に表示する段階と、
前記設定されたインパクト位置を基準にそれ以後のゴルフクラブの位置について、前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブについての信号データから、前記インパクト時点の以後の前記ゴルフクラブに対するそれぞれのセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出し、前記軌跡表示領域に表示する段階を含む、請求項1に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項7】
前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階は、
前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブに対する信号データ上の前記インパクト時点の以前と以後に予め設定された時間間隔で、前記ゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点をそれぞれ特定する段階と、
前記インパクト時点の以前のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれにおける前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記軌跡表示領域上の位置に座標を表示をする段階と、
前記インパクト時点の以後のセンシング時点それぞれでの位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれでの前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記軌跡表示領域上の位置に座標表示をする段階を含む、請求項1に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項8】
前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階は、
前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブに対する信号データ上の前記インパクト時点以前と以後に予め設定された時間間隔で、前記ゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点をそれぞれ特定する段階と、
前記インパクト時点以前のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれにおける前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記第1座標平面及び第2座標平面それぞれの領域上の位置にそれぞれ座標表示をする段階と、
前記インパクト時点の以後のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれにおける前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記第1座標平面及び第2座標平面それぞれの領域上の位置にそれぞれ座標表示をする段階を含む、請求項3に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項9】
前記軌跡表示領域に表示されたゴルフクラブ位置の座標データに対して、予め設定されたデータ処理を通じて異常点を取り除き、有効データに対してフィッティング処理を行うことでゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階をさらに含む、請求項7に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法をコンピューティング装置に実行させるためのプログラム。
【請求項11】
レーダー信号を送信する信号送信部と、
前記信号送信部の信号に対し、ボール及びゴルフクラブから反射された反射波信号を受信する信号受信部と、
前記受信された反射波信号によりボールに対する信号データとゴルフクラブに対する信号データを含むレーダーセンシングデータを生成する信号分析部と、
前記レーダーセンシングデータを利用してゴルフクラブとボールのインパクト時点を特定し、前記レーダーセンシングデータからゴルフクラブのスイング軌跡を表示するための軌跡表示領域を生成し、前記軌跡表示領域上に前記特定されたインパクト時点でのインパクト位置を設定し、前記軌跡表示領域上でのインパクト時点の位置を基準にその前後の多数のセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出することにより生成されるゴルフクラブのスイング軌跡を算出する情報算出と、
を含むレーダーセンシング装置。
【請求項12】
情報算出部は、
前記軌跡表示領域上のゴルフクラブの座標を基に、ゴルフクラブの移動の傾向性を導き出すことにより、前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出するよう構成される、請求項11に記載のレーダーセンシング装置。
【請求項13】
情報算出部は、
前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブに対する信号データ上の前記インパクト時点以前と以後に予め設定された時間間隔で、前記ゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点をそれぞれ特定し、前記インパクト時点以前のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を利用して前記センシング時点それぞれにおける座標値を算出し、
前記センシング時点それぞれにおける座標値に該当する座標値に相当する前記軌跡表示領域上の位置に座標を表示し、
前記インパクト時点の以後のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれにおける前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記軌跡表示領域上の位置に座標表示を行うことにより、前記軌跡表示領域上に前記ゴルフクラブの座標データにより生成されるゴルフクラブのスイング軌跡を算出するよう構成される、請求項11に記載のレーダーセンシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法、およびそれを用いたレーダーセンシング装置と、その算出方法を記録したコンピューティング装置により読み取り可能な記録媒体に関する発明として、さらに詳細には、レーダー信号のドップラー効果(Doppler Effect)を用いてボールから反射する信号やゴルフクラブから反射する信号を分析し、それからボールの運動パラメータはもちろんゴルフクラブのスイング軌跡を算出できる発明である。
【背景技術】
【0002】
ボールを利用するスポーツ競技、特にゴルフの場合、ゴルファーによって打撃されて運動するボール及びゴルフクラブの物理的特性を正確にセンシングし、そのセンシングされた値を利用して打球分析をしたり、ゴルファーのスイングによるゴルフクラブのスイングを正確に分析しようとする試みは常にあった。
【0003】
ゴルフスイングによってゴルフクラブとボールが移動するが、これをセンシングするセンシング装置として代表的な装置がカメラセンシング装置とレーダーセンシング装置である。
【0004】
特に、カメラセンシング装置は、ゴルフクラブがボールを打撃する場面に対する多数フレームの映像を獲得し、その獲得した多数フレームの映像を分析することにより、ゴルフクラブとボールの移動による物理的特性を全てセンシングしやすいというメリットがあるが、センシング範囲が狭く、ボールのスピンを正確にセンシングしにくいという限界があった。
【0005】
反面、レーダーセンシング装置の場合、レーダー送信信号がボールによって反射された反射波を受信して分析することにより、ボールの運動に関する様々な情報を正確に算出でき、センシング範囲が広くボールのスピンを正確にセンシングできるというメリットがある。
【0006】
しかし、レーダーセンシング装置は、上記のようにボールに対するセンシングデータを正確に収集・分析し、ボールのスピンなど重要なボール運動パラメータを正確に算出することができる反面、ゴルフクラブに対するセンシングにおいては、ボールと違いゴルフクラブのヘッドの大きさが大きいため、ゴルフクラブのヘッドから反射するレーダー信号が広い範囲に分布し、クラブヘッドのいずれか1点を特定してその点の軌跡を描き出すことが不可能であるため、レーダーセンシング場のヘッドのヘッドから反射することが非常に困難であった。
【0007】
従来のレーダーセンシング装置に関する多数の先行技術文献、例えば韓国登録特許公報第10-0947898号、日本登録特許公報第6048120号、韓国公開特許公報第2016-0054013号及び韓国公開特許公報第2015-0139494号などでも開始されているようにレーダーセンシング装置に関して公開されたほとんどの先行技術はレーダーセンシングによってボール速度、スピンなどのボール運動パラメータの算出に関するものであり、ゴルフクラブのスイング軌跡のようなクラブデータの算出に関する先行技術はほとんどなかった。
【0008】
そこで、レーダーセンシング装置のセンシングデータを利用してボールに関する情報だけでなく、ゴルフクラブに関する情報、例えばゴルフクラブのスイング軌跡情報などを算出する方法に関する研究・開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はゴルファーがゴルフクラブでボールを打撃する際に、レーダー信号の分析によりボールに対する運動パラメータを算出することとは別に、レーダー信号の分析によりゴルフクラブの位置座標情報を算出し、そこからゴルフクラブのスイング軌跡を算出できるレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法、及びこれを用いたレーダーセンシング装置と、その算出方法を記録したコンピューティング装置により判読可能な記録媒体を提供するためである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のー実施例によるレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法は、レーダー信号の反射波を受信して生成したレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法として、前記レーダーセンシングデータを利用してゴルフクラブとボールのインパクト時点を特定する段階と、前記レーダーセンシングデータからゴルフクラブのスイング軌跡を表示するための軌跡表示領域を生成する段階と、前記軌跡表示領域上に前記特定されたインパクト時点でのインパクト位置を設定する段階と、前記軌跡表示領域上のインパクト時点の位置を基準に、その前後の多数のセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出することにより生成されるゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階とを含む。
【0011】
また、望ましいことには、前記インパクト時点を特定する段階は、前記レーダー信号の反射波を受信し、前記レーダーセンシングデータとしてボールに対する信号データとゴルフクラブに対する信号データを含むデータを生成する段階と、前記ボールに対する信号データを基にした前記ゴルフクラブに対する信号データ上の時点を、前記インパクト時点として特定する段階を含む。
【0012】
また、望ましいことには、前記軌跡表示領域を生成する段階は、前記軌跡表示領域として、上から見た第1座標平面と側面から見た第2座標平面をそれぞれ生成する段階を含む。
【0013】
また、望ましいことには、前記インパクト位置を設定する段階は、レーダーセンシング装置とボールが置かれた位置との間の距離である基準距離と、前記特定されたインパクト時点でのゴルフクラブに対する信号の位相情報を用いて、前記軌跡表示領域上に前記インパクト位置を表示することにより、設定する段階を含む。
【0014】
また、望ましいことには、前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階は、前記軌跡表示領域上のゴルフクラブの座標を基に、ゴルフクラブの移動の傾向性を導き出すことにより、前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階を含む。
【0015】
また、望ましいことには、前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階は、前記設定されたインパクト位置を基準にそれ以前のゴルフクラブの位置について、前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブについての信号データから、前記インパクト時点以前の前記ゴルフクラブについてのそれぞれのセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出し、前記軌跡表示領域に表示する段階と、前記設定されたインパクト位置を基準にそれ以後のゴルフクラブの位置について、前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブについての信号データから、前記インパクト時点以後の前記ゴルフクラブに対するそれぞれのセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出し、前記軌跡表示領域に表示する段階を含む。
【0016】
また、望ましいことには、前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階は、前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブに対する信号データ上の前記インパクト時点の以前と以後に予め設定された時間間隔で、前記ゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点をそれぞれ特定する段階と、前記インパクト時点の以前のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれにおける前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記軌跡表示領域上の位置に座標を表示をする段階と、前記インパクト時点以後のセンシング時点それぞれでの位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれでの前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記軌跡表示領域上の位置に座標表示をする段階を含む。
【0017】
また、望ましいことには、前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階は、前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブに対する信号データ上の前記インパクト時点以前と以後に予め設定された時間間隔で、前記ゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点をそれぞれ特定する段階と、前記インパクト時点以前のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれにおける前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記第1座標平面及び第2座標平面それぞれの領域上の位置にそれぞれ座標表示をする段階と、前記インパクト時点以後のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を用いて、前記センシング時点それぞれにおける前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記第1座標平面及び第2座標平面それぞれの領域上の位置にそれぞれ座標表示をする段階を含む。
【0018】
また、望ましいことには、前記軌跡表示領域に表示されたゴルフクラブ位置の座標データに対して、予め設定されたデータ処理を通じて異常点を取り除き、有効データに対してフィッティング処理を行うことでゴルフクラブのスイング軌跡を算出する段階をさらに含む。
【0019】
本発明は前記のような算出方法を記録したコンピューティング装置によって判読可能な記録媒体を含む。
【0020】
本発明のー実施例によるレーダーセンシング装置は、レーダー信号を送信する信号送信部と、前記信号送信部の信号に対し、ボール及びゴルフクラブから反射された反射波信号を受信する信号受信部と、前記受信された反射波信号によりボールに対する信号データとゴルフクラブに対する信号データを含むレーダーセンシングデータを生成する信号分析部と、前記レーダーセンシングデータを利用してゴルフクラブとボールのインパクト時点を特定し、前記レーダーセンシングデータからゴルフクラブのスイング軌跡を表示するための軌跡表示領域を生成し、前記軌跡表示領域上に前記特定されたインパクト時点でのインパクト位置を設定し、前記軌跡表示領域上でのインパクト時点の位置を基準にその前後の多数のセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出することにより生成されるゴルフクラブのスイング軌跡を算出する情報算出とを含む。
【0021】
また、望ましいことには、前記情報算出部は、前記軌跡表示領域上のゴルフクラブの座標を基に、ゴルフクラブの移動の傾向性を導き出すことにより、前記ゴルフクラブのスイング軌跡を算出するよう構成されることを特徴とする。
【0022】
また、望ましいことには、前記情報算出部は、前記レーダーセンシングデータのゴルフクラブに対する信号データ上の前記インパクト時点以前と以後に予め設定された時間間隔で、前記ゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点をそれぞれ特定し、前記インパクト時点以前のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を利用して前記センシング時点それぞれにおける座標値を算出し、前記センシング時点それぞれにおける座標値に該当する座標値に相当する前記軌跡表示領域上の位置に座標を表示し、前記インパクト時点以後のセンシング時点それぞれにおける位相と速度値を用いて、前記各センシング時点における前記ゴルフクラブの座標値を算出し、前記算出された座標値に該当する前記軌跡表示領域上の位置に座標表示を行うことにより、前記軌跡表示領域上に前記ゴルフクラブの座標データにより生成されるゴルフクラブのスイング軌跡を算出するよう構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に沿ったレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法、及びこれを用いたレーダーセンシング装置、およびその算出方法を記録したコンピューティング装置により読み取り可能な記録媒体は、ゴルファーがゴルフクラブにボールを打撃する際のレーダー信号の分析によりボールに対する運動パラメータを算出することとは別に、レーダー信号の分析によりゴルフクラブの位置座標情報を算出し、それから効果的にゴルフクラブのスイング軌跡を算出できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の使用例について示した図面である。
図2】本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の構成をブロック図として示した図面である。
図3】本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の信号受信部構成の一例を簡略に図示した図面である。
図4】本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の信号分析部が受信されたレーダー信号を用いて生成するボールに対する信号データとゴルフクラブに対する信号データを含むレーダーセンシングデータの一例を示す図面である。
図5】本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法により軌跡表示領域として、上から見た第1座標平面と側面から見た第2座標平面上にそれぞれゴルフクラブの位置座標を表示し、これを用いてスイング軌跡を算出する過程を示した図面である。
図6】本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法により軌跡表示領域として、上から見た第1座標平面と側面から見た第2座標平面上にそれぞれゴルフクラブの位置座標を表示し、これを用いてスイング軌跡を算出する過程を示した図面である。
図7】本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明 に沿ったレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法、及びこれを用いたレーダーセンシング装置に関するより具体的な内容について、図面を参照して説明する。
【0026】
まず、図1及び図2を参照し、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の構成及び各構成要素の機能について説明する。図1はレーダーセンシング装置の使用例について示した図面であり、図2は本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の構成をブロック図として示した図面である。
【0027】
本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置は、基本的にレーダー(Radar)のドップラー効果(Doppler Effect)を用いて運動する物体(ゴルフボール、ゴルフクラブ等)に対する運動パラメータを算出する装置であり、図1に図示されているようにレーダーセンシング装置100をゴルフクラブ20を持っているユーザー10の側面、つまりボール30が進む方向に所定する。
【0028】
本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置は、基本的にレーダー(Radar)のドップラー効果(Doppler Effect)を用いて運動する物体(ゴルフボール、ゴルフクラブ等)に対する運動パラメータを算出する装置であり、図1に図示されているようにレーダーセンシング装置100をゴルフクラブ20を持っている使用者10の側面側、すなわちボール30が進める方向の後方に所定距離をとって位置させて使用する。
【0029】
レーダーセンシング装置100とボール30との距離は、基準距離(Dr)としてレーダーセンシング装置100が予め設定しておいた距離値に該当するようにレーダーセンシング装置100を適切に位置させるのが望ましい。
【0030】
上記のような基準距離(Dr)がレーダーセンシング装置100によるボールのセンシング、クラブのセンシングのいずれにも重要な基準となりうる。
【0031】
一方、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置は、図2に示されるように信号送信部110、信号受信部120、信号分析部130及び情報算出部140を含む構成となる。
【0032】
本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置は、使用者が打撃するボールの位置から所定距離後方の地面又は地面付近に設置され、その設置位置で打撃によって運動することとなるボールの運動方向に向かって特定周波数のレーダー信号を送信し、ボールから反射された反射波を受信し分析しながら運動するボールを追跡するように構成されることができる。
【0033】
信号送信部110は、特定のレーダー(Radar)信号を照準された方向に送信するように構成されており、図面上の図示ではないが、レーダー信号を送信する送信アンテナを含むように構成されることができる。
【0034】
信号受信部120は、信号送信部110が送信したレーダー信号がボールから反射されて戻ってくる反射波信号を受信するように構成される。
【0035】
このとき、信号送信部110のレーダー信号は、ボール30とゴルフクラブ20の両方にそれぞれ到達し、信号受信部120は、運動するボール及びスイング軌跡に従って移動するゴルフクラブヘッドからそれぞれ反射する反射波信号を全て受信する。
【0036】
レーダー信号のドップラー効果により、信号送信部110が送信し、ボール及びゴルフクラブでそれぞれ反射する反射波信号は、信号送信部110が送信した信号の周波数が変更され、ドップラー片側(Doppler shift)が発生することになる。すなわち、信号受信部120はドップラー片側(Doppler shift)が発生した信号を受信することになる。
【0037】
信号受信部120は、上記のような反射波信号を受信する受信アンテナを複数個備えるように構成されることにより、複数個の受信アンテナそれぞれの受信信号の位相差を利用して、ボールやゴルフクラブの動きに関する様々な情報を知ることができる。
【0038】
図3は、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の信号受信部120構成の一例を手短に図示している。図3に図示されているように、信号受信部120がRA1、RA2及びRA3を含む3つ以上の受信アンテナを適切に配置して備えると、ゴルフクラブ20から受信される反射波信号をそれぞれの受信アンテナ(RA1、RA2、RA3)が受信でき、それぞれの受信アンテナ間の信号の位相差、すなわちRA1とRA2がそれぞれ受信した信号の位相差、RA1とRA3がそれぞれ受信した信号の位相差をそれぞれ算出することができる。もちろん,ボールについても上記のとおり位相差を算出することができる。
【0039】
一方、再び図2に戻り、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の信号分析部130は、信号受信部120からレーダー信号の反射波を受信し、ボールに対する信号データとゴルフクラブに対する信号データを含むレーダーセンシングデータを生成する。
【0040】
図4は信号分析部130が受信されたレーダー信号を用いて生成するボールに対する信号データ(BD)とゴルフクラブに対する信号データ(CD)を含むレーダーセンシングデータ(SD)の一例を示している。
【0041】
図4に図示されたレーダーセンシングデータはボールとゴルフクラブに対する反射波信号に対してレーダーセンシングデータとしてスペクトログラムを生成したものを示す。
【0042】
図4に図示されたスペクトログラムは、横軸が時間軸であり縦軸が周波数の軸であるが、ボールに対する信号データ(BD)はボールの大きさが小さいため、信号データの分布が狭く、稠密に見られることから比較的正確な信号範囲が得られるのに対し、ゴルフクラブに対する信号データ(CD)はクラブヘッドの大きさが相対的に大きいため、比較的広い範囲の信号分布が見られることが分かる。
【0043】
このように、ゴルフクラブの信号データの信号範囲が広く分布するため、ボールとは異なり、ゴルフクラブヘッドのいずれかの特徴点を特定し、その特徴点を基準にヘッドの軌跡を算出することは非常に困難である。
【0044】
したがって、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置のゴルフクラブスイング軌跡の算出方法は、ゴルフクラブに対する一つの特徴を基準にスイング軌跡を算出するよりも、信号データ(CD)により全般的なゴルフクラブヘッドの移動経路を基にした傾向性を見出し、それに基づいてスイング軌跡を算出する方法に関するものである。
【0045】
このため、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置は、軌跡表示領域という仮想領域を想定して、上記のレーダーセンシングデータからゴルフクラブの位置に対する座標値を算出し、上記の軌跡表示領域に表示し、その表示された多数のゴルフクラブ位置座標値を基にゴルフクラブの移動の傾向を導き出すことにより、ゴルフクラブのスイング軌跡を算出する。これについてのより具体的な事項は後述する。
【0046】
一方で、再び図2に戻り、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の情報算出部140は、信号分析部130により生成されるレーダーセンシングデータを用いて、多数のセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出することにより、ゴルフクラブのスイング軌跡を算出するように構成される。
【0047】
レーダーセンシング装置は、基準距離上に置かれたボールのスタート位置からボールに対する信号データを用いて所定の時間間隔でボールの位置座標を算出し、運動するボールの軌跡を算出することができる。
【0048】
ボールの場合、ボールが置かれた位置、つまり基準距離上の位置を基準にして(つまり基準距離上の位置を原点として)ボールの座標を容易に算出してボール軌跡を見つけることができるが、ゴルフクラブの場合、トップスウィングからファロスルーまで、ある時点を基準原点とすることは難しい。なぜなら、トップスイングからパロスルーまでの軌跡とテンポなどは人それぞれ違うため、一定の原点をつかむことができないからだ。したがって、レーダーセンシング方式ではゴルフクラブのスイング軌跡を算出するのがかなり難しい側面がある。
【0049】
そこで本発明は、ゴルフクラブのヘッドとボールが出会うインパクト時点を特定し、そのインパクト時点を基準として、それ以前と以後のそれぞれのゴルフクラブのヘッドの位置座標を特定していく方法により、ゴルフクラブのスイング軌跡を算出することとした。(以下では、「ゴルフクラブの位置」又は「ゴルフクラブの座標」などと表現するものは、いずれも「ゴルフクラブのヘッドの位置又は座標」の意味で使用される。)
【0050】
特に、本発明はゴルフクラブのスイング軌跡を容易に算出するために、「軌跡表示領域」という仮想の領域をプログラム上で生成し、その領域上でゴルフクラブの座標を表示し、その表示された多数の座標の傾向を把握することによりスイング軌跡を導き出す方法を提供する。
【0051】
上記のような軌跡表示領域の一例を図5及び図6に示している。
【0052】
本発明は上記のような軌跡表示領域として、図5及び6に図示されているように、上から見た第1座標平面(VR1)と、側面から見た第2座標平面(VR2)をそれぞれ生成することができる。
【0053】
図5の(a)、(c)及び(e)と、図6の(a)に示されたものが第1座標平面(VR1)を示したものであり、図5の(b)、(d)及び(f)と、図6の(b)に示されたものが第2座標平面(VR2)を示したものである。
【0054】
軌跡表示領域は、第1座標平面(VR1)及び第2座標平面(VR2)のいずれか少なくとも一つを含めることができ、二次元領域ではなく三次元の仮想領域を含むこともできる。
【0055】
軌跡表示領域が二次元領域であれ三次元領域であれ、ゴルフクラブの座標算出のやり方と、そこからスイング軌跡を算出するやり方は同一である(第1及び第2座標平面上の同一位置の座標は三次元空間上の座標に転換され得るからである)。
【0056】
従って、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の情報算出部140は、ゴルフクラブとボールのインパクト時点を特定し、レーダーセンシングデータからゴルフクラブのスイング軌跡を表示するための軌跡表示領域を生成する。
【0057】
そして、軌跡表示領域上にインパクト時点でのインパクト位置を設定し、軌跡表示領域上におけるインパクト時点の位置を基準に、その前後の多数のセンシング時点でのゴルフクラブの座標を算出する。
【0058】
そのように、多数のセンシング時点でのゴルフクラブの座標算出によって生成されるゴルフクラブのスイング軌跡を算出するように構成されることがある。
【0059】
さらに具体的に説明すると、本発明のー実施例に沿ったレーダーセンシング装置の情報算出部140は、図4に示されるようなレーダーセンシングデータ(SD)のゴルフクラブに対する信号データ(CD)上のインパクト時点(Pti)以前と以後に予め設定された時間間隔でゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点(Pbi, Pai等)をそれぞれ特定し、インパクト時点以前のセンシング時点(Pbi等)それぞれでの位相と速度値を利用してセンシング時点それぞれでのゴルフクラブの座標値を算出し、その算出された座標値に該当する軌跡表示領域上の位置に座標を表示し(図5の(c)及び(d)に示されたCbi1及びCbi2がこれに該当する)、インパクト時点以後のセンシング時点(Pai等)それぞれでの位相と速度値を用いて、センシング時点それぞれでのゴルフクラブの座標値を算出し、算出された座標値に該当する軌跡表示領域上の位置に座標を表示することにより(図5の(e)及び(f)に示されたCai1及びCai2がこれに該当する)、軌跡表示領域上にゴルフクラブの座標データによって生成されるゴルフクラブのスイング軌跡を算出するように構成される。
【0060】
以下では、上記のような本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法について、図7に示されたフローチャートを用いて説明するが、スイング軌跡の算出に関する主な段階に関するさらに具体的な内容を図4から図6を併せて参照して説明することとする。
【0061】
図7を見ると、本発明に沿ったレーダーセンシング装置が図1に図示された例のように、レーダーセンシング装置とボールとの基準距離を予め設定された距離値になるように設置した状態で、レーダーセンシング装置がレーダー信号を送信し、動く物体(すなわち、ボールとゴルフクラブ)によって反射される信号を受信する(S100)。これは、信号送信部と信号受信部によってそれぞれ行われることは既に述べたところである。
【0062】
レーダーセンシング装置の信号分析部は、信号受信部が受信するレーダー信号を用いて、図4に示されたようなレーダーセンシングデータを生成する(S110)。
【0063】
上記のようなレーダーセンシングデータは、例えば時間軸と周波数軸のスペクトログラムとして生成され得ることは既に述べている。
【0064】
レーダーセンシングデータは、図4に示されるように、ボールに対する信号データ(BD)及びゴルフクラブに対する信号データ(CD)がそれぞれ区分されて示され、ボールに対する信号データ(BD)を用いてボールの運動に対するパラメータを算出し、ゴルフクラブに対する信号データ(CD)を用いてゴルフクラブのスイング軌跡等を算出することになる。
【0065】
一方、図7において、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の情報算出部は、上記のように信号分析部により生成されたレーダーセンシングデータのゴルフクラブに対する信号データを用いて、まずその信号データ上でインパクト時点、すなわちゴルフクラブのヘッドがボールに打撃を与える時点を特定する(S120)。
【0066】
図4を見ると、ボールの信号データ(BD)をもとにゴルフクラブの信号データ(CD)上の時点を特定し、インパクト時点(Pti)を決定することができる。
【0067】
例えば、ボールの信号データ(BD)の開始時間におけるゴルフクラブの信号データ(CD)上の時点を特定し、その時点でインパクト時点として決定することも、ゴルフクラブの信号データ(CD)上でゴルフクラブの最大速度にあたる時点(Pc)をもとにインパクト時点(Pti)を特定することもできる。
【0068】
再び図7に戻り、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の情報算出部は、ゴルフクラブのスイング軌跡を算出するために仮想領域である軌跡表示領域を生成する(S130)。
【0069】
軌跡表示領域は、図5に示されたように上から見た第1座標平面(VR1)と、側面から見た第2座標平面(VR2)を含むことができ、図5の(a)、(c)及び(e)に示されたものが第1座標平面(VR1)の例であり、図5の(b)、(d)及び(f)に示されたものが第2座標平面(VR2)の例である。
【0070】
レーダーセンシング装置の情報算出部は、S120段階でレーダーセンシングデータ上で特定されたインパクト時点(Pti)におけるゴルフクラブに対するレーダー信号の位相情報と、レーダーセンシング装置とボールが置かれた位置との間の距離である基準距離(Dr、図1参照)を用いて軌跡表示領域上でインパクト時点での位置、つまりインパクト位置を表示することにより、スイング軌跡算出の基準となるインパクト位置を設定する(S140)。
【0071】
図5の(a)は第1座標平面(VR1)上における基準距離を基準としてインパクト時点での位置、すなわちインパクト位置(Cti1)を設定し(ここでLrは第1座標平面(VR1)の中心線を示す)、図5の(b)は第2座標平面(VR2)上で地面(Lg)について基準距離を基準としてインパクト位置(Cti2)を設定することについて示している。
【0072】
第1座標平面(VR1)と第2座標平面(VR2)は、同一の仮想空間に対する一方と他方の座標平面を示し、第1座標平面(VR1)と第2座標平面(VR2)上の各点は同一の一つの三次元空間上の点を一方と他方でそれぞれ示したものである。すなわち、Cti1とCti2は同一の一つの点であり、後述する全ての座標の点がそれぞれ同一に対応される。
【0073】
第1座標平面(VR1)と第2座標平面(VR2)は、予め設定された座標系によって定義され、これは球形座標系でもよいし、直交座標系でもよい。例えば、図5の(a)、(c)及び(e)はx-y座標平面であり(横軸がx軸、縦軸がy軸)、図5の(b)、(d)及び(f)はy-z座標平面であり得る(横軸がy軸、縦軸がz軸)。
【0074】
上記のように軌跡表示領域上にインパクト時点の位置を設定した後、レーダーセンシング装置の情報算出部は、インパクト位置(Cti1、Cti2)を基準にそれ以前のゴルフクラブの座標(Cbi1、Cbi2)を算出し、インパクト位置(Cti1、Cti2)を基準にそれ以後のゴルフクラブの座標(Cai1、Cai2)を算出して全座標に基づくゴルフクラブのスイング軌跡を算出する。
【0075】
S200段階及びS210段階がインパクト時点以前のゴルフクラブの座標の算出に関するものであり、S300段階及びS310段階がインパクト時点以後のゴルフクラブの座標の算出に関するものである。
【0076】
まず、インパクト時点以前のゴルフクラブの座標を算出できるが、レーダーセンシング装置の情報算出部は、レーダーセンシングデータからインパクト時点以前の予め設定された時間間隔の多数のセンシング時点(すなわち、ゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点)を特定して(S200)、当該センシング時点でのゴルフクラブの位相と速度値からゴルフクラブの座標値を算出し、軌跡表示領域に表示する(S210)。
【0077】
そして、インパクト時点以後のゴルフクラブの座標を算出できるが、レーダーセンシング装置の情報算出部は、レーダーセンシングデータからインパクト時点以後の予め設定された時間間隔の多数のセンシング時点(すなわち、ゴルフクラブに対する反射波信号のセンシング時点)を特定して(S300)、当該センシング時点でのゴルフクラブの位相と速度値からゴルフクラブの座標値を算出し、軌跡表示領域に表示する(S310)。
【0078】
上記のS200及びS210のインパクト時点以前のゴルフクラブの座標を算出するのは、インパクト時点を基準に時間上逆順に特定されたそれぞれのセンシング時点でのゴルフクラブの位置づけと速度値を基に座標を算出し、上記のS300及びS310のインパクト時点以後のゴルフクラブの座標を算出するのは、インパクト時点を基準に時間順に特定されたそれぞれのセンシング時点でのゴルフクラブの位置づけと速度値をもとに座標を算出していく。
【0079】
これについて図4及び図5を参照し、さらに具体的に説明する。
【0080】
図4に示すレーダーセンシングデータ(SD)のゴルフクラブの信号データ(CD)におけるインパクト時点(Pti)を基準に、それ以前のセンシング時点での点(Pbi)とそれ以後のセンシング時点での点(Pai)が特定できる。
【0081】
インパクト時点(Pti)以前のそれぞれのセンシング時点で、ゴルフクラブに対する信号の周波数情報から速度値がわかり、当該センシング時点でのゴルフクラブの位相値がそれぞれ分かるので、そこから軌跡表示領域上でのゴルフクラブの位置座標を算出することができる。
【0082】
例えば、図4からインパクト時点(Pti)以前のセンシング時点pb1における位相値と速度値が特定でき、これを用いて図5の(c)に図示された第1座標平面(VR1)からインパクト位置座標(Cti1)以前の座標として上記のセンシング時点pb1に対応する点であるb1座標を算出することができる。そして、図5の(d)に図示された第2座標平面(VR2)からインパクト位置座標(Cti2)以前の座標として上記のセンシング時点pb1に対応する点b1'座標を算出できる。
【0083】
このことをさらに詳しく説明すると、図5の(a)に示された第1座標平面(VR1)におけるインパクト位置(Cti1)は基準距離を用いて特定されたが、それ以前のゴルフクラブの座標は不明な状態で、インパクト位置(Cti1)以前の未知の座標における位相値と速度値は図4のレーダーセンシングデータのpb1からわかる。
【0084】
すなわち、未知の座標点とインパクト位置座標点(Cti1)の間で位相値による二点間の角度と速度値による二点の間の距離がわかる。又は未知の点からインパクト位置の点への速度ベクトルとベクトル量がわかる。(速度ベクトルは方向、すなわち角度情報を含み、ベクトル量は距離情報を含むものである)。
【0085】
一点から他の一点への角度と距離の値を知り、二点中一点の座標が特定されていれば、そこから極座標系で特定されていない一点、すなわち未知の点の座標を算出することができる。極座標系での座標値は、直交座標系での座標値に容易に切り替わるため、結局その実質は同じである。
【0086】
つまり、図5の(c)に示された第1座標平面(VR1)においてb1座標とCti1座標がありb1座標は未知の点であるが、その点での位相値と速度値が分かり、またCti1(インパクト位置)座標は特定されているため、そこからb1座標の値を容易に計算できるのである。
もちろん、図5の(d)に示された第2座標平面(VR2)でb1'座標とCti2座標の間でb1'座標の座標値を算出することも上記のとおり,算出することができる。
【0087】
図5の(c)に示された第1座標平面(VR1)からb1座標が算出されると、それ以前のb2座標も同じ方式で算出され得る。すなわち、b2座標が定まっていない状態でその位置に対応するレーダーセンシングデータ(SD、図4参照)のゴルフクラブ信号データ(CD)上の対応する点pb2における位相値と速度値が分かり、またb1座標は既に特定されているので、そこからb2座標を算出することができる。
【0088】
同様に図5の(d)に図示された第2座標平面(VR2)でもb2'座標をレーダーセンシングデータ上の点pb2における位相値と速度値を用いて算出することができる。
【0089】
このような方式により、インパクト時点(Pti)以前の多数のセンシング時点(Pbi)それぞれにおけるゴルフクラブの位相値と速度値を用いて軌跡表示領域(VR1、VR2)上でインパクト位置座標(Cti1、Cti2)以前のゴルフクラブの座標(Cbi1、Cbi2)を算出して表示することができる。
【0090】
また、図4でレーダーセンシングデータ上のセンシング時点pa1における位相値と速度値を特定でき、これを用いて図5の(e)に示された第1座標平面(VR1)においてa1座標からpa1における位相値と速度値を満足する座標a2座標を算出でき、同様にpa1における位相値と速度値を用いて図5の(f)に示された第1座標で、(a2座標とa2'座標はレーダーセンシングデータ(SD)上のpa2に対応する)。
【0091】
このような方式で、インパクト時点(Pti)以後の多数のセンシング時点(Pai)それぞれにおけるゴルフクラブの位相値と速度値を用いて軌跡表示領域(VR1、VR2)上でインパクト位置座標(Cti1、Cti2)以後のゴルフクラブの座標(Cai1、Cai2)を算出して表示することができる。
【0092】
上記のような方法により、軌跡表示領域である第1座標平面(VR1)及び第2座標平面(VR2)それぞれにスイング中のゴルフクラブの位置座標を表示したものを図5の(e)及び(f)で示している。
【0093】
ところが、前述したように、ゴルフクラブの信号データの信号範囲が広く分布するため、ボールとは異なり、ゴルフクラブヘッドのいずれかの特徴点を特定し、その特徴点を基準にヘッドの軌跡を算出することは非常に困難であるため、図5の(e)及び(f)で見るように、ゴルフクラブの位置の座標分布が正確にスイング軌跡といえるほど現れていない。
【0094】
従って、信号データ(CD)により全般的なゴルフクラブヘッドの移動経路を基にした傾向性を見出し、それに基づいてスイング軌跡を算出することが望ましく、図5の(e)及び(f)で示したゴルフクラブの軌跡表示領域での座標分布を用いて、その傾向性を把握しスイング軌跡を算出したものを図6で示している。
【0095】
つまり、図6および図7を参照して説明すると、上記のようにインパクト時点以前のクラブ座標表示およびインパクト時点以降のクラブ座標表示がすべて完了する(S220、S320)、本発明の一実施例に沿ったレーダーセンシング装置の情報算出部は、上記のような軌跡表示領域に表示された座標データに対する予め設定されたデータ処理からゴルフクラブのスイング軌跡を算出する(S400)。
【0096】
上記のようなデータ処理は図5の(e)や(f)に示すような多数の座標データの分布を利用して最小自乗法等を用いた統計的分析処理であり、例えばRANSACアルゴリズム等を利用することができる。
【0097】
すなわち、図5の(e)および(f)に示すような多数の座標データに対して、RANSACのような統計的分析処理により有効データ(Inlier)と異常点(Outlier)を区分し、上記の異常点を除去して有効データに対して、例えばpolyfitのようなフィッティング(Fitting)処理を行うことにより図6の(a)や(b)に示したようなスイング(2)に示したような。
【0098】
図6の(a)に示したデータ(CP1)は図5の(e)に示した第1座標平面(VR1)上の座標データに対してRANSACアルゴリズムを用いた統計的分析処理を通じて有効データを導き出し、それに対してフィッティング処理した結果を示したものであり、図6の(b)に示したデータ(CP2)は図5の(f)に示した第2座標平面(VR2)上の座標処理に対して有効データを導き出したものである。
【0099】
このような方法により、ゴルフクラブのスイング軌跡を算出することができるが、そのように算出されたスイング軌跡が正常なスイング軌跡であるかどうかを検証することができる(S410)。
【0100】
例えば、最終的に算出されたスイング軌跡が第二座標平面で地面(Lg)の下を通過して形成される場合、これを正常なスイング軌跡とすることはできないだろう。
図7のS410段階のスイング軌跡の検証段階は、上記のような異常なスイング軌跡を判別する過程である。
【0101】
これは、多数の実験によって異常なスイング軌跡に関するデータを構築し、上記のように算出されたスイング軌跡が異常なスイング軌跡に関するデータを基に、正常なスイング軌跡であるかどうかを判別するプロセスへと進むこともできる。
【0102】
もし、スイング軌跡の検証過程において、算出されたスイング軌跡が正常なスイング軌跡と判断された場合には、当該スイング軌跡データを次のプロセスに伝達し(S420)、もし、異常なスイング軌跡と判断された場合には、当該スイング軌跡データを伝達しないようにする(S430)。
【0103】
ここで、上記のようなプロセスは、最終算出されたスイング軌跡データを用いてゴルフクラブの運動パラメータ、例えばクラブ経路(Club Path)、スイング方向(Swing Direction)、アタック角(Angle Of Attack)、ダイナミックロフト(Dynamic Loft)、スピンロフト(SpinLoft)などを算出するプロセスであることも可能であり、最終算出されたスイング軌跡データを、デバイスでつながっていることも可能である。
【0104】
以上述べたように、本発明はゴルファーがゴルフクラブにボールを打撃する際に、レーダー信号の分析によりボールに対する運動パラメータを算出することとは別に、レーダー信号の分析により、従来のレーダーセンシング装置が全く算出できなかったゴルフクラブの位置座標情報を算出し、そこからゴルフクラブのスイング軌跡を算出できるという長所がある。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に沿ったレーダーセンシングデータを用いたゴルフクラブのスイング軌跡の算出方法、及びそれを用いたレーダーセンシング装置は、ゴルフスイングによるボールの軌跡、打球分析等が行われるゴルフ関連産業分野と、仮想現実基盤のゴルフシミュレーションが映像実装されることにより、使用者に仮想のゴルフ競技を楽しめるようにするいわゆるスクリーンゴルフ産業分野等に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図5(f)】
図6(a)】
図6(b)】
図7