(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】運動エネルギ発生機構及びこれを用いた跳躍ロボット
(51)【国際特許分類】
F03G 1/02 20060101AFI20220712BHJP
F16H 33/02 20060101ALI20220712BHJP
F03G 1/00 20060101ALI20220712BHJP
A63H 11/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F03G1/02
F16H33/02 B
F03G1/00 A
A63H11/00 Z
(21)【出願番号】P 2018007604
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2017008109
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】吉川 健人
(72)【発明者】
【氏名】大槻 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉光 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 孝雄
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-304618(JP,A)
【文献】特開平07-160083(JP,A)
【文献】特開2011-032927(JP,A)
【文献】特開2006-051559(JP,A)
【文献】特表2002-509471(JP,A)
【文献】実開昭62-194395(JP,U)
【文献】特開平08-285034(JP,A)
【文献】特開平09-090517(JP,A)
【文献】特開2008-223747(JP,A)
【文献】特開平05-238285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 1/02
F16H 33/02
F03G 1/00
A63H 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及びこの反対の第2方向に回転駆動可能な入力軸と、
前記入力軸の回転に伴って回転する入力ギアと、
前記入力ギアから間隔をあけて配置された出力ギアと、
前記出力ギアの回転に伴って回転する出力軸と、
前記出力軸が回転する運動エネルギをポテンシャルエネルギとして蓄積可能に構成された蓄積部と、
前記入力ギアと係合し、前記入力軸が前記第1方向に回転するときに前記出力ギアに対して前記第1方向に係合し、前記入力軸が前記第2方向に回転するときに前記入力軸
を中心に前記第2方向に回転
し、前記蓄積部に蓄積されるポテンシャルエネルギの大きさによらず前記出力ギアに対する係合を解除するように構成された伝達ギアと、
前記入力軸と前記伝達ギアとを連結する連結部と、
前記入力軸の前記連結部に対する前記第1方向の回転を許容し、前記入力軸の前記連結部に対する前記第2方向の回転を規制する回転規制部と、
を具備する運動エネルギ発生機構。
【請求項2】
請求項
1に記載の運動エネルギ発生機構であって、
前記回転規制部は、前記入力軸と前記連結部とを接続している
運動エネルギ発生機構。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の運動エネルギ発生機構であって、
前記伝達ギアを前記出力ギアに向けて付勢する付勢部を更に具備する
運動エネルギ発生機構。
【請求項4】
請求項
1に記載の運動エネルギ発生機構であって、
前記回転規制部は、前記伝達ギアに係合可能な先端部を有するラチェットを含む
運動エネルギ発生機構。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の運動エネルギ発生機構であって、
前記蓄積部は、コイルバネと、前記出力ギアの回転運動を直線運動に変換する変換機構と、を有し、前記コイルバネに弾性エネルギを蓄積可能に構成されている
運動エネルギ発生機構。
【請求項6】
請求項
5に記載の運動エネルギ発生機構であって、
前記変換機構は、ラック・アンド・ピニオン機構を含む
運動エネルギ発生機構。
【請求項7】
請求項
5に記載の運動エネルギ発生機構であって、
前記変換機構は、前記出力軸の周囲に巻き取られることが可能な長尺体の伝達部材を含む
運動エネルギ発生機構。
【請求項8】
請求項
5から
7のいずれか1項に記載の運動エネルギ発生機構であって、
前記蓄積部は、前記コイルバネの引張変形によって弾性エネルギを蓄積可能に構成されている
運動エネルギ発生機構。
【請求項9】
請求項
5から
8のいずれか1項に記載の運動エネルギ発生機構であって、
前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方の回転数によって前記コイルバネに蓄積する弾性エネルギを制御可能な制御部を更に具備する
運動エネルギ発生機構。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の運動エネルギ発生機構と、前記運動エネルギ発生機構を保持する本体部と、を具備し、
前記運動エネルギ発生機構の前記蓄積部が脚部として構成される
跳躍ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動エネルギ発生機構及びこれを用いた跳躍ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
地上を跳躍しながら移動する跳躍ロボットや物体を空中に投擲する投擲装置などの様々な装置において、大規模な駆動源を用いることなく、瞬間的に大きい運動エネルギを発生させる技術が必要となる。例えば、特許文献1~3及び非特許文献1には、瞬間的に大きい運動エネルギを発生させることが可能な技術が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1及び非特許文献1に記載の技術では、コイルバネの圧縮変形により蓄積された弾性エネルギを一気に解放させることによって、瞬間的に大きい運動エネルギを発生させることが可能である。これらの技術では、変形カムを用いて、コイルバネにおける弾性エネルギの蓄積及び解放を繰り返し行うことができる。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、燃料を燃焼させることによって、瞬間的に大きい運動エネルギを発生させることが可能である。更に、特許文献3に記載の技術では、圧縮した空気の圧力を一気に解放することによって、瞬間的に大きい運動エネルギを発生させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2015/0352454号
【文献】米国特許第7775305号
【文献】米国特許第8579535号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Kovac, M., Fuchs, M., Guignard, A., Zufferey, J. C., & Floreano, D. (2008, May). A miniature 7g jumping robot. In Robotics and Automation, 2008. ICRA 2008. IEEE International Conference on (pp. 373-378). IEEE.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3及び非特許文献1に記載の技術ではいずれも、発生させる運動エネルギの大きさを調整することが難しい。例えば、特許文献1及び非特許文献1に記載の技術では、コイルバネの変形量が変形カムの形状に依存するため、コイルバネに蓄積させる弾性エネルギの調整が困難である。
【0008】
以上の問題を解決するために、本発明の目的は、発生させる運動エネルギの大きさを調整可能な運動エネルギ発生機構及びこれを用いた跳躍ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係る運動エネルギ発生機構は、入力軸と、入力ギアと、出力ギアと、出力軸と、蓄積部と、伝達ギアと、を具備する。
入力軸は、第1方向及びこの反対の第2方向に回転駆動可能である。
入力ギアは、入力軸の回転に伴って回転する。
出力ギアは、入力ギアから間隔をあけて配置されている。
出力軸は、出力ギアの回転に伴って回転する。
蓄積部は、出力軸が回転する運動エネルギをポテンシャルエネルギとして蓄積可能に構成されている。
伝達ギアは、入力ギアと係合し、入力軸が第1方向に回転するときに出力ギアに対して第1方向に係合し、入力軸が第2方向に回転するときに入力軸とともに第2方向に回転するように構成されている。
【0010】
この構成では、入力軸を第1方向に回転駆動させることによって、入力ギア、伝達ギア、及び出力ギアを介して、出力軸を回転させることができる。これにより、蓄積部に、入力軸の第1方向の回転量に応じた大きさのポテンシャルエネルギ(例えば、弾性エネルギ)を蓄積することができる。
また、この構成では、入力軸を第2方向に回転駆動させると、伝達ギアが入力軸とともに第2方向に回転し、伝達ギアの出力ギアに対する係合が解除される。これにより、蓄積部に蓄積されたポテンシャルエネルギが一気に解放されるため、瞬間的に大きい運動エネルギが得られる。
更に、この構成では、単一の駆動部(アクチュエータ)によって、ポテンシャルエネルギの蓄積及び解放が可能である。したがって、複雑な装置構成とすることなく、上記の機能を実現することができる。
【0011】
運動エネルギ発生機構は、入力軸と伝達ギアとを連結する連結部と、入力軸の連結部に対する第1方向の回転を許容し、入力軸の連結部に対する第2方向の回転を規制する回転規制部と、を更に具備してもよい。
回転規制部は、入力軸と連結部とを接続していてもよい。
これにより、複雑な構成を用いずに、入力軸を第2方向に回転駆動させることで伝達ギアの出力ギアに対する係合が解除される構成を実現することができる。
【0012】
運動エネルギ発生機構は、伝達ギアを出力ギアに向けて付勢する付勢部を更に具備してもよい。
この構成では、入力軸が第2方向のトルクを受けていない状態において、伝達ギアの出力ギアに対する係合を保持することができる。
【0013】
回転規制部は、前記伝達ギアに係合可能な先端部を有するラチェットを含んでいてもよい。
この構成では、シンプルで軽量な構成で回転規制部の機能を実現可能である。
【0014】
蓄積部は、コイルバネと、出力ギアの回転運動を直線運動に変換する変換機構と、を有し、コイルバネに弾性エネルギを蓄積可能に構成されていてもよい。
変換機構は、ラック・アンド・ピニオン機構を含んでいてもよい。
変換機構は、出力軸の周囲に巻き取られることが可能な長尺体の伝達部材を含んでいてもよい。
これらの構成では、出力ギアが回転する運動エネルギを弾性エネルギとしてコイルバネに蓄積することができる。そして、コイルバネに蓄積された弾性エネルギを直線運動の運動エネルギとして出力可能である。
【0015】
蓄積部は、前記コイルバネの引張変形によって弾性エネルギを蓄積可能に構成されていてもよい。
この構成の引張型のコイルバネでは、引張変形時に歪みが発生することなく、安定して弾性エネルギを蓄積することができる。
【0016】
運動エネルギ発生機構は、入力軸及び出力軸の少なくとも一方の回転数によってコイルバネに蓄積する弾性エネルギを制御可能な制御部を更に具備してもよい。
この構成では、コイルバネに蓄積する弾性エネルギの大きさを制御することにより、狙い通りの大きさの直線運動の運動エネルギを出力することができる。
【0017】
本発明の一形態に係る跳躍ロボットは、運動エネルギ発生機構と、運動エネルギ発生機構を保持する本体部と、を具備する。
この跳躍ロボットでは、運動エネルギ発生機構の蓄積部が脚部として構成されている。
この跳躍ロボットは、脚部として構成される蓄積部におけるポテンシャルエネルギの蓄積及び解放を繰り返すことにより、地上を跳躍しながら移動可能なように構成することができる。また、この跳躍ロボットでは、蓄積部におけるポテンシャルエネルギの蓄積量を様々に変更することにより、1回の跳躍あたりの移動距離を調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構の正面図である。
【
図4】上記運動エネルギ発生機構の
図2のA-A線に沿った断面図である。
【
図6】上記運動エネルギ発生機構における弾性エネルギの蓄積及び解放の動作の時系列シーケンスを示すグラフである。
【
図7】上記運動エネルギ発生機構の変形例を示す断面図である。
【
図8】上記運動エネルギ発生機構を備えた跳躍ロボットの斜視図である。
【
図9A】上記運動エネルギ発生機構を備えたコアラ撃ち込み装置の断面図である。
【
図10】上記運動エネルギ発生機構を用いた搬送装置の側面図である。
【
図11】上記運動エネルギ発生機構を用いたサッカーロボットの側面図である。
【
図12】上記運動エネルギ発生機構を用いた投擲装置の断面図である。
【
図13A】上記運動エネルギ発生機構を用いた減速装置の正面図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係る運動エネルギ発生機構の正面図である。
【
図15】上記運動エネルギ発生機構の正面図である。
【
図16】上記運動エネルギ発生機構の正面図である。
【
図17】本発明の第3の実施形態に係る運動エネルギ発生機構の断面図である。
【
図18】上記運動エネルギ発生機構の断面図である。
【
図19】本発明の第4の実施形態に係る運動エネルギ発生機構の断面図である。
【
図20】上記運動エネルギ発生機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態によって限定的に解釈されるものではない。
【0020】
[I]第1の実施形態
1.運動エネルギ発生機構1
図1は、本発明の第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構1を模式的に示す正面図である。
図1には、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。なお、X軸、Y軸、及びZ軸は、後述の
図2以降においても共通である。
【0021】
運動エネルギ発生機構1は、入力軸10と、伝達部20と、出力軸30と、弾性機構40と、フレーム部50と、を有する。フレーム部50は、後述する
図8に示す跳躍ロボット100の本体部101などに固定される。フレーム部50は、X軸方向に対向する2枚の平板状の保持板51と、保持板51間をX軸方向に延びるビーム52と、を有する。
【0022】
入力軸10は、保持板51間をX軸方向に延び、ビーム52のZ軸方向上側において保持板51に回転可能に支持されている。出力軸30は、保持板51間をX軸方向に延び、入力軸10の更にZ軸方向上側において保持板51に回転可能に支持されている。なお、入力軸10及び出力軸30の位置は様々に変更可能である。
【0023】
運動エネルギ発生機構1は、駆動部11と、減速機12と、を更に有する。駆動部11及び減速機12は、一方の(
図1では右側の)保持板51の内側の面に保持されている。駆動部11は、入力軸10を回転させる駆動力を生成する。減速機12は、駆動部11の回転数を減少させ、高トルクの駆動力を入力軸10に伝達する。
【0024】
駆動部11は、例えば、電磁モータを用いて構成することができる。しかし、駆動部11は、これに限定されず、超音波モータ、静電モータなどの各種モータを用いて構成することもできる。更に、駆動部11は、例えば、CNTアクチュエータ、誘電エラストマアクチュエータなどの各種アクチュエータを用いて構成することもできる。
【0025】
減速機12は、例えば、ウォームギア及びウォームホイールを用いて構成することができる。なお、減速機12は、これに限定されず、他のギアを用いた構成であってもよく、ボール減速機やローラ減速機などのギアを用いない構成であってもよい。減速機12における減速比は、例えば、40:1とすることができる。
【0026】
伝達部20は、入力軸10の回転する駆動力を出力軸30に伝達することによって、出力軸30を回転させることができる。また、伝達部20は、入力軸10から出力軸30への駆動力の伝達を解除することもできる。伝達部20においてこのような機能を実現するための構成については下記の「2.伝達部20」で説明する。
【0027】
弾性機構40は、シャフト41と、コイルバネ42と、支持部43と、ストッパ44と、変換機構45と、を有する。弾性機構40は、コイルバネ42の圧縮変形により弾性エネルギを蓄積可能な蓄積部として構成される。シャフト41は、Z軸方向に延びる細長い棒状に形成されており、各保持板51の外側にそれぞれ配置されている。なお、シャフト41の数は、2本に限定されず、1本であっても3本以上であってもよい。
【0028】
コイルバネ42は、各シャフト41に挿通されている。支持部43は、X軸方向に延びる棒状に形成され、2本のシャフト41のZ軸方向下部に掛け渡されている。ストッパ44は、各シャフト41のZ軸方向上部にそれぞれ取り付けられている。つまり、支持部43及びストッパ44は、コイルバネ42を介してZ軸方向に対向している。
【0029】
変換機構45は、各シャフト41のコイルバネ42とストッパ44との間に配置され、シャフト41に沿ってZ軸方向に移動可能に構成されている。また、変換機構45は、各保持板51の外側の面に固定されている。つまり、弾性機構40は、変換機構45においてフレーム部50に固定されている。
【0030】
図1に示す状態では、コイルバネ42が、支持部43と変換機構45とに挟まれて、Z軸方向に圧縮変形している。このため、変換機構45は、コイルバネ42にZ軸方向上方(+Z軸方向)に押圧されて、ストッパ44に押し付けられている。これにより、変換機構45のシャフト41に沿ったZ軸方向下方(-Z軸方向)への移動が規制されている。
【0031】
また、出力軸30は、各保持板51をX軸方向に貫通しており、各変換機構45に接続されている。変換機構45は、出力軸30の回転運動を、変換機構45自体のZ軸方向下方(-Z軸方向)への直線運動に変換可能に構成されている。変換機構45の構成は、特定のものに限定されない。
【0032】
例えば、変換機構45は、出力軸30とともに回転するピニオンと、シャフト41に沿って設けられたラックと、を含むラック・アンド・ピニオン機構として構成することができる。この構成では、出力軸30の回転に伴うピニオンの回転によって、変換機構45がシャフト41に沿ってコイルバネ42を圧縮変形させながらZ軸方向下方(-Z軸方向)に移動する。
【0033】
図2は、変換機構45がシャフト41に沿ってZ軸方向下方(-Z軸方向)に移動し、コイルバネ42が圧縮変形させられている状態を示す図である。このとき、変換機構45に接続された保持板51を含むフレーム部50が変換機構45とともにZ軸方向下方(-Z軸方向)に移動するため、フレーム部50に保持されている各構成もZ軸方向下方(-Z軸方向)に移動している。
【0034】
図2に示す状態では、コイルバネ42に、変換機構45をZ軸方向上方(+Z軸方向)に押し戻そうとする弾性エネルギが蓄積されている。この状態において、伝達部20によって入力軸10から出力軸30への駆動力の伝達を解除すると、
図3に示すように、コイルバネ42に蓄積された弾性エネルギが一気に解放され、変換機構45がZ軸方向上方(+Z軸方向)に急激に押し戻される。このように、運動エネルギ発生機構1では直線運動の運動エネルギを発生させることができる。
【0035】
運動エネルギ発生機構1では、出力軸30の回転数に応じて、変換機構45のZ軸方向下方(-Z軸方向)への移動量、すなわちコイルバネ42の弾性変形量が変化する。つまり、出力軸30の回転数によってコイルバネ42に蓄積させる弾性エネルギの大きさを変更することにより、発生させる運動エネルギの大きさを調整可能である。
【0036】
2.伝達部20
図4は、運動エネルギ発生機構1の
図1のA-A線に沿った断面を示す模式図である。つまり、
図4は、X軸方向から見た伝達部20の構成を示している。伝達部20は、入力ギア21と、出力ギア22と、伝達ギア23と、連結部24と、付勢部25と、回転規制部26と、を有する。
【0037】
入力ギア21は、入力軸10に挿通され、入力軸10とともに回転する。出力ギア22は、出力軸30に挿通され、出力軸30とともに回転する。入力ギア21及び出力ギア22は、Z軸方向に離間しており、つまり相互に係合していない。入力ギア21及び出力ギア22は、伝達ギア23を介して接続可能である。
【0038】
伝達ギア23は、入力ギア21と出力ギア22との間の隙間にY軸方向右側に隣接して配置されている。伝達ギア23は、入力ギア21と係合しており、出力ギア22とも係合可能に構成されている。
図4に示す状態では、伝達ギア23は、出力ギア22とも係合しており、入力ギア21と出力ギア22とを接続している。
【0039】
連結部24は、相互に交差する2つの帯状の部分を有するL字型の部材であり、交差部分に入力軸10が挿通されている。連結部24の右上方向に延びる部分には、伝達ギア23を回転可能に支持する支軸24aが設けられている。連結部24の右下方向に延びる部分には、X軸方向に突出し、ビーム52に対向する押圧部24bが設けられている。
【0040】
連結部24は、入力ギア21と伝達ギア23とが係合した状態で、入力軸10と伝達ギア23とを連結している。このため、伝達ギア23は、入力ギア21及び連結部24と一体として、入力軸10を中心に回転可能である。つまり、伝達ギア23は、入力軸10を中心に回動することによって出力ギア22に対して離接可能である。
【0041】
付勢部25は、シャフト25aと、コイルバネ25bと、ストッパ25c,25dと、を有する。シャフト25aは、細長い棒状に形成されており、ビーム52と、連結部24の押圧部24bと、を挿通している。コイルバネ25bは、シャフト25aに挿通され、ビーム52と押圧部24bとの間に配置されている。
【0042】
ストッパ25cは、シャフト25aのビーム52より外側の位置に取り付けられ、シャフト25aがビーム52から抜けることを防いでいる。ストッパ25dは、シャフト25aの押圧部24bより外側の位置に取り付けられ、シャフト25aが押圧部24bから抜けることを防いでいる。
【0043】
コイルバネ25bは、ビーム52と押圧部24bとに挟まれて、常に圧縮変形している。このため、連結部24は、コイルバネ25bから入力軸10を中心とする左回りのトルクを受ける。これにより、連結部24に支持された伝達ギア23が出力ギア22に向けて付勢されるため、伝達ギア23の出力ギア22に対する係合が保持される。
【0044】
なお、付勢部25は、伝達ギア23を出力ギア22に向けて付勢することが可能であればよく、上記の構成でなくてもよい。例えば、付勢部25は、板バネやゼンマイバネやねじりバネなどのコイルバネ以外のバネを用いた構成や、各種弾性体や圧縮空気などを用いた構成であってもよい。
【0045】
回転規制部26は、入力軸10と連結部24とに接続されている。回転規制部26は、入力軸10の連結部24に対する左回りの回転を許容し、入力軸10の連結部24に対する右回りの回転を規制するように構成される。回転規制部26は、特定の構成に限定されず、例えば、ワンウェイクラッチとして構成することができる。
【0046】
図4に示すように、入力軸10は、左回り(矢印L方向)に回転するとき、回転規制部26によって連結部24に対する回転が許容されるため、伝達ギア23を右回り(矢印R方向)に回転させる。伝達ギア23は、付勢部25の作用によって出力ギア22に係合しているため、出力ギア22を左回り(矢印L方向)に回転させる。
【0047】
このように、伝達部20は、入力軸10を左回りに回転させるときに、入力軸10の駆動力を入力ギア21、伝達ギア23、及び出力ギア22を介して出力軸30に伝達する。したがって、運動エネルギ発生機構1では、入力軸10を左回りに回転させることによって、
図2に示すようにコイルバネ42に弾性エネルギを蓄積することができる。
【0048】
図5は、
図4に示す状態から、入力軸10を右回り(矢印R方向)に少し回転させた状態を示す図である。入力軸10は、右回り(矢印R方向)に回転するとき、回転規制部26によって連結部24に対する回転が規制されるため、付勢部25による左回りのトルクに抗して連結部24を右回りに回転させる。
【0049】
このとき、伝達ギア23が出力ギア22から離間し、出力ギア22と伝達ギア23との間に隙間Gが発生する。つまり、入力軸10を右回り(矢印R方向)に回転させることにより、出力ギア22の伝達ギア23に対する係合が解除される。なお、付勢部25のコイルバネ25bは、連結部24の押圧部24bに押圧されて更に圧縮変形する。
【0050】
これにより、出力ギア22が伝達ギア23による拘束を受けなくなるため、出力ギア22に接続された出力軸30は自由に回転することが可能となる。したがって、コイルバネ42の弾性エネルギが一気に解放されるとともに、出力軸30が右回り(矢印R方向)に勢いよく回転する。
【0051】
この後、入力軸10への右回り(
図5の矢印R方向)へのトルクが解除されると、付勢部25から連結部24に加わる左回りのトルクによって、伝達ギア23が再び出力ギア22に対して係合する。これにより、
図4に示す状態に戻り、再び、入力軸10の右回りの回転によってコイルバネ42に弾性エネルギを蓄積することが可能となる。
【0052】
図6は、運動エネルギ発生機構1における弾性エネルギの蓄積及び解放の動作の時系列シーケンスを示すグラフである。
図6の横軸は、時刻tを示している。
図6の上図の縦軸は、入力軸10の回転速度を示している。
図6の下図の縦軸は、コイルバネ42に蓄積されている弾性エネルギの大きさを示している。
【0053】
図6の上図では、回転速度が正の場合には入力軸10が
図4に示す矢印L方向に回転しており、回転速度が負の場合には入力軸10が
図5に示す矢印R方向に回転しているものとしている。
【0054】
時刻t
0において駆動部11の動作を開始し、つまり
図4に示すように入力軸10の矢印L方向の回転を開始する。時刻t
0から時刻t
1まで駆動部11を動作させて入力軸10を等速で回転させると、コイルバネ42には所定の弾性エネルギFが蓄積される。コイルバネ42に蓄積する弾性エネルギFは、駆動部11の動作時間で制御可能である。
【0055】
時刻t
1において入力軸10の回転を停止すると、
図2に示すようにコイルバネ42に弾性エネルギFが蓄積された状態で保持される。そして、時刻t
2において
図5に示すように入力軸10を矢印R方向に回転させた瞬間に、コイルバネ42に蓄積された弾性エネルギFが一気に解放される。
【0056】
上記のとおり、運動エネルギ発生機構1では、入力軸10の回転方向を変更するだけで、コイルバネ42に弾性エネルギの蓄積する動作と、コイルバネ42に蓄積された弾性エネルギを解放する動作と、を切り替えることが可能である。したがって、運動エネルギ発生機構1では、これらの各動作を単一の駆動部11によって実行可能である。
【0057】
また、運動エネルギ発生機構1は制御部を具備していてもよい。制御部は、入力軸10及び出力軸30の少なくとも一方の回転数によってコイルバネ42に蓄積させる弾性エネルギの大きさの制御が可能であり、入力軸10の回転方向によって弾性エネルギの蓄積と解放との切り替えの制御が可能なように構成することができる。このように、運動エネルギ発生機構1では、各動作の制御が容易であるため、高度な制御部を必要としない。
【0058】
更に、運動エネルギ発生機構1では、消耗品が存在しないため、駆動部11を駆動させるための電力などの動力源を供給し続けることにより、繰り返し動作可能である。加えて、運動エネルギ発生機構1では、複雑な構成を必要としないため、小型化や軽量化が容易である。
運動エネルギ発生機構1では、蓄積されたコイルバネ42の弾性エネルギを、シャフト41に沿ったZ軸方向へ解放する直線運動の運動エネルギとして出力しているので、一定方向への瞬間的な駆動力を出力することが可能となる。
【0059】
なお、回転規制部26は、入力軸10と連結部24とに接続された構成に限らず、
図7に示すように伝達ギア23と連結部24とに接続された構成であってもよい。この場合、回転規制部26は、伝達ギア23の連結部24に対する右回りの回転を許容し、伝達ギア23の連結部24に対する左回りの回転を規制する。
【0060】
図7に示す構成では、入力軸10及び入力ギア21を右回り(矢印R方向)に回転させると、左回りの回転が規制されている伝達ギア23が入力ギア21のトルクによって入力軸10を中心に右回りに回転させられる。これにより、伝達ギア23が出力ギア22から離間し、出力ギア22と伝達ギア23との間に隙間Gが形成される。
【0061】
3.跳躍ロボット100
図8は、運動エネルギ発生機構1を用いた跳躍ロボット100の斜視図である。跳躍ロボット100は、本体部101と、ホイール部102と、運動エネルギ発生機構1と、を具備する。跳躍ロボット100は、運動エネルギ発生機構1によって発生させた運動エネルギを利用して、地上を跳躍しながら移動可能な移動ロボットである。
【0062】
本体部101は、跳躍ロボット100の本体を構成し、跳躍ロボット100の用途に応じた様々な構成が搭載される。例えば、本体部101にカメラを搭載することにより、跳躍ロボット100から見える風景の画像や映像を撮影可能となる。また、本体部101には、画像や映像を通信により送信可能な通信部を搭載することもできる。
【0063】
ホイール部102は、略半球状の外面102aと、支軸102bと、を有する。支軸102bは、本体部101から前方に向けて斜め下側に延び、ホイール部102の内面の中央部に接続している。ホイール部102は、支軸102bを中心に回転可能である。ホイール部102は、外面102aが地面に接触した状態で本体部101を保持する。
【0064】
運動エネルギ発生機構1は本体部101に設けられ、
図1に示すフレーム部50の保持板51が本体部101に固定されている。跳躍ロボット100では、弾性機構40のシャフト41が本体部101から後方に向けて斜め下方に延びている。弾性機構40は、シャフト41の先端部に設けられたパッド(不図示)が地面に接触した状態で本体部101を保持する脚部として構成される。パッドの形状は任意に決定可能である。
【0065】
つまり、地上における跳躍ロボット100は、ホイール部102の外面102aと、弾性機構40の2本のシャフト41の先端部に設けられたパッドと、において地面に接触している。これにより、跳躍ロボット100は、平滑でない凹凸形状の地面においても安定した姿勢を保つことが可能である。
【0066】
なお、本体部101に対する弾性機構40のシャフト41の取り付け角度は、跳躍ロボット100の跳躍角度に応じて自由に設計可能である。一例として、跳躍ロボット100では、シャフト41が収縮した状態で、シャフト41の地面に対する角度が45°となるように設定することができる。
【0067】
運動エネルギ発生機構1が
図2に示す状態のとき、跳躍ロボット100では、
図8に示す状態よりも、弾性機構40のシャフト41のうち本体部101より下方に延びる部分が短くなっている。つまり、フレーム部50を保持する本体部101がフレーム部50とともに下降してホイール部102を支点として下方に傾き、跳躍ロボット100が低い姿勢となっている。
【0068】
図2に示す状態の運動エネルギ発生機構1では、コイルバネ42に、変換機構45をZ軸方向上方(+Z軸方向)に押し戻そうとする弾性エネルギが蓄積されている。この状態において、伝達部20によって入力軸10から出力軸30への駆動力の伝達を解除すると、コイルバネ42に蓄積された弾性エネルギが一気に解放される。
【0069】
このとき、運動エネルギ発生機構1では、
図3に示すように、コイルバネ42の弾性エネルギによって変換機構45がZ軸方向上方(+Z軸方向)に急激に押し戻され、すなわちシャフト41が跳躍ロボット100の本体部101より下方に急激に伸長する。これにより、跳躍ロボット100が前方に跳躍する。
【0070】
また、跳躍ロボット100は、ホイール部102を回転させることにより、後部に取り付けられた軸部品を中心として旋回することができる。これにより、跳躍ロボット100は、地面に沿って向きを変更することができる。したがって、跳躍ロボット100は、任意の方向に移動することが可能な移動ロボットである。
【0071】
このように、跳躍ロボット100は、弾性機構40のシャフト41を伸縮させて地面を蹴ることにより、前方に跳躍することが可能である。これにより、跳躍ロボット100では、平滑でない凹凸形状の地面においても、前方への移動が容易となる。また、跳躍ロボット100は、進路を阻む障害物を跳躍によって飛び越えることもできる。
【0072】
このため、跳躍ロボット100は、例えば、地震などで土砂が堆積した地域においても移動可能である。また、跳躍ロボット100は、地球上のみならず、月面などの天体上においても移動可能である。特に、跳躍ロボット100は、地面の状態が把握できていない未知の天体上においても移動可能である。
【0073】
4.運動エネルギ発生機構1の他の用途
本実施形態に係る運動エネルギ発生機構1は、上述の跳躍ロボット100以外にも、例えば産業用機械や玩具などといった様々な分野において利用可能である。以下、様々な分野における運動エネルギ発生機構1の用途について例示するが、運動エネルギ発生機構1の用途はこれらに限定されない。
【0074】
4.1 コアラ撃ち込み装置200
コアラは、土や泥などの土壌の構成物質を採取するための筒状の部材である。つまり、コアラを土壌に突き刺し、回収することにより、コアラの内部に充填された土壌の構成物質を採取することができる。コアラを土壌に突き刺す際には、コアラを強い力で土壌に撃ち込む必要がある。
【0075】
図9A,9Bは、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構1を用いたコアラ撃ち込み装置200を模式的に示す断面図である。コアラ撃ち込み装置200は、本体部201と、放出部202と、を具備する。本体部201は、棒状に形成されている。運動エネルギ発生機構1及び放出部202は、本体部201内に長手方向に並べて配置されている。
【0076】
本体部201には、運動エネルギ発生機構1から長手方向一端に延びる開口部203と、放出部202から長手方向他端に延びる開口部204と、が形成されている。運動エネルギ発生機構1の弾性機構40は、開口部203に沿って延びている。放出部202は、開口部204からカウンタマスを放出することができる。
【0077】
コアラ撃ち込み装置200では、
図9Aに示すように、弾性機構40に弾性エネルギを蓄積した状態で、コアラM1が弾性機構40の先端に接触するように開口部203内にセットされる。弾性機構40に蓄積する弾性エネルギは、コアラM1を撃ち込む強さに応じて決定可能である。
【0078】
図9Aに示す状態で、弾性機構40に蓄積された弾性エネルギを解放することにより、
図9Bに示すようにコアラM1が開口部203から勢いよく撃ち出される。また、弾性エネルギを解放する瞬間に、放出部202によって開口部204からカウンタマスを放出することにより、本体部201に加わる衝撃をキャンセルすることができる。
【0079】
4.2 搬送装置300
図10は、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構1を用いた搬送装置300を模式的に示す側面図である。搬送装置300は、搬送台301を具備する。搬送装置300では、搬送台301の上面において物体M2を滑動させることにより物体M2を搬送する。運動エネルギ発生機構1のフレーム部50は搬送台301の上面に固定されている。
【0080】
弾性機構40は、搬送台301の上面に沿って延びている。搬送装置300では、弾性機構40に弾性エネルギを蓄積した状態で、物体M2が弾性機構40の先端に接触するようにセットされる。そして、弾性機構40に蓄積された弾性エネルギを解放することにより、物体M2は、弾性機構40に強く押圧され、搬送台301の上面を滑動する。
【0081】
4.3 サッカーロボット400
図11は、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構1を用いたサッカーロボット400を模式的に示す側面図である。サッカーロボット400は、本体部401と、車輪402と、を有する。サッカーロボット400は、車輪402によってフィールドを移動しながらサッカーをプレイできるように構成されている。
【0082】
サッカーロボット400では、運動エネルギ発生機構1の弾性機構40が本体部401から前方に突出している。サッカーロボット400では、弾性エネルギを蓄積した状態の弾性機構40の先端をサッカーボールM3に接触させ、弾性機構40に蓄積された弾性エネルギを解放する。これにより、サッカーボールM3を強く蹴ることができる。
【0083】
4.4 投擲装置500
図12は、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構1を用いた投擲装置500を模式的に示す断面図である。投擲装置500は、本体部501を有する。本体部501は、底部が閉塞された細長い筒状に形成されている。運動エネルギ発生機構1は、本体部501内の底部に、弾性機構40を開放された先端部に向けた状態で配置される。
【0084】
投擲装置500では、弾性機構40に弾性エネルギを蓄積した状態で、投擲の対象となるボールなどの物体M4が弾性機構40の先端に接触するように本体部501の内部にセットされる。そして、弾性機構40に蓄積された弾性エネルギを解放することにより、物体M4が本体部501の先端部から勢いよく投げ出される。
【0085】
4.5 減速装置600
図13A,13Bは、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構1を用いた減速装置600を模式的に示す正面図である。減速装置600は、単数又は複数の運動エネルギ発生機構1によって構成される。減速装置600は、落下する物体M5の落下速度を着地直前に減速させることにより、物体M5の着地時の衝撃を低減することができる。
【0086】
図13Aに示すように、減速装置600では、運動エネルギ発生機構1の弾性機構40の先端が、物体M5の下面に取り付けられている。そして、物体M5が着地する前に、
図13Aに示すように弾性機構40に弾性エネルギを蓄積し、
図13Bに示すように弾性機構40に蓄積された弾性エネルギを解放する。
【0087】
これにより、弾性機構40が物体M5の下面を蹴り上げ、各運動エネルギ発生機構1が下方に勢いよく落下する。このとき、各運動エネルギ発生機構1から物体M5に上方への力が加わるため、物体M5の落下速度が減速する。なお、減速装置600における運動エネルギ発生機構1の数は適宜決定可能である。
【0088】
[II]第2の実施形態
図14は、本発明の第2の実施形態に係る運動エネルギ発生機構701を模式的に示す正面図である。
図14は、第1の実施形態に係る
図1に対応する。本実施形態に係る運動エネルギ発生機構701について、第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構1と共通の構成には同一の符号を用いる。
【0089】
本実施形態に係る運動エネルギ発生機構701は、以下に特に説明する構成以外について、第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構1と同様に構成されている。運動エネルギ発生機構701には、第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構1の弾性機構40とは異なる弾性機構740が設けられている。
【0090】
より詳細に、第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構1の弾性機構40では、変換機構45と支持部43との間に、圧縮型のコイルバネ42が配置されていた。これに対し、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構701の弾性機構740では変換機構45とストッパ44との間に、引張型のコイルバネ742が配置されている。
【0091】
弾性機構740では、コイルバネ742の一方の端部が変換機構45のZ軸方向上面(+Z軸方向を向いた面)に固定され、コイルバネ742の他方の端部がストッパ44のZ軸方向下面(-Z軸方向を向いた面)に固定されている。つまり、コイルバネ742は、シャフト41にX軸方向に隣接する位置において、ストッパ44と変換機構45とを接続している。
【0092】
これにより、変換機構45がZ軸方向下方(-Z軸方向)に移動すると、コイルバネ742は、ストッパ44と変換機構45とに引っ張られて、弾性変形によってZ軸方向に伸長する。つまり、弾性機構740は、コイルバネ742の引張変形により弾性エネルギを蓄積可能な蓄積部として構成される。
【0093】
図15は、変換機構45がシャフト41に沿ってZ軸方向下方(-Z軸方向)に移動し、コイルバネ742が引張変形させられている状態を示す図である。このとき、変換機構45に接続された保持板51を含むフレーム部50が変換機構45とともにZ軸方向下方(-Z軸方向)に移動するため、フレーム部50に保持されている各構成もZ軸方向下方(-Z軸方向)に移動している。
【0094】
図15に示す状態では、コイルバネ742に、変換機構45をZ軸方向上方(+Z軸方向)に引き上げようとする弾性エネルギが蓄積されている。この状態において、伝達部20によって入力軸10から出力軸30への駆動力の伝達を解除すると、コイルバネ742に蓄積された弾性エネルギが一気に解放される。
【0095】
これにより、
図16に示すように、変換機構45がZ軸方向上方(+Z軸方向)に急激に引き上げられる。このように、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構701では、入力軸10を回転させる駆動力によって、Z軸方向に沿った直線運動の運動エネルギを発生させることができる。
【0096】
運動エネルギ発生機構701では、引張型のコイルバネ742を用いることにより、コイルバネ742に座屈などの歪みを発生させることなく、安定して弾性エネルギを蓄積することができる。このため、運動エネルギ発生機構701では、蓄積される弾性エネルギの損失を抑制することができる。
【0097】
なお、コイルバネ742の配置は、任意に決定可能である。例えば、コイルバネ742はシャフト41内に配置されていてもよく、コイルバネ742内にシャフト41が挿通されていてもよい。また、各ストッパ44及び変換機構45ごとに複数のコイルバネ742が設けられていてもよい。
【0098】
[III]第3の実施形態
図17は、本発明の第3の実施形態に係る運動エネルギ発生機構801の断面図である。
図17は、第1の実施形態に係る
図4に対応する。本実施形態に係る運動エネルギ発生機構801について、第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構1と共通の構成には同一の符号用いる。
【0099】
本実施形態に係る運動エネルギ発生機構801は、以下に特に説明する構成以外について、第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構1と同様に構成されている。運動エネルギ発生機構801には、第1の実施形態に係る運動エネルギ発生機構1の伝達部20とは異なる伝達部820が設けられている。
【0100】
より詳細に、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構801の伝達部820には、ラチェット826が設けられている。また、運動エネルギ発生機構801には、1の実施形態に係るビーム52に代えて、ラチェット826を回転可能に支持するためのラチェット軸852(第4の実施形態に係る
図20参照)が設けられている。
【0101】
ラチェット軸852は、入力軸10、出力軸30、及び支軸24aよりもZ軸方向上側(Z軸方向プラス側)であって、入力軸10及び支軸24aの中心軸を通る平面Pよりも出力軸30側に配置されている。ラチェット軸852は、入力軸10及び出力軸30と同様に保持板51間をX軸方向に延びている。
【0102】
ラチェット826は、平面Pよりも出力軸30側において伝達ギア23に係合する先端部826aを有する。ラチェット826には右回りのトルクが付与され、先端部826aが伝達ギア23に向けて付勢されている。ラチェット826へのトルクの付与には、例えば、ゼンマイバネやねじりバネなどを用いることができる。
【0103】
伝達ギア23には、ラチェット826の先端部826aから加わる力によって、入力軸10を中心とする左回りのトルクが付与されている。これにより、伝達部820では、伝達ギア23が出力ギア22に付勢されている。つまり、伝達部820では、ラチェット826が、伝達ギア23を出力ギア22に付勢するための付勢部として機能する。
【0104】
また、ラチェット826の先端部826aは、伝達ギア23の支軸24aに対する右回りの回転を許容し、伝達ギア23の支軸24aに対する左回りの回転を規制可能な形状に形成されている。これにより、伝達部820では、ラチェット826が、伝達ギア23の回転を規制する回転規制部としても機能する。
【0105】
このように、本実施形態に係る伝達部820では、ラチェット826が付勢部及び回転規制部として機能する。このため、伝達部820では、第1の実施形態に係る伝達部20における付勢部25及び回転規制部26を設ける必要がなく、シンプルで軽量な構成を実現することができる。
【0106】
図17に示すように、伝達ギア23は、入力軸10が左回り(矢印L方向)に回転すると、これに伴って右回り(矢印R方向)に回転する。伝達ギア23が右回り(矢印R方向)に回転すると、ラチェット826によって伝達ギア23が付勢されている出力ギア22が左回り(矢印L方向)に回転する。
【0107】
図18は、
図17に示す状態から、入力軸10を右回り(矢印R方向)に少し回転させた状態を示す図である。伝達ギア23は、入力軸10の右回り(矢印R方向)の回転に伴う左回りの回転がラチェット826によって規制されている。このため、伝達ギア23は、入力ギア21とともに入力軸10を中心として右回り(矢印R方向)に回動する。
【0108】
なお、入力軸10のバックドライバビリティが良好な場合には、入力軸10を右回り(矢印R方向)に積極的に回転させなくても、入力軸10に加えるトルクをゼロにするだけでよい。この場合、出力ギア22は、コイルバネ42から出力軸30に加わるトルクによって(矢印R方向)に回転し、伝達ギア23を左回りに回転させようとする。しかし、伝達ギア23は、ラチェット826によって左回りの回転を規制されているため、入力ギア21とともに入力軸10を中心として右回り(矢印R方向)に回動する。
【0109】
伝達ギア23は、入力ギア21とともに入力軸10を中心として右回り(矢印R方向)に回動することによって、出力ギア22から離間し、出力ギア22と伝達ギア23との間に隙間Gが発生する。これにより、伝達部820では、出力ギア22の伝達ギア23に対する係合が解除される。
【0110】
このとき、出力ギア22が伝達ギア23による拘束を受けなくなるため、出力ギア22に接続された出力軸30は自由に回転することが可能となる。これにより、コイルバネ42の弾性エネルギが一気に解放されるとともに、出力軸30が右回り(矢印R方向)に勢いよく回転する。
【0111】
この後、入力軸10への右回り(
図18の矢印R方向)へのトルクが解除され、入力軸10に再び左回り(
図17の矢印L方向)のトルクが付与されると、伝達ギア23が再び出力ギア22に対して係合する。このとき、ラチェット826から伝達ギア23に付与されるトルクも、伝達ギア23が再び出力ギア22に対して係合する動作をサポートする。これにより、
図17に示す状態に戻り、再び、入力軸10の右回りの回転によってコイルバネ42に弾性エネルギを蓄積することが可能となる。
【0112】
[IV]第4の実施形態
図19は、本発明の第4の実施形態に係る運動エネルギ発生機構901の断面図である。
図14は、第3の実施形態に係る
図17に対応する。本実施形態に係る運動エネルギ発生機構901について、第3の実施形態に係る運動エネルギ発生機構801と共通の構成には同一の符号を用いる。
【0113】
本実施形態に係る運動エネルギ発生機構901は、以下に特に説明する構成以外について、第3の実施形態に係る運動エネルギ発生機構801と同様に構成されている。本実施形態に係る運動エネルギ発生機構901には、第3の実施形態に係る運動エネルギ発生機構801の伝達部820とは異なる伝達部920が設けられている。
【0114】
より詳細に、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構901の伝達部920には、伝達部材927及び巻き取り部928が設けられている。伝達部材927は、紐やロープやケーブルやベルトなどの柔軟性のある長尺体として構成されている。巻き取り部928は、出力軸30に設けられ、出力軸30とともに回転可能に構成されている。
【0115】
図20は、運動エネルギ発生機構901の正面図である。
図20は、第1の実施形態に係る
図1に対応する。伝達部材927は、その一方の端部が巻き取り部928に固定され、巻き取り部928からZ軸方向下方(-Z軸方向)に延び、他方端部が支持部43に固定されている。つまり、伝達部材927は、出力軸30と支持部43とを接続している。
【0116】
図19に示すように、伝達ギア23は、入力軸10が左回り(矢印L方向)に回転すると、これに伴って出力ギア22が左回り(矢印L方向)に回転する。これにより、伝達部材927が巻き取り部928に巻き取られていく。これに伴い、伝達部材217によって、支持部43がZ軸方向上方(+Z軸方向)に引き上げられる。
【0117】
これにより、コイルバネ42が圧縮変形することにより、弾性エネルギが蓄積される。このように、運動エネルギ発生機構901では、伝達部920における伝達部材927及び巻き取り部928が出力軸30の回転運動を、変換機構45自体のZ軸方向下方(-Z軸方向)への直線運動に変換可能な変換機構として機能する。
【0118】
このため、運動エネルギ発生機構901では、第3の実施形態に係る運動エネルギ発生機構801の変換機構45を設ける必要がない。したがって、運動エネルギ発生機構901では、変換機構45に代えて、変換機構として機能しない支持部945を用いることができるため、シンプルで軽量な構成を実現することができる。
【0119】
また、運動エネルギ発生機構901では、駆動力の伝達のために、伝達部材927を屈曲させることが可能なプーリなどを用いることもできる。これにより、出力軸30の回転運動を、Z軸方向に限らず、任意の方向の直線運動に変換可能となる。これらにより、本実施形態に係る運動エネルギ発生機構901では、設計自由度が飛躍的に向上する。
【0120】
[V]その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、運動エネルギ発生機構の伝達部における入力ギア、出力ギア、及び伝達ギアはそれぞれ複数のギアで構成されていてもよい。
【0121】
一例として、入力ギアは、入力軸とともに回転するギアと、このギアと係合するギアと、を含む構成でもよい。また、出力ギアは、出力軸とともに回転するギアと、このギアと係合するギアと、を含む構成でもよい。更に、伝達ギアは、複数のギアを介して入力ギアと出力ギアとを接続可能な構成でもよい。
【0122】
また、運動エネルギ発生機構において、弾性機構が、出力軸の回転運動を直線運動に変換することにより、コイルバネに弾性エネルギを蓄積する構成は必須ではない。例えば、弾性機構は、ゼンマイバネやねじりバネなどを用いて出力軸が回転する運動エネルギをそのまま弾性エネルギとして蓄積してもよい。
【0123】
更に、運動エネルギ発生機構は、弾性エネルギを蓄積可能な弾性機構ではなく、出力軸が回転する運動エネルギを弾性エネルギ以外のポテンシャルエネルギとして蓄積可能な蓄積部を有していてもよい。蓄積部は、例えば、重力や静電ポテンシャルなどによるポテンシャルエネルギを蓄積可能な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0124】
1…運動エネルギ発生機構
10…入力軸
20…伝達部
21…入力ギア
22…出力ギア
23…伝達ギア
24…連結部
25…付勢部
26…回転規制部
30…出力軸
40…弾性機構
41…シャフト
42…コイルバネ
45…変換機構
50…フレーム部
52…ビーム
100…跳躍ロボット
101…本体部
102…ホイール部