(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】消泡剤
(51)【国際特許分類】
B01D 19/04 20060101AFI20220712BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20220712BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20220712BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220712BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B01D19/04 A
C08K9/04
C08L91/00
C08L71/02
C01B33/18 C
(21)【出願番号】P 2018152099
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】山田 有記
(72)【発明者】
【氏名】安藤 毅
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-31543(JP,A)
【文献】特開2004-57872(JP,A)
【文献】特開平8-24512(JP,A)
【文献】特開2017-144404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/04
C08K 9/04
C01B 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径が0.1~4μmである疎水性シリカ(A1)、体積平均粒子径が7~40μmである疎水性シリカ(A2)及び基油(B)を含有することを特徴とする消泡剤。
【請求項2】
疎水性シリカ(A1)、疎水性シリカ(A2)及び基油(B)の重量に基づいて、疎水性シリカ(A1)の含有量が0.05~3重量%、疎水性シリカ(A2)の含有量が0.35~7重量%、基油(B)の含有量が90~99.6重量%である請求項1に記載の消泡剤。
【請求項3】
さらに、ポリオキシアルキレン化合物(C)を含有してなる請求項1又は2に記載の消泡剤。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン化合物(C)がアルコールのアルキレンオキシド付加体(付加モル数10~200モル)又はこの脂肪酸エステルである請求項3に記載の消泡剤。
【請求項5】
ポリオキシアルキレン化合物(C)の含有量が疎水性シリカ(A1)、疎水性シリカ(A2)及び基油(B)の重量に基づいて、10~150重量%である請求項3又は4に記載の消泡剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
「(A)下記一般式(1)(式中、R1、R2は各々独立に直鎖あるいは分岐鎖の炭素数6~22のアルキル基、アルケニル基を表し、X、Zは各々独立にアシル基、エーテル基を表し、Yはポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を表し、ポリオキシエチレン基がY中で50モル%以下である。)で表されたポリオキシアルキレン化合物と、
R1-X-(Y)-Z-R2 (1)
(B)オルガノポリシロキサンと、(C)疎水性シリカを含んでなることを特徴とする消泡剤組成物」が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された消泡剤を高剪断力下で使用した場合、十分な消泡性(破泡、抑泡効果)が得られないという問題、特に紙塗工塗料、水系塗料に対して消泡性が劣るという問題がある。すなわち本発明の目的は、高剪断力下で使用した場合でも消泡性(破泡、抑泡効果)に優れる消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の消泡剤の特徴は、体積平均粒子径が0.1~4μmである疎水性シリカ(A1)、体積平均粒子径が7~40μmである疎水性シリカ(A2)及び基油(B)を含有する点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の消泡剤は、高剪断力下で使用した場合でも優れた消泡性(破泡、抑泡効果)を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
疎水性シリカ(A1)の体積平均粒子径(μm)は、0.1~4が好ましく、さらに好ましくは0.2~3、特に好ましくは0.3~2、最も好ましくは0.4~1である。この範囲であるとさらに消泡性が良好となる。
【0008】
疎水性シリカ(A2)の体積平均粒子径(μm)は、7~40が好ましく、さらに好ましくは7~35、特に好ましくは10~30、最も好ましくは12~25である。この範囲であるとさらに消泡性が良好となる。
【0009】
体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分析計{たとえば、Leeds&Northrup社製Microtracシリーズ、株式会社堀場製作所製ParticaLAシリーズ}を用い、2-プロパノール{純度99重量%以上}1000重量部に、測定試料濃度0.1重量%となるように測定試料を添加して測定分散液を調製して、測定温度25±5℃で測定した後、2-プロパノールの屈折率として1.3749を、測定試料の屈折率として文献値(「A GUIDE FOR ENTERING MICROTRAC ”RUN INFORMATION”(F3)DATA」、Leeds&Northrup社作成)を用いて、50%積算体積平均粒子径として求められる。
【0010】
測定試料に疎水性シリカ以外に基油(B)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(C)が含まれる場合、測定試料20及びアセトン80部{関東化学株式会社、工業用}を均一混合してから、遠心分離(遠心加速度1600G、10分間)し、上澄みを廃棄する操作を4回繰り返した後、100℃で2時間乾燥させて、測定試料から基油(B)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(C)を除去して測定試料(疎水性シリカ)を調製してから測定する。
【0011】
疎水性シリカ(A1及びA2)としては、無機粉末シリカ(親水性シリカ)を疎水化剤で疎水化処理したシリカが含まれる。
無機粉末シリカとしては、沈殿法により製造されたシリカ(以下、沈殿法シリカという)、及びゲル法により製造されたシリカ(以下、ゲル法シリカという)が含まれる。
【0012】
なお、沈殿法シリカは、中性~アルカリ性環境下にて珪酸ソーダを酸で中和し、生じた析出物をろ過、乾燥することによって得られるシリカであり、ゲル法シリカは、酸性環境下にて珪酸ソーダを酸で中和し、生じた析出物をろ過、乾燥することによって得られるシリカである。
親水性の沈殿法シリカ及び親水性のゲル法シリカは、市場から容易に入手でき、たとえば、以下の商品名が例示できる。
【0013】
<親水性の沈殿法シリカ>
Nipsilシリーズ{東ソー・シリカ株式会社、「Nipsil」は東ソー・シリカ株式会社の登録商標である。}、Sipernatシリーズ{エボニック デグサ ジャパン株式会社、「SIPERNAT」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。}、Carplexシリーズ{DSL.ジャパン株式会社、「CARPLEX」はDSL.ジャパン株式会社の登録商標である。}、FINESILシリーズ{株式会社トクヤマ、「FINESIL」はオリエンタル シリカズ コーポレーションの登録商標である。}、TOKUSIL{株式会社トクヤマ、「TOKUSIL」はオリエンタル シリカズ コーポレーションの登録商標である。}、Zeosil{ローディア社、「ZEOSIL」はロディア シミの登録商標である。}、MIZUKASILシリーズ{水澤化学工業株式会社、「MIZUKASIL」は水沢化学工業株式会社の登録商標である。}等。
【0014】
<親水性のゲル法シリカ>
Carplexシリーズ、SYLYSIAシリーズ{富士シリシア株式会社、「SYLYSIA」は有限会社ワイ・ケイ・エフの登録商標である。}、Nipgelシリーズ{東ソー・シリカ株式会社、「NIPGEL」は東ソー・シリカ株式会社の登録商標である。}、MIZUKASILシリーズ{水澤化学工業株式会社}等。
【0015】
疎水化剤としては、シリコーンオイル及び変性シリコーンオイルが含まれる。
シリコーンオイルとしては、動粘度1~30,000(mm2/s、25℃)のジメチルシロキサン等が挙げられ、5~20量体の環状シリコーン(シクロテトラジメチルシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)も含まれる。
【0016】
変性シリコーンとしては、上記のジメチルシロキサンのメチル基の一部を炭素数2~6のアルキル基、炭素数2~4のアルコキシル基、炭素数6~10のアリール基、水素原子、ハロゲン(塩素及び臭素等)原子、及び/又は炭素数2~6のアミノアルキル基等に置き換えたものが含まれる。
【0017】
ジメチルポリシロキサンの動粘度(25℃;mm2/s)は、10~5,000が好ましく、さらに好ましくは20~3,000、特に好ましくは50~1,500である。
【0018】
変性シリコーンの動粘度(25℃;mm2/s)は、1~5,000が好ましい。
【0019】
疎水化剤の含有量(重量%)としては、無機粉末シリカの重量に基づいて、5~70が好ましく、さらに好ましくは7~50、特に好ましくは10~30である。この範囲であると消泡性がさらに優れる。
【0020】
疎水化処理は、加熱処理する方法が適用でき、加熱温度(℃)としては100~400が好ましく、さらに好ましくは150~350、特に好ましくは200~300である。
【0021】
疎水化処理は乾式疎水化処理及び湿式疎水化処理のいずれの方法でもよいが、湿式疎水化処理が好ましい。湿式疎水化処理する場合、疎水化処理には、基油(B)及び反応触媒(硫酸、硝酸、塩酸、ヒドロキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、p-ニトロ安息香酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)が使用できる。
【0022】
基油(B)としては、植物油、鉱物油及び非反応性シリコーン油が含まれる。
【0023】
植物油としては、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油及び胚芽油等が挙げられる。
【0024】
鉱物油としては、石油の精製によって得られる炭化水素油及びそれを水素添加して得られる精製鉱油が含まれる。
【0025】
鉱物油の動粘度(40℃、mm2/s)は、5~140が好ましく、さらに好ましくは10~40、特に好ましくは20~35である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。
【0026】
鉱物油は、市場から容易に入手でき、コスモピュアスピンG(コスモ石油株式会社、動粘度(40℃)21mm2/s、「コスモ」及び「ピュアスピン」はコスモエネルギーホールディングス株式会社の登録商標である。)、コスモSC22(コスモ石油株式会社、動粘度(40℃)22mm2/s)、コスモニュートラル100(コスモ石油株式会社、動粘度(40℃)21mm2/s)及びコスモニュートラル150(コスモ石油株式会社、動粘度(40℃)33mm2/s)等が挙げられる。ここに例示した商品以外の鉱物油でも上記の動粘度の範囲内の鉱物油であれば使用でき、複数種類の鉱物油を混合したものでもよく、上記の動粘度の範囲外の鉱物油を混合したものでもよい。
【0027】
非反応性シリコーン油としては、上記の疎水化剤のうち、ジメチルシロキサンのメチル基の一部を水素原子、ハロゲン(塩素及び臭素等)原子及び/又は炭素数2~6のアミノアルキル基に置き換えた変性シリコーンオイル(反応性シリコーン油)以外のものがそのまま使用できる。
【0028】
疎水性シリカ(A1及びA2)は、市場からも入手でき、たとえば、以下の疎水性シリカが例示できる。
Nipsil SSシリーズ、Sipernat D及びCシリーズ、並びにSYLOPHOBICシリーズ{富士シリシア化学株式会社、「SYLOPHOBIC」は富士シリシア化学株式会社の登録商標である。}等。
【0029】
疎水性シリカ(A1及びA2)はそれぞれ別々に用意してもよいが、疎水性シリカ(A2)を粉砕処理して疎水性シリカ(A1)を用意してもよい{すなわち、シリカが同じであって体積平均粒子径が相違する疎水性シリカ(A1及びA2);この場合、それぞれのメタノール湿潤値(後述、M値)が僅かに相違する。}。粉砕処理は疎水性シリカを粉砕してもよいし、疎水化前の親水性シリカを粉砕してもよい。乾式粉砕処理及び湿式粉砕処理のいずれでもよいが、湿式粉砕処理が好ましい。
【0030】
疎水性シリカ(A1)のメタノール湿潤値(M値)は、消泡性の観点から、40~80が好ましく、さらに好ましくは45~75、特に好ましくは50~75である。
【0031】
疎水性シリカ(A2)のメタノール湿潤値(M値)は、消泡性の観点から、40~85が好ましく、さらに好ましくは50~80、特に好ましくは55~80である。
【0032】
メタノール湿潤値(M値)は、疎水性の程度を表す概念であり、M値が高いほど親水性が低いことを示し、水・メタノール混合溶液に疎水性微粒子を均一分散させる際、必要最低量のメタノールの容量割合で表され、次の方法で求めることができる。
【0033】
<M値算出法>
測定試料(疎水性シリカ)0.2gを容量250mLのビーカー中の50mLの水に添加し、続いてメタノールをビュレットから測定試料の全量が懸濁するまで滴下する。この際ビーカー内の溶液をマグネティックスターラーで常時攪拌し、測定試料の全量が溶液中に均一懸濁された時点を終点とし、終点におけるビーカーの液体混合物のメタノールの容量百分率がM値となる。
【0034】
測定試料に疎水性シリカ以外に基油(B)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(C)が含まれる場合、測定試料20部及びアセトン80部{関東化学株式会社、工業用}を均一混合してから、遠心分離(遠心加速度1600G、10分間)し、上澄みを廃棄する操作を4回繰り返した後、100℃で2時間乾燥させて、測定試料から基油(B)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(C)を除去して測定試料(疎水性シリカ)を調製してから測定する。
【0035】
疎水性シリカ(A1)の含有量(重量%)は、疎水性シリカ(A1)、疎水性シリカ(A2)及び基油(B)の重量に基づいて、0.05~3が好ましく、さらに好ましくは0.2~2である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となる。
【0036】
疎水性シリカ(A2)の含有量(重量%)は、疎水性シリカ(A1)、疎水性シリカ(A2)及び基油(B)の重量に基づいて、0.35~7が好ましく、さらに好ましくは4~7である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となる。
【0037】
基油(B)の含有量(重量%)は、疎水性シリカ(A1)、疎水性シリカ(A2)及び基油(B)の重量に基づいて、90~99.6が好ましく、さらに好ましくは91~95である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となる。
【0038】
本発明の消泡剤には、ポリオキシアルキレン化合物(C)を含有することが好ましい。
ポリオキシアルキレン化合物(C)としては、アルコール(炭素数1~18が好ましい)のアルキレンオキシド付加体又はこの脂肪酸エステルが使用できる。
【0039】
アルキレンオキシドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド)が含まれる。アルキレンオキシドは1種類でも、2種以上の混合でもよい。2種以上の混合の場合、結合様式はブロック、ランダム及びこれの混合のいずれでもよい。
【0040】
アルキレンオキシドの付加モル数は、アルコール1モルに対して、10~200モルが好ましく、さらに好ましくは25~90である。
【0041】
アルコールとしては、モノオール、ジオール及びトリオールが含まれる。
【0042】
モノオールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール及びオレイルアルコール等が挙げられる。
【0043】
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール及びヘキサンジオール等が挙げられる。
【0044】
トリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール及びトリメチロールエタン等が挙げられる。
【0045】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数4~28の脂肪酸が含まれ、ブタン酸、ヘキサン酸、ラウリン酸、2-エチルヘキサン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸及びモンタン酸等が挙げられる。
【0046】
ポリオキシアルキレン化合物(C)を含有する場合、ポリオキシアルキレン化合物(C)の含有量(重量%)は、疎水性シリカ(A1)、疎水性シリカ(A2)及び基油(B)の重量に基づいて、10~150が好ましく、さらに好ましくは30~130、特に好ましくは50~120である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となる。
【0047】
本発明の消泡剤は、体積平均粒子径が0.1~4μmである疎水性シリカ(A1)、体積平均粒子径が7~40μmである疎水性シリカ(A2)及び基油(B)を均一混合できれば、製造方法に制限はないが、親水性シリカや疎水性シリカに含まれているかもしれない水分や気泡を除去するために疎水化工程及び/又は均一混合工程において100~140℃で加熱処理することが好ましい。
【0048】
本発明の消泡剤にポリオキシアルキレン化合物(C)を含む場合、疎水性シリカ(A1)、疎水性シリカ(A2)、基油(B)及びポリオキシアルキレン化合物(C)を均一混合できれば、製造方法に制限はないが、疎水性シリカ(A1)、疎水性シリカ(A2)及び基油(B)を均一混合した後にポリオキシアルキレン化合物(C)を混合することが好ましい。
【0049】
本発明の消泡剤は、水性発泡液に対して効果的である。従って、水性塗料用消泡剤及び各種製造工程(抄紙工程、発酵工程、排水処理工程、モノマーストリッピング工程及びポリマー重合工程等)用消泡剤等として使用することができる。これらのうち、水性塗料用消泡剤として適しており、さらに水性塗料(水性建築外装用塗料、建築内装用塗料、水性インキ及び紙塗工用塗料等)のうち、エマルション塗料の用途として最適である。
【0050】
エマルション塗料としては、水及びバインダーが含まれていればよく、バインダーとしては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂又はフッ素原子含有シリコーン樹脂等が挙げられ、いずれに対しても効果的である。
【0051】
本発明の消泡剤の含有量(重量%)は、水性塗料に適用する場合、水性塗料の重量に基づいて、0.05~5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1~1重量%である。また、各種製造工程に適用する場合、各工程の操業状況に応じて適宜決定できる。
【実施例】
【0052】
<実施例1>
親水性シリカ(hs1){体積平均粒子径10μmのゲル法シリカ、Nipgel AZ-204、東ソー・シリカ株式会社}100部をヒーター付きヘンシェルミキサー(株式会社三井三池製作所、UM-2E型)に入れ、低速撹拌(750rpm)しながら、75℃で加熱溶融した疎水化剤(sm1){デシルトリエトキシシラン、KBM-3103、信越化学工業株式会社}10部を噴霧した。次いで内容物をヒーターで70~75℃に加熱しながら高速回転(2000rpm)による撹拌を15分間行い、内容物を均一に混合した。次いで撹拌速度を維持したままヒーターで内容物を180℃に加熱し、180℃にて3時間、混合加熱処理を行なって、疎水性シリカ(a21)を得た。疎水性シリカ(a21)の体積平均粒子径は14μm、M値は55であった。
【0053】
疎水性シリカ(a21)110部と基油(b1){動粘度(40℃)が32mm2/sの食用大豆油、日清オイリオグループ株式会社}2000部とをステンレス製容器に投入した後、ホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG-92G、タイテック株式会社)にて4000rpmで攪拌混合し、疎水性シリカ(a21)を含む分散液(pd1)を得た。粒径0.7mmのジルコニアビーズを充填率85体積%になるように充填した湿式媒体型粉砕機{DISPERMAT SL-C-12、VMA-GETAMANN GMBH社}に分散液(pd1)を入れて、ローター回転数4000rpmにて10分間湿式粉砕処理して、疎水性シリカ(a11)を含む分散液(fd1)を得た。疎水性シリカ(a11)の体積平均粒子径は1.0μm、M値は50であった。
【0054】
攪拌の可能な容器内で、分散液(fd1)4部{疎水性シリカ(a11)を0.2部含む}、分散液(pd1)96部{疎水性シリカ(a21)を5.0部含む}を均一混合して、本発明の消泡剤(DF1)を得た。
【0055】
<実施例2>
基油(b2){動粘度21mm2/sの鉱物油、コスモSC22、コスモ石油ルブリカンツ株式会社}2000部の入った加熱、撹拌、冷却の可能な容器内に、撹拌しながら親水性シリカ(hs1)100部、及び疎水化剤(sm1){デシルトリエトキシシラン、KBM-3103、信越化学工業株式会社}10部を順に入れ、撹拌下に110℃まで昇温し、この温度にてさらに3時間加熱撹拌を続けて疎水性シリカ(a22)を含む分散液(pd2)を得た。疎水性シリカ(a22)の体積平均粒子径は14μm、M値は60であった。
【0056】
粒径0.7mmのジルコニアビーズを充填率85体積%になるように充填した湿式媒体型粉砕機{DISPERMAT SL-C-12、VMA-GETAMANN GMBH社}に、分散液(pd2)を入れて、ローター回転数4000rpmにて10分間湿式粉砕処理して、疎水性シリカ(a12)を含む分散液(fd2)を得た。疎水性シリカ(a12)の体積平均粒子径は0.9μmであり、M値は53であった。
【0057】
攪拌の可能な容器内で、分散液(fd2)19部{疎水性シリカ(a12)を1部含む}、分散液(pd2)77部{疎水性シリカ(a22)を4部含む}及び基油(b2)4部を均一混合して、本発明の消泡剤(DF2)を得た。
【0058】
<実施例3>
親水性シリカ(hs1)を親水性シリカ(hs2){体積平均粒子径12μmの沈殿法湿式シリカ、Nipsil G300、東ソー・シリカ株式会社}に変更したこと、疎水化剤(sm1)10部を疎水化剤(sm2){メチルハイドロジェンポリシロキサン、SH1007、信越化学工業株式会社}10部に変更したこと、加熱温度を110℃から180℃に変更したこと以外、実施例2と同様にして、疎水性シリカ(a23)を含む分散液(pd3)を得た。疎水性シリカ(a23)の体積平均粒子径は12μmであり、M値は60であった。
【0059】
続いて、分散液(pd2)を分散液(pd3)に変更したこと、湿式粉砕処理の時間を10分間から40分間に変更したこと以外、実施例2と同様にして、疎水性シリカ(a13)を含む分散液(fd3)を得た。疎水性シリカ(a13)の体積平均粒子径は1μmであり、M値は55であった。
【0060】
攪拌の可能な容器内で、分散液(fd3)20部{疎水性シリカ(a13)を1部含む)及び分散液(pd3)80部{疎水性シリカ(a23)を4.2部含む}を均一混合して、本発明の消泡剤(DF3)を得た。
【0061】
<実施例4>
基油(b2)2000部を基油(b3){動粘度33mm2/sの鉱物油、コスモニュートラル150、コスモ石油ルブリカンツ株式会社}550部に変更したこと、親水性シリカ(hs1)を親水性シリカ(hs3){体積平均粒子径20μmの沈殿法湿式シリカ、Nipsil NA、東ソー・シリカ株式会社}に変更したこと、疎水化剤(sm1)3部を疎水化剤(sm2)25部に変更したこと以外、実施例2と同様にして、疎水性シリカ(a24)を含む分散液(pd4)を得た。疎水性シリカ(a24)の体積平均粒子径は20μmであり、M値は76であった。
【0062】
続いて、分散液(pd2)を分散液(pd4)に変更したこと、湿式粉砕処理の時間を10分間から45分間に変更したこと以外、実施例2と同様にして、疎水性シリカ(a14)を含む分散液(fd4)を得た。疎水性シリカ(a14)の体積平均粒子径は0.6μmであり、M値は70であった。
【0063】
攪拌の可能な容器内で、分散液(fd4)7部{疎水性シリカ(a14)を1.3部含む}、分散液(pd4)38部{疎水性シリカ(a24)を7部含む}及び基油(b3)55部を均一混合して、本発明の消泡剤(DF4)を得た。
【0064】
<実施例5>
基油(b2)2000部を基油(b3)550部に変更したこと、親水性シリカ(hs1)を親水性シリカ(hs2)に変更したこと、疎水化剤(sm1)3部を疎水化剤(sm2)15部に変更したこと以外、実施例2と同様にして、疎水性シリカ(a25)を含む分散液(pd5)を得た。疎水性シリカ(a25)の体積平均粒子径は12μmであり、M値は76であった。
【0065】
続いて、分散液(pd2)を分散液(pd5)に変更したこと、湿式粉砕処理の時間を10分間から90分間に変更したこと以外、実施例2と同様にして、疎水性シリカ(a15)を含む分散液(fd5)を得た。疎水性シリカ(a15)の体積平均粒子径は0.4μmであり、M値は72であった。
【0066】
攪拌の可能な容器内で、分散液(fd5)11.5部{疎水性シリカ(a15)を2部含む}、分散液(pd5)40.5部{疎水性シリカ(a25)を7部含む}及び基油(b3)48部を均一混合して、本発明の消泡剤(DF5)を得た。
【0067】
<実施例6>
基油(b2)2000部を基油(b3)1000部に変更したこと、親水性シリカ(hs1)を親水性シリカ(hs4){体積平均粒子径25μmの沈殿法湿式シリカ、Sipernat 700、エボニック デグサ ジャパン株式会社}に変更したこと、疎水化剤(sm1)3部を疎水化剤(sm2)30部に変更したこと以外、実施例2と同様にして、疎水性シリカ(a26)を含む分散液(pd6)を得た。疎水性シリカ(a26)の体積平均粒子径は25μmであり、M値は80であった。
【0068】
続いて、分散液(pd2)を分散液(pd6)に変更したこと、湿式粉砕処理の時間を10分間から60分間に変更したこと以外、実施例2と同様にして、疎水性シリカ(a16)を含む分散液(fd6)を得た。疎水性シリカ(a16)の体積平均粒子径は0.5μmであり、M値は75であった。
【0069】
攪拌の可能な容器内で、分散液(fd6)10部{疎水性シリカ(a16)を1.2部含む}、分散液(pd6)50部{疎水性シリカ(a26)を5.8部含む}及び基油(b3)40部を15分間攪拌混合し、本発明の消泡剤(DF6)を得た。
【0070】
<実施例7>
攪拌の可能な容器内で、分散液(fd4)1部{疎水性シリカ(a14)を0.2部含む}、分散液(pd4)30部{疎水性シリカ(a24)を5.6部含む}、基油(b3)69部及びポリオキシアルキレン付加物(c1){グリセリンのプロピレンオキシド90モル付加体)50部を均一混合して、本発明の消泡剤(DF7)を得た。
【0071】
<実施例8~11>
分散液(fd4)1部{疎水性シリカ(a14)を0.2部含む}、分散液(pd4)30部{疎水性シリカ(a24)を5.6部含む}、基油(b3)69部及びポリオキシアルキレン付加物(c1)50部を、表1に記載した種類及び使用量に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の消泡剤(DF8)~(DF11)を得た。
【0072】
【0073】
表中、( )内は分散液に含まれる疎水性シリカの含有量を示す。
また、ポリオキシアルキレン化合物(C)は以下のものを使用した。
(c2):グリセリンのプロピレンオキシド40モルエチレンオキシド14モルブロック付加体
(c3):ブタノールのプロピレンオキシド40モル付加体
(c4):プロピレングリコールのプロピレンオキシド30モルエチレンオキシド5モルブロック付加体のステアリン酸エステル(モノエステル:ジエステルの含有モル比 約30:70)
(c5):ブタノールのプロピレンオキシド25モル付加体のオレイン酸エステル
【0074】
<比較例1>
特許文献1の実施例1に準拠して、比較用の消泡剤(HDF1)を調製した。
【0075】
実施例1~11及び比較例1で得た消泡剤DF1~DF11及びHDF1を用いて、以下のようにエマルション塗料を調製し、以下の方法により、消泡性について評価した。
【0076】
(1)エマルション塗料の調製
<グライディング工程>
表2の原料をインペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社、モデルED、以下同じ)にて、35℃以下に保ちながら、3000rpm、30分間攪拌混合して、スラリーを調製した。
【0077】
<レットダウン工程>
グライディング工程で調製したスラリーに表2の原料を加え、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて、35℃以下に保ちながら、1000rpm、10分間攪拌混合して、エマルションベース塗料を得た。
得られたエマルションベース塗料をストマー粘度計(JIS K5600-2-2:1999)で77KU(25℃)になるように水で希釈して評価用エマルション塗料(1)~(12)を得た。
【0078】
【0079】
※1 分散剤、サンノプコ株式会社
※2 増粘剤、サンノプコ株式会社
※3 酸化チタン、石原産業株式会社、「タイペーク」は同社の登録商標である。
※4 アクリルエマルション、大日本インキ化学工業株式会社、「ボンコート」はDIC株式会社の登録商標である。
※5 防腐剤、サンノプコ株式会社
※6 造膜調整剤、イーストマンケミカル社、「テキサノール」は吉村油化学株式会社の登録商標である。
【0080】
(2)消泡性
中毛ウールローラー(大塚刷毛製造株式会社)を用いて評価用エマルション塗料をPETフィルム(20cm×20cm)上にローラー塗装し、30秒後の残泡量を目視で数えて下表に記載した。残泡量の少ない方が消泡性優れることを意味する。
【0081】
【0082】
本発明の消泡剤を用いたエマルション塗料は、比較用の消泡剤を用いたものに比べて消泡性に優れていた。